(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6879956
(24)【登録日】2021年5月7日
(45)【発行日】2021年6月2日
(54)【発明の名称】操縦運転モードを備えたハンドガイド式地面締固めローラおよびハンドガイド式地面締固めローラの操縦方法
(51)【国際特許分類】
E01C 19/24 20060101AFI20210524BHJP
E01C 19/28 20060101ALI20210524BHJP
E01C 19/26 20060101ALI20210524BHJP
【FI】
E01C19/24
E01C19/28
E01C19/26
【請求項の数】13
【外国語出願】
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2018-17454(P2018-17454)
(22)【出願日】2018年2月2日
(65)【公開番号】特開2018-123674(P2018-123674A)
(43)【公開日】2018年8月9日
【審査請求日】2019年2月28日
(31)【優先権主張番号】10 2017 000 951.1
(32)【優先日】2017年2月2日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】505073554
【氏名又は名称】ボーマーク ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100095898
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162824
【弁理士】
【氏名又は名称】石崎 亮
(72)【発明者】
【氏名】ヤン ヘクトル
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン パッフェン
【審査官】
石川 信也
(56)【参考文献】
【文献】
特開2014−152485(JP,A)
【文献】
特開昭56−139302(JP,A)
【文献】
米国特許第05816741(US,A)
【文献】
米国特許出願公開第2003/0068201(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01C 19/00−19/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハンドガイド式地面締固めローラ(1)であって、
−機械フレーム(2)と、
−前記機械フレーム(2)によって支持される駆動モータ(3)と、
−前記駆動モータ(3)によって駆動され、第1のローラドラム(4)と、前進方向において前記第1のローラドラム(4)の後ろに配置された第2のローラドラム(5)とを備え、前記ハンドガイド式地面締固めローラ(1)を地面(10)上で走行させ得る走行機構(13)と、
−利用者が前記ハンドガイド式地面締固めローラ(1)を手で操縦するために形成されたガイド桿(7)と、
を有し、
前記地面締固めローラ(1)は、前記ローラドラム(4、5)が停止しているかまたは同じ回転方向で前進走行もしくは後進走行で運転される作業運転モードで運転可能であり、
操縦運転モードでの前記ハンドガイド式地面締固めローラ(1)の運転のために制御機構(12)が存在しており、前記制御機構(12)は、前記操縦運転モードでは、前進方向において相前後して配置された前記ローラドラム(4、5)を、
a)前記ローラドラム(4、5)の一方の回転方向が前記ローラドラム(4、5)の他方の回転方向と逆になるよう運転するように、および/または
b)前記ローラドラム(4、5)の一方をブロックし、前記ローラドラム(4、5)の他方を回転方向に回転させて運転するように、および/または
c)少なくとも一方のローラドラム(4、5)を、設定頻度にて所定の回転方向と当該所定の回転方向とは逆の回転方向との間で回転方向を転換させながら運転するように形成されている、
ことを特徴とするハンドガイド式地面締固めローラ(1)。
【請求項2】
前記設定頻度は、1秒当たり少なくとも1回の回転方向転換である、
請求項1に記載のハンドガイド式地面締固めローラ(1)。
【請求項3】
前記制御機構は、
a)単一の前記設定頻度を制御するように、
b)操作者が選択可能な少なくとも2つの前記設定頻度による制御のために設計されるように、
c)操作者が前記設定頻度範囲内で無段階に調節できるように、
形成されている、
請求項2に記載のハンドガイド式地面締固めローラ(1)。
【請求項4】
前記制御機構は、以下の特徴、すなわち
−前記操縦運転モードにおいて、少なくとも一方の前記ローラドラムの回転速度が一定であること、
−前記操縦運転モードにおいて、操作者が、少なくとも一方の前記ローラドラムの回転速度を変更できること、
−前記回転速度を少なくとも2つのモード間で選択できること、
の少なくとも1つを満たすように形成されている、
請求項1に記載のハンドガイド式地面締固めローラ(1)。
【請求項5】
前記制御機構は、地盤の性質に応じて、少なくとも2つの異なる操縦運転モード間で選択できる選択可能性を含むように形成されている、
請求項3または4に記載のハンドガイド式地面締固めローラ(1)。
【請求項6】
操作要素(9)が存在しており、前記操作要素(9)により、操作者が前記操縦運転モードにおいて前記ローラドラム(4、5)の回転方向および/または転換頻度および/または回転速度を選択できる、
請求項1から5までのいずれか1項に記載のハンドガイド式地面締固めローラ(1)。
【請求項7】
前記制御機構(12)を前記作業運転モードと前記操縦運転モードとの間で切り替え得るスイッチ(19)が設けられている、
請求項1から6までのいずれか1項に記載のハンドガイド式地面締固めローラ(1)。
【請求項8】
前記スイッチ(19)は、操作者が前記ガイド桿(7)に加える圧力によって動かせるようになっている、
請求項7に記載のハンドガイド式地面締固めローラ(1)。
【請求項9】
前記スイッチ(19)は、前記操縦運転モードから前記作業運転モードに自己復帰するように形成されている、
請求項7または8に記載のハンドガイド式地面締固めローラ(1)。
【請求項10】
少なくとも一方のローラドラム(4、5)に流体を散布するために形成された散水機構(18)が設けられている、
請求項1から9までのいずれか1項に記載のハンドガイド式地面締固めローラ(1)。
【請求項11】
前記散水機構は、以下の特徴、すなわち
−専ら操縦工程の際の散布工程用に設定された流体体積に該当する操縦用リザーブを含んでいること、
−専ら操縦工程用の流体を容れるためのタンクを含んでいること、
−2つの前記ローラドラム(4、5)の一方と地面との間の接触領域の前方において、前進方向および/または後進方向での、および/またはこれとは逆での、操縦工程用の流体を直接的に撒くことを可能にする圧力源を含んでいること、
−散布モード「操縦」および散布モード「締固め」を含んでいること、
の少なくとも1つを有する、
請求項10に記載のハンドガイド式地面締固めローラ(1)。
【請求項12】
請求項1から11までのいずれか1項に記載のハンドガイド式地面締固めローラ(1)の操縦方法(14)であって、
