【実施例】
【0141】
下記実施例は、本発明の理解を助長するために記載されるが、いかなる場合においても本発明の範囲を限定するとは意図されず、そのように解釈されるべきではない。実施例は、従来の方法の詳細な説明、例えば微生物宿主細胞においてタンパク質を過剰発現させる方法のクローニング、トランスフェクションおよび基礎的な態様を含まない。かかる方法は、当業者に周知である。
【0142】
材料および方法
株、材料、培地および培養条件
クローニングおよびプラスミド繁殖に関して、大腸菌(Escherichia coli)Top10 Fの株を使用した。P.パストリス形質転換は、主にCBS7435野生型株およびそのAOX1欠失変異体を用いて実施した(Naatsaariら 2012年)。あるいは、NRLL−Y−11430wt株およびBG11の誘導体を含まないキラープラスミドであるP.パストリスBG10、そのAOX1欠失変異体を使用した(両方の株が、bisy e.U.、ホーフシュテッテン、オーストリアから入手される)。GUT1相補性プラスミド(Naatsaariら 2012年)を、CBS7435wt株のgut1ノックアウト変異体に形質転換した。プラスミド単離、ゲル精製およびクローニング用の酵素に関するキットは、最近記載されているように使用した(Voglら 2014年)。Gibsonアッセンブリーは、標準的な手順に倣って、New England Biolabs(イプスウィッチ、MA、米国)からのT5エキソヌクレアーゼおよびTaq DNAリガーゼならびにThermo Fisher Scientific(ウォルサム、MA、米国)からのPhusionポリメラーゼを使用して実施した(Gibsonら 2009年)。Sangerシーケンシングは、LGC Genomics GmbH(ベルリン、ドイツ)およびMicrosynth AG(バルガッハ、スイス)によって実施された。培地は、Weisら(2004年)によって概説されるように、1%(w/v)のグルコース/デキストロース(BMD)を有する乏しい標準的な緩衝最小培地中で調製され、完全培地(酵母抽出物、ペプトン、2%グルコース;YPD)を使用した。さらに、1%(w/v)のグリセロール(BMG)を有する緩衝最小培地もまた使用した(Naatsaariら 2012年)。下記の抗生物質濃度を使用した:大腸菌(E. coli):25μg/mlのゼオシン、50μg/mlのカナマイシン、100μg/mlのアンピシリンを含有するLB培地;P.パストリス:100μg/mlのゼオシン、300μg/mlのジェネティシン。液体最小BMD培地におけるゼオシン選択を試みたが失敗した(おそらく、pHまたは高いイオン強度のため)。したがって、本発明者らは、ゼオシンおよびジェネティシン選択実験に関して、完全培地を使用した。ディープウェルプレート培養をこれまでに記載されるように実施した(Weisら 2004年)が、メタノール誘導は、P
CAT1駆動型発現に必要とされず、したがって、プロトコールは、グルコース上での成長およびその枯渇後に停止した。振とうフラスコ培養は、開始OD
600 0.05で、250mlのバッフル付フラスコ(BMD開始容量25ml)中で実施した。48時間後に、フラスコをBMM2(最終濃度0.5%を達成するために1%メタノールv/v)で誘導し、最初の誘導の12時間後、24時間後に、BMM10(5%メタノールv/v)で誘導した(Weisら 2004年)。ヘキソキナーゼ法ベースのキット(グルコースUVキット、DIPROmed(ウィーン、オーストリア))を使用して、グルコース濃度を測定した。
【0143】
プラスミド構築
種々の選択マーカーを有するeGFPレポーター遺伝子構築物は、Naatsaariら(2012年)によって報告されるシャトルベクターに基づく。ゼオシン選択に関して、本発明者らは、これまでに報告されている制限部位を含まないクローニング(RSFC)ベクターpPpT4mutZeoMlyl−intArg4−eGFP−Bmrlstufferを使用した(Voglら 2015年。pPpT4_Sベクター(Naatsaariら、2012年)に基づく)。P
CAT1−1000、P
CAT1−692およびP
CAT1−500ベクターは、これまでの研究から入手可能であった。
【0144】
P
CAT1−692プロモーター断片において同定される264bpの推定ARS(putARS−P
CAT1)は、プライマーintARG4−pCAT1−764−GibおよびeGFP−pCAT1−501rev−Gibを使用したPCR増幅後に、スタッファー断片をGibsonアッセンブリーで置き換えることによって、上述のeGFP RSFCレポーターベクターへクローニングし(表1を参照)、続いて配列検証を行った。
【0145】
【表1】
【0146】
ARSおよびP
CAT1の一片の組合せ(P
CAT1−692)はまた、代替的な選択マーカージェネティシンおよびgut1相補性を用いて検査した(Naatsaariら、2012年)。ジェネティシン選択に関して、ゼオシンベクターの耐性カセットは、pPpKan_S由来のカナマイシン/ジェネティシンカセットで置き換えた(Naatsaariら、2012年)(このカセットは、大腸菌(E. coli)におけるカナマイシンおよびP.パストリスにおけるジェネティシンに対する耐性を付与する)。GUT1カセットは、pPpGUT1rから増幅した(Naatsaariら、2012年)(P.パストリスに関してはグリセロール相補性、大腸菌(E. coli)に関してはアンピシリン)。
【0147】
P
CAT1−692を含有するゼオシンベースのレポーターベクターは、BamHlおよびPstlで消化して、バックボーンをゲル精製した。Kan/Gen耐性カセットは、プライマーAOX1TT−BamHI−plLV5−Gibson+pUC−Ori−Pstl−AODTT−Gibsonを使用してpPpKan_Sから増幅して、Gibsonアッセンブリーによってベクターバックボーンに組み込んだ。GUT1カセットは、プライマーAOX1TT−BamHI−pGUT1−GibsonおよびAmpR−GUT1TT−Gibsonを使用して、アンピシリンカセットは、プライマーGUT1TT−AmpR−GibsonおよびpUC−Ori−AmpR−Gibsonを用いて、pPpGUT1から増幅した。2つのPGR断片は、上述のBamHlおよびPstlバックボーンを用いて構築された。
【0148】
形質転換、蛍光測定およびgut1株
コンピテントP.パストリス細胞は、Lin−Cereghinoら(Lin−Cereghinoら、2005年)の簡約されたプロトコールを使用して調製および形質転換した。適用可能である場合、プラスミドは、Swalで線状化して、1μgを形質転換し、環状プラスミドに関しては10ngを形質転換した。切断されていない環状形態を有する線状化プラスミドの混入を回避するために、線状化反応をアガロースゲル上に負荷して、線状化形態に相当するバンドを切り出して、精製した。
