特許第6879981号(P6879981)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6879981
(24)【登録日】2021年5月7日
(45)【発行日】2021年6月2日
(54)【発明の名称】絶縁性シートおよび組電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/572 20210101AFI20210524BHJP
   H01M 50/20 20210101ALI20210524BHJP
【FI】
   H01M2/34 B
   H01M2/10 Y
【請求項の数】6
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2018-161143(P2018-161143)
(22)【出願日】2018年8月30日
(65)【公開番号】特開2020-35645(P2020-35645A)
(43)【公開日】2020年3月5日
【審査請求日】2020年7月2日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003506
【氏名又は名称】第一工業製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076314
【弁理士】
【氏名又は名称】蔦田 正人
(74)【代理人】
【識別番号】100112612
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 哲士
(74)【代理人】
【識別番号】100112623
【弁理士】
【氏名又は名称】富田 克幸
(74)【代理人】
【識別番号】100163393
【弁理士】
【氏名又は名称】有近 康臣
(74)【代理人】
【識別番号】100189393
【弁理士】
【氏名又は名称】前澤 龍
(74)【代理人】
【識別番号】100203091
【弁理士】
【氏名又は名称】水鳥 正裕
(72)【発明者】
【氏名】西川 明良
(72)【発明者】
【氏名】東崎 哲也
(72)【発明者】
【氏名】石野 愛
(72)【発明者】
【氏名】竹川 淳
(72)【発明者】
【氏名】赤尾 俊和
【審査官】 原 和秀
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2014/0255749(US,A1)
【文献】 特開2012−018915(JP,A)
【文献】 特開平10−189062(JP,A)
【文献】 特開2010−097693(JP,A)
【文献】 特開2009−181802(JP,A)
【文献】 特開2015−069729(JP,A)
【文献】 特開2019−175806(JP,A)
【文献】 特開2018−107062(JP,A)
【文献】 特開2016−195084(JP,A)
【文献】 特開2016−167417(JP,A)
【文献】 特開2018−206605(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/572
H01M 50/20
H01M 10/613−10/6555
H01B 5/00 − 5/16
H01G 3/16 − 3/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面部同士が対向配置される電池セル間に挟み込まれる絶縁性シートであって、無機充填剤を含有する樹脂組成物により形成され、かつ繊維強化材として織物、編物、不織布又は糸を平行に引き揃えたものが埋設され、前記繊維強化材の繊維がガラス繊維及び/又は合成繊維からなることを特徴とする、絶縁性シート。
【請求項2】
前記無機充填剤の含有量が前記樹脂組成物100質量%中30〜95質量%の範囲内である、請求項1に記載の絶縁性シート。
【請求項3】
前記無機充填剤は、二価もしくは三価の金属水酸化物、二価の金属硫酸塩水和物、亜鉛のオキソ酸塩、シリカ、アルミナ、ドーソナイト、および炭酸水素ナトリウムからなる群より選択される少なくとも1種である、請求項1又は2に記載の絶縁性シート。
【請求項4】
前記樹脂組成物は、樹脂成分として、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、およびメラミン樹脂からなる群より選択される少なくとも1種の樹脂を含有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の絶縁性シート。
【請求項5】
前記樹脂組成物は、前記樹脂成分がウレタン樹脂であり、前記無機充填剤が二価もしくは三価の金属水酸化物である、請求項4に記載の絶縁性シート。
【請求項6】
