(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
直鎖オレフィン官能性ポリオルガノシロキサンコポリマーゴム(A)が、少なくとも一つのビニルジメチルシロキサン単位、少なくとも一つのビニルメチルシロキサン単位、およびこれらの組み合わせを含む、請求項1のシリコーン感圧性接着剤組成物。
直鎖オレフィン官能性ポリオルガノシロキサンコポリマーゴム(A)が、(A)中の全モノマー単位の0.1から13.0モルパーセントがオレフィン基を含むものである、請求項1のシリコーン感圧性接着剤組成物。
直鎖オレフィン官能性ポリオルガノシロキサンコポリマーゴム(A)中のケイ素-オレフィン官能性に対する、シリコーン樹脂(B)中のシリル-ヒドリドのモル比が0.25から20の範囲にある、請求項1のシリコーン感圧性接着剤組成物。
ガラス基材からの組成物の剥離が、3,000未満の重合度を有する低分子量シロキサンを組成物の全重量を基準として5重量パーセントを超える量で含む同様の組成物よりも少ないシリコーン残渣を残す、請求項1のシリコーン感圧性接着剤組成物。
フィルム表面材料が、ポリエステル、ポリ(メタ)アクリレート、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリアミド、ポリイミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリテトラフルオロエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリウレタン、トリアセチルセルロース、ポリアセタール、ポリノルボルネンシクロオレフィン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、およびこれらの組み合わせからなる群より選択されるプラスチックを含む、請求項16の保護フィルム。
ディスプレイが、携帯型コンピュータのディスプレイ、携帯電話のディスプレイ、および電子デバイスのディスプレイからなる群より選択される、請求項20の電子ディスプレイ。
【発明を実施するための形態】
【0013】
驚くべきことに、3,000未満の重合度を有する低分子量シロキサンを実質的に有しないシリコーン感圧性接着剤組成物を使用すると、低い接着性(低い剥離力)、少ないシリコーン残渣、および迅速な濡れ性を有するシリコーン組成物、および基材とそのシリコーン組成物を含む保護フィルムを提供可能であることが見出された。
【0014】
実施例以外において、または特に明記しない限り、材料の量、反応条件、時間の長さ、材料の定量化された特性、その他を表している明細書及び特許請求の範囲の全ての数値は、用語「約」がその表現に用いられているか否かを問わず、全ての場合において用語「約」によって修飾されているものとして理解されるべきである。
【0015】
本願で挙げられている全ての数値範囲は、その範囲内の全ての部分範囲、及びそうした範囲または部分範囲の種々の端点の任意の組み合わせを、それらが実施例または明細書の他の個所で記載されているかを問わず、含むものであることが理解されよう。また本願において、明細書の実施例の項目で詳述された、任意の特定的な属または種によって記述されたところの、本願発明の成分のいずれのものも、一つの実施形態においては、その成分に関して明細書の他の個所で記載された範囲の任意の端点のそれぞれの代替的な定義を規定するものとして使用することが可能であり、したがって一つの非限定的な実施形態においては、他の個所に記載された範囲の端点を置き換えるものとして使用可能であることが理解されよう。
【0016】
さらに、構造的、組成的、及び/または機能的に関連する化合物、材料または物質の群に属するものとして、明細書に明示的または黙示的に開示され、及び/または請求の範囲に挙げられた、任意の化合物、材料または物質は、その群の個別の代表例、及びそれらのすべての組み合わせを含むものであることが理解されよう。
【0017】
物質、成分、または構成要素に対する参照は、一つまたはより多くの他の物質、成分、または構成要素との、本開示による最初の接触、現場での形成、ブレンドまたは混合の直前の時点で存在するものについて行われる。反応生成物、得られた混合物、その他として特定される物質、成分、または構成要素は、その固有性、性質、または特徴を、本願の開示にしたがって、常識と関連技術の当業者(例えば化学者)の通常の知識を適用して実行される、接触、現場形成、ブレンド、または混合操作の過程における化学反応または変化を通じて獲得する。化学反応物質または出発物質から化学生成物または最終物質への変化は、それが生ずる速度は別にして、連続的に進展するプロセスである。したがって、そうした変化プロセスが進行するにつれ、出発物質と最終物質の混合物がありうるし、また中間種もありうるが、それらはその動力学的寿命に応じて、この技術の当業者に知られた現在の分析技術で容易に検出され、または検出困難でありうる。
【0018】
本願の明細書及び特許請求の範囲において、化学名または化学式で参照される反応物質及び成分は、単数または複数のいずれで参照されようと、化学名または化学種で参照される別の物質(例えば別の反応物質または溶媒)と接触する前に存在するものとして特定されうる。得られる混合物、溶液、または反応媒体において生ずる、予備的及び/または遷移的な化学変化、変形、または反応は、存在するのであれば、中間種、マスターバッチ、その他として特定されうるものであり、また反応生成物または最終物質の有用性とは異なる有用性を有してよい。特定された反応物質及び/または成分を、本開示にしたがって要求される条件下で共存させることにより、他の後続する変化、変形、または反応が生じうる。そうした他の後続する変化、変形または反応においては、共存させられる反応物質、構成要素、または成分が、反応生成物または最終物質を特定または示しうる。
【0019】
本願で記載されるすべての粘度測定は、摂氏25度で回転粘度測定法、例えばブルックフィールド粘度計を使用して行われる。
【0020】
本願で使用するところでは、「包含する」、「含む」、「含有する」、「特徴とする」、およびこれらの文法的な等価物は包括的または開放式な用語であり、追加的な、未引用の要素または方法的工程を排除するものではないが、より制限的な用語「からなる」および「から本質的になる」を含むことも理解されよう。
【0021】
本願で使用するところでは、シリコーン感圧性接着剤組成物について「から本質的になる」という用語は、3,000を超える重合度を有する直鎖オレフィン官能性ポリオルガノシロキサンコポリマーゴム(A)、シリコーン樹脂(B)、およびヒドロシリル化触媒(C)、ならびに硬化阻害剤、揮発性有機溶媒、反応性希釈剤、密着向上剤、抗酸化剤、難燃化剤、その他のような任意選択成分を含む。
【0022】
