特許第6879936号(P6879936)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6879936
(24)【登録日】2021年5月7日
(45)【発行日】2021年6月2日
(54)【発明の名称】フラップ形状を画定するための装置
(51)【国際特許分類】
   A61F 9/008 20060101AFI20210524BHJP
   A61F 9/01 20060101ALI20210524BHJP
【FI】
   A61F9/008 130
   A61F9/01
【請求項の数】9
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2017-557080(P2017-557080)
(86)(22)【出願日】2016年4月1日
(65)【公表番号】特表2018-521705(P2018-521705A)
(43)【公表日】2018年8月9日
(86)【国際出願番号】IB2016051888
(87)【国際公開番号】WO2016181237
(87)【国際公開日】20161117
【審査請求日】2017年10月31日
【審判番号】不服2019-15296(P2019-15296/J1)
【審判請求日】2019年11月14日
(31)【優先権主張番号】102015006041.4
(32)【優先日】2015年5月8日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】319008904
【氏名又は名称】アルコン インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100173107
【弁理士】
【氏名又は名称】胡田 尚則
(72)【発明者】
【氏名】ヨハンネス クラウス
【合議体】
【審判長】 芦原 康裕
【審判官】 宮崎 基樹
【審判官】 関谷 一夫
(56)【参考文献】
【文献】 特表2013−544542(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0224657(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0295244(US,A1)
【文献】 特表2012−521228(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0235543(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 9/008
A61F 9/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
人間の眼のレーザ治療のためにフラップのフラップ形状を画定するための装置であって、該装置は、
切開用レーザのレーザ光源であって、該レーザ光源はフェムト秒範囲のパルス持続時間を有するレーザビームを生成するように構成され、前記レーザビームは人間の角膜に光学破壊を生成するのに適した、前記切開用レーザのレーザ光源と、
前記切開用レーザのスキャナユニットであって、該スキャナユニットは短手方向および長手方向における前記レーザビームの焦点を制御するように構成された、前記切開用レーザのスキャナユニットと、
制御ユニットと、を備え、該制御ユニットは、
人間の角膜のレーザ切除治療のために切除プロファイルの切除プロファイルデータを評価することであって、当該評価することが、前記切除プロファイルの直径を決定することを含むように、
画定された安全マージンを前記切除プロファイルデータと共に記憶するように、かつ、
前記評価に基づいて、
前記切除プロファイルの前記直径に基づく前記フラップの直径と、
前記切除プロファイルと共に記憶される画定された前記安全マージンであって、上面図において、各位置における前記切除プロファイルの外縁と前記フラップの外縁との間の最短距離が少なくとも当該安全マージンになるような、前記安全マージンと、
にしたがって、前記フラップ形状を画定するように、
プログラムされ、さらに、
前記制御ユニットは、前記切除プロファイルデータを評価することが治療すべき前記眼に対する前記切除プロファイルの向きを決定することを含むように、かつ前記フラップ形状を画定することが治療すべき前記眼に対する前記フラップの向きを画定することを含むようにプログラムされ、
前記制御ユニットは、前記フラップの前記向きを画定することが治療すべき前記眼に対する前記フラップのヒンジの位置を画定することを含むようにプログラムされ、
前記制御ユニットは、前記切除プロファイルデータを評価することが、前記切除プロファイルの直径を決定することと、軸線に沿って前記切除プロファイルが最大直径を有する前記軸線を決定することとを含むようにプログラムされ、かつ前記フラップ形状を画定することが、前記軸線に平行な前記フラップの前記ヒンジの向きを画定することを含む、装置。
【請求項2】
前記制御ユニットは、前記切除プロファイルデータを評価することが治療すべき前記眼に対する前記切除プロファイルの位置を決定することを含むように、かつ前記フラップ形状を画定することが治療すべき前記眼に対する前記フラップの位置を画定することを含むようにプログラムされる、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記制御ユニットは、前記切除プロファイルデータを評価することが前記切除プロファイルの鏡面対称軸線を決定することを含むようにプログラムされ、かつ前記フラップ形状を画定することが、前記鏡面対称軸線に直交する前記フラップのヒンジの向きを画定することを含む、請求項1又は2に記載の装置。
