【文献】
J. Cancer Res. Clin. Oncol., 2012, Vol.138, p.1081-1090
【文献】
Mol. Ther., Online available 2014.12.09, Vol.23, No.2, p.330-338
【文献】
Sci. Transl. Med., 2015.02.18, Vol.7, Issue 275, 275ra22 (p.1-14)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記EGFR結合ドメインのアミノ末端へのシグナルポリペプチドならびに/または、前記CARに付着された検出可能なマーカーおよび/もしくは精製マーカーをさらに含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載のCAR。
前記ベクターが、プラスミドであるか、または、レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター、アデノウイルスベクターおよびアデノ随伴ウイルスベクターからなる群より選択されるウイルスベクターである、請求項10に記載のベクター。
前記細胞が、T細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、ナチュラルキラーT細胞、幹細胞、または造血幹細胞(HSC)由来の白血球の群から選択される、請求項12に記載の単離された細胞。
キャリア、および1つまたはそれより多くの請求項1〜8のいずれか1項に記載のCAR、請求項9に記載の単離された核酸、請求項10もしくは11に記載のベクター、または請求項12もしくは13に記載の単離された細胞を含む組成物。
請求項1〜8のいずれか1項に記載のCARをコードする核酸配列を細胞に導入する工程を含む、または、請求項11に記載のウイルスベクターを細胞に導入する工程を含む、EGFR CAR細胞を作製する方法。
wtEGFRおよび/またはEGFRvIIIを細胞表面上に発現する細胞の成長を阻害するための組成物であって、有効量の請求項13に記載の単離された細胞を含む、組成物。
前記細胞が、(i)神経膠芽腫もしくは神経膠芽腫幹細胞および/または(ii)乳癌脳転移もしくは乳癌脳転移幹細胞から選択される腫瘍細胞または癌幹細胞である、請求項17に記載の組成物。
癌の処置を必要とする哺乳動物、マウス、イヌ、ウシ、マウス、ネコ、ウマまたはヒトの群から選択される被験体における癌の処置における使用のための組成物であって、前記癌細胞はwtEGFRおよび/またはEGFRvIIIを発現し、前記組成物は有効量の請求項13に記載の単離された細胞を含む、組成物。
前記単離された細胞が、処置される被験体にとって自家であるか、または、前記単離された細胞が、処置される被験体にとって同種異系であり、および/または前記組成物が、頭蓋内注射もしくは静脈内投与によって投与されることを特徴とする、請求項19に記載の使用のための組成物。
癌細胞に結合した抗体の存在を、哺乳動物、ウマ、ネコ、イヌ、ウシ、マウスまたはヒトの群から選択される被験体が請求項13に記載の細胞に応答する可能性があるかどうかの指標とする方法であって、患者から単離された前記癌細胞を有効量の抗wtEGFR抗体および抗EGFRvIII抗体と接触させること、前記癌細胞に結合した前記抗体の存在を検出することを含み、ここで、前記癌細胞に結合した抗体の存在は、前記被験体が、請求項13に記載の細胞に応答する可能性があることを示唆し、前記癌細胞に結合した抗体が存在しないことは、前記被験体が、請求項13に記載の細胞に応答する可能性がないことを示唆する、方法。
前記被験体が請求項13に記載の細胞に応答する可能性があると示唆される場合、前記被験体に有効量の請求項13に記載の細胞を投与することができる、請求項21に記載の方法。
前記癌細胞が、(i)神経膠芽腫細胞、神経膠芽腫幹細胞、または(ii)乳癌転移細胞、もしくは乳癌転移幹細胞から選択される脳癌細胞である、請求項21または22に記載の方法。
癌または脳癌の処置を必要とする被験体において、癌または脳癌を処置するための組み合わせ物であって、有効量の請求項13に記載の単離された細胞、ならびに有効量の腫瘍退縮単純ヘルペスウイルスを含む、組み合わせ物。
前記単離された細胞が、放射線照射されていない細胞であるか、または、照射線照射された細胞であるか、および/または、1000cGyの線量で放射線照射された細胞である、請求項25に記載の組み合わせ物。
前記腫瘍退縮単純ヘルペスウイルスが、HSV−1もしくはHSV−2であるかまたはHSV−1もしくはHSV−2由来であるか、および/あるいは、G207、HSV1716、NV1020もしくはタリモジーン・ラハーパレプベック(Talimogene laherparvec)の群から選択される、請求項25または26に記載の組み合わせ物。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1-1】
図1A〜1Bは、GBおよびGB幹細胞上のEGFRの発現を示している。(
図1A)神経膠腫細胞株(U251、LN229およびGli36dEGFR)および神経膠腫幹細胞(GB30、GB83、GB326、GB1123、GB84V3SL、GB157V3SLおよびGB19)上の表面EGFR発現をフローサイトメトリーによってモニターした。NK細胞株であるNKLおよびNK−92をネガティブコントロールとした。(
図1B)
図1Aにおいて特定された神経膠腫細胞株および神経膠腫幹細胞におけるRT−PCRによるEGFR mRNA発現の測定。フロープロットおよびデータは、3つの独立した実験の代表である。
【
図1-2】
図1A〜1Bは、GBおよびGB幹細胞上のEGFRの発現を示している。(
図1A)神経膠腫細胞株(U251、LN229およびGli36dEGFR)および神経膠腫幹細胞(GB30、GB83、GB326、GB1123、GB84V3SL、GB157V3SLおよびGB19)上の表面EGFR発現をフローサイトメトリーによってモニターした。NK細胞株であるNKLおよびNK−92をネガティブコントロールとした。(
図1B)
図1Aにおいて特定された神経膠腫細胞株および神経膠腫幹細胞におけるRT−PCRによるEGFR mRNA発現の測定。フロープロットおよびデータは、3つの独立した実験の代表である。
【0013】
【
図2-1】
図2A〜2Bは、EGFR特異的CARの作製およびCARを形質導入されたNK細胞上のその発現の検出を示している。(
図2A)EGFR−CARレンチウイルスの構築物の模式図。(
図2B)EGFR−CAR構築物(それぞれNK−92−EGFR−CARおよびNKL−EGFR−CAR)または空のベクター構築物(EV)を形質導入されたNK−92およびNKL細胞の表面上のキメラEGFR scFvの発現。細胞をGFP発現によってFACSで選別し、次いで、その細胞を抗マウスFab抗体(実線)またはIgGアイソタイプコントロール(破線)で染色した後、フローサイトメトリーによって解析した。SP、シグナルペプチド;VH、重鎖;VL、軽鎖;ScFv、一本鎖可変フラグメント。フロープロットおよびデータは、3つの独立した実験の代表である。
【
図2-2】
図2A〜2Bは、EGFR特異的CARの作製およびCARを形質導入されたNK細胞上のその発現の検出を示している。(
図2A)EGFR−CARレンチウイルスの構築物の模式図。(
図2B)EGFR−CAR構築物(それぞれNK−92−EGFR−CARおよびNKL−EGFR−CAR)または空のベクター構築物(EV)を形質導入されたNK−92およびNKL細胞の表面上のキメラEGFR scFvの発現。細胞をGFP発現によってFACSで選別し、次いで、その細胞を抗マウスFab抗体(実線)またはIgGアイソタイプコントロール(破線)で染色した後、フローサイトメトリーによって解析した。SP、シグナルペプチド;VH、重鎖;VL、軽鎖;ScFv、一本鎖可変フラグメント。フロープロットおよびデータは、3つの独立した実験の代表である。
【0014】
【
図3】
図3A〜3Bは、EGFR−CARによって改変されたNK−92およびNKL細胞がEGFR
+GB細胞株の細胞を認識し、殺滅することを示している。(
図3A)標準的なクロム−51放出アッセイを使用したときの、Gli36dEGFR、LN229またはU251細胞に対する、空のベクター(EV)を形質導入されたまたはEGFR−CARを形質導入されたNK−92およびNKL細胞の細胞傷害活性。(
図3B)ELISAアッセイを使用したときの、Gli36dEGFR、LN229またはU251細胞の非存在下または存在下における、空のベクターEVを形質導入されたまたはEGFR−CARを形質導入されたNK−92およびNKL細胞のIFN−γの放出。3つの独立した実験の代表的なデータが示されている。
*p<0.05;
**p<0.01。
【0015】
【
図4】
図4A〜4Bは、EGFR−CARによって改変されたNK−92およびNKL細胞が、EGFR
+GB幹細胞の増強された溶解を示すことを示している。(
図4A)クロム−51放出アッセイを使用したときのGB1123、GB30、GB157V3SLおよびGB84V3SL GB幹細胞に対するNK−92−EVまたはNK−92−EGFR−CAR細胞(上のパネル)およびNKL−EVまたはNKL−EGFR−CAR細胞(下のパネル)の細胞傷害活性。(
図4B)GB幹細胞と共培養したときのNK−92−EGFR−CARまたはNK−92−EV細胞(上のパネル)およびNKL−EVまたはNKL−EGFR−CAR細胞(下のパネル)によるIFN−γ分泌のELISA解析。3つの独立した実験の代表的なデータが示されている。
*p<0.05;
**p<0.01。
【0016】
【
図5】
図5A〜5Cは、NK−92−EGFR−CAR細胞の増強された標的認識が、細胞表面上のEGFRの発現に依存することを示している。(
図5A)空のベクターまたはwtEGFRもしくはEGFRvIIIを含むベクターでトランスフェクトされたGB19細胞の表面上のEGFR発現を検出するための抗EGFR抗体(実線)またはIgGアイソタイプコントロール(点線)を使用したフローサイトメトリー。(
図5B)
図5Aに示されたGB19、GB19−wtEGFRおよびGB19−EGFRvIII細胞に対するNK−92−EVまたはNK−92−EGFR−CAR(上のパネル)およびNKL−EVまたはNKL−EGFR−CAR(下のパネル)の細胞傷害性。GB19細胞をNK−92またはNKL細胞と、様々なエフェクター/標的(E/T)比で4時間インキュベートした。腫瘍溶解を、クロム−51放出アッセイを使用して測定した。(
図5C)NKL−EVまたはNKL−EGFR−CAR(左)およびNK−92−EGFR−CARまたはNK−92−EV細胞(右)を同数のGB19−ベクター細胞またはGB19−EGFR細胞と24時間共培養した。次いで、上清を、ELISAを使用してIFN−γ分泌を計測するために回収した。フロープロットおよびデータは、3つの独立した実験の代表である。
*p<0.05、
**p<0.01。
【0017】
【
図6】
図6A〜6Eは、NK−92−EGFR−CAR細胞が、同所ヒト神経膠腫幹細胞のインビボでの成長を抑制し、神経膠腫を有するマウスの生存時間を延長し、他の器官および組織に移動せずに脳に局在化することを示している。(
図6A)GB30腫瘍を有するマウスの脳の生物発光イメージング。ルシフェラーゼを発現しているGB30細胞を定位的(stereotaxic)注射によってNSGマウスに接種した(0日目)。接種の7日後、マウスの頭蓋内に、空のベクターを形質導入されたNK−92細胞(NK−92−EV)、EGFR−CARを形質導入されたNK−92細胞(NK−92−EGFR−CAR)またはハンクス緩衝塩溶液(HBSS;ネガティブコントロール)を1回注入した。(
図6B)
図6Aからの光子/秒/マウスという単位での定量の要約。
*はp<0.05を示す。(
図6C)NK−92−EGFR−CAR細胞で処置されたGB30を有するマウスは、カプラン・マイヤー生存曲線によって測定されたとき、NK−92−EV細胞またはHBSSで処置されたマウスと比べて有意に延長された全生存を示した(
**p<0.01)(各群n=5)。(
図6D)GB30を有するマウスの脳にCAR NK細胞を頭蓋内注射した3日後の肝臓、肺、血液、脾臓、骨髄(BM)および脳におけるCD56
+CD3
−ヒトEGFR−CAR NK−92細胞の存在のフローサイトメトリーによる判定。(
図6E)GB30を有するマウスの脳にCAR NK細胞を頭蓋内注射した3日後の肝臓、肺、血液、脾臓、骨髄(BM)および脳におけるEGFR−CARの発現のRT−PCRによる測定。NC=ネガティブコントロール(DNA鋳型を加えなかった);PC=ポジティブコントロールであるEGFR−CAR NK−92細胞。
*p<0.05、
**p<0.01。
【0018】
【
図7】
図7A〜7Cは、同所異種移植GBモデルにおいて、EGFR−CARを形質導入されたNK−92細胞が、wtEGFRを発現しているGB腫瘍の成長を阻害し、腫瘍を有するマウスの生存を延長することを示している。(
図7A)U251腫瘍を有するマウスの脳の生物発光イメージング。ルシフェラーゼを発現している10
5個のU251細胞を、定位的注射によってNSGマウスの頭蓋内に植え込んだ(0日目)。接種後の10、40、70日目に、マウスの頭蓋内に、NK−92−EV細胞、NK−92−EGFR−CAR細胞またはネガティブコントロールとしてHBSSを注入した。マウスの脳の生物発光イメージングを100日目に撮影した。(
図7B)
図7Aからの光子/秒/マウスという単位での定量の要約。
**はp<0.01を示す。(
図7C)NK−92−EGFR−CAR細胞で処置されたU251を有するマウスは、カプラン・マイヤー生存曲線によって測定されたとき、NK−92−EV細胞(
*p<0.05)またはHBSS(
**p<0.01)で処置されたマウスと比べて有意に延長された全生存を示した(各群n=5)。
【0019】
【
図8】
図8A〜8Bは、EGFR−CAR初代NK細胞が、EGFR
+GB細胞および患者由来GB幹細胞の増強された全滅を示すことを示している。(
図8A)EGFR−CARによって改変された初代NK細胞(初代NK−CAR)が、mockを形質導入された初代NK細胞(初代NK−EV)と比較して、EGFR
+Gli36dEGFRおよびU251 GB細胞株に対して高い細胞溶解活性を示した。(
図8B)EGFR−CARによって改変されたNK細胞(初代NK−CAR)は、mockを形質導入された初代NK細胞(初代NK−EV)と比較して、EGFR
+患者由来GB30およびGB157V3SL幹細胞に対して高い細胞傷害性を示した。示されているデータは、異なる健康ドナーから単離されたNK細胞を調べたときの、同様の結果であった3つの実験の代表である。
*p<0.05;
**p<0.01。
【0020】
【
図9-1】
図9A〜9Cは、NK−92−EGFR−CAR細胞の標的認識の増強は、細胞表面上のEGFRの発現に依存することを示している。(
図9A)空のベクター(EV;左)、wtEGFR(中央)またはEGFRvIII(右)を形質導入された293T細胞の、抗EGFR抗体(実線)またはIgGアイソタイプコントロール(点線)を使用したフローサイトメトリー解析。(
図9B)293T−EV(左)、293T−EGFR(中央)および293T−EGFRvIII(右)細胞に対するNK−92−EVまたはNK−92−EGFR−CAR(上のパネル)およびNKL−EVまたはNKL−EGFR−CAR(下のパネル)の細胞傷害性。293T細胞をNK細胞と様々なエフェクター/標的(E/T)比で4時間インキュベートした。腫瘍溶解を、クロム−51放出アッセイを使用して測定した。(
図9C)標的細胞とエフェクター細胞との24時間のコインキュベーションの後、その共培養物の上清を、ELISAを使用してIFN−γ分泌について計測した。示されているデータは、同様の結果であった3つの実験の代表である。
*p<0.05;
**p<0.01。
【
図9-2】
図9A〜9Cは、NK−92−EGFR−CAR細胞の標的認識の増強は、細胞表面上のEGFRの発現に依存することを示している。(
図9A)空のベクター(EV;左)、wtEGFR(中央)またはEGFRvIII(右)を形質導入された293T細胞の、抗EGFR抗体(実線)またはIgGアイソタイプコントロール(点線)を使用したフローサイトメトリー解析。(
図9B)293T−EV(左)、293T−EGFR(中央)および293T−EGFRvIII(右)細胞に対するNK−92−EVまたはNK−92−EGFR−CAR(上のパネル)およびNKL−EVまたはNKL−EGFR−CAR(下のパネル)の細胞傷害性。293T細胞をNK細胞と様々なエフェクター/標的(E/T)比で4時間インキュベートした。腫瘍溶解を、クロム−51放出アッセイを使用して測定した。(
図9C)標的細胞とエフェクター細胞との24時間のコインキュベーションの後、その共培養物の上清を、ELISAを使用してIFN−γ分泌について計測した。示されているデータは、同様の結果であった3つの実験の代表である。
*p<0.05;
**p<0.01。
【0021】
【
図10-1】
図10A〜10Bは、NK−92−EGFR−CAR細胞の効果がEGFR遮断抗体(Ab)によって鈍ることを示している。(
図10A)EGFR特異的モノクローナル抗体528またはIgG一致アイソタイプコントロール抗体で前処理されたGB30細胞(左)またはU251細胞(右)に対するNK−92−EVまたはNK−92−EGFR−CARの細胞傷害性。標的細胞を、前処理されたNK−92−EVまたはNK−92−EGFR−CAR細胞と様々なエフェクター/標的(E/T)比で4時間インキュベートした。腫瘍溶解を、クロム−51放出アッセイを使用して測定した。(
図10B)標的細胞とエフェクター細胞との24時間のコインキュベーションの後、その共培養物の上清を、ELISAを使用してIFN−γ分泌について計測した。示されているデータは、同様の結果であった3つの実験の代表である。
*p<0.05;
**p<0.01。Ab=EGFR特異的モノクローナル抗体528;iso=IgG一致アイソタイプコントロール抗体。
【
図10-2】
図10A〜10Bは、NK−92−EGFR−CAR細胞の効果がEGFR遮断抗体(Ab)によって鈍ることを示している。(
図10A)EGFR特異的モノクローナル抗体528またはIgG一致アイソタイプコントロール抗体で前処理されたGB30細胞(左)またはU251細胞(右)に対するNK−92−EVまたはNK−92−EGFR−CARの細胞傷害性。標的細胞を、前処理されたNK−92−EVまたはNK−92−EGFR−CAR細胞と様々なエフェクター/標的(E/T)比で4時間インキュベートした。腫瘍溶解を、クロム−51放出アッセイを使用して測定した。(
図10B)標的細胞とエフェクター細胞との24時間のコインキュベーションの後、その共培養物の上清を、ELISAを使用してIFN−γ分泌について計測した。示されているデータは、同様の結果であった3つの実験の代表である。
*p<0.05;
**p<0.01。Ab=EGFR特異的モノクローナル抗体528;iso=IgG一致アイソタイプコントロール抗体。
【0022】
【
図11】
図11は、NK−92−EGFR−CAR細胞が、腫瘍内注射後に腫瘍領域に位置することを示している。NK−92−EGFR−CAR細胞を、GB30の植え込みの7日後にマウスの脳の腫瘍内に注射した。マウスの脳を3日後に回収し、パラフィンで包埋し、ヘマトキシリン−エオシン(H&E)染色に向けて処理した。H&E染色は、NK−92−EGFR−CAR細胞が腫瘍領域の内部にだけ存在することを示した。20×、40×および100×の拡大像が示されている(対物レンズ:2×、4×または10×;接眼レンズ:10×)。
【0023】
【
図12】
図12A〜12Bは、乳癌細胞株および乳癌組織におけるEGFRの発現を示している。乳癌細胞株(MDA−MB−231、MDA−MB−468およびMCF−7)の細胞表面上のEGFRの発現をフローサイトメトリーによって検出した(
図12A)。EGFR発現に関するヘマトキシリン−エオシン(HE)染色および免疫組織化学(IHC)を、原発性乳癌および脳転移を有する患者由来の腫瘍組織に対して行った(
図12B)。
【0024】
【
図13】
図13A〜13Eは、EGFR−CAR NK−92細胞が、乳癌細胞株のEGFR陽性細胞を認識し、溶解することを実証している。EGFR−CARを形質導入されたNK−92細胞上のEGFR scFvの発現を、ヤギ抗マウスF(ab’)
2ポリクローナル抗体を使用するフローサイトメトリーによって測定した(
図13A)。MDA−MB−231、MDA−MB−468またはMCF−7細胞の非存在下または存在下における、空のベクター(EV)を形質導入されたまたはEGFR−CARを形質導入されたNK−92細胞によるIFN−γ放出を、標準的なELISAアッセイを使用して測定した。
**P<0.01(
図13B)。MDA−MB−231(
図13C)、MDA−MB−468(
図13D)またはMCF−7(
図13E)細胞に対する空のベクター(EV)を形質導入されたまたはEGFR−CARを形質導入されたNK−92細胞の細胞傷害活性を、標準的なクロム−51放出アッセイを使用して行った。(E、エフェクター細胞;T、標的細胞)
【0025】
【
図14】
図14A〜14Dは、EGFR
+乳癌細胞で刺激されたときの、EGFR−CAR初代NK細胞の増強された細胞傷害性およびIFN−γ産生を示している。MDA−MB−231、MDA−MB−468またはMCF−7細胞の非存在下または存在下における、空のベクター(EV)を形質導入されたまたはEGFR−CARを形質導入された初代NK細胞によるIFN−γ放出を、標準的なELISAアッセイを使用して測定した(
図14A)。MDA−MB−231(
図14B)、MDA−MB−468(
図14C)またはMCF−7(
図14D)細胞に対する空のベクター(EV)を形質導入されたまたはEGFR−CARを形質導入された初代NK細胞の細胞傷害活性を、標準的なクロム−51放出アッセイを使用して行った。(E、エフェクター細胞;T、標的細胞)
【0026】
【
図15】
図15A〜15Cは、oHSV−1のみで、乳癌細胞株の腫瘍細胞を溶解し、全滅させることができることを示している。48時間の共培養後の乳癌細胞株(MDA−MB−231、MDA−MB−468またはMCF−7)に対するoHSV−1の用量依存的細胞傷害性をMTSによって検出した。
*P<0.05;
**P<0.01(
図15A)。
図15Bは、種々の時間にわたって共培養した後の乳癌細胞株MDA−MB−231、MDA−MB−468またはMCF−7に対するoHSV−1の細胞傷害性のMTSアッセイを示している。
図15Cは、MDA−MB−231−CBRluc−EGFP細胞とoHSV−1との共培養物の培地中のルシフェラーゼレベルの測定値を示している。
【0027】
【
図16】
図16A〜16Bは、EGFR−CAR NK−92細胞とoHSV−1との併用処置によって、インビトロにおいて乳癌腫瘍細胞がより効率的に全滅されることを明らかにしている。腫瘍細胞を、CAR細胞のみで処置するか、oHSV−1のみで処置するか、EGFR−CAR NK−92細胞で4時間処置した後、oHSV−1で処置するか(CAR+oHSV)、またはoHSVで4時間処置した後、EGFR−CAR NK−92細胞で処置した(oHSV+CAR)。CBRluc−EGFPを発現しているMDA−MB−231腫瘍細胞の全滅を、種々の時点において、上清へのルシフェラーゼ放出によって計測した(
図16A)。共培養した後の4日目のMDA−MB−231−CBRluc−EGFP細胞に残存するルシフェラーゼの相対的光量単位によって測定されたとき、oHSV−1と併用されたEGFR−CAR NK−92細胞(CAR+oHSVまたはoHSV+CAR)は、順序に関係なく、EGFR−CAR NK−92細胞のみ(CAR)またはoHSV−1のみ(oHSV)よりも多くのMDA−MB−231腫瘍細胞を全滅させた。
**P<0.01(
図16B)。データは、3つの独立した実験の代表である。
【0028】
【
図17】
図17A〜17Bは、EGFR−CARを形質導入されたNK−92細胞がMDA−MB−231腫瘍の成長を阻害すること、および腫瘍を有するマウスの生存を延長したことを実証している。BCBM腫瘍を有するマウスの脳の生物発光イメージング。MDA−MB−231−CBRluc−EGFP細胞を定位的注射によってNSGマウスに接種した(0日目)。接種の10日後、マウスの頭蓋内に、EGFR−CAR NK−92、oHSV−1、NK−92−EVまたはHBSSを1回注入した。15日目に、併用処置群のマウスにoHSV−1を注射した。MDA−MB−231−CBRluc−EGFP細胞の接種の4週間後、マウスの腹腔内にD−ルシフェリンを注入し、インビボイメージングシステムを使用して画像化した(
図17A)。MDA−MB−231−CBRluc−EGFP腫瘍を有するマウスを、EGFR−CAR NK−92細胞で腫瘍内処置した後、oHSV−1注射を行うか(CAR+oHSV)、EGFR−CAR NK−92細胞のみで腫瘍内処置するか(CAR)、oHSV−1のみで腫瘍内処置するか、またはHBSSコントロールで腫瘍内処置した。結果として、カプラン・マイヤー生存曲線によって測定されたとき、EGFR−CAR NK−92細胞に続くoHSV−1注射が、残りの処置よりも有意に長い全生存を示した(各群n=5)(
図17B)。