本願で使用するところでは、シリコーン感圧性接着剤組成物について「からなる」という用語は、3,000を超える重合度を有する直鎖オレフィン官能性ポリオルガノシロキサンコポリマーゴム(A)、シロキサン樹脂(B)、およびヒドロシリル化触媒(C)を含む。
【0023】
約3,000を超える重合度を有する直鎖オレフィン官能性ポリオルガノシロキサンコポリマーゴムに関して「ゴム」という用語は、成分(A)が約300,000から約120,000,000、より特定的には約1,000,000から約25,000,000、そして最も特定的には約2,000,000から約4,000,000cPの粘度を有することである。
【0024】
用語「コポリマー」は本願で使用するところでは、例えば成分(A)においては、少なくともジメチルシロキサンD単位およびビニルメチルシロキサンD
vi単位を含有するシリコーン材料を意味するものと理解され、これらの単位は各々潜在的に、シリコーン材料がビニルジメチルシロキサンM
Vi、M、TまたはQ単位の任意の一つまたはより多くを任意選択的に含んでいてよく、こうしたMおよびT単位のそれぞれの官能性がすべてメチルであるとの理解のもとに、本願に記載のそれぞれの官能性を化学的に可能な範囲で潜在的に含有する。
【0025】
本願で記載するところでは、「低い」剥離接着は、本願に記載する剥離接着力のレベルのことであると理解される。
【0026】
本願で記載する基材からの「きれいな剥離」は、本願で記載するところの低レベルのシリコーン残渣であると理解される。
【0027】
「重合度」(DP)という表現は、本願で使用するところでは、マクロ分子、オリゴマー分子、ブロック、または鎖におけるモノマー単位の数として定義され、そして本願で使用するところでは、数平均分子量を参照すると理解される。
【0028】
「感圧性接着剤」に関して「感圧性」という表現は、本願で使用するところでは、接着剤を被着材と合わせるよう圧力が加えられた場合に結合を形成する接着剤を参照するものと理解され、そこにおいて圧力のレベルが増大されると、被着材に対する感圧性接着材料の結合の最大レベルに至るまでの、結合レベルの増大がもたらされる。本願に記載のシリコーン感圧性接着剤組成物の結合の最大レベルに至るまでの種々の結合レベルは、一つの非限定的な実施形態において、本願に記載するシリコーン組成物の基材に対する剥離接着力によって定量的に反映されうるものであり、例えば、本願で記載するように、物品の基材に対して付着されている接着剤に対して、物品に対して適用された保護フィルムのフィルム表面材料を介して圧力が加えられる場合、保護フィルムのフィルム表面材料に対しては、何も圧力が加えられていないレベル、すなわち保護フィルムに固有の重量の圧力のみが加えられているレベルから、線圧で24mmあたり約5kg、より特定的にはから24mmあたり約3kg、そして最も特定的には24mmあたり約1kgまでのレベルが加えられる。本願の一つの非限定的な実施形態においては、圧力は2040g、24mmのローラーによって加えられてよい。
【0029】
本願の一つの非限定的な実施形態においては、直鎖オレフィン官能性ポリオルガノシロキサンコポリマーゴム(A)は約4,000から約10,000、より特定的には約5,000から約8,000、そして最も特定的には約5,500から約7,500の重合度を有する。一つの非限定的な実施形態において、直鎖オレフィン官能性ポリオルガノシロキサンコポリマーゴム(A)は、約7,000の重合度を有する。
【0030】
直鎖オレフィン官能性ポリオルガノシロキサンコポリマーゴム(A)は、本願に記載のシリコーン樹脂(B)の硬化に際してその中のシリルヒドリド部分と反応するに十分なオレフィン部分を含み、成分(A)および(B)の間に架橋を形成し、液体ポリマーをゴム様の稠度を有する固体網状構造へと変形させる。
【0031】
一つの実施形態において、オレフィン基は、非限定的な例であるビニル官能性のように、2から約12の炭素原子、より特定的には2から約6の炭素原子を含有する任意のオレフィン基であることができる。オレフィン基は、鎖の末端に配置され、または鎖の長さに沿って配置され、またはその両者であることができる。例えば、直鎖オレフィン官能性ポリオルガノシロキサンコポリマーゴム(A)は、少なくとも一つのビニルジメチルシロキサン単位、少なくとも一つのビニルメチルジシロキサン単位、およびこれらの組み合わせを含むことができる。一つのより特定的な実施形態において、直鎖オレフィン官能性ポリオルガノシロキサンコポリマーゴム(A)は、少なくとも二つのオレフィン部分、好ましくは少なくとも二つのビニル部分を含む。
【0032】
一つの非限定的な実施形態において、直鎖オレフィン官能性ポリオルガノシロキサンコポリマーゴム(A)は、成分(A)におけるすべてのモノマー単位の約0.1から約13.0モルパーセント、より特定的には約0.1から約3.8モルパーセント、そして最も特定的には約0.2から約1.0モルパーセントがオレフィン基、好ましくはビニル基を含むようになっている。
【0033】
直鎖オレフィン官能性ポリオルガノシロキサンコポリマーゴム(A)は、本願に記載したような粘度のものであってよく、そして好ましくは塗布を行うために炭化水素溶媒中に分散可能である。適切な炭化水素溶媒の幾つかの非限定的な例には、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、イソオクタン、デカン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンおよびイソパラフィンのような脂肪族炭化水素系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、2-ペンタノン、3-ペンタノン、2-ヘキサノン、2-ヘプタノン、4-ヘプタノン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、アセトニルアセトンおよびシクロヘキサノンのようなケトン系溶媒;エチルアセテート、プロピルアセテート、イソプロピルアセテート、ブチルアセテートおよびイソブチルアセテートのようなエステル系溶媒;ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、1,2-ジメトキシエタンおよび1,4-ジオキサンのようなエーテル系溶媒;2-メトキシエチルアセテート、2-エトキシエチルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートおよび2-ブトキシエチルアセテートのような多官能性溶媒;ヘキサメチルジシロキサン、オクタメチルトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、トリス(トリメチルシロキシ)メチルシランおよびテトラキス(トリメチルシロキシ)シランのようなシロキサン系溶媒;およびこれらの混合溶媒が含まれる。
