(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記堰止部は、前記デブリ濾過体に対向する面とは反対側反対の面が、上端から下端に向かって前記デブリ濾過体から離れる傾斜面である請求項1又は2に記載のデブリ付着抑制構造。
前記堰止部は、平面視において、前記噴流の下流側の端部が、前記噴流の下流側に隣接する前記堰止部の前記噴流の上流側の端部より前記デブリ濾過体から遠い請求項1から3のいずれか一項に記載のデブリ付着抑制構造。
前記第1噴流発生体より前記デブリ濾過体に近い位置の前記床面に、上方に向けて噴流を噴出する第2噴流発生体を備える請求項1から7のいずれか一項に記載のデブリ付着抑制構造。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、特許文献1のデブリトラップでは、例えば、再循環プール室の床面から突出する凸部であるデブリトラップよりも内側、つまり、デブリ濾過体側に落下するデブリを捕捉できない。そのため、デブリトラップの内側に侵入したデブリは、デブリ濾過体に付着することを防ぐことができない。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、デブリのデブリ濾過体への接近を抑制し、且つデブリをデブリ濾過体の周辺から排除することができるデブリ付着抑制構造及び原子炉格納構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、原子炉格納容器の床面に設けられ、取水機構の上面に配置されたデブリ濾過体の周囲に配置されたデブリ付着抑制構造であって、前記床面から突出する凸部であって、平面視において前記デブリ濾過体の周囲に沿って延在する複数の堰止部と、平面視において前記堰止部と前記デブリ濾過体との間に配置されて噴流を噴射する第1噴流発生体と、を備え、前記堰止部は、隣接する前記堰止部との間に隙間が形成されており、前記噴流によって形成された流れが前記隙間から排出される。
【0008】
この構成によれば、堰止部によって、床面を転がる又は床面近くを流れるデブリを捕捉することができる。また、堰止部及び第1噴流発生体の噴流によって形成された流れ、具体的には、デブリ濾過体の周囲を旋回する旋回流の遠心力が、堰止部より内側に侵入したデブリを隣接する2つの堰止部の間から外側に排出する。すなわち、デブリのデブリ濾過体への接近を抑制し、且つデブリをデブリ濾過体の周辺から排除できる。これにより、デブリ濾過体へのデブリ付着を抑制できる。
【0009】
また、前記堰止部の高さは、前記デブリ濾過体の高さの半分以上であることが好ましい。この構成によれば、堰止部によって燃料取替用水ピットに流入する一次系冷却水の流れを阻害することを好適に抑制できる。
【0010】
また、前記堰止部は、前記デブリ濾過体に対向する面とは反対側反対の面が、上端から下端に向かって前記デブリ濾過体から離れる傾斜面であることが好ましい。この構成によれば、堰止部によって燃料取替用水ピットに流入する一次系冷却水の流れを阻害することを好適に抑制できる。
【0011】
また、前記堰止部は、平面視において、前記噴流の下流側の端部が、前記噴流の下流側に隣接する前記堰止部の前記噴流の上流側の端部より前記デブリ濾過体から遠いことが好ましい。この構成によれば、噴流の上流側を狭く、下流側を広くするので、隣接する2つの堰止部の間からデブリを好適に排出できる。
【0012】
また、前記第1噴流発生体は、前記堰止部に向けて噴流を噴射することが好ましい。この構成によれば、好適に旋回流を形成することができる。
【0013】
また、前記第1噴流発生体は、水平方向に向けて噴流を噴射することが好ましい。この構成によれば、床面に沈殿したデブリを好適に排出できる。
【0014】
また、前記第1噴流発生体は、水平方向より上方に向けて噴流を噴射することが好ましい。この構成によれば、床面に沈殿したデブリを好適に浮遊させることができる。
