(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ヘッド部は、外周面に、前記第1コイルおよび前記第2コイルが巻き付けられる突起部が複数形成されていることを特徴とする請求項2から請求項4のいずれか一項に記載の渦電流探傷プローブ。
前記ヘッド部は、外周面から突出し、前記検査対象物に対して前記ヘッド部の調心を行うスタビライザーが形成されていることを特徴とする請求項2から請求項5のいずれか一項に記載の渦電流探傷プローブ。
前記第1コイルおよび前記第2コイルは、前記所定方向と直交する方向に並んで複数段に配置されることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の渦電流探傷プローブ。
前記第1コイルおよび前記第2コイルは、前記複数段の各段で、前記所定方向に沿ってオフセットされて配置されることを特徴とする請求項8または請求項9に記載の渦電流探傷プローブ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載の渦電流探傷プローブは、励磁用コイルと検出用コイルとを切り替えながら探傷処理を行うため、各コイルを励磁用、検出用に切り替えるための切替回路に接続する必要がある。このとき、1行目に配置された各コイルの一端と他端とを、それぞれ異なる切替回路に接続し、かつ、2行目に配置された各コイルの一端と他端とを、それぞれ異なる切替回路に接続することになる。そのため、1行ごとに2つの切替回路が必要になり、かつ、各コイルから2本の配線が切替回路へと延びる。その結果、渦電流探傷プローブの構成要素の増加、配線構造の複雑化を招き、渦電流探傷プローブの小型化および容易な製造を妨げる可能性がある。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、渦電流探傷プローブの小型化および製造容易化を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、検査対象物に渦電流を発生させ、前記渦電流の変化を検出して前記検査対象物の探傷検査を行う渦電流探傷プローブであって、2行に並べられた一対のコイルが、所定方向に沿って複数配置された第1コイルと、前記第1コイルの前記一対のコイルの中心線と交差する中心線上で、点対称に2行に並べられた一対のコイルが、前記所定方向に沿って複数配置された第2コイルと、2つの前記第1コイルと前記第1コイルと点対称で配置された2つの前記第2コイルとで2行2列に配置された隣接する4つのコイルで構成されるユニットごとに、前記第1コイルおよび前記第2コイルの一方を前記検査対象物に渦電流を生じさせる励磁用コイルとし、他方を前記渦電流の変化を検出する検出用コイルとする切替回路とを備え、前記第1コイルは、一端が第1共通配線に接続されており、前記第2コイルは、一端が第2共通配線に接続されており、前記切替回路は、1行目に配置された前記第1コイルおよび前記第2コイルの他端に接続された第1切替回路と、2行目に配置された前記第1コイルおよび前記第2コイルの他端に接続された第2切替回路とを有することを特徴とする。
【0007】
この構成により、第1コイルの一端を第1共通配線で共通化すると共に、第2コイルの一端を第2共通配線で共通化することができるため、第1コイルおよび第2コイルから切替回路へと延びる配線の数を、各コイルから2本の配線が切替回路へと延びるものに比べて削減することができる。また、切替回路が、1行目に配置された第1コイルおよび第2コイルの他端に接続された第1切替回路と、2行目に配置された第1コイルおよび第2コイルの他端に接続された第2切替回路とを有するため、1行ごとに2つの切替回路を有するものに比べて、切替回路の数を削減することができる。従って、本発明にかかる渦電流探傷プローブによれば、渦電流探傷プローブの小型化および製造容易化を図ることができる。
【0008】
また、本発明にかかる渦電流探傷プローブは、前記第1コイルおよび前記第2コイルが巻き付けられる筒状のヘッド部をさらに備え、前記所定方向は、前記ヘッド部の周方向であることが好ましい。
【0009】
この構成により、筒型の渦電流探傷プローブについて、小型化および製造容易化を図ることができる。
【0010】
また、前記第1共通配線および前記第2共通配線は、前記ヘッド部において配線が完結することが好ましい。
【0011】
この構成により、第1共通配線および第2共通配線をヘッド部から異なる位置へと配索する必要がないため、配線構造の複雑化を抑制することができる。
【0012】
