(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ヒトアルブミンが、組成物の総質量に対して2質量%〜10質量%の間、好ましくは2.5質量%〜6%質量%の間の量で存在することを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の組成物。
治療目的のための細胞が、免疫細胞、たとえば、NK細胞、単球、Bリンパ球、天然又は遺伝子改変されているTリンパ球、たとえば、調節性Tリンパ球、細胞傷害性Tリンパ球、ヘルパーTリンパ球、及びキメラ抗原受容体(CAR)Tリンパ球、ヒト筋芽細胞、造血幹細胞、間葉系幹細胞、心臓細胞、線維芽細胞、並びに他のすべての天然又は遺伝子改変細胞から選択されることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の組成物。
凍結させる工程ii)を、-100℃〜-180℃の間、好ましくは-140℃〜-160℃の間の温度まで下げて実施することを特徴とする、請求項8に記載の凍結保存方法。
凍結させる工程ii)を、+4℃のイソプロピルアルコールの混合物中に沈められた容器に、i)で得た混合物を入れ、全部を-70℃〜-100℃の間の温度に導くことによって実施することを特徴とする、請求項8又は9に記載の凍結保存方法。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本出願では、本発明による組成物から除外される特定の腫瘍浸潤リンパ球は、自己由来であり、腫瘍に含まれている腫瘍浸潤リンパ球に相当する。
【0016】
本発明から除外されるこうした腫瘍浸潤リンパ球は、病期3又は4の黒色腫に罹患している患者からin-transit、リンパ節、又は転移性の皮膚結節を採取した試料からの腫瘍浸潤リンパ球のin vitro培養によって取得され、前記培養は、
- in-transit、リンパ節、又は転移性の皮膚結節を採取した試料に含有される前記腫瘍浸潤リンパ球を出現させる工程(この出現は、「初代培養」又は「エグジット」とも呼ばれ、in-transit、リンパ節、又は転移性の皮膚結節を採取した試料に当初は含有されていた腫瘍浸潤リンパ球が培地に移り、in vitroで培養される工程である)と、次いで、
- 出現工程の結果として得られる腫瘍浸潤リンパ球を刺激する工程と、次いで最後に、
- 刺激された腫瘍浸潤リンパ球を増幅する工程と
を含む。
【0017】
詳細には、TILを出現させる工程は、in-transit、リンパ節、又は転移性の皮膚結節を採取した試料の一次培養によって、特に、インターロイキン2(IL-2)を補充した(Cambrex社が販売する)X-VIVO 15(登録商標)型の無血清選択培地での一次培養によって実施することができる。
【0018】
TILを出現させた後、TILは、好ましくは、区画化された閉鎖培養容器において、特に、少なくとも、照射を受けた増殖しない同種異系フィーダー細胞の存在下で、刺激の工程にかけられる。「閉鎖培養容器」とは、適切な媒質における培養での細胞の維持を、前記細胞が外部環境と直接接触することなしに可能にする系を意味するものとする。TILを刺激する工程に続いて、最後に、増幅工程を実施する。
【0019】
すべてのTILが、本出願の治療目的のための細胞から除かれることが好ましい。
【0020】
したがって、本発明による組成物は、生理的に許容される媒質中に、
a)ヒトアルブミン、
b)少なくとも1種の糖、
c)DMSO及びL-システイン又はコエンザイムQ10、並びに
d)特定の腫瘍浸潤リンパ球が除外されている、治療目的のための細胞
を含む。
【0021】
「生理的に許容される媒質」とは、電解質を含む水性媒質を意味するものとする。電解質は、たとえば、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、及び/又はカルシウムの、塩化物、炭酸、水酸化物、又はカプリル酸型のアニオンとの塩である。生理的に許容される媒質は、塩化ナトリウム及びカプリル酸ナトリウムを含む水性媒質であることが好ましい。
【0022】
本発明による組成物は、ヒト血清アルブミン(ヒトアルブミン又は配合成分a))を含む。このタンパク質は、高分子量(およそ65kDa)の血漿タンパク質である。このタンパク質は、血漿において最も豊富なタンパク質であり、その正常な平均濃度は、38〜48g/lである。このタンパク質によって、pHを緩衝し、モル浸透圧濃度を維持することが可能になる。その純度は、95%であることが好ましい。ヒト血清アルブミンの1種又は複数の断片及び/又は誘導体を使用することも可能であり、前記断片又は誘導体は、非免疫原性であり、ヒト血清アルブミンと同様の膨張特性を有する。
【0023】