【0015】
また、前記第1噴流発生体より前記デブリ濾過体に近い位置の前記床面に、上方に向けて噴流を噴出する第2噴流発生体を備えることが好ましい。この構成によれば、第2噴流発生体の噴流と、この噴流によるデブリ濾過体近傍の攪拌によって、デブリ濾過体へのデブリの付着を抑制できる。また、デブリ濾過体に付着したデブリを崩壊させることができる。また、崩壊したデブリを、噴流の上昇と共に浮遊及び浮上させることができる。
【0016】
また、前記第2噴流発生体は、前記デブリ濾過体に向けて噴流を噴出することが好ましい。この構成によれば、デブリ濾過体に付着したデブリを好適に崩壊させることができる。
【0017】
また、本発明の原子炉格納構造は、前記デブリ付着抑制構造を備えることを特徴とする。この構成によれば、デブリ濾過体へのデブリ付着を抑制することによって、デブリ濾過体の圧力損失が上昇し、一次系冷却水の流量が減少することを抑制できる。また、デブリ濾過体の圧力損失上昇によるポンプ装置の負荷の増大、及び一次系冷却水の循環効率の低下を抑制することが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、本発明に係るデブリ付着抑制構造及び原子炉格納構造の実施形態について図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。なお、以下の実施形態の説明において、同一構成には同一符号を付し、異なる構成には異なる符号を付すものとする。
【0020】
まず、
図1を用いて、本実施形態の原子力発電プラント10の構成について説明する。
図1は、本実施形態のデブリ付着抑制構造及び原子炉格納構造を備える原子力発電プラントの模式図である。本実施形態において、原子力発電プラント10は、原子炉格納容器11内に原子炉12を有している。原子炉12は、例えば、軽水を原子炉冷却材及び中性子減速材として使用する。原子炉12は、炉心18全体にわたって沸騰しない高温高圧水とし、この高温高圧水を後述する蒸気発生器13に送って熱交換により蒸気を発生させ、この蒸気をタービン発電機である発電設備90へ送って発電する加圧水型原子炉(PWR:Pressurized Water Reactor)である。なお、原子炉は、沸騰水型原子炉(BWR:Boiling Water Reactor)であってもよい。
【0021】
図1に示すように、原子力発電プラント10において、原子炉格納容器11は、内部に加圧水型原子炉である原子炉12と複数(図示は1つ)の蒸気発生器13とが格納されている。原子炉12と蒸気発生器13とは、高温側送給配管14と低温側送給配管15とを介して連結されている。低温側送給配管15には、一次系冷却水ポンプ16が設けられている。高温側送給配管14には、加圧器17の下部が連結されている。
【0022】
原子炉12は、内部に炉心18が配置されている。この炉心18は、複数の燃料集合体である燃料棒19と、燃料棒19の間に配置される複数の制御棒20とを有する。制御棒20は、制御棒駆動装置により上下移動可能である。制御棒20を炉心18に対して抜き差しすることによって、原子炉12の出力を制御、すなわち核分裂を調整することができる。全ての制御棒20を炉心18に挿入することで、原子炉12を停止することができる。
【0023】
蒸気発生器13には、内部に逆U字形状をなす複数(図示は1つ)の伝熱管21からなる伝熱管群が配置されている。伝熱管21の一端部は、高温側送給配管14の端部に連結されている。伝熱管21の他端部は、低温側送給配管15の端部に連結されている。
【0024】
原子力発電プラント10は、原子炉格納容器11の内部及び外部に、原子炉非常用冷却装置30を備える。原子炉非常用冷却装置30は、冷却水散布ライン31と、低圧冷却水供給ライン34と、高圧冷却水供給ライン36と、冷却水供給ライン39と、燃料取替用水ピット40と、再循環冷却水供給ライン41と、を有する。