【0034】
本願に記載のシリコーン樹脂(B)はさらに、式M=R
13SiO
1/2である少なくとも一つのM単位を含むことができ、ここでR
1は1から6の炭素原子の一価の炭化水素ラジカル、より特定的にはメチルまたはエチルであり、またR
1は幾つかの実施形態においては3、4または5の炭素原子という上側端点を有することができる。
【0035】
本願の一つの非限定的な実施形態において、シリコーン樹脂(B)は以下の一般式:
M
aM
HbQ
を有することができ、ここで
M=R
13SiO
1/2
M
H=R
12HSiO
1/2
Q=SiO
4/2であり、
式中、R
1は本願で記載するように1から6の炭素原子の一価の炭化水素ラジカル、そして下付文字aおよびbは各々、シリコーン樹脂(B)がM単位対Q単位の比で、約0.6:1から約1.2:1、より特定的には約0.7:1から約1.1:1、そして最も特定的には約0.85:1から約1.0:1を有するようにされる。一つの非限定的な実施形態において、a+bの和は約1である。
【0036】
本願に記載のシリコーン樹脂(B)は、MおよびQが上記したようなシリコーン単位であるMQ樹脂を、一般式(R
1)
dHSiX
3-dのシリルヒドリド処理剤で処理することによって形成可能であり、ここでR
1は上記で定義した通りであり、そしてXはNH
2、NHR
1、NR
12、(NH)
1/2、Cl、O
1/2またはOR
1として定義され、そしてここで好ましくはR
1はメチルであり、そしてdは0.5から2である。
【0037】
一つの非限定的な実施形態において、シリルヒドリド処理剤は、1,1,3,3-テトラメチルジシラザン、ジメチルクロロシラン、およびその他であることができる。
【0038】
一つの実施形態において、シリコーン樹脂(B)はさらに、式R
1SiO
3/2のT単位、式HSiO
3/2のT
H単位、式R
12SiO
2/2のD単位、および式R
1HSiO
2/2のD
H単位からなる群より選択される少なくとも一つの他のシリコーン単位を含むことができ、ここでR
1は上記で定義したとおりである。シリコーン樹脂(B)は好ましくは、約50から約300ppmの重量のヒドリド、より特定的には約150から約230ppmの重量のヒドリド、そして最も特定的には約180から約200ppmの重量のヒドリドを含むことができる。本願の一つの特定的な実施形態において、シリコーン樹脂(B)は少なくとも二つのシリルヒドリド部分を含む。
【0039】
本願の別の実施形態において、シリコーン樹脂(B)は少なくとも5,000cPの粘度を有する。
【0040】
シリルヒドリド処理剤で処理されるMQ樹脂は、コポリマーが約0.5重量%から約5重量%のヒドロキシルラジカルを含むようなものであることができ;ここでヒドロキシルラジカルはQ単位のケイ素原子に直接に結合され;そして処理後にヒドリドラジカルはQ単位のケイ素原子に対して-OSiHR
12ラジカルを介して結合し、ここでR
1は本願で定義したように1から6の炭素原子を有する一価の炭化水素ラジカルである。シリルヒドリド処理剤で処理されるMQ樹脂は、約0.4から約1.2、より特定的には約0.5から約1.0、そして最も特定的には約0.6から約0.9のM/Qモル比を有することができる。
【0041】
本願の一つの非限定的な実施形態において、シリコーン樹脂(B)は、本願に記載の成分(A)との反応に先立って、トリメチルシロキシ(「M単位」)キャッピング剤で処理されることができる。適切なキャッピング剤は式(R
6)
eSiX
4-eによって表され、ここで各々のR
6は独立して1から6の炭素原子を有する一価の炭化水素ラジカルであり、そしてXはNH
2、NHR
1、NR
12、(NH)
1/2、Cl、O
1/2、OHまたはOR
1として定義され、そしてeは約0.5から約3.0である。
【0042】
幾つかの例示的なキャッピング剤には、限定するものではないが、シラザン、ジシラザン、および有機クロロシランが含まれる。例としては、1,1,1,3,3,3-ヘキサメチルジシラザン、1,1,1,3,3,3-ヘキサメチルジシロキサン、(N,N-ジメチルアミノ)トリメチルシラン、トリメチルメトキシシラン、トリメチルクロロシラン、クロロトリス(トリメチルシリル)シラン、トリメチルシラノール、トリフェニルクロロシランが含まれる。
【0043】
本願に記載の成分(A)および(B)の量は、本願に記載のような架橋による硬化をもたらすのに十分な量であることができる。より特定的には、本願に記載の成分(A)および(B)の量は、それらが、直鎖オレフィン官能性ポリオルガノシロキサンコポリマーゴム(A)にあるケイ素-オレフィン官能性に対するシリコーン樹脂(B)中のシリルヒドリドの比率を、約0.25から約20、より特定的には約1から約4、そして最も特定的には約1.4から約2.0の範囲内にあるようにするものであることができる。より低い比率においては、接着剤は低減された凝集強度および剥離性を有しうる。より高い比率においては、表面に対する接着性が時間と共に過剰に増大しうる。SiHの濃度は、樹脂(B)を生成するのに用いる(CH
3)
2HSiXキャッピング剤の量を変えることによって調節可能である。またオレフィンに対するSiHのモル比は、(A)における単数または複数のゴムの組成を変えることによって調節可能である。
【0044】
別の実施形態においては、直鎖オレフィン官能性ポリオルガノシロキサンコポリマーゴム(A)の質量に対するシリコーン樹脂(B)の質量の比は、約0.1から約1.5、より特定的には約0.1から約1.1、さらにより特定的には約0.2から約1.1、そして最も特定的には約0.55から約1.1の範囲にある。より低い比率においては、接着剤は脆弱で不十分な粘着性を示しうる。より高い比率においては、接着剤は劣った表面濡れ性を有し、過剰な粘着性を示しうる。
【0045】
ヒドロシリル化触媒(C)は、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、および白金、ならびにこれらの金属の錯体を使用する触媒のような、貴金属触媒を含むことができる。本発明において使用するための適切なヒドロシリル化触媒の例には、限定するものではないが:Ashby触媒;Lamoreax触媒;Karstedt触媒;Modic触媒;およびJeram触媒、ならびにこれらの組み合わせが含まれる。
【0046】
有利には、本発明で使用するヒドロシリル化触媒(C)は、白金含有触媒である。適切な白金含有ヒドロシリル化触媒には、微細分割された金属白金、微細分割されたアルミナのような担体上の白金、塩化白金酸のような白金化合物、および白金化合物の錯体といった、ケイ素に結合した水素原子とケイ素に結合したビニル基の反応を触媒するのに有効な、白金の周知の形態の任意のものが含まれる。一つの非限定的な実施形態において、触媒(C)は紫外(UV)光で活性化される触媒である。
