【文献】
ZHAO, Robert Yongxin et al.,Journal of Medicinal Chemistry,2012年,Vol.55,pp.766-782
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
酵素基質が、リン酸基、エステル基、アミド基、硫酸基、グリコシド基、尿素基及びニトロ基からなる群より選択される、請求項1に記載のケージドハプテン−抗体コンジュゲート。
ケージドハプテン−抗体コンジュゲートのケージドハプテン部分が、DCC、ビオチン、ニトロピラゾール、チアゾールスルホンアミド、ベンゾフラザン、及び2−ヒドロキシキノキサリンからなる群より選択されるハプテンに由来する、請求項7に記載の方法。
非マスキング酵素−抗体コンジュゲートの非マスキング酵素が、アルカリホスファターゼ、B−グルコシダーゼ、B−ガラクトシダーゼ、B−グルクロニダーゼ、リパーゼ、スルファターゼ、アミダーゼ、プロテアーゼ、ニトロレダクターゼ、ベータ−ラクタマーゼ&ノイラミニダーゼ、及びウレアーゼからなる群より選択される、請求項7に記載の方法。
第一の検出試薬が(i)第一の標的−非マスク化ハプテン−抗体複合体を第一の酵素で標識するように第一の酵素にコンジュゲートしている二次抗体であって、第一の標的−非マスク化ハプテン−抗体複合体の非マスク化ハプテンに特異的な二次抗体;及び(ii)第一の発色性基質又は蛍光性基質を含む、請求項7に記載の方法。
第一の発色性基質が、3,3’−ジアミノベンジジン(DAB)、3−アミノ−9−エチルカルバゾール(AEC)、HRP−Silver、及びチラミド−色素原からなる群より選択される、請求項10に記載の方法。
試料を第二の標的−非マスキング酵素−抗体コンジュゲート複合体の非マスキング酵素に特異的な第二の発色性基質又は蛍光性基質と接触させることをさらに含み、第一の発色性基質と第二の発色性基質が異なる、請求項13に記載の方法。
第一の標的が第二の標的に近接しているかを決定するために試料を分析するためのキットであって、請求項1〜6のいずれか一項に記載のケージドハプテン−抗体コンジュゲート及び第二の標的に特異的な非マスキング酵素−抗体コンジュゲートを含み、
(a)試料が、前記第一の標的に特異的なケージドハプテン−抗体コンジュゲートと接触させられ、第一の標的−ケージドハプテン−抗体コンジュゲート複合体が形成され;
(b)試料が、前記第二の標的に特異的な非マスキング酵素−抗体コンジュゲートと接触させられ、第二の標的−非マスキング酵素−抗体コンジュゲート複合体が形成され、ここで、非マスキング酵素−抗体コンジュゲートの非マスキング酵素がケージドハプテン−抗体コンジュゲートの酵素基質部分と反応することができるように選択され、第一の標的−非マスク化ハプテン−抗体コンジュゲート複合体が形成され;
(c)試料が、第一の検出試薬と接触させられ、第一の標的−非マスク化ハプテン−抗体コンジュゲート複合体又は第一の標的が標識され;及び
(d)標識された第一の標的−非マスク化ハプテン−抗体コンジュゲート複合体又は標識された第一の標的が検出される、キット。
【発明の概要】
【0008】
出願人は、試料中に近接して位置する標的を検出する優れた方法を開発した。本開示の一態様は、第一の標的が第二の標的に近接しているかを決定するために試料を分析するための方法であって、(a)第二の標的−非マスキング酵素−抗体コンジュゲート複合体を形成すること;(b)第一の標的−ケージドハプテン−抗体コンジュゲート複合体を形成すること;(c)第一の標的−ケージドハプテン−抗体コンジュゲート複合体のケージドハプテンを非マスク化し、第一の標的−非マスク化ハプテン−抗体コンジュゲート複合体を形成すること;(d)試料を第一の検出試薬と接触させ、第一の標的−非マスク化ハプテン−抗体コンジュゲート複合体又は第一の標的を標識すること;及び(e)標識された第一の標的−非マスク化ハプテン−抗体コンジュゲート複合体又は標識された第一の標的を検出することを含む方法である。
【0009】
いくつかの実施態様では、第一の検出試薬は(i)第一の標的−非マスク化ハプテン−抗体複合体を第一の酵素で標識するように第一の酵素にコンジュゲートしている、第一の標的−非マスク化ハプテン−抗体複合体の非マスク化ハプテンに特異的な二次抗体;及び(ii)第一の酵素の第一の基質を含む。いくつかの実施態様では、第一の基質は発色性基質又は蛍光性基質である。いくつかの実施態様では、第一の検出試薬は、第一の標的−非マスク化ハプテン−抗体コンジュゲート複合体の非マスク化酵素を複数の第一のレポーター部分で標識するための増幅成分を含む。いくつかの実施態様では、複数の第一のレポーター部分はハプテンである。いくつかの実施態様では、第一の検出試薬は、それぞれ第二のレポーター部分にコンジュゲートしている、複数の第一のレポーター部分に特異的な二次抗体をさらに含む。いくつかの実施態様では、第二のレポーター部分は増幅酵素又はフルオロフォアからなる群より選択される。いくつかの実施態様では、第二のレポーター部分は増幅酵素であり、第一の検出試薬は増幅酵素の第一の発色性基質又は蛍光性基質をさらに含む。いくつかの実施態様では、該方法は、試料を第二の標的−非マスキング酵素−抗体コンジュゲート複合体の非マスキング酵素に特異的な第二の基質と接触させることと、第二の基質と非マスキング酵素との間の反応の生成物に相当するシグナルを検出することとをさらに含む。
【0010】
本開示の別の態様は、第一の標的が第二の標的に近接しているかを決定するために試料を分析するための方法であって、(a)第二の標的−非マスキング酵素−抗体コンジュゲート複合体を形成すること;(b)第一の標的−ケージドハプテン−抗体コンジュゲート複合体を形成すること;(c)第一の標的−ケージドハプテン−抗体コンジュゲート複合体のケージドハプテンを非マスク化し、第一の標的−非マスク化ハプテン−抗体コンジュゲート複合体を形成すること;(d)シグナル増幅工程を実施し、第一の標的−非マスク化ハプテン−抗体コンジュゲート複合体を複数のレポーター部分で標識すること;及び(e)複数のレポーター部分を検出することを含む方法である。
【0011】
いくつかの実施態様では、複数のレポーター部分はハプテンであり、それぞれ第二のレポーター部分にコンジュゲートしている、複数の第一のレポーター部分に特異的な二次抗体を導入することをさらに含む。いくつかの実施態様では、第二のレポーター部分は増幅酵素であり、該方法は、増幅酵素の第一の発色性基質又は蛍光性基質を導入することをさらに含む。いくつかの実施態様では、該方法は、試料中の標的の総量を検出することをさらに含む。
【0012】
本開示の別の態様は、第一の標的が第二の標的に近接しているかを決定するために試料を分析するための方法であって、(a)第二の標的−非マスキング酵素−抗体コンジュゲート複合体を形成すること;(b)第一の標的−ケージドハプテン−抗体コンジュゲート複合体を形成すること;(c)第二の標的−非マスキング酵素−抗体コンジュゲート複合体の非マスキング酵素が第一の標的−ケージドハプテン−抗体コンジュゲート複合体の酵素基質部分と反応するように、脱ケージ化工程を実施し、第一の標的−非マスク化ハプテン−抗体コンジュゲート複合体を形成すること;(d)試料を第一の検出試薬と接触させ、第一の標的−非マスク化ハプテン−抗体コンジュゲート複合体又は第一の標的を標識すること;及び(e)標識された第一の標的−非マスク化ハプテン−抗体コンジュゲート複合体又は標識された第一の標的を検出することを含む方法である。
【0013】
いくつかの実施態様では、ケージ化工程は試料の温度を変化させることを含む。いくつかの実施態様では、脱ケージ化工程は試料のpHを変更することを含む。いくつかの実施態様では、脱ケージ化工程が一又は複数の洗浄工程を導入することを含む。いくつかの実施態様では、脱ケージ化工程は非マスキング酵素の補助因子を添加することを含む。いくつかの実施態様では、該方法は、試料中の標的の総量を検出することをさらに含む。
【0014】
本開示の別の態様は、第一の標的が第二の標的に近接しているかを決定するために試料を分析するための方法であって、(a)試料を第一の標的に特異的なケージドハプテン−抗体コンジュゲートと接触させ、第一の標的−ケージドハプテン−抗体コンジュゲート複合体を形成すること;(b)試料を第二の標的に特異的な非マスキング酵素−抗体コンジュゲートと接触させ、第二の標的−非マスキング酵素−抗体コンジュゲート複合体を形成することであって、非マスキング酵素−抗体コンジュゲートの非マスキング酵素がケージドハプテン−抗体コンジュゲートの酵素基質部分と反応することができるように選択され、第一の標的−非マスク化ハプテン−抗体コンジュゲート複合体を形成すること;(c)試料を第一の検出試薬と接触させ、第一の標的−非マスク化ハプテン−抗体コンジュゲート複合体又は第一の標的を標識すること;及び(d)標識された第一の標的−非マスク化ハプテン−抗体コンジュゲート複合体又は標識された第一の標的を検出することを含む方法である。
【0015】
いくつかの実施態様では、ケージドハプテン−抗体コンジュゲートのケージドハプテン部分は、DCC、ビオチン、ニトロピラゾール、チアゾールスルホンアミド、ベンゾフラザン、及び2−ヒドロキシキノキサリンからなる群より選択されるハプテンに由来する。いくつかの実施態様では、非マスキング酵素−抗体コンジュゲートの非マスキング酵素は、アルカリホスファターゼ、B−グルコシダーゼ、B−ガラクトシダーゼ、B−グルクロニダーゼ、リパーゼ、スルファターゼ、アミダーゼ、プロテアーゼ、ニトロレダクターゼ、ベータ−ラクタマーゼ&ノイラミニダーゼ、及びウレアーゼからなる群より選択される。いくつかの実施態様では、第一の検出試薬は(i)第一の標的−非マスク化ハプテン−抗体複合体を第一の酵素で標識化するように第一の酵素にコンジュゲートしている、第一の標的−非マスク化ハプテン−抗体複合体の非マスク化ハプテンに特異的な二次抗体;及び(ii)第一の発色性基質又は蛍光性基質を含む。いくつかの実施態様では、第一の酵素は非マスキング酵素とは異なる。いくつかの実施態様では、第一の酵素はペルオキシダーゼである。いくつかの実施態様では、第一の発色性基質は、3,3’−ジアミノベンジジン(DAB)、3−アミノ−9−エチルカルバゾール(AEC)、HRP−Silver、及びチラミド−色素原からなる群より選択される。いくつかの実施態様では、該方法は、試料を第二の標的−非マスキング酵素−抗体コンジュゲート複合体の非マスキング酵素に特異的な第二の発色性基質又は蛍光性基質と接触させることをさらに含む。いくつかの実施態様では、第一の検出試薬は、第一の標的−非マスク化ハプテン−抗体コンジュゲート複合体に導入される標識の数を増幅させるための成分を含む。いくつかの実施態様では、第一の標的はPD−1又はPD−L1の一方であり、第二の標的はPD−1又はPD−L1のもう一方である。
【0016】
本開示の別の態様は、第一の標的が第二の標的に近接しているかを決定するために試料を分析するための方法であって、(a)試料をケージドハプテン−抗体コンジュゲート又は非マスキング酵素−抗体コンジュゲートの一方を含む第一の検出プローブと接触させること;(b)試料をケージドハプテン−抗体コンジュゲート又は非マスキング酵素−抗体コンジュゲートのもう一方を含む第二の検出プローブと接触させること;(c)試料を少なくとも第一の検出試薬と接触させ、形成された非マスク化ハプテン−抗体コンジュゲート標的複合体を標識すること;(d)標識された非マスク化ハプテン−抗体コンジュゲートからシグナルを検出することを含む方法である。
【0017】
いくつかの実施態様では、該方法は、試料中の標的の総量を検出することをさらに含む。いくつかの実施態様では、第一の検出試薬は、第一の標的−非マスク化ハプテン−抗体コンジュゲート複合体の非マスク化酵素を複数の第一のレポーター部分で標識するための増幅成分を含む、請求項1に記載の方法。いくつかの実施態様では、複数の第一のレポーター部分はハプテンである。いくつかの実施態様では、第一の検出試薬は、それぞれ第二のレポーター部分にコンジュゲートしている、複数の第一のレポーター部分に特異的な二次抗体をさらに含む。いくつかの実施態様では、第二のレポーター部分は増幅酵素又はフルオロフォアからなる群より選択される。いくつかの実施態様では、第二のレポーター部分は増幅酵素であり、第一の検出試薬は増幅酵素の第一の発色性基質又は蛍光性基質をさらに含む。いくつかの実施態様では、該方法は脱ケージ化工程をさらに含む。
【0018】
本開示の別の態様は、第一の標的が第二の標的に近接しているかを決定するために試料を分析するための方法であって、(a)試料を第一の標的に特異的なケージドハプテン−抗体コンジュゲートと接触させ、第一の標的−ケージドハプテン−抗体コンジュゲート複合体を形成すること;(b)試料を第二の標的に特異的な非マスキング酵素−抗体コンジュゲートと接触させ、第二の標的−非マスキング酵素−抗体コンジュゲート複合体を形成することであって、非マスキング酵素−抗体コンジュゲートの非マスキング酵素がケージドハプテン−抗体コンジュゲートの酵素基質部分と反応することができるように選択され、第一の標的−非マスク化ハプテン−抗体コンジュゲート複合体を形成すること;(c)試料を第一の標的−非マスク化ハプテン−抗体コンジュゲート複合体と特異的に結合し、非マスキング酵素とは異なる第一の酵素を含む第一の標識化コンジュゲートと接触させること;(d)試料を、第一の潜在的反応部分と第一の発色性又は蛍光性部分とを含む第一のシグナル伝達コンジュゲートと接触させること;及び(e)第一の発色性又は蛍光性部分からシグナルを検出することであって、第一のシグナルが第一及び第二の標的と近接していることを示していることを含む方法である。
【0019】
いくつかの実施態様では、該方法は、試料を第二の潜在的反応部分と第二の発色性又は蛍光性部分とを含む第二のシグナル伝達コンジュゲートと接触させることをさらに含み、第一及び第二の発色性又は蛍光性部分は異なるシグナルを提供する。いくつかの実施態様は、第二の発色性部分からシグナルを検出することをさらに含み、第二の発色性又は蛍光性部分からのシグナルは総タンパク量を示す。
【0020】
本開示の別の態様は、式(I):
[式中、
Yは、カルボニル反応基、アミン反応基又はチオール反応基から選択され;
Xは、結合であるか、又は、1から30個の炭素原子を有し、O、N、若しくはSからなる基より選択される一又は複数のヘテロ原子を有してもよい、分岐又は非分岐状で置換又は無置換の飽和又は不飽和脂肪族基を含む基であり;
Aは、結合であるか、又は、1から15個の炭素原子を有し、O、N、若しくはSからなる基より選択される一又は複数のヘテロ原子を有してもよい、分岐又は非分岐状で置換又は無置換の飽和又は不飽和脂肪族基を含む基であり;
「ケージング基」は、酵素基質及び任意選択的に脱離基を含み、脱離基部分は、置換又は無置換の5、6又は7員の芳香環又は複素環式環を含む。]
を有するケージドハプテンである。
【0021】
いくつかの実施態様では、5、6又は7員の芳香環又は複素環式環は、ハロゲン、1から4の間の炭素原子を有する−S−アルキル基;1から4の間の炭素原子を有する−O−アルキル基;1から4の間の炭素原子を有する−N(H)−アルキル基;1から6の間の炭素原子を有する−N−(アルキル)
2基;及び1から4の間の炭素原子を有する分岐又は非分岐状で置換又は無置換のアルキル基からなる群より選択される部分で置換されている。いくつかの実施態様では、ケージング基は、式(II):
[式中、
R
1は、H、F、Cl、Br、I、−O−メチル、−O−−エチル、−O−n−プロピル、−O−−イソプロピル;−O−n−ブチル、−O−sec−ブチル、又は−O−イソ−ブチル;1から4の間の炭素原子を有する−S−アルキル基;1から4の間の炭素原子を有する−O−アルキル基;1から4の間の炭素原子を有する−N(H)−アルキル基;1から6の間の炭素原子を有する−N−(アルキル)
2基;1から4の間の炭素原子を有し、N又はSで置換されていてもよいアルキル基;シアノ基;及びカルボキシル基から独立して選択され;
R
2は酵素基質である。]
を有する。
【0022】
いくつかの実施態様では、酵素基質は、リン酸基、エステル基、アミド基、硫酸基、グリコシド基、尿素基及びニトロ基からなる群より選択される。いくつかの実施態様では、ケージング基は、式(IIB):
[式中、R
2は、リン酸基、エステル基、アミド基、硫酸基、グリコシド基、尿素基及びニトロ基からなる群より選択される。]
を有する。いくつかの実施態様では、各R
1基は異なる。
【0023】
ケージング基は式(IIC):
[式中、R
2は、リン酸基、エステル基、アミド基、硫酸基、グリコシド基、尿素基及びニトロ基からなる群より選択される。]の構造を有する、請求項43に記載のケージドハプテン。いくつかの実施態様において、各R
1基は異なる。
【0024】
いくつかの実施態様では、ケージング基は、式(IID):
[式中、R
2は、リン酸基、エステル基、アミド基、硫酸基、グリコシド基、尿素基及びニトロ基からなる群より選択される。]を有する。
【0025】
いくつかの実施態様では、各R
1基は異なる。いくつかの実施態様では、Xは式(IIIA):