平面部を持つ複数の電池セルと、請求項1〜5のいずれか1項に記載の絶縁性シートとを備え、前記平面部同士が対向配置された前記複数の電池セルの少なくとも1つの対向配置部に前記絶縁性シートが挟み込まれたことを特徴とする、組電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池セル間に挟み込まれる絶縁性シート、および、該絶縁性シートを用いた組電池に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン二次電池は、小型軽量の充電可能な電池であり、単位容積あるいは単位質量あたり蓄電容量が大きい。そのため、携帯電話、ノートパソコン、携帯情報端末(PDA)、ビデオカメラ、デジタルカメラなどに広く利用され、小型軽量で比較的電力消費の大きな各携帯型機器には必要不可欠なものとなっている。また、大型電池用途として電動車輌や住宅用途定置蓄電池なども普及しつつある。
【0003】
このような特徴からリチウムイオン二次電池は、省エネルギー化やエネルギー貯蔵としての蓄電池技術においてキーテクノロジーとなると考えられるが、近年リチウムイオン二次電池の事故や回収が相次ぐなど安全性について重要視されており、同電池における信頼性を高めることが強く望まれている。
【0004】
電池の安全性向上は電池内部に使用している材料の変更や改良と、複数の電池セルから組電池を製造する際の材料の改良によるものが挙げられる。電池パックなどの組電池の製造時に使用する安全性向上のための材料として、樹脂ポッティングが知られている。
【0005】
樹脂ポッティングによる組電池の製造では、複数の電池セルを直並列に組み合わせてモジュール化した後、成形型や袋に収容し、その内部に液状の樹脂(ポッティング材)を注入して硬化させる方法がとられている(特許文献1参照)。この方法の欠点として、樹脂を均等な厚みに制御することが難しく、気泡を含まないように樹脂を充填することも容易ではない。また、不必要な箇所(例えば、セル本体の周りの熱融着部間の隙間など)まで樹脂が流れ込むことにより、質量増加等の問題もある。また、樹脂を硬化させるために加熱が必要であり、樹脂の硬化に時間がかかることや、ポッティング後の検査がしづらいという問題もある。
【0006】
なお、組電池の内部での熱の発生を抑制し、電池セル間の発火を防止するために、特許文献2には、電池セルと、当該電池セルの外周面を囲んで位置する固定部材との間に吸熱材を設けたり、隣接する電池セルの互いに対向する面の間に吸熱材を設けたりすることが記載されている。この文献では、吸熱材として、シリカ5〜25質量%と水75〜95質量%との混合物を用いて、電池セルの外周面や、積層される電池セル間に塗布しており、無機充填剤を含有する樹脂組成物により形成された絶縁性シートを用いることは記載されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2014−103123号公報
【特許文献2】特表2016−533022号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の実施形態は、組電池の安全性を向上することができる絶縁性シート、および、それを用いた組電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の実施形態に係る絶縁性シートは、平面部同士が対向配置される電池セル間に挟み込まれる絶縁性シートであって、無機充填剤を含有する樹脂組成物により形成され、かつ繊維強化材として織物、編物、不織布又は糸を平行に引き揃えたものが埋設され、前記繊維強化材の繊維がガラス繊維及び/又は合成繊維からなるものである。
【0010】
本発明の実施形態に係る組電池は、平面部を持つ複数の電池セルと、前記絶縁性シートとを備え、前記平面部同士が対向配置された前記複数の電池セルの少なくとも1つの対向配置部に前記絶縁性シートが挟み込まれたものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の実施形態であると、無機充填剤を含有する樹脂組成物により形成された絶縁性シートを、平面部同士が対向配置される電池セル間に挟み込まれるようにしたので、組電池の安全性を向上することができる。また、この絶縁性シートは、予めシート状に成形しておいて電池セル間に挟み込むものであるため、組電池の組み立て時に硬化させる必要がない。また、樹脂ポッティングのようにデッドスペースに入り込まないため、最低限の質量増加で組電池を組立てることができる。また、絶縁性シートの作製時に厚みを容易に制御できるため、電池セル間の寸法精度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】一実施形態に係る絶縁性シートの平面図である。
図2】同絶縁性シートの断面図である。
図3】一実施形態に係る電池セルの斜視図である。
図4】一実施形態に係る組電池の斜視図である。
図5】同組電池の側面模式図である。
図6】同組電池の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本開示の代表的な実施の形態を、図面を参照しながら説明する。なお、以下では全ての図を通じて同一又は相当する要素には同一の参照符号を付して、その重複する説明を省略する。