【0029】
【
図18】
図18は、ヒト初代NK細胞におけるレンチウイルスの形質導入効率を示している。ヒト初代NK細胞にEGFR−CARレンチウイルスを感染させた後、GFP(+)細胞のパーセンテージをフローサイトメトリーによって測定した。
【0030】
【
図19】
図19は、乳癌細胞に応答した、EGFR−CAR NK−92細胞の表面上の活性化マーカーの発現の変化を示している。乳癌細胞(MDA−MB−231、MDA−MB−468およびMCF−7)と一晩共培養した後のEGFR−CAR NK−92細胞におけるCD27およびCD69の表面発現を、フローサイトメトリーによって測定した。
【0031】
【
図20】
図20A〜20Bは、oHSVのみによる乳癌細胞の溶解を実証している。4日間の共培養後のoHSVによる乳癌細胞株(MDA−MB−231)の溶解が、顕微鏡下の明視野像によって実証された(
図20A)。EGFR−CAR NK92細胞をoHSV−1で4日間処置したところ、顕微鏡検査から、oHSV−1が、EGFR−CAR NK−92細胞の増殖および生存能に対して明白な効果を及ぼさないことが示された(
図20B)。
【0032】
【
図21】
図21は、oHSV、EGFR−CAR NK−92細胞およびそれらの組み合わせによる乳癌細胞株(MDA−MB−231)の溶解を示している。「MDA−MB−231+CAR+oHSV」は、4時間のEGFR−CAR NK−92細胞の処置の後のoHSV−1処置を表している。「MDA−MB−231+oHSV+CAR」は、4時間のoHSV−1の処理の後のEGFR−CAR NK−92細胞の処置を表している。
【0033】
【
図22】
図22は、ビヒクル、NK−92細胞、oHSV、EGFR−CAR NK−92細胞、およびoHSVとEGFR−CAR NK−92細胞との併用で処置された頭蓋内異種移植GB腫瘍から放出された光子の定量を示している。
【発明を実施するための形態】
【0034】
詳細な説明
本開示は、記載される特定の態様に限定されず、したがって当然のことながら変化し得ることが理解されるべきである。本開示の範囲は、添付の請求項によってのみ限定されるので、本明細書中で使用される用語は、単に特定の態様を説明する目的であって、限定を意図していないことも理解されるべきである。
【0035】
別段定義されない限り、本明細書中で使用されるすべての専門用語および科学用語が、本技術が属する分野の当業者が通常理解している意味と同じ意味を有する。本明細書中に記載される方法および材料と類似または等価な任意の方法および材料を本技術の実施または試験において使用できるが、好ましい方法、デバイスおよび材料がここに記載される。本明細書に引用されるすべての技術的刊行物および特許公報は、そのすべてが参照により本明細書中に援用される。本明細書中のいかなる記載も、本技術が、先行発明を理由にそのような開示に先行する権利がないことを自認するものとして解釈されるべきでない。
【0036】
本技術の実施は、別段示されない限り、当該分野の技術の範囲内である、組織培養、免疫学、分子生物学、微生物学、細胞生物学および組換えDNAの従来の手法を用いる。例えば、Sambrook and Russell編(2001)Molecular Cloning:A Laboratory Manual,3rd edition;the series Ausubelら編(2007)Current Protocols in Molecular Biology;the series Methods in Enzymology(Academic Press,Inc.,N.Y.);MacPhersonら(1991)PCR 1:A Practical Approach(IRL Press at Oxford University Press);MacPhersonら(1995)PCR 2:A Practical Approach;Harlow and Lane編(1999)Antibodies,A Laboratory Manual;Freshney(2005)Culture of Animal Cells:A Manual of Basic Technique,5th edition;Gait編(1984)Oligonucleotide Synthesis;米国特許第4,683,195号;Hames and Higgins編(1984)Nucleic Acid Hybridization;Anderson(1999)Nucleic Acid Hybridization;Hames and Higgins編(1984)Transcription and Translation;Immobilized Cells and Enzymes(IRL Press(1986));Perbal(1984)A Practical Guide to Molecular Cloning;Miller and Calos編(1987)Gene Transfer Vectors for Mammalian Cells(Cold Spring Harbor Laboratory);Makrides編(2003)Gene Transfer and Expression in Mammalian Cells;Mayer and Walker編(1987)Immunochemical Methods in Cell and Molecular Biology(Academic Press,London);およびHerzenbergら編(1996)Weir’s Handbook of Experimental Immunologyを参照のこと。
【0037】
範囲を含むすべての数値の明示、例えば、pH、温度、時間、濃度および分子量は、必要に応じて、1.0または0.1という一定数量ずつ、あるいは+/−15%あるいは10%あるいは5%あるいは2%の変動で(+)または(−)変動する近似値である。必ずしも明示的に述べられないが、すべての数値の明示は、用語「約」が先行すると理解されるべきである。必ずしも明示的に述べられないが、本明細書中に記載される試薬は、単に例示的なものであることおよびそのような試薬の等価物が当該分野で公知であることも理解されるべきである。
【0038】
本技術がポリペプチド、タンパク質、ポリヌクレオチドまたは抗体に関するとき、そのようなものの等価物または生物学的等価物は、明示的な列挙なしに、かつ別段意図されない限り、本技術の範囲内であると意図されると推測されるべきである。
定義
【0039】
明細書および請求項において使用されるとき、単数形「a」、「an」および「the」は、文脈が明らかに他のことを指示しない限り、複数の指示対象を含む。例えば、用語「細胞(a cell)」は、それらの混合物を含む複数の細胞を含む。
【0040】
本明細書中で使用されるとき、用語「動物」とは、例えば、哺乳動物および鳥類を含むカテゴリーである、生存している多細胞の脊椎動物のことを指す。用語「哺乳動物」は、ヒトと非ヒト哺乳動物の両方を含む。
【0041】
用語「被験体」、「宿主」、「個体」および「患者」は、ヒト被験体および動物被験体、例えば、ヒト、動物、非ヒト霊長類、イヌ、ネコ、ヒツジ、マウス、ウマおよびウシのことを指すために本明細書中で交換可能に使用される。いくつかの実施形態において、被験体は、ヒトである。
【0042】
本明細書中で使用されるとき、用語「抗体」とは、免疫グロブリンまたは免疫グロブリン様分子のことを集合的に指し、例として、IgA、IgD、IgE、IgGおよびIgM、それらの組み合わせ、および任意の脊椎動物、例えば、哺乳動物(例えば、ヒト、ヤギ、ウサギおよびマウス)ならびに非哺乳動物種(例えば、サメ免疫グロブリン)における免疫応答において産生される同様の分子が挙げられるが、これらに限定されない。別段明確に示されない限り、用語「抗体」は、目的の分子(または高度に類似した目的の分子の群)に特異的に結合するインタクトな免疫グロブリンおよび「抗体フラグメント」または「抗原結合フラグメント」を、他の分子への結合を実質的に排除する程度に含む(例えば、生物学的サンプル中の他の分子に対する結合定数よりも少なくとも10
3M
−1高い、少なくとも10
4M
−1高いまたは少なくとも10
5M
−1高い、目的の分子に対する結合定数を有する抗体および抗体フラグメント)。用語「抗体」は、遺伝的に操作された形態、例えば、キメラ抗体(例えば、ヒト化マウス抗体)、ヘテロ結合体抗体(例えば、二重特異性抗体)も含む。Pierce Catalog and Handbook,1994−1995(Pierce Chemical Co.,Rockford,Ill.);Kuby,J.,Immunology,3
rd Ed.,W.H.Freeman & Co.,New York,1997も参照のこと。
【0043】
抗体構造に関して、免疫グロブリンは、ジスルフィド結合によって相互接続された重(H)鎖および軽(L)鎖を有する。軽鎖には、2つのタイプ、ラムダ(λ)およびカッパー(κ)がある。抗体分子の機能活性を決定する5つの主要な重鎖クラス(またはアイソタイプ)がある:IgM、IgD、IgG、IgAおよびIgE。重鎖および軽鎖の各々は、定常領域および可変領域を含む(これらの領域は、「ドメイン」としても知られる)。重鎖可変領域および軽鎖可変領域は一体となって抗原に特異的に結合する。軽鎖可変領域および重鎖可変領域は、「相補性決定領域」または「CDR」とも呼ばれる3つの超可変領域によって中断された「フレームワーク」領域を含む。フレームワーク領域およびCDRの範囲は、定義されている(参照により本明細書に援用される、Kabatら、Sequences of Proteins of Immunological Interest,U.S.Department of Health and Human Services,1991を参照のこと)。Kabatデータベースが、現在、オンラインで維持されている。種々の軽鎖または重鎖のフレームワーク領域の配列は、種内で比較的保存されている。抗体のフレームワーク領域、すなわち、構成している軽鎖と重鎖とが組み合わさったフレームワーク領域は、主としてβシートコンフォメーションをとり、CDRは、βシート構造を接続するループを形成し、場合によっては、βシート構造の一部を形成する。したがって、フレームワーク領域は、鎖間の非共有結合性の相互作用によってCDRを正しい向きに位置決めする骨格を形成するように作用する。
【0044】
CDRは、主に抗原のエピトープへの結合に関与する。各鎖のCDRは、通常、N末端から順にナンバリングされたCDR1、CDR2およびCDR3と称され、通常、特定のCDRが位置する鎖によって特定される。したがって、V
HCDR3は、それが見られる抗体の重鎖の可変ドメインに位置するのに対して、V
LCDR1は、それが見られる抗体の軽鎖の可変ドメイン由来のCDR1である。EGFRに結合する抗体は、特異的なV
H領域配列およびV
L領域配列を有し、ゆえに、特異的なCDR配列を有する。異なる特異性(すなわち、異なる抗原に対して異なる結合部位)を有する抗体は、異なるCDRを有する。CDRは、抗体ごとに異なるが、CDR内の限られた数のアミノ酸位置しか、抗原結合に直接関わらない。CDR内のこれらの位置は、特異性決定残基(SDR)と呼ばれる。
【0045】
本明細書中で使用されるとき、用語「抗原」とは、特定の液性免疫または細胞性免疫の生成物(例えば、抗体分子またはT細胞レセプター)によって特異的に結合され得る化合物、組成物または物質のことを指す。抗原は、任意のタイプの分子であり得、それらとしては、例えば、ハプテン、単純な中間代謝産物、糖(例えば、オリゴ糖)、脂質およびホルモン、ならびに高分子、例えば、複合糖質(例えば、多糖類)、リン脂質およびタンパク質が挙げられる。抗原の通常のカテゴリーとしては、ウイルス抗原、細菌抗原、真菌抗原、原虫および他の寄生生物の抗原、腫瘍抗原、自己免疫疾患、アレルギーおよび移植片拒絶反応に関わる抗原、トキシン、ならびに他の多岐にわたる抗原が挙げられるが、これらに限定されない。
【0046】
本明細書中で使用されるとき、用語「抗原結合ドメイン」とは、抗原標的に特異的に結合し得る任意のタンパク質ドメインまたはポリペプチドドメインのことを指す。
【0047】
用語「キメラ抗原レセプター」(CAR)は、本明細書中で使用されるとき、抗原に結合することができる細胞外ドメイン、その細胞外ドメインが由来するポリペプチドと異なるポリペプチドに由来する膜貫通ドメインおよび少なくとも1つの細胞内ドメインを含む融合タンパク質のことを指す。「キメラ抗原レセプター(CAR)」は、時折、「キメラレセプター」、「Tボディ」または「キメラ免疫レセプター(CIR)」と呼ばれる。「抗原に結合することができる細胞外ドメイン」は、ある特定の抗原に結合し得る任意のオリゴペプチドまたはポリペプチドを意味する。「細胞内ドメイン」は、細胞において生物学的プロセスの活性化または阻害を引き起こすようにシグナルを伝達するドメインとして機能すると知られている任意のオリゴペプチドまたはポリペプチドを意味する。「膜貫通ドメイン」は、細胞外ドメインとシグナル伝達ドメインとを連結するように機能し得る、細胞膜にまたがると知られている任意のオリゴペプチドまたはポリペプチドを意味する。キメラ抗原レセプターは、細胞外ドメインと膜貫通ドメインとの間のリンカーとして働く「ヒンジドメイン」を必要に応じて含み得る。各ドメインの構成要素をコードする非限定的な例示的なポリヌクレオチド配列が、本明細書中に開示され、例えば、以下である:
ヒンジドメイン:IgG1重鎖ヒンジ配列:
【化1】
膜貫通ドメイン:CD28膜貫通領域:
【化2】
細胞内ドメイン:4−1BB共刺激シグナル伝達領域:
【化3】
細胞内ドメイン:CD28共刺激シグナル伝達領域:
【化4】
細胞内ドメイン:CD3ゼータシグナル伝達領域:
【化5】
【0048】
例示的な各ドメイン構成要素のさらなる実施形態は、上に開示された核酸配列によってコードされるタンパク質と少なくとも70%あるいは少なくとも80%のアミノ酸配列同一性、好ましくは、90%の配列同一性、より好ましくは、少なくとも95%の配列同一性を共有する、類似の生物学的機能を有する他のタンパク質を含む。さらに、そのようなドメインの非限定的な例が、本明細書中に提供される。
【0049】
頭字語「EGFR」は、上皮成長因子レセプターを表す。EGFRは、ErbB−1およびHER1としても知られている。EGFRは、細胞表面レセプターの上皮成長因子ファミリーの細胞表面レセプターである。用語「EGFR」とは、この名称に関連する特定のタンパク質フラグメント、および本明細書中に開示されるようなEGFRの任意のアイソフォームと少なくとも70%あるいは少なくとも80%のアミノ酸配列同一性、好ましくは、90%の配列同一性、より好ましくは、少なくとも95%のアミノ酸配列同一性を共有する、類似の生物学的機能を有する他の任意の分子のことも指す。アイソフォーム1は、基準の(canoncial)配列である;ゆえに、以下のすべての位置的情報は、下記に開示されるアミノ酸配列について言及している。
【0050】
EGFRアイソフォーム1,Uniprot P00533−1:
【化6】
【0051】
結合部位としては、745および855位が挙げられるがこれらに限定されない;活性部位としては、837位が挙げられるがこれに限定されない;他の目的の部位としては、1016位が挙げられるがこれに限定されない。EGFRアイソフォーム2(Uniprot P00533−2)は、404〜405位にFLからLSへの置換を有し、406〜1210位の領域を欠失している。EGFRアイソフォーム4(Uniprot P00533−4)は、628位にCからSへの置換を有し、629〜1210位の領域を欠失している。EGFRアイソフォーム3(Uniprot P00533−3)は、下記の配列に基づくと、628〜705位が異なり、706〜1210位の領域を欠失している。
【0052】
EGFRアイソフォーム3,Uniprot P00533−3:
【化7】
【化8】
【0053】
EGFRvIIIは、多形神経膠芽腫(GB)を有するかなりの比率の患者において発現されると報告されているEGFRの変異型である。Ganら、205350−5370は、この変異型が、他の腫瘍においても同様に発現されると報告している。用語「変異EGFR」とは、EGFRvIIIまたはこの名称に関連する特定のタンパク質フラグメント、および本明細書中に示されるようなEGFRvIIIまたは本明細書中でさらに定義されるようなその等価物と少なくとも70%あるいは少なくとも80%のアミノ酸配列同一性、好ましくは、90%の配列同一性、より好ましくは、少なくとも95%のアミノ酸配列同一性を共有する、類似の生物学的機能を有する他の任意の分子のことを指し得る。
【0054】
EGFRvIII,Uniprot P00533[30−297]:
【化9】
【化10】
【0055】
用語「変異EGFR」とは、1つまたはそれを超える以下の変異を有するバリアントを含むがこれらに限定されない、EGFRの任意のアイソフォームの天然バリアントのことを指し得る:98位におけるRからQ、266位におけるPからR、428位におけるGからD、521位におけるRからK、674位におけるVからI、709位におけるEからA、709位におけるEからG、709位におけるEからK、719位におけるGからA、719位におけるGからC、719位におけるGからD、719位におけるGからS、724位におけるGからS、734位におけるEからK、746〜752位におけるELREATSからD、746〜751位におけるELREATからA、746〜750位の欠失、746位の欠失、747〜751位の欠失、747〜749位の欠失、747位におけるLからF、748位におけるRからP、752〜759位の欠失、768位におけるSからI、769位におけるVからM、787位におけるQからR、790位におけるTからM、833位におけるLからV、834位におけるVからL、835位におけるHからL、838位におけるLからV、858位におけるLからM、858位におけるLからR、861位におけるLからQ、873位におけるGからE、962位におけるRからG、988位におけるHからP、1034位におけるLからR、1210位におけるAからVおよび/または任意の1つの特定の位置における異なるアミノ酸の置換もしくは欠失。
【0056】
「組成物」は、一般に、活性な作用物質、例えば、化合物または組成物と、天然に存在するまたは天然に存在しない不活性な(例えば、検出可能な作用物質または標識)または活性なキャリア(例えば、アジュバント、希釈剤、結合剤、安定剤、緩衝剤、塩、親油性溶媒、保存剤、アジュバントなど)との組み合わせを意図しており、薬学的に許容され得るキャリアを含む。また、キャリアには、薬学的賦形剤および添加物であるタンパク質、ペプチド、アミノ酸、脂質および炭水化物(例えば、糖(単糖類、二糖類、三糖類、四糖類およびオリゴ糖を含む);誘導体化糖(例えば、アルジトール、アルドン酸、エステル化糖など);および多糖類または糖ポリマー)が含まれ、これらは、単独でまたは組み合わせて存在し得、単独でまたは組み合わせて1〜99.99重量%または容量%を構成する。例示的なタンパク質賦形剤としては、血清アルブミン、例えば、ヒト血清アルブミン(HSA)、組換えヒトアルブミン(rHA)、ゼラチン、カゼインなどが挙げられる。緩衝能としても機能し得る代表的なアミノ酸/抗体構成要素としては、アラニン、アルギニン、グリシン、アルギニン、ベタイン、ヒスチジン、グルタミン酸、アスパラギン酸、システイン、リジン、ロイシン、イソロイシン、バリン、メチオニン、フェニルアラニン、アスパルテームなどが挙げられる。炭水化物賦形剤も、本技術の範囲内と意図されており、それらの例としては、単糖類(例えば、フルクトース、マルトース、ガラクトース、グルコース、D−マンノース、ソルボースなど);二糖類(例えば、ラクトース、スクロース、トレハロース、セロビオースなど);多糖類(例えば、ラフィノース、メレチトース、マルトデキストリン、デキストラン、デンプンなど);およびアルジトール(例えば、マンニトール、キシリトール、マルチトール、ラクチトール、キシリトール ソルビトール(グルシトール)およびミオイノシトール)が挙げられるがこれらに限定されない。
【0057】
用語「コンセンサス配列」とは、本明細書中で使用されるとき、複数のひと続きの配列をアラインメントすることによって決定され、それらの複数の配列の対応する各位置において優勢なアミノ酸または塩基の選択肢に相当する理想的な配列を定義する、アミノ酸配列または核酸配列のことを指す。それらの複数のひと続きの配列の配列に応じて、それらのひと続きの配列に対するコンセンサス配列は、各配列に0個、1個、数個のまたはそれより多い置換だけ異なり得る。また、それらの複数のひと続きの配列の配列に応じて、それらのひと続きの配列に対して、1つより多いコンセンサス配列が決定され得る。コンセンサス配列の生成は、集中的な数学的解析にかけられた。様々なソフトウェアプログラムを使用して、コンセンサス配列が決定され得る。
【0058】
本明細書中で使用されるとき、用語「CD8αヒンジドメイン」とは、この名称に関連する特定のタンパク質フラグメント、および本明細書中に示されるようなCD8αヒンジドメイン配列と少なくとも70%あるいは少なくとも80%のアミノ酸配列同一性、好ましくは、90%の配列同一性、より好ましくは、少なくとも95%の配列同一性を共有する、類似の生物学的機能を有する他の任意の分子のことを指す。ヒト、マウスおよび他の種のCD8αヒンジドメインの配列例は、Pinto,R.D.ら(2006)Vet.Immunol.Immunopathol.110:169−177に提供されている。CD8αヒンジドメインに関連する配列は、Pinto,R.D.ら(2006)Vet.Immunol.Immunopathol.110:169−177に提供されている。そのような配列の非限定的な例としては、以下が挙げられる:
ヒトCD8アルファヒンジドメイン、
【化11】
マウスCD8アルファヒンジドメイン、
【化12】
ネコCD8アルファヒンジドメイン、
【化13】
【0059】
本明細書中で使用されるとき、用語「CD8α膜貫通ドメイン」とは、この名称に関連する特定のタンパク質フラグメント、および本明細書中に示されるようなCD8α膜貫通ドメイン配列と少なくとも70%あるいは少なくとも80%のアミノ酸配列同一性、好ましくは、90%の配列同一性、より好ましくは、少なくとも95%の配列同一性を共有する、類似の生物学的機能を有する他の任意の分子のことを指す。ヒトT細胞表面糖タンパク質CD8アルファ鎖のアミノ酸位置183〜203(NCBI参照配列:NP_001759.3)、またはマウスT細胞表面糖タンパク質CD8アルファ鎖のアミノ酸位置197〜217(NCBI参照配列:NP_001074579.1)、およびラットT細胞表面糖タンパク質CD8アルファ鎖のアミノ酸位置190〜210(NCBI参照配列:NP_113726.1)に関連するフラグメント配列が、CD8α膜貫通ドメインのさらなる配列例を提供する。列挙された各NCBIに関連する配列は、以下のとおり提供される:
【化14】
【0060】
本明細書中で使用されるとき、用語「4−1BB共刺激シグナル伝達領域」とは、この名称に関連する特定のタンパク質フラグメント、および本明細書中に示されるような4−1BB共刺激シグナル伝達領域配列と少なくとも70%あるいは少なくとも80%のアミノ酸配列同一性、好ましくは、90%の配列同一性、より好ましくは、少なくとも95%の配列同一性を共有する、類似の生物学的機能を有する他の任意の分子のことを指す。4−1BB共刺激シグナル伝達領域の配列例は、米国特許出願公開第20130266551A1(米国特許出願第13/826,258号として出願)に提供されている。米国特許出願US13/826,258号に開示されている関連の4−1BB共刺激シグナル伝達領域の配列は、以下のとおり開示されている:
4−1BB共刺激シグナル伝達領域:
【化15】
【0061】
本明細書中で使用されるとき、用語「CD28膜貫通ドメイン」とは、この名称に関連する特定のタンパク質フラグメント、および本明細書中に示されるようなCD28膜貫通ドメイン配列と少なくとも70%あるいは少なくとも80%のアミノ酸配列同一性、少なくとも90%の配列同一性、あるいは少なくとも95%の配列同一性を共有する、類似の生物学的機能を有する他の任意の分子のことを指す。GenBankアクセッション番号:XM_006712862.2およびXM_009444056.1に関連するフラグメント配列は、CD28膜貫通ドメインのさらなる非限定的な配列例を提供する。列挙された各アクセッション番号に関連する配列は、本明細書中の上で言及された配列のとおり提供される。
【0062】
本明細書中で使用されるとき、用語「CD28共刺激シグナル伝達領域」とは、この名称に関連する特定のタンパク質フラグメント、および本明細書中に示されるCD28共刺激シグナル伝達領域配列と少なくとも70%あるいは少なくとも80%のアミノ酸配列同一性、好ましくは、90%の配列同一性、より好ましくは、少なくとも95%の配列同一性を共有する、類似の生物学的機能を有する他の任意の分子のことを指す。CD28共刺激領域は、膜貫通ドメインおよび細胞内ドメインを含む。CD28共刺激シグナル伝達ドメインの配列例は、米国特許第5,686,281号;Geiger,T.L.ら、Blood 98:2364−2371(2001);Hombach,A.ら、J Immunol 167:6123−6131(2001);Maher,J.ら、Nat Biotechnol 20:70−75(2002);Haynes,N.M.ら、J Immunol 169:5780−5786(2002);Haynes,N.M.ら、Blood 100:3155−3163(2002)に提供されている。非限定的な例としては、下記のCD28配列の残基114〜220:
【化16】
およびその等価物が挙げられる。
【0063】
本明細書中で使用されるとき、用語「ICOS共刺激シグナル伝達領域」とは、この名称に関連する特定のタンパク質フラグメント、および本明細書中に示されるようなICOS共刺激シグナル伝達領域配列と少なくとも70%あるいは少なくとも80%のアミノ酸配列同一性、好ましくは、90%の配列同一性、より好ましくは、少なくとも95%の配列同一性を共有する、類似の生物学的機能を有する他の任意の分子のことを指す。ICOS共刺激シグナル伝達領域の非限定的な配列例は、米国特許出願公開第2015/0017141A1号に提供されており、例示的なポリヌクレオチド配列を下記に提供する。
ICOS共刺激シグナル伝達領域:
【化17】
【0064】
本明細書中で使用されるとき、用語「OX40共刺激シグナル伝達領域」とは、この名称に関連する特定のタンパク質フラグメント、および本明細書中に示されるようなOX40共刺激シグナル伝達領域配列と少なくとも70%あるいは少なくとも80%のアミノ酸配列同一性、あるいは90%の配列同一性、あるいは少なくとも95%の配列同一性を共有する、類似の生物学的機能を有する他の任意の分子のことを指す。OX40共刺激シグナル伝達領域の非限定的な配列例は、米国特許出願公開第2012/20148552A1号に開示されており、下記に提供される例示的な配列を含む。
OX40共刺激シグナル伝達領域、配列番号72:
【化18】
【0065】
本明細書中で使用されるとき、用語「CD3ゼータシグナル伝達ドメイン」とは、この名称に関連する特定のタンパク質フラグメント、および本明細書中に示されるようなCD3ゼータシグナル伝達ドメイン配列と少なくとも70%あるいは少なくとも80%のアミノ酸配列同一性、好ましくは、90%の配列同一性、より好ましくは、少なくとも95%の配列同一性を共有する、類似の生物学的機能を有する他の任意の分子のことを指す。CD3ゼータシグナル伝達ドメインの配列例は、米国特許出願US13/826,258号に提供されている。CD3ゼータシグナル伝達ドメインに関連する配列は、以下のとおり列挙される:
【化19】
【0066】
本明細書中で使用されるとき、用語「B細胞」とは、適応免疫系の液性免疫におけるリンパ球の1種のことを指す。B細胞は主として、抗原相互作用による活性化後に、抗体を産生する、抗原提示細胞として働く、サイトカインを放出する、および記憶B細胞を発生させる働きをする。B細胞は、細胞表面上のB細胞レセプターの存在によって、T細胞などの他のリンパ球と区別される。B細胞は、単離され得るか、または商業的に入手可能な供給源から入手され得る。商業的に入手可能なB細胞株の非限定的な例としては、株AHH−1(ATCC(登録商標)CRL−8146
TM)、BC−1(ATCC(登録商標)CRL−2230
TM)、BC−2(ATCC(登録商標)CRL−2231
TM)、BC−3(ATCC(登録商標)CRL−2277
TM)、CA46(ATCC(登録商標)CRL−1648
TM)、DG−75[D.G.−75](ATCC(登録商標)CRL−2625
TM)、DS−1(ATCC(登録商標)CRL−11102
TM)、EB−3[EB3](ATCC(登録商標)CCL−85
TM)、Z−138(ATCC #CRL−3001)、DB(ATCC CRL−2289)、Toledo(ATCC CRL−2631)、Pfiffer(ATCC CRL−2632)、SR(ATCC CRL−2262)、JM−1(ATCC CRL−10421)、NFS−5 C−1(ATCC CRL−1693);NFS−70 C10(ATCC CRL−1694)、NFS−25 C−3(ATCC CRL−1695)およびSUP−B15(ATCC CRL−1929)が挙げられる。さらなる例としては、未分化大細胞リンパ腫に由来する細胞株、例えば、DEL、DL−40、FE−PD、JB6、Karpas299、Ki−JK、Mac−2A Ply1、SR−786、SU−DHL−1、−2、−4、−5、−6、−7、−8、−9、−10および−16、DOHH−2、NU−DHL−1、U−937、Granda519、USC−DHL−1、RL;ホジキンリンパ腫に由来する細胞株、例えば、DEV、HD−70、HDLM−2、HD−MyZ、HKB−1、KM−H2、L428、L540、L1236、SBH−1、SUP−HD1、SU/RH−HD−lが挙げられるがこれらに限定されない。そのような商業的に入手可能な細胞株の非限定的な例示的な供給源としては、American Type Culture CollectionすなわちATCC(www.atcc.org/)およびGerman Collection of Microorganisms and Cell Cultures(https://www.dsmz.de/)が挙げられる。
【0067】
本明細書中で使用されるとき、用語「T細胞」とは、胸腺において成熟するリンパ球の1種のことを指す。T細胞は、細胞性免疫において重要な役割を果たし、細胞表面上のT細胞レセプターの存在によってB細胞などの他のリンパ球と区別される。T細胞は、単離され得るか、または商業的に入手可能な供給源から入手され得る。「T細胞」には、Tヘルパー細胞(CD4+細胞)、細胞傷害性T細胞(CD8+細胞)、ナチュラルキラーT細胞、制御性T細胞(Treg)およびガンマ−デルタT細胞をはじめとした、CD3を発現しているすべてのタイプの免疫細胞が含まれる。「細胞傷害性細胞」には、CD8+T細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞および好中球が含まれ、これらの細胞は、細胞傷害性の応答を媒介することができる。商業的に入手可能なT細胞株の非限定的な例としては、株BCL2(AAA)Jurkat(ATCC(登録商標)CRL−2902
TM)、BCL2(S70A)Jurkat(ATCC(登録商標)CRL−2900
TM)、BCL2(S87A)Jurkat(ATCC(登録商標)CRL−2901
TM)、BCL2 Jurkat(ATCC(登録商標)CRL−2899
TM)、Neo Jurkat(ATCC(登録商標)CRL−2898
TM)、TALL−104細胞傷害性ヒトT細胞株(ATCC#CRL−11386)が挙げられる。さらなる例としては、成熟したT細胞株、例えば、Deglis、EBT−8、HPB−MLp−W、HUT78、HUT102、Karpas384、Ki225、My−La、Se−Ax、SKW−3、SMZ−1およびT34;および未熟なT細胞株、例えば、ALL−SIL、Be13、CCRF−CEM、CML−T1、DND−41、DU.528、EU−9、HD−Mar、HPB−ALL、H−SB2、HT−1、JK−T1、Jurkat、Karpas45、KE−37、KOPT−K1、K−T1、L−KAW、Loucy、MAT、MOLT−1、MOLT3、MOLT−4、MOLT13、MOLT−16、MT−1、MT−ALL、P12/Ichikawa、Peer、PER0117、PER−255、PF−382、PFI−285、RPMI−8402、ST−4、SUP−T1〜T14、TALL−1、TALL−101、TALL−103/2、TALL−104、TALL−105、TALL−106、TALL−107、TALL−197、TK−6、TLBR−1、−2、−3および−4、CCRF−HSB−2(CCL−120.1)、J.RT3−T3.5(ATCC TIB−153)、J45.01(ATCC CRL−1990)、J.CaM1.6(ATCC CRL−2063)、RS4;11(ATCC CRL−1873)、CCRF−CEM(ATCC CRM−CCL−119);および皮膚T細胞性リンパ腫株、例えば、HuT78(ATCC CRM−TIB−161)、MJ[G11](ATCC CRL−8294)、HuT102(ATCC TIB−162)が挙げられるがこれらに限定されない。K562赤白血病、THP−1単球性白血病、U937リンパ腫、HEL赤白血病、HL60白血病、HMC−1白血病、KG−1白血病、U266ミエローマなどの他の白血病およびリンパ腫に由来する細胞株と同様に、REH、NALL−1、KM−3、L92−221を含むがこれらに限定されないヌル白血病細胞株も、免疫細胞の別の商業的に入手可能な起源である。そのような商業的に入手可能な細胞株の非限定的な例示的な供給源としては、American Type Culture CollectionすなわちATCC(http://www.atcc.org/)およびGerman Collection of Microorganisms and Cell Cultures(https://www.dsmz.de/)が挙げられる。
【0068】
本明細書中で使用されるとき、ナチュラルキラー細胞としても知られる用語「NK細胞」とは、骨髄を起源とし、自然免疫系において決定的な役割を果たすリンパ球の1種のことを指す。NK細胞は、抗体および細胞表面上の主要組織適合遺伝子複合体の非存在下でさえも、ウイルス感染細胞、腫瘍細胞または他のストレスを受けた細胞に対して迅速な免疫応答をもたらす。NK−92(ATCC,CRL−2407)およびNKL(Robertsonら(1996)24(3):406−414に記載されている)が、NK細胞の具体例である。NK細胞は、単離され得るか、または商業的に入手可能な供給源から入手され得る。市販のNK細胞株の非限定的な例としては、株NK−92(ATCC(登録商標)CRL−2407
TM)、NK−92MI(ATCC(登録商標)CRL−2408
TM)が挙げられる。さらなる例としては、NK株HANK1、KHYG−1、NKL、NK−YS、NOI−90およびYTが挙げられるがこれらに限定されない。そのような商業的に入手可能な細胞株の非限定的な例示的な供給源としては、American Type Culture CollectionすなわちATCC(http://www.atcc.org/)およびGerman Collection of Microorganisms and Cell Cultures(https://www.dsmz.de/)が挙げられる。
【0069】
本明細書中で使用されるとき、用語「核酸配列」および「ポリヌクレオチド」は、任意の長さの多量体型のリボヌクレオチドまたはデオキシリボヌクレオチドのいずれかのヌクレオチドのことを指すために交換可能に使用される。したがって、この用語には、一本鎖、二本鎖または多重鎖のDNAまたはRNA、ゲノムDNA、cDNA、DNA−RNAハイブリッド、あるいはプリン塩基およびピリミジン塩基あるいは他の天然の、化学的もしくは生化学的に改変された、非天然のまたは誘導体化されたヌクレオチド塩基を含むポリマーが含まれるが、これらに限定されない。
【0070】
用語「コードする」とは、この用語が核酸配列に適用されるとき、天然の状態であっても、当業者に周知の方法によって操作されたときであっても、ポリペプチドを「コードする」と言われるポリヌクレオチドであって、転写および/または翻訳されてポリペプチドおよび/またはそのフラグメントに対するmRNAを生成し得るポリヌクレオチドのことを指す。アンチセンス鎖は、そのような核酸の相補鎖であり、コード配列は、それから推定され得る。
【0071】
本明細書中で使用されるとき、シグナルペプチドまたはシグナルポリペプチドという用語は、新たに合成された分泌ポリペプチドもしくは分泌タンパク質または膜ポリペプチドもしくは膜タンパク質の通常はN末端に存在するアミノ酸配列を意図している。それは、ポリペプチドに、細胞膜を横断するようにまたは細胞膜に入るように指示するように働き、その後、除去される。そのようなものの例は、当該分野で周知である。非限定的な例は、米国特許第8,853,381号および同第5,958,736号に記載されているものである。
【0072】
本明細書中で使用されるとき、用語「ベクター」とは、種々の宿主間を移動するようにデザインされた(deigned)核酸構築物のことを指し、それらとしては、プラスミド、ウイルス、コスミド、ファージ、BAC、YACなどが挙げられるがこれらに限定されない。いくつかの実施形態において、プラスミドベクターは、商業的に入手可能なベクターから調製され得る。他の実施形態において、ウイルスベクターは、当該分野で公知の手法に従って、バキュロウイルス、レトロウイルス、アデノウイルス、AAVなどから作製され得る。1つの実施形態において、ウイルスベクターは、レンチウイルスベクターである。
【0073】
用語「プロモーター」とは、本明細書中で使用されるとき、遺伝子などのコード配列の発現を制御する任意の配列のことを指す。プロモーターは、例えば、構成性、誘導性、抑制性または組織特異的であり得る。「プロモーター」は、転写の開始および速度を制御するポリヌクレオチド配列の領域である調節配列である。プロモーターは、RNAポリメラーゼおよび他の転写因子などの調節タンパク質および調節分子が結合し得る遺伝的エレメントを含み得る。
【0074】
本明細書中で使用されるとき、用語「単離された細胞」とは、一般に、組織の他の細胞から実質的に分離された細胞のことを指す。「免疫細胞」には、例えば、骨髄において産生される造血幹細胞(HSC)に由来する白血球(white blood cells)(白血球(leukocytes))、リンパ球(T細胞、B細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞)および骨髄由来細胞(好中球、好酸球、好塩基球、単球、マクロファージ、樹状細胞)が含まれる。「T細胞」には、Tヘルパー細胞(CD4+細胞)、細胞傷害性T細胞(CD8+細胞)、ナチュラルキラーT細胞、制御性T細胞(Treg)およびガンマ−デルタT細胞をはじめとした、CD3を発現しているすべてのタイプの免疫細胞が含まれる。「細胞傷害性細胞」には、CD8+T細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞および好中球が含まれ、これらの細胞は、細胞傷害性の応答を媒介することができる。
【0075】
本明細書中で使用されるとき、用語「単離された細胞」とは、一般に、組織の他の細胞から実質的に分離された細胞のことを指す。この用語には、原核細胞および真核細胞が含まれる。
【0076】
「免疫細胞」には、例えば、骨髄において産生される造血幹細胞(HSC)に由来する白血球(white blood cells)(白血球(leukocytes))、リンパ球(T細胞、B細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞)および骨髄由来細胞(好中球、好酸球、好塩基球、単球、マクロファージ、樹状細胞)が含まれる。「T細胞」には、Tヘルパー細胞(CD4+細胞)、細胞傷害性T細胞(CD8+細胞)、ナチュラルキラーT細胞、制御性T細胞(Treg)およびガンマ−デルタT細胞をはじめとした、CD3を発現しているすべてのタイプの免疫細胞が含まれる。「細胞傷害性細胞」には、CD8+T細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞および好中球が含まれ、これらの細胞は、細胞傷害性の応答を媒介することができる。
【0077】
用語「形質導入する」または「形質導入」とは、この用語がキメラ抗原レセプター細胞の作製に適用されるとき、外来ヌクレオチド配列を細胞に導入するプロセスのことを指す。いくつかの実施形態において、この形質導入は、ベクターを介して行われる。
【0078】
本明細書中で使用されるとき、細胞に関する用語「自家」とは、単離され、再度同じ被験体(レシピエントまたは宿主)に注入される細胞のことを指す。「同種異系」とは、非自家の細胞のことを指す。
【0079】
「有効量」または「効果的な量」とは、哺乳動物または他の被験体を処置するために投与されたとき、疾患に対してそのような処置をもたらすのに十分である、ある作用物質の量または2つもしくはそれを超える作用物質の合計量のことを指す。「有効量」は、そ(れら)の作用物質、疾患およびその重症度、ならびに処置される被験体の年齢、体重などに応じて変動する。
【0080】
本明細書中で使用されるとき、用語「癌」とは、他の身体部分に浸潤するまたは広がる潜在能力を有する異常な細胞成長に関わる疾患群のいずれか1つのことを指す。癌は、被験体の身体の種々の部分に影響し得る。癌の非限定的な例としては、乳癌、卵巣癌、白血病、リンパ腫、神経膠芽腫および星状細胞腫が挙げられる。ある特定の実施形態において、脳を起源とする癌および/または他の身体部分から脳に生じる癌の転移が、本開示に関連する。例えば、「神経膠芽腫」(GB)は、アストロサイトから生じる高度に悪性の腫瘍である;これは、細胞の急速な増殖および血管新生が原因であると推測される。「固形腫瘍」は、嚢腫または液体の領域を通常含まない異常な組織の塊である。固形腫瘍は、良性または悪性であり得る。種々のタイプの固形腫瘍が、それらを形成する細胞のタイプにちなんで命名されている。固形腫瘍の例としては、肉腫、癌腫およびリンパ腫が挙げられる。
【0081】
本明細書中で使用されるとき、用語「含む」は、組成物および方法が、列挙されるエレメントを含み、他のものを排除しないことを意味すると意図される。「〜から本質的になる」は、組成物および方法を定義するために使用されるとき、意図される用途での組み合わせに対して、任意の本質的に重要な他のエレメントを排除することを意味するものとする。例えば、本明細書中で定義されるようなエレメントから本質的になる組成物は、単離方法および精製方法由来の微量の夾雑物および薬学的に許容され得るキャリア(例えば、リン酸緩衝食塩水、保存剤など)を排除しないであろう。「〜からなる」は、微量元素より多い他の成分を排除することおよび本明細書中に開示される組成物を投与するための実質的な方法工程を排除することを意味するものとする。これらの各移行語によって定義される態様は、本開示の範囲内である。
【0082】
本明細書中で使用されるとき、用語「検出可能なマーカー」とは、検出可能なシグナルを直接または間接的に生成することができる少なくとも1つのマーカーのことを指す。このマーカーの非網羅的リストとしては、例えば、比色、蛍光、ルミネセンス(例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、β−ガラクトシダーゼ、グルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼ)、発色団(例えば、蛍光色素、発光色素)、電子顕微鏡法または電気的特性(例えば、導電率、アンペロメトリー、ボルタンメトリー、インピーダンス)によって検出される電子密度を有する基、検出可能な基(例えば、物理的特性および/または化学的特性の検出可能な改変を誘導するのに十分なサイズの分子を有するもの)によって検出可能なシグナルを生成する酵素が挙げられ、そのような検出は、光学的方法(例えば、回折、表面プラズモン共鳴、表面変化(surface variation)、接触角変化)または物理的方法(例えば、原子間力分光法、トンネル効果)または放射性分子(例えば、
32P、
35Sまたは
125I)によって達成され得る。
【0083】
本明細書中で使用されるとき、用語「精製マーカー」とは、精製または識別に有用な少なくとも1つのマーカーのことを指す。このマーカーの非網羅的リストとしては、His、lacZ、GST、マルトース結合タンパク質、NusA、BCCP、c−myc、CaM、FLAG、GFP、YFP、cherry、チオレドキシン、ポリ(NANP)、V5、Snap、HA、キチン結合タンパク質、Softag1、Softag3、StrepまたはS−タンパク質が挙げられる。好適な直接的または間接的な蛍光マーカーとしては、FLAG、GFP、YFP、RFP、dTomato、cherry、Cy3、Cy5、Cy5.5、Cy7、DNP、AMCA、ビオチン、ジゴキシゲニン、Tamra、テキサスレッド、ローダミン、Alexa fluor、FITC、TRITCまたは他の任意の蛍光色素もしくはハプテンが挙げられる。
【0084】
本明細書中で使用されるとき、用語「発現」とは、ポリヌクレオチドがmRNAに転写されるプロセス、および/または転写されたmRNAが、その後、ペプチド、ポリペプチドもしくはタンパク質に翻訳されるプロセスのことを指す。ポリヌクレオチドが、ゲノムDNAに由来する場合、発現は、真核細胞におけるmRNAのスプライシングを含み得る。遺伝子の発現レベルが、細胞サンプル中または組織サンプル中のmRNAまたはタンパク質の量を計測することによって測定され得る。1つの態様では、1つのサンプル由来のある遺伝子の発現レベルは、コントロールサンプルまたは参照サンプル由来のその遺伝子の発現レベルと直接比較され得る。別の態様では、1つのサンプル由来のある遺伝子の発現レベルは、化合物を投与した後の同じサンプル由来のその遺伝子の発現レベルと直接比較され得る。
【0085】
本明細書中で使用されるとき、「相同性」もしくは「同一」、パーセント「同一性」または「類似性」は、2つまたはそれを超える核酸配列またはポリペプチド配列の文脈において使用されるとき、同じである2つもしくはそれを超える配列もしくは部分配列について言及しているか、または特定の領域にわたって特定のパーセンテージのヌクレオチドもしくはアミノ酸残基が同じである、例えば、少なくとも60%の同一性、好ましくは、少なくとも65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくはそれを超える同一性を有する、2つもしくはそれを超える配列もしくは部分配列について言及している(例えば、本明細書中に記載される抗体をコードするヌクレオチド配列または本明細書中に記載される抗体のアミノ酸配列)。相同性は、比較目的でアラインメントされ得る各配列における位置を比較することによって決定され得る。比較される配列におけるある位置が、同じ塩基またはアミノ酸によって占められているとき、それらの分子は、その位置において相同である。配列間の相同性の程度は、配列が共有する一致の数または相同な位置の数の関数である。アラインメントおよびパーセント相同性または配列同一性は、当該分野で公知のソフトウェアプログラム、例えば、Current Protocols in Molecular Biology(Ausubelら編、1987)Supplement 30,section 7.7.18,Table 7.7.1に記載されているものを用いて決定され得る。好ましくは、デフォルトのパラメータが、アラインメントに使用される。好ましいアラインメントプログラムは、デフォルトのパラメータを用いるBLASTである。特に、好ましいプログラムは、以下のデフォルトのパラメータを用いるBLASTNおよびBLASTPである:遺伝暗号=標準;フィルター=なし;鎖=両方;カットオフ=60;期待値=10;行列=BLOSUM62;説明=50配列;選別=高スコア;データベース=非冗長、GenBank+EMBL+DDBJ+PDB+GenBank CDS翻訳+SwissProtein+SPupdate+PIR。これらのプログラムの詳細は、以下のインターネットアドレス:ncbi.nlm.nih.gov/cgi−bin/BLASTに見られる。用語「相同性」または「同一」、パーセント「同一性」または「類似性」は、試験配列の相補鎖にも言及するか、または試験配列の相補鎖にも適用され得る。それらの用語は、欠失および/または付加を有する配列ならびに置換を有する配列も含む。本明細書中に記載されるように、好ましいアルゴリズムは、ギャップなどを説明し得る。好ましくは、少なくとも約25アミノ酸長もしくはヌクレオチド長の領域にわたって、またはより好ましくは少なくとも50〜100アミノ酸長もしくはヌクレオチド長の領域にわたって、同一性が存在する。「無関係な」または「非相同」配列は、本明細書中に開示される配列のうちの1つと40%未満の同一性あるいは25%未満の同一性を共有する。
【0086】
句「一次」または「二次」または「三次」とは、患者が受ける処置の順序のことを指す。一次治療レジメンは、最初に行う処置であるのに対して、二次または三次治療は、それぞれ一次治療の後または二次治療の後に行われる。National Cancer Instituteは、一次治療を「ある疾患または症状に対する最初の処置」と定義している。癌を有する患者では、主要な処置は、手術、化学療法、放射線療法またはこれらの治療の組み合わせであり得る。一次治療は、当業者には「主な治療および主な処置」とも称されている。2008年5月1日に最後に訪れたNational Cancer Instituteのウェブサイトwww.cancer.govを参照のこと。一般的には、ある患者が一次治療に対してポジティブな臨床反応もしくは亜臨床(sub−clinical)反応を示さなかったかまたは一次治療が停止されたことを理由に、その後、その患者には化学療法レジメンが行われる。
【0087】
1つの態様において、抗体またはそのフラグメントの「等価物」または「生物学的等価物」という用語は、ELISAまたは他の好適な方法によって測定される、抗体がそのエピトープタンパク質またはそのフラグメントに選択的に結合する能力を意味する。生物学的に等価な抗体としては、参照抗体と同じエピトープに結合する、抗体、ペプチド、抗体フラグメント、抗体バリアント、抗体誘導体および抗体模倣物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0088】