ヒト血清アルブミン、その断片及び/又は誘導体は、組成物の総質量に対して2質量%〜10質量%の間、好ましくは2.5質量%〜6%質量%の間、好ましくは3.5質量%〜4.5質量%の間の量で存在することが好ましい。
【0024】
本出願では、別段指摘しない限り、組成物の総質量に対する質量によって量に言及する。
【0025】
本発明による組成物は、少なくとも1種の糖(配合成分b))も含む。糖は、浸透平衡を保つことにより、細胞生存及び機能を向上させる。ごく少量が細胞に浸透し、膜構造の安定化を可能にする。糖は、単糖類、二糖類、及び三糖類から選択されることが好ましい。
【0026】
単糖類は、グルコース、ガラクトース、フルクトース、及びマンノースから選択されることが好ましい。
【0027】
二糖は、式A-Bを有し、A及びBは、グルコース、フルクトース、及びマンノースから独立に選択されることが好ましい。糖は、二糖であることが好ましい。二糖は、グルコース二量体であることが好ましい。より優先的には、二糖は、トレハロース及びスクロースから選択される。より優先的には、二糖は、トレハロースである。
【0028】
三糖類は、ラフィノース(ガラクトース、グルコース、及びフルクトースの三量体)、マルトトリオース及びイソマルトトリオース(グルコース三量体)から選択されることが好ましい。
【0029】
糖は、本発明による組成物中に、0.05M〜0.5Mの間、好ましくは0.07M〜0.3Mの間、好ましくは0.08M〜0.12Mの間の濃度で存在することが好ましい。
【0030】
最後に、本発明による組成物は、少なくともDMSO及びL-システイン又はコエンザイムQ10(配合成分c))を含む。したがって、本発明による組成物は、配合成分c)として、少なくともDMSO及びL-システインを含む。別法として、本発明による組成物は、配合成分c)として、少なくともDMSO及びコエンザイムQ10を含む。
【0031】
DMSO、すなわちジメチルスルホキシドは、式CH
3-SO-CH
3の極性非プロトン性有機溶媒である。DMSOは、細胞内凍結保護物質であり、その主な目的は、細胞内の液体に取って代わることであり、したがって、これにより、膜構造を破裂させる、凍結/解凍の相に固有の氷晶形成及び浸透ストレスを防ぐことが可能になる。DMSOは、本発明による組成物中に、2質量%〜15質量%の間、好ましくは2.5質量%〜4.5質量%の間の量で存在することが好ましい。
【0032】
L-システインは、チオール基-SHを有するアミノ酸である。L-システインは、組成物中に、0.05mM〜5mMの間の濃度で存在することが好ましい。
【0033】
ユビキノンとも呼ばれるコエンザイムQ10は、キノン基を含む化合物である。その化学名は、2,3-ジメトキシ-5-メチル-6-デカプレニルベンゾキノンである。コエンザイムQ10は、本発明による組成物中に、0.005質量%〜1質量%の間、好ましくは0.007質量%〜0.5質量%の間、好ましくは0.007質量%〜0.1質量%の間の量で存在することが好ましい。
【0034】
本発明による組成物は、生理的に許容される媒質中に、
a)好ましくは2.5質量%〜6質量%の間の量の、ヒトアルブミンと、
b)好ましくは0.05M〜0.5Mの間の濃度の、糖、好ましくはトレハロースと、
c)好ましくは、それぞれ、2質量%〜15質量%の間の量及び0.5mM〜2mMの間の濃度の、DMSO及びL-システインと
を含むことが好ましい。
【0035】
本発明による組成物は、治療目的のための少なくとも1種の細胞試料を凍結保存するのに特に有益であり、そうすることを目指すものである。実に、本発明による組成物において使用する配合成分a)〜c)によって、治療目的のための細胞を持続可能かつ有効に凍結保存することが可能になる。
【0036】
治療目的のための細胞(配合成分d))は、
- 免疫細胞、たとえば、NK細胞、単球、Bリンパ球、天然又は遺伝子改変されているTリンパ球、たとえば、調節性Tリンパ球、細胞傷害性Tリンパ球、ヘルパーTリンパ球、及びキメラ抗原受容体(CAR)Tリンパ球、
- ヒト筋芽細胞、
- 造血幹細胞、
- 間葉系幹細胞、
- 心臓細胞
- 線維芽細胞、並びに
- 他のすべての天然又は遺伝子改変細胞
から選択されることが好ましい。
【0037】
NK細胞(又はNKリンパ球)は、先天免疫の細胞である。これらの細胞は、ヒトでは、CD56、CD16、及びNKマーカーによって特徴付けられる非T(CD3-)、非B(Cd19-)リンパ球である。
【0038】
単球は、マクロファージ、樹状細胞、又は破骨細胞へと進化する白血球である。
【0039】
Bリンパ球は、抗体の産生を担う免疫細胞である。
【0040】
調節性Tリンパ球は、CD4+ Tリンパ球の亜集団であり、他のエフェクターTリンパ球の増殖を抑制する。
【0041】