【0047】
一つの非限定的な実施形態において、ヒドロシリル化触媒(C)は(メチルシクロペンタジエニル)トリメチル白金(IV)であり、これは紫外光に曝露することによって活性化される。
【0048】
本発明の組成物に使用される触媒成分(C)の量は、成分(B)のケイ素結合水素と成分(A)のケイ素結合オレフィン炭化水素ラジカルの間での、室温での反応を促進させるのに十分な量である限りは、変動する。かかる触媒成分の正確に必要な量は、具体的な触媒に依存する。そうではあるが、その量は一つの非限定的な実施形態において、成分(A)および(B)の合計重量百万重量部あたり、約5から約500重量部の白金をもたらすのに十分な、白金含有触媒成分の量であることができる。
【0049】
上記の成分に加えて、本発明のシリコーン接着剤組成物は、任意選択成分を含んでよい。そうした成分の例には、早すぎるゲル化を防止するための硬化阻害剤が含まれ、その例にはジアリルマレエート、1-エチニルシクロヘキサン-1-オール、2-メチル-3-ブチン-2-オール、およびAir Products社のSurfynol
登録商標61(ジメチルヘキシノール)が含まれる。有効濃度は所望とするバスライフに依存するが、典型的には約0.25%である。別の任意選択成分は、混合物の粘度を調節するための、トルエン、キシレン、またはヘプタンのような揮発性有機溶媒であることができる。溶媒は、PSAを硬化させる前に、低温乾燥工程において除去される。40%から70%の溶媒を含有する溶液は、ローラーコーティングに適した粘度を与えるが、最適な濃度は、選択したゴムの粘度およびコーティング設備の制約に依存することになる。さらに別の任意選択成分は、テトラデセンまたはドデシルビニルエーテルのような反応性希釈剤であることができる。これらの希釈剤はPSAの接着性および弾性率を変え、または組成物の粘度を低減させるために使用することができる。最後に別の任意選択成分は、密着向上剤であることができる。Momentive社のAnchorSil
登録商標2000密着添加剤を添加すると、未処理のPETフィルムに対する優れた密着性が付与される。また、Momentive社のSilForce
登録商標SL6020架橋剤またはSilForce
登録商標SS4300C架橋剤のような低分子量シリコーンヒドリドは、未処理のPETに対する密着性を提供する。トリアセトキシビニルシラン、Momentive社のSilQuest
登録商標A-186シランのような反応性シラン、並びにDow-Corning社のSil-Off
登録商標297密着添加剤のようなシランのブレンド、またはWacker社のHF86接着促進剤もまた、コロナ処理されたPETに対する優れた、永久的な密着性を与える。
【0050】
幾つかのさらなる他の任意選択成分には、ポリジメチルシロキサンおよびポリジメチルジフェニルシロキサンのような、アルケニル基を持たない非反応性ポリオルガノシロキサン;フェノール型、キノン型、アミン型、リン型、ホスファイト型、硫黄型、およびチオエーテル型の抗酸化剤のような酸化防止剤;トリアゾール型およびベンゾフェノン型の光安定剤のような光安定剤;ホスフェートエステル型、ハロゲン型、リン型、およびアンチモン型の難燃化剤のような難燃化剤;カチオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、およびノニオン界面活性剤のような帯電防止剤;塗布時の粘度を低下させるための溶媒、例えば、トルエンおよびキシレンのような芳香族系溶媒、ヘキサン、オクタン、およびイソパラフィンのような脂肪族系溶媒、メチルエチルケトンおよびメチルイソブチルケトンのようなケトン、エチルアセテートおよびイソブチルアセテートのようなエステル、ジイソプロピルエーテルおよび1,4-ジオキサンのようなエーテル;およびこれらの混合物;および染料および顔料が含まれうる。
【0051】
任意選択的に、シリコーンPSA組成物は、処理した樹脂(B)上に残存するSiOH官能性が、有機アミン触媒およびビニルシロキサンゴム(A)の存在下に反応するプロセスによって作成することができる。
【0052】
上記および本願において記載するように、シリコーン感圧性接着剤組成物は、約3,000未満の重合度を有する低分子量シロキサンを実質的に有しない。本願の一つの非限定的な実施形態において、約3,000未満の重合度を有する低分子量シロキサンの実質的な欠如とは、約5重量パーセント未満、より特定的には約2重量パーセント未満、そして最も特定的には約0.9重量パーセント未満の量である。本願のさらなる実施形態においては、約3,000未満の重合度を有する低分子量シロキサンの実質的な欠如は、約3,000未満の重合度を有する低分子量シロキサンの完全な欠如を含むことができる。一つの非限定的な実施形態においては、PSA組成物が実質的に有しない低分子量シロキサンの重合度の下側端点は、1、2、5、10、25、50、70、90、100、250および500の任意の一つである。
【0053】
本願に記載のシリコーン感圧性接着剤組成物は、基材に対して約1gf/インチから約300gf/インチ、より特定的には約5gf/インチから約100gf/インチ、そして最も特定的には約10gf/インチから約50gf/インチの剥離接着力を有することができる。剥離接着力は一つの実施形態において、ATMI接着テスターを使用して、ガラス基材から1インチの保護フィルムテープを180度の角度および300mm/分の速度で剥離することによって測定可能である。一つの実施形態において、本願の基材はガラス基材であることができる。
【0054】
さらに本願に記載するように、本願記載のシリコーン感圧性接着剤組成物は基材上に、相当量のシリコーン残渣を残さない。シリコーン残渣を検出する方法は、ヘイズやゴーストに関する視認検査、表面エネルギーの変化を求めるための接触角測定、遊離シリコーンおよびSiHコンタミの存在を検出するための後の接着テスト、表面濡れ性を求めるための塗装性テスト、および表面の化学的性質の変化を検出するための赤外分光分析を含むことができる。より特定的には、本願に記載のシリコーン感圧性接着剤組成物がガラスまたはポリマー基材から剥離された場合、このシリコーンPSA組成物は、約3,000未満の重合度を有する低分子量シロキサンを実際上、シリコーンPSA組成物の合計重量に基づいて5重量パーセントを超える、より特定的には約1重量パーセントを超える量で含む同様の組成物よりも、より少ない残渣を残す。
【0055】
本願のなおさらなる実施形態においては、フィルム表面材料と、成分(A)、(B)および(C)を含有するシリコーン感圧性接着剤組成物、および本願に記載の任意選択成分を含む、保護フィルムが提供され、そこにおいて組成物は本願記載のように、約3,000未満の重合度を有する低分子量シロキサンを実質的に有しない。