[式中、d及びeは、各々独立して4から18の範囲の整数であり;Qは、結合であり、O、S又はN(R
c)(R
d)であり;R
a及びR
bは、独立してH、C
1−C
4アルキル基、F、Cl又はN(
Rc)(R
d)であり;R
c及びR
dは、独立してCH
3又はHである。]の構造を有する。ある実施態様では、d及びeは、各々独立して1から24の範囲の整数である。
【0026】
いくつかの実施態様では、ケージドハプテンは、
からなる群より選択される。
【0027】
本開示の別の態様は、(i)特異的結合実体、及び(ii)本明細書で引用される任意のケージドハプテンを含む、ケージドハプテンのコンジュゲートである。いくつかの実施態様では、ケージング化されたハプテンは、式(I):
[式中、
Yは、カルボニル反応基、アミン反応基又はチオール反応基から選択され;
Xは、結合であるか、又は、1から30個の炭素原子を有し、O、N、若しくはSからなる基より選択される一又は複数のヘテロ原子を有してもよい、分岐又は非分岐状で置換又は無置換の飽和又は不飽和脂肪族基を含む基であり;
Aは、結合であるか、又は、1から15個の炭素原子を有し、O、N、若しくはSからなる基より選択される一又は複数のヘテロ原子を有してもよい、分岐又は非分岐状で置換又は無置換の飽和又は不飽和脂肪族基を含む基であり;
「ケージング基」は、酵素基質及び任意選択的に脱離基を含み、脱離基部分は、置換又は無置換の5、6又は7員の芳香環又は複素環式環を含む。]を有する。
【0028】
いくつかの実施態様では、コンジュゲートの特異的結合実体は、抗体である。いくつかの実施態様では、コンジュゲートは、式(IV):
[式中、Zは、結合であるか、又は、1から30個の炭素原子を有し、O、N、若しくはSからなる基より選択される一又は複数のヘテロ原子を有してもよい、分岐又は非分岐状で置換又は無置換の飽和又は不飽和脂肪族基を含む基であり、
Aは、結合であるか、又は、1から15個の炭素原子を有し、O、N、若しくはSからなる基より選択される一又は複数のヘテロ原子を有してもよい、分岐又は非分岐状で置換又は無置換の飽和又は不飽和脂肪族基を含む基であり;
qは、0又は1であり、
nは1から25の範囲の整数である。]
の構造を有する。
【0029】
いくつかの実施態様では、ケージング基は、ハロゲン、1から4の間の炭素原子を有する−S−アルキル基;1から4の間の炭素原子を有する−O−アルキル基;1から4の間の炭素原子を有する−N(H)−アルキル基;1から6の間の炭素原子を有する−N−(アルキル)
2基;及び1から4の間の炭素原子を有する分岐又は非分岐状で置換又は無置換のアルキル基からなる群より選択される部分で任意的に置換されていてもよい5、6又は7員の芳香環又は複素環式環である。
【0030】
いくつかの実施態様では、ケージング基は、式(II):
[式中、
R
1は、H、F、Cl、Br、I、−O−メチル、−O−−エチル、−O−n−プロピル、−O−−イソプロピル;−O−n−ブチル、−O−sec−ブチル、又は−O−イソ−ブチル;1から4の間の炭素原子を有する−S−アルキル基;1から4の間の炭素原子を有する−O−アルキル基;1から4の間の炭素原子を有する−N(H)−アルキル基;1から6の間の炭素原子を有する−N−(アルキル)
2基;1から4の間の炭素原子を有し、N又はSで置換されていてもよいアルキル基;シアノ基;及びカルボキシル基から独立して選択され;
R
2は酵素基質である。]
を有する。
【0031】
いくつかの実施態様では、酵素基質は、リン酸基、エステル基、アミド基、硫酸基、グリコシド基、尿素基及びニトロ基からなる群より選択される。
【0032】
いくつかの実施態様では、ケージング基は、式(IIB):
[式中、R
2は、リン酸基、エステル基、アミド基、硫酸基、グリコシド基、尿素基及びニトロ基からなる群より選択される。]
を有する。いくつかの実施態様では、各R
1基は異なる。
【0033】
いくつかの実施態様では、ケージング基は、式(IIC):
[式中、R
2は、リン酸基、エステル基、アミド基、硫酸基、グリコシド基、尿素基及びニトロ基からなる群より選択される。]を有する。いくつかの実施態様では、R
1基は異なる。
【0034】
いくつかの実施態様では、ケージング基は、式(IID):
[式中、R
2は、リン酸基、エステル基、アミド基、硫酸基、グリコシド基、尿素基及びニトロ基からなる群より選択される。]を有する。いくつかの実施態様では、各R
1基は異なる。
【0035】
いくつかの実施態様では、抗体は二次抗体である。いくつかの実施態様では、抗体は一次抗体である。いくつかの実施態様では、一次抗体は、PD−L1/CD80(B7−1);CTLA−4/CD80(B7−1);CTLA−4/CD86(B7−1);PD−L2/PD−1;ErbBファミリー(Her1(EGFR)、Her2、Her3、Her4)の任意の組合せ;DNA混合マッチ修復タンパク質(MLH1、MLH3、MSH2、MSH3、MSH6、PMS1及びPMS2)の任意の組合せ;翻訳後修飾(PTM)−リン酸化タンパク質(抗−ホスホチロシン/ホスホセリン/ホスホスレオニン/ホスホヒスチジン抗体と当該標的に対して特異的な抗体との組合せ);及びPTM−ユビキチン化タンパク質からなる群より選択される標的に特異的である。
【0036】
本開示の別の態様は、試料内の複数の標的を検出するための方法であって、(a)試料を第一の標的に特異的なケージドハプテン−抗体コンジュゲートと接触させ、第一の標的−ケージドハプテン−抗体コンジュゲート複合体を形成すること;(b)試料を第二の標的に特異的な非マスキング酵素−抗体コンジュゲートと接触させ、第二の標的−非マスキング酵素−抗体コンジュゲート複合体を形成することであって、非マスキング酵素−抗体コンジュゲートの非マスキング酵素がケージドハプテン−抗体コンジュゲートの酵素基質部分と反応することができるように選択され、第一の標的−非マスク化ハプテン−抗体コンジュゲート複合体を形成すること;(c)試料を第一の検出試薬と接触させ、第一の標的−非マスク化ハプテン−抗体コンジュゲート複合体又は第一の標的を標識すること;(d)試料を第三の標的に特異的な第一の検出プローブと接触させ、第三の標的−検出プローブ複合体を形成すること;(e)試料を第二の検出試薬と接触させ、第三の標的−検出プローブ複合体を標識すること;(f)標識された第一の標的−非マスク化ハプテン−抗体コンジュゲート複合体又は標識された第一の標的を検出すること;及び(g)標識された第三の標的−検出プローブ複合体を検出することを含む方法である。いくつかの実施態様では、該方法は、試料中の標的の総タンパクを検出することをさらに含む。いくつかの実施態様では、第一の検出プローブは抗体を含む。いくつかの実施態様では、第一の検出プローブは核酸プローブを含む。いくつかの実施態様では、該方法は、試料を第四の標的に特異的な第二の検出プローブと接触させ、第四の標的−検出プローブ複合体を形成することをさらに含む。いくつかの実施態様では、該方法は、試料を第二の検出試薬と接触させる前に、非マスキング酵素を不活性化することをさらに含む。いくつかの実施態様では、該方法は、試料をプローブと接触させて第三の標的及び第二の検出試薬を標識する前に、第一及び第二の標的複合体を不活性化することをさらに含む。
【0037】
本特許又は出願ファイルは、カラー図面を少なくとも一点含む。カラー図面を伴う本特許又は特許出願文献のコピーは、請求及び必要な料金の支払いに応じて特許庁提供へされる。
【発明を実施するための形態】
【0039】
本明細書で開示されるものは、ケージドハプテン及びそれらの合成方法である。本明細書で開示されるものは、ケージドハプテンを含むコンジュゲートでもある。本明細書でより詳細に記載されるように、ケージドハプテンコンジュゲートは、組織試料中の近接した抗原を検出するために使用されうる。これらの及びその他の実施態様は本明細書で記載される。
【0040】
定義
本明細書で使用される場合、単数形「一つの(a)」、「一つの(an)」、及び「その(the)」は、文脈から判断して明らかにそうでないと分かる以外は、複数の指示物を含む。同様に、「又は(or)」という単語も、文脈が明らかに他を示さない限りは「及び」を含むことが意図される。用語「含む(includes)」は、「A又はBを含む」が、A、B、又はA及びBを含むことを意味するように、包括的に定義される。
【0041】
用語「含む(comprising)」、「含む(including)」、「有する(having)」等は、区別しないで使用され、同一の意味を有する。同様に、用語「含む(comprises)」、「含む(includes)」、「有する(has)」等は、区別しないで使用され、同一の意味を有する。特に、それぞれの用語は、一般的な米国特許法の「comprising」の定義と一貫して定義され、したがって、「少なくとも以下の」というオープンな用語を意味すると解釈され、また、追加の特徴、限定、態様等を除外しないと解釈される。したがって、例えば、「成分a、b、及びcを有する装置(a device having components a, b, and c)」は、その装置が少なくとも成分a、b及びcを含むことを意味する。同様に、語句「工程a、b、及びcを含む方法(a method involving steps a, b, and c)」は、その方法が少なくとも工程a、b、及びcを含むことを意味する。さらに、工程及び方法は本明細書において特定の順で説明されるが、当業者は、工程及び方法の順序は変化しうることを認識するであろう。
【0042】
本明細書で使用される場合、アルカリホスファターゼ(AP)は、リン酸−酸素結合を破壊し、一時的に中間酵素−基質結合を結合することによって、リン酸基有機エステルを(加水分解により)除去し、転送する酵素である。例えは、APは、ナフトールリン酸エステル(基質)を、フェノール化合物とリン酸塩に加水分解する。フェノールは、無色のジアゾニウム塩(色素原)に結合し、不溶性の有色のアゾ染色を生成する。
【0043】
本明細書で使用される場合、場合によっては「Ab」と略すこともある用語「抗体」は、免疫グロブリン又は免疫グロブリン様分子(非限定的な例としては、IgA、IgD、IgE、IgG、及びIgM、それらの組み合わせを含む。)と、任意の脊椎動物(例えばヒト、ヤギ、ウサギ、及びマウスのような哺乳動物)における免疫応答中に産生される類似の分子、並びに他の分子への結合を実質的に除外するための、問題の分子(又は問題の分子に非常に類似する群)に特異的に結合する抗体断片を含む。抗体は、抗原のエピトープを特異的に認識してそれに結合する、少なくとも一の軽鎖又は重鎖免疫グロブリン可変領域を含むポリペプチドリガンドをさらに指す。抗体は重及び軽鎖から構成され、その各々は、可変重(VH)領域及び可変軽(VH)領域と呼ばれる可変領域を有しうる。VH領域及びVL領域は組み合わさって、抗体により認識される抗原の結合に関与する。抗体という用語はまた、インタクトな免疫グロブリンと、当該技術分野で知られる変異体及びその部分も含む。
【0044】
本明細書で使用される場合、語句「抗体コンジュゲート」は、一又は複数の標識に(直接的又は間接的に)コンジュゲートする抗体を指し、ここで、抗体コンジュゲートは特定の標的に特異的であり、標識は、例えば二次抗体(抗標識抗体)を用いて、(直接的又は間接的に)検出することができる。例えば、抗体コンジュゲートは、例えばポリマーリンカー及び/又はスペーサーによってハプテンと結合してもよく、抗体コンジュゲートは、ハプテンを用いて、間接的に検出されうる。別の例として、抗体コンジュゲートは、例えばポリマーリンカー及び/又はスペーサーによって色素原と結合してもよく、抗体コンジュゲートは、直接的に検出されうる。抗体コンジュゲートは、米国特許第2014/0147906号並びに米国特許第8,658,389号;同第8,686,122号;同第8,618,265号;同第8,846,320号;及び同第8,445,191号でさらに記載されている。さらなる例として、用語「抗体コンジュゲート」は、酵素、例えばHRP又はAPにコンジュゲートする抗体を含む。
【0045】
本明細書で使用される場合、用語「抗原」は、抗体分子又はT細胞受容体などの特異的体液性又は細胞性免疫の産物によって特異的に結合され得る化合物、組成物又は物質を指す。抗原は、例えばハプテン、単純中間代謝産物、糖(例えばオリゴ糖)、脂質、及びホルモン、並びに複雑な炭水化物(例えば多糖類)、リン脂質、核酸及びタンパク質などの高分子を含む任意の種類の分子でありうる。
【0046】
本明細書で使用される場合、用語「生物学的試料」は、特にバクテリア、酵母、原生動物、アメーバーのような単細胞生物、及び多細胞生物(例えば、健康な若しくは健康に見えるヒト対象、又はがんのような、診断若しくは調査される症状若しくは疾患を患うヒト患者からの試料を含む、植物又は動物)を含むがこれらに限定されない任意の生体から得られる、排出される又は分泌される任意の固体又は流体の試料でありうる。例として、生物学的試料は、生体液、例えば血液、血漿、血清、尿、胆汁、腹水、唾液、脳脊髄液、水性若しくは硝子様液、又はあらゆる体分泌、漏出液、滲出液(例えば、膿瘍又は感染若しくは炎症の他の部位より得られる液体)、又は関節(通常の関節若しくは疾患の影響を受ける関節)より得られる液体でありうる。生物学的試料はまた、あらゆる器官又は組織より得られる試料(生検又は剖検試料、例えば腫瘍生検を含む)でもあり、あるいは細胞(一次細胞又は培養細胞)又はあらゆる細胞、組織若しくは器官により左右される媒体を含むこともできる。いくつかの実施態様では、生物学的試料は核抽出物である。特定の例において、試料は、品質管理試料、例えば開示される細胞ペレット切片試料の一つである。他の例では、試料は試験試料である。試料は、当業者により、当該技術分野で知られる方法を使用して調製することができる。試料は、常套的なスクリーニングのために被験体から、又は遺伝的異常、感染若しくは新生物などの障害を有すると疑われる被験体から得ることができる。本開示の方法の記載されている実施態様は、「正常」試料と呼ばれる、遺伝的異常、疾患、障害等を有しない試料にも適用することができる。試料は、一又は複数の検出プローブにより特異的に結合されうる複数の標的を含みうる。
【0047】
本明細書で使用される場合、用語「発色団」は、色に関与する分子又は分子の一部(例えば発色性基質)を指す。色は、分子が可視光の特定の波長を吸収し、他の光を伝送するか又は反射するときに、生じる。可視スペクトルの範囲内にある二の異なる分子軌道間のエネルギー差を有する分子は、可視光を吸収し、したがって、発色団として適切に特徴づけられうる。発色団への可視光入射は吸収され、したがって、電子を基底状態の分子軌道から励起状態の分子軌道へ励起する。
【0048】
本明細書で使用される場合、用語「コンジュゲート」は、より大きなコンストラクトに共有結合した二以上の分子又は部分(マクロ分子又は超分子部分を含む。)を指す。いくつかの実施態様では、コンジュゲートは、一又は複数の他の分子部分に共有結合した一又は複数の生体分子(例えばペプチド、タンパク質、酵素、糖、多糖、脂質、糖タンパク質、及びリポタンパク質)を含む。
【0049】
本明細書で使用される場合、「カップリングする又は「カップリング」という用語は、一つの分子又は原子が別の分子又は原子へ接合、結合(例えば共有結合)又は連結することを指す。
【0050】
本明細書で使用される場合、「検出可能な部分」は、試料中の標識の存在(すなわち定性分析)及び/又は濃度(すなわち定量分析)を示す、(例えば視覚的に、電子的に又は他の方法で)検出可能なシグナルを生成し得る分子又は材料を指す。検出可能なシグナルは、光子(無線周波数、マイクロ波周波数、赤外周波数、可視周波数、及び紫外周波数の光子を含む)の吸収、放射、及び/又は散乱を含めた、任意の知られている機構又は未だ発見されていない機構により生成することができる。検出可能な部分の例は、発色性、蛍光性、リン光性及び発光性の分子及び材料を含む。
【0051】
本明細書で使用される場合、用語「エピトープ」は「抗原決定基」、例えば、抗原性である、すなわち特異的免疫応答を誘発する、分子の連続的な若しくは非連続的なペプチド配列を指す。抗体は、特定の抗原エピトープに結合する。
【0052】
本明細書で使用される場合、ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)は、標識された分子とコンジュゲートされうる酵素である。HRPは、適切な基質でインキュベートされるとき、標識された分子の有色で、蛍光分析の、又は発光性の誘導体を生成し、検出及び定量化できるようにする。HRPは、電子供与体の存在下で作用し、初めに酵素基質複合体を形成し、続いて、電子供与体を酸化させるように作用する。例えば、HRPは、3,3’−ジアミノベンゾジジン塩酸塩(DAB)に作用し、検出可能な色を生成しうる。HRPはまた、標識されたチラミドコンジュゲート、又はチラミド様反応性コンジュゲート(すなわち、フェルレート、クマル酸、コーヒー酸、桂皮酸、ドーパミン等)に作用し、チラミドシグナル増幅(TSA)のための有色の又は蛍光性の又は無色の検出可能な部分を堆積させる。
【0053】
