特許第6880018号(P6880018)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6880018光学及び/又は電子装置をスタンダに取り付けるための球形ヘッド組立体
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6880018
(24)【登録日】2021年5月7日
(45)【発行日】2021年6月2日
(54)【発明の名称】光学及び/又は電子装置をスタンダに取り付けるための球形ヘッド組立体
(51)【国際特許分類】
   F16C 11/06 20060101AFI20210524BHJP
   F16C 11/08 20060101ALI20210524BHJP
   F16M 11/06 20060101ALI20210524BHJP
【FI】
   F16C11/06 F
   F16C11/08 E
   F16M11/06
【請求項の数】16
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2018-523520(P2018-523520)
(86)(22)【出願日】2016年11月8日
(65)【公表番号】特表2019-500550(P2019-500550A)
(43)【公表日】2019年1月10日
(86)【国際出願番号】HU2016050054
(87)【国際公開番号】WO2017081502
(87)【国際公開日】20170518
【審査請求日】2019年11月8日
(31)【優先権主張番号】P1500527
(32)【優先日】2015年11月9日
(33)【優先権主張国】HU
(31)【優先権主張番号】P1500639
(32)【優先日】2015年12月18日
(33)【優先権主張国】HU
(73)【特許権者】
【識別番号】515339550
【氏名又は名称】バラーズ カルマン
(73)【特許権者】
【識別番号】515339561
【氏名又は名称】ラースロー ノバック
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100147555
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 公一
(74)【代理人】
【識別番号】100160705
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】バラーズ カルマン
(72)【発明者】
【氏名】ラースロー ノバック
【審査官】 中島 亮
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2014/195745(WO,A1)
【文献】 特表2008−541189(JP,A)
【文献】 米国特許第00206393(US,A)
【文献】 米国特許第05871186(US,A)
【文献】 特開昭64−026094(JP,A)
【文献】 実開昭59−058294(JP,U)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0001365(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 11/00−11/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2自由度の調節可能性で光学及び/又は電子装置をスタンダに取り付けるための球形ヘッド組立体であって、
前記球形ヘッド組立体が、
前記光学及び/又は電子装置が水平又はほぼ水平の位置に調節される、その意図される使用の初期位置を有し、かつ、解除可能に前記スタンダに接続し固定できる第1部品と、
前記光学及び/又は電子装置の前記解除可能な接続及び保持のための支持要素を備える第2部品と、を有し、
前記第1部品及び前記第2部品の中の一方が、少なくとも部分的に球形を持つ本体(21、99)を有する球形ヘッド(20、100)を備え、
前記第1部品及び前記第2部品の中の他方が、少なくとも部分的に前記球形ヘッド(20、100)を取り囲みこれに嵌合される球形区分として形成された空洞を備え、前記球形ヘッド組立体が、前記第1部品と前記第2部品を共に結合しこの結合を解除するための調節手段を備えた、球形ヘッド組立体において、
球形の前記空洞は、前記空洞が属する前記第1部品又は前記第2部品に調節不能に結合されており、
前記第2部品に属する前記本体又は前記空洞において、前記初期位置において垂直中央面を有しかつ球又は前記球形区分の最大直径に沿って延びる溝(24、108)が設けられ、
前記第1部品において前記垂直中央面内にある位置に、軸線を有する円形対称スタッド(25、103)が設置され、