また、前記第1コイルの一端と前記第1共通配線との接続および前記第2コイルの一端と前記第2共通配線との接続は、電極パッドを介してなされ、前記電極パッドは、前記第1コイルの少なくとも一部で共有され、前記第2コイルの少なくとも一部で共有されることが好ましい。
【0013】
この構成により、第1コイルと第1共通配線とを接続する電極パッド、第2コイルと第2共通配線とを接続する電極パッドの数を削減することができる。その結果、ヘッド部の省スペース化を図ることができる。
【0014】
また、前記ヘッド部は、外周面に、前記第1コイルおよび前記第2コイルが巻き付けられる突起部が複数形成されていることが好ましい。
【0015】
この構成により、例えばヘッド部に第1コイルおよび第2コイルを収容する切り欠きを設ける構成に比べて、ヘッド部に第1コイルおよび第2コイルをできる限り万遍なく取り付けることができる。
【0016】
また、前記ヘッド部は、外周面から突出し、前記検査対象物に対して前記ヘッド部の調心を行うスタビライザーが形成されていることが好ましい。
【0017】
この構成により、筒型の渦電流探傷プローブを検査対象物に対して調心することができるため、探傷検査の精度を向上させることができる。
【0018】
また、前記第1コイルおよび前記第2コイルは、平板上に配置されることが好ましい。
【0019】
この構成により、平板型の渦電流探傷プローブについて、小型化および製造容易化を図ることができる。
【0020】
また、前記第1コイルおよび前記第2コイルは、前記所定方向と直交する方向に並んで複数段に配置されることが好ましい。
【0021】
この構成により、複数段に配置された第1コイルおよび第2コイルを用いて、渦電流探傷プローブそのものを動かすことなく、広範囲にわたって探傷検査を行うことができる。
【0022】
また、前記第1コイルは、前記複数段のすべての段で、前記一端が前記第1共通配線に接続され、前記第2コイルは、前記複数段のすべての段で、前記一端が前記第2共通配線に接続されることが好ましい。
【0023】
この構成により、第1コイルおよび第2コイルが複数段に配置される場合にも、渦電流探傷プローブについて、小型化および製造容易化を図ることができる。
【0024】
また、前記第1コイルおよび前記第2コイルは、前記複数段の各段で、前記所定方向に沿ってオフセットされて配置されることが好ましい。
【0025】
この構成により、各段において、第1コイルおよび第2コイルがオフセットされた分だけ、異なる範囲を検査することができるため、探傷検査の精度をより向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下に、本発明にかかる渦電流探傷プローブの実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0028】
図1は、実施形態にかかる渦電流探傷プローブの概略を示す説明図である。
図1に示す渦電流探傷プローブ1は、検査対象物に渦電流を発生させ、渦電流の変化を検出して検査対象物の探傷検査を行う。検査対象物は、例えば、原子力発電プラントに配設される図示しない熱交換器の例えば蒸気配管といった配管2の内部である。渦電流探傷プローブ1は、利用者が配管2の内部に沿って移動させながら、随時、探傷検査を行っていくものである。ただし、
図1に示す渦電流探傷プローブ1は、検査対象物として、いかなる配管内部の探傷検査に用いられてもよい。
【0029】
渦電流探傷プローブ1は、
図1に示すように、ヘッド部10と、筒状部20と、複数のコイル30と、制御回路40とを備える。ヘッド部10は、略円筒状に形成され、外周に複数のコイル30が巻き付けられる巻き付け部11を備える。以下の説明において、ヘッド部10の軸方向を「軸方向」、ヘッド部10の周方向を「周方向」と称する。ヘッド部10は、巻き付け部11の軸方向外側の両端に、外周面から突出するスタビライザー12が形成されている。スタビライザー12は、渦電流探傷プローブ1を配管2の内部に挿入したとき、ヘッド部10を配管に対して調心するためのものである。スタビライザー12は、ヘッド部10の全周に形成されてもよいし、周方向に沿って間隔を空けて複数形成されてもよい。
【0030】
図2は、巻き付け部を模式的に示す斜視図である。巻き付け部11は、図示するように、中空の略円筒形状に形成される。巻き付け部11は、軸方向端面11aの間を延びる側面(外周面)11bに、複数のコイル30が軸方向において2列に並んで配置される。各列において、複数のコイル30は、周方向に沿って互いに間隔を空けて配置される。なお、