−第1のローラドラム(4)および第2のローラドラム(5)が停止しているかまたは同じ回転方向で前進走行もしくは後進走行で運転される作業運転モードから、操縦運転モードへと地面締固めローラ(1)の運転モードを切り替えるステップ(15)と、
−前記ローラドラム(4、5)が、前記操縦運転モードでは前記ローラドラム(4、5)の一方の回転方向が前記ローラドラム(4、5)の他方の回転方向と逆になるよう運転されるように、および/または少なくとも一方のローラドラム(4、5)が、設定頻度で所定の回転方向と当該所定の回転方向とは逆の回転方向との間で回転方向を転換させながら運転されるように、および/または一方のローラドラム(4、5)がブロックされ、他方のローラドラム(4、5)が回転するよう運転されるように、前記地面締固めローラ(1)を制御機構(12)により前記操縦運転モードで運転するステップ(16)と、
−前記地面締固めローラ(1)の運転モードを前記操縦運転モードから前記作業運転モードへと戻すステップ(17)と、
を含んでいる、
ハンドガイド式地面締固めローラ(1)の操縦方法(14)。
【請求項13】
前記地面締固めローラ(1)の運転モードを前記操縦運転モードから前記作業運転モードへと戻すステップ(17)が自動的に行われる、
請求項12に記載の方法(14)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハンドガイド式地面締固めローラ(手持ち式土壌圧縮ローラ)およびこのような地面締固めローラの操縦方法に関する。
【背景技術】
【0002】
属概念のハンドガイド式地面締固めローラは、例えばEP0971073A1およびEP1096072B1から知られている。ハンドガイド式地面締固めローラは、とりわけ道路工事、山道工事、および土工事において、例えばアスファルトの締固めに用いられる。ハンドガイド式地面締固めローラは、一般的に機械フレームおよび機械フレームによって支持される駆動モータ、例えば内燃機関を有している。それだけでなくハンドガイド式地面締固めローラは、典型的には、駆動モータによって駆動され、第1のローラドラムと、前進方向において第1のローラドラムの後ろに配置された第2のローラドラムとを備えた、ハンドガイド式地面締固めローラを地面上で走行させ得る走行機構を有している。したがって本発明は、全部で少なくとも2つのローラドラムを備えたハンドガイド式地面締固めローラに関する。ローラドラムは、一般的に中空円筒として形成されており、このローラドラムに地面締固めローラの機械重量全体がかかっている。地面締固めローラが上を走行した地面は、機械重量によって締固められる。ローラドラムは、1つの共通の機械フレーム内で、両方のローラドラムの水平な回転軸が互いに平行に延びており、かつ互いに対して静的なまたは固定の変位不能のポジションにあるように配置されている。したがって操縦のために両方のローラドラムの両方の回転軸の相対位置を変えることもできない。それだけでなく属概念の地面締固めローラはしばしば、例えばアンバランス発生器の形態の起振体を有しており、この起振体が、1つもしくは両方のローラドラムまたは地面締固めローラ全体を揺動させる。この振動が地面に伝達されることにより、締固め性能を改善することができる。本発明は、とりわけハンドガイド式ダブル振動ローラに関する。
【0003】
ハンドガイド式地面締固めローラは一般的に、ローラドラムが停止しているかまたは同じ回転方向で前進走行もしくは後進走行で運転される作業運転モードで運転することができる。その際、上を走行される地面は、前進方向にも後進方向にも締固められる。ハンドガイド式地面締固めローラを制御およびとりわけ操縦するため、ハンドガイド式地面締固めローラは一般的にガイド桿(ガイドブラケット)を有しており、このガイド桿は、利用者がハンドガイド式地面締固めローラを手で操縦するために形成されている。ガイド桿は、例えば地面締固めローラの機械フレームに固定されており、機械フレームから後ろに延伸している。操作者は、地面締固めローラを操縦するためにガイド桿に力をかけ、これにより、地面締固めローラは所望の方向に方向転換される。しかしながら従来の意味において操縦可能なのは、少なくとも2つの地面締固めドラムではない。なぜなら地面締固めドラムはその回転軸で、機械の機械フレームに固定的に据え付けられているからである。ただし属概念の地面締固めローラは一部では運転重量が最大で1000kgを超える比較的重い機械であり、操作者の筋力による地面締固めローラの操縦にはかなりの労力を要する。
【0004】
とりわけハンドガイド式地面締固めローラを操縦する際の操作者の負担を軽減するため、EP0971073A1およびEP1096072B1は、ローラドラムの間の継手を提案しており、これによりローラドラムの回転軸を相互に傾動または旋回させることができ、これにより地面締固めローラの操縦運動が容易になる。この場合、ドラム軸の互いに対するねじれを、例えばさらに液圧シリンダーの使用によって補助または自動化することができる。前述の現況技術からの解決策は確かに操縦を実際にかなり容易にするが、設計費用が高く、これが地面締固めローラの製造費を明らかに高くしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】EP0971073A1
【特許文献2】EP1096072B1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
それゆえ本発明の課題は全体としては、第一に地面締固めローラの操縦が操作者にとって容易になっており、第二にハンドガイド式地面締固めローラの設計費用および製造費を可能な限り低く保っているハンドガイド式地面締固めローラおよびハンドガイド式地面締固めローラの操縦方法を提示することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この課題の解決は、独立請求項に基づくハンドガイド式地面締固めローラおよび方法によって成功する。好ましい形成形態は従属請求項に示している。
つまり具体的にはこの解決策は、冒頭に説明したハンドガイド式地面締固めローラの場合、操縦運転モードでのハンドガイド式地面締固めローラの運転のために制御機構が存在しており、この制御機構が、両方の、地面締固めローラの前進方向において相前後しており、そのローテーション軸つまり回転軸が互いに静的に固定的に配置されたローラドラムを、操縦運転モードでは逆の回転方向で運転するように、および/または少なくとも一方のローラドラム、とりわけ両方のローラドラムを設定頻度(所定の周波数)で回転方向を転換させながら運転するように形成されることで成功する。本発明は、とりわけ、地面締固めローラの前進方向またはローラドラムの回転方向において相前後して配置されており、その回転軸が平行であり、互いに対し、とりわけ機械フレームに対して静的または不動であるローラドラムを備えたハンドガイド式地面締固めローラに関する。言い換えれば本発明は、とりわけ、操縦運動を簡単にするための、ローラドラムの回転軸の相互のねじれまたは旋回のための継手またはその他の機構を有さないハンドガイド式地面締固めローラに向けられている。これにより、ロバストで安価に製造可能な、地面締固めローラの特に単純な設計に成功する。
【0008】