前記円形対称スタッド(25、103)が前記溝(24、108)の中に嵌合でき、前記円形対称スタッド(25、103)が嵌合される位置において、前記円形対称スタッド(25、103)が前記溝(24、108)に沿った前記第1部品と前記第2部品の相対変位を可能にし、かつ前記相対変位を案内し、前記円形対称スタッド(25、103)が、前記第1部品及び前記第2部品の相対変位した位置の各々において前記円形対称スタッド(25、103)の軸線の周りで前記結合された2つの球形区分の回転を可能にし、前記調節手段が、前記第1部品及び前記第2部品のうち球面空洞を備える部品に配置され、
前記調節手段が、前記球形区分を変形させることなく前記第1部品及び前記第2部品の位置を任意の要求された調節位置で固定するために、形状がぴったり合う前記空洞及び前記球形の本体(21、99)を互いに押圧するように圧縮させられる、ことを特徴とする、球形ヘッド組立体。
【請求項2】
前記円形対称スタッド(25、103)が、前記溝(24、108)から解除可能に固定され、解除された位置において、前記円形対称スタッド(25、103)が前記溝(24、108)の外へ移動させることができ、前記第1部品及び前記第2部品が、3自由度で相互に対して移動できる、ことを特徴とする、請求項1に記載の球形ヘッド組立体。
【請求項3】
前記円形対称スタッド(25、103)が、バネ(4)の付勢力に抵抗して軸方向に移動できかつ設定された力の影響を受けて前記溝(24、108)の領域から外れることができ、前記円形対称スタッド(25、103)が前記溝(24、108)と反対側に位置する時に前記円形対称スタッド(25、103)が前記溝(24、108)に嵌め込まれ、2自由度の調節可能性が回復される、ことを特徴とする、請求項2に記載の球形ヘッド組立体。
【請求項4】
前記円形対称スタッド(25)が、前記球形ヘッド組立体から延びて手で動かせるボタン(34)によって2つの位置の一方へ移動できる係合解除装置に結合され、第1位置において、前記円形対称スタッド(25)が前記溝(24)に挿入され、他方の位置において前記円形対称スタッド(25)が前記溝(24)のスペースの外へ移動される、ことを特徴とする、請求項1に記載の球形ヘッド組立体。
【請求項5】
支持された前記光学及び/又は電子装置が傾動するときその影響を受けて生じる傾動トルクの少なくとも部分的な相殺のために、前記円形対称スタッド(25、103)と前記溝(24、108)との間の相対的角度位置の増大に伴って増大する付勢力を与える可撓性付勢手段が前記第1部品と前記第2部品との間に設けられる、ことを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の球形ヘッド組立体。
【請求項6】
前記球形本体(21)が、内部空洞(35)を持ち、前記可撓性付勢手段が、少なくとも部分的に前記内部空洞(35)の中に配置されたバネ(39、49)を含む、ことを特徴とする、請求項5に記載の球形ヘッド組立体。
【請求項7】
前記第1部品が、最上部から開いた円筒形空洞(11)を有しかつ垂直軸を有するハウジング(10)であり、円筒形外装面を有する案内インサート(18)が嵌合し、前記球面空洞が前記案内インサート(18)の内部に作られ、前記円形対称スタッド(25)が前記円筒形空洞(11)の前記垂直軸に位置する軸(12)を有しかつ前記ハウジング(10)に結合され、前記第2部品が、前記円筒形空洞(11)より小さいネック部(22)に接続され前記円筒形空洞(11)から外へ延びる球形本体(21)を有する球形ヘッド(20)であり、支持された前記光学及び/又は電子装置を保持する前記支持要素が前記ネック部(22)の端部に配置される、ことを特徴とする、請求項1又は2に記載の球形ヘッド組立体。
【請求項8】
スロット(14)が前記ハウジング(10)の壁に設けられ、前記調節手段がねじ切りボルト(16)と前記ボルト(16)と協働して前記スロット(14)によって分離された前記ハウジング(10)の部分を圧縮する調節ヘッド(15)とを含む、ことを特徴とする、請求項7に記載の球形ヘッド組立体。
【請求項9】
前記球形本体(21)において、閉鎖し相互に角度を成すそれぞれの垂直中央面を有する2つの溝(24a、24b)が設けられ、前記2つの溝(24a、24b)が前記球形本体(21)の前記垂直軸の下端において相互に遭遇し交差し、前記球形ヘッド(20)の初期位置において前記円形対称スタッド(25)が前記2つの溝(24a、24b)のいずれか1つの中に嵌合できる、ことを特徴とする、請求項7に記載の球形ヘッド組立体。
【請求項10】
前記ハウジング(10)の前記内部において、前記案内インサート(18)のすぐ下方に、球形を持つ中間領域を有しかつ前記ハウジング(10)の前記内部で当接するリム(68)を有しかつ中央部に開口を有する案内カップ(65)が配置され、付勢要素(66)が、前記案内カップ(65)の前記球形ヘッド(20)向きの面とは反対の外面に結合され、前記付勢要素(66)の接続面が前記中間領域に押圧されて、前記面に沿って滑動でき、案内スタッド(70)及び前記付勢要素(66)が剛体ユニットを構成し、外部から調節できかつ任意の瞬間的位置において前記付勢要素(66)を前記案内カップ(65)に及び前記案内カップ(65)を前記ハウジング(10)に押圧できるが、前記ハウジング(10)に対する前記球形ヘッド(20)の移動の可能性には影響を与えない押圧手段が設けられる、ことを特徴とする、請求項7に記載の球形ヘッド組立体。