別段意図されない限り、本開示が、ポリペプチド、タンパク質、ポリヌクレオチドまたは抗体に関するとき、そのようなものの等価物または生物学的等価物は、本開示の範囲内であると意図されることが、明示的な詳説なしに推測されるべきである。本明細書中で使用されるとき、用語「その生物学的等価物」は、参照タンパク質、抗体、ポリペプチドまたは核酸に言及しているとき、「その等価物」と同義であると意図されており、所望の構造または機能性をなおも維持しつつ、最小の相同性を有するものを意図している。明確に本明細書中に列挙されない限り、本明細書中に言及される任意のポリヌクレオチド、ポリペプチドまたはタンパク質は、それらの等価物も含むと企図される。例えば、ある等価物は、少なくとも約70%の相同性もしくは同一性または少なくとも80%の相同性もしくは同一性、あるいは少なくとも約85%あるいは少なくとも約90%あるいは少なくとも約95%あるいは98%のパーセント相同性または同一性を意図し、参照タンパク質、ポリペプチドまたは核酸と実質的に等価な生物学的活性を示す。あるいは、ポリヌクレオチドについて言及しているとき、その等価物は、ストリンジェントな条件下において参照ポリヌクレオチドまたはその相補鎖にハイブリダイズするポリヌクレオチドである。
【0089】
別の配列に対してある特定のパーセンテージ(例えば、80%、85%、90%または95%)の「配列同一性」を有するポリヌクレオチドまたはポリヌクレオチド領域(またはポリペプチドもしくはポリペプチド領域)は、アラインメントされたとき、そのパーセンテージの塩基(またはアミノ酸)がそれらの2つの配列を比較したとき同じであることを意味する。アラインメントおよびパーセント相同性または配列同一性は、当該分野で公知のソフトウェアプログラム、例えば、Current Protocols in Molecular Biology(Ausubelら編、1987)Supplement 30,section 7.7.18,Table 7.7.1に記載されているものを用いて決定され得る。好ましくは、デフォルトのパラメータが、アラインメントに使用される。好ましいアラインメントプログラムは、デフォルトのパラメータを用いるBLASTである。特に、好ましいプログラムは、以下のデフォルトのパラメータを用いるBLASTNおよびBLASTPである:遺伝暗号=標準;フィルター=なし;鎖=両方;カットオフ=60;期待値=10;行列=BLOSUM62;説明=50配列;選別=高スコア;データベース=非冗長、GenBank+EMBL+DDBJ+PDB+GenBank CDS翻訳+SwissProtein+SPupdate+PIR。これらのプログラムの詳細は、以下のインターネットアドレス:ncbi.nlm.nih.gov/cgi−bin/BLASTに見られる。
【0090】
「ハイブリダイゼーション」とは、1つまたはそれを超えるポリヌクレオチドが反応して、ヌクレオチド残基の塩基間の水素結合を介して安定化された複合体を形成する反応のことを指す。水素結合は、ワトソン−クリック塩基対形成、フーグスティーン結合によってまたは他の任意の配列特異的様式で生じ得る。その複合体は、二重鎖構造を形成する2本の鎖、多重鎖複合体を形成する3本またはそれを超える鎖、自己ハイブリダイズしている1本の鎖またはこれらの任意の組み合わせを含み得る。ハイブリダイゼーション反応は、PCR反応の開始などのより大きなプロセスまたはリボザイムによるポリヌクレオチドの酵素的切断における工程を構成し得る。
【0091】
ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件の例としては:約25℃〜約37℃のインキュベーション温度;約6×SSC〜約10×SSCのハイブリダイゼーション緩衝液濃度;約0%〜約25%のホルムアミド濃度;および約4×SSC〜約8×SSCの洗浄液が挙げられる。中程度のハイブリダイゼーション条件の例としては:約40℃〜約50℃のインキュベーション温度;約9×SSC〜約2×SSCの緩衝液濃度;約30%〜約50%のホルムアミド濃度;および約5×SSC〜約2×SSCの洗浄液が挙げられる。高ストリンジェンシー条件の例としては:約55℃〜約68℃のインキュベーション温度;約1×SSC〜約0.1×SSCの緩衝液濃度;約55%〜約75%のホルムアミド濃度;および約1×SSC、0.1×SSCまたは脱イオン水の洗浄液が挙げられる。一般に、ハイブリダイゼーションのインキュベーション時間は、5分〜24時間であり、1回、2回またはそれを超える洗浄工程を伴い、洗浄インキュベーション時間は、約1、2または15分である。SSCは、0.15M NaClおよび15mMクエン酸緩衝液である。他の緩衝系を用いるSSCの等価物も使用され得ると理解される。
【0092】
「腫瘍組織タイプに対応する正常細胞」とは、腫瘍組織と同じ組織タイプ由来の正常細胞のことを指す。非限定的な例は、肺腫瘍を有する患者由来の正常な肺細胞または結腸腫瘍を有する患者由来の正常な結腸細胞である。
【0093】
用語「単離された」とは、本明細書中で使用されるとき、他の材料を実質的に含まない分子または生物製剤または細胞材料のことを指す。1つの態様において、用語「単離された」とは、天然の起源に存在する他のDNAもしくはRNAまたはタンパク質もしくはポリペプチドまたは細胞もしくは細胞小器官または組織もしくは器官からそれぞれ分離された、核酸(例えば、DNAまたはRNA)またはタンパク質もしくはポリペプチド(例えば、抗体またはその誘導体)または細胞もしくは細胞小器官または組織もしくは器官のことを指す。用語「単離された」とは、組換えDNA法によって生成されるとき、細胞材料、ウイルス材料もしくは培養液を実質的に含まない核酸もしくはペプチド、または化学的に合成されるとき化学前駆体もしくは他の化学物質を実質的に含まない核酸もしくはペプチドのことも指す。さらに、「単離された核酸」は、フラグメントとしては天然に存在せず、天然の状態で見られない、核酸フラグメントを含むと意味される。用語「単離された」は、他の細胞タンパク質から単離されたポリペプチドのことを指すためにも本明細書中で使用され、精製されたポリペプチドと組換えポリペプチドの両方を包含すると意味される。用語「単離された」は、他の細胞または組織から単離された細胞または組織のことを指すためにも本明細書中で使用され、培養された細胞または組織と操作された細胞または組織の両方を包含すると意味される。
【0094】
本明細書中で使用されるとき、用語「モノクローナル抗体」とは、Bリンパ球の単一クローンまたは単一抗体の軽鎖遺伝子および重鎖遺伝子がトランスフェクトされた細胞によって産生される抗体のことを指す。モノクローナル抗体は、当業者に公知の方法によって、例えば、ミエローマ細胞と免疫脾臓細胞との融合物からハイブリッド抗体形成細胞を形成することによって、作製される。モノクローナル抗体には、ヒト化モノクローナル抗体が含まれる。
【0095】
用語「タンパク質」、「ペプチド」および「ポリペプチド」は、その最も広い意味で交換可能に使用され、2つまたはそれを超えるサブユニットアミノ酸、アミノ酸アナログまたはペプチド模倣物の化合物のことを指す。それらのサブユニットは、ペプチド結合によって連結され得る。別の態様において、サブユニットは、他の結合、例えば、エステル結合、エーテル結合などによって連結され得る。タンパク質またはペプチドは、少なくとも2つのアミノ酸を含まなければならないが、タンパク質の配列またはペプチドの配列を構成し得るアミノ酸の最大数に制限はない。本明細書中で使用されるとき、用語「アミノ酸」とは、天然アミノ酸および/または非天然アミノ酸もしくは合成アミノ酸のことを指し、それらには、グリシンおよびD光学異性体とL光学異性体の両方、アミノ酸アナログならびにペプチド模倣物が含まれる。
【0096】
用語「ポリヌクレオチド」および「オリゴヌクレオチド」は、交換可能に使用され、任意の長さの多量体型のデオキシリボヌクレオチドもしくはリボヌクレオチドのいずれかまたはそれらのアナログのヌクレオチドのことを指す。ポリヌクレオチドは、任意の3次元構造を有することができ、既知または未知の任意の機能を発揮し得る。以下は、ポリヌクレオチドの非限定的な例である:遺伝子または遺伝子フラグメント(例えば、プローブ、プライマー、ESTまたはSAGEタグ)、エキソン、イントロン、メッセンジャーRNA(mRNA)、転移RNA、リボソームRNA、RNAi、リボザイム、cDNA、組換えポリヌクレオチド、分枝状ポリヌクレオチド、プラスミド、ベクター、任意の配列の単離されたDNA、任意の配列の単離されたRNA、核酸プローブおよびプライマー。ポリヌクレオチドは、メチル化されたヌクレオチドおよびヌクレオチドアナログなどの修飾ヌクレオチドを含み得る。ヌクレオチド構造に対する修飾は、存在する場合、ポリヌクレオチドの組み立ての前または後に付与され得る。ヌクレオチドの配列は、非ヌクレオチド成分によって中断され得る。ポリヌクレオチドは、標識成分との結合体化などによって重合後にさらに修飾され得る。また、この用語は、二本鎖分子と一本鎖分子の両方のことを指す。別段特定されないかまたは要求されない限り、ポリヌクレオチドであるこの技術の任意の態様は、二本鎖型と、二本鎖型を構成すると知られているかまたは予測される2本の相補的な各一本鎖型との両方を包含する。
【0097】
本明細書中で使用されるとき、用語「精製された」は、絶対的な純度を必要とせず、むしろ、相対的な用語と意図されている。したがって、例えば、精製された核酸、ペプチド、タンパク質、生物学的複合体または他の活性な化合物は、タンパク質または他の夾雑物から全体的または部分的に単離されたものである。一般に、実質的に精製されたペプチド、タンパク質、生物学的複合体、または本開示の範囲内で使用するための他の活性な化合物は、治療的投与用の完全な薬学的製剤における、ペプチド、タンパク質、生物学的複合体または他の活性な化合物と、薬学的キャリア、賦形剤、緩衝剤、吸収促進剤、安定剤、保存剤、アジュバントまたは他の副成分(co−ingredient)との混合または製剤化の前の調製物に存在するすべての高分子種の80%超を構成する。より一般的には、ペプチド、タンパク質、生物学的複合体または他の活性な化合物は、他の製剤成分との混合の前の精製された調製物に存在するすべての高分子種の90%超、しばしば95%超になるように精製される。他の場合、精製された調製物は、本質的に均一であり得、ここで、他の高分子種は、従来の手法では検出不可能である。
【0098】
本明細書中で使用されるとき、用語「特異的結合」は、少なくとも10
−6Mの結合親和性での抗体と抗原との接触を意味する。ある特定の態様において、抗体は、少なくとも約10
−7M、好ましくは、10
−8M、10
−9M、10
−10M、10
−11Mまたは10
−12Mの親和性で結合する。
【0099】
本明細書中で使用されるとき、用語「組換えタンパク質」とは、組換えDNA法によって作製されたポリペプチドのことを指し、ここで、一般に、ポリペプチドをコードするDNAは、好適な発現ベクターに挿入され、そしてそれを用いて宿主細胞を形質転換して、異種タンパク質が生成される。
【0100】
本明細書中で使用されるとき、被験体において疾患を「処置する」または被験体における疾患の「処置」とは、(1)疾患にかかりやすい被験体または疾患の症候をまだ示していない被験体においてその症候または疾患の発生を予防すること;(2)疾患を阻害することまたはその発症を阻止すること;または(3)疾患または疾患の症候を回復させるかまたは後退させることを指す。当該分野で理解されているように、「処置」は、有益な結果または所望の結果(臨床結果を含む)を得るためのアプローチである。本技術の目的のために、有益な結果または所望の結果としては、検出可能であるか検出不可能であるかを問わず、1つまたはそれを超える症候の軽減または回復、症状(疾患を含む)の程度の低下、症状(疾患を含む)の安定した(すなわち、悪化しない)状態、症状(疾患を含む)の遅延または緩徐化、症状(疾患を含む)の進行、回復または寛解、過程および緩解(部分的であるか全体的であるかを問わない)のうちの1つまたはそれを超えるものが挙げられ得るが、これらに限定されない。
【0101】
本明細書中で使用されるとき、細胞、組織または器官に関する用語「過剰発現する」は、コントロール細胞、コントロール組織(issue)または器官において産生される量を超える量までのタンパク質を表現している。過剰発現されるタンパク質は、宿主細胞にとって内在性であり得るか、または宿主細胞にとって外来性であり得る。
【0102】
本明細書中で使用されるとき、用語「リンカー配列」は、1〜10回あるいは約8回あるいは約6回あるいは約5回または4回あるいは3回あるいは2回繰り返され得る、1〜10個またはあるいは8個のアミノ酸あるいは6個のアミノ酸あるいは5個のアミノ酸を含む任意のアミノ酸配列に関する。リンカー配列の非限定的な例は、当該分野で公知であり、例えば、GGGGSGGGGSGGGG;トリペプチドEFM;またはGlu−Phe−Gly−Ala−Gly−Leu−Val−Leu−Gly−Gly−Gln−Phe−Metである。
【0103】
本明細書中で使用されるとき、用語「エンハンサー」は、本明細書中で使用されるとき、発現される核酸配列に対する位置および向きに関係なく核酸配列の転写を増強するか、改善するかまたは回復させる配列エレメントを表す。エンハンサーは、単一のプロモーターからの転写または同時に1つより多いプロモーターからの転写を高め得る。転写を改善するというこの機能が保持されるかまたは実質的に保持される限り(例えば、野生型の活性、すなわち、完全長配列の活性の少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%または少なくとも95%)、野生型エンハンサー配列の任意の切断された、変異されたまたはその他の方法で改変されたバリアントも、上記の定義の範囲内である。
【0104】
本明細書中で使用されるとき、用語「WPRE」または「ウッドチャック肝炎ウイルス(WHP)転写後調節エレメント」とは、この名称に関連する特定のヌクレオチドフラグメント、および本明細書中に示されるようなWPRE配列と少なくとも70%あるいは少なくとも80%のアミノ酸配列同一性、好ましくは、90%の配列同一性、より好ましくは、少なくとも95%の配列同一性を共有する、類似の生物学的機能を有する他の任意の分子のことを指す。例えば、WPREとは、ウッドチャック肝炎ウイルスゲノム配列(GenBankアクセッション番号J04514)に存在するヒトB型肝炎ウイルス転写後調節エレメント(HBVPRE)に類似の領域のことを指し、このゲノム配列の1093〜1684位の592ヌクレオチドが転写後調節領域に対応する(Journal of Virology,Vol.72,p.5085−5092,1998)。レトロウイルスベクターを用いた解析から、目的の遺伝子の3’末端の非翻訳領域に挿入されたWPREが、産生されるタンパク質の量を5〜8倍増加させることが明らかになった。WPREの導入によってmRNAの分解が抑制されることも報告されている(Journal of Virology,Vol.73,p.2886−2892,1999)。mRNAを安定化することによってアミノ酸翻訳の効率を高めるWPREなどのエレメントも、広い意味においてエンハンサーであると考えられる。
【0105】
用語「腫瘍退縮」は、ウイルスに関して使用されるとき、癌細胞に優先的に感染し、癌細胞を殺滅するウイルスのことを説明する。「ヘルペスウイルス」とは、単純ヘルペスウイルス(HSV−1およびHSV−2のような)を含むがこれらに限定されない、ヘルペスウイルス科の任意のメンバーのことを指す。非限定的な例示的な腫瘍退縮ヘルペスウイルスおよびその使用が、本明細書中に記載される。例えば、G207、HSV1716、NV1020、タリモジーン・ラハーパレプベック(Talimogene laherparvec)(「T−VEC」または「Oncovex−GMCSF」)はすべて、臨床試験において試験された。Vargheseら(2002)Cancer Gene Therapy.9(12):967−978を参照のこと。
省略形のリスト
CAR:キメラ抗原レセプター
IRES:内部リボソーム侵入部位
MFI:平均蛍光強度
MOI:感染効率
PBMC:末梢血単核球
PBS:リン酸緩衝食塩水
scFv:一本鎖可変フラグメント
GB:神経膠芽腫
BCBM:乳癌脳転移
oHSV:腫瘍退縮単純ヘルペスウイルス
本開示を実施するための形態
キメラ抗原レセプターおよびその使用
組成物
【0106】
本開示は、細胞外ドメインおよび細胞内ドメインを含むかまたはそれらから本質的になる、野生型EGFRおよび/または変異EGFRに結合するキメラ抗原レセプター(CAR)を提供する。細胞外ドメインは、標的特異的結合エレメント(そうでない場合は抗原結合ドメインと称される)を含む。細胞内ドメインまたは細胞質ドメインは、共刺激シグナル伝達領域およびゼータ鎖部分を含む。CARは、必要に応じて、最大300アミノ酸、好ましくは、10〜100アミノ酸、より好ましくは、25〜50アミノ酸のスペーサードメインをさらに含み得る。1つの態様において、本開示は、(a)野生型上皮成長因子レセプター(EGFR)もしくは変異上皮成長因子レセプター(EGFR)のいずれかまたは野生型上皮成長因子レセプターおよび変異上皮成長因子レセプターの両方(「wtEGFRおよび/または変異EGFR」)を認識する抗EGFR抗体の抗原結合ドメイン;(b)ヒンジドメインポリペプチド;(c)共刺激分子または共刺激ポリペプチド;および(d)CD3ゼータシグナル伝達ドメインを含むか、あるいはそれらから本質的になるか、またはなおもさらにはそれらからなるキメラ抗原レセプター(CAR)を提供する。
【0107】
抗原結合ドメイン。ある特定の態様において、本開示は、野生型EGFRおよび/または変異EGFRに特異的な抗原結合ドメインを含むかあるいはそれから本質的になるかまたはなおもそれからなるCARを提供する。1つの態様において、変異EGFRは、EGFRvIIIである。いくつかの実施形態において、抗原結合ドメインは、wtEGFR抗体および/または変異EGFR抗体の抗原結合ドメインを含むかあるいはそれから本質的になるかまたはなおもそれからなる。さらなる実施形態において、抗原結合ドメインは、抗EGFR抗体の重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含むか、あるいはそれらから本質的になるか、またはなおもさらにはそれらからなり、そしてその抗EGFR抗体の重鎖可変領域および軽鎖可変領域は、抗EGFR抗体の抗原結合ドメインを含むかあるいはそれから本質的になるかまたはなおもそれからなる。抗EGFR抗体の軽鎖可変領域および重鎖可変領域は、当該分野で公知であり、上に記載されている。
【0108】
いくつかの実施形態において、上記抗体の重鎖可変領域は、
【化20】
もしくはその等価物またはこのポリペプチドによってコードされるポリヌクレオチド:
【化21】
【化22】
もしくはその等価物を含むかまたはそれらから本質的になるかまたはそれらからなる。
【0109】
上記ポリペプチドまたはその各々の等価物は、その後に、カルボキシ末端においてさらなる50アミノ酸あるいは約40アミノ酸あるいは約30アミノ酸あるいは約20アミノ酸あるいは約10アミノ酸あるいは約5アミノ酸あるいは約4または3または2または1アミノ酸が続き得る。
【0110】
他の態様では、LC可変領域は、
【化23】
もしくはその等価物またはポリヌクレオチド:
【化24】
によってコードされるポリペプチドまたはその等価物を含むか、あるいはそれらから本質的になるか、またはなおもさらにはそれらからなる。
【0111】
上記ポリペプチドまたはそれらの各々の等価物は、その後に、カルボキシ末端においてさらなる50アミノ酸あるいは約40アミノ酸あるいは約30アミノ酸あるいは約20アミノ酸あるいは約10アミノ酸あるいは約5アミノ酸あるいは約4または3または2または1アミノ酸が続き得る。
【0112】
その等価物は、CARに対して少なくとも80%のアミノ酸同一性を有するポリペプチドまたはCARをコードするポリヌクレオチドの相補鎖に高ストリンジェンシーの条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチドを含み、ここで、高ストリンジェンシーの条件は、約55℃〜約68℃のインキュベーション温度;約1×SSC〜約0.1×SSCの緩衝液濃度;約55%〜約75%のホルムアミド濃度;および約1×SSC、0.1×SSCまたは脱イオン水の洗浄液を含む。
【0113】
代替の実施形態は、他のEGFR抗体のCDR由来の適切なCDRとともにLC可変領域の1つまたはそれを超えるCDR(例えば、CDR1、CDR2、CDR3)を含む。およびその各々の等価物。したがって、一例として、LC可変領域のCDR1およびCDR2は、別の抗EGFR抗体のLC可変領域のCDR3と組み合わされ得、いくつかの態様では、さらなる50アミノ酸あるいは約40アミノ酸あるいは約30アミノ酸あるいは約20アミノ酸あるいは約10アミノ酸あるいは約5アミノ酸あるいは約4または3または2または1アミノ酸をカルボキシ末端に含み得る。
【0114】
膜貫通ドメイン。膜貫通ドメインは、天然の起源または合成の起源のいずれかに由来し得る。起源が天然である場合、そのドメインは、任意の膜結合タンパク質または膜貫通タンパク質に由来してもよい。本発明において特に有用な膜貫通領域は、CD8、CD28、CD3、CD45、CD4、CD5、CDS、CD9、CD16、CD22、CD33、CD37、CD64、CD80、CD86、CD134、CD137、CD154、TCRに由来し得る。あるいは、膜貫通ドメインは、合成であってもよく、その場合、ロイシンおよびバリンなどの疎水性残基を主に含み得る。好ましくは、合成の膜貫通ドメインの各末端には、フェニルアラニン、トリプトファンおよびバリンのトリプレットが見られる。必要に応じて、短いオリゴペプチドリンカーまたはポリペプチドリンカー、好ましくは、2〜10アミノ酸長が、CARの膜貫通ドメインと細胞質シグナル伝達ドメインとの間に連結を形成し得る。グリシン−セリンのダブレットは、特に安定したリンカーを提供する。1つの態様において、膜貫通ドメインは、CD28膜貫通ドメインであり、そのようなドメインの非限定的な例は、上に記載されている。別の態様において、膜貫通ドメインは、CD8αヒンジドメインに連結されたCD8α膜貫通ドメインである。
【0115】
細胞質ドメイン。CARの細胞質ドメインまたは細胞内シグナル伝達ドメインは、CARが配置された免疫細胞の少なくとも1つの従来のエフェクター機能の活性化に関与する。細胞内シグナル伝達ドメインとは、エフェクター機能のシグナルを伝達し、免疫細胞に対して特定の機能を発揮するように指示するタンパク質の一部分のことを指す。シグナル伝達ドメイン全体を使用してもよいし、シグナル伝達ドメインの切断された部分がエフェクター機能のシグナルを伝達するのに十分である限り、その切断された部分を使用してもよい。TCRおよびコレセプターならびにそれらの誘導体またはバリアントの細胞質の配列が、CARにおいて使用するための細胞内シグナル伝達ドメインとして機能し得る。本発明において特に有用な細胞内シグナル伝達ドメインは、CD8α、CD28、FcR、TCR、CD3、CDS、CD22、CD79a、CD79b、CD66dに由来し得る。TCRを通じて生成されるシグナルは、単独では、T細胞の完全な活性化には不十分であるので、2次シグナルまたは共刺激シグナルも必要とされ得る。したがって、共刺激シグナル伝達分子(CD8α、CD27、CD28、4−IBB(CD137)、OX40、CD30、CD40、PD−1、ICOS、リンパ球機能関連抗原−1(LFA−1)、CD2、CD7、LIGHT、NKG2C、B7−H3またはCD83に特異的に結合するリガンドを含むがこれらに限定されない)の細胞内領域も、CARの細胞質ドメインに含められ得る。1つの態様において、細胞内ドメインは、CD28細胞内ドメインである。別の態様において、細胞内ドメインは、CD8α細胞内ドメインである。
【0116】
いくつかの実施形態において、キメラ抗原レセプターの細胞活性化部分は、CD8タンパク質、CD28タンパク質、4−1BBタンパク質およびCD3−ゼータタンパク質からなる群より選択される1つまたはそれを超えるタンパク質またはそのフラグメントを含むかあるいはそれらから本質的になるかまたはなおもさらにそれらからなるT細胞シグナル伝達ドメインである。
【0117】
特定の実施形態において、CARは、EGFRおよび変異EGFRに結合する抗体の抗原結合ドメイン、ヒンジドメイン、共刺激シグナル伝達領域ならびにCD3ゼータシグナル伝達ドメインを含むかあるいはそれらから本質的になるかまたはなおもそれらからなる。さらなる実施形態において、共刺激シグナル伝達領域は、CD28共刺激シグナル伝達領域もしくは4−1BB共刺激シグナル伝達領域のいずれかまたはCD28共刺激シグナル伝達領域および4−1BB共刺激シグナル伝達領域の両方を含む。CARは、シグナルポリペプチドをさらに含み得る。
【0118】
いくつかの実施形態において、CARは、検出可能なマーカーまたは精製マーカーをさらに含み得る。
【0119】
EGFR CARならびにEGFRタンパク質もしくはそのフラグメントおよび/または変異EGFRタンパク質もしくはそのフラグメントを含む単離された複合体も本明細書中に提供される。本明細書中に記載されるようなCAR、wtEGFRおよび/または変異EGFRを発現している細胞を含む単離された複合体が、なおもさらに提供される。
ポリヌクレオチドおよび宿主細胞