ここでは、このような地面締固めローラの操縦を簡単にするため、操縦運転モードで地面締固めローラを制御する制御機構が設けられている。本発明の中心思想は、操縦運転モードでの運転中にガイド桿により地面締固めローラを特に簡単に操縦できるという結果を制御機構がもたらすことにある。これは、少なくとも一時的に地面締固めローラの接地性を低下させ、これにより、ガイド桿を引くまたは押すことにより地面締固めローラの走行方向を変えるために比較的力が必要ないように、制御機構が地面締固めローラのローラドラムを運転することで成功する。地面締固めローラの接地性を少なくとも一時的に低下させるため、本発明によれば、例えば両方のローラドラムを操縦運転モードでは逆の回転方向で運転することが企図される。このような運転中は地面締固めローラは移動するのではなく、実質的にその位置に止まっている。両方のローラドラムが地盤上で空転し、それによりローラドラムと地面の間で滑り状態が発生する。地面上のローラドラムの比較的高い静止摩擦が滑り摩擦に変換され、この滑り摩擦は静止摩擦の一部分である。こうすることで、必要な力の一部分で地面締固めローラを操縦することができる。
その代わりに、両方のローラドラムの一方をブロックし、同時に両方のローラドラムのもう一方を一方の回転方向で回転させることも企図される。これによりこの変形形態では、ブロックされたドラムは操縦運転モードでは動かない。このドラムは、例えばブレーキ、液圧式遮断などにより、むしろ能動的に固定化される。これに対しもう一方のローラドラムは回転運動させる。理想的な場合には、ブロックされたドラムが、もう一方のローラドラムが地盤上で空転する際に地面締固めローラが地盤上をまったくまたは非常に僅かにしか動かないという結果をもたらす。したがって重量分布が均一でない場合には、機械重量のより大きな割合が載っているローラドラムをブロックする方に利用することも有意義である。
【0009】
地面締固めローラの静止摩擦を低下させるためのさらなる代替的でとりわけ補充的でもある可能性は、少なくとも一方のローラドラム、とりわけ両方のローラドラムを設定頻度で回転方向を転換させながら運転することにある。このように例えば少なくとも一方のローラドラムまたは両方のローラドラムの回転方向を、急に、地面締固めローラの運動方向とは逆に変えると、同様にローラドラムと地面の間で滑り状態が達成される。つまり、地面締固めローラを、例えば作業運転モードで一方の方向に加速させ、その後、ローラドラムの回転方向を逆方向に切り替える。こうすることで同様に地面上でローラドラムが滑り、これにより地面締固めローラの静止摩擦が明らかに減少する。それを補充してまたはその代わりに、交互運動により、機械の片側または両方のローラドラムの一方を短期的に持ち上げることができ、それにより同様に操縦が容易になる。ローラドラムのこのような回転方向転換は、操縦運転モードでとりわけ規則的に繰り返され、つまりローラドラムの回転方向が律動的に交互に入れ替わる。制御機構により操縦運転モードでの走行機構を制御することで、回転方向転換を最適な設定頻度で行うことができ、それにより地面締固めローラの静止摩擦を最小限に減らすことができ、それにより操縦運転モードで地面締固めローラをかなりより良好に操縦することができる。全体としては、こうすることで制御機構により、操縦運転モードでの地面締固めローラの最適な規定の滑り挙動が得られ、したがって全体としては比較的容易な操縦が可能である。それだけでなく操作者は操縦運転モードで地面締固めローラを、ガイド桿を使って両手で操縦することができる。これにより、本発明は全体としては、地面締固めローラの操縦運転を明らかに容易にする。
【0010】
既に説明したように、滑り状態を発生させるために地面締固めローラの推力またはその慣性を活用することができ、そのために、地面締固めローラの運動中にローラドラムの回転方向を前進走行と後進走行の間で切り替え、これによりローラドラムが少なくとも短期的に滑る。ただし安全性および精密制御の理由から、地面締固めローラが可能な限り少ない距離しか滑って進まない場合が好ましい。したがって操縦運転モードで少なくとも一方のローラドラム、とりわけ両方のローラドラムの回転方向を規則的に、設定された時間間隔の経過後に切り替えるか、または前進走行と後進走行の間で交互に前へ後ろへと切り替える場合が好ましい。とりわけ、たとえ地面締固めローラが移動していなくても、ローラドラムを十分に強く加速することで、切り替えてすぐにローラドラムが接地性を失って空転することを達成できる。この場合には、ローラドラムを同じ回転方向で十分に長く運転する場合に初めて地面締固めローラが移動する。これに対し、地面締固めローラ自体が全体的に加速される前にローラドラムの回転方向を制御機構によって繰り返し切り替えると、地面締固めローラは動くことなく、ローラドラムを逆方向に空転させることができる。つまり、制御機構によって維持されるこの操縦運転モードの変形形態では、地面締固めローラは少なくとも言うに値するほどは移動せず、ただしそれにもかかわらずローラドラムと地面の間で滑り状態が発生する。とりわけこの操縦運転モードの形態には、設定頻度が、1秒当たり少なくとも1回、好ましくは少なくとも2回、特に好ましくは少なくとも3回の回転方向転換であることが好ましい。この頻度で、地面締固めローラの特に簡単で同時に特に精密な操縦が可能になることが分かった。
【0011】
可能な限り単純で特に有利な変形形態では、操縦運転モードで例えばローラドラムを逆の回転方向で回転させて運転し、この回転方向が確定されているか、またはローラドラムの一方だけを回転させ、これに対しもう一方のローラドラムはブロックして運転するか、またはローラドラムの少なくとも一方もしくは両方のローラドラムを設定頻度で回転方向を転換させながら運転し、その際、例えば回転方向転換の頻度を固定的に設定しており、操作者が頻度に影響を及ぼせないように、制御機構が形成されている。したがってこれらの変形形態では、極端な場合、操縦条件が完全に決められた1つの操縦運転モードしか存在していない。しかしながら属概念の地面締固めローラは、変転する基礎上で使用されることも多いので、制御機構または制御ユニットは、操作者が操縦運転モードでの運転条件に影響を及ぼせるように形成されている場合が有利であり得る。このために例えば、操縦運転モードで操作者が選択可能な少なくとも2つの互いに異なる設定頻度による制御のために制御機構が形成されているように、制御機構を形成することを企図することができる。操作者が、例えば以下でさらに詳しく解説するような適切な切替要素により、その時々の使用事例に最適な回転方向転換頻度を、頻度範囲内で無段階に調整できるように制御機構が形成されている場合も、本発明の範囲に一緒に含まれている。
【0012】