【請求項4】
前記制御ユニットは、前記切除プロファイルデータを評価することが前記切除プロファイルの深さを決定することを含むようにプログラムされ、かつ前記フラップ形状を画定することが、前記切除プロファイルの前記深さに基づいて前記フラップの厚さを画定することを含む、請求項1〜のいずれか一項に記載の装置。
【請求項5】
前記制御ユニットは、前記フラップ形状を画定することが治療すべき前記眼の前記角膜の角膜厚さおよび/または少なくとも1つの曲率半径を考慮して行われるようにプログラムされる、請求項1〜のいずれか一項に記載の装置。
【請求項6】
前記切除プロファイルデータを読み取るための入力インターフェースを更に備える、請求項1〜のいずれか一項に記載の装置。
【請求項7】
前記制御ユニットが更に、前記画定されたフラップ形状に基づいてフラップ形状データを決定するようにプログラムされる、請求項1〜のいずれか一項に記載の装置。
【請求項8】
前記フラップ形状データを出力するための出力インターフェースを更に備える、請求項に記載の装置。
【請求項9】
請求項1〜のいずれか一項に記載の装置を備える、人間の眼のレーザ治療のためにフラップを切開するための切開用レーザ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して、フラップ形状を画定するための装置に関する。本発明は、特に、人間の眼のレーザ治療のためにフラップ(LASIKフラップ)のフラップ形状を画定するための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
人間の眼の視覚障害(例えば、近視、遠視、乱視)の矯正のために、いわゆるLASIK(レーザ角膜切開形成術)技術がよく用いられる。この処置では、まず、小さな角膜の被覆円盤(一般にフラップと呼ばれる)が、隣接する角膜組織から切開され、ここで、フラップはヒンジ領域において周囲の角膜組織に付着したままである。これにより、簡単にフラップを折り返して角膜の下部組織領域を露出させ、かつ露出させた組織領域の切除後に簡単にフラップを折り戻すことが可能になる。切除での集束UVレーザ照射による材料の除去は、フラップが折り返された後に角膜表面の形状変化を生じさせ、それゆえ、角膜の、ひいては眼球系全体の屈折特性を変化させる。切除プロファイルの好適な画定により、視覚異常を少なくとも明らかに減少させ、最善の状態ではほぼ完全に除去することさえできる。
【0003】
個々の患者の視覚異常を矯正できるように、患者の眼の各々に対する個々の切除プロファイルを決定する必要がある。更に、切開すべきフラップの形状(大きさ、位置、向き)を患者の眼の各々に対して画定しなければならないが、これには、切開用レーザを操作する医師側での多大な労力が必要となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の1つの目的は、フラップ形状の画定を簡略化することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の1つの態様は、人間の角膜のレーザ切除治療のために切除プロファイルの切除プロファイルデータを評価するように、かつこの評価に基づいてフラップ形状を画定するようにプログラムされる、制御ユニットを備える、人間の眼のレーザ治療のためにフラップのフラップ形状を画定するための装置である。
【0006】
制御ユニットは、例えば、プロセッサ、揮発性メモリおよび/または不揮発性メモリを備え得る、プログラム制御方式の制御ユニットであってもよい。制御ユニットのプログラミングは、例えば、対応するプログラムを制御ユニットのメモリに書き込むことにより行われてもよい。制御ユニット内のメモリにおけるプログラムは、制御ユニットのプロセッサにより実行することができる。プログラムの実行中に、前述のステップを実施することができる。切除プロファイルの切除プロファイルデータは、デジタルデータの形で、例えば、データファイルの形で存在してもよい。切除プロファイルデータは、治療すべき患者の眼の切除治療のために所望の切除プロファイルを記述してもよい。切除プロファイルデータは、例えば、画素毎に、2次元マトリクス状の画素の深さ値を示すデータファイルに含まれてもよい。深さ値は、この値に基づいて、レーザ切除治療中に切除用レーザにより人間の角膜を切除すべきである、(例えば、μmまたはnm単位の)値であってもよい。切除プロファイルデータは、ベクトルの形であってもよい。切除プロファイルデータは、切除プロファイルと治療すべき眼との間の空間関係を確立することができる。例えば、治療すべき眼の瞳孔の中心点と一致する、基準点が、切除プロファイルデータにおいて定められてもよい。更に、治療すべき眼の水平軸線および/または垂直軸線と一致する、基準軸線もまた、切除プロファイルデータにおいて定めることができる。切除プロファイルデータの評価は、ソフトウェア支援評価を含み得る。この評価に関して、例えば、画像処理および/または画像評価に既知の方法を使用してもよい。フラップ形状は、評価に基づいて最適に画定することができ、その結果、フラップ形状を画定するために分析工程のある特定の結果値および/または分析データを使用することができる。フラップ形状は、フラップ形状を表す対応するデータが制御ユニットのメモリに書き込まれるような仕方で画定されてもよい。制御ユニットのメモリに書き込まれる、フラップ形状データは、画定されたフラップ形状に基づいて決定されてもよい。