【0014】
本実施形態に係る絶縁性シートは、平面部同士が対向配置される電池セル間に挟み込まれて使用されるシートであり、電池セル間を電気的に絶縁することができる。該絶縁性シートは、無機充填剤を含有する樹脂組成物により形成された樹脂製シートである。
【0015】
絶縁性シートを構成する樹脂組成物は、樹脂成分および無機充填剤を含有しているものであればよい。樹脂成分としては、種々の樹脂(高分子またはプラスチック)が挙げられ、代表的な樹脂成分としては、例えば、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、およびメラミン樹脂などを挙げることができる。これら樹脂はいずれか1種類が用いられてもよいし、2種類以上が適宜組み合わせて(例えばポリマーブレンドまたはポリマーアロイ等として)用いられてもよい。
【0016】
さらに、同じ種類の樹脂であっても、化学構造等の異なる樹脂が2種類以上組み合わせて用いられてもよい。例えば、樹脂成分がウレタン樹脂である場合、ポリイソシアネートおよびポリオールの組合せとして異なるものを用いた2種類以上のウレタン樹脂を用いることができる。また、ポリイソシアネートおよびポリオールの組合せが同じであるとしても、合成条件を変えて得られる2種類以上のウレタン樹脂を用いることもできる。
【0017】
本実施形態に係る絶縁性シートにおいては、前述した樹脂の中でも特にウレタン樹脂を樹脂成分として好ましく用いることができる。本実施形態に係る絶縁性シートは、弾性または柔軟性を有することが好ましいが、ウレタン樹脂は、弾性または柔軟性について幅広いものを製造することができる。
【0018】
また、ウレタン樹脂は、幅広い弾性または柔軟性を実現できるということは、必要に応じて弾性または柔軟性を制御できることを意味する。それゆえ、組電池の構成等に応じて、良好な弾性または柔軟性を有する絶縁性シートを得ることが可能となる。さらに、ウレタン樹脂は、他の樹脂に比べて、加工時の粘度が相対的に低く、常温での硬化が可能であり高温を必要としない。そのため、絶縁性シートを製造する際の加工性または製造効率を良好なものとすることができる。
【0019】
なお、絶縁性シートを構成する樹脂組成物として、25℃の貯蔵弾性率は特に限定されず、例えば0.1〜200MPaでもよい。このように柔軟性を付与することにより、振動衝撃吸収による緩衝効果を高めることができる。ここで、25℃の貯蔵弾性率は、JIS K7244−4で定められた方法(引張振動非共振法、周波数10Hz)により測定される。
【0020】
ウレタン樹脂のより具体的な構成は特に限定されない。例えば、ウレタン樹脂の原料として用いられるポリイソシアネートおよびポリオールとしては、公知のものを適宜選択して用いることができる。例えば、ポリイソシアネートとしては、代表的には、イソシアネート基を2以上有する芳香族、脂環式、または脂肪族のポリイソシアネート、もしくはこれらを変性した変性ポリイソシアネート等が挙げられる。これらポリイソシアネートはプレポリマーであってもよい。また、ポリオールとしては、代表的には、ポリエーテル系ポリオール、ポリエステル系ポリオール、多価アルコール、水酸基含有ジエン系ポリマー等を挙げることができる。これらポリイソシアネートまたはポリオールは、1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を適宜組み合わせて用いてもよい。また、ポリイソシアネートおよびポリオールの樹脂化反応を促進させる触媒を用いてもよい。触媒としては、例えば、アミン触媒、金属化合物系触媒、イソシアヌレート化触媒などを挙げることができる。これら触媒も、1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0021】
絶縁性シートを構成する樹脂組成物は、樹脂成分以外に少なくとも無機充填剤を含有する。無機充填剤は、絶縁性シートの難燃性または放熱性に寄与することができる。具体的な無機充填剤としては、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム等の二価もしくは三価の金属水酸化物; 硫酸カルシウム水和物、硫酸マグネシウム水和物等の二価の金属硫酸塩水和物; ホウ酸亜鉛、スズ酸亜鉛等の亜鉛のオキソ酸塩; シリカ; アルミナ; ドーソナイト; 炭酸水素ナトリウムなどを挙げることができる。これら無機充填剤は1種類のみが用いられてもよいし2種類以上が適宜選択されて用いられてもよい。
【0022】
本実施形態に係る絶縁性シートにおいては、前述した無機充填剤の中でも、特に二価もしくは三価の金属水酸化物、例えば、水酸化アルミニウムまたは水酸化マグネシウムなどが好ましく用いられる。二価もしくは三価の金属水酸化物は、加熱により水が発生するため、絶縁性シートに対して良好な難燃性を付与することが可能になるとともに、放熱性も良好なものとすることができる。
【0023】