【請求項11】
前記溝(24)が、前記球形ヘッド(20)の前記本体の内部へ深く延び、前記溝(24)の中に突出する前記案内スタッド(70)の区分において、バネ(72)によって支持された細長いスリーブ(71)が設置され、前記球形ヘッド(20)の内部において、前記案内スタッド(70)の前記軸の延長部に孔が設置され、調節ロッド(76)が、この孔の中に突出し、前記調節ロッド(76)が、前記球形ヘッド(20)の前記ネック部(22)から外にわずかに延びる外側端を有し、前記調節ロッド(76)の内側端が前記スリーブ(71)の開口の中に嵌合できる球形頭部(78)として設計され、前記調節ロッド(76)の押圧状態において、前記調節ロッドが前記スリーブ(71)と線形接続し、かつバネ付勢基準状態において、前記球形頭部(78)が、前記スリーブ(71)の前記軸と前記調節ロッド(76)の軸が所与の範囲内で任意の角度位置を取ることができるようにし、前記ハウジング(10)から外に延びる前記球形ヘッド(20)の部分に、レベリングを容易にするレベリングバブル(80)が配置される、ことを特徴とする、請求項10に記載の球形ヘッド組立体。
【請求項12】
前記第1部品が、前記球形ヘッド(100)に接続されたベース(101)によって構成され、前記球形ヘッドが前記スタンダへの解除可能な接続部を含み、前記円形対称スタッド(103)が前記ベース(101)の反対側の前記球形ヘッド(100)の前記球形本体(99)の上端から突出し、前記第2部品が、前記球形ヘッド(100)の前記球形本体(99)を部分的に取り囲むブラケット(105)であり、前記ブラケット(105)の内面が球体の赤道線を含みかつ前記球形本体(99)に嵌る球面空洞区分として設計され、前記溝(108)が前記ブラケット(105)の内部に配置され、前記調節手段が、前記ブラケット(105)をその中に配置された前記球形ヘッド(100)の前記本体(99)に押圧する押圧構造である、ことを特徴とする、請求項1に記載の球形ヘッド組立体。
【請求項13】
前記ブラケット(105)が、外部から前記ブラケットに取り付けられ固定される支持部材(110)によって取り囲まれ、保持された前記光学及び/又は電子装置への接続部が前記支持部材(110)の最上部に設けられ、前記調節手段が、前記支持部材(110)の側面に配置され前記取り囲まれた球形ヘッドを外側から押圧するボルトのボタン(118)である、ことを特徴とする、請求項12に記載の球形ヘッド組立体。
【請求項14】
前記円形対称スタッド(103)の両側において、前記溝(108)の中にそれぞれのバネ(122、123)が配置され、前記バネ(122、123)の端部が前記溝(108)のそれぞれの端部によって支持され、保持された前記光学及び/又は電子装置が傾動したとき生じるトルクを少なくとも部分的に相殺するのに役立つ、ことを特徴とする、請求項12又は13に記載の球形ヘッド組立体。
【請求項15】
前記球形ヘッド(100)が2つの部品から成り、その外側部品が、最上部において前記溝(108)の中で案内される前記円形対称スタッド(103)を保持しかつ内側球面空洞を有する球形シェル(124)であり、前記第2部品が、前記球形シェル(124)の内部に直接的又は案内インサート(126)を介して配置され案内されかつ前記ベース(101)に接続されるスロット付き内側球体(125)であり、押圧部材好ましくは調節ボルト(129)が、前記内側球体(125)の前記スロット付き部分の間に設置される、ことを特徴とする、請求項12〜14のいずれか1項に記載の球形ヘッド組立体。
【請求項16】
前記球形シェル(124)の目に見える外側部分に、最上部から開いたカットが設けられ、レベリングバブル(131)が前記カットの中に配置される、ことを特徴とする、請求項15に記載の球形ヘッド組立体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも2自由度の調節可能性を有する、光学及び/又は電子装置をスタンダに取り付けるための球形ヘッド組立体に関するものであり、球形ヘッド組立体は、スタンダに接続できかつ解除可能にスタンダに固定できる第1部品と、装置の解除可能な接続及び保持のための支持要素を備える第2部品と、を有する。本発明に係る球形組立体は、主に、ある種のスタンダ、典型的には三脚に保持されるように設計される光学装置、例えばカメラ、ビデオ及びフィルムレコーダ及びプロジェクタの保持及び位置決めのために使用できる。
【0002】
より正確に言うと、球形ヘッド組立体の上記の2つの部品のうち、1つの部品は、少なくとも部分的に球体として形成された本体を有する球形ヘッドによって構成され、他方の部品は、球形本体に嵌って少なくとも部分的に球形本体を取り囲む球形区分として設計された空洞を備え、球形ヘッド組立体は、2つの部品を相互に結合できかつ前記結合を解除できる調節手段を備え、使用時に、装置の初期位置は水平又はほぼ水平である。
【背景技術】
【0003】