【0025】
燃料取替用水ピット40は、原子炉格納容器11の床面に複数(図示は1つ)設けられている。燃料取替用水ピット40には、原子炉格納容器11の外部に延在する再循環冷却水供給ライン41が連通している。再循環冷却水供給ライン41は、冷却水散布ライン31、低圧冷却水供給ライン34、又は高圧冷却水供給ライン36に連通する。燃料取替用水ピット40には、上部を覆うようにデブリ濾過体42が装着されている。なお、デブリ濾過体42については、後述にて詳細に説明する。
【0026】
冷却水散布ライン31は、燃料取替用水ピット40から原子炉格納容器11の外部を通って再び原子炉格納容器11内に戻り、原子炉12の上方まで延出される。冷却水散布ライン31の中間部には、スプレイポンプ32が設けられている。冷却水散布ライン31の先端部には、多数のスプレイノズル33が設けられている。
【0027】
低圧冷却水供給ライン34は、燃料取替用水ピット40から原子炉格納容器11の外部を通って再び原子炉格納容器11内に戻り、原子炉12に連結される。低圧冷却水供給ライン34は、低圧注入ポンプ35が配置される低圧給水系である。
【0028】
高圧冷却水供給ライン36は、燃料取替用水ピット40から原子炉格納容器11の外部を通って再び原子炉格納容器11内に戻り、原子炉12に連結される。高圧冷却水供給ライン36は、高圧注入ポンプ37が配置される高圧給水系である。
【0029】
冷却水供給ライン39は、原子炉格納容器11の外部に配置されている燃料取替用水タンク38と、冷却水散布ライン31、低圧冷却水供給ライン34、及び高圧冷却水供給ライン36と連結する。
【0030】
原子炉12は、炉心18の燃料棒19により一次系冷却水が加熱される。第一次冷却水は、例えば軽水である。加熱された高温の一次系冷却水は、加圧器17により所定の高圧に維持された状態で、高温側送給配管14を通して蒸気発生器13に送られる。蒸気発生器13は、高温高圧の一次系冷却水と二次系冷却水との間で熱交換を行うことで二次系蒸気を生成する。二次系冷却水は、例えば軽水である。冷やされた一次系冷却水は、原子炉12に戻される。この際、制御棒駆動装置は、炉心18から制御棒20を抜き差しすることで、炉心18内での核分裂を調整する。制御棒駆動装置は、全ての制御棒20を炉心18に挿入することで、原子炉12を停止することができる。
【0031】
蒸気発生器13は、上端部が蒸気供給配管91を介して発電設備90に連結される。発電設備90は、復水戻し配管95を介して蒸気発生器13に連結されている。この発電設備90は、蒸気タービン設備92と、発電機93と、復水器94とを有する。蒸気発生器13にて、二次系冷却水が高温高圧の一次系冷却水と熱交換を行って生成された二次系蒸気は、蒸気供給配管91を通して発電設備90の蒸気タービン設備92に送られる。この蒸気により蒸気タービン設備92が駆動されて発電機93により発電が行われる。蒸気タービン設備92を駆動した蒸気は、復水器94で海水を用いて冷却されて復水となる。復水は、復水戻し配管95を通して蒸気発生器13に戻される。
【0032】
このような原子力発電プラント10にて、配管破断等による冷却材喪失事故が発生した場合、スプレイポンプ32と、低圧注入ポンプ35と、高圧注入ポンプ37とが駆動される。スプレイポンプ32により、燃料取替用水ピット40に貯留されている一次系冷却水は、再循環冷却水供給ライン41及び冷却水散布ライン31を介してスプレイノズル33に送られる。この一次系冷却水は、スプレイノズル33から原子炉格納容器11内に向けて散布される。すなわち、一次系冷却水は、原子炉格納容器11内で発生した大量の蒸気に対して散布され、大量のエネルギを奪い取る。原子炉格納容器11の内部を冷却した一次系冷却水は、高温となって落下し、燃料取替用水ピット40に戻される。低圧注入ポンプ35及び高圧注入ポンプ37により、燃料取替用水ピット40に貯留されている一次系冷却水は、再循環冷却水供給ライン41、低圧冷却水供給ライン34及び高圧冷却水供給ライン36を介して低温側送給配管15へ送られる。この一次系冷却水は、低温側送給配管15を通って原子炉12へ送られる。原子炉12は、一次系冷却水により炉心18が冷却され、炉心18の温度上昇が抑制される。