図2では、コイル30を各列において3つのみ記載しているが、実際には、巻き付け部11の全周にわたって配置される。また、巻き付け部11は、側面11bから径方向外側に突出する突起部111bが、周方向に沿って互いに間隔を空けて複数形成されている。各コイル30は、突起部111bに巻き付けられることで、巻き付け部11の側面11bに沿って配置される。突起部111bに巻き付けられたコイル30は、図中に破線で示すように、軸方向端面11aに設けられた電極パッド50に接続される。なお、
図2では、一部の電極パッド50のみを記載している。各電極パッド50は、一部が配線60(
図3参照)を介して制御回路40に接続され、一部が配線60を介して互いに接続されている。複数の配線60の配線構造については、後述する。
【0031】
なお、コイル30は、円柱状に巻き付けられてもよいし、四角形状に巻き付けられてもよい。また、巻き付け部11の側面11bを、各コイル30を配置する複数の配置面に区切ってもよい。また、コイル30は、1列目と2列目とで、巻き付け部11の周方向においてオフセットされてもよい。また、巻き付け部11は、側面11bが、軸方向端面11aから中心側に向かうにつれて、径方向外側に拡径するテーパ状に形成されてもよい。
【0032】
筒状部20は、ヘッド部10から軸方向に沿って延びる部材であり、探傷検査の際に使用者が握る持ち手部分である。筒状部20は、中途部分に制御回路40を配置するための回路配置部21が形成されている。また、筒状部20は、内部が中空に形成されており、電極パッド50を介して各コイル30に接続された複数の配線60の一部が内部に配索されている。複数の配線60の一部は、筒状部20の内部を通り、制御回路40に接続されている。
【0033】
複数のコイル30は、巻き付け部11の周方向に沿って2行2列に並んで巻き付けられる。
図3は、複数のコイルの配置および配線構造を模式的に示す概略図である。
図3では、巻き付け部11の外周面に周方向に沿って配置された複数のコイル30を、平面上に展開した状態を模式的に示している。すなわち、
図3に示す左右方向が上記周方向に相当する。なお、
図3は、コイル30の配置を模式的に示すものであるため、8列のみコイル30を記載し、電極パッド50の記載を省略している。複数のコイル30は、図中に太い実線で示した複数の第1コイル31と、図中に細い実線で示した複数の第2コイル32とを有する。本実施形態において、各第1コイル31と各第2コイル32は、電磁気的な特性が同一のコイルである。
【0034】
第1コイル31は、2行に並べられた一対のコイル30が、所定方向すなわち周方向(
図3の左右方向)に沿って複数(本実施形態では、4組)配置される。第2コイル32は、第1コイル31の一対のコイル30の中心線L1と交差する中心線L2上で、点対称に2行に並べられた一対のコイル30が、所定方向すなわち周方向(
図3の左右方向)に沿って複数(本実施形態では、4組)配置される。第2コイル32は、一対のコイル30が、第1コイル31の一対のコイル30の中心線L1と交差する中心線L2上で、点対称に配置される。すなわち、第1コイル31および第2コイル32は、アレイ状に配置され、各行において、第1コイル31に隣接して第2コイル32が配置されることになる。なお、第1コイル31および第2コイル32がアレイ状に配置されれば、中心線L1と中心線L2は、いかなる位置で交差してもよい。
【0035】
制御回路40は、
図3に示すように、発信器41と、ブリッジ回路42と、切替回路43とを有する。発信器41は、各コイル30に励磁電流を供給する。ブリッジ回路42は、後述する検出用コイルC2として用いられるコイル30の電圧差を検出し、検出した電圧差に基づいて検査対象物としての配管の内部の傷の有無を判定する。切替回路43は、第1切替回路431と、第2切替回路432とを有する。第1切替回路431および第2切替回路432は、それぞれ、発信器41およびブリッジ回路42と、複数のコイル30とに接続されている。
【0036】
第1切替回路431および第2切替回路432は、隣接する4つのコイル30で構成されるユニットUごとに、第1コイル31および第2コイル32の一方を配管2に渦電流を生じさせる励磁用コイルC1とし、他方を渦電流の変化を検出する検出用コイルC2とするための回路である。ユニットUは、
図3において破線または二点鎖線で囲んだ範囲に例示するように、2つの第1コイル31と、第1コイル31と点対称で配置された2つの第2コイル32とで2行2列に配置された、隣接する4つのコイル30で構成されるユニットである。第1切替回路431および第2切替回路432は、例えば、周知のマルチプレクサを用いることができる。なお、