【0007】
制御ユニットは、切除プロファイルデータを評価することが切除プロファイルの直径を決定することを含むように、かつフラップ形状を画定することが切除プロファイルの直径に基づいてフラップの厚さを画定することを含むようにプログラムされてもよい。
【0008】
切除プロファイルの直径は、例えば、画像処理の既知の方法を利用して決定することができる。切除プロファイルの直径は、上面図において決定される、直径であってもよい。以下に使用される「上面図において」とは、切除プロファイルおよび/またはフラップ形状のx−y平面が考慮されることを意味する。x−y平面は、フラップを切開する工程で接触要素により水平にされる、人間の角膜の表面と実質的に一致してもよい。x−y平面は、z軸線に直交する平面と一致してもよい。z軸線は、切開用レーザおよび/または切除用レーザの入射方向と実質的に一致してもよい。z軸線は、瞳孔の中心点を通って延在する、眼球の径方向と一致してもよい。直径は、例えば、切除プロファイルの最大直径であってもよい。直径は更に、例えば、所定の軸線に沿った直径、例えば、切除プロファイルの水平軸線または垂直軸線に沿った直径であってもよい。切除プロファイルの水平軸線および/または垂直軸線は、治療すべき眼の水平軸線および/または垂直軸線と一致してもよい。フラップの直径の画定は、フラップが上方から見て実質的に円形でありかつ円の直径が切除プロファイルの特定の直径の関数として画定されるようなものであってもよい。フラップの円の直径は、切除プロファイルの決定された直径よりも所定値だけ大きくてもよい。
【0009】
制御ユニットは、フラップ形状を画定することが、画定された安全マージンを考慮して行われるようにプログラムされてもよく、結果として、上面図では、各位置における切除プロファイルの外縁とフラップの外縁との間の最短距離が少なくとも安全マージンになる。
【0010】
安全マージンは、装置の使用者(例えば、医師)により画定され得る、長さ値(例えば、μm)であってもよい。安全マージンは、切除プロファイルデータと一緒にデータファイルに記憶され、かつこのデータファイルから読み出されてもよい。
【0011】
制御ユニットは、切除プロファイルデータを評価することが治療すべき眼に対する切除プロファイルの位置を決定することを含むように、かつフラップ形状を画定することが治療すべき眼に対するフラップの位置を画定することを含むようにプログラムされてもよい。
【0012】
切除プロファイルデータは、治療すべき眼に対する切除プロファイルの位置に関する情報を含み得る。例えば、切除プロファイルデータは、治療すべき眼の瞳孔の中心点に対する切除プロファイルの位置に関する情報を含み得る。切除プロファイルデータが、例えば、画素に基づくデータファイルの形で利用可能である場合に、データファイルの所定の画素が、治療すべき眼の瞳孔の中心点の位置と一致してもよい。フラップは、例えば、上面図では実質的に円形または実質的に楕円形であってもよい。フラップは、片側にヒンジを有し得る。治療すべき眼に対するフラップの位置を画定することは、例えば、治療すべき眼に対する実質的に円形フラップの中心点の位置を画定することを含み得る。
【0013】
制御ユニットは、切除プロファイルデータを評価することが治療すべき眼に対する切除プロファイルの向きを決定することを含むように、かつフラップ形状を画定することが治療すべき眼に対するフラップの向きを画定することを含むようにプログラムされてもよい。
【0014】
切除プロファイルデータは、治療すべき眼に対する切除プロファイルの向きに関する情報を含み得る。例えば、切除プロファイルデータはまた、治療すべき眼の水平軸線または垂直軸線に対する切除プロファイルの向きに関する情報を含み得る。この情報は、例えば、角度情報または角度値を含み得る。切除プロファイルの向きを決定するために、切除プロファイルデータは、例えば、治療すべき眼の水平軸線または垂直軸線と一致する基準軸線を含み得る。フラップの向きを画定することは、治療すべき眼の水平軸線または垂直軸線に対するフラップの回転の向きの画定することを含み得る。フラップは、例えば、上方から見て実質的に円形または実質的に楕円形であってもよい。フラップは、片側にヒンジを有し得る。
【0015】
制御ユニットは、フラップの向きを画定することが治療すべき眼に対するフラップのヒンジの位置を画定することを含むようにプログラムされてもよい。
【0016】
ヒンジの位置は、例えば、ヒンジから切除プロファイルの外縁までの最短距離が上面図において最大となるように画定されてもよい。
【0017】
制御ユニットは、切除プロファイルデータを評価することが、切除プロファイルの直径を決定することと、軸線に沿って切除プロファイルが最大直径を有する、その軸線を決定することとを含むようにプログラムされてもよく、かつフラップ形状を画定することが、軸線に平行なフラップのヒンジの向きを画定することを含む。
【0018】