本明細書において、「垂直」及び「水平」の定義は特殊な役割を持ち、これらの方向は、2つの相互に直角を成す方向と理解される。これらの方向は、幾何学的意味で正確な垂直又は水平である必要はなく、装置例えばカメラが三脚に据えられる場合、撮影の場合に期待される視覚的感覚は水平線の存在を必要とするので、カメラの基準平面が従来のようにほぼ水平位置に置かれることを意味する。このように調節された位置は初期位置と呼ばれ、使用時に、カメラは、使用者が要求する方向に調節されなければならない。ほとんどの場合、カメラを垂直軸の周りで1回転し、水平軸の周りで傾動できなければならない。傾動は、ほとんどの場合予め決められた角度範囲でのみ要求される。このような調節において、水平線が不変であることが重要な要件である。即ち、カメラは垂直軸及び水平軸の両方と直角を成す軸の周りでは調節可能ではないことが重要である。なぜなら、それによって水平線も変わってしまう。このような調節法は、2自由度の調節と呼ばれる。これは最も重要な要件の1つであるが、使用者は、それでも水平線を放棄して、可能な全方向での調節を要求するかもしれない。2自由度を与えるシステムにおいては、この調節可能性を保証するのは難しい。
【0004】
また、所与の事例において、装置を素早く90度回転させなければならない(ポートレートを撮る場合にしばしば必要となる)場合も生じる可能性があり、この要件を満たすためには装置を保持する球形ヘッド組立体を用意しなければならない。
【0005】
多様なこの種の構造体は既知であり、市販されている。これらは、ある特許文献において説明され、その関連問題が詳述される(例えば、特許文献1参照。)。前記文献は、同時に、球形ヘッド構造体の基準面を水平方向に調節した後の前記装置の位置調節の解決法を提供する。
【0006】
上記文献は、まず、スタンダ支持がどの位置にあっても、第1ステップにおいて水平初期位置を調節し固定できるようにし、その後、第2機構が、前述の制限を持つ2自由度の移動を保証する。1つの実施形態において、調節のために使用される垂直溝が球形ヘッドに設けられ、垂直軸の周りでヘッドが回転できるようにする溝に緩み止め(スナグ)が挿入される。この解決法は、他の先行技術に比べてかなり進歩しているが、同時に、いくつかの観点からある種の完璧化を必要とする。
【0007】
前記解決法の問題は、スロットが、案内される球形ヘッドの本体のほぼ全体を貫通し、本体を2つの半体に分割し、調節された位置の固定及びこの位置の解除が、2つの半体を相互に押し離すことによって行われることにある。この種の固定は、いくつかの欠点と結びつき、そのうちの1つは、ハウジングに比べて球体のサイズが小さいことであり、小さいサイズには、高い押圧力を使用する必要があり、それが調節の解決を技術的に難しくし、精密な調節に悪影響を与える。更なる問題は、相互に半体に裂くとき球体の形状が理想的な形状から逸脱し(即ち、歪み)、したがってその全方向での回転が充分に円滑でなくなり、調節のために必要な力が、実際の角度位置に依存することである。
【0008】
更なる問題は、スロットの存在が、球形本体の内部を設計する際の自由及び球形本体における必要な可能性がある要素の配置を制限することにある。
【0009】
使用者にとって最も明白な別の問題は、球形ヘッドのスロットがカメラの光学軸に対して直角を成すことである。球体が外向きに押されたとき又は調節ボルトによって緩められたとき、球体上に固定されたカメラ又はその他の光学装置は、ボルトが押されたか緩められたかに応じて前後方向にわずかに揺らぐ(即ち、ぐらつく)。この現象の範囲は、使用される光学機器の視角の範囲に応じてほぼ可視のものとなる。
【0010】
ヘッド組立体によって保持される措置のサイズ及び重量がかなり大きい場合、水平軸の周りでの傾動時に、装置は、自身の重量の影響を受けて、傾動角度に応じて、前後方向に傾動する傾向を持ち、この傾動トルクは精密な位置調整を困難にし、したがって少なくとも部分的にこの傾動トルクを相殺できる解決法が必要となる。
【0011】
特定の使用者は、2自由度に従った上記の調節可能性の他に、所与の場合には、システムが3自由度を持つ全方向の調節を可能にすることを要求する。即ち、2自由度に動きを限定することを放棄しなければならない。このような要請がある場合、2自由度の限定的調節可能性から自由な調節可能性への変更が容易で単純であることが重要な要件である。
【0012】
更なる問題は、より経済的な問題である。即ち、レベリングの機能のために、球形ヘッドは別個のハウジング内に配列された比較的大きいカップによって取り囲まれるので、上記の先行技術の装置のサイズは大きい。支持平面を水平方向に調節できる手段を備えるいくつかのスタンダが市販されているが、この種のスタンダが使用されるとき、提案される構造はサイズが大きすぎ、同時にコスト高過ぎるので、水平平面におけるレベリング機能の組み込みのニーズはない。
【0013】
さらにそれでも基準平面(レベリングのための)の調節が必要とされる場合、上記の文献において提示される解決法はサイズ、重量及び価格が大きすぎる。即ち、もっと単純に同じ機能を提供する必要がある。