図3では、第1切替回路431および第2切替回路432を、8本の配線60を接続可能な8チャンネルの回路とする例を記載している。第1切替回路431および第2切替回路432は、接続すべき配線60の全体数に対応したチャンネル数を満たすものであればよく、必要となるチャンネル数に応じて複数設けられてもよい。
【0037】
第1切替回路431および第2切替回路432は、ユニットUごとに、発信器41からの励磁電流を第1コイル31および第2コイル32の励磁用コイルC1として用いられる一方に供給する。また、第1切替回路431および第2切替回路432は、ユニットUごとに、第1コイル31および第2コイル32の検出用コイルC2として用いられる他方の電圧をブリッジ回路42へと送信する。例えば、ユニットU1(
図3における破線で囲んだ範囲参照)の第1コイル31を励磁用コイルC1とした場合、第1コイル31は、
図3において実線矢印で示す渦電流を発生させる。それにより、配管2の内周面近傍に鎖交磁束が生じる。このとき、ユニットU1の2つの検出用コイルC2(第2コイル32)には、互いに逆向きの鎖交磁束が作用する。配管2の内周面に欠陥がない場合、励磁用コイルC1(第1コイル31)による渦電流に乱れが生じず、2つの検出用コイルC2(第2コイル32)に作用する鎖交磁束に差が生じない。そのため、2つの検出用コイルC2(第2コイル32)により検出される電圧には差が生じない。一方、配管2の内周面に欠陥がある場合、励磁用コイルC1(第1コイル31)による渦電流が乱れ、2つの検出用コイルC2(第2コイル32)に作用する鎖交磁束に差が生じ、2つの検出用コイルC2(第2コイル32)に電圧差が生じる。それにより、ブリッジ回路42は、第1切替回路431および第2切替回路432から送信された2つの検出用コイルC2(第2コイル32)の電圧差に基づいて、検査対象物としての配管の内周面の欠陥の有無を判定する。
【0038】
第1切替回路431および第2切替回路432は、所定方向すなわち周方向において先行するユニットU1で探傷検査を行った後、1列隣りに配置される後続するユニットU2(
図3における二点鎖線で囲んだ範囲参照)で探傷検査を行う。このとき、第1切替回路431および第2切替回路432は、第1コイル31および第2コイル32のうち、先に行った探傷検査で励磁用コイルC1とした一方を、後に行う探傷検査では検出用コイルC2とする。また、第1切替回路431および第2切替回路432は、第1コイル31および第2コイル32のうち、先に行った探傷検査で検出用コイルC2とした他方を、後に行う探傷検査では励磁用コイルC1とする。これにより、
図3に示すように、例えばユニットU1では、2つの第1コイル31が励磁用コイルC1、2つの第2コイル32が検出用コイルC2となり、1列隣りのユニットU2では、2つの第1コイル31が検出用コイルC2、2つの第2コイル32が励磁用コイルC1となる。その結果、アレイ状に配置される第1コイル31、第2コイル32を用いて、ユニットUごとに、重なった範囲を探傷検査することができるため、探傷検査の精度を高めることが可能となる。
【0039】
次に、本実施形態の渦電流探傷プローブ1における複数のコイル30の配線構造について説明する。本実施形態において、複数のコイル30と第1切替回路431および第2切替回路432を接続する配線60は、第1共通配線61と、第2共通配線62とを有している。
【0040】
第1コイル31は、
図3に示すように、一端が第1共通配線61に接続されている。第1コイル31と第1共通配線61との接続は、電極パッド50を介してなされる。第1共通配線61は、ヘッド部10において配線が完結するように配索されている。また、第2コイル32は、
図3に示すように、一端が第2共通配線62に接続されている。第2コイル32と第2共通配線62との接続は、電極パッド50を介してなされる。第2共通配線62は、ヘッド部10において配線が完結するように配索されている。
【0041】
また、第1コイル31および第2コイル32は、他端が、配線60を介して切替回路43に接続されている。より詳細には、
図3に示すように、1行目に配置された第1コイル31および第2コイル32の他端が、配線60を介して、第1切替回路431に接続される。また、
図3に示すように、2行目に配置された第1コイル31および第2コイル32の他端が、配線60を介して、第2切替回路432に接続される。
【0042】