また、無機充填剤としては、硫酸カルシウム水和物、硫酸マグネシウム水和物等の二価の金属硫酸塩水和物も好ましく用いることができる。二価の金属硫酸塩水和物は、二価もしくは三価の金属水酸化物と同様に加熱により水を発生する。あるいは、無機充填剤としては、炭酸水素ナトリウムも好ましく用いることができる。炭酸水素ナトリウムも加熱により水を生成する。さらには、二価もしくは三価の金属水酸化物に対して炭酸水素ナトリウムを併用してもよい。炭酸水素ナトリウムは、水酸化アルミニウムまたは水酸化マグネシウムよりも相対的に安価である。そこで、これらを組み合わせて用いることで、良好な難燃性および放熱性を実現しつつ絶縁性シートの製造コストの増加を低減することができる。
【0024】
一実施形態において、樹脂組成物は、樹脂成分がウレタン樹脂であり、無機充填剤が二価もしくは三価の金属水酸化物であることが好ましい。
【0025】
無機充填剤は、粉末として樹脂成分に配合されればよい。無機充填剤の平均粒径は特に限定されないが、一般的には、0.5〜40μmの範囲内であればよく、2〜20μmの範囲内がより好ましい。また、無機充填剤の粉末の形状も特に限定されず、球状、フレーク状(鱗片状)、針状、不定形状などの各種の形状を採用することができる。ここで、平均粒径(D50)は、公知のレーザー回折法による粒度分析から求めることができる。
【0026】
絶縁性シートを構成する樹脂組成物には、樹脂成分および無機充填剤以外に、公知の添加剤が含有されてもよい。添加剤としては、例えば、発泡剤、整泡剤、安定剤、着色剤、難燃剤、可塑剤などを挙げることができるが、特に限定されない。
【0027】
絶縁性シートに難燃性を付与するために、樹脂組成物に難燃剤を含有させてもよい。難燃剤としては、特に限定されないが、例えば、リン系難燃剤、ハロゲン系難燃剤、メラミン系難燃剤などを挙げることができる。リン系難燃剤としては、トリス(2−クロロエチル)フォスフェート、トリス(2,3−ジブロモプロピル)フォスフェートなどのハロゲン含有リン酸エステル;トリメチルフォスフェート、トリクレジルフォスフェート、トリスキシレニルフォスフェート、トリフェニルフォスフェートなどのノンハロゲンリン酸エステル;ポリリン酸アンモニウム;等を挙げることができる。また、ハロゲン系難燃剤としては、デカブロモジフェニルエーテル、ペンタブロモジフェニルエーテル、ヘキサブロモシクロドデカン、テトラブロモビスフェノールA、ヘキサブロモベンゼンなどを挙げることができる。また、メラミン系難燃剤としては、メラミンシアヌレートなどを挙げることができる。さらに、三酸化アンチモンなどのアンチモン化合物も難燃剤として用いることができる。アンチモン化合物はハロゲン系難燃剤と併用することで難燃性をより向上することができる。
【0028】
絶縁性シートを構成する樹脂組成物の具体的な組成は特に限定されない。例えば、無機充填剤の含有量は特に限定されないが、得られる絶縁性シートの難燃性を考慮すれば、樹脂組成物の全量(全樹脂組成物)を100質量%としたときに、無機充填剤の含有量(含有率)は30〜95質量%の範囲内であることが好ましく、より好ましくは45〜70質量%の範囲内であり、50〜70質量%の範囲内でもよい。無機充填剤の含有量が30質量%以上であることにより、無機充填剤または樹脂成分の種類にもよるが、絶縁性シートに良好な難燃性または放熱性を付与しやすくなる。もちろん、求められる絶縁性シートの性質に応じて無機充填剤の含有量は適宜設定することができ、前記の範囲内に特に限定されない。
【0029】
絶縁性シートには、繊維強化材が埋設されてもよい。繊維強化材を埋設して樹脂組成物と繊維強化材とを構造的に複合化することにより、絶縁性シートの強度を向上することができ、組電池の製造時における破損や電池セルの膨張変形時における破損が起こりにくいという効果が得られる。
【0030】
繊維強化材としては、ガラス繊維、ポリエステルやアラミド等の合成繊維が挙げられ、絶縁材料からなる繊維が好ましく用いられる。より詳細には、ガラスロービングなどのガラス繊維からなるガラス繊維基材、ポリエステル糸からなるポリエステル繊維基材などが挙げられる。繊維強化材の形状、即ち、例えばガラス繊維基材やポリエステル繊維基材等の基材形状は、特に限定されず、織物、編物、又は不織布でもよく、更には糸を所定の間隔で平行に引き揃えたものでもよい。
【0031】
図1は、樹脂組成物12に繊維強化材14を埋設した絶縁性シート10の一例を示す平面図であり、図2は、その断面図である。この絶縁性シート10は矩形平面状をなし、ガラス繊維や合成繊維等からなる糸を所定の間隔で平行に引き揃えてなる繊維強化材14が埋設されている。
【0032】
絶縁性シートに繊維強化材を埋設させる方法としては、公知の繊維強化プラスチック(FRP)の成形方法を利用することができ、例えば、引抜成形法、シートワインディング法、ピンワインディング法、フィラメントワインディグ法、SMC法、ハンドレイアップ法などが挙げられる。そのうち、引抜成形は、繊維強化材に樹脂を含浸させて金型に引き込み、金型内で所定の断面形状に硬化させ、引き抜き装置で引き抜く方法であり、本実施形態において好適に用いることができる。