【0120】
本開示は、上に記載されたようなEGFR CARをコードする単離された核酸およびこれらの配列の相補鎖も提供する。それらの核酸は、DNA、RNAまたは修飾された核酸であり得る。それらの核酸は、ベクター、例えば、プラスミドまたはウイルスベクター、例えば、レンチウイルスベクター、アデノウイルスベクターまたはアデノ随伴ウイルスベクターに組み込まれ得る。1つの態様において、ベクターは、pCDHベクターである。
【0121】
本開示は、本明細書中に記載されるようなEGFR CAR、またはそのCARをコードするポリヌクレオチドもしくはそれらの相補鎖、またはそれらのポリヌクレオチドもしくはそれらの相補鎖を含むベクターを含む単離された宿主細胞(原核細胞または真核細胞)も提供する。原核細胞の非限定的な例としては、細菌、例えば、大腸菌の細胞が挙げられる。真核細胞の非限定的な例としては、T細胞、NK細胞、幹細胞、293T細胞 NK−92細胞およびNKL細胞が挙げられる。それらの細胞は、任意の種、例えば、動物、哺乳動物、ヒト、マウス、ウマ、ウシ、ネコまたはイヌに由来し得る。それらの細胞は、処置される患者から単離され得る。ゆえに、それらは、自家または同種異系であり得る。形質転換された単離された細胞は、診断的または治療的に使用され得る。
【0122】
単離された核酸は、検出可能なマーカーまたは精製マーカーをさらに含み得る。それらの核酸は、キャリア、例えば、固体支持体または薬学的に許容され得るキャリアと組み合わされ得る。それらは、本明細書中に記載されるようなCARを調製するのに有用である。
CARを調製するためのプロセス
【0123】
本開示の態様は、EGFR CARを含む単離された細胞およびそのような細胞を作製する方法に関する。その細胞は、原核細胞または真核細胞である。1つの態様において、細胞は、T細胞またはNK細胞である。真核細胞は、任意の好ましい種由来の細胞、例えば、動物細胞、哺乳動物細胞(例えば、ヒト、ウマ、ネコまたはイヌ細胞)であり得る。
【0124】
特定の実施形態において、単離された細胞は、野生型EGFRおよび/または変異EGFRを特異的に認識した抗体の抗原結合ドメイン、ヒンジドメイン、共刺激分子(例えば、CD28共刺激シグナル伝達領域および/または4−1BB共刺激シグナル伝達領域)ならびにCD3ゼータシグナル伝達ドメインを含むかあるいはそれから本質的になるかまたはなおもさらにそれからなる外来性CARを含むか、あるいはそれらから本質的になるか、またはなおもさらにはそれらからなる。ある特定の実施形態において、単離された細胞は、T細胞、例えば、動物T細胞、哺乳動物T細胞、ネコT細胞、イヌT細胞またはヒトT細胞である。ある特定の実施形態において、単離された細胞は、NK細胞、例えば、動物NK細胞、哺乳動物NK細胞、ネコNK細胞、イヌNK細胞またはヒトNK細胞である。
【0125】
ある特定の実施形態において、EGFR CARを発現している細胞を作製する方法が開示され、その方法は、(i)細胞または単離された細胞の集団に、抗EGFR CARをコードする核酸配列を形質導入する工程を含むかあるいはその工程から本質的になる。その細胞は、本明細書中に記載されるようなウイルスベクターを用いて、または“Nonviral RNA transfection to transiently modify T cell with chimeric antigen receptors for adoptive therapy”と題された、Rietら(2103)Meth.Mol.Biol.969:187−201に記載されている技術を用いて、形質導入され得る。さらなる態様において、その方法は、EGFR結合ドメインを発現する細胞を選択することによってCARを発現する細胞を選択する工程をさらに含む。選択は、それらの細胞の表面上に発現されたEGFR結合ドメインを選択的に認識して、それに結合する抗EGFR抗体を使用することによって達成され得る。いくつかの実施形態において、単離された細胞は、T細胞、動物T細胞、哺乳動物T細胞、ネコT細胞、イヌT細胞またはヒトT細胞であり、それによって、EGFR CAR T細胞が作製される。ある特定の実施形態において、単離された細胞は、NK細胞、例えば、動物NK細胞、哺乳動物NK細胞、ネコNK細胞、イヌNK細胞またはヒトNK細胞であり、それによって、EGFR CAR NK細胞が作製される。
【0126】
T細胞またはNK細胞の起源。本発明のT細胞の拡大および遺伝的改変の前に、T細胞の起源を、被験体または培養物から入手し得る。T細胞は、末梢血単核球、骨髄、リンパ節組織、臍帯血、胸腺組織、感染部位の組織、腹水、胸水、脾臓組織および腫瘍を含む、被験体におけるいくつかの起源から得ることができる。
【0127】
妥当な細胞を単離する方法は、当該分野で周知であり、本願に容易に適用できる;例示的な方法は、下記の実施例に記載されている。本開示に対して使用するための単離方法としては、Life Technologies Dynabeads(登録商標)システム;STEMcell Technologies EasySep
TM、RoboSep
TM、RosetteSep
TM、SepMate
TM;Miltenyi Biotec MACS
TM細胞分離キットならびに他の商業的に入手可能な細胞分離キットおよび細胞単離キットが挙げられるが、これらに限定されない。免疫細胞の特定の部分集団が、ユニークな細胞表面マーカーに特異的な、そのようなキットにおいて利用可能なビーズまたは他の結合剤を使用することによって単離され得る。例えば、MACS
TMCD4+およびCD8+マイクロビーズは、CD4+およびCD8+T細胞を単離するために使用され得る。
【0128】
あるいは、細胞は、T細胞の場合、株BCL2(AAA)Jurkat(ATCC(登録商標)CRL−2902
TM)、BCL2(S70A)Jurkat(ATCC(登録商標)CRL−2900
TM)、BCL2(S87A)Jurkat(ATCC(登録商標)CRL−2901
TM)、BCL2 Jurkat(ATCC(登録商標)CRL−2899
TM)、Neo Jurkat(ATCC(登録商標)CRL−2898
TM);およびNK細胞の場合、株NK−92(ATCC(登録商標)CRL−2407
TM)、NK−92MI(ATCC(登録商標)CRL−2408
TMを含むがこれらに限定されない、商業的に入手可能な細胞培養物を通じて得てもよい。
【0129】
ベクター。CARは、ベクターを用いて調製され得る。例示的なベクターの調製および前記ベクターを用いたCARを発現している細胞の作製は、下記の実施例において詳細に論じられる。要約すると、CARをコードする天然の核酸または合成の核酸の発現は一般に、CARポリペプチドをコードする核酸またはその一部をプロモーターに作動可能に連結し、その構築物を発現ベクターに組み込むことによって、達成される。それらのベクターは、真核生物における複製およびインテグレーションに好適であり得る。
【0130】
ベクターおよび/または外来性核酸を含む細胞を作製するための方法は、当該分野で周知である。例えば、Sambrookら(2001,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory,New York)を参照のこと。外来性核酸を宿主細胞に導入するために使用される方法またはそうでない場合は本発明の阻害剤に細胞を曝露するために使用される方法に関係なく、宿主細胞における組換えDNA配列の存在を確認するために、種々のアッセイが行われ得る。そのようなアッセイとしては、例えば、当業者に周知の「分子生物学的」アッセイ、例えば、サザンブロッティングおよびノーザンブロッティング、RT−PCRおよびPCR;「生化学的」アッセイ、例えば、免疫学的手段(ELlSAおよびウエスタンブロット)または本発明の範囲内に入る、作用物質を特定するための本明細書中に記載されるアッセイによる、例えば、特定のペプチドの有無の検出が挙げられる。
【0131】
いくつかの実施形態において、単離された核酸配列は、wtEGFRおよび変異EGFRのいずれかまたは両方を認識する抗EGFR抗体の抗原結合ドメイン、CD28共刺激シグナル伝達領域および/または4−1BB共刺激シグナル伝達領域ならびにCD3ゼータシグナル伝達ドメインを含むかあるいはそれらから本質的になるかまたはなおもさらにそれらからなるCARをコードする。特定の実施形態において、単離された核酸配列は、抗EGFR抗体の抗原結合ドメインに続いて、ヒンジ領域、CD28共刺激シグナル伝達領域および/または4−1BB共刺激シグナル伝達領域、それに続いてCD3ゼータシグナル伝達ドメインをコードする配列を含むかあるいはそれらから本質的になるかまたはなおもさらにそれらからなる。さらなる態様において、抗原結合ドメインは、必要に応じてリンカーポリペプチド(polyeptide)によって接続されるHC可変領域およびLC可変領域を含む。
【0132】
いくつかの実施形態において、単離された核酸は、抗生物質耐性を付与するポリヌクレオチドを含む。
【0133】
いくつかの実施形態において、単離された核酸配列は、ベクターに含められる。ある特定の実施形態において、ベクターは、プラスミドである。他の実施形態において、ベクターは、ウイルスベクターである。特定の実施形態において、ベクターは、レンチウイルスベクターである。
【0134】
例示的なベクターの調製および前記ベクターを用いたCARを発現している細胞の作製は、下記の実施例において詳細に論じられる。要約すると、CARをコードする天然の核酸または合成の核酸の発現は一般に、CARポリペプチドをコードする核酸またはその一部をプロモーターに作動可能に連結し、その構築物を発現ベクターに組み込むことによって、達成される。それらのベクターは、真核生物における複製およびインテグレーションに好適であり得る。ベクターおよび/または外来性核酸を含む細胞を作製するための方法は、当該分野で周知である。例えば、Sambrookら(2001,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory,New York)を参照のこと。
【0135】
1つの態様において、用語「ベクター」は、非分裂細胞および/またはゆっくり分裂する細胞に感染するおよび形質導入する能力ならびに標的細胞のゲノムにインテグレートする能力を保持する組換えベクターを意図している。いくつかの態様において、ベクターは、野生型ウイルスに由来するかまたは野生型ウイルスに基づく。さらなる態様において、ベクターは、野生型レンチウイルスに由来するかまたは野生型レンチウイルスに基づく。そのようなウイルスの例としては、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、ウマ伝染性貧血ウイルス(EIAV)、サル免疫不全ウイルス(SIV)およびネコ免疫不全ウイルス(FIV)が挙げられるが、これらに限定されない。あるいは、マウス白血病ウイルス(MLV)などの他のレトロウイルスが、ベクター骨格のための基礎として使用され得ることが企図される。本開示に係るウイルスベクターは、特定のウイルスの構成要素に限定される必要がないことが明らかであり得る。ウイルスベクターは、2つまたはそれを超える異なるウイルスに由来する構成要素を含み得、合成の構成要素も含み得る。ベクターの構成要素は、所望の特徴、例えば、標的細胞の特異性が得られるように操作され得る。
【0136】
本開示の組換えベクターは、霊長類および非霊長類に由来する。霊長類レンチウイルスの例としては、ヒト後天性免疫不全症候群(AIDS)の原因物質であるヒト免疫不全ウイルス(HIV)およびサル免疫不全ウイルス(SIV)が挙げられる。非霊長類レンチウイルスの群には、原型である「スローウイルス」のビスナ/マエディウイルス(VMV)、ならびに関連のヤギ関節炎脳炎ウイルス(CAEV)、ウマ伝染性貧血ウイルス(EIAV)ならびに最近報告されたネコ免疫不全ウイルス(FIV)およびウシ免疫不全ウイルス(BIV)が含まれる。従来技術の組換えレンチウイルスベクターは、当該分野で公知であり、例えば、参照により本明細書中に援用される、米国特許第6,924,123号;同第7,056,699号;同第7,07,993号;同第7,419,829号および同第7,442,551号を参照のこと。
【0137】
米国特許第6,924,123号は、ある特定のレトロウイルス配列が標的細胞のゲノムへのインテグレーションを容易にすることを開示している。この特許は、各レトロウイルスゲノムが、ビリオンタンパク質および酵素をコードするgag、polおよびenvと呼ばれる遺伝子を含むことを教示している。これらの遺伝子は、両端において、末端反復配列(LTR)と呼ばれる領域に隣接している。LTRは、プロウイルスのインテグレーションおよび転写に関与する。LTRは、エンハンサー−プロモーター配列としても働く。換言すれば、LTRは、ウイルス遺伝子の発現を制御し得る。レトロウイルスRNAのキャプシド形成は、ウイルスゲノムの5’末端に位置するプサイ配列によって生じる。LTR自体は、全く同じ配列であり、U3、RおよびU5と呼ばれる3つのエレメントに分けられ得る。U3は、そのRNAの3’末端に特有の配列に由来する。Rは、そのRNAの両端において繰り返される配列に由来し、U5は、そのRNAの5’末端に特有の配列に由来する。それらの3つのエレメントのサイズは、異なるレトロウイルスの間で大幅に異なり得る。ウイルスゲノムの場合、ポリ(A)付加(終止)の部位は、右側のLTRにおけるRとU5との境界に存在する。U3は、プロウイルスの転写性調節領域の大部分を含み、それらの領域は、細胞の転写活性化タンパク質および場合によってはウイルスの転写活性化タンパク質に応答するプロモーター配列および複数のエンハンサー配列を含む。
【0138】
構造遺伝子gag、polおよびenv自体に関して、gagは、ウイルスの内部構造タンパク質をコードする。Gagタンパク質は、タンパク分解性にプロセシングされて、成熟タンパク質MA(マトリックス)、CA(キャプシド)およびNC(ヌクレオカプシド)になる。pol遺伝子は、ゲノムの複製を媒介する、DNAポリメラーゼ、関連するRNaseHおよびインテグラーゼ(IN)を含む逆転写酵素(RT)をコードする。
【0139】
ウイルスベクター粒子の産生のために、ベクターRNAゲノムは、宿主細胞において、それをコードしているDNA構築物から発現される。ベクターゲノムによってコードされないそれらの粒子の構成要素は、宿主細胞において発現されるさらなる核酸配列(通常、gag/polおよびenv遺伝子のいずれかまたは両方を含む「パッケージングシステム」)によってトランスで提供される。ウイルスベクター粒子の産生のために必要な配列セットは、一過性のトランスフェクションによって宿主細胞に導入されてもよいし、宿主細胞ゲノムにインテグレートされてもよいし、または方法の組み合わせで提供されてもよい。関連する手法は、当業者に公知である。
【0140】
本開示において使用するためのレトロウイルスベクターとしては、Lentigen Corp.製のInvitrogenのpLentiシリーズバージョン4、6および6.2「ViraPower」システム;City of Hope Research Instituteが研究室で作製し使用するpHIV−7−GFP;Clontech製の「Lenti−X」レンチウイルスベクターpLVX;Sigma−Aldrich製のpLKO.1−puro;Open Biosystems製のpLemiR;およびCharite Medical School,Institute of Virology(CBF),Berlin,Germanyが研究室で作製し使用するpLVが挙げられるが、これらに限定されない。
【0141】
外来性核酸を宿主細胞に導入するために使用される方法またはそうでない場合は本開示の阻害剤に細胞を曝露するために使用される方法に関係なく、宿主細胞における組換えDNA配列の存在を確認するために、種々のアッセイが行われ得る。そのようなアッセイとしては、例えば、当業者に周知の「分子生物学的」アッセイ、例えば、サザンブロッティングおよびノーザンブロッティング、RT−PCRおよびPCR;「生化学的」アッセイ、例えば、免疫学的手段(ELlSAおよびウエスタンブロット)または本開示の範囲内に入る作用物質を特定するための本明細書中に記載されるアッセイによる、例えば、特定のペプチドの有無の検出が挙げられる。
【0142】
パッケージングベクターおよび細胞株。CARは、パッケージングベクターおよび細胞株を用いることによって、レトロウイルスパッケージングシステムにパッケージングされ得る。そのパッケージングプラスミドとしては、レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター、アデノウイルスベクターおよびアデノ随伴ウイルスベクターが挙げられるが、これらに限定されない。パッケージングベクターは、細胞への遺伝物質の送達を容易にするエレメントおよび配列を含む。例えば、レトロウイルス構築物は、複製不能レトロウイルスベクターをパッケージングするために必要なすべてのビリオンタンパク質をトランスでコードする複製不能レトロウイルスゲノムに由来する、複製可能ヘルパーウイルスを生成せずに複製不能レトロウイルスベクターを高力価でパッケージングできるビリオンタンパク質を生成するための、少なくとも1つのレトロウイルスヘルパーDNA配列を含むパッケージングプラスミドである。そのレトロウイルスDNA配列は、そのウイルスのウイルス5’LTRの天然のエンハンサーおよび/またはプロモーターをコードする領域を欠き、ヘルパーゲノムのパッケージングに関与するプサイ機能配列と3’LTRの両方を欠くが、外来のポリアデニル化部位、例えば、SV40ポリアデニル化部位、ならびにウイルスの産生が望まれる細胞型において効率的な転写を指示する外来のエンハンサーおよび/またはプロモーターをコードする。レトロウイルスは、モロニーマウス白血病ウイルス(MMLV)などの白血病ウイルス、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)またはテナガザル白血病ウイルス(GALV)である。外来のエンハンサーおよびプロモーターは、ヒトサイトメガロウイルス(HCMV)前初期(IE)エンハンサーおよびプロモーター、モロニーマウス肉腫ウイルス(MMSV)のエンハンサーおよびプロモーター(U3領域)、ラウス肉腫ウイルス(RSV)のU3領域、脾フォーカス形成ウイルス(SFFV)のU3領域、または天然のモロニーマウス白血病ウイルス(MMLV)プロモーターに結合されたHCMV IEエンハンサーであり得る。レトロウイルスパッケージングプラスミドは、プラスミドベースの発現ベクターによってコードされる2つのレトロウイルスヘルパーDNA配列からなり得、例えば、第1のヘルパー配列は、エコトロピックなMMLVまたはGALVのgagおよびpolタンパク質をコードするcDNAを含み、第2のヘルパー配列は、envタンパク質をコードするcDNAを含む。Env遺伝子は、宿主範囲を決定し、ゼノトロピック、アンフォトロピック、エコトロピック、ポリトロピック(ミンクフォーカス形成)または10A1マウス白血病ウイルスのenvタンパク質、またはテナガザル白血病ウイルス(GALV)envタンパク質、ヒト免疫不全ウイルスenv(gp160)タンパク質、水胞性口内炎ウイルス(Vesicular Stomatitus virus)(VSV)Gタンパク質、ヒトT細胞白血病(HTLV)IおよびII型env遺伝子産物、1つまたはそれを超える上述のenv遺伝子の組み合わせに由来するキメラエンベロープ遺伝子または上述のenv遺伝子産物の細胞質および膜貫通をコードするキメラエンベロープ遺伝子、ならびに所望の標的細胞上の特異的な表面分子に対するモノクローナル抗体をコードする遺伝子に由来し得る。
【0143】
パッケージングプロセスでは、パッケージングプラスミドおよびEGFRを発現するレトロウイルスベクターを、ウイルスを産生できる哺乳動物細胞(例えば、ヒト胎児腎細胞、例えば、293細胞(ATCC No.CRL1573,ATCC,Rockville,Md.))の第1の集団に一過性にコトランスフェクトして、高力価の組換えレトロウイルス含有上清を生成する。本発明の別の方法では、次いで、この一過性にトランスフェクトされた第1の細胞集団を、哺乳動物の標的細胞、例えば、ヒトリンパ球と共培養して、標的細胞に外来遺伝子を高効率で形質導入する。本発明のなおも別の方法では、上に記載された一過性にトランスフェクトされた第1の細胞集団の上清を、哺乳動物の標的細胞、例えば、ヒトリンパ球または造血幹細胞とともにインキュベートして、標的細胞に外来遺伝子を高効率で形質導入する。
【0144】
別の態様において、パッケージングプラスミドは、ウイルスを産生できる哺乳動物細胞(例えば、ヒト胎児腎細胞、例えば、293細胞)の第1の集団において安定に発現される。レトロウイルスベクターまたはレンチウイルスベクターが、選択可能マーカーとのコトランスフェクションまたは偽型ウイルスによる感染のいずれかによって細胞に導入される。両方の場合において、ベクターはインテグレートする。あるいは、ベクターは、エピソームとして維持されるプラスミドとして導入され得る。高力価の組換えレトロウイルス含有上清が生成される。
【0145】
T細胞またはNK細胞の活性化および拡大。望ましいCARを発現するようにT細胞またはNK細胞を遺伝的に改変する前であるか後であるかに関係なく、T細胞またはNK細胞は、米国特許第6,352,694号;同第6,534,055号;同第6,905,680号;同第6,692,964号;同第5,858,358号;同第6,887,466号;同第6,905,681号;同第7,144,575号;同第7,067,318号;同第7,172,869号;同第7,232,566号;同第7,175,843号;同第5,883,223号;同第6,905,874号;同第6,797,514号;同第6,867,041号に記載されている方法などの広く知られている方法を用いて広く活性化され、拡大され得る。妥当な細胞を活性化する方法は、当該分野で周知であり、本願に容易に適合され得る;例示的な方法は、下記の実施例に記載されている。エキソビボにおけるEGFR抗原での刺激は、CARを発現している選択されたT細胞の部分集団を活性化し、拡大し得る。あるいは、それらのT細胞は、EGFR抗原との相互作用によってインビボで活性化され得る。したがって、さらなる態様において、本開示は、EGFR CARを発現している単離された拡大された細胞集団を提供する。
【0146】
本開示に関して使用するための単離方法としては、Life Technologies Dynabeads(登録商標)システム活性化および拡大キット;BD Biosciences Phosflow
TM活性化キット、Miltenyi Biotec MACS
TM活性化/拡大キット、および妥当な細胞の活性化部分に特異的な他の商業的に入手可能な細胞キットが挙げられるが、これらに限定されない。そのようなキットにおいて利用可能なビーズまたは他の作用物質を使用することによって、免疫細胞の特定の部分集団が、活性化または拡大され得る。例えば、α−CD3/α−CD28 Dynabeads(登録商標)が、単離されたT細胞の集団を活性化し、拡大するために使用され得る。
【0147】
上で開示されたように、キメラ抗原レセプターは、抗原認識部分および細胞活性化部分を含む。本開示の態様は、野生型EGFRおよび変異EGFRに特異的な抗原結合ドメインを含むキメラ抗原レセプター(CAR)に関する。
使用方法
【0148】
治療用途。本開示のCAR T細胞およびNK細胞は、神経膠芽腫(gliobastoma)などのEGFRを発現する腫瘍および癌を処置するために使用され得る。本開示のEGFR CAR細胞は、単独で、または希釈剤、公知の抗癌治療(化学療法薬、手術および/または放射線照射)および/もしくは他の構成要素(例えば、サイトカインまたは免疫賦活性の他の細胞集団)と組み合わせて、投与され得る。本開示の方法は、一次、二次、三次または四次治療であり得る。
【0149】
本開示の方法の態様は、腫瘍の成長の阻害を必要とする被験体において腫瘍の成長を阻害するための方法および/またはそれを必要とする癌患者を処置するための方法に関する。いくつかの実施形態において、腫瘍は、固形腫瘍である。いくつかの実施形態において、腫瘍/癌は、神経膠芽腫または神経膠芽腫幹細胞である。ある特定の実施形態において、これらの方法は、被験体または患者に、有効量の本明細書中に記載されるような単離された細胞、例えば、EGFR CARを含む単離された細胞を投与する工程を含むかあるいはその工程から本質的になるかまたはなおもさらにその工程からなる。なおもさらなる実施形態において、単離された細胞は、T細胞またはNK細胞である。いくつかの実施形態において、単離された細胞は、処置される被験体または患者にとって自家である。さらなる態様において、腫瘍は、EGFR抗原を発現し、被験体は、本明細書中に記載される診断などの診断によって治療のために選択された被験体である。さらなる態様において、単離された細胞は、神経膠芽腫または神経膠芽腫幹細胞の成長を阻害するために被験体の脳に直接注射または注入される。
【0150】
本発明のEGFR CARを含む薬学的組成物は、処置または予防されるべき疾患にとって適切な様式で投与され得る。任意の適切な投与方法、例えば、直接注射および/または静脈内注射などによる全身性の方法が、用いられ得る。投与の量および頻度は、患者の症状ならびに患者の疾患のタイプおよび重症度などの因子によって決定され得るが、適切な投与量は、臨床試験によって決定され得る。腫瘍の成長を阻害する方法は、ヒト、イヌ、ネコ、ウマおよび他の種を含むがこれらに限定されない被験体に適用され得る。