制御ユニットは、切除プロファイルデータを評価することが、切除プロファイルの鏡面対称軸線を決定することを含むようにプログラムされてもよく、かつフラップ形状を画定することが、鏡面対称軸線に直交するフラップのヒンジの向きを画定することを含む。
【0019】
鏡面対称軸線は、この軸線に対して切除プロファイルが実質的に鏡面対称である軸線であってもよい。切除プロファイルは、例えば、1つまたは2つの鏡面対称軸線を有し得る。鏡面対称軸線は、軸線自体が切除プロファイルの鏡面対称軸線と最も近く一致する、軸線と一致するように決定されてもよい。換言すれば、鏡面対称軸線は、切除プロファイルの最大限可能な鏡面対称性を有する軸線であってもよい。鏡面対称軸線に直交するフラップのヒンジの向き決めは、フラップの鏡面対称性が切除プロファイルの鏡面対称性と実質的に一致するような仕方で実施されてもよい。フラップのヒンジの向きは、フラップの鏡面対称軸線が切除プロファイルの鏡面対称軸線と一致するような仕方で画定されてもよい。
【0020】
制御ユニットは、切除プロファイルデータを評価することが切除プロファイルの深さを決定することを含みかつフラップ形状を画定することが切除プロファイルの深さに基づいてフラップの厚さを画定することを含むようにプログラムされてもよい。
【0021】
深さは、z軸線に沿って(切開用レーザおよび/または切除用レーザの入射方向に沿って)決定されてもよい。切除プロファイルの深さは、切除用レーザにより切除すべき角膜組織の厚さと一致してもよい。切除プロファイルの特定の深さは、例えば、切除プロファイルの最大深さであってもよい。換言すれば、その深さは、切除プロファイルの最深点における深さであってもよい。フラップの厚さは、z方向に沿った厚さであってもよい。フラップの厚さは、例えば、切除プロファイルの特定の深さが大きくなるほど、フラップの画定された厚さが小さくなり、その逆も同様となるような仕方で画定されてもよい。
【0022】
制御ユニットは、フラップ形状を画定することが治療すべき眼の角膜の角膜厚さおよび/または少なくとも1つの曲率半径を考慮して行われるようにプログラムされてもよい。
【0023】
フラップ形状は、例えば、角膜の厚さの値が高いほど、フラップの画定された厚さの値が高くなり、その逆も同様となるように画定されてもよい。逆に、フラップの厚さは、フラップの厚さと切除プロファイルの最大深さと所定の安全距離との合計が角膜の厚さと一致するように画定されてもよい。
【0024】
装置はまた、切除プロファイルデータを読み取るための入力インターフェースを備え得る。
【0025】
入力インターフェースは、例えば、ネットワークインターフェースおよび/または記憶媒体の読み取りのためのインターフェースを含み得る。記憶媒体は、例えば、磁気記憶媒体、光学的記憶媒体または半導体記憶媒体であってもよい。ネットワークインターフェースは、例えばインターネットにおよび/または内部ネットワーク(イントラネット)に接続されてもよい。切除用レーザのネットワークインターフェースは、例えば、ネットワークに接続されてもよい。例えば、データファイルの形の切除プロファイルデータは、入力インターフェースを介して入力されてもよい。入力インターフェースは、ネットワークに接続される、ネットワークインターフェースを備え得、かつ切除プロファイルデータは、サーバのメモリ内、または、例えば、ネットワークインターフェースを介してネットワークに接続された他の何らかの装置のメモリ内にある、データベースから読み出すことができる。
【0026】
制御ユニットはまた、画定されたフラップ形状に基づいてフラップ形状データを決定するようにプログラムされてもよい。
【0027】
フラップ形状データは、例えば、データファイルおよび/または個々のパラメータの形で存在してもよい。パラメータは、例えば、データベースに書き込まれてもよい。フラップ形状データのパラメータは、少なくとも以下のパラメータ、例えば、フラップ直径、フラップ厚さ、治療すべき眼の瞳孔の中心点に対するフラップの中心点の位置、および治療すべき眼の基準軸線に対する(例えば、角度の形の)フラップの向きのうちの少なくとも1つを含み得る。パラメータに加えてまたはパラメータの代替として、フラップの全体形状(例えば、フラップの輪郭および/または切開縁)は、データファイルとして保存されてもよい。フラップ形状データは、例えば、画素に基づくデータファイルまたはベクトルに基づくデータファイルに記憶されてもよい。フラッププロファイルデータは、フラップと治療すべき眼との間の空間関係を確立することができる。例えば、治療すべき眼の瞳孔の中心点と一致する、基準点が、フラップ形状データにおいて定められてもよい。更に、治療すべき眼の水平軸線および/または垂直軸線と一致する、基準軸線が、フラップ形状データにおいて定められてもよい。更に、治療すべき眼の切除プロファイルデータと共に、フラップ形状データをデータファイルに書き込むことができる。
【0028】
装置は、フラップ形状データを出力するための出力インターフェースを更に備え得る。
【0029】
治療すべき眼にフラップ形状データと一致するフラップを切開する、切開用レーザに、出力インターフェースを介してフラップ形状データを出力することができる。出力インターフェースは、例えば、ネットワークインターフェースおよび/または記憶媒体の読み取りのためのインターフェースを備え得る。記憶媒体は、例えば、磁気記憶媒体、光学的記憶媒体および/または半導体記憶媒体であってもよい。ネットワークインターフェースは、例えば、内部ネットワーク(イントラネット)におよび/またはインターネットに接続されてもよい。