本明細書で使用される場合、用語「多重」、「多重化(される)」、又は「多重の」は、試料中の複数の標的を同時に、実質的に同時に、又は連続的に検出することを指す。マルチプレックスは、多数の明確な核酸(例えばDNA、RNA、mRNA、miRNA)及びポリペプチド(例えばタンパク質)を個々にまた任意の及びすべての組合せで同定及び/又は定量化することを含みうる。
【0054】
本明細書で使用される場合、用語「一次抗体」は、組織試料中の標的タンパク質抗原に特異的に結合する抗体を指す。一般に、一次抗体は、免疫組織化学的手法において使用される第一の抗体である。
【0055】
本明細書で使用される場合、用語「二次抗体」は、一次抗体に特異的に結合し、それにより一次抗体と、もしあれば、その後の試薬(例えば標識、酵素など)との間に架橋を形成する抗体を指す。一般に、二次抗体は、免疫組織化学的手法において使用される第二の抗体である。
【0056】
本明細書で使用される場合、用語「特異的結合実体(specific binding entity)」は、特異的結合対の一方のメンバーを指す。特異的結合対は、互いに結合して、他の分子との結合の実質的排除を特徴とする(例えば、特異的結合対は、生物学的試料において結合対の二つのメンバーのいずれかの、他の分子との結合定数よりも少なくとも10
3M
−1大きい、10
4M
−1大きい、又は10
5M
−1大きい結合定数を有し得る)分子の対である。特異的結合部分の特定の例には、特異的結合タンパク質(例えば抗体、レクチン、ストレプトアビジンなどのアビジン、及びプロテインA)が含まれる。特異的結合部分はまた、そのような特異的結合タンパク質によって特異的に結合される分子(又はその一部)を含み得る。
【0057】
本明細書で使用される場合、用語「標的」は、存在、位置、及び/又は濃度が決定される、又は決定することができる任意の分子を指す。標的分子の例には、タンパク質、エピトープ、核酸配列、及びハプテン、例えばタンパク質に共有結合したハプテンが含まれる。標的分子は、典型的には、特異的結合分子及び検出可能な標識の一又は複数のコンジュゲートを用いて検出される。
【0058】
本明細書で使用される場合、用語「チラミドシグナル増幅」又は「TSA」は、標的分子(例えばタンパク質又は核酸配列)の高密度標識をin situで生成するための、ペルオキシダーゼ(例えばホースラディッシュペルオキシダーゼ)の触媒活性を利用する酵素媒介検出法を指す。TSAは、典型的には三つの基本的な工程を含む。(1)特異的結合メンバー(例えば抗体)を標的に結合させ、続いて、第二のペルオキシダーゼで標識された特異的結合メンバーで特異的結合メンバーの二次検出を行うこと;(2)ペルオキシダーゼにより、標識されたチラミド誘導体(例えばハプテン−標識されたチラミド)の複数のコピーを活性化すること;及び(3)結果として得られる反応性の高いチラミド基を、ペルオキシダーゼ−標的相互作用部位に近接した残留物(例えばタンパク質チロシン残基のフェノール部分)に共有結合させ、標的に近接した(拡散及び反応性媒介)ハプテンの沈着を生じさせること。TSAのいくつかの例では、多少の工程が含まれる;例えば、TSA法は、シグナルを増加させるために連続して繰り返すことができる。TSAを実施する方法とTSAを実施するための市販のキット及び試薬が入手可能である(例えば、AmpMap Detection Kit with TSA
TM、Cat. No. 760−121、Ventana Medical Systems、Tucson、Ariz.;Invitrogen;TSA kit No. T−20911、Invitrogen Corp、Carlsbad、Calif.を参照のこと)。その他の酵素触媒化の、ハプテン又はシグナル伝達架橋反応種が入手可能になりうるため、代わりに使用することができる。
【0059】
ケージドハプテン
本開示の一態様は、
図1Bで説明されるような「ケージドハプテン」である。当業者が理解するように、ハプテンは、抗ハプテン抗体が生じる小分子である。「ケージドハプテン」は、適切な抗ハプテン抗体がもはや分子を認識せず、結合事象が生じないように修飾された構造のハプテンである。実際には、ハプテンの同定は「マスク化」又は「保護」である。本明細書で開示されるケージドハプテンは、それぞれのハプテン、すなわち非ケージド又は非マスク化ハプテンが酵素処理によって放出され、ネイティブハプテンを生成するように、酵素開裂ケージを考慮して設計されている(例えば、酵素処理を介したケージドハプテンの非マスク化を説明している
図2を参照のこと)。したがって、適切な酵素の存在下で、ケージドハプテンは非マスク化され、抗ハプテン抗体はそれに結合しない。
【0060】
いくつかの実施態様では、本開示のケージドハプテンは、式(I):
[式中、
Xは、結合であるか、又は、1から30個の炭素原子を有し、O、N、若しくはSからなる基より選択される一又は複数のヘテロ原子を有してもよい、分岐又は非分岐状で置換又は無置換の飽和又は不飽和脂肪族基を含む基であり;
Aは、1から15個の炭素原子を有し、O、N、若しくはSからなる基より選択される一又は複数のヘテロ原子を有してもよい、分岐又は非分岐状で置換又は無置換の飽和又は不飽和脂肪族基を含む基であり;
Yは、別の基と共有結合を形成することができる反応基であり;
「ハプテン」及び「ケージング基」は、本明細書に記載される通りであり、
qは、0又は1である。]
の構造を有する。
【0061】
いくつかの実施態様では、ケージング基は、二つの共有結合成分、すなわち式(IA)で説明されるような(i)脱離基部分、及び(ii)酵素基質部分を含んでなる酵素開裂部分である。
【0062】
他の実施態様では、ケージング基は、式(IB):
のように、ハプテンに直接的に又は間接的に結合する酵素基質のみを含む。
【0063】
適切な酵素基質(及びそれらに作用する酵素)は、限定するものではないが、リン酸基(アルカリホスファターゼに作用される)、エステル基(リパーゼに作用される;硫酸基(スルファターゼに作用される);グリコシド基(グリコシラーゼに作用される);アミド基(アミダーゼ又はプロテアーゼに作用される);尿素基(ウレアーゼに作用される);及びニトロ基(ニトロレダクターゼに作用される)を含む。
【0064】
いくつか実施態様では、脱離基は、5、6、又は7員の芳香族環又は複素環式環を含み、環の任意の位置は置換されていてもされていなくてもよい。いくつかの実施態様では、脱離基は、O、N、又はSから選択される一、二、又は三のヘテロ原子を有する、置換又は非置換の、5、6、又は7員の複素環式環である。いくつかの実施態様では、脱離基は、置換又は非置換の、フラン、ピロール、チオフェン、イミダゾール、ピラゾール、オキサゾール、イソオキサゾール、チアゾール、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、トリアジン、2H−ピラン、4H−ピラン、2H−チオピラン、4H−チオピラン、オキサジン、又はチアジンから選択される。いくつかの実施態様では、5、6又は7員の芳香環又は複素環式環は、ハロゲン、1から4の間の炭素原子を有する−S−アルキル基;1から4の間の炭素原子を有する−O−アルキル基;1から4の間の炭素原子を有する−N(H)−アルキル基;1から6の間の炭素原子を有する−N−(アルキル)
2基;又は、それ自体がO、N、又はSから選択される一又は複数のヘテロ原子を含んでもよく、及び/又は一又は複数のハロゲンで置換されていてもよい、1から4の間の炭素原子を有する分岐又は非分岐状で置換又は無置換のアルキル基で置換されている。いくつかの実施態様では、脱離基は、ニトロ基、シアノ基、又はカルボキシ基で置換されてもよい。
【0065】
いくつかの実施態様では、ケージング基は、式(II):
[式中、
各R
1は、H、F、Cl、Br、I、−O−メチル、−O−−エチル、−O−n−プロピル、−O−−イソプロピル;−O−n−ブチル、−O−sec−ブチル、又は−O−イソ−ブチル;1から4の間の炭素原子を有する−S−アルキル基;1から4の間の炭素原子を有する−O−アルキル基;1から4の間の炭素原子を有する−N(H)−アルキル基;1から6の間の炭素原子を有する−N−(アルキル)
2基;1から4の間の炭素原子を有し、N又はSで置換されていてもよいアルキル基;シアノ基;及びカルボキシル基から独立して選択される。
R
2は酵素基質である。]
を有する。
【0066】
いくつかの実施態様では、各R
1基は同一である。他の実施態様では、各R
1基は異なる(すなわち、各R
1は異なる部分を含む)。例えば、第一のR
1基はハロゲンを含みうる一方、第二のR
1はアルキル基を含みうる。
【0067】
式(II)は、6個の炭素原子を含む6員の芳香族環を示すが、当業者は、一又は複数のヘテロ原子(例えばO、N、又はS)は芳香族環の一又は複数の炭素原子に置換されてもよいことを理解するであろう。
【0068】
いくつかの実施態様では、任意の脱離基の脱離の能力は、ハプテンのエレクトロニクスに依拠する。いくつかの実施態様では、特定のハプテンのエレクトロニクスは、脱離基の能力を促進するための電子供与基を必要とする。他の実施態様では、ハプテンは、電子吸引基を必要とする。例えば、ケージされる官能基のpKaに応じて、ハプテンの中には、ケージング基の脱離基に電子供与基を付加する必要があるものもあれば、電子求引基を必要とするものもある。特定の理論に縛られることを望まないが、高いpKa値を有するハプテン官能基は電子供与基を必要とする傾向があると考えられる。これは、一旦離脱基が放出されると、この位置の電子供与基は、誘導又は共鳴効果によって脱離基の結果としての正電荷を直接的に安定化することができるからである。この例はケージドHQで見られ、電子供与基が存在しない場合、脱離基は可能に高い反応温度(約100℃)なしでは脱離することがない。一方、低いpKa値を有するハプテン官能基については、電子求引基が必要と考えられる。これは、一旦離脱基が放出されると、ハプテン官能基上の結果としての負電荷が、ケージドハプテンを加水分解に対して安定化するのを助ける脱安定化電子力が離脱基に必要であるほど高い安定性を有するからである。電子求引基は脱離基の正電荷を不安定にし、それによってケージドハプテンを加水分解に対してより安定にすることができると考えられている。
【0069】
置換基R
1及びR
2は、ケージング基をハプテンに結合させる基に対して、式(II)の環に沿って任意の位置にあってもよい。いくつかの実施態様では、R
2は、式(IIA):
に説明するように、ケージング基をハプテンに結合させる基にパラで位置する。
【0070】
式(IIA)の化合物の他の実施態様では、置換基R
1は、独立して基R
2にオルト又はメタで位置されうる。いくつかの実施態様では、式(IIA)の各R
1基は異なる、すなわち、各R
1基は異なる部分を含む。
【0071】
更なる実施態様では、ケージング基は、式(IIB):
の構造を有する。
【0072】
いくつかの実施態様では、式(IIB)の各R
1基は異なる、すなわち、各R
1基は異なる部分を含む。
【0073】
さらなる実施態様では、ケージング基は、式(IIC):
の構造を有する。
【0074】
いくつかの実施態様では、式(IIC)の各R
1基は異なる、すなわち、各R
1基は異なる部分を含む。
【0075】
さらなる実施態様では、ケージング基は、式(IID):
構造を有する。
【0076】
いくつかの実施態様では、式(IID)の各R
1基は異なる、すなわち、各R
1基は異なる部分を含む。
【0077】
特定の理論に縛られることを望まないが、ケージング基の加水分解安定性及び脱離基能力は、異なるハプテンと結合したときに、異なることがあると考えられている。例えば、ホスフェートに関してメタ位で組み込まれた−OMe基を有するケージング基は、2−ヒドロキシキノキサリン(HQ)ハプテンの安定性と反応性の良好な組合せを提供すると考えられるが、ニトロピラゾール(NP)ハプテンに組み込まれたときに、所望よりも比較的安定しないと考えられた。リン酸基に関してオルトで組み込まれた−OMe基を有するケージング基を使用することにより、これは改善された。また、特定の理論に縛られることを望まないが、HQハプテンとケージング基との間に形成されるO−ベンジル結合は、NPとケージング基との間に形成されるN−ベンジルよりもはるかに安定していたと考えられる。これは、ベンジル基に対してオルトの−OMe基をHQハプテンに導入し、一度ホスフェートが開裂されると、電子が環を通って「プッシュ」し、結合を破壊するのを助けることにより、同様に改善された。NPハプテンは、比較的安定しておらず、そのため、同じ「プッシュ」を必要としなかった。
【0078】
また、特定の理論に縛られることを望まないが、−OMe基を有しないケージング基は、分解するのに非常に高い温度を必要としうることが考えられる。しかしながら、ホスフェートに対してオルトの−OMe基を有するケージング基は、分解するのに中程度の温度を必要とすることがあるが、その一方、ホスフェートに対してメタの−OMe基を有するケージング基は、室温で分解しうる。特定の理論に縛られることを望まないが、これは反応性を増加させるが、また、一又は二の追加の脂肪族基をベンジル位に付加することにより、安定性を付加することが可能でありうると考えられる。これはベンジル基を加水分解から立体的に保護しうるが、また、分解時により安定な2°又は3°のベンジルカルボカチオンを作成すると考えられる。
【0079】
本明細書に記載されるように、酵素とケージング基の酵素基質部分の相互作用時に、ケージング基は、ケージドハプテンから分離し、非ケージドハプテン又は非マスク化ハプテンをもたらすように、電子的変化を受ける。
図2は、アルカリホスファターゼ酵素とリン酸酵素基質の相互作用時に、ケージドHQハプテン内に生じる電子的変化を説明する。類似の電子的変化は、当業者に理解されるように、他のケージドハプテン系で生じる。
【0080】
いくつかの実施態様では、ハプテンは、限定されないが、ピラゾール(例えばニトロピラゾール;ニトロフェニル化合物;ベンゾフラザン;トリテルペン;尿素(例えばフェニル尿素);チオ尿素(例えばフェニルチオ尿素);ロテノン及びロテノン誘導体;オキサゾール(例えばオキサゾールスルホンアミド);チアゾール(例えばチアゾールスルホンアミド);クマリン及びクマリン誘導体;及びシクロリグナンを含む。ハプテンのさらなる非限定的な例には、チアゾール;ニトロアリール;ベンゾフラン;トリテペン(triperpene);及びシクロリグナンが含まれる。
【0081】
ハプテンの特定の例には、ジ−ニトロフェニル、ビオチン、ジゴキシゲニン、及びフルオレセイン、並びにそれらの任意の誘導体又は類似体が含まれる。他のハプテンは、米国特許第8846320号;第8618265号;第7695929号;第8481270号;及び第9017954号に記載されており、これらの開示は全体が参照により本明細書に援用される。
【0082】
上に記載されるように、Xは、結合であってもよく、又は、1から30個の炭素原子を有し、O、N、若しくはSからなる基より選択される一又は複数のヘテロ原子を有してもよい、分岐又は非分岐状で置換又は無置換の飽和又は不飽和脂肪族基を含む基であってもよい。いくつかの実施態様では、Xは、カルボニル、アミン、エステル、エーテル、アミド、イミン、チオン又はチオール基を含んでもよい。他の実施態様では、Xは、アミン、カルボニル、エステル、エーテル、アミド、イミン、チオン又はチオールから選択される一又は複数の末端基を含んでもよい。
【0083】
いくつかの実施態様では、Xは式(IIIA):
[式中、d及びeは、各々独立して4から18の範囲の整数であり;Qは、結合であり、O、S又はN(R
c)(R
d)であり;R
a及びR
bは、独立してH、C
1−C
4アルキル基、F、Cl又はN(
Rc)(R
d)であり;R
c及びR
dは、独立してCH
3又はHである。]
の構造を有する。ある実施態様では、d及びeは、各々独立して1から24の範囲の整数である。
【0084】
他の実施態様では、Xは式(IIIB):
[式中、d及びeは、各々独立して1から24の範囲の整数であり;Qは、結合、O、S又はN(R
c)(R
d)であり;R
c及びR
dは、独立してCH
3又はHである]
に示される構造を有する。他の実施態様では、QはOである。
【0085】
さらなる他の実施態様では、「リンカー」は式(IIIC):
[式中、d及びe は、各々独立して1から24の範囲の整数である。]
に示される構造を有する。いくつかの実施態様では、dは2であり、eは2から24の範囲の整数である。
【0086】
さらなる別の態様では、Xは、一又は複数のアルキレンオキシド又はPEG基(例えばPEG2からPEG24)を含んでもよい。当業者であれば、酸素原子の数が増加するにつれて、化合物の親水性もまた増加しうることを理解するであろう。
【0087】
特定の理論に縛られることを望まないが、リンカー長は、近接性シグナルに影響しうることが考えられる。例えば、PEG8、PEG4を含み、PEGリンカーを含まないケージドハプテンが作製され、試験された。リンカーの長さが長いほど、E−cad及びB−catのコントロールダイマー 系で、当方はより多くのシグナルを見つけた。「より多くのシグナル」は、常に有用であるように思われるが、この場合はそうではなかった。それは、当方はまた、共局在化するがダイマー(Ki67及びBcl6)を形成しないと知られているタンパク質マーカー上で試験したときにシグナルを観察したためである。PEGリンカーを使用しないことが、共局在化コントロール系上のシグナルを除去し、その一方、既知のダイマーコントロール系上ではいくつかのシグナルを依然として提供することを、当方は発見した。結果として、いくつかのケージドハプテンの実施態様は、PEG基を含まない。