【0056】
また本願のよりさらなる実施形態においては、シリコーンPSA組成物および/またはこれを含有する保護フィルムは、基材、例えばガラスまたはポリマー基材に付着された場合に、より速い濡れ性を有しうる。速い濡れ性の定量的な値は、特定の成分(A)、(B)および(C)、ならびに特定の基材、およびそれが用いられている用途/物品に依存しうる。好ましくは、シリコーンPSA組成物および/または保護フィルムは、同様のシリコーン感圧性接着剤組成物またはシリコーンPSAを含有する同様の保護フィルムであって、シリコーンPSAが約3,000未満の重合度を有する低分子量シロキサンを、シリコーンPSA組成物の合計重量に基づいて5重量パーセント超、より特定的には約1重量パーセントを超える量で含むものよりも、速い濡れ性を有する。
【0057】
別の非限定的な実施形態において、本願に記載のシリコーンPSA組成物を含有する保護フィルムは、Polyken社のプローブタック試験装置により重量F、滞留時間1秒、速度1cm/秒で測定して、約30g/cm
2から約600g/cm
2、より特定的には約40g/cm
2から約500g/cm
2、そして最も特定的には約60g/cm
2から約300g/cm
2のプローブタック性を有することができる。
【0058】
本願において理解されるように、本願のシリコーンPSA組成物の低レベルのシリコーン残渣は、本願記載の迅速な濡れ性、改善された塗装性、および低レベルの気泡形成をもたらす。
【0059】
保護フィルムのフィルム表面材料は、ポリエステル、ポリ(メタ)アクリレート、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリアミド、ポリイミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリテトラフルオロエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリウレタン、トリアセチルセルロース、ポリアセタール、ポリノルボルネンシクロオレフィン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、およびこれらの組み合わせからなる群より選択されるプラスチックを含むことができる。フィルム表面材料の厚みはプラスチックに応じて選択してよいが、典型的には約10から約300μm、より典型的には約20から約200μmの範囲にある。
【0060】
本願に記載の保護フィルムは物品に対して、例えば非限定的な例として電子ディスプレイのような、その物品にあるガラスまたはポリマー基材を保護するために付着させることができる。電子ディスプレイは、携帯型コンピュータのディスプレイ、携帯電話のディスプレイ、および電子デバイスのディスプレイからなる群より選択可能である。そうしたディスプレイの例には、CRTディスプレイ、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機エレクトロルミネセンスディスプレイ、無機エレクトロルミネセンスディスプレイ、LEDディスプレイ、表面伝導型電子放出ディスプレイ、電界放出ディスプレイ、およびこれらのディスプレイを用いたタッチパネルが含まれる。別の実施形態においては、保護フィルムは、例えば上述した何れか一つのディスプレイの電子部品またはそうしたディスプレイの内部または外部部品といった、電子部品である物品に対して付着させることができる。
【0061】
本願記載の保護フィルムは、フィルム表面材料および本願記載のシリコーンPSAを含むものであるから、物品に付着される場合、硬化または未硬化のシリコーンPSAが、物品のガラスまたはポリマー基材と同時に、フィルム表面材料に接触するように付着される。物品のガラスまたはポリマー基材に対して付着される前またはされた後にシリコーンPSA材料が硬化すると、保護フィルムはガラスまたはポリマー基材に対して、このシリコーンPSA組成物について上述した値のような剥離接着力を有することができる。
【0062】
上述したように、本願においては保護フィルムの作成方法が提供され、これはその少なくとも一つの表面上にフィルム表面材料を塗布することを含み、シリコーン感圧性接着剤組成物は成分(A)、(B)および(C)、ならびに上記および本願で説明した何らかの任意選択成分を含み、次いで塗布されたフィルム表面材料が硬化される。シリコーンPSA組成物をフィルム表面材料上に塗布することは、例えばコンマコーター、リップコーター、ロールコーター、ダイコーター、ナイフコーター、ブレードコーター、ロッドコーター、キスロールコーター、およびグラビアコーター;スクリーン印刷、浸漬法および鋳造法を使用することにより、任意の既知の手段または方法によって行うことができる。フィルム表面材料上に塗布されるシリコーンPSA組成物の量は、硬化した接着剤層が約2から約200μm、特に約3から約100μmの厚みを有するようなものであってよい。硬化は既知の手段を使用して、約80から約150℃の温度において約30秒から約30分にわたって行ってよい。上述した方法によって作成された保護フィルムは、次いで本願記載の任意の物品、好ましくは電子ディスプレイに対し、保護フィルムを物品の保護すべき基材上に既知の手段を用いて、または手作業により押しつけ、好ましくは約0.1から約10psiの圧力を加えることによって、付着させてよい。保護フィルムの剥離は、本願記載の剥離接着力を克服することを必要としうるものであり、本願記載のように、低レベルのシリコーン残渣と迅速な濡れ性をもたらすことができる。
【0063】
この発明は、以下の実施例を参照することによってより良好に理解されるであろうが、そこにおいて部およびパーセントは、特記しない限り重量基準である。
【実施例】
【0064】
実施例において示される感圧性接着剤は、別様に記載しない限り、以下の材料と技術を用いて調製され、評価された。
【0065】
1,1,3,3-テトラメチルジシラザン、およびヘキサメチルジシラザンは、Gelest社から購入した。Surfynol
登録商標61(ジメチルヘキシノール)は、Air Products社から購入した。ジ(イソプロピルアミノ)ジメチルシランは、abcr GmbH社から購入した。(メチルシクロペンタジエニル)トリメチル白金(IV)は、Sigma-Aldrich社から購入した。
【0066】
保護フィルムの試料は、150μm(6ミル)のPSA溶液のフィルムを、未処理の76μm(3ミル)ポリエステルフィルムシート上へと、Gardner社のナイフでキャスティングすることによって調製され、溶媒は20分間にわたって大気温度で蒸発され、135℃のオーブンで5分間にわたって硬化されて、50μm(2ミル)のフィルムが形成された。