【0014】
これまで述べた解決法において、球形組立体のハウジングは支持スタンダに接続され、保持された光学及び/又は電子装置の解除可能な接続は球形ヘッドに作られたネック部において解決されてきた。三次元の調節を可能にする球形組立体は、既知であり、この組立体において、ハウジングとネック部の役割は交換可能であり、球形ヘッドのネック状の突出部はスタンダに接続され、光学装置は、球形ヘッドに配置されたブラケットに接続された支持体によって保持され、ブラケットの位置は全方向に調節できる。このような解決法は、ある特許文献において公開されている(例えば、特許文献2参照。)。特定の用途においては、広く使われる設計に比べて「逆転」するこのような設計が好ましく、したがって、このような設計の使用も広範に広がっていると見なすことができる。このような「逆転」設計において、基準平面の位置決めは保証されてない。即ち、調節された各位置において水平線が支持基準平面に合致できるように自由度が3から2に減少する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】国際公開第2014/195745号
【特許文献2】米国特許第5871186号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明の主要な課題は、上記の特許文献1より使い易さ、サイズ、重量及び製造コストの点で有利であり、かつ組立体の2つの主要部品の役割を特定の限界内で交換可能とすることができる、垂直面における制限要素を持つ少なくとも2自由度の調節可能性を持つ、光学及び/電子装置をスタンダに接続するための球形ヘッド組立体を提供することである。
【0017】
本発明の二次的課題は、第1の課題を解決することに加えて、使用者が装置を2自由度で調節したいか又は3自由度で調節したいかを選択できかつ容易にこの調節可能性を変更できるような、調節可能性を提供することである。
【0018】
本発明の更なる課題は、装置が傾動したとき少なくとも部分的に傾動トルクを相殺することである。
【0019】
更に、本発明の更なる課題は、特許文献1に説明される大きく重いシステムを使用することなく即ちハウジング、シェル及び球形ヘッドを使用することなく(即ち、組立体は、上記の2つの主要部品しか持たない)組立体の基準面の調節を解決することである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上記の複数の課題は、全て単純かつ効果的に本発明によって解決され、本発明の構造は、請求項において詳細に規定される。
【0021】
本発明に従った解決法について、添付図面を参照して実施例に関連して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】第1実施形態の斜視図である。
図2図1の実施形態の断面図である。
図3】球体を押圧する別の手法を与える実施形態の斜視図である。
図4図3の実施形態の断面図である。
図5】2つの溝24a及び25bを有する球形ヘッド20の本体21の斜視図である。
図6】2又は3自由度で調節できる実施形態の断面図である。
図7図6の実施形態の斜視図である。
図8図6の調節装置の細部の拡大断面図である。
図9】自由度を変更できる実施形態の断面図である。
図10図9の実施形態の細部の拡大断面図である。
図11】逆トルクを保証できる実施形態の断面図である。
図12図11と同様の但し直角を成す切断面の断面図である。
図13】逆トルクを保証する別の実施形態の断面図である。
図14】直角を成す切断面に沿って見た図13と同様の断面図である。
図15】前の実施形態を改良した実施形態の断面図である。
図16】直角を成す切断面に沿って見た図15と同様の断面図である。
図17】レベリングを可能にする本発明の実施形態の断面図である。
図18図17の実施形態の斜視図である。
図19図17の実施形態の細部の拡大断面図である。
図20】別の実施形態の球形ヘッドの立面図である。
図21図20の実施形態のブラケットの斜視図である。
図22】別の方向から見たブラケットを示す。
図23】支持及び調節組立体の斜視図である。
図24】組立て済み球形ヘッドの立面図である。
図25】逆トルクを与えることができる図24の実施形態の断面図である。
図26】レベリングも可能な前の実施形態のバージョンの立面図である。
図27図26の実施形態の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1及び2は、垂直軸を持つ直立ハウジング10を有し、その内部に、図2の断面図に示す円筒形空洞11を備える、本発明に係る球形ヘッドの第1実施形態を示す。空洞11の軸12は必ずしもハウジング10の軸と一致しない。その理由は、好ましい実施形態において、ハウジング10の壁の厚みは所与の角度範囲で増大でき、より厚い部分の上部に、レベリングを助けるレベリングバブル13を配置できる。図1及び2は、このような設計を示す。ハウジング10の壁は、好ましくはより厚い部分の中央に、軸12と平行に延びるスロット14を含み、スロット14は、調節ボルトによって圧迫できる。調節ボルトは、大きい刻み付き調節ヘッド15と図2の断面図に示すねじ切りスピンドル16とを有する。スピンドルは、ハウジング10の壁に設置されたねじ切りナットに係合する。