【0033】
絶縁性シートにおける繊維強化材の占める比率は、特に限定されず、例えば、繊維体積占有率Vfが20〜60%でもよく、30〜60%でもよい。繊維体積占有率Vfが20%以上であることにより、強度向上効果を高めることができる。また60%以下であることにより、樹脂組成物の占有率を確保して、それによる絶縁性や放熱性の効果を有利に発揮することができる。ここで、繊維体積占有率Vfとは、絶縁性シートの全体積を100%としたときの繊維強化材の占める体積の比率である。
【0034】
また、絶縁性シートにおける繊維強化材の含有率は、特に限定されず、例えば、絶縁性シート全体の質量を100質量%として、25〜65質量%でもよく、35〜65質量%でもよい。
【0035】
絶縁性シートの絶縁性は特に限定されないが、例えば、体積抵抗率が1×10Ω・cm以上であることが望ましい。ここで、体積抵抗率は、JIS K6911に定められた絶縁抵抗計と方法で測定することができる。
【0036】
絶縁性シートは、隣接する電池セル間の対向する平面部の間に挟まれる平面状のシートである。絶縁性シートの厚さ(T0)は(図2参照)、特に限定されない。組電池を構成したときに、隣接する電池セル間で類焼などの熱連鎖を抑制するように、所定の間隔が確保されることが好ましい。絶縁性シートの厚さは、例えば、0.5mm以上であることが好ましく、0.5〜4.0mmの範囲内でもよく、0.8〜3.0mmの範囲内でもよい。絶縁性シートの厚さが0.5mm以上であることにより、絶縁性シートの強度を確保しやすく、また熱連鎖の抑制効果を高めることができる。また、厚さが4.0mm以下であることにより、組電池の質量増加を抑えることができ、組電池のエネルギー密度の低下を抑制することができる。
【0037】
次に、上記絶縁性シートを用いた組電池について説明する。実施形態に係る組電池は、平面部を持つ複数の電池セルと、上記絶縁性シートとを備え、平面部同士が対向配置された複数の電池セルの少なくとも1つの対向配置部に絶縁性シートが挟み込まれたものである。
【0038】
電池セルの種類は特に限定されず、公知のさまざまな電池を挙げることができる。具体的には、例えば、リチウムイオン電池、ニッケルカドミウム電池、ニッケル水素電池などの二次電池を挙げることができる。これらの中でも、電池セルとしては、リチウムイオン電池が特に好ましい。
【0039】
電池セルとしては、平面部を持つものが用いられ、例えば、ラミネート型電池セルとも称される板状電池セルでもよく、角型(四角柱型または直方体型)電池セルでもよい。複数の電池セルの平面部同士を対向配置させて組電池を構成することができるように、各電池セルは、複数の平面部を持つことが好ましい。
【0040】
電池セルの一例として、ラミネート型電池セルについて説明する。図3は、ラミネート型のリチウムイオン電池セル20の一例を示したものである。ラミネート型のリチウムイオン電池セルは、正極、負極およびこれらの間に配置される分離膜からなる電極組立体(電池素子ともいう。)を、ラミネートフィルム内に収容してなるものであり、公知のものを用いることができる。
【0041】
図3に示す電池セル20は、矩形板状をなす電極組立体22と、ラミネートフィルム24とを備える。ラミネートフィルム24は、金属層の両面を樹脂層で被覆してなる2枚の矩形状シート24a,24aの周縁部26同士を熱融着することにより、その内部に電極組立体22を収容するように構成されている。詳細には、ラミネートフィルム24には電極組立体22を収容するための凹所25が予め賦型されており、この凹所25に電極組立体22を入れて周縁部26を熱融着することにより電池セル20が形成されており、電極組立体22を収容した凹所25の部分が矩形板状のセル本体21を構成している。
【0042】
なお、図3に示す例では、ラミネートフィルム24を構成する表裏2枚の矩形状シート24a,24aのそれぞれに凹所25を賦型しており、両者を重ね合わせることにより2つの凹所25で電極組立体22を収容する空間を形成している。これに代えて、いずれか一方の矩形状シート24aのみに凹所25を賦型しておき、もう一方の矩形状シート24aはフラットなシートとして、両者を重ね合わせることにより一方の凹所25ともう一方のフラットな面との間で電極組立体22を収容する空間を形成するようにしてもよい。
【0043】
電極組立体22には、正極タブおよび負極タブにそれぞれ電気的に連結された正極端子28および負極端子30が設けられており、これら正極端子28および負極端子30がラミネートフィルム24から外部に引き出されている。この例では、正極端子28と負極端子30は矩形状をなすラミネートフィルム24の同一辺から引き出されている。なお、正極端子28および負極端子30の上下両面には、ポリプロピレン製の絶縁フィルム32が設けられている。
【0044】
図3に示す電池セル20では、矩形板状をなすセル本体21の表裏両面が平面部34,34となっている。すなわち、この例では、平面部34は矩形状をなして電池セル20の表裏両面に設けられている。