操作者が制御機構による操縦運転モードでのローラドラムの制御に影響を及ぼし得るさらなる実施形態も企図することができる。基本的には、例えば操縦運転モードで少なくとも一方のローラドラム、とりわけ両方のローラドラムの回転方向および/または回転速度が一定であるように、制御機構を形成することができる。しかし操作要素が存在しており、この操作要素により、操作者が操縦運転モードで一方/両方のローラドラムの回転方向および/または回転速度を選択および/または変更できる場合も好ましいと言える。とりわけ回転速度の変動は、このために走行者が、走行レバーにより、理想的には走行運転での地面締固めローラの走行速度も制御する走行レバーにより、回転速度に影響を及ぼすことが可能であることによって成功するのが特に有利である。それを補充してまたはその代わりにこの関連で、走行者が回転速度に関し、例えば適切な操作要素により、少なくとも2つの異なる固定の回転速度から選択できるように、制御機構を形成することも企図することができる。操縦運転モードで例えばローラドラムが逆の回転方向で運転される場合に、各々の個々のローラドラムに対し、2つの異なる回転方向および/または回転速度が可能である。さらにそれを補充してまたはその代わりに、性質の異なる地盤のために、例えば砂利などのような緩い基礎材料および例えばアスファルトのようなまとまりのある地面材料のために、少なくとも2つの運転モードを提供するように、制御機構が形成されている場合が好ましい。したがってここでは操作者は簡単に、操縦運転モード用の少なくとも2つの運転モードの間で転換させることができ、こうすることで、その時々に存在している地盤材料の様々な特性に反応することができる。したがって例えば地面の損傷または凹凸の発生を防止するために、使用状況に応じまたは例えば地面材料に応じて、例えば一方もしくはもう一方の回転方向および/または一方もしくはもう一方の回転速度および/または一方もしくはもう一方の転換頻度を操作者が選ぶことができる。それだけでなく、まとめてさらなる機能にも、同じ操作要素またはさらなる追加的な操作要素により操作者が影響を及ぼすことができる。この機能に属するのは、例えばローラドラムの回転方向転換が行われる頻度である。頻度は、例えば1秒当たり1回の回転方向転換から、例えば1秒当たり5回の回転方向転換の間隔内で無段階に調節できることが好ましい。挙げた機能のさらなる1つは、操縦運転モードで1つのローラドラムまたは両方のローラドラムが設定頻度で回転方向を転換させながら運転されるかどうかである。つまりこれも操作者が選択できることが好ましい。さらなる1つの追加的な機能は、操縦運転モードを制御機構によりどのように実現するのか、つまり詳しくは、操縦運転モードでローラドラムが逆の回転方向で運転されるのか、または少なくとも一方の、とりわけ両方のローラドラムが設定頻度で回転方向を転換させながら運転されるのかの選択である。つまりこの機能も、操作者が、挙げた操作要素またはその代わりに追加的な操作要素により、必要に応じて調整できることが好ましい。全体としては、地面締固めローラの構造上の変更は必要なく、制御機構による操縦運転モードの制御に介入するだけなので、これにより、最大限可能な柔軟性および比較的高い操作快適性が、比較的低い設計費用でもたらされる。
【0013】
本発明によれば、ここでは操作者は操縦工程のために、制御機構による操縦運転モードを簡単にアクティブ化することができ、その後、操縦運転モードがアクティブ化されている限り、操縦工程を実施する時間を有している。このためにとりわけガイド桿に、制御機構を作業運転モードと操縦運転モードの間で切り替え得る適切な操作要素、例えばスイッチが設けられることが好ましい。スイッチは、例えばガイド桿に一般的に存在している操作コンソールに配置することができる。こうすることでスイッチは、操作者に届きやすく、簡単にアクティブ化することができる。スイッチは、スイッチが作動され、かつ地面締固めローラが作業運転モードである場合に、操縦運転モードがアクティブ化されるように、制御機構と接続されている。逆に、地面締固めローラが操縦運転モードにある間にスイッチを作動させると、作業運転モードがアクティブ化される。その代わりに、操縦運転モード中は操作者がスイッチを押したままでなければならず、スイッチを離すとスイッチが自動的にもう一方のポジション、つまり作業運転モードに戻ることも企図することができる。すなわちスイッチの受動的な「ノーマル位置」が作業運転モードであり、したがって操作者が能動的に維持すべきスイッチ位置が操縦運転モードである。それを補充してまたはその代わりに、好ましい配置位置は、例えばハンドルに直接的に、ハンドルの握り領域内またはその縁に配置されたスイッチ、中央に配置されたスイッチ、例えば2つのハンドルの間の横支え棒で、さらなる機能要素を備えた操作エリアの領域内に配置されたスイッチなどである。これは、操作者が操縦運転モードをアクティブ化/非アクティブ化できると同時に例えばローラドラムの運動方向および/または回転数を変更するということを、特に良好に可能にする。特に好ましいのは、スイッチの作動だけでなく、例えば同時に操縦工程自体を制御できるように、人間工学に則って親指での作動に最適化された配置である。全体としては、地面締固めローラが、作動させることでそれぞれ操縦運転モードをアクティブ化および非アクティブ化できる操作要素を同時に複数備えている場合も、本発明に含まれている。この場合、操作者は様々な使用条件下でそれぞれ最適な操作要素を選択することができる。
【0014】
操作者が実際の締固め作業に注意を集中させられるよう、地面締固めローラの運転をさらに簡単にするために、および操作要素を直接的に手で作動することから操作者を解放するために、操作者が操縦工程を実施したい場合に自動的に感知するように形成された本発明による発展形態が好ましい。このためにスイッチは、例えば接触スイッチ、とりわけボタンとして、および/またはプッシュスイッチとして形成されており、かつ操作者がガイド桿にかける圧力または力によって動かすことができることが好ましい。スイッチは、例えばガイド桿と地面締固めローラの機械フレームとの接続位置に存在している。このスイッチは、操作者がガイド桿に圧力または力をある特定の方向にかけるとアクティブ化されるように形成されている。例えば操作者がガイド桿を、とりわけ実質的に垂直な操縦軸を中心として水平に左および/または右に押すとアクティブ化されるように、スイッチを形成することができる。その代わりに、実質的に水平なまたはガイド桿の長手軸に沿って延びている操縦軸を中心として、操舵輪と同じように操縦運動を行うこともできる。言い換えれば、操作者がガイド桿を用いて地面締固めローラの操縦運動を開始すると、スイッチがアクティブ化される。このために操作者は、地面締固め機械の機械フレームに、少なくとも限定的な範囲で相対的に変位可能に配置されたガイド桿に、力をかけなければならない。スイッチはこの力を検出し、自動的に制御機構を介して操縦運転モードをアクティブ化する。アクティブ化された操縦運転モードにより、地面締固めローラの操縦が容易になる。つまりこの実施形態では、操作者は、ガイド桿を用いて操作者が望む操縦運動を実施すればよく、操縦運転モードのアクティブ化は、ガイド桿の運動を検出するスイッチによって自動的に行われる。操作者が前述のスイッチによる操縦運転モードのアクティブ化のために、ガイド桿を垂直に上または下に押さなければならないのでもよい。この場合にはスイッチは、垂直に上または下にガイド桿に作用する力を検出し、これにより制御機構を介して操縦運転モードをアクティブ化する。つまり操作者は地面締固めローラを操縦するために、操縦運転モードの補助を利用したい場合はガイド桿を左または右に水平方向に振り出すことに加えて上または下にも押せばよく、これにより操縦運転モードがアクティブ化される。この実施形態では、操作者が操縦運転モードを利用したくない場合は、操作者がガイド桿を上または下に押さずにガイド桿を水平にのみ振り出すことでそうすることもできる。