【0088】
本明細書に記載されるように、Aは、1から15個の炭素原子を有し、O、N、若しくはSからなる基より選択される一又は複数のヘテロ原子を有してもよい、分岐又は非分岐状で置換又は無置換の飽和又は不飽和脂肪族基を含む基である。いくつかの実施態様では、Aは式(IIID):
[式中、d及びeは、各々独立して2から15の範囲の整数であり;Qは、結合であり、O、S又はN(R
c)(R
d)であり;R
a及びR
bは、独立してH、C
1−C
4アルキル基、F、Cl又はN(
Rc)(R
d)であり;R
c及びR
dは、独立してCH
3又はHである。]
の構造を有する。ある実施態様では、d及びeは、各々独立して1から12の範囲の整数である。
【0089】
いくつかの実施態様では、反応基Yはカルボニル−反応基である。適切なカルボニル−反応基は、ヒドラジン、ヒドラジン誘導体、及びアミンを含む。他の実施態様では、反応基Yはアミン−反応基である。適切なアミン−反応基は、活性エステル、例えばNHS又はスルホ−NHS、イソチオシアネート、イソシアネート、アシルアジド、スルホニルクロリド、アルデヒド、グリオキサル、エポキシド、オキシラン、カルボネート、アリルハロゲン化物、イミドエステル、無水物等を含む。さらなる実施態様では、反応基Yはチオール−反応基である。適切なチオール−反応基は、非重合性Michael受容体、ハロアセチル基(例えばヨードアセチル)、アルキルハロゲン化物、マレイミド、アジリジン、アクリロイル基、ビニルスルホン、ベンゾキノン、フルオロベンゼン基のような求核置換を受けることができる芳香族基、並びにピリジルジスルフィド基及びEllman試薬で活性化されたチオールのようなジスルフィド基を含む。
【0090】
ケージドハプテンの具体例は、以下に提供され、ケージド7−(ジエチルアミノ)クマリン−3−カルボン酸(DCC)、ケージドビオチン、ケージドニトロピラゾール、ケージドチアゾールスルホンアミド(TS)、及びケージドベンゾフラザン(BF)を含む。以下のケージドハプテンのそれぞれは、アルカリホスファターゼ酵素の基質を含む。
【0091】
ケージドハプテンの酵素基質部分に作用する特定の酵素を含むケージドハプテンの他の例は、
図15に提供される。
【0092】
ケージドハプテンの合成
ケージドハプテンは、当業者に周知の任意の方法に従って合成されうる。例えば、ケージング基は、置換4−ヒドロキシベンズアルデヒドで出発して調製されうる。置換4−ヒドロキシベンズアルデヒドのヒドロキシル基は、リン酸基で置換され、その後、アルデヒドが還元され、結果として得られるベンジルアルコールがアッペル反応を通じてハロゲンで置換される。ケージング基は、その後、塩基性条件下で、ハロゲン置換ケージング基とハプテンの反応により、問題のハプテンに組み込まれうる(ハプテンが多数の求核基を含有する場合、ケージングのための所望の位置を選択するための保護化学を必要としうる)。ケージング基の保護されたリン酸基は、その後、臭化トリメチルシリルを使用して脱保護され、続いて、ケージドハプテンを反応基(すなわちマレイミド)と反応させて、抗体とのコンジュゲーションを容易にしうる。
【0093】
実施例1スキーム3で説明される「ケージドHQハプテン」の合成(
図1Bを参照)「ケージドNPハプテン」の合成は、以下のスキーム1で説明される。
スキーム1:置換4−ヒドロキシベンズアルデヒドで出発したケージドNPハプテンの合成
【0094】
ケージドハプテンのコンジュゲート
本開示は、ケージドハプテンを含む新規のコンジュゲートを提供する。いくつかの実施態様では、ケージドハプテンは、特異的結合実体、例えば抗体又は核酸プローブにコンジュゲートしている。他の実施態様では、ケージドハプテンは、式(IV):
[式中、
Aは、1から15個の炭素原子を有し、O、N、若しくはSからなる基より選択される一又は複数のヘテロ原子を有してもよい、分岐又は非分岐状で置換又は無置換の飽和又は不飽和脂肪族基を含む基であり;
Qは、0又は1であり;
nは1〜25の範囲の整数であり;
Zは、結合であるか、又は、1から30個の炭素原子を有し、O、N、若しくはSからなる基より選択される一又は複数のヘテロ原子を有してもよい、分岐又は非分岐状で置換又は無置換の飽和又は不飽和脂肪族基を含む基である。]のように抗体にコンジュゲートしている。いくつかの実施態様では、Zは、式(IIIA)、(IIIB)又は(IIIC)のいずれかの構造を有する基を含む。
【0095】
いくつかの実施態様では、nは1から8の範囲の整数である。他の実施態様では、nは、1から6の範囲の整数である。さらに他の実施態様では、nは1から4の範囲の整数である。他の実施態様では、nは、2から5の範囲の整数である。さらなる実施態様では、nは3である。またさらなる実施態様では、nは4である。
【0096】
いくつかの実施態様では、ケージドハプテンは一次抗体にコンジュゲートしている(例えば、ケージドハプテンは、ベータ−カテニンに特異的な抗体にコンジュゲートしている)。他の実施態様では、ケージドハプテンは二次抗体にコンジュゲートしている(例えば、ケージドハプテンは、抗ベータ−カテニン抗体に特異的な抗体にコンジュゲートしている)。
【0097】
ケージドハプテンは、抗体の任意の部分にカップリングすることができる。共有修飾に適した抗体の三つの官能基は、(i)アミン(−NH2)、(ii)チオール基(−SH)、及び(iii)炭水化物残留物を含む。そのため、本明細書に開示のケージドハプテンのいずれも、アミン残基、チオール残基、及び炭水化物残基又はそれらの任意の組み合わせにカップリングすることができる。いくつかの実施態様では、ケージドハプテンは、抗体のFc部分にカップリングされる。
【0098】
ケージドハプテンコンジュゲートの合成
本開示のコンジュゲートは、当業者に周知の任意の方法に従って合成することができる。
【0099】
いくつかの実施態様では、ケージドハプテンは、抗体のチオール基にコンジュゲートしている。いくつかの実施態様では、チオール基は、抗体を還元剤、例えば、ジチオスレイトール(DTT)又はジチオエリスリトール(DTE)で処理することにより、初めに抗体に導入される。DTE又はDTTのような穏やかな還元剤に関して、約1mMから約40mMの間の濃度(例えば、約5mMから約30mMの間、又は、約15mMから約25mMの間の濃度)が、限定された数(例えば約2から約6の間)のチオールを抗体へ導入するのに利用されるが、抗体はインタクトなままに保たれる(サイズ排除クロマトグラフィーにより決定されうる)。還元剤での処理に続いて、チオール反応器(例えばマレイミド基)を生じさせる余剰のケージドハプテンが導入され、反応性ケージドハプテン−抗体コンジュゲートを形成する。
【0100】
いくつかの実施態様では、ケージドハプテンは、抗体のFc部分にコンジュゲートしている。いくつかの実施態様では、抗体のFc部分は、初めに、酸化されてアルデヒドを形成し、ケージドハプテンは、続いて、ケージドハプテン上の反応性官能基を通じて、抗体の酸化したFc部分に結合される。
【0101】
さらに他の実施態様では、ケージドハプテンは、抗体のリシン残基にコンジュゲートしている。以下の合成スキーム(スキーム2)で説明される通り、いくつかの実施態様では、抗体は、適切に官能化した余剰のケージドハプテン(例えば、チオール反応基を生じさせるようなもの、例えばマレイミド基)を添加する前に、初めに、余剰のトラウト試薬(2−イミノチオラン塩酸塩)で処理される。
スキーム2:抗体(「Ab」)のアミノ基とトラウト試薬との間の反応、続いて、得られた中間体とケージドHQマレイミドの結合を説明する合成方法
【0102】
合成に続き、コンジュゲートは、例えばサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)により生成され、その後、例えばゲル電気泳動及び/又は紫外可視により特性化される。
【0103】
ケージドハプテン抗体コンジュゲートの検出
いくつかの実施態様では、検出試薬は、ケージドハプテンコンジュゲート、又はケージドハプテンコンジュゲートと標的の複合体を検出することを可能にするために利用される。いくつかの実施態様では、用いられる検出試薬は、任意のケージドハプテン−コンジュゲートのケージドハプテンに相当するそれぞれの非マスク化ハプテンに特異的である。したがって、用語「それぞれの非マスク化ハプテン」又は「非マスク化ハプテン」は、適切な非マスキング酵素で「非ケージ」されて、「ネイティブ」ハプテン、すなわち、ケージドハプテンの酵素基質部分と反応する非マスキング酵素を示したケージドハプテンを指す。「非ケージング」又は「非マスキング」の工程は、本明細書でこれ以降に記載され、少なくとも
図2に示される。本明細書に記載されるように、検出試薬はまた、シグナルを増加させるように設計された成分、例えばシグナル増幅成分又はシグナル増幅キットも含みうる。
【0104】
いくつかの実施態様では、非マスク化ハプテンに特異的な検出試薬は、ケージドハプテンコンジュゲートの非マスク化ハプテンに特異的な二次抗体、すなわち、抗−非マスク化ハプテン抗体であり、検出可能な部分に結合しているそれ自体である。「検出可能な部分」は、試料中のケージドハプテン−抗体コンジュゲート及び/又は非マスキング酵素−抗体コンジュゲートの存在(即ち定性分析)及び/又は濃度(すなわち定量分析)を示す、(例えば視覚的に、電子的に又は他の方法で)検出可能なシグナルを生成しうる分子又は材料である。検出可能なシグナルは、光子(無線周波数、マイクロ波周波数、赤外周波数、可視周波数、及び紫外周波数の光子を含む)の吸収、放射、及び/又は散乱を含めた、任意の知られている機構又は未だ発見されていない機構により生成することができる。
【0105】
いくつかの実施態様では、抗−非マスク化ハプテン抗体の検出可能な部分は、発色、蛍光、リン光、及び発光性分子並びに物質、(例えば、無色の物質を着色物質に変換するか又はその逆によって、あるいは沈殿物を生成するか又は試料の濁度を上昇させることによって)一の物質を別の物質に変換して検出可能な相違をもたらす触媒(例えば酵素)、追加の検出可能な標識化抗体コンジュゲートを使用し、抗体−ハプテン結合相互作用によって検出できるハプテン、並びに常磁性及び磁気性分子又は物質を含む。無論、検出可能な部分自体も間接的に検出することができる。例えば、検出可能な部分がハプテンである場合、当業者に知られているように、その検出可能な部分に特異的なさらに別の抗体を検出可能な部分の検出に利用することができる。
【0106】
いくつかの実施態様では、抗−非マスク化ハプテン抗体は、Cascade Blueアセチルアジド;ダポキシルスルホン酸/カルボン酸DY−405;Alexa Fluor 405 Cascade Yellow ピリジルオキサゾールスクシンイミジルエステル(PyMPO);Pacific Blue DY−415;7−ヒドロキシクマリン−3−カルボン酸 DYQ−425;6−FAM ホスホラミダイト;Lucifer Yellow;Alexa Fluor 430 Dabcyl NBD クロリド/フルオリド;QSY 35 DY−485XL;Cy2 DY−490;Oregon Green 488 Alexa Fluor 488 BODIPY 493/503 C3 DY−480XL;BODIPY FL C3 BODIPY FL C5 BODIPY FL−X DYQ−505;Oregon Green 514 DY−510XL;DY−481XL;6−カルボキシ−4’,5’−ジクロロ−2’,7’ジメトキシフルオレセインスクシンイミジルエステル(JOE);DY−520XL;DY−521XL;BODIPY R6G C3 エリスロシンイソチオシアネート;5−カルボキシ−2’,4’,5’,7’−テトラブロモスルホンフルオレセイン Alexa Fluor 532 6−カルボキシ−2’,4,4’,5’7,7’−ヘキサクロロフルオロセインスクシンイミジルエステル(HEX);BODIPY 530/550 C3 DY−530;BODIPY TMR−X DY−555;DYQ−1;DY−556;Cy3 DY−547;DY−549;DY−550;Alexa Fluor 555 Alexa Fluor 546 DY−548;BODIPY 558/568 C3 Rhodamine red−X QSY 7 BODIPY 564/570 C3 BODIPY 576/589 C3 カルボキシ−X−Rhodamine(ROX);Alexa Fluor 568 DY−590;BODIPY 581/591 C3 DY−591;BODIPY TR−X Alexa Fluor 594 DY−594;カルボキシナフトフルオレセイン DY−605;DY−610;Alexa Fluor 610 DY−615;BODIPY 630/650−Xエリオグロシン;Alexa Fluor 633 Alexa Fluor 635 スクシンイミジルエステル,;DY−634;DY−630;DY−631 ;DY−632;DY−633;DYQ−2;DY−636;BODIPY 650/665−X DY−635;Cy5 Alexa Fluor 647 DY−647;DY−648;DY−650;DY−654;DY−652;DY−649;DY−651;DYQ−660;DYQ−661;Alexa Fluor 660 Cy5.5 DY−677;DY−675;DY−676;DY−678;Alexa Fluor 680 DY−679;DY−680;DY−682;DY−681 ;DYQ−3;DYQ−700;Alexa Fluor 700 DY−703;DY−701;DY−704;DY−700;DY−730;DY−731;DY−732;DY−734;DY−750;Cy7 DY−749;DYQ−4;及びCy7.5からなる群より選択される検出可能な部分を含む。
【0107】
フルオロフォアは、クマリン、フルオレセイン(又はフルオレセイン誘導体及び類似体)、ローダミン、レゾルフィン、発光団、及びシアニンを含む複数の一般的な化学クラスに属する。蛍光分子のさらなる例は、オレゴン州ユージーンMolecular ProbesのMolecular Probes Handbook - A Guide to Fluorescent Probes and Labeling Technologies、ThermoFisher Scientific、第11版に見出すことができる。他の実施態様では、フルオロフォアは、キサンテン誘導体、シアニン誘導体、スクアライン誘導体、ナフタレン誘導体、クマリン誘導体、オキサジアゾール誘導体、アンスラセン誘導体、ピレン誘導体、オキサジン誘導体、アクリジン誘導体、アリールメチン誘導体、及びテトラピロール誘導体から選択される。他の実施態様では、蛍光性部分は、CF染色(Biotiumより入手可能)、DRAQ及びCyTRAKプローブ(BioStatusより入手可能)、BODIPY(Invitrogenより入手可能)、Alexa Fluor(Invitrogenより入手可能)、DyLight Fluor(例えばDyLight 649)(Thermo Scientific、Pierceより入手可能)、Atto及びTracy(Sigma Aldrichより入手可能)、FluoProbes(Interchimより入手可能)、Abberior Dyes(Abberiorより入手可能)、DY及びMegaStokes Dyes(Dyomicsより入手可能)、Sulfo Cy染色(Cyandyeより入手可能)、HiLyte Fluor(AnaSpecより入手可能)、Seta、SeTau及びSquare Dyes(SETA BioMedicalsより入手可能)、Quasa及びCal Fluor dyes(Biosearch Technologiesより入手可能)、SureLight Dyes(APC、RPEPerCP、Phycobilisomesより入手可能)(Columbia Biosciences)、並びにAPC、APCXL、RPE、BPE(Phyco−Biotech、Greensea、Prozyme、Flogenより入手可能)から選択される。
【0108】
他の実施態様では、抗−非マスク化ハプテン抗体は、酵素にコンジュゲートしている。これらの実施態様では、最終の近接性シグナルは、非マスキングに使用される酵素(例えば、本明細書のこれ以降に記載される、非マスキング酵素−抗体コンジュゲートの非マスキング酵素)を除き、関連する抗−非マスク化ハプテン抗体にコンジュゲートしている酵素を用いて生成することができる。いくつかの実施態様では、適切な酵素は、ホースラディッシュペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、酸性ホスファターゼ、グルコースオキシダーゼ、ノイラミンダーゼ、B−ガラクトシダーゼ、B−グルクロニダーゼ又はB−ラクタマーゼが含むが、これらに限定されない。他の実施態様では、酵素は、オキシドレダクターゼ又はペルオキシダーゼ(例えばHRP)を含む。これらの実施態様では、抗−非マスク化ハプテン抗体にコンジュゲートしている酵素は、発色性基質、共有結合ハプテン、共有結合フルオロフォア、非共有結合色原体、及び非共有結合フルオロフォアの、標的に近接した又は標的に直接接している試料を標識する反応性部分への変換に触媒作用を及ぼす。