【0024】
円筒形空洞11の中空部分には、上から空洞の中に引き入れることができかつ底部において支持リング17によって支持できる案内インサート18が配置され、案内インサート18は、好ましくは、Teflon(登録商標)又は摩擦係数の小さい同様のプラスチック材料によって作られる。案内インサート18の内部に、球面空洞が設けられる。案内インサート18の外被に沿って、スロット(図示せず)を与えることができる。スロットに沿って、案内インサート18を僅かに開くことができる。案内インサート18の上面において、その除去を防止する閉鎖リング19が、ハウジング10の上縁にねじ止めされる。
【0025】
案内インサート18の中空内部には、球面空洞に形状がぴったり合う球形ヘッド20の球形本体21が配置され、本体21は、下で説明するように2自由度で動けるように空洞内で案内される。上部において、球形ヘッド20は、設定長さを持つネック部22を有し、ネック部は上部ねじ切り穴を有し、この穴に、接続装置を取付けでき、接続装置は、組立体によって装置の位置を調節できるように光学又は電子光学装置(カメラ、ビデオレコーダ又はその他の同様の装置)を取り付けて保持する役割を持つ。
【0026】
球形ヘッド20の本体21の中央に、球体の赤道面に属する中線を有する溝24が設けられ、平行の壁及び設定された深さ及び長さを有する。溝24の役割は、球形ヘッド20の変位を制限することである。図2の断面図から、ハウジング10の底から、短い円筒形スタッド25が延びて、溝24に嵌まるのが分かる。スタッド24の軸は、円筒形空洞11の軸12に属する。スタッド25が存在するので、球形ヘッド20は、ネックの軸に直角を成す軸(この場合には水平)の周りで、溝24の平面壁によって画定された方向にのみかつ溝24の長さによって画定された範囲でのみ回転できる。前に軸と直角を成す軸12の周りでの回転は、スタッド25が円筒形なので可能であり、この回転は、スタッド25の軸が球形ヘッド20のどのような傾動位置においても赤道直径の1つに属するので、ネック部22の軸のどの傾動位置においても可能である。
【0027】
このようにして設けられる案内の特性は、ネック部22及びこれに接続された装置のどのような変位においても、装置の基準位置(好ましくは、水平)は不変のままである、と言うことである。これは、当然、ハウジング10の底の基準平面を決定し本発明の一部を成さない支持体(三脚)の上面が調節可能であり、レベリングバブル13の役割が単に水平位置に対して基準平面を調節しこの位置をチェックするのを助けるだけである、と言う条件を有する。
【0028】
図1において、ハウジング10の側面に、U字形垂直開口26が設けられ、U字形の円弧状の底部プロフィルは、球形ヘッド20が水平位置に達するまで傾動できるようにする。即ち、ネック部22の軸が水平になったとき、開口26はネック部22に当接する。この設計は、90度のカメラの傾動が要求されるポートレート位置で写真が撮られる場合に重要となり得る。この傾動は、球形ヘッド20のネック部22が開口26の角度位置と合致する角度位置にあるときのみ可能である。
【0029】
球形ヘッド20は、大きいねじ切り調節ヘッド15によって上記の自由度内で任意の位置で調節でき、その後調節ヘッド15を締めると、スロット14を圧迫して、ハウジング10が案内インサート18を圧迫し、このようにして加えられた押圧力が、調節された位置に球形ヘッド20の位置を固定する。ハウジングのスロットによる位置の固定は、ハウジングの弾性が、精密な調節を可能にするので有利である。なぜなら、圧迫力のわずかな緩めによって、球形ヘッド20は設定された力でそのまま押圧されるが、多少は球形ヘッドを動かせるからである。
【0030】
図3及び4は、別の実施形態を示す。単純化のために、前の実施形態に比べた場合の相違のみを示す。相違は、この実施形態においてはハウジングにスロットがなくその下部に別個の球体押圧構造体が設けられるので、球形ヘッド20の調節された位置の固定方法にある。この球体押圧構造体は、下から球面に嵌まるカップ形のブレーキングインサート27を有し、スロット付きの持上げリング28がインサート27の底部を受ける。持上げリング28は、図4に断面でのみ示すねじ切りボルト29の制御を受けて垂直方向に移動でき、大きい調節ボタン30がボルト29に接続され、ボタン30は、ハウジング10の外部から操作して捩じることができる。球体押圧構造体の存在は、溝21に沿った球形本体21の案内を妨害せず、ボルト29は、調節ボタン30によって調節された押圧力によってブレーキングインサート27を本体21に押圧して、本体の変位を困難にするか又はこれを完全にブロックする。この実施形態において、球形ヘッド20をハウジングの円筒形空洞の中へ挿入する前に、まず、球面空洞を持つスロット付き案内インサート18を球形ヘッド20の本体に嵌合しなければならず、その後初めて、案内インサート18を球形ヘッド20と共に円筒形外面に沿ってハウジングの空洞に挿入して、その中に固定できる。