【0151】
1つの実施形態において、本開示は、患者が、EGFR CAR治療に応答する可能性があるかまたは可能性がないかを判定するための方法を提供し、その方法は、その患者から単離された腫瘍サンプルを有効量のEGFR抗体と接触させる工程、およびその腫瘍サンプルに結合した任意の抗体の存在を検出する工程を含むかあるいはそれらから本質的になるかまたはなおもさらにそれらからなり、ここで、その腫瘍サンプルに結合した抗体の存在は、その患者が、EGFR CAR治療に応答する可能性があることを示唆し、その腫瘍サンプルに結合した抗体が存在しないことは、その患者が、EGFR CAR治療に応答する可能性がないことを示唆する。別の実施形態において、その方法は、EGFR CAR治療に応答する可能性があると判定された患者に対して有効量のEGFR CAR治療を行う工程をさらに含む。この方法では、患者は、脳癌に罹患している可能性がある。いくつかの実施形態において、この脳癌は、神経膠芽腫または別の癌(例えば、乳癌)の転移である。1つの態様において、サンプルは、癌を有すると診断された被験体、癌を有すると疑われる被験体または癌を有するリスクがある被験体から得られる。
【0152】
1つの態様において、検出は、免疫組織化学(IHC)、ウエスタンブロッティング、フローサイトメトリーまたはELISAのうちの1つまたはそれを超えるものを含むか、あるいはそれらから本質的になるか、またはなおもさらにはそれらからなる。
【0153】
1つの態様において、上記方法は、被験体から生物学的サンプルを単離する工程を含むか、あるいはその工程から本質的になるか、またはなおもさらにはその工程からなる。さらなる態様では、T細胞またはNK細胞が、被験体から単離され、EGFR CARをコードする単離された核酸を形質導入され、形質導入された細胞の拡大された集団を、本明細書中に記載されるような方法を用いて、被験体への投与のために調製する。
【0154】
1つの態様において、被験体は、ヒト患者などの哺乳動物である。
組成物およびキャリア
【0155】
本発明のさらなる態様は、キャリアおよび1つまたはそれを超える生成物、例えば、EGFR CAR、EGFR CARを含む単離された細胞、EGFR CARをコードする単離された核酸もしくはそれらの相補鎖および/または単離された核酸を含むベクターを含む組成物に関する。それらのキャリアは、固体キャリアまたは液体キャリア、例えば、薬学的に許容され得るキャリアであり得る。
【0156】
簡潔には、本発明の薬学的組成物は、1つの態様において、本明細書中に記載されるような細胞集団を、1つまたはそれを超える薬学的にまたは生理的に許容され得るキャリア、希釈剤もしくは賦形剤または固体支持体と組み合わせて含む特許請求される組成物のうちのいずれか1つを含むがこれらに限定されない。そのような組成物は、緩衝液(例えば、中性緩衝食塩水、リン酸緩衝食塩水など);炭水化物(例えば、グルコース、マンノース、スクロースまたはデキストラン、マンニトール);タンパク質;ポリペプチドまたはアミノ酸(例えば、グリシン);酸化防止剤;キレート剤(例えば、EDTAまたはグルタチオン);アジュバント(例えば、水酸化アルミニウム);および保存剤を含み得る。本開示の組成物は、経口投与、静脈内投与、局所投与、経腸投与および/または非経口投与のために製剤化され得る。ある特定の実施形態において、本開示の組成物は、静脈内投与のために製剤化される。
【0157】
簡潔には、本発明の薬学的組成物は、1つまたはそれを超える薬学的にまたは生理的に許容され得るキャリア、希釈剤または賦形剤とともに、本明細書中に記載されるような特許請求される組成物のうちのいずれか1つを含むがこれらに限定されない。そのような組成物は、緩衝液(例えば、中性緩衝食塩水、リン酸緩衝食塩水など);炭水化物(例えば、グルコース、マンノース、スクロースまたはデキストラン、マンニトール);タンパク質;ポリペプチドまたはアミノ酸(例えば、グリシン);酸化防止剤;キレート剤(例えば、EDTAまたはグルタチオン);アジュバント(例えば、水酸化アルミニウム);および保存剤を含み得る。本発明の組成物は、好ましくは、静脈内投与のために製剤化される。
【0158】
本発明の薬学的組成物は、処置または予防されるべき疾患にとって適切な様式で投与され得る。投与の量および頻度は、患者の症状ならびに患者の疾患のタイプおよび重症度などの因子によって決定され得るが、適切な投与量は、臨床試験によって決定され得る。
併用療法
【0159】
本開示の態様は、本明細書中に開示されるEGFR CARを発現している細胞および腫瘍退縮単純ヘルペスウイルスが関わる併用療法に関する。臨床研究から、腫瘍退縮ヘルペスウイルスは、単独で投与されるとき、限られた有効性で働くことが実証された。本明細書中に提供される実験および開示は、EGFR CARを発現している細胞に対する有望な結果を実証する。本出願人は、EGFR CARを発現している細胞と腫瘍退縮単純ヘルペスウイルスの両方の投与が相乗効果を有することを見出した。理論に拘束されるものではないが、EGFR CARを発現している細胞は、腫瘍退縮ヘルペスウイルスによる感染および破壊のために、癌細胞がより接近可能になる腫瘍組織の構造の破壊を促進し得ると推測される。
【0160】
いくつかの実施形態において、併用療法において使用するために企図されるEGFR CARを発現している細胞は、T細胞またはNK細胞から必要に応じて選択される、単離された免疫細胞である。いくつかの実施形態において、これらのEGFR CARを発現している細胞は、放射線照射される。いくつかの実施形態において、EGFR CARを発現している細胞は、1〜10000cGy、例えば、1cGy、5cGy、10cGy、50cGy、100cGy、500cGy、1000cGy、5000cGyもしくは10000cGy超、または1cGy、5cGy、10cGy、50cGy、100cGy、500cGy、1000cGy、5000cGyもしくは10000cGy未満(less thank)、または約1cGy、5cGy、10cGy、50cGy、100cGy、500cGy、1000cGy、5000cGyもしくは10000cGy(であるがこれらに限定されない)の線量で放射線照射される。いくつかの実施形態において、放射線量は、12、24、36、48、60、72、84、96時間もしくはそれを超える時間を超えるまで、または約12、24、36、48、60、72、84、96時間もしくはそれを超える時間にわたって、EGFR CARを発現している細胞の完全な活性を維持しつつ、それらの細胞が増殖されるように最適化される。いくつかの実施形態において、EGFR CARを発現している細胞は、oHSVを全滅させないまたは排除しないように改変される(放射線照射または他の手段によって)。
【0161】
いくつかの実施形態において、腫瘍退縮単純ヘルペスウイルスは、臨床試験を受けた、本明細書中の上記に開示される1つまたはそれを超える腫瘍退縮ヘルペスウイルスである。いくつかの実施形態において、腫瘍退縮単純ヘルペスウイルスは、HSV−1またはHSV−2に由来する。
【0162】
いくつかの実施形態において、EGFR CARを発現している細胞は、腫瘍退縮単純ヘルペスウイルスと同時、または腫瘍退縮単純ヘルペスウイルスの前もしくは後に投与される。いくつかの実施形態において、EGFR CARを発現している細胞が、最初に投与される。他の実施形態において、腫瘍退縮単純ヘルペスウイルスが、最初に投与される。いくつかの実施形態において、EGFR CARを発現している細胞は、単回または複数回投与される。いくつかの実施形態において、腫瘍退縮単純ヘルペスウイルスは、単回または複数回投与される。1つの実施形態において、EGFR CARを発現している細胞(vells)が最初に投与された後、1日またはそれを超える日数にわたって、腫瘍退縮単純ヘルペスウイルスが投与される。
キット
【0163】
本明細書中に記載されるようなEGFR CAR、EGFR CARをコードする単離された核酸もしくはそれらの相補鎖、それらの核酸を含むベクター、本明細書中に記載されるような単離された細胞、または本明細書中に記載されるような単離された複合体のうちの1つまたはそれを超えるものを含むキットが、本明細書中にさらに提供される。
【0164】
以下の実施例は、本開示を例証することを目的としており、本開示を限定することを目的としていない。
【実施例】
【0165】
実験1−EGFR CARを発現している細胞の作製および特徴付け
細胞培養
ヒトGB細胞株[Gli36デルタEGFR(Gli36dEGFR)、U251およびLN229]およびヒト患者由来GB幹細胞(GB1123、GB30、GB83およびGB326)(Mao,P.ら(2013)Proc Natl Acad Sci.USA 110:8644−8649)を本研究において使用した。GB84V3SL、GB157V3SLおよびGB19も、同じプロトコルを用いてGB患者から確立した(Mao,P.ら(2013)Proc Natl Acad Sci.USA 110:8644−8649)。すべてのGB細胞株、293T細胞およびPhoenix細胞を、10%FBS、ペニシリン(100U/ml)およびストレプトマイシン(100μg/ml)が補充されたDMEM(Invitrogen,Grand Island,NY)中で培養した。GB幹細胞は、bFGF(20ng/ml)、EGF(20ng/ml)、Glutamax(1:100)、B27(1:100)、ヘパリン(5μg/ml)、ペニシリン(100U/ml)およびストレプトマイシン(100μg/ml)が補充されたDMEM−F−12培地中で培養した。上記の抗生物質のストックおよびサイトカインのストックのすべてをInvitrogenから購入した。ヒトNK細胞株NK−92およびNKLを、20%FBS、ペニシリン(100U/ml)、ストレプトマイシン(100μg/ml)および150IU/mL組換えヒト(rh)IL−2(Hoffman−La Roche Inc.,Nutley,NJ)が補充されたRPMI−1640(Invitrogen)中で維持した。
マウス
【0166】
6〜8週齢のNOD.Cg−Prkdc
scidIl2rg
tm1Wjl/SzJマウス(NSG)マウスをJackson Laboratories(Bar Harbor,ME)から入手した。すべての動物実験が、The Ohio State University Animal Care and Use Committeeに承認され、それらの方法は、承認されたガイドラインに従って行われた。マウスを、GBの疾患進行について頻繁にモニターし、神経学的障害で瀕死になり、明白に体重減少したとき、屠殺した。
抗EGFR CARレンチウイルス構築物の作製
【0167】
抗EGFR一本鎖可変フラグメント(scFv)を、wtEGFRとEGFRvIIIの両方を認識するマウスモノクローナル抗体528を産生するハイブリドーマ細胞株から得た(Hayashi,H.ら(2004)Cancer Immunology,Immunotherapy:CII 53:497−509;Humphrey,P.A.ら(1990)Proc Natl Acad Sci.USA 87:4207−4211)。重鎖(VH)および軽鎖(VL)の可変領域に対するコーディングドメイン配列を別々に増幅し、リンカーを用いて一部重複するPCR反応によってアセンブルした。VH−リンカー−VLフラグメントを、レトロウイルスベクターから切り出されたCD28−CD3ζ部分(Pule,M.A.ら(2005)Mol Ther.12:933−941)にインフレームで組み込んだ。次いで、抗EGFR−scFv−CD28−CD3ζフラグメント全体を、pCDH−CMV−MCS−EF1−copGFP(pCDH,System Biosciences,Mountain View,CA)と命名されたレンチウイルスベクターにライゲートして、pCDH−EGFR−scFv−CD28−CD3ζ(pCDH−EGFR−CAR)構築物を作製した。
レンチウイルスの作製およびNK細胞の形質導入
【0168】
NK細胞(NK−92およびNKL)に感染させるためのレンチウイルスを作製するために、293T細胞を、リン酸カルシウムトランスフェクション試薬(Promega,Madison,WI)を用いて、パッケージング構築物pCMV−VSVGおよびpCMV−DR9とともに、上述のpCDH−EGFR−scFv−CD28−CD3ζプラスミドまたはmock pCDHベクターでコトランスフェクトした。トランスフェクションおよび感染手順は、以前に公開されたプロトコル(Chu,J.ら(2014)Leukemia 28:917−927)から改変した。
wtEGFRまたはEGFRvIIIを安定に発現するGB19幹細胞の作製
【0169】
Phoenix細胞を、リン酸カルシウムトランスフェクション試薬(Promega,Madison,WI)を用いて、Sara3パッケージングプラスミドとともに、pBABE−wtEGFR(wtEGFR発現構築物)またはpBABE−EGFRvIII(EGFRvIII発現構築物)またはpBABE空ベクターでコトランスフェクトした。トランスフェクションの2日後、感染性の上清を回収して、ポリブレン(8μg/mL)の存在下においてGB19幹細胞に感染させた。レトロウイルスを、GB19幹細胞への感染のために無血清DMEM−F12培地中に産生させ、その後、GFP陽性のGB19−wtEGFRまたはGB19−EGFRvIII細胞を、FACS Aria IIセルソーター(BD Biosciences,San Jose,CA)を用いて選別した。
フローサイトメトリー
【0170】
EGFR−CARのNK細胞表面発現を評価するために、形質導入されたNK細胞を、4%BSAを含むPBSで洗浄し、以前に報告されたように(Chu,J.ら(2014)Leukemia 28:917−927)、ビオチン標識ヤギ抗マウスF(ab’)
2ポリクローナル抗体またはアイソタイプコントロールとして通常のポリクローナルヤギIgG抗体(Jackson ImmunoResearch,West Grove,PA)とインキュベートした。次いで、細胞を再度洗浄し、アロフィコシアニン(APC)結合体化ストレプトアビジン(Jackson ImmunoResearch,West Grove,PA)で染色した。GB細胞表面上のwtEGFRおよび/またはEGFRvIIIの発現を測定するために、それらの細胞を、野生型EGFRとその変異型(EGFRvIII)の両方を認識するマウスモノクローナル抗ヒトEGFR(クローンH11,DAKO,Carpinteria,CA)とインキュベートした後、APC結合体化ヤギ抗マウスIgG二次抗体で染色した。
逆転写PCR
【0171】
神経膠腫細胞におけるEGFR mRNAの発現を検出するために、RNAを、RNeasy Mini Kit(Qiagen,Hilden,Germany)を用いてその細胞株から抽出し、NanoDrop(Thermo Fisher,Wilmington,DE)で定量した。M−MLV逆転写酵素(Invitrogen,Grand Island,NY)を用いて逆転写物を生成し、GoTaq(登録商標)Flexi DNAポリメラーゼ(Promega,Madison,WI)を用いてPCRを行った。順方向プライマーは、
【化25】
であり、逆方向プライマーは、
【化26】
である。PCR反応のパラメータは、95℃5分、および95℃40秒、55℃40秒、72℃1分を35サイクル、および72℃で10分間の最終的な伸長である。
細胞傷害アッセイ
【0172】
標準的な4時間の
51Cr放出アッセイを、以前に報告されたように(Yu,J.ら(2010)Blood 115:274−281)行った。簡潔には、標的細胞を、
51Crで標識し、96ウェルV底プレートのウェルにおいて37℃で4時間、改変されたNK細胞と様々なエフェクター/標的比(E/T)で共培養した。上清を回収し、液体シンチレーションカクテル(Fisher Scientific,Waltham,MA)を含むシンチレーションバイアルに移し、
51Crの放出をBeckman Liquid Scintillation Counter LS−6500において計測した。完全培地中または1%SDS中でインキュベートされた標的細胞を使用して、それぞれ自発的なまたは最大の
51Cr放出を測定した。特異的細胞溶解のパーセンテージを、標準的な式:100×(実験による放出のcpm−自発的な放出のcpm)/(最大の放出のcpm−自発的な放出のcpm)を用いて算出した。
IFN−γ放出アッセイ
【0173】
1×10
6個の標的細胞を、同数のNKエフェクター細胞とともに、96ウェルV底プレートにおいて24時間インキュベートした。無細胞上清を、R&D Systems(Minneapolis,MN)製のキットを製造者のプロトコルに従って用いて酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)によってIFN−γの分泌についてアッセイした。図面に示されているデータは、同様の結果だった3つの代表的な実験のうちの1つの3つ組のウェルの平均値である。
NSGマウスにおける同所ヒトGB30異種移植片の処置
【0174】
GB30GB幹細胞に、先に記載されたように(He,S.ら(2013)Blood 121:4663−4671)、ホタルルシフェラーゼ(FFL)を発現するPinco−pGL3−luc/GFPウイルスをレトロウイルス的に形質導入した。GFP陽性細胞を、FACS Aria IIセルソーター(BD Biosciences,San Jose,CA)を用いて選別し、「GB30−FFL」細胞と命名した。NSGマウスを麻酔し、定位装置において固定し、ブレグマに対して2mm外側および1mm腹側に3.25mmの深さの穿頭孔を開け、2μlのハンクス緩衝塩溶液(HBSS)中の5×10
4個のGB30−FFL細胞を植え込んだ。7日目に、5μlのHBSS中の、2×10
6個のエフェクター細胞(放射線照射されていない)、すなわちEGFR−CARを形質導入されたNK−92細胞(NK−92−EGFR−CAR)またはmockを形質導入されたNK−92細胞(NK−92−EV)をマウスの頭蓋内に注射した。5μlのHBSSのみで処置したマウスをコントロールとして使用した。マウスを毎日モニターし、罹患の徴候を示したら、安楽死させた。GB30−FFL細胞接種の2週間後、D−ルシフェリン(150mg/kg体重;Gold Biotechnology,St.Louis,MO)をマウスの腹腔内に(i.p.)注入し、イソフルランで麻酔し、生体画像化ソフトウェア(PerkinElmer)を備えるインビボイメージングシステム(IVIS−100,PerkinElmer,Waltham,MA)を用いて画像化した。
NSGマウスにおける同所ヒトU251異種移植片の処置
【0175】
U251 GB細胞に、先に記載されたように(He,S.ら(2013)Blood 121:4663−4671)、ホタルルシフェラーゼ(FFL)を発現するPinco−pGL3−luc/GFPウイルスをレトロウイルス的に形質導入した。GFP陽性細胞を、FACS Aria IIセルソーター(BD Biosciences,San Jose,CA)を用いて選別し、「U251−FFL」細胞と命名した。NSGマウスを麻酔し、定位装置において固定し、ブレグマに対して2mm外側および1mm腹側に3.25mmの深さの穿頭孔を開け、その穿頭孔を通じて、2μlのハンクス緩衝塩溶液(HBSS)中の10
5個のU251−FFL細胞を0日目に接種した。10、40、70日目に、5μlのHBSS中の、2×10
6個のエフェクター細胞、すなわちEGFR−CARを形質導入されたNK−92細胞(NK−92−EGFR−CAR)またはmockを形質導入されたNK−92細胞(NK−92−EV)をマウスの頭蓋内に注射した。5μlのHBSSのみで処置したマウスをコントロールとして使用した。マウスを毎日モニターし、罹患の徴候を示したら、安楽死させた。U251−FFL細胞接種の100日目に、D−ルシフェリン(150mg/kg体重;Gold Biotechnology,St.Louis,MO)をマウスの腹腔内に(i.p.)注入し、イソフルランで麻酔し、生体画像化ソフトウェア(PerkinElmer)を備えるインビボイメージングシステム(IVIS−100,PerkinElmer,Waltham Massachusetts,USA)を用いて画像化した。
NK−92−EGFR−CAR細胞の器官および組織分布アッセイ
【0176】
2×10
6個のNK−92 EGFR−CAR細胞を、腫瘍の植え込みの7日後に、3匹のGB30を有するマウスの頭蓋内に注射した。3日後、すべてのマウスを屠殺し、肝臓、肺、脾臓、骨髄、血液および脳を回収した。器官または組織の半分を、DNA単離キット(Invitrogen,Carlsbad,CA)を用いるゲノムDNAの単離のために使用し、EGFR−CAR scFv領域を増幅するためのプライマーを用いてPCRを行った。PCR順方向プライマーは、
【化27】
であり、逆方向プライマーは、
【化28】
であった。PCR反応のパラメータは、95℃5分、および95℃40秒、55℃40秒、72℃1分を35サイクル、および72℃で10分間の最終的な伸長であった。
【0177】
器官または組織の他方の半分を、Percoll(GE Healthcare,Pittsburgh,PA)における密度勾配遠心分離を用いて単核免疫細胞を単離するために使用した。回収された免疫細胞を、V450マウス抗ヒトCD3eおよびAPCマウス抗ヒトCD56抗体(eBioscience,San Diego,CA)で表面染色して、特定の器官または組織におけるNK−92−EGFR−CAR細胞の存在を判定した。
統計解析
【0178】
正規分布の場合、対応のないスチューデントt検定を用いて、独立した2つの群を連続したエンドポイントについて比較した。独立した3つまたはそれを超える群を比較するときは、1元配置分散分析を用いた。インビボ生物発光強度などの非正規分布のエンドポイントの場合、クラスカル・ワリス検定を用いて、NK−92−EGFR−CAR群の中央値とNK−92−EVおよびHBSS処置群の中央値を比較した。生存データの場合、カプラン・マイヤー曲線をプロットし、ログランク検定を用いて比較した。すべての検定が両側の検定である。多重比較の場合、ボンフェローニ法を用いてP値を調整した。0.05未満のP値を有意であるとみなした。
【0179】
wtEGFRまたはEGFRvIIIを安定に発現している293T細胞株の作製。Phoenix細胞を、リン酸カルシウムトランスフェクション試薬(Promega,Madison,WI,USA)を用いて、Sara3パッケージングプラスミドとともに、pBABE−wtEGFR(wtEGFR発現構築物)、pBABE−EGFRvIII(EGFRvIII発現構築物)またはpBABE空ベクターでコトランスフェクトした。トランスフェクションの2日後、上清を回収して、ポリブレン(8μg/mL)の存在下において293T細胞に感染させた。GFP陽性細胞を、FACS Aria IIセルソーター(BD Biosciences,San Jose,CA,USA)を用いて選別した。
【0180】
レンチウイルスの作製および初代NK細胞の形質導入。レンチウイルスを、先に報告されたように(Chu,J.ら(2014)Leukemia 28:917−927)作製し、4℃、20,000gで90分間、超遠心機によって濃縮し、1×PBSで再懸濁した。ヒト初代NK細胞を、以前に報告されたように(He,S.ら(2013)Blood 121:4663−4671)、健康ドナーの末梢血ロイコパック(leukopack)(American Red Cross,Columbus,Ohio)から単離し、2000rpmおよび32℃での2時間の連続した3回の遠心分離(遠心分離ごとに静かに再懸濁する)によってレンチウイルス(MOI=2.5)に感染させ、GFP陽性細胞を、FACS Aria IIセルソーター(BD Biosciences,San Jose,CA,USA)を用いて選別した。標準的な4時間の
51Cr放出アッセイを行うことにより、EGFR−CARプラスミドまたはコントロールベクターを形質導入された初代NK細胞の、U251およびGli36dEGFR GB細胞株ならびにGB30およびGB157V3SL患者由来GB幹細胞に対する細胞傷害性を評価した。
【0181】
抗体ブロッキングアッセイ。GB30幹細胞およびU251細胞株を、37℃で30分間、10μg/mlのEGFR中和抗体(クローン528,EMD Millipore,Billerica,MA)またはアイソタイプ一致抗体で前処理した。次いで、標準的な4時間の51Cr放出アッセイを行うことにより、NK−92−EGFR−CAR細胞およびコントロール細胞の、528抗体またはIgGで前処理された標的細胞に対する細胞傷害性を評価した。528抗体またはIgGで前処理された1×10
6個の標的細胞を、同数のNK−92−EGFR−CAR細胞またはコントロール細胞とともに96ウェルV底プレートにおいて24時間インキュベートした後の無細胞上清におけるELISAによって、IFN−γの分泌も定量した。
【0182】
GB30を有するマウスの脳切片のヘマトキシリン−エオシン(H&E)染色。0日目に、NSGマウスの頭蓋内に5×10
4個のGB30細胞を注射した。7日目に、それらのマウスの頭蓋内に、5μlのHBSS中の2×10
6個のNK−92−EGFR−CAR細胞を注射した。10日目に、それらのマウスを屠殺し、脳組織を回収し、10%ホルマリンに24時間浸漬し、次いで、脳をパラフィンに包埋し、H&E染色に向けて処理した。