【0109】
発色性化合物/基質の特定の非制限的な例には、ジアミノベンジジン(DAB)、4−ニトロフェニルホスフェート(pNPP)、ファストレッド、ブロモクロロインドリルホスフェート(BCIP)、ニトロブルーテトラゾリウム(NBT)、BCIP/NBT、APオレンジ、APブルー、テトラメチルベンジジン(TMB)、2,2’−アジノ−ジ−[3−エチルベンゾチアゾリン スルホネート](ABTS)、o−ジアニシジン、4−クロロナフトール(4−CN)、ニトロフェニル−β−D−ガラクトピラノシド(ONPG)、o−フェニレンジアミン(OPD)、5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリル−β−ガラクトピラノシド(X−Gal)、メチルウンベリフェリル−β−D−ガラクトピラノシド(MU−Gall)、p−ニトロフェニル−α−D−ガラクトピラノシド(PNP)、5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリル−β−D−グルクロニド(X−Gluc)、3−アミノ−9−エチルカルバゾール(AEC)、フクシン、ヨードニトロテトラゾリウム(INT)、テトラゾリウムブルー、及びテトラゾリウムバイオレットが含まれる。ペルオキシダーゼ及び過酸化水素の存在下で酸化するDABは、茶色の、酵素活性の部位にアルコール不溶性の沈殿物の堆積をもたらす。
【0110】
いくつかの実施態様では、発色性基質は、潜在的反応部分及び発色部分を含むシグナル伝達コンジュゲートである。いくつかの実施態様では、シグナル伝達コンジュゲートの潜在的反応部分は、触媒活性化を受けて、試料又は他の検出成分と共有結合することができる反応種を形成するように構成されている。触媒活性化は、一又は複数の酵素(例えば、オキシドレダクターゼ酵素、及びホースラディッシュペルオキシダーゼのようなペルオキシダーゼ酵素)によって引き起こされ、反応種の形成をもたらす。これらの反応種は、それらの生成に近接した、即ち酵素に近い発色性部分と反応することができる。シグナル伝達コンジュゲートの特定の例は、米国特許公開第2013/0260379号に記載されており、その開示は、参照によりその全体が本明細書に援用される。
【0111】
他の基質は、米国特許第5,583,001号、米国特許公開第2012/0171668号、及び国際出願公開第PCT/EP2015/0533556号に記載されるものを含み、その開示は、参照によりその全文が本明細書に援用される。上記の参照文献に記載されるような、TSA又はQMコンジュゲートに結合する適切な発色性基質又は蛍光性基質は、N,N’−ビスカルボキシペンチル−5,5’−ジスルホネート−インド−ジカルボシアニン(Cy5)、4−(ジメチルアミノ)アゾベンゼン−4’−スルホンアミド(Dabsyl)、テトラメチルローダミン(Tamra)、及びローダミン 110(ローダミン)を含む。
【0112】
いくつかの実施態様では、発色性基質、蛍光性基質、又はシグナル伝達コンジュゲートは、発色性部分の検出可能なピーク波長が、互いに重ならず、病理学者又は光検出器(例えばスキャナ)によって容易に検出できるように選択される。いくつかの実施態様では、発色性部分は、異なる発色性部分のピーク波長が少なくとも約50nmで分離されるように選択される。他の実施態様では、発色性部分は、異なる発色性部分のピーク波長が少なくとも約70nmで分離されるように選択される。さらに他の実施態様では、発色性部分は、異なる発色性部分のピーク波長が少なくとも約100nmで分離されるように選択される。
【0113】
さらなる実施態様では、発色性部分は、組織標本に導入されるときに異なる色(例えば、黄、青、赤紫)を提供するように、選択される。いくつかの実施態様では、発色性部分は、互いの間に良好なコントラスト、例えば光学的に認識可能な色の分離を提供するように選択される。いくつかの実施態様では、発色性部分は、互いに近接して置かれるときに、単独で観察されるときの発色性部分のいずれかのシグナル又は色とは異なるシグナル又は色を提供するように選択される。
【0114】
ケージドハプテンコンジュゲートを使用した近接性の検出
本明細書でより詳細に記載されるように、本開示は、互いに近接したタンパク質ダイマー又はタンパク質の検出を可能にする。タンパク質−タンパク質相互作用の非限定的な例は、互いを伴うHer1/2/3/4タンパク質;PD−L1を伴うPD−1;及び/又は関連するリガンド(AREG、EREG)のいずれかを伴うPD−L2、EGFR(Her1)を含む。
【0115】
特定の理論に縛られることを望まないが、開示される近接アッセイは、タンパク質−タンパク質相互作用を単に測定するよりも、より一般的であると考えられる。実際、開示されるアッセイは、結合部分の近接性の測定を可能にする。実際には、結合部分(例えば抗体)は、それらの間に最小の距離を有するか又は距離を有しない標的に対して向けられうる。この例は、タンパク質のリン酸化のようなシグナル伝達事象を含みうる。この場合、一抗体がタンパク質(例えばHER2)上のエピトープに対して向けられ、第二の抗体が全ホスホ−チロシンに対して向けられている場合、近接性シグナルは、全てのリン酸化HER2タンパク質を表すであろう。この種のアッセイは、互いに相互作用するタンパク質の対よりも2値(イエス/ノー)である。
【0116】
いくつかの実施態様では、アッセイは、5000nm以下の近接性を有するタンパク質ダイマー又はタンパク質を検出することができる。他の実施態様では、アッセイは、2500nm以下の近接性を有するタンパク質ダイマー又はタンパク質を検出することができる。さらに他の実施態様では、アッセイは、1000nm以下の近接性を有するタンパク質ダイマー又はタンパク質を検出することができる。さらなる実施態様では、アッセイは、500nm以下の近接性を有するタンパク質ダイマー又はタンパク質を検出することができる。
【0117】
ケージドハプテンコンジュゲートは、単一アッセイ(タンパク質ダイマー又はタンパク質近接の検出)及び多重アッセイ(タンパク質ダイマー又はタンパク質近接の検出及び総タンパクの検出)の両方で使用されうることを当業者は理解するであろう。「総タンパク」は、所与のタンパク質の通常のIHC視覚化を指し、一方、近接シグナルは、所与の相互作用に関与するこのタンパク質の部分である。例えば、PD−1/PD−L1アッセイの場合、近接シグナルは、PD−1とPD−L1との間の相互作用のみを視覚化するが、総タンパクシグナルは試料中の全てのPD−1を視覚化する。分子として近接性のスコアを表し、分母として総タンパクのスコアを表すと、相互作用に関与するPD−1の割合又はパーセンテージを得ることができる。これは、タンパク質の発現が相互作用タンパク質の数よりも重要でないタンパク質−タンパク質相互作用を妨げる医薬品有効成分を検出するための診断として重要でありうる。これは、リン酸化されたシグナルの任意のスコアを単に受信する代わりに、所与のタンパク質の何パーセントがリン酸化されているかを定量することができる上記のようなリン酸化に当てはまると考えられる。
【0118】
図4に関して、タンパク質ダイマーの検出は、二つの一般的な段階で生じる。第一の段階において、試料は工程150で抗体コンジュゲートで標識される。第二の段階において、試料は、工程160で、第一の検出試薬と接触し、任意選択的に第二の検出試薬と接触する。
【0119】
いくつかの実施態様では、試料は、初めに、工程100で標的に特異的な非マスキング酵素−抗体コンジュゲートと接触し、標的−非マスキング酵素−抗体コンジュゲート複合体を形成する。続いて、試料はその後、工程110で式(III)のような、別の標的に特異的なケージドハプテン−抗体コンジュゲートと接触し、標的−ケージドハプテン−抗体コンジュゲート複合体を形成する。当業者により理解されるように、非マスキング酵素は、ケージドハプテン−抗体コンジュゲートの酵素基質部分と反応するように選択される。工程100及び110は任意の順序で実施されてもよく、又は、同時に実施されてもよいことを当業者は理解するであろう。いくつかの実施態様では、可逆的酵素阻害剤はまた、ケージドハプテン−抗体コンジュゲートの導入より前又は同時に導入される。例えば、いくつかの実施態様では、ケージドハプテン−抗体コンジュゲートは、リン酸バッファーで製剤化されうる。
【0120】
本明細書に記載されるように、ケージドハプテン−抗体コンジュゲートのケージドハプテン部分は、非マスク化され、それぞれの非マスク化ハプテン、すなわちネイティブハプテンを提供することができる。
図2に説明されるように、第一の標的101が、第二の標的102に十分近接していない場合、ケージドハプテン−抗体コンジュゲート103Aは、非マスキング酵素−抗体コンジュゲート104の非マスキング酵素がケージドハプテン−抗体コンジュゲート103Aの酵素基質と反応しうるように、非マスキング酵素−抗体コンジュゲート104に近接して提供される(近接性は105と標識される。)。これは、次に、第一の標的 非マスク化ハプテン−抗体コンジュゲート複合体(103B)の形成をもたらす。
図2で説明されるように、第一の標的 非マスク化ハプテン−抗体コンジュゲート複合体(103B)は、他の特異的結合実体(例えば二次抗体106)により結合又は認識することができる。
【0121】
いくつかの実施態様では、該方法はまた、オンスライド条件が酵素活性を増強するように変更される一又は複数の「脱ケージ化工程」を含む。アッセイの抗体コンジュゲート結合部分中、コンジュゲートが過剰である場合、ケージドハプテンの偶発的な「脱ケージ化」を防止し、偽陽性の結果をもたらす工程をとる。これらの工程は、可逆的酵素阻害剤の添加(例えば、ケージング基における酵素の作用を防止するため)を含む。例えば、アルカリホスファターゼ(AP)に関して、これらの阻害剤は、異なる機構によって酵素活性を低下させることができると考えられるリン酸、フェニルアラニン及びEDTAを含むことができる。いくつかの実施形態では、結合していない抗体コンジュゲートは洗浄によって除去されるため、最適な酵素活性に好ましいようにオンスライド条件を変更して、「脱ケージ化」を起こさせることが必要である。各脱ケージング酵素は、それ自体の最適条件(バッファー、塩、補助因子、温度)を有するであろう。これらの「脱ケージ化工程」は、任意の洗浄工程を含み、スライド上に存在する溶液又は試薬のpHを変更する工程、補助因子を添加する工程、又は温度を(例えば、約37℃から約50℃へ)変更する工程は、抗体コンジュゲートの特異的結合に干渉することなく、酵素の活性を増強し、「脱ケージ化」を促進するように選択される。例えば、APの場合、洗浄は、残留する阻害剤(例えばホスフェート)を除去するのに使用され、バッファーはまた、活性を増加させる(例えば、pHを約8を超えるように調整するためのトリス)のに使用され、補助因子(例えばマグネシウム)が添加される。いくつかの実施態様では、これらの条件のそれぞれはアッセイ全体に関して最適化され、例えば、APの活性は、1mMから1Mの濃度の範囲のマグネシウムイオンの添加により増強される。しかしながら、100mMを超えるマグネシウムイオンの濃度では、抗体結合は影響を受け、そのため、添加されうる量が限定される。最適化工程の別の例は、「脱ケージ化」工程の温度である。酵素工程後の「脱ケージ化」事象は、熱力学により引き起こされ、加熱により促進されうる。しかしながら、60℃超の温度は、酵素活性及び抗体コンジュゲート結合の両方に悪影響を及ぼしうる。
【0122】
他方、
図3で説明されるように、第一の標的101が第二の標的102に十分に近接していない場合、ケージドハプテン−抗体コンジュゲート103Aは、非マスキング酵素−抗体コンジュゲート104に近接して提供されない(近接性は108と標識される。)。この例では、非マスキング酵素は、ケージドハプテン−抗体コンジュゲート103Aの酵素基質と反応せず、したがって、ケージドハプテンは、マスク化又は保護状態のままである、すなわち、他の特異的結合実体により結合又は認識されることが不可能である。
【0123】
図2、4、及び12に関して、いくつかの実施態様では、試料は、その後、工程120で第一の検出試薬(106)と接触し、第一の検出試薬は、第一の標的 非マスク化ハプテン−抗体コンジュゲート複合体(103B)の非マスク化ハプテンに特異的である。いくつかの実施態様では、第一の検出試薬は、非マスク化ハプテン(103B)に特異的な二次抗体(106)、すなわち抗−非マスク化ハプテン抗体を含む。いくつかの実施態様では、抗−非マスク化ハプテン抗体(106)は、検出可能部分にコンジュゲートしている(例えば、
図2及び12において、検出可能部分はHRP酵素であり、HRP酵素は、銀発色性基質(111)のような基質に作用する)。第一の検出試薬(106)は、第一の標的 非マスク化ハプテン−抗体コンジュゲート複合体の生又は非マスク化ハプテン(103B)が非マスキング酵素−抗体コンジュゲート(104)の非マスキング酵素により示される場合にのみ結合することを、当業者は、当然、理解するであろう。したがって、第一の検出試薬(106)の検出可能部分からのシグナル(107)は、第一及び第二の標的(101及び102)、したがって抗体コンジュゲート(103A及び104)が互いに近接している場合にのみ、工程140で検出することができる。ここでは、検出されたシグナル(107)は、タンパク質ダイマー又は近接したタンパク質/標的を表す。
【0124】
いくつかの実施態様では、増幅工程は検出可能なシグナルを増加させるために行われうる。例えば、増幅成分は、第一の標的 非マスク化ハプテン−抗体コンジュゲートの非マスク化ハプテンを追加のレポーター部分、例えば追加のハプテン又はその他「検出可能部分」でさらに標識するために導入されうる。例として、増幅ハプテンにコンジュゲートしている(又は、他の実施態様では、酵素にコンジュゲートしている)抗−非マスク化ハプテン抗体は、第一の標的 非マスク化ハプテン−抗体コンジュゲートの非マスク化ハプテンを複数の増幅ハプテンで標識するために導入されうる。続いて、それぞれ検出可能部分にコンジュゲートしている抗−増幅ハプテン抗体が導入されうる。いくつかの実施態様では、抗−増幅ハプテン抗体は酵素にコンジュゲートしており、酵素は導入された基質に作用し、シグナル(例えば、視覚的シグナルを生成する発色性基質又は蛍光性基質)を生成する。それぞれ本明細書に記載されるTSA及びQMコンジュゲートは、任意の増幅工程で使用されうる。いくつかの実施態様では、シグナル増幅は、Amplification Kit(Ventana Medical Systems、Inc.、Tucson、Ariz.、カタログ番号760−099)を使用して行われる。
【0125】
非マスキング酵素−抗体コンジュゲートの非マスキング酵素は、二つの機能、すなわち(i)ケージドハプテンを非マスク化するか又は明らかにすること;及び(ii)非マスク化ハプテンにより生成されたもの(すなわち、非マスク化ハプテン−抗体コンジュゲート複合体)から独立したシグナルが検出されうるように、別の基質(例えば発色性基質又は蛍光性基質)と反応することを果たすことを、当業者は認識するであろう。したがって、本明細書により開示される系は、タンパク質のうちの一つに関する総タンパク染色に関して視覚化される二のタンパク質間の近接性を可能にする。特定の理論に縛られることを望まないが、別のタンパク質染色に関する多重近接性検出の能力は、迅速な、誘導されたスライド読み取り(すなわち、総タンパク内の近接シグナルのみを探す)又は他と相互作用しているタンパク質の割合を定量する能力(近接アッセイをスコア化する方法)を可能にする特徴であると考えられている。
【0126】
図2、4、及び12に関して、第一の検出試薬(106)の導入に続いて、第二の検出可能な部分(109)を含む第二の検出試薬は、総タンパクが検出されるように、工程130で任意選択的に試料に導入されうる。いくつかの実施態様では、第二の検出可能な部分は、第一の検出可能な部分(107)のものとは異なるシグナル(112)を提供する。いくつかの実施態様では、第二の検出可能な部分は、非マスキング酵素のための基質、例えば、黄色のシグナル(109)を提供する発色性基質を含む。他の実施態様では、第二の検出可能な部分は、シグナル伝達コンジュゲートを含む。工程120及び130は任意の順序で実施されてもよく、又は、同時に実施されてもよいことを当業者は理解するであろう。
【0127】