細胞傷害性Tリンパ球は、CD8+ Tリンパ球の亜集団であり、感染した細胞を破壊する。
【0042】
ヘルパーTリンパ球は、CD4+ Tリンパ球の亜集団であり、免疫応答を媒介する。
【0043】
最後に、CAR-T細胞とも呼ばれる、キメラ抗原受容体(CAR)を有するTリンパ球は、特定の細胞工学技術に該当する。これらは、キメラ抗原受容体を発現するTリンパ球である。CAR-T細胞は、がん細胞上に存在する腫瘍抗原を認識し、結合することにより、前記がん細胞を死滅させることができる。
【0044】
治療目的のための細胞試料は、生検又は血液試料採取によって、治療を受ける患者を起源とすることがある(この場合、患者とドナーとは、同じ者である)。この場合では、得られる組成物は、凍結保存、次いで解凍されると、同じ患者に投与されることになり、自己由来の生成物である。
【0045】
別法として、治療目的のための細胞試料は、特に、生検又は血液試料採取によって、別の供給元(すなわち、別の固体又は細胞工学)を起源とする場合もある。この場合では、得られる組成物は、凍結保存、次いで解凍されると、ドナーではなく、治療を受ける患者に投与されることになり、同種異系の生成物である。
【0046】
本発明はまた、特定の腫瘍浸潤リンパ球が除外されている、治療目的のための少なくとも1種の細胞試料を凍結保存する方法であって、
i)治療目的のための細胞試料を、
a)ヒトアルブミン、
b)少なくとも1種の糖、並びに
c)DMSO及びL-システイン又はコエンザイムQ10
と混合する工程と、次いで
ii)工程i)で得た混合物を凍結させる工程と
を含む方法に関する。
【0047】
この方法では、i)治療目的のための細胞試料を上述の配合成分a)〜c)と混合する工程は、通常は希釈によって実施される。細胞は、液体形態の配合成分a)に溶いて、好ましくは50%の体積とし、次いで、好ましくは予め混ぜ合わせて2倍濃度の溶液としておいた配合成分b)及びc)を加えることが好ましい。工程i)の混合は、4℃前後、又は室温(すなわち20℃)で実施してよい。
【0048】
治療目的のための細胞試料に関しては、適切な培地においてin vitroで予め培養されていることが好ましい。次いで、細胞試料を遠心分離にかけ、上清を除去し、ペレットを上記の配合成分a)、次いでb)及びc)に懸濁させる。
【0049】
凍結させる工程(工程ii))は、+4℃又は室温から-100℃〜-160℃の間の温度になるまでの温度降下によって実施することが好ましい。凍結させる工程(工程ii))は、-100℃〜-180℃の間、好ましくは-140℃〜-160℃の間の温度まで下げて実施することが好ましい。
【0050】
次いで、試料は、一般に-130℃未満の温度で貯蔵される。
【0051】
凍結させる工程ii)は、+4℃のイソプロピルアルコールの混合物中に沈められた容器に、工程i)で得た混合物を入れ、全部を-70℃〜-90℃の間の温度に導くことによって実施することが好ましい。この系(「Nalgeneボックスでの凍結」)では、アルコールの緩徐な冷却のおかげで、毎分-1℃〜-2℃の間の実質上直線的な温度降下が可能になる。別法として、凍結ii)は、プログラムされた冷凍庫によって実施することが好ましい。そのような冷凍庫は、詳細には、Air Liquide社又はCryobiosystem社によって販売されている。
【0052】
凍結させる工程ii)は、特に、プログラムされた冷凍庫によって、
- 工程i)で得た混合物を+4℃の温度下に置く工程と、次いで
- 温度を4℃から-40℃に毎分1℃で低下させる工程と、次いで
- 温度を-40℃から-150℃に毎分10℃で低下させて、およそ-150℃の最終貯蔵温度に到達させる工程と
によって実施することが好ましい。
【0053】
こうして得られた凍結した生成物は、数か月間およそ-150℃で保つことができる。これらの温度は、試料に適用されるものである。
【0054】
本発明を、以下の完全に非限定的な実施例によって説明する。
【実施例1】
【0055】
筋芽細胞の凍結保存についての本発明による製剤での試験
3.5% DMSOと名付けた次の製剤:
3.5%のDMSO + 1mMのL-システイン + 0.1Mのトレハロース + 4%のヒト血清アルブミン(HA)
を調製した。
【0056】
凍結させる前に、4℃で最大15分のインキュベート時間が必要である。
【0057】
この複合製剤を、定められたサイクルに従う複雑な温度降下を可能にするCRF(プログラムされた冷凍庫)によって実施される自動化された温度降下サイクルと組み合わせる。-40℃になるまで、細胞は、感受性であると考えられ、規則正しい結晶の形成を可能にするために、温度降下は緩徐で段階的である。この閾値より下では、生成物は安定すると考えられ、最大-150℃の貯蔵温度になるまで温度降下は急速である(気体又は液体窒素)。
