【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的は、請求項1の構成を有するスタティック・ミキサによって満たされる。
【0009】
特に、そのようなスタティック・ミキサは、少なくとも2つの成分を混合するのに適しており、ミキサ・ハウジングと、少なくとも2つの入口開口を備えた上流端部、及び下流端部を有する混合要素であって、少なくとも部分的に前記ミキサ・ハウジング内に配置される混合要素と、インプット側に設けられた少なくとも2つの入口、及びアウトプット面に設けられた少なくとも2つの出口を有する混合ヘッドであって、少なくとも2つの入口の各々は、少なくとも2つの出口のうちの1つと流体連通している混合ヘッドと、出口を出る成分を分離するためにアウトプット面と混合要素の上流端部の間に配置された分離壁とを含む。
【0010】
スタティック・ミキサは、分離壁が、混合要素の入口開口のうちの少なくとも1つに対して配置された自由下流エッジを含み、それにより、分離壁によって分離された成分の少なくとも一部の流れが、下流エッジを超えた後に混ざり、上記入口開口の少なくとも1つに一緒に入ることを特徴とする。
【0011】
そのような分離壁を設けることは、一方では、ミキサ・ハウジング内に少なくとも部分的に配置された混合要素に、成分が均一に供給されることを確実にする。他方において、分離壁は、実際の混合要素の入口開口の少なくとも1つに少なくとも2つの成分からなる混合流が既に供給されるように、成分を互いに対して位置決めする。換言すれば、成分の少なくとも2つの部分流からなる筋(streak)が、少なくとも1つの入口開口内に供給される。これにより最適な混合結果が保証され、それゆえ混合要素の長さの短縮が可能になる。スタティック・ミキサの長さの短縮は、使用後にスタティック・ミキサ内に残っている残留量の減少につながる。
【0012】
これに関連して、混合要素がハウジング内に少なくとも部分的に設けられる構成は、混合要素の少なくともミキサ要素が、ミキサ・ハウジング内に配置され、且つ、例えば分離壁又は混合ヘッドのコンポーネントが、ミキサ・ハウジングから突出する可能性があることを意味することに留意すべきである。しかしながら、少なくとも混合要素及び分離壁がミキサ・ハウジング内に配置されていることが好ましい。
【0013】
好ましくは、分離壁は、蛇行パターンを有することができる。「蛇行(meandering)」とは、分離壁が回旋(winding)及び旋回(turning)コースを含むことを意味する。例えば分離壁は、ジグザグ、正弦波、波状、又は階段状のパターンを含むことができる。分離壁はまた、上記パターンの組み合わせ、すなわち異なるパターンを有する異なる壁セグメントを含むことができる。
【0014】
有利には、分離壁のパターンは、混合要素の各入口開口に、成分の少なくとも2つの部分流が供給される(すなわち各入口開口に、各成分の少なくとも1つの部分流からなる筋が供給される)ように設計することができる。
【0015】
分離壁は、少なくとも2つの直線状セグメントを含むことができる。オプションとして、分離壁は、互いに平行な少なくとも2つのセグメントを含むことができる。一般的に、セグメントは、回旋又は旋回によって分離壁の別の部分又はセクションから分離された分離壁の部分又はセクションである。例えば互いに平行である2つのセグメントは、少なくとも1つの他のセグメントによって相互接続されてもよく、他のセグメントは、湾曲していてもよく、又は直線状であってもよい。
【0016】
好ましい一実施形態では、分離壁は、湾曲セグメント、直線状セグメント、直線状セグメント又は湾曲セグメント、直線状セグメント、及び湾曲セグメントを記載した順序で含む。この実施形態では、1つの直線状セグメント又は湾曲セグメントに隣接する2つの直線状セグメントが互いに平行である場合、特に好ましい。
【0017】
分離壁が、混合ヘッドの出口を出るときに、成分のアクセス可能な容積(volume)を減少させるための肉厚セグメントを含むことが好ましい。肉厚セグメントは、好ましくは、分離壁の他のセグメントよりも大きい壁厚を有することができる。分離壁又はそのセグメントの厚さを変えることによって、出口を出た後に成分が占める容積を調整することができる。有利には、この容積を狭めることは、使用後にスタティック・ミキサ内に残される成分の残量を減少させる。これによって、アクセス可能な容積は、混合ヘッドの出口と混合要素の入口開口との間の自由空間として定義される。特に、肉厚セグメントは、混合ヘッドの出口と混合要素の入口開口との間の自由空間を減少させるために設けることができる。
【0018】
1:1の混合比を考慮すると、出口から出た後に各成分に対してアクセス可能な容積は本質的に同じであることが特に好ましい。両方の成分で同じ容積を維持することは、特に、いずれかの成分の過度の先行動作を防止する。
【0019】
しかしながら、2:1,4:1、又は10:1などのようなより高い混合比を考慮すると、より大きい容積で添加される他の成分を選択して1つの成分に対する容積を減少させることが好ましい可能性がある。