いくつかの実施態様では、生物学的試料は、内因性のペルオキシダーゼ活性を実質的に又は完全に不活性化するために、酵素不活性化組成物で前処理される。例えば、いくつかのセル又は組織は、内因性のペルオキシダーゼを含有する。抗体にコンジュゲートしているHRPの使用は、高い、非特異的な背景染色をもたらしうる。この非特異的背景染色は、試料を本明細書に開示されるような酵素不活性化組成物で前処理することにより、減少させることができる。いくつかの実施態様では、試料は、内因性のペルオキシダーゼ活性を減少させるために、過酸化水素のみ(適切な前処理溶液の約1重量%から約3重量%)で前処理される。一旦内因性のペルオキシダーゼ活性が減少又は不活性化されると、検出キットが添加されてもよく、続いて、上に記載されるように検出キットに存在する酵素の不活性化が生じる。開示される酵素不活性化成物及び方法はまた、内因性の酵素ペルオキシダーゼ活性を不活性化させる方法としても使用されうる。
【0128】
いくつかの実施態様では、標本がパラフィン包埋された試料である場合、適切な脱パラフィン液を用いて試料を脱パラフィン化することができる。廃棄物除去剤が脱パラフィン液を除去した後、任意の数の物質を標本に連続的に適用することができる。前記物質は、前処理(例えばタンパク質架橋、核酸の曝露など)、変性、ハイブリダイゼーション、洗浄(例えばストリンジェンシー洗浄)、検出(例えば視覚的又はマーカー分子をプローブに連結する)、増幅(タンパク質、遺伝子などの増幅)、対比染色、カバースリッピングなどのためである。
【0129】
自動化
本開示のアッセイ及び方法は自動化されてもよく、標本処理装置と組み合わされてもよい。標本処理装置は、Ventana Medical Systems、Inc.により販売されているBENCHMARK XT装置及びSYMPHONY装置などの自動装置とすることができる。Ventana Medical Systems、Inc.は、自動分析を実行するためのシステム及び方法を開示している、米国特許第5650327号、第5654200号、第6296809号、第6352861号、第6827901号及び第6943029号、並びに米国特許出願公開第20030211630号及び第20040052685号を含めた複数の米国特許の譲受人であり、これらの各々は、全体が参照により本明細書に援用される。あるいは、標本を手動で処理することもできる。
【0130】
標本処理装置は、標本に固定剤を適用することができる。固定剤は、架橋結合剤(例えば、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、及びグルタルアルデヒドのようなアルデヒド、並びに非アルデヒド架橋結合剤)、酸化剤(例えば、四酸化オスミウム及びクロム酸のような金属イオン及び錯体)、タンパク質変性剤(例えば、酢酸、メタノール、及びエタノール)、未知の機構の固定剤(塩化第二水銀、アセトン、及びピクリン酸)、組合せ試薬(例えば、カルノワ固定液、メタカン、ブアン固定液、B5固定液、ロスマン液、及びジャンドル液)、マイクロ波、並びに雑多な固定剤(例えば排除体積固定及び蒸気固定)を含みうる。
【0131】
標本がパラフィン包埋された試料である場合、適切な脱パラフィン液を用いて、標本処理装置で試料を脱パラフィン化することができる。廃棄物除去剤が脱パラフィン液を除去した後、任意の数の物質を標本に連続的に適用することができる。前記物質は、前処理(例えばタンパク質架橋、核酸の曝露など)、変性、ハイブリダイゼーション、洗浄(例えばストリンジェンシー洗浄)、検出(例えば視覚的又はマーカー分子をプローブに連結する)、増幅(タンパク質、遺伝子などの増幅)、対比染色、カバースリッピングなどのためである。
【0132】
標本処理装置は、広範な物質を標本に適用することができる。物質は、限定するものではないが、染料、プローブ、試薬、リンス、及び/又はコンディショナーを含む。物質は、流体(例えば、気体、液体、又は気体/液体混合物)等を含みうる。流体は、溶媒(例えば、極性溶媒、非極性溶媒等)、溶液(例えば、水溶液、又は他のタイプの溶液)等であってもよい。試薬は、限定するものではないが、染料、湿潤剤、抗体(例えばモノクローナル抗体、ポリクローナル抗体等)、抗原回収流体(例えば、水性又は非水性系抗原回収溶液、抗原回収バッファー等)等を含みうる。プローブは、検出可能な標識に付着した単離核酸又は単離合成オリゴヌクレオチドであってもよい。標識は、放射性同位体、酵素基質、補助因子、リガンド、化学発光又は蛍光性薬剤、ハプテン及び酵素を含みうる。
【0133】
標本を処理した後、ユーザは、標本搭載スライドを画像化装置に移してもよい。ここで使用される画像化装置は、明視野撮像スライドスキャナである。明視野撮像装置の一つは、Ventana Medical Systems、Inc.により版害されるiScan Coreo
TM明視野スキャナである。自動化の実施態様では、画像化装置は、画像化システム及び技術(IMAGING SYSTEM AND TECHNIQUES)と題された国際特許出願番号:PCT/US2010/002772(特許公開番号:国際公開第2011/049608号)、又は画像化システム、カセット、及びそれらの使用方法(IMAGING SYSTEMS、CASSETTES、AND METHODS OF USING THE SAME)と題された、2014年2月3日出願の米国特許公開第2014/0178169号に開示されているようなデジタル病理装置である。国際特許出願番号:PCT/US2010 /002772及び米国特許公開第2014/0178169号は、全体が参照により援用される。他の実施態様では、画像化装置は、顕微鏡にカップリングされたデジタルカメラを含む。
【0134】
対比染色
対比染色は、標的の構造が顕微鏡下でより容易に視覚化され得るように、一又は複数の標的を検出するための薬剤で既に染色した後の試料を後処理する方法である。例えば、対比染料をカバースリッピングの前に任意選択的に使用し、免疫組織化学染色をより明瞭にする。対比染料は、一次染料と色が異なる。多くの対比染料、例えばヘマトキシリン、エオシン、メチルグリーン、メチレンブルー、ギムザ、アルシアンブルー、及びニュークリアファストレッド(Nuclear Fast Red)がよく知られている。DAPI(4’,6−ジアミジノ−2−フェニルインドール)は、使用されうる蛍光性染料である。
【0135】
いくつかの例では、対比染色を生じさせるために一より多い染料を混合することができる。これにより、染料選択能及び融通性がもたらされる。例えば、特定の属性を有するが別の所望の属性を有さない混合物に対して、第一の染料を選択することができる。不足している所望の属性を示す混合物に第二の染料を加えることができる。例えば、トルイジンブルー、DAPI、及びポンタミン(pontamine)スカイブルーを混合して対比染料を形成することができる。
【0136】
検出及び/又は画像化
本開示の実施態様のすべて又は特定の態様は、コンピュータ解析及び/又は画像解析システムによって自動化され、容易にされ得る。いくつかのアプリケーションでは、正確な色又は蛍光性の比率が測定される。いくつかの実施態様では、画像解析のために光学顕微鏡法が利用される。特定の本開示の実施態様は、デジタル画像を取得することを伴う。これは、デジタルカメラを顕微鏡に連結することにより行うことができる。染色した試料から得られたデジタル画像は、画像解析ソフトウェアを用いて解析する。色又は蛍光性は、いくつかの異なる方法で測定することができる。たとえば、色は、赤、青、緑の値;色相、彩度、強度の値として、及び/又はスペクトルイメージングカメラを使用して特定の波長又は波長の範囲を測定することによって測定することができる。また、試料を定性的及び半定量的に評価することができる。定性的評価は、染色強度を評価すること、陽性染色細胞及び染色に関与する細胞内区画を同定すること、試料全体又はスライドの品質を評価することを含む。試験試料に対して別々の評価が行われるため、この解析は、試料が異常な状態を表すかどうかを決定するための既知の平均値との比較を含み得る。
【0137】
キット
いくつかの実施態様では、本開示のケージされたハプテンコンジュゲートは、「検出キット」の一部として利用されうる。一般に、検出キットは、一又は複数のケージドハプテンコンジュゲート及び一又は複数のケージドハプテンコンジュゲートを検出するための検出試薬を含みうる。
【0138】
検出キットは、検出キットを介してケージドハプテンをコンジュゲートを検出できるように、ケージドハプテンコンジュゲートを含む第一の組成物と、その第一の組成物に特異的な検出試薬を含む第二の組成物とを含みうる。いくつかの実施態様では、検出キットは、(例えば、バッファー中で一緒に混合された)複数のケージドハプテンコンジュゲートを含み、ここで、検出キットはまた、複数のケージドハプテンコンジュゲートのそれぞれに特異的な検出試薬も含む。
【0139】
当然、あらゆるキットは、手動又は自動の標的検出のために必要に応じて、緩衝液;対比染色剤;酵素不活性化組成物;脱パラフィン溶液等を含めた他の薬剤を含んでもよい。キットはまた、キットの構成要素を組織試料に適用し、そこで一又は複数の標的の検出を実行する方法を含む、キットのいずれかの構成要素を使用するための指示も含みうる。
【0140】
試料及び標的
試料は、生物学的成分を含み、一般に一又は複数の目的の標的分子を含むと思われる。標的分子は、細胞の表面上に存在し得、細胞は、懸濁液中又は組織切片中に存在し得る。標的分子はまた、細胞内に存在し得、プローブによる細胞溶解又は細胞侵入の際に検出され得る。当業者は、試料中の標的分子を検出する方法が使用される試料及びプローブの種類に応じて変化することを理解するであろう。試料を収集し調製する方法は、当技術分野で既知である。
【0141】
本方法の実施態様において使用するための、また本明細書に開示の組成物と共に使用するための試料(例えば組織又は他の生物学的試料)は、当業者に既知の任意の方法を用いて調製することができる。試料は、常套的なスクリーニングのために被験体から、又は遺伝的異常、感染若しくは新生物などの障害を有すると疑われる被験体から得ることができる。本開示の方法の記載されている実施態様は、「正常」試料と呼ばれる、遺伝的異常、疾患、障害等を有しない試料にも適用することができる。そのような正常試料は、他の試料と比較するためのコントロールなどとして有用である。試料は、さまざまな目的で分析できる。例えば、試料は、科学的研究において、又は疑いのある疾患の診断のために、又は治療の成功、生存等の予後指標として使用することができる。
【0142】
試料は、プローブ又はレポーター分子によって特異的に結合され得る複数の標的を含み得る。標的は、核酸配列又はタンパク質であってもよい。本開示を通して、標的タンパク質について言及する場合、そのタンパク質に関連する核酸配列もまた標的として使用できることが理解される。いくつかの例では、標的は、ウイルスゲノムからのような、ウイルス、細菌又は細胞内寄生体等の病原体に由来するタンパク質又は核酸分子である。例えば、標的タンパク質は、疾患に関連する(例えば相関関係、因果関係など)標的核酸配列から産生され得る。
【0143】
標的核酸配列は、実質的にサイズが変化し得る。核酸配列は、制限なく、可変数の核酸残基を有し得る。例えば、標的核酸配列は、少なくとも約10核酸残基、又は少なくとも約20、30、50、100、150、500、1000残基を有し得る。同様に、標的ポリペプチドは、実質的にサイズが変化し得る。制限なく、標的ポリペプチドは、ペプチド特異的抗体又はその断片に結合する少なくとも一つのエピトープを含む。いくつかの実施態様では、標的ポリペプチドは、ペプチド特異的抗体又はその断片に結合する少なくとも二つのエピトープを含み得る。
【0144】
特定の非限定的な例では、標的タンパク質は、新生物(例えばたん)に関連する標的核酸配列(例えばゲノム標的核酸配列)によって産生される。新生細胞、特にB細胞及びT細胞白血病、リンパ腫、乳がん、結腸がん、神経学的がん等のがん細胞において、多数の染色体異常(転座及び他の再構成、増幅又は欠失を含む)が同定されている。したがって、いくつかの例において、標的分子の少なくとも一部は、試料中の少なくとも細胞のサブセットにおいて増幅又は欠失された核酸配列(例えばゲノム標的核酸配列)によって産生される。
【0145】
発がん遺伝子は、いくつかのヒト悪性腫瘍の原因であることが知られている。例えば、染色体18q11.2のブレークポイント領域に位置するSYT遺伝子が関与する染色体再編成は、滑膜肉腫軟組織腫瘍に共通する。t(18q11.2)転座は、例えば異なる標識を有するプローブを用いて同定され得:第一のプローブは、SYT遺伝子から遠位に伸びる標的核酸配列から生成されるFPC核酸分子を含み、第二のプローブは、SYT遺伝子の3’又は近位に伸びる標的核酸配列から生成されるFPC核酸を含む。これらの標的核酸配列(例えばゲノム標的核酸配列)に対応するプローブがin situハイブリダイゼーション手順において使用される場合、SYT遺伝子領域においてt(18q11.2)を欠く正常細胞は、SYTの2つのインタクトなコピーを反映する、二つの融合(近接した二つの標識により生成された)シグナルを示す。t(18q11.2)を有する異常細胞は、単一の融合シグナルを示す。
【0146】
他の例では、悪性細胞において欠損(喪失)している腫瘍抑制遺伝子である核酸配列(例えばゲノム標的核酸配列)から産生された標的タンパク質が選択される。例えば、染色体9p21上に位置するp16領域(D9S1749、D9S1747、p16(INK4A)、p14(ARF)、D9S1748、p15(INK4B)、及びD9S1752を含む)は、特定の膀胱がんにおいて欠失される。染色体1(例えばSHGC57243、TP73、EGFL3、ABL2、ANGPTL1、及びSHGC−1322を包含する)の短腕の遠位領域及び染色体19(例えばMAN2B1、ZNF443、ZNF44、CRX、GLTSCR2、及びGLTSCR1を包含する)のペリセントロメア領域(例えば19p13〜19q13)を含む染色体欠失は、中枢神経系のある種の固形腫瘍の特徴的な分子的特性である。
【0147】
上記の例は、説明のためにのみ提供されており、限定することを意図するものではない。腫瘍性形質転換及び/又は増殖と相関する多数の他の細胞遺伝学的異常が、当業者に知られている。新生物形質転換と相関しており、本開示の方法において有用である核酸配列(例えばゲノム標的核酸配列)によって産生される標的タンパク質はまた、EGFR遺伝子(7p12;例えば GENBANK
TM アクセッション番号NC-000007、ヌクレオチド55054219−55242525)、C−MYC遺伝子(8q24.21;例えばGENBANK
TM アクセッション番号NC-000008、ヌクレオチド128817498−128822856)、D5S271(5p15.2)、リポタンパク質リパーゼ(LPL)遺伝子(8p22;例えばGENBANK
TM アクセッション番号NC-000008、ヌクレオチド19841058−19869049)、RB1(13q14;例えばGENBANK
TM アクセッション番号NC-000013、ヌクレオチド47775912−47954023)、p53(17p13.1;例えばGENBANK
TM アクセッション番号NC-000017、補体、ヌクレオチド7512464−7531642))、N−MYC(2p24;例えばGENBANK
TM アクセッション番号NC-000002、補体、ヌクレオチド151835231−151854620)、CHOP(12q13;例えばGENBANK
TM アクセッション番号NC-000012、補体、ヌクレオチド56196638−56200567)、FUS(16p11.2;例えばGENBANK
TM アクセッション番号NC-000016、ヌクレオチド31098954−31110601)、FKHR(13p14;例えばGENBANK
TM アクセッション番号NC-000013、補体、ヌクレオチド40027817−40138734)の他、例えば:ALK(2p23;例えばGENBANK
TM アクセッション番号NC-000002、補体、ヌクレオチド29269144−29997936)、Ig重鎖、CCND1(11q13;例えばGENBANK
TM アクセッション番号NC-000011、ヌクレオチド69165054.69178423)、BCL2(18q21.3;例えばGENBANK
TM アクセッション番号NC-000018、補体、ヌクレオチド58941559−59137593)、BCL6(3q27;例えばGENBANK
TM アクセッション番号NC-000003、補体、ヌクレオチド188921859−188946169)、MALF1、AP1(1p32−p31;例えばGENBANK
TM アクセッション番号NC-000001、補体、ヌクレオチド59019051−59022373)、TOP2A(17q21−q22;例えばGENBANK
TM アクセッション番号NC-000017、補体、ヌクレオチド35798321−35827695)、TMPRSS(21q22.3;例えばGENBANK
TM アクセッション番号NC-000021、補体、ヌクレオチド41758351−41801948)、ERG(21q22.3;例えばGENBANK
TM アクセッション番号NC-000021、補体、ヌクレオチド38675671−38955488);ETV1(7p21.3;例えばGENBANK
TM アクセッション番号NC-000007、補体、ヌクレオチド13897379−13995289)、EWS(22q12.2;例えばGENBANK