【0045】
図4に示すように、複数の電池セル20を、その平面部34同士が対向配置されるように重ね合わせて積層すること、即ち矩形板状をなすセル本体21を積層することにより、組電池50が構成されている。この例では、4つの電池セル20を積層しているが、電池セル20の個数は特に限定されない。
【0046】
図4および図5に示すように、絶縁性シート10は、対向配置された平面部34,34間、即ち隣接する電池セル20,20間の対向する平面部34,34の間に挟み込まれている。この例では、互いに隣接する全ての電池セル20,20間に絶縁性シート10が設けられており、そのため、電池セル20と絶縁性シート10が交互に積層されている。なお、絶縁性シート10は、平面部34同士が対向配置された複数の電池セル20の少なくとも1つの対向配置部36に設けられてもよい。ここで、対向配置部36とは、隣接する電池セル20,20間で平面部34,34同士が対向配置された部分である。3つ以上の電池セル20を積層した場合、2つ以上の対向配置部36が存在するので、そのうちの少なくとも1つの対向配置部36に絶縁性シート10が挟み込まれていればよい。
【0047】
絶縁性シート10は、電池セル20の平面部34の全体(すなわち、セル本体21の全体)を覆う大きさに形成されていることが好ましい。この例では、図4図6に示すように、ラミネートフィルム24の周縁部26を含む電池セル20の全体を覆う大きさに形成されている。
【0048】
なお、絶縁性シート10が糸を平行に引き揃えた基材からなる繊維強化材14を含む場合、図1に示すように、繊維強化材14の糸は、電池セル20のセル本体21の長手方向、即ち矩形状をなす絶縁性シート10の長手方向に平行に引き揃えられていることが好ましい。すなわち、絶縁性シート10における糸の配向方向は当該シート10の長手方向と一致していることが好ましい。但し、糸の配向方向が絶縁性シート10の長手方向と垂直になるように配置してもよく、これら以外の方向に配置してもよい。繊維強化材としては、上記のとおり、織物、編物又は不織布を用いることもでき、織物の場合、例えば、経糸の方向を絶縁性シートの長手方向と一致させてもよく、緯糸の方向を絶縁性シートの長手方向と一致させてもよい。また、編物の場合、例えば、コース方向を絶縁性シートの長手方向と一致させてもよく、ウェール方向を絶縁性シートの長手方向と一致させてもよい。
【0049】
絶縁性シートを介在させて電池セルを積層する場合、電池セルと絶縁性シートとは接着剤を介して固定してもよく、両面テープを用いて固定してもよく、あるいはまた、固定せずに積層した後にその外周にテープを巻くなど、保持手段を用いて複数の電池セルを積層状態に固定してもよい。
【0050】
なお、組電池において、複数の電池セルは直列に接続されてもよく、並列に接続されてもよく、特に限定されない。また、これら複数の電池セルを電気的に接続するための電気接続部材を設けてもよい。その他、公知の電池パックなどの組電池を構成する種々の構成部材を含んでもよい。
【0051】
本実施形態によれば、無機充填剤を含む樹脂組成物により予め絶縁性シートを作製しておき、該絶縁性シートを電池セル間に挟み込むようにしたので、樹脂ポッティングのように組電池の組み立て時に樹脂を硬化させる必要がない。また、液状の樹脂がデッドスペースに入り込むことがないため、最低限の質量増加で組電池を構成することができる。また、絶縁性シートの作製時に厚みを容易に制御できるため、液状のポッティング材を使用するよりも電池セル間の寸法精度が高いものとなる。更に、絶縁性シートを電池セル間に挟み込むだけなので、検査も容易である。
【0052】
本実施形態であると、また、無機充填剤を含有する樹脂組成物により形成された絶縁性シートを電池セル間に挟み込んだことにより、電池セルからの熱を良好に放散することができる。そのため、いずれかの電池セルで異常が生じ、発火等により高温になっても、絶縁性シートにより類焼を防止することができる。また、無機充填剤を含有させることにより、炎に当たって高温になっても樹脂組成物が流動しにくい。そのため、組電池の安全性を向上することができる。
【0053】
また、絶縁性シートに繊維強化材を埋設し複合化することにより、絶縁性シートの強度が向上するので、製造時や異常時における破断を抑制することができる。
【実施例】
【0054】
以下、実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されない。なお、耐類焼試験は次に示すようにして実施した。
【0055】
(耐類焼試験)
電池セルとして、社内で作製した周縁部26を含む寸法が縦140mm、横55mm、厚み4.5mm、セル容量3Ahのラミネート型のリチウムイオン電池セルを使用した。この電池セル4枚のうち最下面に配置する電池セル外層に、(株)八光電機製シリコンラバーヒーター(SBH2012、25×50mm)を設置した。その後、各電池セル間に絶縁性シートを配置し、絶縁性シートを配置した組電池を作製した。