【0058】
研究の状況
筋芽細胞を凍結させる研究の間、4つのサイクルを実施し、その特徴を以下の表に示す。
【0059】
【表1】
【0060】
これら4つのサイクルについて、健康な患者を起源とする筋芽細胞のバイアルを解凍した。細胞を増幅し、次いで、CRFによって、5×10
6細胞/mlの濃度で凍結させた。
【0061】
凍結用製剤の有効性を証明するために、3つの試験群を実施した。各群について、2本の1mlバイアルを試験用に解凍した。
【0062】
【表2】
【0063】
評価基準
凍結用製剤の有効性を評価する目的で、凍結前(T0と呼ぶ)及び凍結後に、以下の表に示す異なる試験を実施した。解凍された細胞で得られた結果を、T0と比較し、T0に対する%で示した。この最初の分析では、試験した各群について、凍結が細胞に及ぼす影響を決定することが可能になる。
【0064】
【表3】
【0065】
次に、異なる凍結群を統計分析によって比較した。実験室内で一般に使用される参照凍結用製剤は、10% DMSO + 4% HAであるので、群1を統計分析のための参照とした。サイクル1及び2については、群2(CS10中での凍結)を、10% DMSO中に製剤された細胞が存在しない参照とした。
【0066】
統計分析の際は、Fisherの検定(F検定、p>0.05であれば均一な分散)によって、分散の均一性を分析した。均一な分散の場合では、2つの等分散観察データでの平均の同等性についての検定を実施した。Fisherの検定による均一でない分散(p<0.05)の場合では、2つの異分散観察データでの平均の同等性についての検定を実施した。平均は、p>0.10であれば有意差がない。平均は、p<0.10であれば有意差がある。
【0067】
結果
細胞の生存度の分析
解凍後0時間での生存度の分析は、群1、2、及び3について、解凍後に得られる百分率がT0と同等であることを示している(T0の90〜109%)。
【0068】
バッチ1について、3.5% DMSO中で凍結させた細胞は、陽性対照とみなされるCS10条件と比較して生存度が低下している。しかし、生存度は満足できるままであり(90%超)、CS10条件は、安定している。
【0069】
バッチ4について、CS10及び10% DMSO条件は、互いに、及びT0に対して差がないが、3.5% DMSO群は、10% DMSO参照群より低い傾向のある生存度を示している。
【0070】
バッチ3及び2について、試験した2つの製剤は、T0及び10% DMSOと差がない。
【0071】
最後に、異なる製剤間の差が小さいため、解凍後生存度は、決め手となる基準でない。
【0072】
解凍後の生存度
【0073】
【表4】
【0074】
【表5】
【0075】
【表6】
【0076】
【表7】
【0077】
その一次容器中及びその冷凍庫製剤中にて室温で4時間後の細胞の生存度を分析することで、細胞の解凍安定性を評価することが可能になる(現実の状況下での患者への注射前の取扱い、輸送、及び待機の条件がシミュレートされる)。分析によって、4つの群について、T0に対して20%未満という、生存度百分率の穏やかな低下が示されており、これは許容されるものである。
【0078】
群3については、統計分析によって、バッチ4でのみ生存度の低下が示されている。
【0079】
解凍後4時間の時点での生存度:
【0080】
【表8】
【0081】
【表9】
【0082】
【表10】
【0083】
【表11】
【0084】
表現型の分析
生成物中での筋芽細胞の安定性を明らかにするために、表現型の分析を行った。最初の3つのバッチについて、判明した百分率は、T0と同一であり、参照群と有意差はない。バッチ4については、統計分析によって、3.5% DMSO中に製剤された細胞で、有意に低い百分率が示されている。
【0085】
表現型:
【0086】
【表12】
【0087】
【表13】
【0088】
【表14】
【0089】
【表15】
【0090】
細胞の増殖の分析
【0091】
【表16】
【0092】
【表17】
【0093】
【表18】
【0094】
【表19】
【0095】
増殖試験は、異なるインキュベート時間で実施した。
- バッチ1:3日の増殖
- バッチ2:5日の増殖
- バッチ3:5日の増殖
- バッチ4:3日の増殖
【0096】
まず、結果を分析すると、細胞が増殖する潜在能力は、凍結後に減退することが示されている。実際は、T0に対する百分率は、大きくばらついている。3.5% DMSO中に製剤された細胞の増幅率は、参照群と有意差がない。しかし、4番目のサイクルについて、群3の細胞の増幅率は、群1より有意に低い。
【0097】
研究の結論
本凍結研究は、したがって、異なるドナーからの4つのバッチのヒト筋芽細胞で実施した。研究した基準の中での結論:
- 細胞の生存度。筋芽細胞の凍結保存は、細胞生存度に関しては、3.5% DMSO製剤中が、T0に対して常に80%より高いため、有効である。解凍後4時間の時点で得られた結果は、妥当であり、臨床での使用の正当性を実証するものである。
- 増殖試験。筋芽細胞を凍結させることは、T0より低い増幅率に反映される、細胞の増殖能の固有の低下につながる。この低下は、すべての群に共通している。実験室で一般に観察されるこの現象は、凍結用製剤を除外する基準ではない。
- 表現型。3.5% DMSO凍結用製剤は、目的の細胞(筋芽細胞)の百分率を完全に保つ。
【実施例2】
【0098】
血液単核細胞(BMC)の凍結保存についての本発明による製剤の試験
3.5% DMSOと名付けた次の製剤:
3.5%のDMSO + 1mMのL-システイン + 0.1Mのトレハロース + 4%のHA
を調製した。
【0099】
凍結させる前に、4℃で最大15分のインキュベート時間が必要である。
【0100】
この複合製剤を、定められたサイクルに従う複雑な温度降下を可能にするCRF(プログラムされた冷凍庫)によって実施される自動化された温度降下サイクルと組み合わせる。-40℃になるまで、細胞は、感受性であると考えられ、規則正しい結晶の形成を可能にするために、温度降下は緩徐で段階的である。この閾値より下では、生成物は安定すると考えられ、最大-150℃の貯蔵温度になるまで温度降下は急速である(気体又は液体窒素)。
【0101】
研究の状況
BMCを凍結させる研究では、2サイクルを実施し、その特徴を以下の表に示す。
【0102】
【表20】
【0103】
2つのサイクルについて、Ficoll後に、血球分離供与キットからBMCを単離した。フラスコにおいて24時間インキュベートして単球の接着を可能にした後、BMCをCRFによって20×10
6細胞/mlの濃度で凍結させた。
【0104】
凍結用製剤の有効性を証明するために、3つの試験群を実施する。各群について、2本の1mlバイアルを試験用に解凍した。
【0105】
【表21】
【0106】
評価基準
凍結用製剤の有効性を評価する目的で、以下の表に示す異なる基準を、凍結前の対照(T0)並びに凍結させた参照である10% DMSO及びCS10と比較して評価した。得られた結果は、T0に対する%で示した。
【0107】
【表22】
【0108】
異なる凍結群をT検定によって比較した。実験室内で一般に使用される参照凍結用製剤である10% DMSO + 4% HA(群1、陰性対照)を、統計分析のための参照とした。
【0109】
統計分析の際は、Fisherの検定(F検定、p>0.05であれば均一な分散)によって、分散の均一性を推定し、結果に応じて、等分散又は異分散の2つの観察データでの平均の同等性についての検定を実施した。平均は、p<0.05であれば有意差がある。
【0110】
細胞の生存度の分析
各バッチについて、解凍後生存度の分析は、群1及び2で、解凍して得られた百分率がT0と同等であることを示している(T0の96.0%超)。条件1及び2の生存度がT0に対して安定していることに留意すべきである。
【0111】
バッチ16Pi00230について、群2は、群1といかなる差もない。
【0112】
2つのバッチの群3は、より低い生存度を示している(T0に対して平均89.0%)。この傾向は、統計分析によって確認され、3.5% DMSOについて、10% DMSOと比較して有意に低い生存度が示されている。
【0113】
【表23】
【0114】
解凍後4時間の時点での生存度の分析は、群3について、T0に対して12%以下という生存度百分率の穏やかな減少を示している。この段階で、3.5% DMSO製剤は、バッチ16Pi00230については10% DMSO製剤と差がないが、バッチ16Pi00231については有意に劣っている。
【0115】
【表24】
【0116】
CFSE試験による細胞の増殖の分析
この免疫標識法は、染色された親細胞が2個の娘細胞に分裂することにより希釈される、細胞内染色剤であるCFSE(カルボキシフルオレセインジアセテートスクシンイミジルエステル)の消滅を観察することにより、細胞の増殖を測定することを意図している。これは、細胞の機能状態を反映する。
【0117】
バッチそれぞれについて、試験では、解凍された細胞の増殖能を、すべての群について示している。統計分析によって、10% DMSOに対して、CS10及び3.5% DMSO中で凍結させた群間に有意差はないと結論付けられる(バッチ16Pi00230についてのみ)。しかし、試験製剤及びCS10では、より均一な結果が得られる(2連で低い分散)のに対し、10% DMSO対照は、非常にばらつきがある(バッチ16Pi00230についての標準偏差=14.5%)。
【0118】