【0020】
いくつかの実施形態では、分離壁が、アウトプット面の少なくとも1つの出口及び/又は混合要素の上流端部の少なくとも1つの入口開口を部分的に囲むか又は包囲する場合、有利である可能性がある。このような設計は、混合ヘッドのアウトプット面及び/又は混合要素の上流端部の間の成分の改善された流路をもたらし、成分は最適なスポットで入口開口に入ることができる。
【0021】
これに関連して、分離壁は、好ましくは、ミキサ・ハウジングと(好ましくはミキサ・ハウジングの内面と)少なくとも部分的に協働して、混合要素の入口開口に成分の流れガイド領域を提供することができる。言い換えれば、分離壁は、少なくとも部分的にミキサ・ハウジングの壁と同一平面上に整列させることができる。これに関連して、更に好ましくは、分離壁とミキサ・ハウジングの壁とが協働する又は同一平面上に整列する点で、分離壁とミキサ・ハウジングの壁は、実質的に同じ厚さを有することができる。
【0022】
好ましい一実施形態では、分離壁は、混合要素又は混合ヘッドと一体的に形成することができる。これに関連して、混合ヘッド及び混合要素は、好ましくは、混合要素又は混合ヘッドと協働する分離壁によって形成されるプラグ接続によって、軸方向に共に保持することができる。プラグ接続は、混合要素又は混合ヘッドに割り当てられる他のプラグ及びカウンタプラグ要素によって形成することもできる。
【0023】
オプションとして、分離壁は、混合要素及び混合ヘッドと一体的に形成することができ、それによってワンピース構造を形成することができる。有利には、分離壁、混合ヘッド、及び混合要素は、射出成形によって形成されたワンピース構造とすることができる。ミキサ・ハウジングと前述のワンピース構造が別々の要素として形成されることが更に好ましい。ミキサ・ハウジング、混合ヘッド、混合要素、及び分離壁が、別々の要素として形成される場合も考えられる。
【0024】
いくつかの実施形態では、スタティック・ミキサは、混合要素の上流端部と分離壁との間に配置された中間壁を更に含むと有利である可能性がある。
【0025】
好ましくは、中間壁は2つの側面を画定することができ、各側面は混合ヘッドの少なくとも1つの出口及び/又は混合要素の少なくとも1つの入口開口に割り当てられる。中間壁によって画定された2つの側面の各々が、ちょうど1つの出口にそれぞれ割り当てられるのが特に好ましい。
【0026】
有利には、中間壁は、入口開口が中間壁によって画定された各側面に割り当てられるように配置することができる。中間壁が一方の側面の1つの入口開口と他方の側面の2つの入口開口とを分離するのが特に好ましい。好都合には、中間壁は、混合要素の入口開口の1つを横切らないように配置することができる。言い換えれば、中間壁は、入口開口の間に延びるように配置することができる。
【0027】
中間壁は、分離壁を少なくとも部分的に横切ることによって分離壁によって分離される成分を分割するように配置することができる。好都合には、中間壁は、分離壁の少なくとも1つの直線状セグメントを70°〜110°、好ましくは80°〜100°、より好ましくは85°〜95°、特に約90°の角度で横切ることができる。
【0028】
中間壁は、本質的に直線状に延在することができ、且つ/又は分離壁と同じ高さを有することができる。中間壁が有することができる更なるパターン又は形状に関しては、分離壁の上記説明を参照されたい。中間壁は、ミキサ・ハウジング内に少なくとも部分的に、しかしながら好ましくは完全に配置することができる。
【0029】
中間壁は、好ましくは、混合要素と一体的に形成することができる。中間壁はまた、分離壁と一体的に形成することができ、分離壁は、好ましくは、混合ヘッドと一体的に形成することができる。いずれの場合でも、プラグ接続部を設けて、混合要素と混合ヘッドとを接続することができる。好都合には、混合要素、中間壁、分離壁、及び混合ヘッドは、好ましくは射出成形によって形成されたワンピース構造とすることができる。
【0030】
好ましい一実施形態では、スタティック・ミキサは、成分を、又は成分の少なくとも部分的な流れを偏向させるために、混合要素の上流端部と混合ヘッドのアウトプット面との間に配置された少なくとも1つの流れ阻止部を更に含む。
【0031】
有利には、少なくとも1つの流れ阻止部は、分離壁の下流エッジと混合要素の上流端部との間、又は分離壁の下流エッジと中間壁の上流エッジとの間に配置することができる。しかしながら、少なくとも1つの流れ阻止部は、分離壁の下流エッジと1つの平面内に本質的に配置されている場合、又は分離壁の下流エッジに隣接して配置されている場合が特に好ましい。
【0032】
このような流れ阻止部を提供することは、混合ヘッドの出口を出た後、いずれかの成分の過度の先行を防止し、混合要素の入口開口への成分の部分流の均一分布を保証する。
【0033】