【0149】
eGFP蛍光(ex./em.488/507nm)および吸収(600nm、OD
600)は、これまでに概要されるように(Voglら、2014年)、Synergy MXプレートリーダー(Biotek、ウィヌースキー、VT、米国)を使用して測定および標準化した。
【0150】
これまでに報告されている(Naatsaariら 2012年)gut1ノックアウト株は、ku70ノックアウト株において達成された。本発明者らは、野生型株バックグラウンドを使用することを目標として、Naatsaariら(2012年)と類似した戦略に倣ってgut1ノックアウトを創出した。株は、グリセロール上の破壊された成長に関して、YPD+Zeo培地上で得られる形質転換体をスクリーニングすることによって同定された。
【0151】
[実施例1]
P
CAT1のARS領域のマッピング
これまでに使用されたP
CAT1長は、CAT1遺伝子の開始コドンから上流へ、隣接する遺伝子LCP5の末端まで選択され、692bpの断片を生じた(P
CAT1−692;
図1A)。プロモーター配列の分析により、P
CAT1−692の5’末端におけるATリッチなストレッチが明らかとなった(
図1A)。プロモーターを500bp長に短縮すること(P
CAT1−500)により、ATリッチなストレッチが除去される。ATリッチな配列は、転写ターミネーターおよびARSの共通の形質である(Chen、Reger、Miller、&Hyman、1996年)。最近、P.パストリスのARSは、ディープシーケンシングに基づくハイスループットスクリーン(Liachkoら 2014年)によってマッピングされた(ARS−seq.(Liachkoら 2013年))。Liachkoら(2014年)はそれにより、P
CAT1においてARSを同定して、機能性コアを388bpの断片へとマッピングした(
図1A)。さらなる機能分析は、Liachkoらによっては実施されなかった。
【0152】
本発明者らは、P
CAT1の種々の断片を、増強された緑色蛍光タンパク質(eGFP)レポーター遺伝子を含有するベクターへクローニングして、P
CAT1におけるこのARSが、特に形質転換または凍結/解凍サイクルなどのストレス状況の場合に、株不安定性およびバックグラウンド成長(小さなコロニー)を引き起こしているかどうかを検査した。P
CAT1−1000、P
CAT1−692およびP
CAT1−500は、種々の長さのプロモーターを提供し、Liachkoらの機能性コアよりも短い長さを有するATリッチなストレッチ(264bp)をP
CAT1の推定ARS(putARS−P
CAT1)として選択した(
図1A)。
【0153】
P.パストリス細胞は、これらのベクターの環状形態および線状化形態の両方で形質転換した(
図2A)。プラスミドの線状化は、酵母における環状形態と比較して、ゲノム組込み割合を劇的に増加させる、高度組換えDNA末端を生じる(Orr−Weaver、Szostak、&Rothstein、1981年)。標準的なP.パストリスベクターは、ARSを含有せず、エピソーム的に複製することができない。したがって、対照として空のベクターの環状形態による細胞の形質転換は、いかなるコロニーも付与しなかった(
図2A)。しかしながら、P
CAT1−1000、P
CAT1−692およびputARS−P
CAT1の循環形態による形質転換は、顕著な成長を示した一方で、P
CAT1−500は、全く成長を示さなかった。線状化形態のプラスミドによる形質転換は、プラスミド全てに関して形質転換体を生じた。これらの結果により、ARSとしてのP
CAT1のATリッチなストレッチの機能が確認される。
【0154】
検査した任意のプロモーター長の安定なゲノム組込みを有する形質転換体は、同一のレポーター蛍光を示し(
図1B、
図3A)、ARS部分の長さが、P
CAT1の強度に影響を及ぼしていないことを示唆した。また、調節プロフィール(抑圧/抑制/誘導)は、一連の時間内で3つの異なるプロモーター長を比較することによって実証されるように、影響されなかった(
図1B)。これらの配列は同一に挙動したため、ARSは、いかなる手段によってもP
CAT1の転写調節に必要とされないと結論付けた。
【0155】
[実施例2]
P
CAT1のARSを保有するベクターは、線状化後でさえ、エピソーム的に複製することができる。
【0156】
線状化ARS含有配列(P
CAT1−1000、P
CAT1−692およびputARS−P
CAT1)による形質転換に関して、2つの別個のタイプのコロニーが認められ得る:大きなコロニー(空のベクター対照およびP
CAT1−500と類似したサイズの)およびより小さなコロニー(
図2A)。細胞をより長期にインキュベートする場合、コロニー間の差は、あまり顕著にはならず、異なる成長速度を示唆する。
【0157】
小さなコロニーが、環状プラスミドの形質転換体と類似して、これらのベクターのエピソーム的な、非ゲノム組込みのバージョンであり得るかどうかを決定するために、構築物の大きなコロニーおよび小さなコロニーを、選択(YPD+ゼオシン)および非選択条件(YPD)下で96ウェルディープウェルプレートにおいて液体培養液中で成長させて、続いて、選択および非選択培地にスタンプした(
図2B)。任意の構築物の大きなコロニーは、培養条件とは無関係に、一様な成長を示し、サイズは、空のベクターのコロニーに匹敵した。小さなコロニーは、非選択培地上での大きなコロニーと同一の成長を示した。しかし、小さなコロニーが、非選択培地から選択培地に移行された場合、それらは、環状プラスミドに類似した弱い成長を示した。これは、エピソームプラスミドに関して予測される結末である:非選択条件下で、プラスミドは、効率的に繁殖されず、単に細胞集団のサブセットにおいて維持され、より弱い成長をもたらす。小さなコロニーまたは環状プラスミドが、選択条件下で予め成長される場合、プラスミド損失は、実験条件に依存している:非選択条件下よりもあまり深刻ではない(
図2B)か、または完全に救済されており(
図6)、選択条件下では完全に成長を回復させている。
【0158】
液体培養液からのスタンピングは、細胞の混合集団を含むため、大きなコロニーおよび小さなコロニーは、線状化P
CAT1−692から画線培養され、同様にコロニーは、選択および非選択寒天プレート上で環状形質転換から画線培養された。続いて、単一コロニーを採取して、選択培地上で画線培養した(