バッチ16Pi00231については、3.5% DMSO中で凍結させた細胞で得られた結果が、T0及び10% DMSO条件より劣っている。
【0119】
【表25】
【0120】
脱顆粒試験の分析
脱顆粒試験では、ビーズによって模倣されたCD3-CD28活性化シグナルに応答した細胞(詳細には、CD8+細胞傷害性エフェクター集団)の免疫能を評価することが可能になる。
【0121】
脱顆粒している細胞の百分率は、すべての凍結条件において、T0に対して減少している。
【0122】
バッチ16Pi00230については、異なる条件を互いに比較しても、10% DMSO参照はばらつきも大きいため(=16.2±6.7)、有意差は示されていない。
【0123】
バッチ16Pi00231について、条件1及び2の場合では、免疫能の低下が激しい(凍結前の22.3%から6.1%)3.5% DMSO条件とは異なり、この減少が穏やかで、許容されるものである。群1及び2については、増殖している細胞の百分率が安定している(およそ20%)。
【0124】
【表26】
【0125】
表現型の分析
この分析では、百分率として示されるBMCの細胞組成を決定することが可能になる。
【0126】
全細胞の内訳:
●造血細胞(CD45+)
●非造血性細胞不純物(CD45-)
CD45+細胞の内訳:
●CD45+/3+ Tリンパ球
●CD45+/3+/8+細胞傷害性Tリンパ球
●CD45+/3+/4+ヘルパーTリンパ球
●CD45+/3+/16+及び/又は56+ NK(ナチュラルキラー)
●CD45+/19+/3-Bリンパ球
●CD45+/14+/3-単球
【0127】
【表27】
【0128】
各バッチについて得られた結果は、同じ傾向に従っている。実際に、T0の値は、近似しており、2つのバッチを合わせた平均の分析を可能にするものである。以下の表は、こうした値をT0に対する%として示すものである(2つのバッチについて、n=2回の繰り返し、すなわち、解凍条件について合計で4つの値、T0は2連で実施した)。
【0129】
【表28】
【0130】
異なる製剤は、検討中の亜集団に応じた異なる保存特性を有し、3.5% DMSO製剤は、単球及びBリンパ球の保存に最も有効である。CD4及びCD8 Tリンパ球の減少が認められる(T0と比較して-14.9%)。
【0131】
NKの保存は、製剤中のDMSOの%と相関する。中間の3.5% DMSO製剤(75.0%)から10% DMSO製剤(84.2%)への用量依存的な効果が認められる。10%のDMSOを含有するCS10条件は、10% DMSOと有意差がない。
【0132】
研究の結論
本凍結研究は、したがって、異なる2名の健康な患者からの血球分離リングを起源とする2つのバッチのBMCで実施した。研究した基準の中での結論:
- 細胞の生存度。BMCの凍結保存は、3.5% DMSO製剤において有効である(3.5% DMSOで約10%の穏やかな減少)。解凍後4時間の時点で得られた結果は、満足できるものであり、臨床での使用を許容するものである。
- 増殖試験(CFSE)。3.5% DMSO製剤中でBMCを凍結させても、細胞の増殖能に有害な影響は及ばなかった。
- 脱顆粒試験。BMC内のTリンパ球集団の免疫能は、相対的にばらつきがあり、患者依存的である。ばらつきの大きい最初のバッチの結果を、客観的にとらえるべきである(すべての場合における機能性の大幅な低下)。解凍後に得られた結果は、T0について得られた結果より芳しくないものの、Tリンパ球は、細胞障害能を保持している。
- 表現型。3.5% DMSO凍結用製剤は、特異的な作用を示し、ある特定の細胞集団を優先的に保存する。実際に、3.5% DMSO製剤は、NKの保存においてより有効である。
【実施例3】
【0133】
間葉系幹細胞(MSC)の凍結保存についての本発明による製剤での試験
3.5% DMSOと名付けた次の製剤:
3.5%のDMSO + 1mMのL-システイン + 0.1Mのトレハロース + 4%のヒト血清アルブミン(HA)
を調製した。
【0134】
凍結させる前に、4℃で最大15分のインキュベート時間が必要である。
【0135】
この複合製剤を、定められたサイクルに従う複雑な温度降下を可能にするCRF(プログラムされた冷凍庫)によって実施される自動化された温度降下サイクルと組み合わせる。-40℃になるまで、細胞は、感受性であると考えられ、規則正しい結晶の形成を可能にするために、温度降下は緩徐で段階的である。この閾値より下では、生成物は安定すると考えられ、最大-150℃の貯蔵温度になるまで温度降下は急速である(気体又は液体窒素)。
【0136】
研究の状況
本研究では、2サイクルを実施し、その特徴を以下の表に示す。
【0137】
【表29】
【0138】