【0031】
溝24は、球形ヘッド30がこれに接続された装置と共に水平軸の周りで傾動したとき、傾動した装置の基準面が常に水平であるように、球形ヘッド20を確実に案内する。図5において、1対の溝24a及び24bが設けられた球形本体21の設計を示す。両方の溝は、相互に直角を成す垂直中央面を有し、球形ヘッド20がその基準位置にあるとき、球形ヘッド20の最下点において相互に交差する。即ち、スタッド25において交差する。この基準位置において、使用者は、球形ヘッド20をどの方向に傾動するかを決定できる。即ち、どちらの溝24a又は24bがスタッド25を案内するかを選択できる。この解決法の利点は、熟練の写真家には明らかである。
【0032】
図6〜8は、ヘッド組立体が基本的に図1及び2に示す実施形態と一致するが、更なる機能を提供する実施形態を示す。即ち、2自由度を持つシステムは3自由度を持つように容易に変更できる。即ち、必要な場合、球形ヘッド20は一切の制限なく全方向に調節可能にできる。上述の実施形態において、ヘッド組立体は、図6に示すようにスタッド25が溝24に嵌合するので2自由度で調節可能であり、そのようにして確立された案内は、溝24の平面に沿った球形ヘッド20の回転を可能にする。この実施形態において、スタッド25の高さは小さくなり、側面から及びヒンジプレート31によって下から取り囲まれる。ヒンジプレート31は、図6及び8に示す傾斜部分32を有する。傾斜部分は、2つの安定位置の間で垂直軸12と直角を成す(図においては水平)方向にボタン34によって移動できるアクチュエータシート33に接続される。
【0033】
図6に示す位置において、ボタン34は、ハウジング10に最も近い位置にあり、この位置で、スタッド25は、ヒンジプレート31の上面によって下から支持され、その高さは保持されるスタッド25が溝24の中へ充分な深さまで突出できるようにするのに充分である。
【0034】
図8の拡大図において、ボタン34はハウジング10から離れた第2の安定位置にあり、この位置において、ヒンジプレート31は、外向き方向に移動しているので、スタッド25は、傾斜部分32に沿って滑り落ちており、スタッドの降下は、傾斜部分32に続くより深いプレート面によって下から制限される。この時までに、スタッド25の上面は溝24の範囲外に在るので、上述の案内はもはや機能せず、球形ヘッド20はどの方向にも移動できる。案内位置の回復のためには、球形ヘッド20をまず垂直位置にして、ボタン34を押すと、傾斜部分32がスタッド25を持ち上げて、スタッドを溝24の中へ移動し、この時点から、案内は再び2自由度を持つ。
【0035】
図7において、球形ヘッド20は、ポートレート位置に回されている。即ちネック部22は水平軸を持つ。
【0036】
図9及び10は、2自由度の調節可能性の解除及び回復のために、スタッドを溝24の外及び中へ移動する図6〜8に示す傾斜路を使用する必要がなく、かつこの調節を可能にする更なる調節要素としてボタン34の必要もない、実施形態を示す。この機能即ち自由度を変更する機能は、別個の調節組立体を持つ必要なく単純に使用者が実現できる。
【0037】
図9に示す実施形態は、図4の実施形態に基本的に一致し、その相違は、スタッド25を溝24のプロフィルの中に固定する方式だけである。図10の拡大断面図において、この構造がよりよく分かる。この実施形態において、ディスク2は、組立体のベースを形成するハウジング10の底部に固定される。ハウジング10の底部には、中央位置に、スタッド25の外径と等しい直径を有する貫通垂直孔3が設置され、その中にスタッドが遊び嵌めによって案内される。スタッド25の内部には、バネ4を受け入れるための閉鎖端軸方向穴を持つ。バネ4の上端は、穴の端部に当接し、他方の端部(下端)はディスク2に当接する。バネ4はスタッド25を上向きに即ち球形本体21へ向けて押圧する。更なる相違は、この実施形態において、スタッド25の上端は、湾曲し、好ましくは、球形を持つことである。溝24のプロフィルは、スタッド25の端部のプロフィルに一致する。
【0038】
図9に示す位置において、スタッド25の端部は、溝24の底部に嵌まり、球形ヘッド20は、ハウジング10に対して2自由度で移動できる。即ち、垂直軸12の周りで自由に回転でき、図面の平面に対して直角を成す球体の水平直径の周りで、溝24に沿ってのみ回転できる。
【0039】
ヘッド組立体の使用者が、案内によってブロックされる別の方向に装置を移動し調節したい場合、使用者は、図面の平面に直角を成す軸の周りで閾値より大きい力で、取り付けられた装置と共に球形ヘッド20を傾動させなければならず、この場合、溝24の壁はスタッド25の湾曲頭部を側方に押圧し、この押圧力は下向き成分を持ち、この成分は、スタッド25が穴34の中へ完全に押圧されて、スタッドが壁24の壁の側方移動をブロックできなり、それによって球形ヘッド20を3自由度で任意の方向に調節できるようになるまで、バネ4の付勢力に抵抗してスタッド25を下向きに押圧する。図10は、スタッド25の頭が本体11の外面に押し付けられるこの位置を示す。