結果
GB細胞株上および患者由来GB幹細胞上のEGFRまたはEGFRvIIIの発現
【0183】
GB細胞株および患者由来GB幹細胞のパネル上のwtEGFRまたはEGFRvIIIの表面発現を評価するために、インタクトな細胞を、wtEGFRとEGFRvIIIの両方を認識するEGFR特異的抗体で染色した後、フローサイトメトリー解析を行った。
図1Aに示されているように、EGFRが、GB細胞株(Gli36dEGFR、U251およびLN229)、患者由来GB間葉系(MES)幹細胞(GB30、GB83、GB1123およびGB326)およびGB前神経(PN)幹細胞(GB84V3SおよびGB157V3SL)の表面上に発現された。wtEGFRまたはEGFRvIIIの転写物が、これらの細胞において発現されたかをさらに評価するために、本出願人は、特異的プライマーを用いるRT−PCRを行い、wtEGFR mRNAが2つのGB細胞株U251およびLN229において発現されたことを観察した。EGFRvIII mRNAは、GB細胞株Gli36dEGFR、および本出願人がGB患者から作製した6つのGB幹細胞(Mao,P.ら(2013)Proc Natl Acad Sci.USA 110:8644−8649):GB30、GB83、GB1123、GB326、GB84V3SLおよびGB157V3SLにおいて検出可能であった(
図1B)。対照的に、1つのGB幹細胞GB19(前神経)ならびに2つのNK細胞株NK−92およびNKLにおけるEGFR発現は、フローサイトメトリー解析またはRT−PCRによって検出不可能だった(
図1A、1B)。
EGFR−CARを発現するNK−92およびNKL NK細胞の作製
【0184】
第2世代のEGFR特異的CAR構築物をpCDHレンチウイルスベクター骨格において作製した。この構築物は、シグナルペプチド(SP)、重鎖可変領域(VH)、リンカー、軽鎖可変領域(VL)、ヒンジ、CD28膜貫通および細胞内ドメイン、ならびにCD3ζシグナル伝達部分を順に含む(
図2A)。NK−92 EGFR−CAR細胞およびNKL EGFR−CAR細胞を作製するために、それぞれNK−92細胞株およびNKL細胞株にEGFR−CAR構築物を形質導入した。形質導入された細胞を、そのベクターによって発現されたGFPの発現について選別した。形質導入されたNK−92細胞およびNKL細胞上でのEGFR−CARの細胞表面発現を検証するために、抗EGFRのscFv部分を認識するヤギ抗マウスF(ab’)
2抗体を用いてフローサイトメトリー解析を行った。
図2Bのデータは、空のベクターを形質導入された細胞を超える、EGFR−CARを形質導入されたNK−92およびNKL細胞における細胞表面のEGFR−CAR発現の明白な増加を示し、空のベクターを形質導入された細胞のEGFR−CAR発現は、検出不可能であった。
EGFR
+GB細胞株に対する、EGFR−CARによって改変されたNK細胞の細胞傷害性およびIFN−γ産生の有効性
【0185】
EGFR−CARおよびmockを形質導入されたNK細胞の、GB細胞に対する細胞傷害性を、エフェクター細胞と標的細胞との様々な比における標準的なクロム放出アッセイを用いて評価した。
図3A〜3Bは、コントロールNK−92−EV細胞と比較したとき、EGFR
+Gli36dEGFR、U251およびLN229細胞に対するNK−92 EGFR−CAR細胞の有意に増強された細胞傷害性を示している(
図3A、上のパネル)。同様のデータが、EGFR−CARを形質導入されたNKL細胞株を用いた実験において観察された(
図3A、下のパネル)。EGFR−CARを形質導入されたヒト初代NK細胞も、EGFR
+Gli36dEGFRおよびU251GB細胞株に対して、コントロール細胞よりも有意に強力な細胞傷害性を示した(
図8A)。観察された細胞溶解活性の増強が、IFN−γ分泌の同様の有意な増加を伴うかを判定するために、本出願人は、EGFR−CAR NK−92細胞をEGFR
+神経膠腫細胞(Gli36dEGFR、U251およびLN229)細胞と24時間共培養し、IFN−γ産生をELISAによって計測した。
図3Bに示されているように、EGFR−CARによって改変されたNK−92またはNKL細胞とmockを形質導入されたNK−92またはNKL細胞の両方が、単独でインキュベートされたとき、低レベルまたは無視できるレベルのIFN−γを自発的に産生した。これらの細胞をEGFR
+神経膠腫細胞(Gli36dEGFR、U251およびLN229)とともに培養すると、EGFR−CARを形質導入されたNK−92またはNKL細胞株とmockを形質導入されたNK−92またはNKL細胞株の両方においてIFN−γが誘導され、EGFR−CARによって改変されたNK−92またはNKL細胞によって産生されたIFN−γのレベルは、mockを形質導入されたNK−92またはNKL細胞によって産生されたIFN−γのレベルよりもそれぞれ有意に高かった(
図3B)。これらの結果は、上述の細胞傷害性データと一致し、これらを合わせると、EGFR−CARによる改変が、EGFR
+神経膠腫細胞に応答するNK細胞のエフェクター機能を有意に高め得ることが示唆される。
GB患者に由来するEGFR
+GB幹細胞に対する、EGFR−CARによって改変されたNK細胞の細胞傷害性およびIFN−γの産生の有効性
【0186】
本出願人は、次に、EGFR−CARによって改変されたNK−92およびNKL細胞が、内在性のEGFRタンパク質の表面発現を有する患者由来GB幹細胞を溶解する能力を評価した。EGFR−CARを形質導入されたNK−92細胞は、mockを形質導入されたNK細胞と比べて、EGFR
+GB間葉系幹細胞(GB1123およびGB30)およびGB前神経幹細胞(GB157V3SLおよびGB84V3SL)を殺滅する有意に増強された能力を示した(
図4A、上のパネル)。同様のデータが、EGFR−CARを形質導入されたNKL細胞を用いて繰り返された実験において観察された(
図4A、下のパネル)。EGFR−CARを形質導入された初代NK細胞も、EGFRvIIIを発現する患者由来幹細胞GB30およびGB157V3SLに対して、コントロール細胞よりも有意に強力な細胞傷害性を示した(
図8B)。同様に、EGFR−CARを形質導入されたNK−92およびNKL細胞は、EGFR
+GB幹細胞と共培養したとき、mockを形質導入されたNK−92(
図4B、上のパネル)およびNKL細胞(
図4B、下のパネル)と比べて、有意に多いIFN−γを産生した。これらの結果から、EGFR−CARによるNK細胞の改変は、未改変NK細胞コントロールと比べて、EGFR
+GB幹細胞に対するNK細胞の細胞傷害性およびIFN−γの産生を有意に増強できることが示唆される。
NK−92−EGFR−CAR細胞の増強された細胞傷害性およびIFN−γ産生は、標的細胞上のEGFRの表面発現に依存する
【0187】
本出願人は、次に、GB細胞によって引き起こされる、EGFR−CARを形質導入されたNK−92またはNKL細胞における増強された細胞溶解活性およびIFN−γ産生が、細胞表面EGFR抗原の発現に依存するかを調査した。試験されたGB細胞のうち、GMB19幹細胞だけが、EGFRまたはEGFRvIIIをそれらの表面上に発現しなかった。したがって、本出願人は、この細胞株を使用することにより、GB19細胞における強制的なwtEGFRまたはEGFRvIIIの過剰発現が、EGFR−CARを形質導入されたNK−92またはNKL細胞に対するそれらの感度を変化させるのに十分であるかを調べた。この目的のために、本出願人は、レトロウイルス感染によってwtEGFRまたはEGFRvIIIをGB19細胞上に過剰発現させ、フローサイトメトリー解析によって確認した(
図5A)。EGFR発現を欠く標的GB19細胞またはmockを形質導入されたNK−92およびNKLエフェクター細胞と比べて、EGFRまたはEGFRvIIIを外因的に(exogeneously)過剰発現するGB19細胞に対するEGFR−CARによって改変されたNK−92およびNKL細胞の細胞傷害活性が有意に上昇した(
図5B)。同様に、EGFR−CARを形質導入されたNK−92およびNKL細胞は、EGFRまたはEGFRvIIIを過剰発現しているGB19細胞と共培養したとき、EGFRの過剰発現を欠く標的GB19細胞またはmockを形質導入されたNK−92およびNKLエフェクター細胞と比べて、有意に高レベルのIFN−γを分泌した(
図5C)。これらの結果から、NK−92−EGFR−CAR細胞による、wtEGFRまたはEGFRvIIIを発現しているGB細胞の認識および排除の増加が、EGFR依存的様式で生じることが示唆される。また、これらの結果は、293T細胞における強制的なEGFR発現が、空のベクターを形質導入されたNK−92細胞と比べて、NK−92−EGFR−CAR細胞の細胞傷害性およびIFN−γ産生を増加させたことを示す確証的実験と一致した(
図9A〜9C)。さらに、本出願人は、GB30およびU251細胞をEGFR中和抗体(scFv起源と同じクローン)で前処理した後、その前処理された腫瘍細胞とmock細胞またはNK−92−EGFR−CAR細胞と共培養した。クロム−51放出アッセイは、EGFR遮断抗体が、アイソタイプ一致コントロール抗体と比べて、NK−92−EGFR−CARにおける細胞傷害性とIFN−γ産生の両方の増強を鈍らせたことを示した(
図10)ことから、本出願人がNK−92−EGFR−CAR細胞に対して特定した効果がEGFR依存性であることがさらに確認された。
NK−92−EGFR−CAR細胞は、2つの同所異種移植GBモデルにおいて、GB腫瘍の成長を阻害し、腫瘍を有するマウスの生存を延長する
【0188】
NK−92−EGFR−CAR細胞の潜在的な治療用途にさらに応えるために、本出願人は、それらの抗腫瘍活性をインビボにおいて調べた。本出願人は、ホタルルシフェラーゼをNSGマウスの脳内に発現するように遺伝的に操作された、EGFRvIIIを発現しているGB30神経膠腫幹細胞(GB30−FFL)を頭蓋内に植え込むことによって同所神経膠腫を確立した。ホタルルシフェラーゼの発現によって、インビボ生物発光イメージングを介して腫瘍の成長をモニターすることが可能になった。潜在的な全身毒性を最小限にするために、本出願人は、腫瘍細胞の植え込みの7日後にNK−92−EGFR−CARを腫瘍内に注射した。
図6A〜6Bに示されているように、EGFR−CARまたはmockを形質導入されたNK−92細胞を投与されたマウスは、生物発光イメージングによって測定されたとき、HBSSを注射されたマウスと比べて、有意に低い腫瘍成長を示した。しかしながら、重要なことには、腫瘍成長の減少は、mockを形質導入されたNK−92細胞で処置されたマウスより、NK−92−EGFR−CAR細胞で処置されたマウスにおいて有意に大きかった。これらのデータと一致して、NK−92−EGFR−CAR細胞で処置されたマウスは、mockを形質導入されたNK−92細胞またはHBSSで処置されたマウスよりも有意に長く生存した(NK−92−EGFR−CARで処置されたマウスとNK−92−EVで処置されたマウスとの間で38日 対 23日という生存期間中央値、p<0.01;NK−92−EGFR−CARで処置されたマウスとHBSSで処置されたマウスとの間で38日 対 17日という生存期間中央値、p<0.01)(
図6C)。wtEGFRを発現しているGB腫瘍に対するNK−92−EGFR−CAR細胞の治療効果にさらに応えるために、本出願人は、wtEGFRを発現しているU251−FFL細胞をNSGマウスの頭蓋内に植え込むことによって同所GBモデルを確立した。本出願人は、腫瘍細胞の植え込みの10日後、40日後および70日後に、NK−92−EGFR−CAR細胞、NK−92−EV細胞、またはビヒクルコントロールとしてHBSSを腫瘍内に注射した。
図7A〜7Bに示されているように、EGFR−CAR細胞を腫瘍内に注射されたマウスの腫瘍量は、HBSSまたはNK−92−EV細胞を注入されたマウスと比べて有意に減少した。さらに、NK−92−EGFR−CAR細胞で処置されたマウスは、NK−92−EV細胞またはHBSSを投与されたマウスよりも有意に長く生存した(NK−92−EGFR−CARで処置されたマウスとNK−92−EV細胞で処置されたマウスとの間で187日 対 150日という生存期間中央値、p<0.05;NK−92−EGFR−CARで処置されたマウスとHBSSで処置されたマウスとの間で187日 対 138日という生存期間中央値、p<0.01)(
図7C)。まとめると、NK−92−EGFR−CAR細胞は、wtEGFRまたはEGFRvIIIを発現しているGBをインビボにおいて効率的に標的化でき、排除できた。
頭蓋内注射後のNK−92−EGFR−CAR細胞の遊走の評価
【0189】
NK−92−EGFR−CAR細胞の頭蓋内注射の安全性を評価するために、本出願人は、まず、頭蓋内注射後の細胞の全身分布を解析した。本出願人は、フローサイトメトリー解析およびより高感度のPCRアプローチを試みることにより、GB30を有するマウスへの頭蓋内注射の3日後に回収した種々の器官および組織におけるNK−92−EGFR−CAR細胞の分布を評価した。
図6Dに示されているように、CD56+細胞は、脳においてのみ特定することができ、脳内の全免疫浸潤細胞のたった10.2%しか構成していなかった。同様に、PCR解析は、脳以外の試験されたいずれの器官部位においてもEGFR−CARの発現を検出できなかった(
図6E)。合わせると、これらのデータから、ヒトGBの同所マウスモデルにおけるNK−92−EGFR−CAR細胞の頭蓋内投与は、エフェクター細胞が頭蓋外に遊走することなく行うことができることが示唆される。本出願人は、次に、NK−92−EGFR−CAR細胞を腫瘍内に注入された、GB30を有するマウスの脳切片のヘマトキシリン−エオシン(H&E)染色を行った。その結果は、NK−92−EGFR−CAR細胞が、腫瘍内にのみ分布することを示した(
図11)。
考察
【0190】
本研究では、本出願人は、ヒトGBを頭蓋内で標的化するためのEGFR−CARによって改変されたヒトNK−92細胞を利用する、GBに対する新規の有望なストラテジーを開発した。GB患者由来の腫瘍は、wtEGFRまたはwtEGFRとEGFRvIIIの両方のいずれかを発現する(Fan,Q.W.ら(2013)Cancer Cell 24:438−449)ことから、この表面タンパク質の両方の形態を標的化することが、より広い用途を有するかまたは1つだけを標的化するよりも有効であることが示唆される。本出願人は、本出願人の同所前臨床モデルにおいて、EGFR−CARによって改変されたNK−92細胞の頭蓋内注射のインビボにおける有効性および安全性も実証した。
【0191】
CAR T細胞は、難治性慢性リンパ性白血病および急性リンパ芽球性白血病を処置するために効果的に使用されており、これらの高度に薬物抵抗性の腫瘍に対する強力な新しい治療様式である(Porter,D.L.ら(2011)N Engl J Med.365:725−733;Grupp,S.A.ら(2013)N Engl J Med.368:1509−1518;Brentjens,R.J.ら(2013)Sci Transl Med.5:177ra138;Papapetrou,E.P.ら(2011)Nature Biotechnology 29:73−78)。また、いくつかの研究が、GBを処置するためのCAR T細胞の使用を実証した(Morgan,R.A.ら(2012)Hum Gene Ther.23:1043−1053;Ohno,M.ら(2010)Cancer Sci.101:2518−2524;Ahmed,N.ら(2010)Clin Cancer Res.16:474−485)。しかし、これらの研究は、EGFRvIIIの標的化だけに焦点を当てていた。さらに、CAR T細胞は、サイトカイン関連の有害事象および腫瘍溶解症候群を引き起こし得(Grupp,S.A.ら(2013)N Engl J Med.368:1509−1518;Morgan,R.A.ら(2010)Mol Ther.18:843−851)、それによって、かなりの毒性がもたらされ得るか、または患者が死に至り得る。さらに、自家CAR T細胞の作製は、高価かつ時間のかかるアプローチである。したがって、wtEGFRとEGFRvIIIの両方を標的化するCAR NK細胞をGB処置のために利用することが、優良な代替アプローチである。
【0192】
CARで操作されたNK細胞株(例えば、本研究で使用されたNK−92)は、種々のGB患者を広く処置する再生可能な既製品を提供できる可能性を秘めている。本出願人の本研究は、GBに対するCARによって改変されたNK−92細胞の利用を研究した初めての研究である。CARによって改変されたNK−92細胞は、他の癌を効果的に標的化すると示されている。例えば、Esserらは、神経芽細胞腫(NB)細胞上に高レベルで発現されるジシアロガングリオシドGD2に対するCARを安定に発現するようにNK−92細胞を操作した(Esser,R.ら(2012)J Cell Mol Med.16:569−581)。NK−92細胞上のGD2−CARの発現が、親NK−92細胞による殺滅に抵抗性だった、GD2を発現しているNB細胞の特異的排除を増強したことから、NBに対するGD2−CAR NK細胞の潜在的な臨床的有用性が実証された。本出願人は、最近、多発性骨髄腫(MM)細胞を標的化するための、CS1−CARを発現するNK−92細胞を開発し、これらの操作されたNK−92細胞が、MM細胞とインビトロにおいて共培養されたとき、細胞溶解およびIFN−γ産生の増強を示すことができたことを実証した(Chu,J.ら(2014)Leukemia 28:917−927)。重要なことに、高悪性度の同所MM異種移植マウスモデルにおいて、CS1−CARによって改変されたNK−92細胞の養子移入は、ヒトIM9 MM細胞の播種をインビボにおいて効率的に妨害し、また、IM9を有するマウスの全生存時間を有意に延長した(Chu,J.ら(2014)Leukemia 28:917−927)。
【0193】
本出願人の知る限りでは、これは、GB処置のためにwtEGFRとEGFRvIIIの両方を標的化するCAR免疫細胞の可能性を研究した最初の研究である。本出願人は、wtEGFRまたはEGFRvIIIのいずれかを発現しているGB細胞をインビトロにおいて効率的に溶解する、EGFR−CARで操作されたNK−92およびNKL細胞ならびに初代NK細胞を作製した。両方の分子が、神経膠腫発生(gliomagenesis)に寄与する役割を果たす。EGFRvIIIを発現している細胞は、一般に、同じ患者においてwtEGFRを発現している細胞と共存する。Biernatは、EGFR
+GBバイオプシーの40%(20個のうち8個)がEGFRvIII陽性であると示したが、たった15%(20個のうち3個)しかEGFRvIII増幅が優勢でなかったことを報告したことから、EGFRvIIIを選択的に標的化することに基づく治療的アプローチとして、限定的な有効性しか達成できなかったことが示唆される(Biernat,W.ら(2004)Brain Pathol.14:131−136)。別の研究では、58個のGB腫瘍のうち、83%(48/58)が、IHCによってwtEGFRを染色した。さらに、これらのサンプルの19%(11/58)が、wtEGFRおよびEGFRvIIIの二重陽性だった(Fan,Q.W.ら(2013)Cancer Cell 24:438−449)。これらの2つの研究は、かなりの部分のGB患者が、wtEGFRを発現している細胞およびEGFRvIIIを発現している細胞を有することを実証している。したがって、wtEGFRまたはEGFRvIIIのいずれかを選択的に標的化してGBを処置する治療的アプローチに対し、ここに記載されたEGFR−CAR NK治療は、wtEGFRとEGFRvIIIの両方を標的化する。上で述べたように、EGFRvIII特異的CAR T細胞は、EGFRvIIIを発現しているGBに対して良好な抗腫瘍活性をインビトロとインビボの両方において示す(Morgan,R.A.ら(2012)Hum Gene Ther.23:1043−1053;Ohno,M.ら(2010)Cancer Sci.101:2518−2524;Sampson,J.H.ら(2014)Clin Cancer Res.20:972−984)。本出願人は、wtEGFRとEGFRvIIIの両方を標的化するアプローチが、wtEGFRを発現している腫瘍細胞だけを有するGB患者だけでなく、wtEGFRを発現している腫瘍細胞とEGFRvIIIを発現している腫瘍細胞の両方を有するGB患者も処置するのに有効であるはずであると考える。この目的のために、本出願人は、wtEGFRとEGFRvIIIの両方を標的化するEGFR−CARを発現するようにNK−92細胞を操作し、wtEGFRまたはEGFRvIIIを発現しているGB細胞をインビトロおよび/またはインビボにおいて効率的に排除できたことを実証した。
【0194】
神経膠腫細胞上のwtEGFRならびにEGFRvIIIを標的化することの潜在的な難点は、正常な組織上にwtEGFRが存在する点である。EGFRvIIIは、高レベルのwtEGFRを発現し得る正常な上皮細胞上には発現されないので、EGFRvIII特異的CAR T細胞の全身注入は、比較的安全であると考えられている。しかしながら、NK−92−EGFR−CARまたは初代NK細胞の全身投与は、wtEGFRを発現している正常な細胞に対する影響に起因して重大な全身毒性をもたらし得る。このリスクを最小限にするために、本出願人は、NK−92−EGFR−CAR細胞を頭蓋内に注射して、それらの移動を限定したところ、これらのCAR細胞が、脳以外の組織では検出不可能なままであることが実証された。このストラテジーのさらなる裏付けにおいて、最近の研究は、wtEGFRとEGFRvIIIの両方を標的化するEGFR抗体由来のトキシン結合体化scFvの頭蓋内送達によって、wtEGFRを発現しているかまたはwtEGFRとEGFRvIIIとを同時発現している頭蓋内神経膠芽腫異種移植片に対して強い抗腫瘍効果がもたらされることを示した。この局所投与は、明白な全身毒性を引き起こさなかった(Chandramohan,V.ら(2013)Clin Cancer Res.19:4717−4727)。さらに、本出願人のH&E染色も、脳内の植え込まれた腫瘍に注射されたNK−92−EGFR−CAR細胞が、その腫瘍領域に存在することを示した。しかしながら、NK−92は、リンパ腫細胞株であるので、将来の臨床応用では、CARを備えたNK−92細胞は、患者に注入する前に放射線照射されるべきである。いくつかの前臨床試験は、10Gyの放射線照射を受けたNK−92−CAR細胞が、放射線照射されていない細胞と比べて、インビトロおよびインビボにおいて同様の効果を示したことを実証した(Uherek,C.ら(2002)Blood 100:1265−1273;Schonfeld,K.ら(2015)Mol Ther.23:330−338)。あるいは、EGFR−CAR初代NK細胞は、本出願人が示したように、EGFR−CAR初代NK細胞がGB細胞を全滅させるほど強力であると考えられるべきである。重要なことに、膜結合型IL−15(mbIL15)または膜結合型IL−21(mbIL21)を発現する遺伝的に操作された人工抗原提示細胞(aAPC)が、初代NK細胞を首尾良く拡大するために最近使用された(Jordan,C.T.(2009)Cell Stem Cell 4:203−205;Brennan,C.ら(2009)PLoS One 4:e7752)。
【0195】
重要なことに、本出願人の研究において、本出願人は、試験された患者由来GB幹細胞の大部分の細胞上に内在性EGFRvIIIが高発現していることを観察したことから、それらの細胞は、コントロールベクターを形質導入されたNK−92細胞よりもNK−92−EGFR−CAR細胞による溶解に対してより感受性である。GB幹細胞は、原発性GBの生物学的特徴および病理学的特徴を反映する腫瘍細胞の部分集団であり、自己複製、多系列分化および腫瘍集団全体の再生を起こす能力を保持する(Jordan,C.T.(2009)Cell Stem Cell 4:203−205)。GB幹細胞は、腫瘍のイニシエーション、伝播、再発ならびに化学療法抵抗性および放射線抵抗性に関与すると考えられている。GB幹細胞を標的化することは、GB再発の予防における重要な局面であると考えられている。実際に、本出願人のインビボデータは、NK−92−EGFR−CAR細胞の1回の投与が、EGFRvIIIを発現している患者由来GB幹細胞を植え込まれたマウスの生存時間を有意に延長することを示している。したがって、本出願人は、本出願人の研究が、インビトロと2つの異種移植マウスモデルの両方においてGB細胞およびGB幹細胞を標的化するためにNK−92−EGFR−CAR細胞を使用することが、再発したヒトGBをクリニックにおいて潜在的に処置するのに非常に妥当であることを実証していると考える。
【0196】