図2C)。予想通り、大きなコロニーは、任意の条件下で成長を維持した(P
CAT1−500と同一)一方で、小さなコロニーおよび環状プラスミドは、非選択条件下で予め培養された場合、選択培地上で成長する能力を損失した。
【0159】
これらの結果から、大きなコロニーは、ゲノムにおいて安定に組み込まれたカセットを含有する一方で、小さなコロニーは、エピソーム的に複製するプラスミドを保有し、これまでに観察される安定性の問題に関して説明を提供すると結論付けられた。この効果は、ゼオシンによる選択に特異的ではなく、ジェネティシンおよびグリセロール代謝の欠乏を示す相補性gut1ノックアウト株でも起こった。
【0160】
特に、空のベクターおよびP
CAT1−500は、単に小さなさらなるコロニーを示している(
図2A)。プレートをより長期間インキュベートしたとしても、これらのコロニーは、サイズを増加させず、また再び選択培地上で画線培養した場合も、成長しない。空のベクターおよびP
CAT1−500の環状形態の形質転換が、いかなる成長も示していないため、本発明者らは、小さなコロニーが、ARSに関連付けられず、異なる現象によって引き起こされると仮定する。
【0161】
[実施例3]
P
CAT1のARSは、選択圧力下で高いエピソーム発現を可能にする
図2Bのスタンピング実験の他に、eGFPレポーターの蛍光も、種々の長さおよびコロニーサイズのP
CAT1から測定した(
図3A)。驚くべきことに、小さなコロニーおよび大きなコロニーは、非選択条件下で培養される場合に、類似したレポーター蛍光を示し、(
図2B、
図2C)で観察されるプラスミド損失の効果は、完全培地中でディープウェルプレートにおける成長時に、レポータータンパク質蛍光に激しく影響を及ぼしていないことを示唆した。しかしながら、エピソームプラスミド(線状化の小さなコロニー、環状)を保有する株は、非選択条件よりも、またはゲノム組込み(任意の大きなコロニー、P
CAT1−500)と比較して、選択培地上で5倍高いレポータータンパク質蛍光を示した(
図3A)。この効果は、種々の選択マーカー(ジェネティシン)を用いた場合にさらに顕著であり、7倍を上回る増加をもたらした。
【0162】
これらの結果は、選択圧力下でのエピソーム的に複製するプラスミドが、発現を増加させるための簡素なツールであることを示唆する。
収率の増加にもかかわらず、多くの場合で、ゼオシンまたはジェネティシン(2つは、比較的高価な抗生物質である)を使用したより大規模な培養において選択圧力を維持することは、経済的に実現不可能であった。したがって、ARSは、グリセロール利用による選択と組み合わせた。ここで、グリセロールを効率的に代謝することが不可能なグリセロールキナーゼ1(gut1)ノックアウト株を使用して、それ自体のプロモーターおよびターミネーターを有する野生型GUT1遺伝子を含有する相補性プラスミド(Naatsaariら 2012年)およびeGFPレポーター遺伝子の発現を駆動させるP
CAT1−692で形質転換した。P
CAT1−692およびP
CAT1−1000は、培地中でゼオシンの存在下で同一の挙動を示すため、代替的な選択マーカーは、より短いプロモーター変異体P
CAT1−694のみを用いて検査した。また、ゼオシンまたはジェネティシン増強発現に類似して、選択条件(唯一の炭素供給源としてグリセロール)下で4.4倍を上回って増加したレポータータンパク質蛍光が得られ(
図3C)、炭素供給源ベースの選択もまた、エピソームプラスミド由来の発現を強力に増加させるのに適していることを提供する。
【0163】
不安定性の問題は、グリセロールストックからのP
CAT1ARS含有プラスミドを再培養した場合に、これまで特に注目されてきた。したがって、
図2Bおよび
図3Aに示す培養のグリセロールストックを使用して、選択および非選択培地を接種した(
図6)。選択および非選択培地上でのスタンピングアッセイによって決定されるプラスミド損失は、直接的な接種よりもさらに厳しかった(
図6A対
図2B)。興味深いことに、この場合、プラスミド保有構築物の蛍光はまた、非選択条件下で強力に減少し、ほぼ完全なプラスミド損失を示唆した(
図6B対
図3A)。これらの結果は、ARSプラスミドが、凍結および再培養などのストレス条件下で、より損失する傾向にあることを暗示している。
【0164】
[実施例4]
P
CAT1およびその内因性ARSの組合せは、形質転換割合の改善、収率の増加およびより高い景観の一様性を伴うスクリーニング系を提供する
環状ARSプラスミドの形質転換効率は、ゲノム組込みに必要とされる線状化発現カセットを使用するよりも、平均して108倍高かった(
図5)。高い形質転換効率は、タンパク質工学を実施して、変異体の大きなランダムライブラリーをスクリーニングする際に必要とされる。しかしながら、かかるスクリーニング系は、結果に対してさらなるバイアスを加えてはならない。変異体間の差は、専ら目的の遺伝子における突然変異から生じるはずであり、種々のコピー数または組込み事象のために生じるものではない。エピソームP
CAT1プラスミドは、産業上関連ある生体触媒(キャッサバ(Manihot esculenta)由来のヒドロキシニトリルリアーゼ(MeHNL)およびアマ(Linum usitatissimum)由来のヒドロキシニトリルリアーゼ(LuHNL))の発現に関して検査した。多数の形質転換体をスクリーニングして、エピソーム複製(P
CAT1−692)およびゲノム組込み(P
CAT1−500)の発現景観の一様性を比較した(
図4)。eGFPレポーター遺伝子に関して(
図3)、選択圧力下でエピソームプラスミドから発現されるMeHNLおよびLuHNLもまた、ゲノム組込みと比較して、発現の増加を示した(景観全体値の平均値を比較して、3.5倍および4.9倍)。したがって、eGFPをフォールドして、維持することの容易さの有益な効果はまた、より複雑な酵素に関しても再現させることができる。より高い形質転換効率に起因して、かなり少量のプラスミド(10ng)を使用して、線状化カセットの類似した数の形質転換体を達成することができる。さらに、制限エンドヌクレアーゼ消化および精製/脱塩ステップは、ARSプラスミドに関して、実験時間を短縮するのに、およびコストを低減させるのに必要とされない。
【0165】
エピソームP