【0030】
本発明の別の態様は、本明細書で説明する装置を備える、人間の眼のレーザ治療のためにフラップを切開するための切開用レーザである。
【0031】
装置の制御ユニットは、例えば、適切にプログラムされる切開用レーザの制御ユニットであってもよい。フラップ形状は、例えば、フラップ形状データの形で切開用レーザに直接送られてもよい。
【0032】
本発明の更なる特徴、利点および構成要素は、添付図面の以下の説明に見出すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】人間の眼のレーザ治療のための切開用レーザの例示的な実施形態の概略ブロック図を示す。
図2】人間の眼のレーザ治療のためにフラップのフラップ形状を画定するための装置の例示的な実施形態を示す。
図3a】切除プロファイルおよびそれぞれの安全マージンの例を示す。
図3b図3aに示す切除プロファイルに基づいて画定されたフラップ形状の例を示す。
図4a】切除プロファイルおよびそれぞれの軸線の例を示す。
図4b図4aに示す切除プロファイルに基づいて画定されたフラップ形状の例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0034】
図1は、人間の眼12のレーザ治療のための概して符号10として表示される装置の例示的な実施形態のブロック図を示している。装置10は、人間の眼のレーザ治療のための切開用レーザである。装置10は、制御ユニット14と、レーザ構成16と、患者用アダプタ17とを備える。
【0035】
レーザ構成16は、例えば、フェムト秒範囲のパルス持続時間を有するレーザビーム20を生成する、レーザ光源18を備える。レーザビーム20は、眼12の角膜組織にレーザ誘起光学破壊を生成するのに好適な波長を有する。レーザビーム20は、300nm(ナノメートル)〜1900nmの範囲の波長、例えば、300nm〜650nm、650nm〜1050nm、1050nm〜1250nmまたは1100nm〜1900nmの範囲の波長を有し得る。レーザビーム20はまた、5μm未満の焦点径を有し得る。
【0036】
ビーム拡幅レンズ系22、スキャナユニット24、ミラー26および集束レンズ系28は、(図1に矢印で示す)レーザビーム20の伝搬方向においてレーザ光源18の後方に位置決めされる。ビーム拡幅レンズ系22は、レーザ光源18により生成されたレーザビーム20の直径を増大させる役割を果たす。ここで示す例示的な実施形態において、ビーム拡幅レンズ系22は、凹レンズ(負の屈折力を有するレンズ)と、レーザビーム20の伝搬方向において凹レンズの後方に位置決めされた凸レンズ(正の屈折力を有するレンズ)とを有するガリレオ式望遠鏡である。これらレンズは、互いに面する平面側を有する、平凹レンズまたは平凸レンズであってもよい。別の例示的な実施形態において、ビーム拡幅レンズ系は、例えば、ガリレオ式望遠鏡の代替として、2つの凸レンズを有するケプラー式望遠鏡を備え得る。
【0037】
スキャナユニット24は、短手方向および長手方向におけるレーザビーム20の焦点(ビーム焦点)の位置を制御するように設計される。短手方向は、(x−y平面として表示される)レーザビーム20の伝搬方向に対する短手方向を表し、かつ長手方向は、(z方向として表示される)レーザビーム20の伝搬方向を表す。スキャナユニット24は、例えば、レーザビーム20の短手方向の偏向のためのガルバノメトリック作動式の1対の偏向ミラーを備え得る。そして、これらのミラーは相互に直交する軸線を中心に傾動させることができる。代替的または追加的に、スキャナユニット24は、電気光学結晶、またはレーザビーム20の短手方向の偏向に好適な他の何らかの構成要素を有し得る。スキャナユニット24はまた、レーザビーム20の発散に、ひいてはビーム焦点の長手方向の向きに影響を及ぼすための、長手方向に調節可能なレンズもしくは屈折力可変レンズまたは変形可能なミラーを備え得る。ここに示す例示的な実施形態では、ビーム焦点の短手方向の向きおよび長手方向の向きの制御のための構成要素が一体の構成要素として表されている。別の例示的な実施形態において、構成要素は、レーザビーム20の伝搬方向に沿って離間して配設されてもよい。したがって、例えば、調節可能なミラーは、ビーム焦点の長手方向の向きの制御のためにビーム拡幅レンズ22の上流側の伝搬方向に配設されてもよい。
【0038】
ミラー26は、集束レンズ系28の方向にレーザビーム20を偏向させるように設計される、固定式偏向ミラーである。追加的または代替的に、他の光学ミラーおよび/または光学要素もまた、レーザビーム20の偏向および回折のためにビーム経路内に位置決めされてもよい。
【0039】
集束レンズ系28は、治療すべき眼12の角膜の領域にレーザビーム20を集束させるように設計される。集束レンズ系28は、例えば、Fθレンズ系であってもよい。集束レンズ系28は、患者用アダプタ17に取り外し可能に接続される。患者用アダプタ17は、連結形成(図示せず)により集束レンズ系28に接続される、円錐形キャリアスリーブ30と、眼12に面するキャリアスリーブ30のより幅狭の底面側に装着される、接触要素32とを備える。接触要素32は、(例えば、接着剤により)永久的にまたは(例えば、ねじ接続により)取り外し可能にキャリアスリーブ30に取り付けられてもよい。接触要素32は、眼12に面するとともに接触面34として表示される底面側を有する。ここで示す例示的な実施形態において、接触面34は平面として設計される。眼12のレーザ治療では、接触要素32が眼12に押し当てられるか、または接触面34における眼12に真空が適用され、その結果、治療すべき眼12の少なくとも角膜領域が水平にされてx−y平面内にある。