【0033】
次に、
図2から
図4を用いて、デブリ濾過体42の構成について説明する。
図2は、本実施形態のデブリ濾過体周辺を示した概略平面図である。
図3及び
図4は、本実施形態のデブリ濾過体の概略縦断面図である。ここで、デブリ(異物)は、燃料取替用水ピット40の水を原子炉に供給して、循環を行った場合に、一次冷却水に混入する種々の物質を含み、冷却原子炉建屋内に配置された種々の物質、コンクリートや保温材等の構造物や、各部から析出、排出された化学物質がある。
【0034】
デブリ濾過体42は、燃料取替用水ピット40の鉛直方向上側の端部に、燃料取替用水ピット40を覆っている。一次冷却水用の配管や、原子炉容器から原子炉格納容器11の床面に一次系冷却水が排出された場合、排出された一次冷却水は、デブリ濾過体42を通過し、燃料取替用水ピット40に流入する。上述したように、原子力発電プラント10にて、配管破断等による冷却材喪失事故が発生した場合、原子炉12等の原子炉格納容器11内は、燃料取替用水ピット40に貯留されている一次系冷却水によって冷却される。この際、
図4に示すように、配管の金属片、配管の保温材、原子炉格納容器11の内壁から剥がれたコンクリート片、及びコンクリートから染み出した化学成分等の異物であるデブリDが発生する。デブリDは、燃料取替用水ピット40に落下する一次系冷却水に混入する。デブリ濾過体42は、デブリDが燃料取替用水ピット40内に侵入することを抑制する。したがって、デブリ濾過体42は、再循環冷却水供給ライン41、冷却水散布ライン31、低圧冷却水供給ライン34及び高圧冷却水供給ライン36の各配管へのデブリDの混入による損傷を防止する。
【0035】
本実施形態において、デブリ濾過体42は、複数のストレーナモジュール43を有するサンプスクリーンである。1つのストレーナモジュール43は、下面側が開放された箱形状である。ストレーナモジュール43は、下面側を燃料取替用水ピット40の開口部に重ねるように設置される。ストレーナモジュール43の上面及び側面は、細かい網目を有する格子状で形成される。本実施形態のストレーナモジュール43に代えて、複数の濾過孔を有する濾過板が積層されたストレーナモジュールを用いてもよい。
図2に示すように、複数のストレーナモジュール43は、燃料取替用水ピット40の形状に応じて、隣接して配置される。デブリ濾過体42は、例えば、燃料取替用水ピット40の周囲を囲むように設けられる台座の上に設置される。
【0036】
図3に示すように、デブリ濾過体42は、上面及び側面から一次系冷却水が流入可能である。冷却液の水位が低い場合、一次系冷却水は、デブリ濾過体42の側面から流入する。冷却液の水位がデブリ濾過体42の高さを超えた場合、一次系冷却水は、デブリ濾過体42の上面からも流入する。
図4に示すように、デブリDが燃料取替用水ピット40に落下する一次系冷却水に混入すると、デブリ濾過体42の上面及び側面が、デブリDを捕捉する。デブリDが付着したデブリ濾過体42は、圧力損失が上昇し、一次系冷却水の流量が減少する。
【0037】
3つの堰止部50は、平面視においてデブリ濾過体42の周囲を囲んでいる。
図2に示す例では、デブリ濾過体42の周囲の一部が原子炉格納容器11の床面よりも突出している構造物52が配置されており、構造物52が配置されている部分には、堰止部50を配置していない。
【0038】
次に、
図5及び
図6を用いて、本実施形態のデブリ付着抑制構造44を説明する。
図5は、本実施形態のデブリ付着抑制構造の模式的な平面図である。
図6は、
図5におけるA−A断面図である。また、
図5及び