各サイクルは、異なるドナーを起源とする細胞のバッチに相当する。これらの2サイクルについて、サイクル1ではATCCを、サイクル2ではThermo Fisher Scientific社を供給元とするMSCのバイアルを解凍した。細胞を数週間かけて増幅し、次いで、CRFによって、
●サイクル1については1.2×10
6細胞/ml
●サイクル2については2.5×10
6細胞/ml
の濃度で凍結させた。
【0139】
凍結用製剤の有効性を証明するために、3つの試験群を実施した。各群について、2本の1mlバイアル(2連)を試験用に解凍した。
【0140】
【表30】
【0141】
評価基準
凍結用製剤の有効性を評価する目的で、凍結前(T0と呼ぶ)及び凍結後に、以下の表に示す種々の選択的な試験を実施した。解凍された細胞で得られた結果を、T0と比較し、T0に対する%で示した。
【0142】
【表31】
【0143】
異なる群を統計分析によって比較した。参照製剤(群1)は、10% DMSO + 4% HAである。
【0144】
統計分析の際は、Fisherの検定(F検定、p>0.05であれば均一な分散)によって、分散の均一性を分析した。次いで、2つの等分散又は不等分散観察データでの平均の同等性についての検定を実施した。平均は、p>0.05であれば有意差がない。平均は、p<0.05であれば有意差がある。
【0145】
結果
細胞の生存度の分析
解凍後生存度の分析は、試験した条件が、すべての凍結群についてT0と差がないことを示している(T0の98%超の値)。統計分析によって示された差は、試験のばらつきによるものである。
【0146】
【表32】
【0147】
その一次容器中及びその冷凍庫製剤中にて室温で4時間後の細胞の生存度を分析することで、細胞の解凍安定性を評価することが可能になる(患者への注射前の取扱い、輸送、及び待機の現実の条件のシミュレーション)。分析は、3つの群について、安定した生存度百分率を示している。
【0148】
【表33】
【0149】
解凍から4時間後、2つのバッチについて、変動は小さい(T0の92%〜101%の間)。3.5% DMSO製剤の比較分析後、参照(10% DMSO)に対して、及び陽性対照(CS10)に対しても、有意差は示されていない。この製剤は、CS10に近い保存能力を有する。
【0150】
詳細には、10% DMSO条件は、試験した細胞の2つのバッチ間のばらつきが最も大きいが、CS10製剤は、最も安定している。
【0151】
最後に、異なる製剤間の差が小さいため、解凍後生存度は、決め手となる基準でない。
【0152】
表現型の分析
解凍された生成物中でのMSC集団の安定性を明らかにするために、表現型分析を行った。2つのバッチ(62535836及び8900-101)について、得られた百分率は、T0と有意差がなかった。したがって、目的の細胞の量は、凍結/解凍の過程による影響を受けない。
【0153】
【表34】
【0154】
細胞の増殖の分析
本増殖試験の原理は、6ウェルプレートに50000個の細胞を播種し、媒質を変えない増殖条件で7日後に得られた細胞の数を数えることからなる。細胞の増幅の段階は、凍結前の培養段階のものと同じ媒質において行われた。
【0155】
2つのサイクルについて、増殖試験は、T0条件に対して実施できなかった。最初の場合では、細胞が不可解に剥がれるようになり(ストレス)、2番目の場合では、細胞が淀んだ。このため、3.5% DMSO中に製剤された群を、対照群(10% DMSO及びCS10)とだけ比較している。
【0156】
【表35】
【0157】
各解凍条件について、細胞の増殖能は保たれている。統計分析によって、これらの間に有意差は示されていない。したがって、3.5% DMSO製剤は、参照と同等である。
【0158】
研究の結論
市販のバイアルを起源とし、再培養された2つのバッチのヒトMSCで実施した本研究が示していること:
- 細胞の生存度。MSCの凍結保存は、細胞生存度に関しては、3.5% DMSO製剤中が、T0に対して常に98%より高いため、有効である。更に、これは、CS10(陽性対照)と同等である。解凍後4時間の時点で得られた結果は、優れたものであり(生存度の低下なし)、臨床での使用の正当性を実証するものである。
- 増殖試験。異なる製剤でMSCを凍結させても、細胞の増殖能に影響は及ばなかった。しかし、T0なしで、これを適格とすることは不可能である。3.5% DMSO中に製剤された細胞について得られた増幅率は、対照と差がない。これは、この製剤がCS10(対照)と同等であることを示している。
- 表現型3.5% DMSO凍結用製剤は、目的の細胞(MSC)の百分率を完全に保つ。
【0159】