【0040】
制御ユニット14は、プログラム命令を有する少なくとも1つの制御プログラム38が記憶される、メモリ36を備える。レーザ光源18およびスキャナユニット24は、プログラム命令に従って制御ユニット14により制御される。制御プログラム38は、制御ユニット14により実行されたときに、治療すべき眼12の角膜に切開パターンが生成されるような仕方でビーム焦点を空間内でかつ時間内に移動させる、プログラム命令を含む。切開パターンは、LASIKフラップを含み得る。切開パターンの形状を定めるデータは、制御ユニット14のメモリ36にフラップ形状データの形で記憶され、かつこのメモリ36から読み出されてもよい。フラップ形状データは、例えば、制御ユニットのネットワークインターフェースを利用して制御ユニット14のメモリ36に予め取り込まれていてもよい。しかしながら、フラップ形状データはまた、制御ユニットの対応する入力インターフェースを介して(例えば、キーボードを使用して)手動で入力されてもよい。
【0041】
図2は、人間の眼のレーザ治療のためにフラップのフラップ形状を画定するための装置40の例示的な一実施形態の概略ブロック図を示している。装置40は、制御ユニット42と、入力インターフェース44と、出力インターフェース46とを備える。制御ユニット42による評価のための切除プロファイルデータは、入力インターフェース44を介して入力することができる。制御ユニット42により生成されたフラップ形状データは、出力インターフェース46を介して出力することができる。入力インターフェース44および出力インターフェース46は各々、例えば、端末間のデータ交換のために従来のネットワークに接続されたネットワークインターフェースを備え得る。サーバ、ネットワークメモリ、切開用レーザおよび/または切除用レーザは、例えば、お互いにデータ交換するためにネットワークに接続されてもよい。ネットワークは、例えば、インターネット、または治療業務におけるイントラネットであってもよい。しかしながら、追加的または代替的に、入力インターフェース44は、例えば、キーボードインターフェースなどの、直接入力オプションを有し得る。追加的または代替的に、出力インターフェース46は、例えば、画面インターフェースなどの、直接出力オプションを有し得る。更に、入力インターフェース44および出力インターフェース46の両方は、記憶媒体の読み取りおよび/または記憶媒体への書き込みのためのインターフェースを備え得る。記憶媒体は、磁気記憶媒体、光学的記憶媒体および/または半導体記憶媒体であってもよい。
【0042】
制御ユニット42はメモリ48を備える。メモリ48は、揮発性メモリおよび/または不揮発性メモリを含む。メモリ48は、制御ユニット42の演算の一時記憶のために使用され、かつ切除プロファイルデータおよびフラップ形状データを記憶することもできる。更に、人間の角膜のレーザ切除治療のために切除プロファイルの切除プロファイルデータを評価するための、かつ評価に基づいてフラップ形状を画定するためのコマンドを含む、制御プログラムもまたメモリ48に記憶される。
【0043】
制御ユニット42は、例えば、図1に示す切開用レーザ10の制御ユニット14であってもよく、かつメモリ48は、制御ユニット14のメモリ36であってもよい。したがって、フラップ形状を画定するための装置40が切開用レーザ10に設けられてもよく、このことは、制御ユニット42により画定された、フラップ形状が、それぞれのフラップを切開するための切開用レーザ10の使用者(医師)にとって直接利用可能であるという利点を有する。しかしながら、制御ユニット42はまた、切除用レーザに設けられてもよく、メモリ48は、例えば、切除用レーザのメモリであってもよく、このメモリには、治療すべき眼の切除プロファイルデータが記憶される。このことは、それぞれの切除プロファイルデータが制御ユニット42にとって直接利用可能であるという利点を有する。しかしながら、装置40はまた、入力インターフェース44を介して切除プロファイルデータを読み取るとともに、出力インターフェース46を介してフラップ形状データを出力する、独立した装置として設けられてもよい。
【0044】
制御ユニット42はまた、メモリ48に記憶された制御プログラムのプログラム命令を実行するためのプロセッサ(図示せず)を備える。
【0045】
治療すべき人間の眼の角膜のレーザ切除治療のための切除プロファイルデータは、入力インターフェース44を介して入力される。例えば、制御ユニット42が切除用レーザに設けられる場合には、切除プロファイルデータが代替的にメモリ48から直接読み出されてもよく、かつ入力インターフェース44はこの場合には任意選択的なものである。切除プロファイルデータは、例えば、データファイルまたは他の何らかのデータ記録の形で存在してもよい。例えば、グレースケール画像データファイルのような、切除プロファイルデータは、各画素に深さ値(グレースケール値)が割り当てられた、2次元マトリクス状の画素を有し得る。ここでは、深さ値は、x−y座標により特定される、画素のそれぞれの位置における所望の切除深さと一致する。切除が行われない、x−y平面の領域を切除プロファイルデータにおいて定めることもできる。これらの領域は、以下では切除プロファイルの一部として考慮されない。例えば、切除プロファイルの大きさおよび/または直径について以下に述べる場合、切除用レーザにより切除が行われる切除プロファイルの領域のみが考慮されている。