図6は、デブリ付着抑制構造44の機能を説明するために、構造物52がなく、デブリ濾過体42の周囲に他の部材が配置されていいない場合として説明する。また、
図4及び
図5では、デブリ付着抑制構造44の原理を説明するため、簡略的に、燃料取替用水ピット40及びデブリ濾過体42の外形を平面視(鉛直方向上側から下側に見た場合)で正方形に表し、デブリ付着抑制構造44の各構成部材を点対称に配置している。また、以下の説明においては、平面視でデブリ濾過体42に近い方を内側と称し、遠い方を外側と称する。
【0039】
本実施形態のデブリ付着抑制構造44は、複数(図示は4つ)の堰止部50と、複数(図示は4つ)の第1噴流発生体60とを有する。4つの堰止部50は、平面視においてデブリ濾過体42の周囲を囲んでいる。堰止部50は、原子炉格納容器11の床面から上方に突出する凸部である。堰止部50は、平面視した場合、デブリ濾過体42の周囲に沿って延在しており、内側が凹状となる弧形状となる。本実施形態においては、4つの堰止部50を配置しているが、堰止部50の数は特に限定されない。また、本実施形態においては、4つの堰止部50の形状及び大きさは全て同一であり、且つ4つの堰止部50を点対称に配置しているが、原子炉格納容器11の壁面及び床面、燃料取替用水ピット40及びデブリ濾過体42の形状に合わせて配置すればよい。
【0040】
本実施形態の堰止部50は、外表面が上面51と、内側面52と、外側面53と、上流側端面54と、下流側端面55と、を有する。上面51は、デブリ濾過体42の高さの半分以上の高さである。本実施形態において、上面51は、原子炉格納容器11の床面に対して平行の平面であるが、傾斜していても、平面でなくても構わない。つまり、堰止部50は、上面51の高さが変化する構造でもよい。
【0041】
内側面52は、デブリ濾過体42の側面と対向する。内側面52は、平面視において内側に凹状となる弧形状の曲面である。本実施形態において、原子炉格納容器11の床面に対して垂直の曲面であるが、傾斜していても構わない。
【0042】
外側面53は、内側面52に対して反対側の面となる。外側面53は、平面視において外側に凸状となる弧形状の曲線となる。外側面53は、上端から下端に向かうしたがってデブリ濾過体42から離れる方向に傾斜した傾斜面である。つまり、外側面53は、上端がデブリ濾過体42に近く、下端がデブリ濾過体42に遠い傾斜面である。
【0043】
上流側端面54は、上面51、内側面52及び外側面53の長手方向の端辺に囲まれた面である。なお、上流、下流は、第1噴流発生体60でデブリ濾過体42の周囲に形成される旋回流の上流が下流である。堰止部50の下流側端面55は、上面51、内側面52及び外側面53の長手方向の端辺に囲まれた面であって、上流側端面54に対して反対側の面である。下流側端面55は、上流側端面54よりもデブリ濾過体42から遠い位置に配置されている。また、下流側端面55は、下流側に隣接する堰止部50の上流側端面54よりもデブリ濾過体42から遠い位置に配置されている。本実施形態において、上流側端面54及び下流側端面55は、原子炉格納容器11の床面に対して垂直の平面であるが、傾斜していても、曲面であってもよい。
【0044】
第1噴流発生体60は、
図5に示すように、平面視において堰止部50とデブリ濾過体42の間に配置される。第1噴流発生体60は、第1噴流ノズル61から噴流を噴射する。第1噴流ノズル61は、デブリ濾過体42の法線方向よりも外側に向けて噴流を噴射する。第1噴流ノズル61は、堰止部50の上面51より低い位置に配置される(
図7参照)。第1噴流発生体60は、堰止部50の上流側端面54近傍において、第1噴流ノズル61が堰止部50の下流側端面55近傍に向くよう設置されることが好ましい。第1噴流ノズル61は、水平方向に向けて噴流を噴射するよう配置されるか、又は水平方向より上方に向けて噴流を噴射するよう配置されることが好ましい。
【0045】