MSCの2つのバッチは、2つの異なる方法で培養し、ATCCから受け取った最初のバッチは、ATCCが推奨する条件下(ATCC媒質+成長キット)で1か月半の間、Thermo Fischer社を供給元とする他方は、DMEM+低グルコース濃度+10%ウシ胎児血清(FCS)の条件下で3週間増幅した。こうした違いは、2つのサイクルについての傾向が同じであるため、結果に影響していない。
【実施例4】
【0160】
線維芽細胞の凍結保存についての本発明による製剤での試験
3.5% DMSOと名付けた次の製剤:
3.5%のDMSO + 1mMのL-システイン + 0.1Mのトレハロース + 4%のヒト血清アルブミン(HA)
を調製した。
【0161】
凍結させる前に、4℃で最大15分のインキュベート時間が必要である。
【0162】
この複合製剤を、定められたサイクルに従う複雑な温度降下を可能にするCRF(プログラムされた冷凍庫)によって実施される自動化された温度降下サイクルと組み合わせる。-40℃になるまで、細胞は、感受性であると考えられ、規則正しい結晶の形成を可能にするために、温度降下は緩徐で段階的である。この閾値より下では、生成物は安定すると考えられ、最大-150℃の貯蔵温度になるまで温度降下は急速である(気体又は液体窒素)。
【0163】
研究の状況
本研究では、2サイクルを実施し、その特徴を以下の表に示す。
【0164】
【表36】
【0165】
これら2つのサイクルについて、異なる健康な患者を起源とする線維芽細胞胞のバイアルを解凍した。細胞を増幅し、次いで、CRFによって、5×10
6細胞/mlの濃度で凍結させた。
【0166】
凍結用製剤の有効性を証明するために、3つの試験群を実施した。各群について、2本の1mlバイアルを試験用に解凍した。
【0167】
【表37】
【0168】
評価基準
凍結用製剤の有効性を評価する目的で、凍結前(T0)及び凍結後(1〜3群)に、以下の表に示す種々の選択的な試験を実施した。解凍された細胞で得られた結果を、T0と比較し、T0に対する%で示した。
【0169】
【表38】
【0170】
異なる群を統計分析によって比較した。参照製剤(群1)は、10% DMSO + 4% HAである。
【0171】
統計分析の際は、Fisherの検定(F検定、p>0.05であれば均一な分散)によって、分散の均一性を実施した。均一な分散の場合では、2つの等分散観察データでの平均の同等性についての検定を実施した。均一でない分散の場合では、2つの異分散観察データでの平均の同等性についての検定を実施した。平均は、p>0.05であれば有意差がない。平均は、p<0.05であれば有意差がある。
【0172】
結果
細胞の生存度の分析
解凍後生存度によって、すべての群で凍結有効性が確認されている(T0の99%超)。
【0173】
【表39】
【0174】
その一次容器中にて室温で4時間後の細胞の生存度を分析することで、細胞の解凍安定性を評価することが可能になる(患者への注射前の取扱い、輸送、及び待機の現実の条件のシミュレーション)。
【0175】
【表40】
【0176】
解凍後4時間の時点で、細胞の生存度は、2つのバッチで安定したままである(T0と有意差がない)。製剤は、室温において細胞に毒性でない。
【0177】
3.5% DMSO製剤は、統計分析で有意差がないことによって証明された、10% DMSO(参照)及びCS10(陽性対照)と同じ保存潜在能力を有する。
【0178】
表現型の分析
生成物中での線維芽細胞集団の安定性を決定するために、表現型分析を行った。判明した百分率は、T0に対して安定している。したがって、目的の細胞の量は、凍結/解凍の過程による影響を受けない。
【0179】
【表41】
【0180】
細胞の増殖の分析
本増殖試験の原理は、6ウェルプレートにウェルあたり50000個の細胞を播種し、3日インキュベートした後に得られた細胞の数を測定することからなる。
【0181】
【表42】
【0182】
得られた結果によれば、解凍された細胞は、その増殖能を保ち、互いに有意差を示さない。
【0183】
研究の結論
本凍結研究は、したがって、異なるドナーからの2つのバッチのヒト線維芽細胞で実施した。研究した基準の中での結論:
- 細胞の生存度。線維芽細胞の凍結保存は、細胞生存度に関しては、3.5% DMSO製剤中が、T0に対して常に97%より高いため、有効である。更に、これは、CS10(陽性対照)と同等である。解凍後4時間の時点で得られた結果は、満足できるものであり(生存度の観察可能な低下なし)、臨床での使用を可能にするものである。
- 増殖試験。線維芽細胞の増殖能は、問題となるバッチによって異なる。最初のバッチでは、細胞は、凍結による影響を受けておらず、これは、3つの群についてT0以上である増幅率に反映されている。2番目のサイクルでは、増幅の度合いは、解凍された細胞でより良好である。
- 表現型3.5% DMSO凍結用製剤は、目的の細胞(線維芽細胞)の百分率を有効に保つ。