【0067】
粘度はすべて、センチポアズで報告され、25℃において、ブルックフィールド回転粘度計を用いて測定された。剥離接着力は25mm(1インチ)の保護フィルムテープについて、180度の角度および300mm/分の速度でガラス基材から剥離することにより、ATMI接着テスターを用いて測定された。
【0068】
プローブタックは、Polyken社のプローブタック試験装置を用いて重量Fで、滞留時間を1秒、速度を1cm/sとして測定した。
【0069】
塗装性は、Sharpie
登録商標キングサイズ油性マーカーを用いて試験した。
【0070】
以下で理解されるように、MおよびM
H単位は、これらの単位の置換基がメチルであるようなものである。
【0071】
以下のゴムのすべての置換基は、上付文字Viによってビニルが特定的に示されている場合または上付文字Hによってヒドリドが特定的に示されている場合を除き、メチルである。
【0072】
実施例1.1:HMDZキャッピングを備えたMMHQ樹脂の合成
この実施例は、SiH官能性MM
HQ樹脂(B)の合成、および残存SiOH基のトリメチルシロキシ基への転換を説明する。
【0073】
本願の実施例においては、記載されたMQ樹脂の%OHは、Q単位が少量のSiOH官能性を含んでいて、記載した%OHがもたらされるということが理解される。
【0074】
916.6gのMQ樹脂(2%OH、M/Q=0.7)の、585.6gのトルエン中溶液(溶液粘度5〜7cP)を、窒素雰囲気下に3Lの三ツ口丸底フラスコに仕込み、共沸蒸留によって乾燥した。18.1gの1,1,3,3-テトラメチルジシラザンを30分間かけて滴下により添加し、反応混合物を60分間撹拌した。65.2gのヘキサメチルジシラザンを次いで容器に添加し、混合物をさらに60分間撹拌した。反応容器の上部空間に置かれた湿ったpH指示片が中性のままとなるまで、窒素で完全にスパージングすることによってアンモニアを除去した。処理された樹脂をブタノールでガス定量滴定すると、最終ヒドリド濃度として159ppm(固形分基準)が示された。この樹脂を
29Si NMR分光法により分析したところ、1.6%OHおよびM
H/Q=0.02が示された。
【0075】
実施例1.2:高いヒドリド含有量のMMHQ樹脂の合成
この実施例は、高濃度のヒドリドを有するSiH官能性MM
HQ樹脂(B)の合成を説明する。
【0076】
2340gのMQ樹脂(2%OH、M/Q=0.7)の、1560gのトルエン中溶液を、窒素雰囲気下に5Lの三ツ口丸底フラスコに仕込み、共沸蒸留によって乾燥した。212.7gの1,1,3,3-テトラメチルジシラザンを120分間かけて滴下により添加した。反応容器に12インチの、充填蒸留カラムおよびヘッドを装着した。アンモニア、未反応テトラメチルジシラザン、および他の軽質材料を蒸留によって除去した。処理された樹脂をブタノールでガス定量滴定すると、最終ヒドリド濃度として650ppm(固形分基準)が示された。
【0077】
実施例2.1:超低接着処方
この実施例は、好ましいビニル濃度に到達するように好適な重合度の二つのビニルシロキサンゴムをブレンドして調製されたPSA処方を説明する。
【0078】
シリコーンPSAは、実施例1.1からの537.3gの処理されたMQ樹脂溶液(60%固形分)、16.04gのM
H4Q
3樹脂、1503gのトルエン、1213gのキシレン、式M
ViD
Vi48D
4950M
Viを有する999.1gのビニルシロキサンゴム、式M
ViD
Vi8D
4990M
Viを有する999.7gビニルシロキサンゴム、式MD
H33D
23Mを有する3.198gのヒドリドシロキサン、および2.442gの1-エチニルシクロヘキサン-1-オールを高剪断ミキサー中で組み合わせ、120分間にわたり70℃でブレンドすることによって調製した。最終的なPSAは40.2%の固形分を含み、38,000cPの粘度を有していた。このPSAの試料をKarstedt触媒としての50ppmの白金で触媒し、硬化して、剥離接着力が2gf/インチでプローブタックが40g/cm
2のテープを得た。ガラス基材に付着させると、このPSAは速い表面濡れ性と容易な気泡除去性とを示した。剥離した場合、ガラス基材の塗装性は優れたままであり、シリコーンの転写が無視できるほどであったことが示された。
【0079】
実施例2.2:ゴムが高い重合度を有する超低接着処方
この実施例は、好適な最も高い重合度を有するビニルシロキサンゴムで作成されたPSA処方を説明する。
【0080】
シリコーンPSAは、実施例1.1からの366.7gの処理されたMQ樹脂(60%固形分)、11.0gのM
H4Q
3樹脂、式MD
H30D
15Mを有する2.2gのヒドリドシロキサン、1853gのトルエン、および式MD
Vi44D
7000Mを有する1100gのビニルシロキサンゴムを高剪断ミキサー中で組み合わせ、90分間にわたってブレンドすることにより調製した。最終的なPSAは41.8%の固形分を含み、54,800cPの粘度を有していた。PSAの試料をKarstedt触媒としての100ppmの白金で触媒し、硬化して、剥離接着力が2gf/インチのテープを得た。ガラス基材に付着させると、このPSAは速い表面濡れ性と容易な気泡除去性とを示した。剥離した場合、ガラス基材の塗装性は優れたままであり、シリコーンの転写が無視できるほどであったことが示された。
【0081】
実施例2.3:MMHQ樹脂の現場合成および低い重合度を有するゴムでの低接着処方
この実施例は、最も低い好適な重合度を有するビニルシロキサンゴムで作成されたPSA処方およびSiH官能性MM
HQ樹脂の現場合成並びに有機アミン触媒の存在下でのこの樹脂の反応を説明する。
【0082】
シリコーンPSAは、80.1gのMQ樹脂、式M
ViD
3200D
Vi7M
Viを有する118.3gのビニルシロキサンゴム、および132.3gのトルエンを1Lの丸底フラスコ中で組み合わせることによって調製された。この混合物は均一になるまで撹拌され、そして3.1gの1,1,3,3-テトラメチルジシラザンが滴下して添加された。30分後に、この混合物は還流加熱され、0.1gのジ(イソプロピルアミノ)ジメチルシランが添加された。この混合物はさらに90分間還流された。この混合物をブタノールでガス定量滴定したところ、最終ヒドリド濃度として134ppm(固形分基準)が示された。このPSAをKarstedt触媒としての100ppmの白金で触媒し、硬化して、剥離接着力が341gf/インチの粘性フィルムを得た。ガラス基材に付着させると、このPSAは遅い表面濡れ性を示した。剥離した場合、この接着剤はガラス基材上に視認可能な残渣を残さなかった。
【0083】