第1噴流発生体60は、第1噴流供給ライン62から一次系冷却水が供給される。第1噴流供給ライン62は、低圧冷却水供給ライン34からバイパスされるのが好ましい。原子力発電プラント10にて、配管破断等による冷却材喪失事故が発生した場合、スプレイポンプ32と、低圧注入ポンプ35と、高圧注入ポンプ37とが駆動される。低圧注入ポンプ35が駆動すると、低圧冷却水供給ライン34に一次系冷却水が供給される。第1噴流発生体60は、低圧冷却水供給ライン34からバイパスされた第1噴流供給ライン62によって、一次系冷却水が供給されて自動的に駆動する。第1噴流発生体60が駆動すると、第1噴流ノズル61は、噴流を噴射する。
【0046】
デブリ付着抑制構造44は、堰止部50及び第1噴流発生体60の噴流によって、デブリ濾過体42の周囲に旋回流を形成する。すなわち、デブリ濾過体42の周囲を回るような旋回流を発生させる。本実施形態において、旋回流は、平面視において反時計回りである。デブリ付着抑制構造44は、旋回流を形成することで、デブリ濾過体42と堰止部50との間から、堰止部50の間に、排出する水流を形成する。
【0047】
図6に示すように、燃料取替用水ピット40に落下する一次系冷却水に混入したデブリDのうち、比重が重い、また大きさが大きい第1デブリDLは、水中で止まるまたは堰止部50に堰き止められ、堰止部50に囲われた領域に流入することが抑制される。デブリDのうち、第1デブリDLよりも比重が軽い、または小さく、水流で移動しやすい第2デブリDMは、
図5に示すように、堰止部50より内側した流入した場合も、デブリ付着抑制構造44で形成された旋回流により、隣接する堰止部50の下流側端面55との間隙から外側に排出される。ここで、第1デブリDLは、例えば、金属片又はコンクリート片である。第2デブリDMは、例えば、繊維または繊維と化学成分とが結合された物質である。なお、第1デブリDL及び第2デブリDMは、厳密に区別されるものではない。
【0048】
このように、デブリ付着抑制構造44は、第1デブリDLの浸入を抑制しつつ、旋回流で、第2デブリDMがデブリ濾過体42に付着することを抑制することができる。第2デブリDMがデブリ濾過体42に付着することを抑制できることで、デブリ濾過体42に付着した第2デブリDMの周囲に一次冷却水の混入した化学物質、微粒子が堆積して、デブリ濾過体42の目詰まりを発生させることを抑制できる。これにより、一次冷却水を好適に循環させることができる。
【0049】
また、本実施形態のデブリ付着抑制構造44は、堰止部50の第1噴流発生体60の噴流の下流側の端部である下流側端面55が、下流側に隣接する堰止部50の第1噴流発生体60の噴流の上流側の端部である上流側端面54より外側に配置している。これにより、堰止部50とデブリ濾過体42との距離が、噴流の上流側において広く、噴流の下流側において狭い構造とすることができ、堰止部50の下流側に、堰止部50の間の一部の水が外側に向かう旋回流を好適に形成することができる。
【0050】
また、堰止部50の高さが、デブリ濾過体42の高さの半分以上であることによって、堰止部50によって燃料取替用水ピット40に流入する一次系冷却水の流れを阻害することを好適に抑制できる。
【0051】
また、堰止部50の外側面53が、上端がデブリ濾過体42に近く、下端がデブリ濾過体42に遠い傾斜面であることによって、堰止部50によって燃料取替用水ピット40に流入する一次系冷却水の流れを阻害することを好適に抑制できる。
【0052】
また、堰止部50の噴流の下流側の端部(下流側端面55)が、デブリ濾過体42に対し、噴流の下流側に隣接する堰止部50の噴流の上流側の端部(上流側端面54)より遠くなるよう配置されていることによって、噴流の上流側を狭く、下流側を広くするので、隣接する2つの堰止部50の間からデブリDを好適に排出できる。
【0053】