TM アクセッション番号NC-000022、ヌクレオチド27994271−28026505);FLI1(11q24.1−q24.3;例えばGENBANK
TM アクセッション番号NC-000011、ヌクレオチド128069199−128187521)、PAX3(2q35−q37;例えばGENBANK
TM アクセッション番号NC-000002、補体、ヌクレオチド222772851−222871944)、PAX7(1p36.2−p36.12;例えばGENBANK
TM アクセッション番号NC-000001、ヌクレオチド18830087−18935219)、PTEN(10q23.3;例えばGENBANK
TM アクセッション番号NC-000010、ヌクレオチド89613175−89716382)、AKT2(19q13.1−q13.2;例えばGENBANK
TM アクセッション番号NC-000019、補体、ヌクレオチド45431556−45483036)、MYCL1(1p34.2;例えばGENBANK
TM アクセッション番号NC-000001、補体、ヌクレオチド40133685−40140274)、REL(2p13−p12;例えばGENBANK
TM アクセッション番号NC-000002、ヌクレオチド60962256−61003682)、及びCSF1R(5q33−q35;例えばGENBANK
TM アクセッション番号NC-000005、補体、ヌクレオチド149413051−149473128)を含む。
【0148】
他の例において、標的タンパク質は、疾患又は状態に関連するウイルス又は他の微生物から選択される。細胞又は組織試料中のウイルス又は微生物由来標的核酸配列(例えばゲノム標的核酸配列)の検出は、生物の存在を示す。例えば、標的ペプチド、ポリペプチド又はタンパク質は、発がん性又は病原性ウイルス、細菌又は細胞内寄生体(例えば熱帯熱マラリア原虫及び他のマラリア原虫種、リーシュマニア属(種)、クリプトスポリジウム属パルバム、赤痢アメーバー、及びランブル鞭毛虫、並びにトキソプラズマ属、エイメリア属、タイレリア属、及びバベシア属種)のゲノムから選択され得る。
【0149】
いくつかの例において、標的タンパク質は、ウイルスゲノムからの核酸配列(例えばゲノム標的核酸配列)から産生される。例示的ウイルス及び対応するゲノム配列(GENBANK
TM 参照配列(RefSeq)括弧内はアクセッション番号)は、ヒトアデノウイルスA(NC-001460)、ヒトアデノウイルスB(NC-004001)、ヒトアデノウイルスC(NC-001405)、ヒトアデノウイルスD(NC-002067)、ヒトアデノウイルスE(N-003266)、ヒトアデノウイルスF(NC-001454)、ヒトアストロウイルス(NC-001943)、ヒトBKポリオーマウイルス(V01109;GI:60851)ヒトボカウイルス(NC-007455)、ヒトコロナウイルス229E(NC-002645)、ヒトコロナウイルスHKU1(NC-006577)、ヒトコロナウイルスNL63(NC-005831)、ヒトコロナウイルスOC43(NC-005147)、ヒトエンテロウイルスA(NC-001612)、ヒトエンテロウイルスB(NC-001472)、ヒトエンテロウイルスC(NC-001428)、ヒトエンテロウイルスD(NC-001430)、ヒトエリスロウイルスV9(NC-004295)、ヒトフォーミーウイルス(NC-001736)、ヒトヘルペスウイルス1(単純ヘルペスウイルス1型)(NC-001806)、ヒトヘルペスウイルス2(単純ヘルペスウイルス2型)(NC-001798)、ヒトヘルペスウイルス3(水痘帯状疱疹ウイルス)(Nc-001348)、ヒトヘルペスウイルス4 1型(エプスタイン・バーウイルス1型)(NC-007605)、ヒトヘルペスウイルス4 2型(エプスタイン・バーウイルス2型)(NC-009334)、ヒトヘルペスウイルス5 AD169株(NC-001347)、ヒトヘルペスウイルス5 Merlin株(NC-006273)、ヒトヘルペスウイルスA(NC-001664)、ヒトヘルペスウイルス6B(NC-000898)、ヒトヘルペスウイルス7(NC-001716)、ヒトヘルペスウイルス8 M型(NC-003409)、ヒトヘルペスウイルス8 P型(NC-009333)、ヒト免疫不全ウイルス1(NC-001802)、ヒト免疫不全 ウイルス2(NC-001722)、ヒトメタニューモウイルス(NC-004148)、ヒトパピローマウイルス−1(NC-001356)、ヒトパピローマウイルス−18(NC-001357)、ヒトパピローマウイルス−2(NC-001352)、ヒトパピローマウイルス−54(NC-001676)、ヒトパピローマウイルス−61(NC-001694)、ヒトパピローマウイルス cand90(NC-004104)、ヒトパピローマウイルス RTRX7(NC-004761)、ヒトパピローマウイルス 10型(NC-001576)、ヒトパピローマウイルス101型(NC-008189)、ヒトパピローマウイルス103型(NC-008188)、ヒトパピローマウイルス 107型(NC-009239)、ヒトパピローマウイルス16型(NC-001526)、ヒトパピローマウイルス24型(NC-001683)、ヒトパピローマウイルス26型(NC-001583)、ヒトパピローマウイルス32型(NC-001586)、ヒトパピローマウイルス34型(NC-001587)、ヒトパピローマウイルス4型(NC-001457)、ヒトパピローマウイルス41型(NC-001354)、ヒトパピローマウイルス48型(NC-001690)、ヒトパピローマウイルス49型(NC-001591)、ヒトパピローマウイルス5型(NC-001531)、ヒトパピローマウイルス50型(NC-001691)、ヒトパピローマウイルス53型(NC-001593)、ヒトパピローマウイルス60型(NC-001693)、ヒトパピローマウイルス63型(NC-001458)、ヒトパピローマウイルス6b型(NC-001355)、ヒトパピローマウイルス7型(NC-001595)、ヒトパピローマウイルス71型(NC-002644)、ヒトパピローマウイルス9型(NC-001596)、ヒトパピローマウイルス92型(NC-004500)、ヒトパピローマウイルス96型(NC-005134)、ヒトパラインフルエンザウイルス1(NC-003461)、ヒトパラインフルエンザウイルス2(NC-003443)、ヒトパラインフルエンザウイルス3(NC-001796)、ヒトパレコウイルス(NC-001897)、ヒトパルボウイルス4(NC-007018)、ヒトパルボウイルスB19(NC-000883)、ヒト呼吸器合胞体ウイルス(NC-001781)、ヒトライノウイルスA(NC-001617)、ヒトライノウイルスB(NC-001490)、ヒトスプーマレトロウイルス(spumaretrovirus)(NC-001795)、ヒトT−リンホトロピックウイルス1(NC-001436)、ヒトT−リンホトロピックウイルス2(NC-001488)を含む。
【0150】
特定の例では、標的タンパク質は、エプスタイン・バーウイルス(EBV)又はヒトパピローマウイルス(HPV、例えばHPV16、HPV18)などの発がん性ウイルス由来の核酸配列(例えばゲノム標的核酸配列)から産生される。他の例では、核酸配列(例えばゲノム標的核酸配列)から産生される標的タンパク質は、呼吸器合胞体ウイルス、肝炎ウイルス(例えばC型肝炎ウイルス)、コロナウイルス(例えばSARSウイルス)、アデノウイルス、ポリオーマウイルス、サイトメガロウイルス(CMV)又は単純ヘルペスウイルス(HSV)等の病原性ウイルス由来である。
【実施例】
【0151】
実施例1−[4−({[3−({2−[3−(2,5−ジオキソ−2,5−ジヒドロ−1H−ピロール−1−イル)プロパンアミド]エチル}カルバモイル)キノキサリン−2−イル]オキシ}メチル)−3,5−ジメトキシフェノキシ]ホスホン酸の合成(スキーム1を参照)。
2−ヒドロキシキノキサリン(HQ)ハプテンを、アルカリホスファターゼ(AP)により放出することができるケージング基、すなわち、ホスファターゼ酵素基質部分を含むケージング基で修飾した。二次抗種抗体(ヤギ抗ウサギ及びヤギ抗マウス)を、ケージドハプテン(cHQ)又はAPのいずれかで個別に標識した。したがって、ウサギ及びマウス一次抗体の任意の対を試験し、それらの互いとの近接性を決定することができた。以下に規定され、抗体とのコンジュゲーション(cHQ−MAL)のためのマレイミド(MAL)反応基を用いたケージドHQの調製を記載するスキーム1で説明される方法に従って、ケージドHQを合成した。
スキーム3:[4−({[3−({2−[3−(2,5−ジオキソ−2,5−ジヒドロ−1H−ピロール−1−イル)プロパンアミド]エチル}カルバモイル)キノキサリン−2−イル]オキシ}メチル)−3,5−ジメトキシフェノキシ]ホスホン酸の合成
【0152】
化合物2.EtOAc(25mL)に2,6−ジメトキシ−4−ヒドロイシベンズアルデヒド(5.00g、27.4mmol)及びトリエチルアミン(4.17g、5.74mL、41.2mmol)が入った溶液を氷浴中で撹拌しながら0℃に冷却した。ジエチルクロロホスフェート(4.73g、27.4mmol)をその後5分間にわたって滴下した。反応物を室温まで温め、続いて室温(「rt」)で約6時間撹拌した(HPLCをチェックし、反応が約90%超完了したことを確認)。反応混合物を、1MのHCl(100mL)の添加によりクエンチし、有機層を分離し、回収した。追加量のEtOAc(100mL)を添加し、1MのHCl(2×100mL)、飽和NaHCO
3(3×100mL)及びブライン(100mL)で有機物を抽出した。有機層をMgSO
4上で乾燥させ、溶媒を減圧下で除去し、明褐色の粘性油状物として化合物2を得た(7.95g、収率91%)。
【0153】
化合物3.THF(約100mL)中の化合物2(7.95g、25.0mmol)の溶液を氷浴中で撹拌しながら約0℃に冷却した。NaBH
4(1.42g、37.5mmol)をモルタル及び乳棒を用いてつぶして微粉末にし、少量ずつ添加し、続いて室温で約4時間撹拌した(HPLCをチェックして反応の完了を確認)。反応混合物を、泡立ちが終わるまで、1MのHClを添加することにより注意深くクエンチした。その後、THFの大部分を減圧下で除去した。得られた反応混合物を、EtOAc(3×100mL)で抽出した。有機層を回収し組合せ、続いてブライン(約100mL)で洗浄し、MgSO
4上で乾燥させた。その後、溶媒を減圧下で除去した。得られた明褐色粘性油状物を乾燥CH
2Cl
2(約50mL)に溶かし、続いて、撹拌しながらN
2の雰囲気下氷浴中で約0℃に冷却した。SOCl
2(4.46g、2.72mL、37.5mmol)をその後約5分間滴下した。反応混合物を室温まで温め、続いて室温で追加で1時間撹拌した(HPLCをチェックし、反応の完了を確認)。反応混合物を、泡立ちが終わるまで飽和NaHCO
3を添加することにより注意深くクエンチした。得られた反応混合物を、CH
2Cl
2(3×100mL)で抽出した。有機層を回収し組合せ、続いてブライン(100mL)で洗浄し、MgSO
4上で乾燥させた。その後、溶媒を減圧下で除去し、オフホワイトの可融固形物として化合物3を得た(7.54g、収率89%)。
【0154】
化合物5.3−ヒドロキシ−2−キノキサリンカルボキシル酸(3.00g、15.8mmol)をDMF(50mL)に溶かし、続いて、4−ジメチルアミノピリジン(2.12g、17.4mmol)を添加した。反応混合物を4−ジメチルアミノピリジンが溶けるまで室温で撹拌し、その時点で、N,N’−ジスクシンイミジルカーボネート(4.45g、17.4mmol)を添加した。反応混合物を室温で30分間撹拌した(HPLCをチェックし、反応の完了を確認。反応が完了していなかった場合、HPLCが完全な変換を示すまで、追加の0.1当量のDSCを添加した)。その後、DMF(10mL)にN−Boc−エチレンジアミン(3.04g、19.0mmol)及びトリエチルアミン(2.40g、3.30mL、23.7mmol)が入った溶液を添加し、反応物を室温で1時間撹拌した(反応の完了についてHPLCをチェックした)。その後、反応混合物を、激しく撹拌中の1MのHCl(250mL)の溶液に注いだ。得られた沈殿物を減圧濾過により回収し、水で複数回洗浄し、高圧下で乾燥させ、黄色の固形物として化合物5を得た(5.10g、収率97%)。
【0155】
化合物6.化合物5(2.50g、7.52mmol)をDMF(50mL)に溶かし、続いて、化合物3(3.82g、11.3mmol)及びK
2CO
3(5.20g、37.6mmol)を添加した。反応器を密封し、油浴中で激しく撹拌しながら2時間にわたって55℃に加熱した(反応の完了についてHPLCを確認した。反応が完了していなかった場合、HPLCが化合物5の完全な消費を示すまで追加の0.1当量の化合物3を添加した)。反応混合物を濾過し、濾液を、泡立ちが終わるまで、1MのHClを添加することにより注意深くクエンチした。得られた反応混合物を、EtOAc(3×100mL)で抽出した。有機層を回収し組合せ、続いてブライン(100mL)で洗浄し、MgSO
4上で乾燥させた。その後、溶媒を減圧下で除去し、明黄色の粘性油状物を得た。得られた残留物をフラッシュクロマトグラフィー(Biotage Snap 50;hex:EA 1:0から1:4)で生成し、明黄色の固形物として化合物6を得た(3.15g、収率66%)。
【0156】
化合物7.化合物6(3.15g、4.96mmol)を乾燥CH
2Cl
2(25mL)中に溶かし、続いて臭化トリメチルシリル(3.80g、3.28mL、24.8mmol)を5分間にわたって滴下した。反応管を密封し、反応混合物を16時間室温で撹拌した(HPLCをチェックし、反応の完了を確認)。その後MeOH(25mL)を添加し、溶媒を減圧下で除去した。得られた固体をCH
2Cl
2(100mL)で粉砕し、えられた固体を減圧濾過により回収し、明黄色の固体として化合物7を得た(2.06、収率87%)。
【0157】
化合物8.化合物7(2.06g、4.31mmol)をDMF(10mL)中に懸濁させ、続いて、トリエチルアミン(654mg、900μL、6.46mmol)を添加し、最後に3−マレイミドプロピオン酸NHSエステル(1.15g、4.31mmol)を添加した。反応器を密封し、反応混合物を室温で約4時間激しく撹拌した(HPLCを確認して反応の完了を確認)。その後、反応混合物をMeOH(10mL)で希釈し、5部で予備RP−HPLCにより直接精製し(40分間、99:1から5:95のH
2O:MeCN中0.05%TFA)、明黄色の固体として化合物8を得た(1.95g、収率72%)。
【0158】
マレイミド官能化HQ(cHQ−MAL)を、二の方法により、ジスルフィド基又はリジン基を介して、ヤギ−抗−ウサギ及びヤギ−抗−マウスIgG抗体の両方にコンジュゲートさせた。ジスルフィド法では、ジチオスレイトール(DTT)によりIgGを減少させ、その後、余剰のcHQ−MALで処理した。リジン法に関して、余剰のcHQ−MALを添加する前に、IgGを余剰のトラウト試薬(2−イミノチオランヒドロクロリド)で処理した。どちらの場合においても、コンジュゲートをサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)により精製し、ゲル電気泳動及び紫外可視分光法により特性化した。
【0159】
実施例2−ケージング基のブロッキングの確認
実施例1のケージドハプテン−抗体コンジュゲートのケージング基が、抗−ハプテン抗体がそれぞれのネイティブ(すなわち、非マスク化)ハプテンに結合することを妨げたことを確認するため、cHQ コンジュゲートを単一IHC検出により試験した。
図5はIHC染色スキームを説明しており、cHQにコンジュゲートしている二次抗体、すなわちcHQケージドハプテン−抗体コンジュゲート(103A)を用いて、単抗原(114)を検出した。cHQケージドハプテン−抗体コンジュゲート(103A)の導入に続いて、AP酵素(すなわち非コンジュゲートAP)(113)を導入し、ケージドハプテン−抗体コンジュゲートのハプテンを非マスクした。得られた非マスク化ハプテン(103B)は、抗−ハプテン抗体(115)により認識することができた。いくつかの実施態様では、抗−ハプテン抗体(115)は、一又は複数の酵素にコンジュゲートしている(
図5は、3のHRP酵素への結合を説明する。)。
【0160】
図6A〜6Cに関して、マウス−抗−PSAは、その前立腺組織上の標的エピトープに結合し、続いて、cHQにコンジュゲートしているヤギ−抗−マウス(GAM−cHQ)により結合した。非ケージドHQに結合しているヤギ−抗−マウス(GAM−HQ)を使用してコントロールスライド(例えば
図6C)を生成した。連続する切片を二の異なる条件、すなわち(i)フリーの(非コンジュゲート)APを含む溶液、pH調整バッファー及びAP補助因子(マグネシウム塩);並びに(ii)APを含まない溶液、pH調整バッファー及びAP補助因子(マグネシウム塩)に曝露させた。
図6AはAPを含む溶液で処理した組織を説明し、
図6Bは処理されていない組織、すなわち、APを含まない溶液を説明する。