上述のように構成された渦電流探傷プローブ1において、例えばユニットU1を用いて探傷検査を行う場合、第1切替回路431および第2切替回路432は、ユニットU1に含まれる第1コイル31に発信器41からの励磁電流を供給する。例えば第1切替回路431から、配線60を介してユニットU1の1行目の第1コイル31に励磁電流が供給されると、励磁電流は、1行目の第1コイル31を導通した後、第1共通配線61を介して2行目の第1コイル31へと導通する。また、第1切替回路431および第2切替回路432は、第2共通配線62を介して接続されたユニットU1に含まれる2つの第2コイル32の電圧をブリッジ回路42へと送信する。これにより、ユニットU1を用いた探傷検査を行うことができる。
【0043】
ここで、
図4は、比較例としての渦電流探傷プローブにおけるコイルの配置および配線構造を模式的に示す説明図である。図示するように、比較例としての渦電流探傷プローブ100は、実施形態にかかる渦電流探傷プローブ1と同様に、各コイル30がアレイ状に配置される。一方で、比較例としての渦電流探傷プローブ100は、配線60が第1共通配線61および第2共通配線62を有していない。そのため、渦電流探傷プローブ100において、本実施形態の切替回路43(第1切替回路431、第2切替回路432)と同様の機能を有する切替回路44を用いて探傷検査を行うとすると、各コイル30を個別に切替回路44に接続する必要がある。
【0044】
より詳細には、例えばユニットU1に含まれる第1コイル31に励磁電流を供給するためには、1行目の第1コイル31に励磁電流を供給するための第1切替回路441、第2切替回路442が必要となり、2行目の第1コイル31に励磁電流を供給するための第3切替回路443、第4切替回路444が必要となる。同様に、ユニットU1に含まれる第2コイル32の電圧を検出するためには、1行目の第2コイル32の電圧を検出するための第1切替回路441、第2切替回路442が必要となり、2行目の第2コイル32の電圧を検出するための第3切替回路443、第4切替回路444が必要となる。そして、各コイル30の一端および他端は、すべて各切替回路44に接続する必要がある。一方で、本実施形態の渦電流探傷プローブ1は、上述したように、第1共通配線61と第2共通配線62とを用いることで、各コイル30の他端のみを切替回路43に接続すればよいため、配線数の増加および配線構造の複雑化による装置の大型化、製造性の低下を抑制することが可能となる。また、2つの第1切替回路431、第2切替回路432を用いて探傷検査を行うことができるため、切替回路43の数の増加による装置の大型化、製造性の低下を抑制することが可能となる。
【0045】
また、
図2に示すように、複数の電極パッド50のうち、第1共通配線61または第2共通配線62に接続されるものを、少なくとも一部で共有することができる。例えば
図2に示すように、電極パッド50のうち、第1共通配線61に接続される電極パッド51を、図示した2つの第1コイル31で共有することができる。比較例の渦電流探傷プローブ100では、各コイル30の両端が切替回路44に接続されるため、電極パッド50の数も各コイル30に対して2つずつ必要となるが、本実施形態によれば、電極パッド50の数を減らすことができる。その結果、ヘッド部10で利用可能なスペース(
図2に示す例では、巻き付け部11の軸方向端面11a)を広げることができる。このように、ヘッド部10で利用可能なスペースを広げることが可能な渦電流探傷プローブ1は、例えば巻き付け部11の軸方向端面11aに、制御回路40の一部、例えば第1切替回路431、第2切替回路432を配置する等の構成を採用してもよい。
【0046】
以上説明したように、実施形態にかかる渦電流探傷プローブ1は、第1コイル31の一端を第1共通配線61で共通化すると共に、第2コイル32の一端を第2共通配線62で共通化することができるため、第1コイル31および第2コイル32から切替回路43へと延びる配線60の数を、各コイル30から2本の配線が切替回路(比較例の切替回路44)へと延びるものに比べて削減することができる。また、切替回路43が、1行目に配置された第1コイル31および第2コイル32の他端に接続された第1切替回路431と、2行目に配置された第1コイル31および第2コイル32の他端に接続された第2切替回路432とを有するため、1行ごとに2つの切替回路(比較例の切替回路44)を有するものに比べて、切替回路43の数を削減することができる。従って、実施形態にかかる渦電流探傷プローブ1によれば、渦電流探傷プローブ1の小型化および製造容易化を図ることができる。
【0047】
また、実施形態にかかる渦電流探傷プローブ1は、第1コイル31および第2コイル32が巻き付けられる筒状のヘッド部10をさらに備え、所定方向は、ヘッド部10の周方向である。