CAT1プラスミドはまた、ゲノム組込みよりも最大3.5倍一様な発現をもたらした(パーセントでの標準偏差を比較して)。MeHNLに関して、ゲノム組込み由来の最高の活性を有する形質転換体は、平均的なARS形質転換体と類似した活性に達した。LuHNLに関して、最良のゲノム組込みの形質転換体は、最悪のエピソーム形質転換体に匹敵する活性にのみ達する。幾つかのゲノム組込みの形質転換体は、いかなる検出可能な活性も示さなかったのに対して、エピソーム形質転換体は全て、活性であった。ゲノム組込みのクローン可変性は、P.パストリスに関して公知であり(Creggら 2009年)、コピー数またはゲノム組込みの位置の差に起因し得る。P.パストリスは、S.セレビシエ(S. cerevisiae)よりも低い割合の相同組換えを有し、線状化カセットは、0.1%未満から最大30%の間の割合で組み込む(Naatsaari 2012年)。また、比較的大量の線状化DNA(3.5μg)を使用して、多コピー株を得て、それは、景観のより高い可変性を引き起こし得る。この目的で、単一コピー組込みのみを通常生じる少量のプラスミドもまた形質転換されて、景観の一様性の改善をもたらした(
図8)。多数の個々の形質転換体を有するライブラリーを得るために、形質転換のためのより大量のDNAの使用が好ましい場合がある。少数のDNAが用いられる場合、幾つかの形質転換が成されなくてはならず、形質転換体をプールする必要がある。
【0166】
[実施例5]
高い発現レベルは、新たなARSおよびその切断型変異体を用いて得ることができる。
種々のARS(受託:M11199、配列番号3、5、6、7、8、9、10、11および12)を、選択マーカーの転写ターミネーターと大腸菌(E. coli)起源との間で、組込み対照としても機能を果たすpPpT4mutZeoMlyl−intArg4−EGFP−pCAT1−500へクローニングした。ARSは、表2に列挙するプライマーを使用してPCR増幅して、Gibsonアッセンブリーを用いてPstI線状化ベクターへクローニングした(Gibsonら 2009年)。AOD−F6は、プライマーAODTT−Pstl−CbAOD1ARS−F3−GibおよびpUC Ori−Kpnl−CbAOD1ARS−F5−Gibを使用して増幅した。AOD−Fullは、プライマーAODTT−Pstl−CbAOD1ARS−F1−GibおよびpUC Ori−Kpnl−CbAOD1ARS−F5−Gibを使用して増幅した。その後、構築物を、配列検証した。
【0167】
環状プラスミドの、P.パストリスBG10への形質転換後、各構築物の7つの個々の形質転換体を、スクリーニング用に採取した。同じ形質転換体を、YPDおよび50mg/Lのゼオシンを有するYPDにおいて培養した。第1のスクリーニング後に、同じ形質転換体はまた、種々のゼオシン濃度を用いたスクリーニングに使用され、CAT1−692プロモーター(上述するようなプラスミド)もまた含まれた。組込み対照に関して、再スクリーニングによって同定される1つの代表的なクローンを、生物学的に七重反復で使用した。
【0168】
【表2】
【0169】
高い発現レベルは、培養および発現中に適用される選択圧力を用いて、新たなARSおよび同様にその切断型断片に関して得ることができる。より高い発現レベルは、ゼオシン濃度の増加によって得られた(
図22)一方で、それは、組込み対照(CAR1−500)に関しては一定のままであった。特に、より低いゼオシン濃度で、新たなARSは、P.パストリス由来のこれまでに公知のARS1配列よりも高い発現を示した。
【0170】
種々の成長条件下で、個々のARSプラスミドに関して、および同じプラスミドに関して細胞のプラスミド含有量を定量化するために実施したデジタルPCR実験により、CbARSベースのプラスミドに関して、CAT1−ARSベースのプラスミドと比較して、また300mg/Lのゼオシンの存在下で成長させた細胞に関して、50mg/Lと比較して、より高いプラスミド含有量が確認された。
【0171】
[実施例6]
ARSおよび転写のターミネーターとしてのARSの二機能性活性の分析
C.ボイジニイ(C. boidinii)PAOD1(F1)、PARS1、CAT1−ARSおよびPCAT1の692bp長のバージョンからの最良の断片、ならびにコアプロモーターを有さないプロモーター(配列番号13;最後の78bp、TATAboxによる始まりが欠失された)を、転写化ターミネーターとしてそれらの活性に関して検査した。それらは、pPpT4_SおよびpPpGUTIベクター中に存在する選択マーカーに関するターミネーター、および最良のインハウスターミネーター(異種および相同的)と比較した。
【0172】
したがって、ターミネーターレポータープラスミドは、PAOX1およびeGFPレポーター遺伝子を含有するpPpT4_Sベクター(Naatsaariら 2012年)に基づいて構築された(Voglら 2014年に報告されている)。存在するAOX1
*ターミネーターを、スタッファー断片で置き換えた。したがって、ベクターをNotIおよびBamHIで切断した。スタッファーとしてこれまでにすでに使用されているS.セレビシエ(S. cerevisiae)由来のTHI5配列(Voglら 2015年)を再びスタッファー断片として使用し、プライマーeGFP−ScTHI5fwd−GibおよびpILV5−ScTHI5rev−Gibを使用して増幅させた。この場合、スタッファーは、BmrI部位に隣接せず(PAOX1がBmrI部位を含有するため)、NotIおよびBamHI部位に隣接される。PCR断片は、Gibsonアッセンブリーによって(Gibsonら 2009年)、NotIおよびBamHIで消化したベクターバックボーンへクローニングされて、プライマーseqEGFP−520..543−fwdおよびseq−pILV5−150..173−revを使用して配列決定することによって確認した。
【0173】
ターミネーターおよびARSは、表3に列挙されるプライマーを使用してPCR増幅され、GibsonアッセンブリーまたはNEBuilder HIFI DNAアッセンブリーキットによって、レポーターベクターへクローニングされた。あるいは、CAT1−ARSは、二重鎖DNA断片として指示されて、ベクターとの融合のために直接使用された(表3)。ターミネーターのシームレスな融合は、組換えクローニング手順によって制限部位除去に依存して達成された。ターミネーターは、プライマーseqEGFP−520..543−fwdおよびseq−pILV5−150..173−revを使用して配列決定した。
【0174】
【表3】
【0175】
P.パストリス形質転換に関して、構築物は、ゲノム組込みを容易にするために線状化されたSwaIであった。スクリーニングの第1のラウンド後に、80個を上回るクローンの発現景観の中央からの4つの代表的なクローンを、再スクリーニング用に選択して、単一コロニーに関して再度画線培養した。再スクリーニング後に、各構築物に関する1つの代表的なクローンが選択されて、構築物は全て、生物学的な七重反復で、1つの96ウェルディープウェルプレートにおいて一緒に培養した。