【0015】
操作をさらに簡単にするため、スイッチが、とりわけバネの作用を受けて、操縦運転モードから作業運転モードに自己復帰するように形成されることが好ましい。このようなスイッチは、とりわけボタンとも呼ばれる。例えば、設定された時間間隔後に操縦運転モードが自動的に終了し、地面締固めローラを再び作業運転モードで運転させることも企図することができる。対応する時間間隔は、例えば1秒、2秒、3秒、4秒、または5秒であることができる。とりわけ、操作者がガイド桿にかける圧力または力によってスイッチを動かし得る本発明の好ましい実施形態では、スイッチの自動的な復帰により、操作者は操縦運転モードのアクティブ化または非アクティブ化にまったく従事しなくてよくなり、地面締固めローラの運転および制御に完全に集中することができる。つまり、前述の力または圧力をガイド桿にかけなくなれば、操縦運転モードが自動的に非アクティブ化される。
【0016】
冒頭で言及したように、本発明はハンドガイド式地面締固めローラと地面の間の摩擦を低下させ、こうして操縦工程を容易にするという考えに基づいている。そこでこれをさらに補助するため、少なくとも一方のローラドラムに流体、とりわけ水を散布するために形成された散水機構を設けることが好ましい。特に好ましいのは、すべてのローラドラムに流体が散布されることである。こうして流体はローラドラムと地面の間に達し、滑り剤として作用し、これにより地面とローラドラムの間の摩擦が低下する。この効果は操縦工程をさらに容易にする。
【0017】
したがって、散水機構の具体的な形態に関し、本発明の様々な発展形態を採用できることも有利である。最初に、基本的には、締固め運転用に設けられた散水機構の機構および/または運転モードを、操縦運転モードにも利用することができる。これは、操縦運転モードへの切替により、従来の散水機構が、距離および/または経路もずらして運転されることを意味する。この変形形態の利点は、散水機構にほとんど改変を行わなくてよいことにある。しかし、締固め運転用または操縦運転用にリザーブを準備することも望ましいと言える。これは例えば操縦運転モード用のリザーブの場合には、散水機構のタンクが締固め運転では、例えば適切な残量センサーで監視して、規定された最小限までしか空にされず、タンク内に残っている流体は専ら操縦運転モードのアクティブ化の際に利用することを意味する。こうすることで、流体ストックが僅かな場合でさえ、少なくとも操縦運転モードでは流体を供給できることが保証される。その代わりにこの優遇が、操縦運転モードより標準的な締固め運転に適用されてもよい。基本的には、機械の構造全体を鑑みて、例えばローラドラムへの付着を防止するために、操縦運転モードおよび締固め運転のための流体供給が1つの同じタンクから行われる場合が有利である。しかしその代わりに操縦運転モードのために、専用で別個の、専ら操縦運転モード用に流体供給のために設けられたタンクが存在することも企図することができる。これはとりわけ、操縦運転モード用と締固め運転用に異なる流体を採用すべき場合、例えば水、または分離剤と混合した水を採用すべき場合に有利である。さらに操縦工程に関しては、操縦運転モードのアクティブ化後に機械が可能な限り少ししか前進方向または後進方向に動かない場合が有利である。さらに操縦運転モードでの流体放出に関しては、締固め運転でも流体放出を行う放出機構、例えば噴霧バーを採用することができる。この場合にそれにもかかわらず、操縦の際にローラドラムとその下にある地盤の間の十分な濡れを可能にするため、締固め運転での流体吐出に比べて、少なくとも短期的には、流体が散水機構によって大量に発射される場合が好ましい。これは、操縦工程に対し、少なくとも短期的には散水機構の流量を締固め運転より高く設定する場合が好ましいことを意味する。それを補充してまたはその代わりに、操縦運転モードでは流体を特に的確に、ローラドラムと地盤の接触領域付近にもたらすことが好ましい。このために操縦運転モードでは流体を、例えば蓄圧器またはポンプのような圧力源を用いた的確な圧力インパルスにより、前進方向および/もしくは後進方向でのならびに/またはそれとは逆でのこの接触領域の前または中に直接的に飛ばすことも企図することができる。これを、操縦運転モードのアクティブ化の全期間にわたって永続的に行うことができ、または好ましくは、とりわけ時間制御変形形態で、少なくとも1回の最初のインパルス中に行うことができ、このインパルス中に、最初に操縦工程全体にとって十分な、ローラドラムおよび地盤の濡れが達成される。後者の変形形態には、操縦工程のための流体消費量が比較的少ないという利点がある。したがってこれにより地面締固めローラは、散布モード「操縦」および散布モード「締固め」を有しており、これに関してはとりわけ、操縦運転モードでは独りでに散布モード「操縦」に切り替わり、かつ/または操縦運転モードが終了すると独りでに散布モード「操縦」から外れるように、制御機構が形成されている。
【0018】
冒頭に挙げた課題は、ハンドガイド式地面締固めローラの、とりわけ上で述べたようなハンドガイド式地面締固めローラの操縦方法によっても解決される。本発明によるハンドガイド式地面締固めローラの前述のすべての特性および特徴ならびに利点は、本発明による方法にも相応に適用され、ここでは単に繰返しを避けるため、改めて明確には挙げない。
【0019】
本発明による方法は、第1のローラドラムおよび第2のローラドラムが停止しているかまたは同じ回転方向で前進走行もしくは後進走行で運転される作業運転モードから、操縦運転モードへと地面締固めローラの運転モードを切り替えるステップと、ローラドラムが操縦運転モードでは逆の回転方向で運転されるように、および/または少なくとも一方のローラドラム、とりわけ両方のローラドラムが設定頻度で回転方向を転換させながら運転されるように、および/または一方のローラドラムがブロックされ、もう一方のローラドラムが回転するように運転されるように、制御機構により操縦運転モードでの地面締固めローラを運転するステップと、操縦運転モードから作業運転モードへと地面締固めローラの運転モードを戻すステップとを含んでいる。上で既に詳述したように、地面締固めローラの運転モードの切替は、例えば操作者がスイッチをアクティブ化することで行うことができ、またはガイド桿にかけられた操作者の力をスイッチによって検出することで行うことができる。
【0020】
特に好ましいのは、操縦運転モードから作業運転モードへの地面締固めローラの運転モードの戻しが独りでに行われる場合である。
本発明による方法のさらなる有利な形態に関しては、本発明によるハンドガイド式地面締固めローラについての対応する実施形態に関連付けられる。
以下では、図に示した例示的実施形態に基づいて本発明をより詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】ハンドガイド式地面締固めローラの概略側面図である。
【
図2】第1の回転方向での作業運転モードにおける地面締固めローラの走行機構の概略図である。
【
図3】第2の回転方向での作業運転モードにおける地面締固めローラの走行機構の概略図である。
【
図4】第1の回転方向での操縦運転モードにおける地面締固めローラの走行機構の概略図である。
【
図5】第2の回転方向での操縦運転モードにおける地面締固めローラの走行機構の概略図である。