濡れ性は、任意の基準に対して定量的に測定した。「速い」は、入手可能な最良の市販品に相当する性能を示す。「遅い」は、フィルム-基材接触面が自発的および連続的に前進すると見たときの、最も遅い速度である。「なし」は、フィルムが表面を自発的に濡らさず、結合を生成するために圧力の印加を必要としたことを示す。
【0084】
実施例2.4:ゴムが低い重合度と追加の架橋剤を有する低接着処方
この実施例は、実施例2.3からのPSAに対する追加的なヒドリドシロキサン架橋剤の効果を説明する。
【0085】
シリコーンPSAは、実施例2.3からの20.0gの接着剤溶液を、式MD
H4D
17Mを有する0.5gのヒドリドシリコーンと組み合わせることによって調製した。この組成物をKarstedt触媒としての100ppmの白金で触媒し、硬化して、剥離接着力が101gf/インチのテープを得た。ガラス基材に付着させると、このPSAは遅い表面濡れ性を示した。剥離した場合、この接着剤はガラス基材上に視認可能な残渣を残さなかった。
【0086】
実施例2.5:低接着処方
この実施例は、有機アミン触媒なしで調製したPSA処方を説明する。
【0087】
シリコーンPSAは、実施例1.1からの286.2gの処理された樹脂溶液(60%固形分)、600.1gのトルエン、式M
ViD
Vi48D
4950M
Viを有する150.0gのビニルシロキサンゴム、式M
ViD
Vi8D
4990M
Viを有する150.0gのビニルシロキサンゴム、および式MD
H33D
23Mを有する0.294gのヒドリドシロキサンを高剪断ミキサー中で組み合わせ、120分間にわたり70℃でブレンドすることによって調製した。最終的なPSA溶液は、樹脂:ゴム比が0.6:1であった。この接着剤の試料をKarstedt触媒としての50ppmの白金で触媒し、硬化して、剥離接着力が37gf/インチのテープを得た。ガラス基材に付着させると、このPSAは中程度の表面濡れ性を示した。剥離した場合、ガラス基材の塗装性は優れたままであり、シリコーンの転写が無視できるほどであったことが示された。
【0088】
実施例2.6:任意選択の縮合プロセスを有する低接着処方
この実施例は、実施例2.5からのPSAに対する有機アミン触媒の効果を説明する。
【0089】
シリコーンPSAは、実施例2.5からの296.3gの接着剤溶液を0.23gのジメチルジ(イソプロピルアミノ)シランと組み合わせ、111℃で1時間加熱することによって調製された。この接着剤の試料をKarstedt触媒としての50ppmの白金で触媒し、硬化して、剥離接着力が55gf/インチのテープを得た。ガラス基材に付着させると、このPSAは中程度の表面濡れ性を示した。剥離した場合、ガラス基材の塗装性は優れたままであり、シリコーンの転写が無視できるほどであったことが示された。
【0090】
実施例2.7:樹脂:ゴム比1.1:1での低接着処方
この実施例は、最も高い好適な樹脂:ゴム比のPSA処方を説明する。
【0091】
シリコーンPSAは、実施例1.1からの2516gの処理された樹脂溶液(60%固形分)、1511gのトルエン、1809gのキシレン、式M
ViD
Vi48D
4950M
Viを有する1031gのビニルシロキサンゴム、式M
ViD
Vi8D
4990M
Viを有する343.9gのビニルシロキサンゴム、式MD
H33D
23Mを有する1.724gのヒドリドシロキサン、および3.645gの1-エチニルシクロヘキサン-1-オールを高剪断ミキサー中で組み合わせ、120分間にわたって70℃でブレンドすることによって調製した。最終的なPSA溶液は4200cPの粘度と樹脂:ゴム比1.1:1を有していた。このPSAの試料をKarstedt触媒としての50ppmの白金で触媒し、硬化して、剥離接着力が126gf/インチおよびプローブタックが518g/cm
2のテープを得た。ガラス基材に付着させると、このPSAは遅い表面濡れ性を示した。剥離した場合、ガラス基材の塗装性は優れたままであり、シリコーンの転写が無視できるほどであったことが示された。
【0092】
実施例2.8:低いSiHおよび高いビニル含有量の超低接着処方
この実施例は、最も低い好適な樹脂:ゴム比およびSiH:ビニル比のPSA処方を説明する。
【0093】
シリコーンPSAは、実施例1.2からの3.3gの処理された樹脂溶液(60%固形分)、18.0gのトルエン、式M
ViD
Vi250D
6300M
Viを有する10.0gのビニルシロキサンゴム(3.8モル%のビニル)、および0.08gのSurfynol 61をブレンドすることによって調製した。最終的なPSA溶液は、樹脂:ゴム比で0.2:1と、SiH:ビニル比で0.25:1を有していた。このPSAをKarstedt触媒としての100ppmの白金で触媒し、硬化して、剥離接着力が6gf/インチのテープを得た。ガラス基材に付着させると、このPSAは速い表面濡れ性を示した。剥離した場合、ガラス基材上には視認可能なシリコーン残渣はなかった。
【0094】
実施例2.9:低いビニル含有量の低接着処方
この実施例は、最も低い好適なビニル含有量を有するビニルシロキサンゴムで作成されたPSA処方を説明する。
【0095】
シリコーンPSAは、実施例1.2からの3.3gの処理された樹脂溶液(60%固形分)、26.7gのトルエン、式M
ViD
Vi3D
4995M
Viを有する10.0gのビニルシロキサンゴム(0.1モル%のビニル)、および0.08gのSurfynol 61をブレンドすることによって調製した。このPSAをKarstedt触媒としての100ppmの白金で触媒し、硬化して、剥離接着力が127gf/インチのテープを得た。ガラス基材に付着させると、このPSAは速い表面濡れ性を示した。剥離した場合、ガラス基材上には視認可能なシリコーン残渣はなかった。
【0096】
実施例2.10:UV放射線の下で硬化された超低接着処方
この実施例は、接着剤組成物を硬化するための紫外光の適用により活性化されるヒドロシリル化触媒の使用を説明する。
【0097】
シリコーンPSAは、実施例1.1からの4.37gの処理されたMQ樹脂溶液(60%固形分)、0.14gのM
H4Q
3樹脂、12.24gのトルエン、10.3gのキシレン、式M
ViD
Vi48D
4950M
Viを有する6.71gのビニルシロキサンゴム、式M
ViD
Vi8D
4990M
Viを有する6.67gのビニルシロキサンゴム、式MD
H33D
23Mを有する0.02gのヒドリドシロキサンを組み合わせ、室温において手作業でブレンドすることによって調製した。このシリコーン接着剤組成物は、(メチルシクロペンタジエニル)トリメチル白金(IV)としての30ppmの白金で触媒した。保護フィルムの試料は、150μm(6ミル)のPSA溶液のフィルムを、未処理の76μm(3ミル)のポリエステルフィルムシート上へと、Gardner社のナイフでキャスティングすることによって調製され、出力が400W/インチの中圧水銀ランプからの紫外放射線に20秒間曝露するに先立ち、溶媒が20分間にわたって大気温度で蒸発された。硬化したテープは、3gf/インチの剥離接着力を有していた。ガラス基材に付着させると、このPSAは速い表面濡れ性と容易な気泡除去性とを示した。剥離した場合、ガラス基材の塗装性は優れたままであり、シリコーンの転写が無視できるほどであったことが示された。