【0046】
治療すべき眼に対する切除プロファイルデータのための空間的基準を確立するために、少なくとも1つの固定点および少なくとも1つの基準軸線が、切除プロファイルデータにおいて定められてもよい。固定点は、例えば、治療すべき眼の瞳孔の中心点であってもよい。基準軸線は、例えば、治療すべき眼の水平軸線または垂直軸線であってもよい。例えば、x−y平面のある特定の画素値が治療すべき眼の瞳孔の中心点と一致することを規定することが可能である。更に、例えば、水平画素軸線が治療すべき眼の水平軸線と一致するものとすることが可能である。
【0047】
切除プロファイルデータはまた、治療すべき眼に対して実施すべきである切除プロファイルを表すことを可能にする、ベクトルに基づくデータの形でまたは他の任意のデータ形式であってもよい。
【0048】
制御ユニット42は、切除プロファイルデータを分析し、かつこの評価に基づいて切開用レーザ10により切開すべきフラップのフラップ形状を画定する。評価および画定の詳細は、図3a〜図4bを参照して以下で更に説明される。出力インターフェース46を介して出力されるフラップ形状データは、フラップ形状に基づいて、制御ユニット42により生成される。装置40が切開用レーザの一部である場合に、フラップ形状データは、例えば、メモリ48にのみ書き込まれてもよく、このメモリ48から、フラップ形状データを切開用レーザ10により読み出すことができる。この場合、出力インターフェース46は任意選択的なものである。フラップ形状データは、切開用レーザ10により切開すべきフラップ形状を一意に画定するのに好適である。特に、フラップ形状データは、上面図(x−y平面内)におけるフラップの外形と、切開すべきフラップの厚さとを含む。フラップ形状データは、パラメータがフラップ形状を一意に決定するのに好適である、例えば、データファイルまたはパラメータの形で利用可能であってもよい。したがって、対応するパラメータは、例えば、上面図におけるフラップの直径の値と、フラップのヒンジの向きの角度値とを含み得る。
【0049】
図3aは、切除プロファイル50の第1の例を概略的に示しており、かつ図3bは、切除プロファイル50に基づいて装置40の制御ユニット42により画定される、フラップ52の外形を示している。図3aおよび図3b(ならびに、以下に更に説明する図4aおよび図4b)は、切除プロファイル50およびフラップ52を上面図で示しており、ここで、図面の平面はx−y平面と一致する(図1も参照)。z方向における切除プロファイル50の深さは、深さ線(等深線)により示される。深さ線の各々は、一定の距離をおいてx−y平面に平行に延びる平面に沿って延在する。したがって、切除プロファイル50の深さ線の各々は、切除プロファイル50の一定の深さに沿って延在する。深さ線のうちの最外深さ線は、切除プロファイル50の外形を示す。換言すれば、切除が切除プロファイル50の最外線の外側で行われず、切除プロファイル50について以下に述べる場合、切除プロファイル50の最外深さ線の内側の領域が意図される。
【0050】
x方向における水平線およびy方向における垂直線は、x−y平面内の座標系を示す。治療すべき眼に対する切除プロファイル50の位置および向きは両方とも、座標系に基づいて特定することができる。x方向における水平線は、例えば、治療すべき眼の水平軸線と一致し、かつ垂直線と水平線との交点は、治療すべき眼の瞳孔の中心点を特定する。この座標系に対して切除プロファイル50を示すことにより、患者の視力を正確かつ確実に補正することができる。特に患者の眼における乱視の場合には、切除プロファイル50の位置および向き(回転の向き)を示す切除プロファイルデータを提供することが必要である。
【0051】
図3aはまた、安全域54を示しており、この安全域54では、以下のようにフラップ52を画定することができる。まず、円の中心点および直径が決定される。この円は、上面図では、切除プロファイル50の外縁がその円を越えて突出せずに、切除プロファイル50が中に収まる直径の最も小さな円(図3aにおける内側の点線の円)である。更に、安全マージンのために(例えば、切開用レーザ10を操作する医師により)予め定められた値も考慮に入れられる。この値が第1の円の半径に追加され、結果として、第1の円の中心点と同じ中心点を有するより大きな第2の円が得られる(図3aに点線で示す、外円を参照)。図3bに示すように、フラップ52が画定され、その結果、切開縁が上面図において第2の円に実質的に追従する。このことは、フラップ52の切開縁が切除プロファイル50の外縁から全ての箇所で対応する安全マージン54だけ離れていることを確実にする。換言すれば、このことは、上面図における切除プロファイル50の外縁とフラップ52の外縁との間の最短距離が全ての箇所で少なくとも安全域54の安全マージンになることを確実にする。
【0052】