【
図6】第1の逆の回転方向での操縦運転モードにおける地面締固めローラの走行機構の概略図である。
【
図7】第2の逆の回転方向での操縦運転モードにおける地面締固めローラの走行機構の概略図である。
【
図8】ブロックされたローラドラムおよび回転するローラドラムでの操縦運転モードにおける地面締固めローラの走行機構の概略図である。
【
図9】地面締固めローラの運転中のローラドラムの回転方向の時間的推移を概略的に示す図である。
【
図10】制御機構および制御機構と接続された地面締固めローラの要素の概略図である。
【
図12】複数の代替的な作動要素を備えたガイド桿の概略的な斜め透視図である。
【
図13】操縦運転モードおよび作業運転モードを確立するための液圧回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
同じ部品または同じように作用する部品には同じ符号を付している。繰り返し登場する部品に対し、各々の図で別の符号は付していない。
【0023】
図1は、ハンドガイド式地面締固めローラ1を示している。ハンドガイド式地面締固めローラ1は、第1のローラドラム4および第2のローラドラム5を備えた走行機構13によって支持される剛性の機械フレーム2を有している。両方のローラドラム4および5は、前進方向Aにおいて相前後して配置されており、したがって前進方向での直進の際は、地面基準点の上を最初に前の第1のローラドラム4が、続いて後ろの第2のローラドラム5が走行する。地面締固めローラ1は、駆動モータ3、ここでは例えば内燃機関によって駆動される。それだけでなくハンドガイド式地面締固めローラ1はガイド桿7を有しており、ガイド桿7は一方の側では機械フレーム2と接続されており、もう一方の側では操作コンソール8を備えており、操作コンソール8には様々な制御要素が配置されており、これらの制御要素を用いて操作者は地面締固めローラ1を制御する。ガイド桿7は、地面締固めローラ1の前進方向Aから見て機械の後ろ側にある。走行機構13のローラドラム4、5の駆動により、地面締固めローラ1は地面10を前進方向Aにおよびそれとは逆に走行することができ、これにより地面締固めローラ1の自重により地面を締固める。この効果を補助するため、地面締固めローラ1は、アンバランス回転体を含む起振体6を有しており、このアンバランス回転体が地面締固めローラ1全体を揺動させ、この揺動がローラドラム4、5にも伝達され、ローラドラム4、5を介して地面10に作用し、これにより地面10の締固めが改善される。
【0024】
ローラドラム4、5は、互いに対して不動の回転軸11aおよび11bを中心として回転可能に、機械フレーム2に据え付けられている。回転軸は、とりわけ操縦工程を補助するために相互に傾動または旋回させることができない。つまり回転軸11aおよび11bの相対位置は静的で変えることができず、とりわけガイド桿7を使った運動によって変えることはできない。したがってローラドラム4、5の回転軸11(
図2〜
図8を参照)は常に平行であり、例えば操縦のために平行な位置からずらすことはできない。全体としては、これにより地面締固めローラ1の特にロバストで単純な様式がもたらされる。それにもかかわらず地面締固めローラ1の操縦を容易にする、または補助するために、地面締固めローラ1は、操縦運転モードで地面締固めローラ1の走行機構13を以下にさらに詳しく説明するように制御する制御機構12を有している。
【0025】
制御機構12または地面締固めローラ1の操縦運転モードをアクティブ化するためにスイッチ19が設けられている。スイッチ19は、例えばガイド桿7に、とりわけ操作コンソール8に存在している。この場合は、スイッチ19が地面締固めローラ1の操作者にとって届きやすく、楽にアクティブ化することができる。スイッチ19の代替的な実施形態を
図1に点線で示唆している(19aを付している)。このようにスイッチ19aは、例えば同様にガイド桿7内に、またはガイド桿7と地面締固めローラ1の残部との、とりわけ機械フレーム2との接続位置に配置することができる。この位置ではスイッチ19aは、接触スイッチとしておよび/またはプッシュスイッチ/ボタンとして形成されており、かつ操作者によってかけられるガイド桿7に作用する力を検出することが好ましい。スイッチ19aは、例えば操作者が地面締固めローラ1の操縦運動を動かすためにガイド桿7を左または右に押すと、アクティブ化される。スイッチ19/19aにより制御機構12がアクティブ化され、次いで制御機構12が走行機構13を操縦運転モードで制御する。ガイド桿7およびとりわけ操作コンソール8にはさらなる操作要素9が設けられており、この操作要素9により、操作者は操縦運転モードの様々なパラメータを必要に応じて調整することができる。例えば、操作者は操作要素9により、ローラドラム4、5を操縦運転モードでは逆の回転方向で運転させるかどうか、および/または少なくとも一方のローラドラム4、5、とりわけ両方のローラドラム4、5を設定頻度で回転方向を転換させながら運転させるかどうかを調整することができる。とりわけ逆の回転方向での運転のための相応の回転方向も、各々のローラドラム4、5に対して調整することができる。設定頻度も操作者が操作要素9を用いて変えることができる。ただしその代わりに、設定頻度が前もって最適化されて固定的に設定されていてもよい。その場合、相応の頻度が制御機構12に記憶されている。操作要素の構成および位置取りについてのさらなる詳細は
図12で解説している。
【0026】
それだけでなく、ガイド桿7、とりわけ操作コンソール8には、操作者に対して地面締固めローラ1の運転パラメータを表示する表示機構20も設けられている。表示機構20は、例えば地面締固めローラ1がその時々にどの運転モードに、例えば作業運転モードまたは操縦運転モードにあるのかを表示する。それだけでなくローラドラム4、5の回転方向が各々で個々に表示される。表示機構20はそれだけでなく任意のさらなるパラメータを表示することができる。さらに、操縦時に地面10上での地面締固めローラ1の回転を補助するため、ローラドラム4、5に流体、とりわけ水を散布する散水機構18が設けられている。流体は、滑り剤として作用し、ローラドラム4、5と地面10の間の摩擦をさらに低下させ、これにより回転運動、したがって地面締固めローラ1の操縦を容易にする。
【0027】
図2および
図3は、作業運転モードでのハンドガイド式地面締固めローラ1を示している。作業運転モードでは、ローラドラム4、5はその回転軸11aおよび11bを中心として同じ回転方向で回転する。回転方向は、
図2(前進)と
図3(後進)でまったく逆になっている。以下では、ハンドガイド式地面締固めローラ1が
図2に示した回転方向でのローラドラム4、5の回転運動によって動く方向を前進方向Aと言い、逆の
図3に示した回転方向を後進方向と言う。ただし地面締固めローラ1は前進でも後進でも作業できるので、これは解説を容易にするための取り決めにすぎない。つまり
図2に示した例では、ローラドラム4、5は前進方向に回転している。よって矢印で示した駆動方向aも、地面締固めローラ1の運動方向bも、前進に方向づけられている。この駆動方向aは、ハンドガイド式地面締固めローラ1が、ローラドラム4、5の回転に基づいて加速される方向を表している。これに対し運動方向bは、ハンドガイド式地面締固めローラ1が実際に動く方向を表している。地面締固めローラ1の慣性に基づき、駆動方向aと運動方向bをばらばらにすることができる。