また、第1噴流発生体60が、堰止部50に向けて噴流を噴射することで、好適に旋回流を形成することができる。また、第1噴流発生体60が、水平方向に向けて噴流を噴射することで、床面に沈殿したデブリDを好適に排出できる。
【0054】
また、第1噴流発生体60が、水平方向より上方に向けて噴流を噴射するよう配置されていることによって、床面に沈殿したデブリDを好適に浮遊させることができる。
【0055】
次に、
図7を用いて、本実施形態のデブリ付着抑制構造44の変形例を説明する。
図7は、本実施形態のデブリ付着抑制構造の変形例を示す模式的な縦断面図である。
【0056】
本実施形態のデブリ付着抑制構造44の変形例は、更に、複数(図示は2つ)の第2噴流発生体70を有する。第2噴流発生体70は、第1噴流発生体60より内側に配置される。第2噴流発生体70は、デブリ濾過体42の周囲を囲むよう複数配置される。第2噴流発生体70は、第2噴流ノズル71を有する。第2噴流ノズル71は、原子炉格納容器11の床面から上方に向けて噴流を噴出する。本実施形態において、第2噴流ノズル71は、垂直に向けて噴流を噴出するが、垂直に対して傾斜する噴流を噴出するようにしてもよい。例えば、第2噴流ノズル71は、デブリ濾過体42に向けて噴流を噴出してもよい。
【0057】
第2噴流発生体70は、第2噴流供給ライン72から一次系冷却水が供給される。第2噴流供給ライン72は、第1噴流供給ライン62と同様に、低圧冷却水供給ライン34からバイパスされるのが好ましい。原子力発電プラント10にて、配管破断等による冷却材喪失事故が発生した場合、スプレイポンプ32と、低圧注入ポンプ35と、高圧注入ポンプ37とが駆動される。低圧注入ポンプ35が駆動すると、低圧冷却水供給ライン34に一次系冷却水が供給される。第2噴流発生体70は、低圧冷却水供給ライン34からバイパスされた第2噴流供給ライン72によって、一次系冷却水が供給されて自動的に駆動する。第2噴流発生体70が駆動すると、第2噴流ノズル71は、噴流を噴射する。
【0058】
この構成によれば、第2噴流発生体70の噴流によって、デブリ濾過体42近傍において上方に向かう水流が発生する。また、デブリ濾過体42近傍の一次系冷却水が攪拌される。第2噴流発生体70は、デブリ濾過体42にカーテン状の上昇噴流を形成する。
【0059】
燃料取替用水ピット40に落下する一次系冷却水に混入したデブリDのうち、デブリ濾過体42に付着した第3デブリDSは、第2噴流発生体70の噴流及び噴流によるデブリ濾過体42近傍の攪拌によって、デブリ濾過体42の周囲から除去される。ここで、第3デブリDSは、第2デブリDMよりもさらに小さいデブリである。デブリ濾過体42から除去された第3デブリDS及びデブリ濾過体42近傍に浮遊する第3デブリDSは、第2噴流発生体70の噴流の上昇と共に浮遊及び浮上する。第3デブリDSは、例えば、繊維、水よりも粘性が高いまたは付着力が強い化学物質(ゲル状物質)である。なお、第1デブリDL、第2デブリDM、及び第3デブリDSは、厳密に区別されるものではない。
【0060】
このように、第2噴流発生体70を設けることで、第2噴流発生体70の噴流と、この噴流によるデブリ濾過体42近傍の攪拌によって、デブリ濾過体42へのデブリDの付着を抑制できる。また、デブリ濾過体42に付着したデブリDを崩壊させることができる。また、崩壊したデブリDを、噴流の上昇と共に浮遊及び浮上させることができる。
【0061】
また、第2噴流発生体70が、デブリ濾過体42に向けて噴流を噴出することによって、デブリ濾過体42に付着したデブリDを好適に崩壊させることができる。
【0062】
また、本実施形態の原子炉格納構造によれば、デブリ濾過体42へのデブリD付着を抑制することによって、デブリ濾過体42の圧力損失が上昇し、一次系冷却水の流量が減少することを抑制できる。また、デブリ濾過体42の圧力損失上昇によるポンプ装置(スプレイポンプ32、低圧注入ポンプ35及び高圧注入ポンプ37)の負荷の増大、及び一次系冷却水の循環効率の低下を抑制することが可能である。