GBは、異なる分子サブタイプから構成される。間葉系(MES)GBおよび前神経(PN)GBが、GBの最も重要なサブタイプとして同定された(Mao,P.ら(2013)Proc Natl Acad Sci.USA 110:8644−8649;Brennan,C.ら(2009)PLoS One 4:e7752;Phillips,H.S.ら(2006)Cancer Cell 9:157−173;Verhaak,R.G.ら(2010)Cancer Cell 17:98−110)。本出願人の実験では、すべてのMESおよび本出願人が試験した3つのPN GB幹細胞(GSC)のうちの2つが、フローサイトメトリーによってEGFR発現について陽性だった。PCR解析は、これらのGB幹細胞のすべてがEGFRvIIIを発現する一方で、GB非幹細胞株は、通常wtEGFRだけを発現する(Gli36dEGFRにおけるEGFRvIIIの異所的な過剰発現を除く)ことをさらに実証した。これらの知見と一致して、本出願人のインビトロデータは、EGFR−CAR NK細胞が、PNまたはMES EGFR
+GSCとともにインビトロで培養されたとき、IFN−γ分泌および細胞傷害性の増強を示すことを実証している。MES GSCは、インビトロにおいてより高悪性度であり、インビボにおいて直ちに頭蓋内異種移植片を生じることができる(Mao,P.ら(2013)Proc Natl Acad Sci.USA 110:8644−8649)。MES GSCは、PN GSCと比べて放射線照射に顕著な抵抗性も示す(Mao,P.ら(2013)Proc Natl Acad Sci.USA 110:8644−8649)。本出願人のインビボデータは、NK−92−EGFR−CAR細胞が、高悪性度のGB30 MES GSC異種移植モデルにおいて有効性を示すことを実証した。
【0197】
結論として、本出願人は、GBにおけるwtEGFRとEGFRvIIIの両方を標的化するCAR NK細胞の作製に成功した。このEGFR−CARを備えたNK細胞は、GB細胞および/またはそれらの幹細胞をインビトロおよび/またはインビボで効率的かつ特異的に認識し、全滅させる。本出願人の研究は、単独でまたは他のアプローチと併用して局所的に投与され得る、再発したGBを処置するためのEGFR−CARによって改変されたNK−92細胞の臨床応用を裏付ける。
実験2−EGFR CARを発現している細胞とoHSVとの併用
細胞培養
【0198】
ヒト乳癌細胞株MDA−MB−231、MDA−MB−468およびMCF−7、ならびに293TおよびPhoenix細胞を、10%FBS、ペニシリン(100U/ml)およびストレプトマイシン(100μg/ml)(すべてInvitrogen製)が補充されたDMEM(Invitrogen,Grand Island,NY)中で培養した。ヒトNK細胞株NK−92および初代NK細胞(ColumbusにあるAmerican Red Crossから入手した)を、20%FBS、ペニシリン(100U/ml)、ストレプトマイシン(100μg/ml)および200IU/mL組換えヒト(rh)IL−2(Gold Biotechnology,MO)が補充されたRPMI−1640(Invitrogen)中で維持した。
マウス
【0199】
6〜8週齢のNOD.Cg−Prkdc
scidIl2rg
tm1Wjl/SzJ(NSG)マウスをJackson Laboratories(Bar Harbor,ME)から入手した。すべての動物実験が、The Ohio State University Animal Care and Use Committeeに承認された。マウスを、疾患進行について毎日モニターし、神経学的障害で瀕死になるか明白に体重減少したとき、屠殺した。
EGFR−CARレンチウイルスの構築物の作製
【0200】
抗EGFR一本鎖可変フラグメント(scFv)を、wtEGFRとEGFRvIIIの両方に対して特異的なモノクローナル抗体をコードするDNA配列から得た。Soffiettiら(2002)J.Neurol.249(10):1357−1369を参照のこと。VH−リンカー−VLフラグメントを、レトロウイルスベクターから切り出されたCD28−CD3ζ部分にインフレームで組み込んだ。次いで、抗EGFR−scFv−CD28−CD3ζフラグメント全体を、pCDH−CMV−MCS−EF1−copGFP(System Biosciences,Mountain View,CA)と命名されたレンチウイルスベクターにライゲートして、pCDH−EGFR−scFv−CD28−CD3ζ(pCDH−EGFR−CAR)構築物を作製した。
レンチウイルスの作製およびNK−92細胞の形質導入:
【0201】
NK−92細胞に感染させるためのレンチウイルスを作製するために、293T細胞を、リン酸カルシウムトランスフェクション試薬(Promega,Madison,WI)を用いて、パッケージング構築物pCMV−VSVGおよびpCMV−DR9とともに、上述のpCDH−EGFR−scFv−CD28−CD3ζプラスミドまたはmock pCDHベクターでコトランスフェクトした。トランスフェクションおよび感染の手順は、Chuら(2014)Official Journal of the AACR,20(15):3989−4000のプロトコルから改変した。
CBRluc−EGFPを安定に発現するMDA−MB−231細胞の作製:
【0202】
CBRluc−EGFPを安定に発現するMDA−MB−231細胞を、Chuら(2014)のプロトコルに従ってΔU3CBRluc−EGFPベクター(Dr.JF DiPersioからの寛大な寄贈品)によるレトロウイルストランスフェクションによって作製した。次いで、EGFP陽性乳癌細胞を、FACS Aria IIセルソーター(BD Biosciences,San Jose,CA)を用いて選別し、拡大することにより、MDA−MB−231−CBRluc−EGFP細胞を得た。
フローサイトメトリー解析:
【0203】
乳癌細胞株の表面上のEGFR発現を測定するために、細胞をマウスモノクローナル抗ヒトEGFR(クローンH11,DAKO)抗体とインキュベートした後、APC結合体化ヤギ抗マウスIgG二次抗体で染色した。EGFR−CARの表面発現を、Chuら(2014)に記載されているようにフローサイトメトリーによって評価した。
ヘマトキシリン−エオシン(HE)染色および免疫組織化学(IHC)アッセイ:
【0204】
原発性乳癌と脳転移の両方を有する患者由来の腫瘍組織のパラフィン包埋切片を、IHCのためにHEまたは抗野生型EGFR抗体(1:2000,DAK−H1−WT;Agilent Technologies,Santa Clara,CA)で染色した。自動免疫染色機(BenchMark XT,Ventana Medical Systems,Tucson,AZ)を製造者の指示書に従って使用した。Leicaレーザー共焦点顕微鏡(SP5Wetzlar,Germany)によって切片を可視化し、写真撮影した。
細胞傷害アッセイ
【0205】
標準的な4時間の
51Cr放出アッセイを、以前に報告されたように(Yu,J.ら(2010)Blood 115:274−281)行った。特異的細胞溶解のパーセンテージを、標準的な式:100×(実験による放出のcpm−自発的な放出のcpm)/(最大の放出のcpm−自発的な放出のcpm)を用いて算出した。
IFN−γ放出アッセイ
【0206】
1×10
6個の標的細胞を、同数のエフェクター細胞と、96ウェルV底プレートのウェルにおいて24時間インキュベートした。無細胞上清を、R&D Systems(Minneapolis,MN)製のキットを製造者のプロトコルに従って用いて酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)によってIFN−γの分泌についてアッセイした。図面に示されているデータは、同様の結果だった3つの代表的な実験のうちの1つからの3つ組のウェルの平均値である。
MTSアッセイ
【0207】
乳癌細胞株の細胞(5×10
3個)を96ウェル平底培養プレートに播種し、10%FBSを含むDMEM培地中において37℃でインキュベートした。処理の終わりに、迅速なテトラゾリウムベースのMTS(3−(4,5−ジメチルチアゾール−2−イル)−5−(3−カルボキシメトキシフェニル)−2−(4−スルホフェニル)−2H−テトラゾリウム内塩)比色アッセイ(CellTiter96細胞増殖アッセイキット;Promega,Madison,WI)を製造者の指示書に従って用いて細胞生存率を測定した。Hayonら(2003)Leuk.Lymphoma 44(11):1957−1962を参照のこと。すべての実験が、別個の3回において少なくとも3つ組で行われた。
ルシフェラーゼアッセイ
【0208】
MDA−MB−231−CBRluc−EGFP細胞(5×10
3個)を96ウェル平底培養プレートに播種し、異なる処理とともに10%FBSを含むDMEM培地中において37℃でインキュベートした。種々の時点において、Fuら(2010)PLoS One.5(7):e11867に記載されているように、Dual−Glo Luciferase Assay System(Promega)を使用して、20μLの培養液をルシフェラーゼアッセイのために直接回収した。4日目に、細胞ペレットをPBSで2回すすぎ、次いで、30μLの1×受動溶解緩衝液(Promega)で溶解した。溶解産物を遠心分離(13,000rpm、1分)によってペレットにし、上清を回収してルシフェラーゼ活性を計測した。
NSGマウスにおける乳癌脳浸潤の処置
【0209】
0日目に、NSGマウスを麻酔し、定位装置において固定し、2μLのハンクス緩衝塩溶液(HBSS)中の1×10
5個のMDA−MB−231−CBRluc−EGFP細胞を、ブレグマに対して2mm右外側および1mm腹側に3.25mmの深さの穿頭孔を開けたマウスの脳に注射した。10日目に、5μlのHBSS中の、2×10
6個のエフェクター細胞、すなわちEGFR−CARを形質導入されたNK−92細胞(NK−92−EGFR−CAR)または空のベクターを形質導入されたNK−92細胞(NK−92−EV)をマウスの腫瘍内に注射した。oHSV−1のみの群には、5μlのHBSS中の2×10
5プラーク形成単位(pfu)のoHSV−1(rQNestin34.5)(Kambaraら(2005)Cancer Res.65(7):2832−2839を参照のこと)を腫瘍内に注射した。5μlのHBSSで処置されたマウスをコントロールとして使用した。15日目に、CAR+oHSV−1処置群のマウスの腫瘍内に2×10
5pfuのoHSV−1を注射した。マウスを毎日モニターし、罹患の徴候を示したら、安楽死させた。MDA−MB−231−CBRluc−EGFP細胞を接種した4週間後、D−ルシフェリン(150mg/kg体重;Gold Biotechnology,St.Louis,MO,USA)をマウスの腹腔内に(i.p.)注入し、イソフルランで麻酔し、生体画像化ソフトウェア(PerkinElmer)を備えるインビボイメージングシステム(IVIS−100,PerkinElmer,Waltham Massachusetts,USA)を用いて画像化した。
統計
【0210】
データ変換ありまたはなしで正規分布した場合、対応のないスチューデントt検定を用いて、独立した2つの群を、連続したエンドポイントについて比較した。3つまたはそれを超える群を比較するために、1元配置分散分析を用いた。生存データの場合、カプラン・マイヤー解析を用いて生存関数を推定し、ログランク検定を用いて2群間の生存時間を比較した。すべての検定が両側の検定であった。多重比較の場合、ホルム法を用いてP値を調整した。0.05未満のP値を統計学的に有意であるとみなした。
結果
乳癌細胞株ならびに原発性組織および転移性組織におけるEGFRの発現
【0211】
乳癌細胞株におけるEGFRの表面発現を評価するために、細胞をEGFR特異的抗体で染色した後、フローサイトメトリー解析を行った。
図12Aに示されているように、EGFRは、MDA−MB−231、MDA−MB−468およびMCF−7細胞株の表面上に発現されたが、レベルは、MCF−7細胞上で明らかにより低かった。次いで、ヘマトキシリン−エオシン(HE)染色によって腫瘍細胞の存在を確認した後、転移性乳癌と診断された2例の患者の原発腫瘍組織および対応する脳転移病変における免疫組織化学(IHC)によってEGFRの発現を評価した(
図12B、上の2列)。表面のEGFR発現は、一次病変由来の腫瘍細胞上だけでなく、脳転移由来の病変上にも観察された(
図12B、下の2列)。
EGFR−CAR NK−92および初代NK細胞の増強された細胞傷害性およびIFN−γ産生
【0212】
本出願人は、第2世代のEGFR−CAR構築物をpCDHレンチウイルス骨格において作製した。この構築物は、シグナルペプチド、EGFR scFv、ヒンジ領域、CD28およびCD3ζを順に含む。NK−92および健康ドナー由来の初代NK細胞に、CARを発現するレンチウイルスを形質導入し、そのベクターによるGFPの発現に基づいて選別した。本出願人は、抗EGFRのscFv部分を認識するヤギ抗マウスF(ab’)
2抗体を用いてフローサイトメトリー解析を行った。
図13Aは、EGFR−CARを形質導入されたNK−92細胞の表面上のEGFR−CARの発現を示しており、その発現は、NK−92−EV細胞(空のベクターpCDHを形質導入されたNK−92細胞)上では検出不可能だった。次に、本出願人は、EGFR−CARの発現が、NK−92および初代NK細胞に、IFN−γ産生および細胞溶解活性の増強をもたらし得るかを調査した。本出願人は、EGFR−CARを形質導入されたNK−92および初代NK細胞(
図18)が、空のベクターを形質導入された対応するエフェクター細胞と比べて、MDA−MB−231細胞またはMDA−MB−468細胞と共培養されたとき、有意に高いレベルのIFN−γを分泌したことを観察した(
図13B、14A)。興味深いことに、このIFN−γ分泌の変化は、EGFR発現のレベルがより低いMCF−7細胞を標的として使用したとき、それほど識別可能でなかった。さらに、これらの3つの細胞株と共培養したとき、本出願人は、mockを形質導入されたNK−92エフェクター細胞(
図13C〜13E)または初代NK細胞の細胞傷害活性と比べて、それぞれEGFR−CARを形質導入されたNK−92およびドナー由来の初代NK細胞の細胞傷害活性の有意な増加を観察した(
図14B〜14D)。エフェクター細胞の活性化を計測するためにCD69表面発現を用いたとき、本出願人は、EGFR発現を有する腫瘍細胞が、EGFR−CARを形質導入されたNK−92細胞を活性化し得、MDA−MB−231およびMDA−MB−468細胞を使用したとき、MCF−7細胞を使用したときよりもより高い活性化であったことも観察した。本出願人は、別のNK細胞活性化マーカーであるCD27の発現も検出したところ、CD27は、EGFR−CAR NK−92細胞の表面上に発現されなかったことを観察した(
図19)。
oHSV−1による乳癌細胞株の溶解
【0213】
本出願人は、脳に輸送されて転移性脳腫瘍を形成する能力を有する乳癌細胞をoHSV−1のみで溶解し破壊できるかを調査した。
図15Aに示されているように、oHSV−1は、48時間の共培養の後、MDA−MB−231、MDA−MB−468およびMCF−7細胞の生存率を用量依存的様式で低下させ、この効果は、種々の時点において観察された(
図15B)。顕微鏡解析は、4日間の共培養の後、oHSV−1のみでこれらの乳癌細胞株の細胞を溶解できたことを示した(
図20A)。これは、ルシフェラーゼを発現しているMDA−MB−231細胞(MDA−MB−231−CBRluc−EGFP)を用いて確認され、mock感染群と比べて、より高いレベルのルシフェラーゼがoHSV−1感染を受けた群の上清中で検出された(4日目においてP<0.01)(
図15C)。一方、oHSV−1は、鏡検によって測定されたとき、EGFR−CAR NK−92エフェクター細胞を溶解しなかったか、またはそのエフェクター細胞のアポトーシスを誘導しなかった(
図20B)。
oHSV−1と併用されるEGFR−CAR NK−92細胞は、インビトロにおいて癌細胞のより効率的な全滅をもたらす
【0214】
MDA−MB−231細胞を、EGFR−CAR NK−92細胞のみまたはoHSV−1との併用で処置したとき(EGFR−CAR NK−92細胞で4時間処置した後のoHSV−1処置またはその逆)、MTSアッセイは、MDA−MB−231細胞株が、すべての状況下において効率的に殺滅されたことを示唆した;しかしながら、EGFR−CAR NK−92細胞とoHSV−1との併用は、より効率的な殺滅をもたらした(データ示さず)。次いで、本出願人は、種々の処置後のMDA−MB−231−CBRluc−EGFP細胞の上清中のルシフェラーゼ活性を計測することによって殺滅を評価した。ルシフェラーゼは、急速に分解されたことが見出され(図示せず)、ゆえに、ルシフェラーゼアッセイによって、累積的な殺滅ではなくダイナミックなリアルタイムの殺滅を測定することが可能であった。これに基づいて、本出願人は、EGFR−CAR NK−92細胞のみおよびoHSV−1と併用されたEGFR−CAR NK−92細胞が、oHSV−1のみよりも迅速な溶解を引き起こしたことを観察した(
図5A)。4日間共培養した後に残ったMDA−MB−231−CBRluc−EGFP細胞(細胞ペレット)においてルシフェラーゼ活性を計測したとき、本出願人は、EGFR−CAR NK−92細胞のみ、oHSV−1のみ、またはoHSV−1と併用されたEGFR−CAR NK−92細胞のすべてが、MDA−MB−231−CBRluc−EGFP細胞の実質的な殺滅に導き、oHSV−1とEGFR−CAR NK−92細胞との併用は、順序に関係なく、単独療法よりも有効であったことを見出した(
図16B)。同様の結果が、鏡検によって観察された(
図21)。EGFR−CAR NK−92細胞は、MDA−MB−231細胞のいくつかを急速に破壊したが、これらの細胞のサブセットは、5日後でも元の細胞の形状および完全性をなおも維持した。oHSV−1は、まず標的癌細胞を凝集させ、次いで、それらの細胞を徐々に溶解した(
図21)。しかしながら、EGFR−CAR NK−92細胞とoHSV−1との併用は、特にCAR NK−92細胞に続くoHSV−1処置の群において、よりロバストな細胞の殺滅をもたらした(列5、
図21)。注目すべきことに、
51Cr放出アッセイ(
図13C)およびルシフェラーゼデータ(
図16B)と一致して、顕微鏡解析は、MDA−MB−231細胞が、NK−92−EV細胞による殺滅に抵抗性であることを実証した。
oHSV−1と併用されたEGFR−CAR NK−92細胞は、頭蓋内モデルにおいてMDA−MB−231腫瘍細胞のより効率的な殺滅をもたらす
【0215】
EGFR−CAR NK−92細胞、oHSV−1のみ、または両方の併用の治療的応用の可能性をさらに裏付けるために、本出願人は、それらの抗腫瘍活性をインビボにおいて調べた。本出願人は、MDA−MB−231−CBRluc−EGFP細胞をNSGマウスの脳内に植え込むことによって、乳癌の頭蓋内モデルを確立した。それらの細胞におけるカブトムシ赤色ルシフェラーゼの発現によって、インビボ生物発光イメージングを介して腫瘍成長をモニターすることが可能になった。潜在的な全身毒性を最小限にするために、本出願人は、腫瘍細胞の植え込み後の10日目に、放射線照射されていないEGFR−CAR NK−92細胞またはoHSV−1を腫瘍内に、およびEGFR−CAR NK−92とoHSV−1との併用群の場合は15日目にoHSV−1を注射した。
図17Aおよび
図22に示されているように、EGFR−CAR NK−92、oHSV−1またはそれらの組み合わせを投与されたマウスは、mockを形質導入されたNK−92−EVまたはビヒクル(HBSS)を注射されたマウスと比べて、有意に減少した腫瘍成長を有した。重要なことに、腫瘍成長の減少は、EGFR−CAR NK−92のみまたはoHSV−1のみで処置されたマウスよりも、oHSV−1と併用されたEGFR−CAR NK−92で処置されたマウスにおいてより明白だった。これらのデータと一致して、EGFR−CAR NK−92+oHSV−1で処置されたマウスは、oHSV−1のみ(P<0.01)、mockを形質導入されたNK−92(P<0.001)またはHBSS(P<0.001)で処置されたマウスよりも有意に長く生存した一方で、EGFR−CAR NK−92+oHSV−1の群とEGFR−CAR NK−92のみの群との差異は、同じ傾向を示し、有意な閾値の境界にあった(P=0.0757)。EGFR−CAR NK−92とoHSV−1との併用、EGFR−CAR NK−92、oHSV−1、NK−92−EVおよびHBSSに対する5つの群の生存期間中央値は、それぞれ80、61、55、43および42日であった(
図17B)。
考察
【0216】
これらのデータは、MDA−MB−231細胞を予め接種されたマウスにEGFR−CAR NK−92細胞、oHSV−1またはその両方の組み合わせを腫瘍内投与すると、抗腫瘍効果がもたらされ、それらの組み合わせが、腫瘍成長をより効率的に抑制し、腫瘍を有するマウスを有意に長く生存させたことを実証している。
【0217】
本出願人は、この併用が、癌を標的化するための有効なアプローチであると考える。理論に拘束されるものではないが、本出願人は、この併用アプローチの標的が、全部ではないがほとんどの癌において再発、処置抵抗性および転移に関与する細胞集団である癌幹細胞(CSC)であると推測する。さらに、本出願人は、開示されるアプローチが、不均一な腫瘍集団に適応し得ると結論を下す。
【0218】
すなわち、(上記の本明細書中に開示された乳癌の実施例を考慮して)、EGFRを発現している細胞は、EGFR−CAR NK細胞によって標的化されるが、oHSV−1は、EGFR陰性腫瘍細胞も殺滅し得る。乳癌は、EGFR、PRおよびHER2の発現が不均一である。本発明者らの実験において使用された乳癌細胞株は、野生型EGFRを発現するが、それらの各細胞株は、これを異なる程度に発現する。一方、それらは、異なる遺伝子発現プロファイリング[MDA−MB−231およびMDA−MB−468:ER−、PR−、HER2−(トリプルネガティブ);MCF−7:ER+、PR+/−、HER2−]および異なる生物学的挙動を有する。トリプルネガティブ乳癌(TNBC)は、高悪性度の自然経過ならびに転移に対する高い感受性に関連する。TNBCを有する患者は、「従来の」治療標的を欠き、他のタイプの乳癌よりも予後が不良である。実際に、TNBCの生存期間中央値は、たった4.9ヶ月である。oHSVは、一般的なBCBM集団にとって有効であるので、上記の本明細書に記載された併用アプローチは、非TNBCとTNBCの両方のBCBMを標的化するはずであるが、EGFR−CAR NK細胞は、EGFR+集団を標的化する際により有効である。このような結論はさらに、本質的にすべてのタイプの癌に一般化できる。
【0219】
これらのデータはさらに、EGFR−CAR NK−92細胞が、迅速に乳癌細胞を標的化し、攻撃し得る一方で、oHSV−1は、ゆっくりであるが絶え間なく癌細胞に感染し、破壊し得ることを示した。EGFR−CAR NK−92細胞は、通常、数時間で標的細胞を認識し、攻撃し得るが、この細胞株は、元々、ホジキンリンパ腫を有さない患者から確立されたので、放射線照射されなければならないため、数日間しか生存できない。放射線照射後の最大48時間、完全な細胞傷害活性を維持しつつ、NK−92細胞の(osf)増殖を抑制するために、1000cGyという放射線量が最適化された。それに対し、oHSVは、効果が長時間持続できるにもかかわらず、標的細胞に侵入し、複製し、腫瘍細胞を破壊するには約4日かかり得る。さらに、CARによって改変されたNK細胞は、腫瘍組織の構造を破壊し得、腫瘍細胞間の結合を減少させ得、癌細胞膜の透過性を高め得るので、oHSV−1と併用したとき、癌細胞におけるウイルスの分布および複製を高め得る。
等価物
【0220】
別段定義されない限り、本明細書中で使用されるすべての専門用語および科学用語は、この技術が属する分野の当業者が通常理解している意味と同じ意味を有する。
【0221】
本明細書中に例証的に記載された本技術は、本明細書中に具体的に開示されていない任意のエレメント、限定の非存在下において適切に実施され得る。したがって、例えば、用語「含む(comprising)」、「含む(including)」、「含む(containing)」などは、拡張的に無制限に解釈されるものとする。さらに、本明細書中で使用される用語および表現は、説明の用語として使用されているのであって、限定の用語としては使用されておらず、そのような用語および表現の使用には、示されるおよび記載される特徴またはその一部の任意の等価物を排除する意図はなく、様々な改変が、特許請求される本技術の範囲内で可能であることが認識される。
【0222】
したがって、本明細書中に提供される材料、方法および例は、好ましい態様の代表であり、例示的なものであり、本技術の範囲に対する限定と意図されていないことが理解されるべきである。
【0223】
本技術は、本明細書中で広く一般的に説明された。その一般的な開示の範囲内に入るより狭い種および亜属の分類の各々も、本技術の一部を形成する。これには、削除される材料が本明細書に明確に列挙されているか否かに関係なく、条件付きでの、またはその属から任意の主題を除くネガティブな限定付きでの本技術の一般的な説明が含まれる。
【0224】
さらに、本技術の特徴または態様が、マーカッシュ群で説明されている場合、当業者は、本技術が、そのマーカッシュ群の任意の個別のメンバーまたはメンバーのサブグループでも説明されていると認識する。
【0225】
本明細書中で言及されたすべての刊行物、特許出願、特許および他の参考文献は、各々が個別に参照により援用されたのと同一程度に、それらの全体が参照により明白に援用される。矛盾する場合、定義を含む本明細書が支配する。
【0226】
他の態様は、以下の特許請求の範囲に示される。