シリコンラバーヒーターに100Vの電圧を印加し200℃以上に加熱した。このヒーターの接する電池を熱源電池とし、熱源電池に隣接する電池を隣接電池として、25℃環境下において隣接電池の温度を測定しながら、熱源電池から他の電池に類焼が発生するか否かを確認した。
【0056】
(実施例1〜3)
樹脂成分としてウレタン樹脂(商品名:エイムフレックスEF−243、第一工業製薬株式会社製)、並びに、無機充填剤として水酸化アルミニウム(住友化学株式会社製 C−310)を用い、無機充填剤の含有量が65質量%の樹脂組成物を調製した。また、繊維強化材として、ガラスロービング(ダイソーケミカル株式会社製、マルチエンドロービング、品番「ER550E−2400」)からなるガラス繊維基材を用いた。
【0057】
樹脂組成物と繊維強化材を用いて、引抜成形により、厚さが3.0mm(実施例1)、2.0mm(実施例2)および1.0mm(実施例3)の3種類の絶縁性シートを作製した(速度6cm/分、加熱温度130℃)。該絶縁性シートは、図1,2に示すように、ガラスロービングを平行に引き揃えてなる繊維強化材を埋設した構造を有するものである。ガラスロービングの引き揃え間隔は、実施例1では幅10mmあたり15本、実施例2では幅10mmあたり10本、実施例3では幅10mmあたり6本となるように設定した。
【0058】
絶縁性シートにおける繊維強化材の占める比率である繊維体積占有率Vfは、下記表1に示す通りである。また、絶縁性シートの体積抵抗率は、下記表1に示す通りである。
【0059】
実施例1〜3の絶縁性シートをそれぞれ電池セル間に1枚ずつ挟み込み、耐類焼試験を実施した。隣接する電池セル間の距離は、実施例1では3.0mm、実施例2では2.0mm、実施例3では1.0mmとなる。耐類焼試験の結果(隣接電池の温度、類焼の評価、および試験後の絶縁性シートの状態)を表1に示す。
【0060】
(実施例4〜6)
実施例1〜3と同様の樹脂組成物を使用し、繊維強化材として、ポリエステル糸(グンゼ株式会社製、グンゼステッチ、品番「K5」)からなるポリエステル繊維基材を用いた。実施例1〜3と同様にして、厚さが3.0mm(実施例4)、2.0mm(実施例5)および1.0mm(実施例6)の3種類の厚さの絶縁性シートを作製した。ポリエステル繊維基材は、上記ポリエステル糸を複数本撚り合わせた糸を平行に引き揃えてなるものであり、その引き揃え間隔は、上記ポリエステル糸(即ち、撚り合わせる前の糸)の本数で、実施例4では幅10mmあたり88本、実施例5では幅10mmあたり58本、実施例6では幅10mmあたり37本となるように設定した。実施例4〜6の絶縁性シートを用いて、実施例1〜3と同様に耐類焼試験を実施した。その結果を表1に示す。
【0061】
(実施例7〜9)
繊維強化材を用いることなく、その他は実施例1〜3と同様にして、厚さが3.0mm(実施例7)、2.0mm(実施例8)および1.0mm(実施例9)の3種類の絶縁性シートを作製し、耐類焼試験を実施した。その結果を表1に示す。
【0062】
(実施例10〜12)
無機充填剤として水酸化マグネシウム(神島化学工業株式会社製、スターマグA)を用いた以外は実施例1〜3と同様にして、厚さが3.0mm(実施例10)、2.0mm(実施例11)および1.0mm(実施例12)の3種類の厚さの絶縁性シートを作製し、耐類焼試験を実施した。その結果を表1に示す。
【0063】
(実施例13〜15)
繊維強化材を用いることなく、その他は実施例10〜12と同様にして、厚さが3.0mm(実施例13)、2.0mm(実施例14)および1.0mm(実施例15)の3種類の絶縁性シートを作製し、耐類焼試験を実施した。その結果を表1に示す。
【0064】
(実施例16〜18)
無機充填剤として炭酸水素ナトリウム(株式会社トクヤマ製 工業用途品Pグレード)を用いた以外は実施例1〜3と同様にして、厚さが3.0mm(実施例16)、2.0mm(実施例17)および1.0mm(実施例18)の3種類の厚さの絶縁性シートを作製し、耐類焼試験を実施した。その結果を表1に示す。
【0065】
(実施例19〜21)
無機充填剤として炭酸水素ナトリウム(株式会社トクヤマ製 工業用途品Pグレード)を用いた以外は実施例4〜6と同様にして、厚さが3.0mm(実施例19)、2.0mm(実施例20)および1.0mm(実施例21)の3種類の厚さの絶縁性シートを作製し、耐類焼試験を実施した。その結果を表1に示す。
【0066】
(実施例22〜24)
繊維強化材を用いることなく、その他は実施例16〜18と同様にして、厚さが3.0mm(実施例22)、2.0mm(実施例23)および1.0mm(実施例24)の3種類の絶縁性シートを作製し、耐類焼試験を実施した。その結果を表1に示す。
【0067】
(実施例25〜27)
無機充填剤として硫酸マグネシウム水和物(馬居化成工業株式会社製、精製硫酸マグネシウム結晶(7水塩)工業用TC)を用いた。使用前にボールミルにて平均粒径(D50)が40μmとなるように粉砕した。それ以外は実施例1〜3と同様にして、厚さが3.0mm(実施例25)、2.0mm(実施例26)および1.0mm(実施例27)の3種類の厚さの絶縁性シートを作製し、耐類焼試験を実施した。その結果を表1に示す。