図3では、
図2とはまったく逆の状況が示されており、
図3ではローラドラム4、5の回転方向が後進に方向づけられており、これに対応して同様に駆動方向aも運動方向bも後進に方向づけられている。これにより機械は前進方向Aとは逆に動く。つまり地面締固めローラ1の作業運転モードは、地面締固めローラ1が停止しているか、または駆動方向aも運動方向bも一貫して同じ方向に方向づけられていることを特徴とする。
【0028】
図4および
図5は、地面締固めローラ1の操縦運転モードの例示的な一形態を示している。具体的には、
図4および
図5は両方のローラドラム4、5の回転方向が切り替えられた直後の地面締固めローラ1の走行機構13を示している。
図4では、例えば地面締固めローラ1は予め
図2に倣って前進走行で運転されていた。したがって地面締固めローラ1の運動方向bは前進に方向づけられている。その後、ローラドラム4、5の回転方向の切替が行われ、したがって駆動方向aは後進に、運動方向bとは逆に方向づけられている。この組合せに基づき、ローラドラム4、5は地面10上で滑り、これによりローラドラム4、5と地面10の間の静止摩擦が滑り摩擦になり、この滑り摩擦は静止摩擦の一部分だけである。この効果により地面締固めローラ1の操縦がかなり容易になる。ただし、ローラドラム4、5と地面10の間の滑り状態は短い間しか続かないので、容易になった操縦を維持するためには、短い加速の後に改めてローラドラム4、5の回転方向を反対方向に、例えば
図5に示唆したように切り替える必要がある。
図5では地面締固めローラ1の運動方向bが反転した。ローラドラム4、5の回転方向を改めて切り替え、それにより駆動方向aの前進方向への反転が達成されたことにより、再びローラドラム4、5と地面10の間の滑り状態が確立された。つまりとりわけ、示した操縦運転モードでは、ローラドラム4、5の回転方向を設定頻度で転換することによりローラドラム4、5と地面10の間の滑り状態が保たれ続け、こうして地面締固めローラ1の容易な操縦が可能であるように、制御機構12がローラドラム4、5を制御している。設定頻度の最適化または回転方向の切替の間にすぎる時間間隔の最適化により、地面締固めローラ1が操縦運転モードでは実際にはもう距離を進まない状態を達成することができる。操縦運転モードを本発明に従って維持する制御機構12を用いることにより、地面締固めローラ1の容易になった操縦が任意の長さで持続する状態を達成することができる。
【0029】
図6および
図7は、操縦運転モードのさらなる一形態を示している。矢印で示唆したようにローラドラム4、5は、
図6および
図7では逆の回転方向で運転されている。これに基づき地面締固めローラ1は前にも後ろにも加速されず、したがって停止しているかまたは停止する。同時にローラドラム4、5は地面10上で空転し、したがって地面10とローラドラム4、5の間には滑り摩擦が存在し、この滑り摩擦が地面締固めローラ1の操縦をかなり容易にする。
図6および
図7に示したローラドラム4、5の回転方向のどちらを利用するかは、操作者が例えば操作要素9によって調整することができる。地面10の地面材料に応じて、一方またはもう一方の回転方向がより負荷を軽くできる。それだけでなく操作者は
図4および
図5に基づく操縦運転モードを実施すべきか、または
図6および
図7に基づく操縦運転モードを実施すべきか、または組み合わせた操縦運転モードを実施すべきかを選択することもできる。
【0030】
最後に
図8は、操縦運転モードの第3の変形形態に関する。ここでは両方のローラドラムの一方4がブロックされており、この状態では回転できないことが企図されている。これに対し両方のローラドラムのもう一方5はその回転軸11bを中心として回転する。したがってこの変形形態では両方のローラドラムの一方だけが回転し、それにひきかえもう一方のローラドラムはその回転位置で、例えば液圧式ロックによってロックされる。これにより一方のローラドラム5で達成される滑り摩擦が、操縦工程を同様にかなり容易にする。
【0031】
図9は、地面締固めローラ1の作業運転モードと操縦運転モードの転換におけるローラドラム4、5の回転方向の時間的推移を図解している。これに関し、実線は第1のローラドラム4を表しており、点線は第2のローラドラム5を表している。それぞれの線が時間軸tより上に配置されていれば、それぞれのローラドラム4、5は前進方向に回転する。矢印で示唆したように、それぞれの線が時間軸tより下に配置されていれば、それぞれのローラドラム4、5は後進方向に回転する。
図9に示した例示的な運転フローは、左側で、作業運転モードおよび前進走行での地面締固めローラ1で始まっており、この前進走行では両方のローラドラム4、5が前進方向で運転される(領域A)。次いでローラドラム4、5の回転方向が切り替えられ、地面締固めローラ1はしばらくの間、後進走行で運転される(領域B)。その次として、ここで地面締固めローラ1の操縦を行う。このために操縦運転モードがアクティブ化され、制御機構により、例えば両方のローラドラム4、5でハイドロスタティック式走行駆動部が相応に切り替えられることにより、両方のローラドラム4、5が逆の回転方向で運転される(領域C)。示した例示的実施形態では、第1のローラドラム4が前進方向で運転され、第2のローラドラム5が後進方向で運転される。結果として生じるローラドラム4、5と地面10の間の滑り状態は、操作者がガイド桿7を押すまたは引くことで地面締固めローラ1の向きを必要に応じて適合させることにより、地面締固めローラ1の操縦のために利用される。続いて操縦運転モードを終了させ、地面締固めローラ1が再び作業運転モードで運転される。比較的長い前進走行が行われる(領域D)。その後、再び操縦運転モードがアクティブ化され、ただし今回は、制御機構によって制御された設定頻度で両方のローラドラム4、5の回転方向を転換させながら運転される(領域E)。
図9に示唆したように、時間間隔Δtの経過後にその都度ローラドラム4、5の回転方向の切替が行われる。これによってもローラドラム4、5と地面10の間の滑り状態が達成され、したがって地面締固めローラ1の操縦が容易になる。これに関し、本例示的実施形態では両方のローラドラムを同方向に回転させる。この切替を領域Cと組み合わせてもよく、したがってその場合は両方のローラドラムを、交互に、それぞれ逆方向に回転させる。地面締固めローラ1をそれゆえ操作者がガイド桿7を引くまたは押すことで新たな向きにし、その後、操縦運転モードを終了させる。示したフロー図ではその後、地面締固めローラ1のさらなる後進走行が続いて行われる(領域F)。最後に領域Gには操縦運転モードのさらなる代替策を図示している。ここでは第1のローラドラム4が遮断に基づいて停止しており、第2のローラドラム5だけが回転する。
【0032】