【0176】
[実施例7]
ARSプラスミドに関する比較上の形質転換効率および発現収率
新たな異種C.ボイジニイ(C. Boidinii)ARSが、二重機能(ARSおよび転写ターミネーター)を有する短いDNA要素として使用される本発明者らの新たなエピソームP.パストリスプラスミドの形質転換効率を検査するために、コンピテントP.パストリスBG10による形質転換割合を、自己複製用の従来技術のARS1配列の状態を用いるプラスミドと比較して決定した。
【0177】
2つのARSは、CAT1−500プロモーターを含有するpPpT4_Sへクローニングされた。AODターミネーターは、SapIおよびKpnIでベクターを消化することによって除去され、表XYからのプライマーを用いてそれらを増幅させた後に、2つのARSは、組換えクローニングにより選択マーカーの後でシームレスにクローニングしされた(Gibsonら 2009年)。
【0178】
多重クローニング部位は、EcoRIおよびNotIでベクトルベクターを消化することによって除去されて、クローニングを容易にするスタッファーDNA断片としてscTHI5の一部を含有するスタッファー断片(配列番号14)およびSapIクローニングを可能にする制限部位で交換した。スタッファー断片は、表4に列挙したプライマーを使用して増幅され、Gibsonアッセンブリーでクローニングした。その後、eGFPは、SapIクローニングを使用してベクターへクローニングされた。
【0179】
【表4】
【0180】
形質転換効率を検査するために、PARS1およびCbARSを含有するプラスミドならびにpPpT4−S(線状化または環状)を100ng/μlに希釈して、エレクトロコンピテントP.パストリスBG10細胞へ形質転換した。1μlを形質転換して、種々の希釈物100μl(また、pPpT4−Sプラスミドに関しては、1000μl)をYPD−Zeoプレート上へ平板培養した。
【0181】
表5は、P.パストリスBG10における高い形質転換割合を示す(9.5×10
5cfu/μg)。選択マーカーカセットに関して同様にターミネーター(TT)としてARSおよびCAT1プロモーターの下流にあるレポーター遺伝子としてeGFPを含有する最終的なARSベクターに関して結果を示す。
【0182】
【表5】
【0183】
形質転換効率は、異種C.ボイジニイ(C. Boidinii)ARS CbARSに関して最も高かった。高い形質転換効率でさえ、ザイモリアーゼおよびミニプレップキットによる簡素なプラスミド単離後に、ピキア属(Pichia)の再形質転換を可能にする。より高いプラスミドコピー数を得るために、ピキア属(Pichia)からのプラスミド単離は、300mg/Lのゼオシンを有するYPD中で成長させた5mlのONCから実施した。OCNを収集して、ペレットを、酵母溶解緩衝液(1M ソルビトール、100mM EDTA、14mM β−メルカプトエタノール)1ml中に再懸濁させた。その後、ザイモリアーゼストック(1000U/ml)100μlを添加して、反応ミックスを30℃で1時間インキュベートした。次に、最大速度で5分間の遠心分離によって、スフェロブラストを収集し、上清を除去して、GeneJET Plasmid Miniprepキットを使用して、プラスミドを単離した。DNAをddH
2O 22μlで溶出させて、ミニプレップ全体を、ピキア属(Pichia)形質転換に使用して、84個の個々の形質転換体の培養液のeGFP測定により、正確なプラスミドの存在が証明された。
【0184】
従来の増幅および大腸菌(E. coli)からの単離を伴わないピキア・パストリスから単離されるプラスミドDNAによる直接的な形質転換からの形質転換体を
図24に示す。
選択マーカーに関して二機能性ARSおよびターミネーター配列として使用される種々の配列部分(ARS1を有するA、B、CbARSを有するC&D)を有するエピソームプラスミドを使用したPCATプロモーターの制御下にある個々の形質転換体のeGFP発現(選択圧力を伴う、および伴わない)および自己プラスミド複製を
図25に示す。
【0185】
[実施例8]
CbARSプラスミドベースの発現株の信頼性。
新たなエピソームプラスミドを用いるタンパク質発現の信頼性を検査するために、頻繁に使用される強力な構成的GAPプロモーター(P
GAP)を使用して、新たな異種CbARS部分と組み合わせてeGFP発現を駆動した。非常に一様でかつ高い発現レベルは、P
GAPおよびCbARSを含有するZeo ARSプラスミドを用いて得られた。
【0186】
P
GAPは、ベクターおよびプロモーターのPCR産物(pUCori−SwaI−pGAPおよびpGAPrev)を、NotIおよびEcoRIで消化することによって、実験7に記載するSapIクローニングベクターへクローニングされた後、ライゲーションを行った。その後、eGFPは、SapIクローニングを使用してベクターへクローニングされた。
【0187】
【表6】
【0188】
環状プラスミドDNA 10ngを、P.パストリスBG10へ形質転換して、21個の個々の形質転換体のGAPプロモーター駆動型eGFP発現は、50mg/Lのゼオシンを有するYPDを使用した96ウェルディープウェルプレートにおける60時間の培養後に測定した。(
図26を参照)。
【0189】
[実施例9]
線状化および環状プラスミドDNAによるP.パストリスの形質転換に関する株の比較
種々のP.パストリスプラットフォーム株の形質転換効率を評価するために、AOX1遺伝子が崩壊されたコマガタエラ・ファフィイ(Komagataella phaffii)の野生型様株(WT)(Naatsaariら 2012年に記載される株)およびさらにKU70遺伝子が崩壊されたK.ファフィイ(K. phaffii)株(BSY11dKU70)を、ARS要素(PCAT1_692)を有するか、または(PCAT1_500)を有さない、CAT1プロモーターを含有する線状化(脱リン酸化を伴う、および伴わない)(異所的組込み用に非相同領域において切断される)および環状プラスミドDNAによる形質転換に使用した。
【0190】
図27に示すように、WT株において線状化プラスミド(脱リン酸化を伴う、および伴わない)を含有するARSを有する多数の形質転換体が観察されたのに対して、KU70欠失株における形質転換体の数は、著しく低かった。したがって、本発明者らは、環状エピソームプラスミドへのベクターリレゲーションは、KU70欠失株と比較して、WT株においてより高いと結論付けた。
【0191】
[実施例10]
ピキア・パストリスにおける相同組換え(HR)クローニング
ピキア属(Pichia)においてHRクローニングのためにCbARSを使用する可能性を評価するために、P