フラップ52のフラップ形状はまた、図3bに直線として表されている、ヒンジ56を備える。フラップ52のヒンジ56は、フラップ52の切開縁を表すのではなく、切開用レーザ10が切開しない角膜組織の継目である。ヒンジ56を設けることにより、フラップ組織が切除治療の前後にx−y平面上の実質的に同じ位置に位置するように、フラップ52を折り返し、切除治療後にフラップ52を正確に折り戻すことが可能となる。ヒンジ56の位置は、(適切なパラメータを与えることにより)使用者が手動で画定してもよく、その結果、ヒンジ56が常に、例えば、フラップ52の下部位置(図3bを参照)または上部位置のいずれかにある。ヒンジ56は、例えば、x方向に沿って水平軸線に平行に設置されてもよい。更に、ヒンジ56の位置は、切除プロファイル50についての切除プロファイルデータに基づいて制御ユニット42により自動的に画定されてもよい(図4aおよび図4bの例も参照)。例えば、ヒンジ56の位置は、ヒンジ56から切除プロファイル50の外縁までの最短距離が所定値を超えるような仕方で画定されてもよく、その結果、安全マージンがヒンジ56と切除プロファイル50との間に維持される。
【0053】
更に、フラップ形状の画定の文脈において、z方向におけるフラップ52の厚さは、切除プロファイルデータの評価に基づいて画定されてもよい。例えば、切除プロファイルデータは、切除プロファイルの最大深さが決定されるような仕方で分析されてもよい。次いで、フラップ52の厚さは、切除プロファイルの最大深さとフラップ52の厚さとの合計が所定値を超えないように画定される。本明細書では、レーザ治療が角膜のある特定の領域でのみ行われることと、眼の下部組織が損傷しないこととを確実にすることが可能である。厚さの画定のために、例えば、治療すべき眼の角膜の厚さについて予め決定された値を考慮に入れてもよい。フラップ52の厚さは、例えば、フラップ52の厚さと切除プロファイル50の最大深さと所定の安全距離との合計が治療すべき眼の角膜の厚さと一致するように画定されてもよい。
【0054】
更に、フラップ形状を決定する際に治療すべき眼の角膜の少なくとも1つの曲率半径を考慮に入れることができる。
【0055】
図4aは、切除プロファイル60の第2の例を示しており、かつ図4bは、切除プロファイル60の評価に基づいて画定されたフラップ62のフラップ形状を示している。図4aおよび図4bについては、図3aおよび図3bに関連して先に説明したものと同じ原理が適用される。特に、フラップ62の画定において対応する安全マージンを考慮に入れてもよい。
【0056】
図4aは、深刻な乱視(角膜の歪み)を有する患者の切除プロファイル60の例を示している。切除プロファイル60は、ここでは、点対称では全くないが、相互に直交する2つの鏡面対称軸線68および70を有する。治療すべき眼に対する鏡面対称軸線68および70の位置は、患者によって異なり、矯正すべき個々の視覚障害の一部である。
【0057】
図4bのフラップ62の向きは、フラップ62のヒンジ66が鏡面対称軸線68に平行になるとともに鏡面対称軸線70に直交するように選択される。したがって、フラップ62の鏡面対称性は、鏡面対称軸線70に対する切除プロファイル60の鏡面対称性と一致する。このことは、切開用レーザ10を用いてフラップ62を切開したときに、鏡面対称軸線70に関する鏡面対称性に対して付加的な非対称性が生じないという利点を有する。
【0058】
切除プロファイル60を評価する際に、切除プロファイルの鏡面対称軸線68および/または鏡面対称軸線70が決定される。例えば、軸線に沿って切除プロファイル60が最大直径を有する軸線(図4aの例では軸線68)が見つけ出されるように軸線60が決定されてもよい。次に、フラップ62のヒンジ66の位置は、ヒンジ66が軸線68に平行に延在するように画定される。
【0059】
更に、軸線68および/または軸線70は、切除プロファイル60の対称性を考慮して決定することができる。例えば、切除プロファイル60が最大限可能な鏡面対称性を有する軸線を見つけ出すことが可能である。完全に鏡面対称である事例は、実際にはほとんど見られず、図4aに表すように、鏡面対称性に関して僅かなずれが存在し得ることがここで指摘されるべきである。例えば、切除プロファイルは、優先的な鏡面対称軸線を全く有さないか、たった1つの好ましい鏡面対称軸線を有し得るか、または2つの好ましい鏡面対称軸線を有し得、2つ鏡面対称軸線を有する場合には、第1の鏡面対称軸線が第2の鏡面対称軸線に実質的に直交して延在する(図4aを参照)。切除プロファイル60の切除プロファイルデータの評価の際に、例えば、鏡面対称軸線70を決定することができ、かつフラップ形状を図4aに示すように画定することができ、結果として、フラップ62のヒンジ66が鏡面対称軸線70に直交する。したがって、フラップ62の鏡面対称性は、切除プロファイル60の予め決定された鏡面対称性と実質的に一致する。
【0060】
実質的に円形のフラップ形状が図3bおよび図4bに図示されているが、上面図でのフラップの形状は、円形に限定されるものではなく、楕円形状または実質的に矩形状を呈することもできる。
【0061】
本明細書で説明した装置を利用して、事前に自動的に分析された切除プロファイルデータに基づいてフラップ形状を自動的かつ個々に画定することができる。ここでは、レーザ切除治療の準備において貴重な時間を節約することができ、かつフラップ形状を確実に誤差なしに画定することができる。
図1
図2
図3a-3b】
図4a-4b】