図10は、制御機構12および制御機構12の地面締固めローラ1のさらなる要素への接続を示している。示した例示的実施形態では、制御機構12が操作要素9およびスイッチ19と接続している。ただし操作要素9およびスイッチ19を、例えば操作コンソール8での1つの操作要素にまとめることも、同じように良好に可能である。この操作要素9およびスイッチ19を介し、制御機構12は地面締固めローラ1の操作者の制御命令を受信する。とりわけ、制御機構12は操作者の入力により、操縦運転モードがいつおよびどのようにアクティブ化および実施されるべきかという情報を得る。制御機構12はその後、例えば伝導装置、とりわけ液圧伝導装置であり得る駆動ユニット21を制御する。この駆動ユニット21により、制御機構12はとりわけ操縦運転モードでローラドラム4、5の回転方向を制御する。それだけでなく制御機構12は、操作者に走行機構13の状況、とりわけローラドラム4、5の回転方向を通知する表示機構20とも接続している。
【0033】
図11は、ハンドガイド式地面締固めローラ1を操縦するための本発明による方法14のフロー図を示している。この方法は、とりわけ作業運転モードから操縦運転モードへの地面締固めローラ1の運転モードの切替15を含んでいる。次いで、制御機構12による操縦運転モードでの地面締固めローラ1の運転16が、前述のように行われる。操縦運転モードは、操作者が相応の制御命令を出すかまたは設定された時間間隔が経過するまで、制御機構12によって維持される。操縦運転モード中は、ローラドラム4、5と地面10の間の摩擦が滑り状態の発生によって減らされている。したがって操作者は地面締固めローラ1を操縦運転状態中は簡単に所望の方向に方向転換できる。その後、操縦運転モードから作業運転モードへの地面締固めローラの運転モードの戻し17が行われる。要するに本発明は、地面締固めローラ1の操縦を容易にすることを、単純な設計および低い製造費と同時に可能にしている。
【0034】
図12に基づく部分的な斜め透視図では、操作要素9およびスイッチ19の様々な構成およびポジショニングを例示的に図示している。ガイド桿7は接続バー22を有しており、接続バー22はその一方の端部では機械の機械フレームと例えば直接的にまたはダンパー機構を介して間接的に接続している。ガイド桿7はもう一方の端部では、両側のそそり立っているハンドル23を備えた操作コンソール8を有している。さらにスロットルレバー24が存在し、このスロットルレバー24により、操作者はローラドラム4および/または5内に配置された1つまたは複数のアンバランス発生器の周波数を変えることができる。これに対し、走行速度の加減および制御のためには運転レバー(走行レバー/ドライブレバー)100が設けられており、この運転レバー100を、前進方向でおよびそれとは逆で、走行速度の調節のために調節することができる。ここでは操縦運転モードのアクティブ化/非アクティブ化のために、ガイド桿7に複数のスイッチ19/操作要素9を設けることができ、これに関して以下に示す例は、単独でまたは組合せでも、ガイド桿に配置することができる。一つには、
図12にスイッチ19aで示しているように、接続バーと機械フレームの連接領域に接触スイッチを設けることができる。この位置は、ガイド桿を右または左に動かすとそこに最大のてこ作用力がもたらされ、それによりスイッチ19aの確実で快適な作動が成功するという利点がある。その代わりにスイッチ19aを、接続バー22の長手軸Kを中心とした回転運動によってアクティブ化および非アクティブ化されるように形成してもよい。それを補充してまたはその代わりに、ハンドルおよび/または運転レバー100の握り領域にスイッチ19bおよび/または19cを配置することができ、とりわけ、
図12にスイッチ19bおよび19cで示したように運転レバー100の両側に配置することができる。したがってガイド桿でのスイッチ19bおよび19cの位置は、運転レバー100の調節と共に変化し、これは操作者にとって特にスムーズで快適な両モード間での切替を可能にする。さらなる1つの代替策は、操作要素9/スイッチ19dを操作コンソール8の領域に配置することである。
図12ではロッカスイッチとして形成されたスイッチ19dは、作動時に例えば操縦運転モードだけをアクティブ化する。しかし、スイッチ19の作動をどのくらいの幅および/または強さで行うかに応じて、例えば回転速度または回転方向の転換頻度を、したがってこの場合は操作切替要素9/19として組み合わせて形成されたスイッチ19dによって、変化させることもできる。最後にさらなる1つの代替的な配置は、操作コンソールの上方でハンドル23の間の領域にスイッチ19eを取り付けることである。このためにスイッチ19eは、両方のハンドル23の間の運転レバー100の接続棒25の下側に配置されている。これにより操作者は横棒25に楽に手を載せることができ、かつ握ることで下側にポジショニングされたスイッチ19eをアクティブ化でき、同時にもう一方の手で操縦工程を行うことができる。したがってスイッチ19eのこのポジショニングも特に快適と感じられる。さらに、ガイド桿にはさらなる操作要素9および表示機構20が存在している。表示機構20により、例えばその時々の運転モード(操縦運転モード、作業運転モード)、操縦運転モードの種類(逆方向、切替、ドラムをブロック、切替頻度、地面種類、軟/中/硬など)、および/またはさらなる情報を表示することができる。
【0035】
最後に
図13は、本発明によるハンドガイド式地面締固めローラの液圧システム26の概要を示している。最初に液圧システムは、ローラドラム4、5のその回転軸11aおよび11bを中心とした回転運動を達成させる2つの液圧モータ27aおよび27bを含んでいる。両方の液圧モータ27aおよび27bを駆動するために1つの液圧ポンプ28が存在している。したがって両方の液圧モータ27aと27bは直列に接続されている。液圧システム26はさらに、液圧回路内の両方の液圧モータ27aと27bの間に設置されており、機能ユニットとして形成された制御ブロック29を含んでいる。制御ブロック29では、液圧モータ27aに対して接続部Aおよび(間に接続されたポンプを介して)少なくとも間接的に接続部B(直接的にはポンプ接続部)が設けられており、液圧モータ27bに対しては接続部A1およびB1が設けられている。制御ブロック29の本質的な要素は、
図1に示した制御機構12によって制御される4/2方弁30である。
図13に示した弁30の位置では、両方の液圧モータ27aおよび27bは同方向に働く(例えば
図2に対応)。これに対し弁30を操縦運転モードで制御機構12によりもう一方のポジションに据えると、両方の液圧モータ27aと27bが逆方向に働く(例えば
図6に対応)。さらに、制御ブロック29の一部は2つの圧力制限弁31aおよび31bである。圧力制限弁31aおよび31bは導管32を介して流体タンクと接続している。圧力制限弁31aおよび31bならびに導管32を用い、制御ブロック29により、一方では、例えばモータ27aおよび27bの一方の急な回転方向逆転の際に液圧システム内で発生し得る圧力ピークの減衰機能を得ることができる。他方では、これにより、液圧回路用の液圧流体のための再供給機能が提供される。こうすることで液圧システムの特に確実な運転に成功する。
【符号の説明】
【0036】
1 ハンドガイド式地面締固めローラ
2 機械フレーム
3 駆動モータ
4 第1のローラドラム
5 第2のローラドラム
7 ガイド桿(ガイドブラケット)
9 操作要素
10 地面
12 制御機構
13 走行機構
14 方法
15 切替
16 運転
17 戻し
18 散水機構
19 スイッチ
100 運転レバー