GAPおよび選択用のゼオシン耐性遺伝子を含有する構成的発現ベクターを使用した。
【0192】
レポータータンパク質(eGFP)は、種々の長さの、50〜500bpの範囲のベクターバックボーンに対する相同領域を用いて増幅させた。
ベクターバックボーン5ngおよび3倍モル過剰の挿入片を、P.パストリスdKU70株BSY11dKU70の同時形質転換に使用した(
図28)。
【0193】
ピキア属(Pichia)において非常に一般的であり、かつ断片の異所的組込みを引き起こす非相同的な末端結合が、この株において損なわれるため、KU70欠失を有する株は、線状化DNA断片の組込みを最低限に抑えるのに使用した(6)。GOIもまた、どこかでゲノムへ組み込むことができるため、ベクターベックボーンの、ゲノムへの組込みはまた、発現を示さずに、または低発現で、ゼオシン耐性を有するコロニーを発生させる可能性がある。
【0194】
図28に示すように、HRクローニングは、ちょうど50bpの短いオーバーハングと連動したが、より長い重複領域により形質転換効率の増加を示した。500bpへの増加は、いかなる改善も示さなかったため、250bpの相同領域は、この設定では理想的であるようであった。この設定を用いて、およそ10
5CFU/μgに達した。再ライゲートされたベクターバックボーンを含有するまさに最小のバックグラウンドが観察された。
【0195】
発現ベクターの考え得る組込みを評価するために、形質転換体を、選択圧力ありおよびなしで(即ち、50μg/mlのゼオシンを有するYPD(YPD−Zeo)およびゼオシンを有さないYPD)、ディープウェルプレート(DWP)中で培養および比較した。エピソーム的に発現プラスミドを保有する形質転換体は、多コピーに起因して、およびプラスミドが選択圧力を有さずに損失するようになるため、選択圧力下で発現レベルの上昇を示すべきである。発現カセットを組み込んだ形質転換体は、両方の条件下で類似して挙動すべきである。
【0196】
検査したコロニー(n=186、1つの重複長当たり42)の100%は、選択条件下で、非常により高いeGFP発現レベルを示した。バックグラウンド対照からの形質転換体(即ち、形質転換に使用されるまさにベクターバックボーン)は、いかなる蛍光も示さなかった。したがって、本発明者らは、エピソーム発現プラスミドを含有すると結論付けた。
【0197】
環状ARSプラスミドが大量に形質転換で使用される場合の細胞1つ当たりの多重プラスミドの取込みは、これまでにすでに観察された。これは、ライブラリーを生成およびスクリーニングするのに望ましくない影響であり得るため、大量のDNAおよび250bpのベクターに対する相同領域を有する2つの異なるレポータータンパク質(eGFPおよびsTomato)の形質転換を検査した(
図29)。
【0198】
種々の量のベクターバックボーンおよび2倍の量の挿入片を形質転換に使用した。
DNA3μg(ベクターバックボーン1μgおよび挿入片2μg)を用いた場合でさえ、形質転換体のちょうど30%が、両方のレポータータンパク質の発現を示した。この大量のDNAを用いた場合、最大5×10
6CFU/μgのベクターバックボーンに達した(
図29)。
【0199】
両方のプラスミドを保有する形質転換体を再度画線培養して、単一コロニーを、別のラウンドの培養に使用した。第2のラウンドでは、コロニーのいずれかに関して両方のレポータータンパク質の存在が検出されなかった。
【0200】
これにより、数世代後に、単一細胞中にたった1つの変異体が存在するに過ぎないことが示される。
実験の詳細:
eGFPおよびsTomatoを有するHRクローニングは、配列番号72に記載するベクターを用いて実施した。ベクターは、SapIで線状化して、HRクローニングのためにゲル精製した。配列番号6として同定されるARSを使用した。
【0201】
種々の長さのベクターに対する相同領域を有するeGFPおよびsTomatoは、このベクターバックボーンのプロモーターおよびターミネーター領域において結合するプライマーを用いて増幅させた(表7)。レポータータンパク質に関する鋳型を生成するために、eGFPおよびsTomatoを、SpaIクローニングを使用して、SapI線状化バックボーンへシームレスでクローニングした。
【0202】
ベクターバックボーンに対する重複領域を有する切断バックボーンおよび増幅挿入片を、同時形質転換に使用した。バックボーン50ngおよび3:1のモル比(挿入片:ベクター)を第1の検査に使用した。
【0203】
続く評価に関して、1つを上回る変異体が1つの細胞より採取される場合、2つの挿入片(即ち、250bpの重複領域を有するeGPFおよびsTomato)を等量で混合し、混合物を、切断バックボーンによる同時形質転換に使用した。最大1μgのバックボーンおよび2μgの挿入片を有するより大量のDNAを形質転換に使用した。
【0204】
PCR産物は全て、形質転換前にゲル精製した。
【0205】
【表7】
【0206】
[実施例11]
抗体ライブラリーの生成
eGFPを用いた検査後に、IgG抗体(ハーセプチン、トラスツズマブ、Roche)発現ベクターに関する系の実現可能性を評価した。最大5:1の種々のモル比(挿入片:ベクター)およびより長い相同領域を使用したが、DNAの量は、ベクターバックボーン50μgを用いた場合、依然として低いままであった(
図30)。株BSY11dKU70は、上述するようにHRクローニングに使用した。
【0207】
より多くの挿入片の使用により、形質転換効率が増加し、250bp以上の長さの増加により、これ以上効率は改善されず、1000bpの非常に長い相同領域に関しては、さらには効率が減少したため、重複長に関する第1のプレ検査からの結果が確認された(
図30)。
【0208】
概して、形質転換後に、種々のサイズのコロニーが観察され(データは示していない)、したがって重複領域の各長さに関して大きなコロニーおよび小さなコロニーを、培養に関して選択した(
図31)。
【0209】
エピソームベクターとしての存在はまた、プラスミドをピキア属(Pichia)コロニーから単離すること、大腸菌(E. coli)を形質転換すること、続く制限分析、および配列決定することによって検査した(データは示していない)。検査した24個のクローンは全て、正確なプラスミドを含有し、突然変異が重複領域に存在しなかったため、それらのちょうど2つが、おそらくPCR誤差に起因して、単一の点突然変異を保有した。
【0210】