少なくとも1つの流れ阻止部は、好ましくは平面であり、好ましくは、平らな上面及び下面を有することができる。例えば流れ阻止部は、長方形、三角形、半円形、平面レンズ状(lenticular)、又は三日月形状を有することができる。好都合には、流れ阻止部の厚さは、分離壁及び/又は中間壁の厚さと等しいか又はそれより小さくすることができる。
【0034】
少なくとも1つ、特に厳密に1つの流れ阻止部が、少なくとも2つの出口のうちの1つによって画定される開口断面に割り当てられることが好ましい。言い換えれば、流れ阻止部は、好ましくは、1つの出口の開口断面と部分的に重なることができる。これは特に、成分が最初に出口を出るとき、混合要素に向かって更に進む前に、それぞれの流れ阻止部の下方に位置する容積を完全に占めることを確実にする。この文脈では、流れ阻止部は、ある種の偏向器又は中間ストッパとして作用する。
【0035】
スタティック・ミキサは、好ましくは、縦軸と、少なくとも2つの入口と出口との間に延在する少なくとも2つの流路とを有することができ、各々の入口及び出口は、幾何学的中心を有する。少なくとも2つの出口及び入口の各々の幾何学的中心は、好ましくは、縦軸から等間隔に離間させることができる。しかしながら、少なくとも2つの出口のうちの少なくとも1つの、好ましくは各々の幾何学的中心は、少なくとも2つの入口のうちの少なくとも1つの、好ましくは各々の幾何学的中心よりも縦軸から離れていないことが好ましい可能性がある。
【0036】
混合要素は、有利には、被混合成分の流れの繰り返しの分離及び再混合のために次々に配置された複数のミキサ要素を含むことができる。
【0037】
可能な限り良好な混合結果のために、混合要素は、被混合材料を複数の流れに分離するためのミキサ要素、及び被混合材料を層状に混合するための手段を含むことができる。これらの要素及び手段は、横方向エッジと、この横方向エッジに対してある角度をなして延在するガイド壁と、縦軸に対してある角度をなして配置され、且つ開口を備えたガイド要素とを含む。混合要素は、横方向エッジと、これに続く横方向ガイド壁と、分離エッジで終端を迎える少なくとも2つのガイド壁とを含み、少なくとも2つのガイド壁は、各々が横方向端部セクションと、前記ガイド壁間に配置された少なくとも1つの底部セクションとを有する。これにより、前記横方向エッジの一方の側に少なくとも1つの開口と、前記横方向エッジの他方の側に少なくとも2つの開口が画定される。
【0038】
あるいはまた、混合要素は、被混合材料を複数の流れに分離するためのミキサ要素、並びに分離エッジと、前記分離エッジに対してある角度で延在する横方向エッジとを含む、被混合材料を層状に混合するための手段、並びに縦軸に対してある角度で配置され、開口を備えた偏向要素を含むことができる。混合要素は、少なくとも2つの分離エッジであって、それに続くガイド壁と、横方向端部セクションと、前記ガイド壁間に配置された少なくとも1つの底部セクションとを有する少なくとも2つの分離エッジと、横方向ガイド壁の一端に配置された横方向エッジとを含む。これにより、前記横方向エッジの一方の側に少なくとも1つの開口と、前記横方向エッジの他方の側に少なくとも2つの開口が画定される。
【0039】
好ましい一実施形態では、混合要素は、3つの入口開口を有することができ、1つは前記横方向エッジの一方の側に配置され、2つは前記横方向エッジの他方の側に配置される。
【0040】
そのような混合要素の設計に関する詳細は、特許文献1に記載されており、これは、そのような混合要素を開示する範囲で参照により援用される。
【0041】
有利には、中間壁は、混合要素の上流端部の第1の横方向ガイド壁に対応することができる。
【0042】
本発明によれば、複数の成分の少なくとも部分的な複数の流れが混合要素の入口開口のうちの少なくとも1つに既に共に入り込んでいるので、分離及び再結合プロセスは、成分が混合要素の第1のミキサ要素を通過した後により多数の流れ又は筋をもたらすことができる。これにより、混合結果が大幅に改善され、スタティック・ミキサの長さを短くすることができる。
【0043】
混合要素のミキサ要素は、好ましくは支柱によって共に保持されることができ、支柱は、更なるガイド及び偏向壁としても機能することができる。便宜上、支柱は、混合要素がハウジング内に配置されるとき、ミキサ・ハウジングと直接接触することができる。したがって、支柱は、組み立て中のミキサ・ハウジングのためのガイドとして作用することができる。
【0044】
更なる一観点では、本発明は、多成分カートリッジと、多成分カートリッジに接続された前記において記載されたようなスタティック・ミキサとを含み、多成分カートリッジは、好ましくは、それぞれの成分で満たされている分配装置に関する。
【0045】
更に別の観点では、本発明は、本明細書に記載された種類のスタティック・ミキサ又はスタティック・ミキサを介して多成分カートリッジから成分を分配するための、本明細書に記載されたような種類の分配装置の使用に関する。
【0046】
本発明の更なる実施形態は、図面の以下の説明において説明される。本発明は、以下において実施形態により、図面を参照して詳細に説明される。