【0048】
この構成により、筒型の渦電流探傷プローブ1について、小型化および製造容易化を図ることができる。
【0049】
また、第1共通配線61および第2共通配線62は、ヘッド部10において配線が完結する。
【0050】
この構成により、第1共通配線61および第2共通配線62をヘッド部10から異なる位置へと配索する必要がないため、配線構造の複雑化を抑制することができる。
【0051】
また、第1コイル31の一端と第1共通配線61との接続および第2コイル32の一端と第2共通配線62との接続は、電極パッド50を介してなされ、電極パッド50は、第1コイル31の少なくとも一部で共有され、第2コイル32の少なくとも一部で共有される。
【0052】
この構成により、第1コイル31と第1共通配線61とを接続する電極パッド50、第2コイル32と第2共通配線62とを接続する電極パッド50の数を削減することができる。その結果、ヘッド部10の省スペース化を図ることができる。
【0053】
また、ヘッド部10は、外周面に、第1コイル31および第2コイル32が巻き付けられる突起部111bが複数形成されている。
【0054】
この構成により、例えばヘッド部10に第1コイル31および第2コイル32を収容する切り欠きを設ける構成に比べて、ヘッド部10に第1コイル31および第2コイル32をできる限り万遍なく取り付けることができる。
【0055】
また、ヘッド部10は、外周面から突出し、検査対象物としての配管に対してヘッド部10の調心を行うスタビライザー12が形成されている。
【0056】
この構成により、筒型の渦電流探傷プローブ1を検査対象物としての配管の内周面に対して調心することができるため、探傷検査の精度を向上させることができる。
【0057】
本実施形態では、巻き付け部11の外周面に形成された突起部111bに第1コイル31、第2コイル32を巻き付けるものとしたが、巻き付け部11に第1コイル31、第2コイル32を収容可能な切欠きを形成し、切欠きの内部に第1コイル31、第2コイル32を収容してもよい。さらに、第1コイル31、第2コイル32は、巻き付け部11の外周面に限られず、内周面に設けられてもよい。
【0058】
実施形態にかかる渦電流探傷プローブ1の構成は、円筒状に限られず、他の形状の渦電流探傷プローブに適用されてもよい。例えば、平板状に形成された渦電流探傷プローブに、本実施形態の構成を適用してもよい。すなわち、第1コイル31および第2コイル32をアレイ状に、平板上に配置してもよい。この場合、第1コイル31、第2コイル32の各一対のコイル30が複数配置される「所定方向」は、平板の面に沿った方向となる。この構成により、平板型の渦電流探傷プローブについても、小型化および製造容易化を図ることができる。
【0059】
図5は、実施形態にかかる渦電流探傷プローブの変形例において、複数のコイルの配置および配線構造を模式的に示す概略図である。変形例の渦電流探傷プローブ200は、
図5に示すように、第1コイル31および第2コイル32が、所定方向(
図5の左右方向)と直交する方向に並んで、複数段(
図5に示す例では、2段)に配置される。
【0060】
渦電流探傷プローブ200において、第1切替回路431および第2切替回路432は、各段において一つずつ設けられる。各段における第1コイル31および第2コイル32と第1切替回路431および第2切替回路432との配線60の接続構造は、
図3に示すものと同様である。
図5では、1段目A1の第1コイル31および第2コイル32に接続される各切替回路43を、第1切替回路431A1、第2切替回路432A1とし、2段目A2の第1コイル31および第2コイル32に接続される各切替回路43を、第1切替回路431A2、第2切替回路432A2としている。また、各段における第1コイル31および第2コイル32と、第1共通配線61および第2共通配線62との接続構造は、
図3に示すものと同様である。
【0061】
渦電流探傷プローブ200において、第1コイル31および第2コイル32は、図示するように、複数段の各段で、すなわち
図5に示す例では1段目A1と2段目A2とで、所定方向(
図5の左右方向)に沿ってオフセットされて配置される。つまり、第1コイル31および第2コイル32は、各段で、千鳥状に配置される。
【0062】