抗体発現カセットの正確な組込みは、プラスミドを24個の形質転換体から単離すること、続く挿入片の存在を調べるための制限分析、および組換えの領域を配列決定することによって調べた。検査したベクターは全て、陽性であり、それらのちょうど2つが、単一の点突然変異を含有し、それは、重複領域において位置されず、したがって、バックボーンおよび挿入片を増幅させる際にPCR誤差に起因して最も確かであった(データは示していない)。
【0211】
この見識を用いて、HRクローニング系は、それが、抗体ライブラリー生成およびスクリーニングすること、挿入片としての250bp重複を有する抗体軽鎖(LC)の可変領域および重鎖の可変領域、定常領域などの他の抗体遺伝子を含有する発現ベクターの残余を用いることに関する最終的な用途で使用することができるように、スケールアップした。大きなライブラリーが、抗体変異体/突然変異体CDR結合領域/突然変異体VHまたはVL配列の発見に必要とされるため、ベクターバックボーン1μgおよび挿入片2μgを形質転換に使用した。この系およびBiogrammaticsの凍結コンピテント細胞を用いて、3.5×10
6CFU/ベクター1μgの形質転換効率、およびまさにほとんど全ての170分の1の形質転換体を含有する再度ライゲートされたベクターが慣例的に何度も繰り返し達成された。
【0212】
この設定はまた、プレ検査において、常に小さなベクターバックボーンが使用されるために、より大きなベクターバックボーンが使用される場合に、形質転換効率が減少するが、最終的な用途では、効率はさらに高かったということは確かではない。
【0213】
大きなライブラリーが、抗体発見に必要とされるため、ベクターバックボーン1μgおよび挿入片2μgを形質転換に使用した。この系およびBiogrammaticsの凍結コンピテント細胞を用いた場合、3.5×10
6CFU/ベクター1μgの形質転換効率、およびまさにほとんど全ての170分の1の形質転換体を含有する再度ライゲートされたベクターが慣例的に何度も繰り返し達成された。
【0214】
実験の詳細
抗体構築物に関する初期HRクローニング実験は、ベクターに対して種々の長さのオーバーハングを有する双方向的なプロモーターおよびシグナル配列も含むIgGの全CDSを増幅すること(鋳型としての配列番号85および表8に示すプライマー)によって実施した。同様に、ベクターバックボーンを、表8に列挙するプライマーおよび鋳型として配列番号85に記載するベクターを使用してPCR増幅させた。バックボーン50ngおよび種々のモル比(1:1、3:1および5:1)の挿入片:ベクターバックボーンを形質転換に使用した。250〜1000bpの重複領域を試した。レポータータンパク質としてeGFPに関してすでにわかっているように、250bp以上の増加は、形質転換効率をさらに改善しなかったが、より多くの挿入片を使用した場合に、それは有意に高かった。
【0215】
この見識を用いて、その大量の挿入片により、本発明者らが試した効率が改善されて、大量のDNAを使用することと、IgGの軽鎖のまさに可変領域を交換することによって、系を最終的な用途(即ち、抗体ライブラリーの生成)にとって実現可能にさせた。
【0216】
原理のこの最終的な証明は、軽鎖の可変領域(ベクターに対して適切な250bp長のオーバーハングを有する)およびベクターバックボーンを、表9に列挙するプライマーおよび鋳型として配列番号86に記載するベクターを使用して増幅することによって実行した。
【0217】
バックボーン1μgおよび挿入片2μgを、P.パストリスBSY11dKU70の同時形質転換に使用した。この設定を用いた場合、3×10
6CFU/μgを上回る形質転換効率が、慣例的に達成された(
図32)。
【0218】
PCR産物は全て、形質転換前にゲル精製した。
【0219】
【表8】
【0220】
【表9】
【0221】
参考文献
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発明の態様
[態様1]目的の遺伝子(GOI)およびGOIに作動可能に連結されていない自己複製配列(ARS)を含むエピソームプラスミドであって、ARSが、配列番号2、配列番号3、配列番号5、もしくは配列番号6〜11のいずれかとして同定されるヌクレオチド配列、またはそれらに対する少なくとも60%の配列同一性を特徴とする前記配列のいずれかの機能的に活性な変異体を含むか、またはそれからなる、エピソームプラスミド。
[態様2]選択マーカーおよび任意選択で1つまたは複数の調節配列をさらに含む、態様1に記載のエピソームプラスミド。
[態様3]前記GOIおよび前記GOIを発現するのに必要とされる調節配列を含む発現カセットを含む、態様1または2に記載のエピソームプラスミド。
[態様4]前記GOIに作動可能に連結されるプロモーターを含む、態様1〜3のいずれかに記載のエピソームプラスミド。
[態様5]前記プロモーターが、調節可能または構成的なプロモーター、好ましくは、AOX1、GAP、AOD、AOX2、DAS1、DAS2、ENO1、FLD1、FMD、GPM1、HSP82、ICL1、ILV5、KAR2、KEX2、PET9、PEX8、PGK1、PHO89/NSP、SSA4、TEF1、THI11、TPI1、YPT1、GTH1、GCW14およびGUT1からなる群から選択されるプロモーターであり、前記プロモーターが、好ましくはピキア・パストリスのプロモーターであるか、または少なくとも60%の配列同一性を特徴とし、またP.パストリス株におけるプロモーターとして機能的である前記プロモーターのいずれかの機能性変異体である、態様4に記載のエピソームプラスミド。
[態様6]前記プロモーターが、配列番号4、もしくは配列番号5のいずれかのヌクレオチド配列、またはそれらに対する少なくとも60%の配列同一性を特徴とする機能性変異体を含む、態様4または5に記載のエピソームプラスミド。
[態様7]栄養要求性または化学的耐性に基づく選択マーカーを含み、好ましくは選択マーカーが、グリセロール利用、ショ糖利用、イヌリン利用、セロビオース利用、アミノ酸栄養要求性、チミジン栄養要求性、窒素供給源利用、フルオルアセトアミドに対する耐性、デオキシグルコースに対する耐性、ゼオシンまたは他の抗生物質に対する耐性、毒素をコードする遺伝子に対する耐性に基づく、態様1〜6のいずれかに記載のエピソームプラスミド。
[態様8]態様1〜7のいずれかに記載のエピソームプラスミドを含む真核宿主細胞。
[態様9]前記宿主細胞が、酵母細胞であり、好ましくはピキア属の酵母細胞、好ましくはピキア・パストリス株の酵母細胞であり、これらは、野生型株であるか、または細胞培養液中で培養が可能な任意の突然変異株である、態様8に記載の宿主細胞。
[態様10]少なくとも20世代中の前記エピソームプラスミドの含量に関してゲノム安定性であることを特徴とする、細胞培養液中の、態様8または9に記載の宿主細胞。