【0098】
比較例1.1
この例は、米国特許第8933187号の実施例26に従って調製された組成物が、保護フィルムの用途に適切なPSAを生成しないことを説明する。
【0099】
2Lの丸底フラスコ内で、式M
ViD
Vi7D
3200M
Viを有する230gのビニルシロキサンゴム、式M
ViD
800M
Viを有する426gのビニルシロキサンゴム、式M
Vi3D
95T
2.5を有する110gのビニルシロキサン流体、1925gのトルエン中60%のMQ樹脂溶液、および105gの1-テトラデセンを組み合わせ、約148℃で4時間にわたって還流加熱して、共沸蒸留によって水を除去した。温度を75℃に下げ、そして30.2gの1,1,3,3-テトラメチルジシラザンを混合物に添加し、続いて0.6gのジメチルジ(イソプロピルアミノ)シラン触媒を添加した。2時間後に、200gのトルエンを添加し、そして混合物を4時間にわたって還流加熱して、縮合反応により形成された水を除去した。温度を175℃に上げ、そして1時間保持する間に溶媒を除去した。この混合物を室温まで冷却し、そして5.0gの1-エチニルシクロヘキサン-1-オールを添加した。最終的な組成物は、94.7%の固形分と、229ppmヒドリドを含んでおり、粘度は410,000cPであった。
【0100】
この組成物をCl
2Pt(SEt-
2)
2としての25ppmの白金で触媒し、50μmのPETフィルム上にキャスティングして、130℃での硬化により50μmの接着剤フィルムを得た。このPSAは剥離強度1922gf/インチを有しており、ガラス基材に付着させた場合に表面濡れ性や気泡除去性を示さなかった。剥離した場合、このPSAは分岐を示し、そして部分的な凝集破壊を被った。ガラス基材の塗装性はまあまあであり、過剰のシリコーン転写のあることが示された。
【0101】
比較例1.2:
この例は米国特許第8933187号により、実施例26から30に教示されたようにヒドリドシロキサン架橋剤の添加をもって調製された、保護フィルムの用途に適さない別の組成物を説明する。
【0102】
12Lの丸底フラスコ内で、式M
ViD
Vi7D
3200M
Viを有する541gのビニルシロキサンゴム、式M
ViD
800M
Viを有する1002gのビニルシロキサンゴム、式M
Vi3D
95T
2.5を有する386gのビニルシロキサン流体、6427gのトルエン中60%のMQ樹脂溶液、および294gの1-テトラデセンを組み合わせ、約148℃で4時間にわたって還流加熱して、11mLの水を共沸蒸留によって除去した。温度を75℃に下げ、そして82.3gの1,1,3,3-テトラメチルジシラザンを混合物に添加し、続いて1.9gのジメチルジ(イソプロピルアミノ)シラン触媒を添加した。2時間後に、この混合物を4時間にわたって還流加熱して、縮合反応により形成された水を除去した。この混合物を室温まで冷却し、構造MD
17D
H4Mを有する212gのヒドリドシロキサン流体、式MD
20D
H10Mを有する22.3gのヒドリドシロキサン流体、式MD
15D
H30Mを有する63.9gのヒドリドシロキサン流体、および5.2gの1-エチニルシクロヘキサン-1-オールを添加した。最終的な組成物は、92.7%の固形分と、271ppmのヒドリドを含んでおり、粘度は39,700cPであった。
【0103】
この組成物をCl
2Pt(SEt-
2)
2としての25ppmの白金で触媒し、50μmのPETフィルム上にキャスティングして、130℃での硬化により4.5ミルの接着剤フィルムを得た。このPSAは剥離強度2155gf/インチを有していた。ガラス基材に付着させた場合に、このPSAは表面濡れ性や気泡除去性を示さなかった。剥離した場合、このPSAは分岐を示し、そして部分的な凝集破壊を被った。ガラス基材の塗装性はまあまあであり、過剰のシリコーン転写のあることが示された。
【0104】
比較例1.3
この例は、比較例1.2と同じ材料から調製され、保護フィルムの用途に使用するのに適さない、低接着性組成物を説明する。
【0105】
2Lの丸底フラスコ内で、式M
ViD
Vi7D
3200M
Viを有する230gのビニルシロキサンゴム、式M
ViD
800M
Viを有する426gのビニルシロキサンゴム、式M
Vi3D
95T
2.5を有する252gのビニルシロキサン流体、800gのトルエン中60%のMQ樹脂溶液、および80gの1-テトラデセンを組み合わせ、約148℃で4時間にわたって還流加熱して、共沸蒸留により水を除去した。温度を75℃に下げ、そして30.2gの1,1,3,3-テトラメチルジシラザンを混合物に添加し、続いて0.2gのジメチルジ(イソプロピルアミノ)シラン触媒を添加した。2時間後に、200gのトルエンを添加し、混合物を4時間にわたって還流加熱して、縮合反応により形成された水を除去した。温度を175℃に上げ、そして1時間保持する間に溶媒を除去した。この混合物を室温まで冷却し、そして式MD
17D
H4Mを有する46.2gのヒドリドシロキサン流体、式MD
20D
H10Mを有する4.9gのヒドリドシロキサン流体、式MD
15D
H30Mを有する14.0gのヒドリドシロキサン流体、および5.0gの1-エチニルシクロヘキサン-1-オールを添加した。最終的な組成物は、93.5%の固形分と、303ppmのヒドリドを含んでおり、粘度は32,200cPであった。
【0106】
この組成物をCl
2Pt(SEt-
2)
2としての25ppmの白金で触媒し、50μmのPETフィルム上にキャスティングして、130℃での硬化により50μmの接着剤フィルムを得た。このPSAは剥離強度16gf/インチを有し、ガラス基材に付着させた場合に、速い表面濡れ性と容易な気泡除去性とを示した。剥離した後、ガラス基材の塗装性は劣っており、過剰のシリコーン転写のあることが示された。
【0107】
本発明を多数の実施形態に関して説明してきたが、本発明の範囲から逸脱することなしに、本発明に対して種々の変更を行ってよく、またその要素を均等物で置換してよいことが、当業者によって理解されるであろう。加えて、特定の状況または材料に適合するために、本発明の本質的な範囲から逸脱することなしに、本発明の教示に対して多くの修正を行ってよい。従って本発明は、本発明を実施するために考えられたベストモードとして開示された特定の実施形態に限定されるのではなく、添付の特許請求の範囲内に包含されるすべての実施形態を含むことが意図されている。