渦電流探傷プローブ200では、まず、図中上側の1段目A1の第1コイル31および第2コイル32、第1切替回路431A1および第2切替回路432A1を用いて、ユニットUごとに、上述した渦電流探傷プローブ1と同様の手法により、探傷検査を行っていく。1段目A1の第1コイル31および第2コイル32を用いた探傷検査が終了すると、渦電流探傷プローブ200は、位置を変更することなく、図中下側の2段目A2の第1コイル31および第2コイル32、第1切替回路431A2および第2切替回路432A2を用いて、ユニットUごとに、上述した渦電流探傷プローブ1と同様の手法により、探傷検査を行っていく。これにより、複数段に配置された第1コイル31および第2コイル32を用いて、渦電流探傷プローブ200そのものを動かすことなく、広範囲にわたって探傷検査を行うことができる。
【0063】
そして、2段目A2の探傷検査が終了すると、利用者が渦電流探傷プローブ200を配管2内で移動させ、再び同様の手順により、渦電流探傷プローブ200で探傷検査を行う。このとき、先に行った探傷検査の際に、2段目A2の第1コイル31および第2コイル32で検査を行った範囲を、後に行う探傷検査の際に、1段目A1の第1コイル31および第2コイル32で検査を行う範囲とする。それにより、先に行った探傷検査と後に行う探傷検査とで、重なる範囲を検査することができるため、探傷検査の精度を向上させることができる。特に、渦電流探傷プローブ200は、上述したように、第1コイル31および第2コイル32が、1段目A1と2段目A2とで所定方向(
図5の左右方向)に沿ってオフセットされて配置される。それにより、先に行った探傷検査と後に行う探傷検査とで重なる範囲を検査する際、1段目A1と2段目A2のオフセット分だけ、ユニットUごとに異なる範囲を検査することができ、検査の分解能を向上させることができる。その結果、探傷検査の精度をさらに向上させることができる。
【0064】
図6は、実施形態にかかる渦電流探傷プローブの他の変形例において、複数のコイルの配置および配線構造を模式的に示す概略図である。他の変形例の渦電流探傷プローブ300において、第1コイル31は、
図6に示すように、複数段のすべての段で、すなわち1段目A1と2段目A2との双方において、一端が第1共通配線61に接続される。また、渦電流探傷プローブ300において、第2コイル32は、
図6に示すように、複数段のすべての段で、すなわち1段目と2段目との双方において、一端が第2共通配線62に接続される。1段目A1および2段目A2の1行目に配置される第1コイル31および第2コイル32は、すべて、他端が同一の第1切替回路431に接続される。また、1段目A1および2段目A2の2行目に配置される第1コイル31および第2コイル32は、すべて、他端が同一の第2切替回路432に接続される。渦電流探傷プローブ300において、第1切替回路431および第2切替回路432は、16チャンネルの回路である。渦電流探傷プローブ300のその他の構成は、渦電流探傷プローブ200と同様であるため、説明を省略する。
【0065】
渦電流探傷プローブ300では、1段目A1と2段目A2とで、第1共通配線61を共有し、第2共通配線62を共有する。つまり、すべての第1コイル31が第1共通配線61を介して接続されており、すべての第2コイル32が第2共通配線62を介して接続されている。それにより、1段目A1から2段目A2へと探傷検査を移行する際に、単一の第1切替回路431および第2切替回路432を用いて、連続的にユニットUの切替を行うことが可能となる。その結果、1段目A1と2段目A2とで、第1切替回路431および第2切替回路432とを共有することができ、
図5に示す渦電流探傷プローブ200に比べて、切替回路43の数を少なくすることができる。従って、渦電流探傷プローブ300の小型化および製造容易化を図ることができる。
【0066】
ただし、渦電流探傷プローブ300では、
図6において破線で示すように、1段目A1に含まれる第1コイル31および第2コイル32と、2段目A2に含まれる第1コイル31および第2コイル32とでユニットUを構成するタイミングがある。このタイミングでは、ユニットU内の第1コイル31および第2コイル32が離れた位置に配置されてしまうため、渦電流を発生させることによる探傷検査を行うことができない。したがって、このタイミングでは、渦電流探傷プローブ300による探傷検査の結果を利用者に対して表示しないといった処理を行えばよい。
【0067】
なお、
図5および
図6に示す構成は、筒型の渦電流探傷プローブ、平板型の渦電流探傷プローブのいずれに適用されてもよい。また、
図5に示す渦電流探傷プローブ200、
図6に示す渦電流探傷プローブ300において、第1コイル31および第2コイル32は、複数段の各段で、所定方向に沿ってオフセットされるものでなくてもよい。