[態様11]GOIによってコードされる目的のタンパク質(POI)を産生する方法であって、前記GOIを発現させるための条件下で、態様8〜10のいずれかに記載の宿主細胞を培養することによってなされる、方法。
[態様12]前記POIの発現が、機能性ARSを含有しない前記GOIを発現する比較可能な発現カセットのゲノム組込みを用いる前記POIの発現と比較して、少なくとも1.5倍、好ましくは少なくとも3倍、より好ましくは少なくとも5倍または少なくとも10倍増加する、態様11に記載の方法。
[態様13]前記エピソームプラスミドの形質転換効率が、機能性ARSを含有しない前記GOIを発現する比較可能な発現カセットのゲノム組込みを用いる形質転換と比較して、少なくとも20倍または少なくとも50倍、好ましくは少なくとも100倍、少なくとも200倍または少なくとも300倍、より好ましくは少なくとも500倍増加する、態様11または12に記載の方法。
[態様14]態様1〜7のいずれかに記載のエピソームプラスミドのライブラリーであって、宿主細胞培養液中に、任意選択で同時発現されるプロモーター変異体のレパートリーおよび/またはGOI変異体のレパートリーを含む、ライブラリー。
[態様15]GOI発現の所望の収率に応じた宿主細胞を選択する方法であって、
iv.態様14に記載のエピソームプラスミドのライブラリーを含む複数の宿主細胞を接触させること、ここで前記ライブラリーは、プロモーター変異体のレパートリーを含み、前記GOIの前記発現レベルは、前記プロモーター変異体の関数である;
iv.前記複数の個々の宿主細胞における発現レベルを決定すること;および
v.前記GOIの所望の発現レベルを特徴とする宿主細胞を選択すること
を含む方法。
[態様16]選択した宿主細胞を培養すること、および前記GOIによってコードされるPOIを産生することをさらに含む、態様15に記載の方法。
[態様17]プロモーター変異体のレパートリー由来のプロモーター変異体をスクリーニングして、プロモーターを選択する方法であって、
v.態様14に記載のエピソームプラスミドのライブラリーを含む複数の宿主細胞を接触させること、ここで前記ライブラリーは、プロモーター変異体のレパートリーおよびレポータータンパク質を含み、前記レポータータンパク質の発現レベル、形質転換効率またはクローン一様性のいずれかが、前記プロモーター変異体の関数である;
vi.前記複数の個々の宿主細胞における発現レベル、形質転換効率またはクローン一様性のいずれかにおける変化を決定すること;
vii.所望の発現レベル、形質転換効率またはクローン一様性を特徴とする宿主細胞を選択すること;および
viii.選択した宿主細胞由来のプロモーター変異体を同定すること
を含む方法。
[態様18]GOI変異体のレパートリーによってコードされるPOIの変異体をスクリーニングする方法であって、
v.態様14に記載のエピソームプラスミドのライブラリーを含む複数の宿主細胞を接触させること、ここで前記ライブラリーは、GOI変異体のレパートリーを含み、GOI発現レベル、形質転換効率またはクローン一様性のいずれかが、GOI変異体の関数である;
vi.前記複数の個々の宿主細胞における発現レベル、形質転換効率またはクローン一様性のいずれかにおける変化を決定すること;
vii.所望の発現レベル、形質転換効率またはクローン一様性を特徴とする宿主細胞を選択すること;および
viii.選択した宿主細胞由来のGOI変異体を同定すること
を含む方法。
[態様19]ピキア・パストリスのKU70欠失株である宿主細胞におけるエピソームプラスミドの生合成の方法であって、
i.5’および3’末端にある組換え部位、ARS、および任意選択でさらなる調節配列を含む直鎖状ベクターバックボーンを供給すること;
ii.GOIならびに前記組換え部位に対して相同的である5’および3’相同配列を含むベクター挿入片を供給すること;
iii.前記直鎖状ベクターバックボーンおよび前記挿入片を、前記宿主細胞へ導入して、相同組換えによって、前記ベクター挿入片を前記組換え部位と組み換えて、それにより前記GOIを含むエピソームプラスミドを産生すること
を含む方法。
[態様20]前記直鎖状ベクターバックボーンおよび前記挿入片が、1:1〜1:10のモル比で前記宿主細胞へ導入される、態様19に記載の方法。
[態様21]前記ARSが、配列番号2、配列番号3、配列番号5、または配列番号6〜11のいずれかとして同定されるヌクレオチド配列、またはそれらに対する少なくとも60%の配列同一性を特徴とする前記配列のいずれかの機能的に活性な変異体を含むか、またはそれからなる、態様19または20に記載の方法。
[態様22]前記ベクターバックボーンが、栄養要求性または化学的耐性に基づく選択マーカーをさらに含み、好ましくは選択マーカーが、グリセロール利用、ショ糖利用、イヌリン利用、セロビオース利用、アミノ酸栄養要求性、チミジン栄養要求性、窒素供給源利用、フルオルアセトアミドに対する耐性、デオキシグルコースに対する耐性、ゼオシンまたは他の抗生物質に対する耐性、毒素をコードする遺伝子に対する耐性に基づく、態様19〜21のいずれかに記載の方法。
[態様23]5’および3’相同配列がそれぞれ、30、50、70、100、300個の塩基対の少なくともいずれか1つを含むか、またはそれからなる、態様19〜22のいずれかに記載の方法。
[態様24]態様1〜7のいずれかに記載のエピソームプラスミドを産生するための態様19〜23のいずれかに記載の方法の使用。
[態様25]態様19〜23のいずれかに記載の方法によって得られるエピソームプラスミド。
[態様26]態様19〜23のいずれかに記載の方法を使用して、エピソームプラスミドのライブラリーを産生する方法であって、ライブラリーが、前記GOIの既定領域における少なくとも1つの点突然変異において異なるプラスミド変異体のレパートリーを含む、方法。
[態様27]前記変異体が、前記ベクター挿入片の突然変異誘発によって産生される、態様26に記載の方法。
[態様28]態様26または27に記載の方法によって得られるエピソームプラスミドのライブラリーであって、10E2、10E3、10E4、10E5または10E6種の異なる変異体の少なくともいずれかの多様性を特徴とする、ライブラリー。
[態様29]少なくとも10E6種の形質転換細胞、好ましくは少なくとも10E7、10E8または10E9種の形質転換体へ組み込まれる、態様28に記載のライブラリー。
[態様30]前記形質転換細胞が、ピキア属、好ましくはP.パストリス、またはP.パストリスのKU70欠失株の形質転換細胞である、態様29に記載のライブラリー。
[態様31]前記GOIが、抗体、抗体断片、またはその抗原結合配列をコードしている、態様28〜30のいずれかに記載のライブラリー。