図6Cは、非ケージドHQで標識された二次抗体を含むコントロールスライドを説明する。酵素に適した条件下でAPで処理した試料組織は、ケージドハプテンの非マスキングが生じる機会を有した(
図6A)。陰性の試料組織(APなし)は、制御された非マスキングが生じる機会を有しなかった(
図6B)。これらの図面は、GAM−cHQで処理されたがAPに曝露されていないスライドが、陽性の染色を示していないことを明確に説明する(
図6B)。しかしながら、GAM−cHQとAPの両方を有したスライドは、陽性の染色を示し(
図6A)、非ケージドコントロールスライドと合致している(
図6C)。これは、アッセイ条件に対するケージンググループの効率とその安定性の両方を試験した。
【0161】
実施例3−タンパク質近接性の測定
数多くの既知の陽性及び推定陰性系を調査し、開示されるコンジュゲートがタンパク質近接性を測定することを可能にする能力を試験した。E−カドヘリン及びベータ−カテニンは通常セルにおいて互いに近接していることを生物学が示しているため、これらのタンパク質を既知の陽性系として選択した。Her2/ベータ−カテニン及びEGFR/ベータ−カテニンを、同一セルコンパートメントに存在する(共局在化)が、互いに相互作用することが予想されていない(近接していない)タンパク質の対として選択し、したがって、任意の近接性アッセイにおいてシグナルを生成しないはずである。また、一のウサギ及び一のマウス一次抗体が抗種二次検出の使用を可能にするために存在するように、抗体対を選択した。
【0162】
図2、4及び12に概説されるスキームに関して、一次抗体(例えば、ハプテンにコンジュゲートしている抗体、ケージドハプテン−抗体コンジュゲート、及び非マスキング酵素−抗体コンジュゲート)及び二次抗体(例えば酵素にコンジュゲートしている抗−ハプテン抗体)の導入と、その後のケージドハプテンの非マスク化の後に、ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)にコンジュゲートしているマウス−抗HQで非ケージドHQを検出した。この時点で、DAB(3,3’−ジアミノベンジジン)、銀又はチラミド−色素原のいずれかを、近接性シグナルを視覚化するのに使用することができた。A HRP/チラミド−ハプテン増幅工程はまた、系の強度(感度)を増加させるために含まれてもよい(例えば、チラミド−HQベースのoptiView Amplification kit)。
【0163】
自動化ケージドハプテン近接アッセイのための一般な手順を、FFPEの事例を試験するのに使用した。DISCOVERY EZ Prep(Ventana、p/n 950−100)又はDISCOVERY Wash(Ventana、p/n 950−510)の脱パラフィン化溶液を使用して、スライドを脱パラフィン化した。DISCOVERY CC1(Ventana、p/n 950−124)を使用して、95℃で、二つの一次抗体の同定に依拠する時間(0〜92分間)にわたり、スライド上で熱誘導エピトープ回収を実行した。その後、DISCOVERY阻害剤(Ventana、p/n 760−4840)をスライドに適用し、試料中の任意の内因性のペルオキシダーゼをクエンチした。37℃で、16〜32分間(一次抗体の同定に依拠する。)にわたり、ウサギ抗−標的1抗体を、マウス抗−標的2抗体と共にインキュベートした。その後、30μg/mLのヤギ抗−マウスアルカリホスファターゼコンジュゲートをスライドに適用し、12分間インキュベートした。スライドを洗い流し、ケージドハプテンヤギ抗−ウサギコンジュゲートの20μg/mLの溶液を16分間にわたってスライドに適用した。インキュベーション後、500mMのトリスバッファー溶液pH10.0及び490mMのMgCl
2溶液をスライドに適用し、ケージドハプテンの脱ケージ化を可能にした。HQの脱ケージ化後、マウス−抗−HQ HRP(Ventana、p/n 760−4820)コンジュゲートをスライドに適用し、非ケージドHQを結合した。いくつかの場合において、Amp HQチラミド増幅キット(Ventana、p/n 760−052)を使用して、シグナル強度を増加させるのに役立てた。近接したタンパク質を、Chromomap DABキット(Ventana、p/n 760−159)を使用して視覚化し、続いて、Hematoxylin II(Ventana、p/n 790−2208)及びBluing Reagent(Ventana、p/n 760−2037)で対比染色した。
【0164】
図7A〜7Cは、この実験の結果を説明し、陽性の近接性を有するタンパク質の例を説明する。
図7Aは、ベータ−カテニンのための単一のIHC DAB染色を説明する(例えば、ベータ−カテニン、酵素にコンジュゲートしている抗種抗体、及びDABに特異的な抗体を含む検出技術を利用する)。
図7Bは、ベータ−カテニン及びE−カドヘリンのためのケージドハプテン近接性シグナルを説明する(非マスキング酵素−抗体コンジュゲートにより作用するケージドハプテン−抗体コンジュゲートを利用する)。
図7Cは、E−カドヘリンのための単一のIHC DAB染色を説明する(例えば、E−カドヘリン、酵素にコンジュゲートしている抗種抗体、及びDABに特異的な抗体を含む検出技術を利用する)。
【0165】
図8A〜8Cは、IHC DAB染色の結果を説明し、本明細書に記載されるコンジュゲート及び方法を用いて検出された近接性を有しない共局在化タンパク質の例を説明する。
図8Aは、EGFRのための単一IHC DAB染色を説明し;
図8Bは、EGFR及びE−カドヘリンのためのケージドハプテン近接性シグナルの不存在を説明し;
図8Cは、E−カドヘリンのための単一IHC DAB染色を説明する。
【0166】
加えて、
図9A及び9Bは、異なる組織タイプの近接性を有する共局在タンパク質の例と、そのような近接性を有しない共局在タンパク質の例とを説明する。ここで、
図9Aは、ベータ−カテニン及びE−カドヘリンのための陽性のケージドハプテン近接性シグナルを説明するが、
図9Bは、ベータ−カテニン及びHer2のためのケージドハプテン近接性シグナルの欠如を説明する。これらの例は、アッセイが異なる組織タイプに適用することができるが、同じタイプの結果をもたらすことを説明する。
【0167】
上記のアッセイからのシグナル強度出力は、多くの方法に「ダイアルイン」される。市販のシグナル増幅の使用は、現在開示されている技術に容易に適用され、シグナルを容易に増強させると考えられている(米国特許公開第2012/0171668及びPCT/EP2015/0533556に記載される増幅技術を参照のこと。これらの開示は、参照により本明細書に援用される。)。
【0168】
図10A及び10Bに説明されるように、二次抗体にコンジュゲートしているケージドハプテンの数はまた、調整されるアッセイの感度を所与の系に適合させることを可能にする。この例では、
図10Aは、ヤギ−抗−ウサギ及び4(四つの)cHQ標識で標識された試料を説明し、
図10Bは、ヤギ−抗−ウサギ及び9(九つの)cHQ標識で標識された試料を説明する。ここでは、シグナル強度におけるかなりの増加は、二次抗体に結合しているケージドハプテンの数の増加に基づいており、
図10Bは、
図10Aと比較した場合の染色強度における増加を明確に示す。
【0169】
実施例4−異なるHRP系の検出
異なる検出可能なシグナル(例えば色)を提供する異なるHRP系を試験した。例えば、
図11A及び11Bは、銀(11A)及びチラミド−TAMRA(11B)を用いた検出を説明する。これらの系はどちらも試料中の近接タンパク質標的を検出することができた。
【0170】
実施例5−総タンパク及び近接タンパク質シグナルの多重検出
図12は、一の総タンパク(標的2、AP−Yellow)及び近接タンパク質シグナル(標的1+標的2、HRP−Silver)の多重検出の概略図である。任意のタイプのHRP検出系を使用して、近接性シグナルを示すことができ、任意のAP検出系(例えばナフトールホスフェート/Fast Red、BCIP/NBT、キノンメチド(QM)−色素原)を使用して総タンパクを視覚化することができる。
【0171】
標的のうちの一つのための総タンパク染色に加えて、HRP−DAB(
図13A)及びHRP−Silverを利用した近接タンパク質の検出もまた、実証した(
図13B)。これらの実験は、E−カドヘリン及びベータ−カテニンを用いて扁桃腺組織上で実施した。加えて、
図14A及び14Bは、E−カドヘリン及びベータ−カテニンの二重染色を利用する、総タンパクに沿って近接性シグナルを視覚化するための異なるHRP検出系の使用を説明する。
図14Aは、HRP−Purpleを用いて検出された近接性と、AP−Yellowを用いて検出されたベータ−カテニンとを説明し、
図13Bは、HRP−Silverを用いて検出された近接性と、AP−Yellowを用いて検出されたベータ−カテニンとを説明する。
【0172】
実施例6−PD1/PD−L1
リガンドPD−L1のその受容体PD−1への結合は、T細胞の活性化又は阻害を調節する。腫瘍細胞は、この相互作用を使用し、免疫系を回避しうる。PD−L1/PD−1複合体の検出は、いずれかのタンパク質のそれ自体による簡易測定よりも、主要内の免疫チェックポイントの阻止状態をよりよく示すことができる。
【0173】
図16は、NSCLCにおけるPD−1及びPD−L1のためのケージドハプテン近接性シグナルを説明する(非マスキング酵素−抗体コンジュゲートにより作用するケージドハプテン−抗体コンジュゲートを利用する)。紫色のシグナルは、PD−L1/PD−1複合体の検出を表す。
【0174】
ケージドハプテン近接アッセイを使用して、NSCLC及び扁桃腺のFFPE事例を試験した。完全に自動化されたDISCOVERY ULTRA機器で事例を試験した。DISCOVERY EZ Prep(Ventana、p/n 950−100)又はDISCOVERY Wash(Ventana、p/n 950−510)の脱パラフィン化溶液を使用して、スライドを脱パラフィン化した。DISCOVERY CC1(Ventana、p/n 950−124)を使用して、95℃で、64分間にわたり、スライド上で熱誘導エピトープ回収を実行した。その後、DISCOVERY阻害剤(Ventana、p/n 760−4840)をスライドに適用し、試料中の任意の内因性のペルオキシダーゼをクエンチした。ウサギ抗−PD−L1(SP263)(Ventana、p/n 790−4905)を、マウス抗−PD−1(NAT105)(Ventana、p/n 760−4895)で、32分間にわたり37℃で共にインキュベートした。ネガティブコントロールについては、マウス抗−PD−1を省略した。試験の残りにわたって、スライドを37℃でインキュベートした。30μg/mLのヤギ抗−マウスアルカリホスファターゼコンジュゲートをスライドに適用し、12分間インキュベートした。スライドを洗い流し、ケージドハプテンヤギ抗−ウサギコンジュゲートの20μg/mLの溶液を16分間にわたってスライドに適用した。インキュベーション後、500mMのトリスバッファー溶液pH10.0及び490mMのMgCl
2溶液をスライドに適用し、ケージドハプテンの脱ケージ化を可能にした。HQの脱ケージ化後、マウス−抗−HQ HRP(Ventana、p/n 760−4820)コンジュゲートをスライドに適用し、非ケージドHQを結合した。DISCOVERY Purpleキット(Ventana、p/n 760−229)を使用して近接したタンパク質を視覚化した。必要に応じて、Amp HQチラミド増幅キット(Ventana、p/n 760−052)を使用して、シグナル強度を増加させるのに役立てた。
【0175】
図17は、PD−1に関する総タンパク検出に沿ったPD−L1及びPD−1に関するケージドハプテン近接性シグナルを説明する。DISCOVERY Purpleを用いた近接タンパク質の検出後、非ケージング酵素(アルカリホスファターゼ)をDISCOVERY Yellow(Ventana、p/n 760−239)を用いて検出し、組織上のPD−1を視覚化した。
【0176】
図18は、扁桃腺組織中のPD−L1及びPD−1に関するケージドハプテン近接性シグナルについてのネガティブコントロールを説明する。PD−1の一次抗体はこのアッセイから省略した。タンパク質複合体に対する検出試薬の特異性を実証するシグナルは観察されなかった。
【0177】
全ての事例において、Hematoxylin II(Ventana、p/n 790−2208)及びBluing Reagent(Ventana、p/n 760−2037)を用いてスライドを対比染色した。
【0178】
実施例7−CD8と組み合されたPD1/PD−L1
図19は、PD−L1及びPD−1に関するケージドハプテン近接性シグナルと扁桃腺組織中の別のバイオマーカーの後続の検出とを組み合わせる例を説明する。この場合、PD−L1/PD−1相互作用に関与したCD8細胞を視覚化するアッセイを生成するために、PD−L1/PD1複合体の後にCD8を検出した。多重化のために、先に記載したように、PD−1及びPD−L1の近接性を最初に検出した。以前に結合した原色の溶出を助けるために、スライドを8分間にわたって90℃に加熱した。ウサギ抗−CD8(SP57)(Ventana、p/n 790−4460)をスライドに適用し、37℃で16分間インキュベートした。UltraMap Rb AP(Ventana、p/n 760−4314)、その後DISCOVERY Yellow色素原を使用して、抗−CD8を検出した。Hematoxylin II(Ventana、p/n 790−2208)及びBluing Reagent(Ventana、p/n 760−2037)を用いてスライドを対比染色した。
【0179】
実施例8−Her2/Her3
ケージドハプテン近接アッセイを使用して、BT−474細胞株のFFPE事例を試験した。完全に自動化されたDISCOVERY ULTRA機器で事例を試験した。DISCOVERY EZ Prep(Ventana、p/n 950−100)又はDISCOVERY Wash(Ventana、p/n 950−510)の脱パラフィン化溶液を使用して、スライドを脱パラフィン化した。DISCOVERY CC1(Ventana、p/n 950−124)を使用して、95℃で、64分間にわたり、スライド上で熱誘導エピトープ回収を実行した。その後、DISCOVERY阻害剤(Ventana、p/n 760−4840)をスライドに適用し、試料中の任意の内因性のペルオキシダーゼをクエンチした。ウサギ抗−Her2(4B5)(Ventana、p/n 790−2991)を、マウス抗−Her3(SPM738)(Spring、p/n E19260)で、32分間にわたり37℃で共にインキュベートした。その後、30μg/mLのヤギ抗−マウスアルカリホスファターゼ コンジュゲートをスライドに適用し、12分間インキュベートした。スライドを洗い流し、ケージドハプテンヤギ抗−ウサギコンジュゲートの20μg/mLの溶液を16分間にわたってスライドに適用した。インキュベーション後、500mMのトリスバッファー溶液pH10.0及び490mMのMgCl
2溶液をスライドに適用し、ケージドハプテンの脱ケージ化を可能にした。HQの脱ケージ化後、マウス−抗−HQ HRP(Ventana、p/n 760−4820)コンジュゲートをスライドに適用し、非ケージドHQを結合した。いくつかの場合において、Amp HQチラミド増幅キット(Ventana、p/n 760−052)を使用して、シグナル強度を増加させるのに役立てた。近接したタンパク質を、Chromomap DABキット(Ventana、p/n 760−159)を使用して視覚化し、続いて、Hematoxylin II(Ventana、p/n 790−2208)及びBluing Reagent(Ventana、p/n 760−2037)で対比染色した。
【0180】
図20A〜20Cは、この実験の結果を説明し、陽性の近接性を有するタンパク質の例を説明する。
図20Aは、Her2のための単一のIHC DAB染色を説明する(例えば、Her2、酵素にコンジュゲートしている抗種抗体、及びDABに特異的な抗体を含む検出技術を利用する)。
図20Bは、Her2及びHer3のためのケージドハプテン近接性シグナルを説明する(非マスキング酵素−抗体コンジュゲートにより作用するケージドハプテン−抗体コンジュゲートを利用する)。
図20Cは、Her3のための単一のIHC DAB染色を説明する(例えば、Her3、酵素にコンジュゲートしている抗種抗体、及びDABに特異的な抗体を含む検出技術を利用する)。
【0181】
本明細書に記載されるもの以外に、上記説明から当業者には本発明の種々の修正例が明らかである。このような修正例も、特許請求の範囲に含まれることが意図される。例えば、本発明により使用される「抗体」は、所望の標的部位への結合に有効な全抗体又は抗体の断片でありうる。また、適切である場合、本発明の「抗体」は、標的化部分(例えば、リガンドペプチド、小分子など)で置換されうる。例えば、腫瘍細胞又は免疫細胞が特異的で差別化される固有の細胞表面受容体を有する場合、対応する標的化部分は、本発明により、免疫細胞から腫瘍細胞を差別化するために使用されうる。