【0068】
(実施例28〜30)
無機充填剤として、水酸化アルミニウム(住友化学株式会社製 C−310)および炭酸水素ナトリウム(株式会社トクヤマ製 工業用途品Pグレード)を1:1(質量比)で混合したものを用いた以外は実施例1〜3と同様にして、厚さが3.0mm(実施例28)、2.0mm(実施例29)および1.0mm(実施例30)の3種類の厚さの絶縁性シートを作製し、耐類焼試験を実施した。その結果を表1に示す。
【0069】
(実施例31〜33)
無機充填剤として、水酸化マグネシウム(神島化学工業株式会社製、スターマグA)および炭酸水素ナトリウム(株式会社トクヤマ製、工業用途品Pグレード)を1:1(質量比)で混合したものを用いた以外は実施例1〜3と同様にして、厚さが3.0mm(実施例31)、2.0mm(実施例32)および1.0mm(実施例33)の3種類の厚さの絶縁性シートを作製し、耐類焼試験を実施した。その結果を表1に示す。
【0070】
(実施例34〜36)
実施例3と同様の樹脂成分および無機充填剤を使用し、無機充填剤の含有量が45質量%、55質量%、75質量%の樹脂組成物を調製した。繊維強化材として、実施例3と同様のガラスロービング(ダイソーケミカル株式会社製、マルチエンドロービング、品番「ER550E−2400」)からなるガラス繊維基材を用いた。実施例3と同様に加工し、厚み1.0mmで無機充填剤含有量が45質量%(実施例34)、50質量%(実施例35)、75質量%(実施例36)の3種類の絶縁性シートを作製し、耐類焼試験を実施した。結果を表1に示す。
【0071】
(比較例1〜3)
樹脂組成物に無機充填剤を配合しなかった(すなわちウレタン樹脂のみを用いた)以外は実施例1〜3と同様にして、厚さが3.0mm(比較例1)、2.0mm(比較例2)および1.0mm(比較例3)の3種類の厚さの絶縁性シートを作製し、耐類焼試験を実施した。その結果を表1に示す。
【0072】
(比較例4〜6)
繊維強化材を用いることなく、その他は比較例1〜3と同様にして、厚さが3.0mm(比較例4)、2.0mm(比較例5)および1.0mm(比較例6)の3種類の絶縁性シートを作製し、耐類焼試験を実施した。その結果を表1に示す。
【0073】
【表1】
【0074】
表1に示されるように、実施例に係る絶縁性シートであると、耐類焼試験において類焼が発生せず、良好な難燃性および放熱性を実現できることがわかる。また、繊維強化材を埋設したことにより、耐類焼試験において絶縁性シートが破断しにくいことが分かる。これに対し、比較例に係る絶縁性シートでは、無機充填剤を含有しないため、良好な難燃性および放熱性が実現できず、類焼が発生した。なお、比較例1の厚さ3.0mmの絶縁性シートでは、類焼は生じなかったものの、樹脂の溶融流動が生じた。このことから、絶縁性シートに無機充填剤を含有させることにより、炎に当たって高温になっても樹脂が流動しにくくなることが分かる。
【0075】
以上のように本実施形態によれば、絶縁性シートを電池セル間に挟み込むことにより組電池を製造することができ、液状のポッティング材を充填するよりも電池セル同士の間隔の精度を向上することができる。また、液状のポッティング材を用いる必要がないので、ポッティング材が気泡を含んだり不要な箇所に流れ込んだりしないようにするための対応が不要となる。しかも、液状のポッティング材を硬化させることもないので、成形型または加熱手段(あるいはポッティング材が2液混合型であれば混合手段)等の設備が不要であるとともに、硬化時間も不要となる。また、ポッティング材を充填するよりも樹脂の量を低減することができるので、組電池の軽量化を図ることができる。
【0076】
また、絶縁性シートは樹脂製で無機充填剤を含有するので、電池セルからの熱を良好に放散できるだけでなく、電池セルからの熱を密接する絶縁性シート全体に分散することもできる。そのため、隣接する電池セルへの類焼を防止することができる。また、無機充填剤を含有することにより、樹脂の流動を抑制することができ、組電池の安全性を向上することができる。
【0077】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これら実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその省略、置き換え、変更などは、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明の実施形態は、モバイル機器電源のみならず、電動自転車、電動車椅子、ロボット、電動自動車、非常用電源および大容量定置電源として搭載される中型もしくは大型電池の安全性向上に有用であり、様々な電池に利用することができる。
【符号の説明】
【0079】
10…絶縁性シート、12…樹脂組成物、14…繊維強化材、20…電池セル、34…平面部、36…対向配置部、50…組電池
図1
図2
図3
図4
図5
図6