【0040】
使用者が2自由度の制限を回復したい場合、組立体を垂直位置(軸12が垂直)に移動しなければならず、溝24がスタッド25と対向位置に移動すると、バネ4の付勢力は、自動的に溝24の中へスタッド25を移動して、図9に示す位置が回復される。バネの付勢力及びスタッド25の頭部のプロフィルを適切に調節することによって、別個の操作要素の必要なく使用できる非常に精密な同時に明確な解決法が得られることが分かった。
【0041】
図11〜16は、更なる機能を提供する本発明の別の実施形態を示す。この機能を必要とする場合には、球形ヘッド20のネック部22のねじ切り穴23に接続される接続要素の主要な目的が、カメラ又はその他の光学装置(体積及び重量が大きい可能性がある)を保持しその位置を調節することであることを理解しなければならない。装置の重点は常に球形ヘッド20の中心から離れるので、その位置を調節するとき、位置を固定するために必要な力は、垂直位置との間の位置の角度差が大きければそれだけ大きくなる。なぜなら、装置の重量は傾動角度に応じたトルクで球形ヘッド20に作用するからである。この場合、位置の固定が傾動角度に応じてより困難になるだけでなく、このトルクは、装置及び球体を下向きに回転させる傾向がある。傾動角度に依存するトルクは、図11〜16に示す実施形態において、同様に傾動角度に依存するカウンタートルクを与えることによって、相殺される。
【0042】
ハウジング10がスタンダ(stander)に取り付けられかつ球形ヘッド20が光学装置を保持するこれまで説明した実施形態のトルク相殺については、球形ヘッド20の内部構造が基本機能即ち2自由度の調節に影響を与えないことによって可能性が生まれる。即ち、球形本体21は、中空内部を持つように設計できる。図12において、切断面は、溝24の中央を通過し、この実施形態において、球形ヘッド20は、溝24を横切る内部空洞35を持つ。内部空洞35は、溝24によって画定される移動平面と直角を成す方向に延びるので、球形ヘッド20の図示する構造は、二次元の調節可能性に影響を与えず、同時に、下に示す構造の位置決め及び操作を可能にする。
【0043】
溝内の案内を保証するスタッドの設計は、前に説明したものとは異なる。図11〜14に示す実施形態においては、圧力嵌め接続によってハウジングに固定される案内シャフト36が使用され、シャフトは溝24の底部で終端せず、内側空洞35の中へ特定程度延びる、中央穴を備えるステム37を有する。球形ヘッド10のネック部11の中央に、軸方向のねじ切り穴44が設置され、その内側端には、内側空洞35の最上部まで延びるより狭い穴38が続く。内側空洞には、実質的に同一線上にある2つのステム40、41と螺旋形バネ本体42とを有するバネ39が配置される。上側ステム41は、軸方向穴38に所与の長さ挿入され、その上端は、ねじ切り穴44にねじ入れられたピン43に当接する。バネ39の下側ステム40は、案内シャフト36のステム37の中央穴の中に嵌合される。
【0044】
このように設計された組立体は、溝24に沿ってのみ水平軸の周りで即ち二重矢印45の方向に移動できる。変位時に、ねじ切り穴44及びそれと共にバネ39の上側ステム41は変位するが、下側ステム40は、固定ステム37によって垂直方向に維持される。バネ39の形状は、傾動角度に応じて捻じれて、傾動に抵抗する対抗力を与え、適切な寸法決定によって、バネは、傾動角度の増大に伴い増大する上述のトルクとは反対の意味を持つカウンタートルクを生じることができ、使用者は、組立体によって保持される装置を動かすために常に同じ変位力が必要とされ、傾動位置においても容易に調節できるとしか感じない。内側空洞35の形状は、バネ本体42の屈曲をブロックしないような設計でなければならない。バネ39は、球形本体21の挿入前に、溝24を通過して穴38の中へ挿入され、この挿入ステップにおいて、案内シャフト36が確実に溝24の中に嵌まるようにし、バネ39の下側ステム40がステム37の中央穴に押し込まれるようにする。
【0045】
図13及び14は、トルクを相殺するための別の構造的解決法を示す。この実施形態において、溝24の中を案内されるスタッド46は、スクリュー47によって設けられた解除可能な接続によってハウジングの底部に固定でき、スタッド46は、上端部において開放されたねじ切り軸方向穴を備える上側ステム48を有する。コイルバネ49は、大きい頭部50を持つスクリューに当接するステム48の外側部分を取り囲み、スクリューの軸部は、ステム48の内側ねじ切り穴の中へねじ入れられる。コイルバネ49の内側端は、球形ヘッド20の内側空洞51の底部壁52にワッシャを介して支持される。
【0046】
球形ヘッド20がその垂直基準位置から二重矢印45の任意の方向に離れたとき、スタッド46とスタッド46のステム48に固定された頭部50との間の距離は、一定のままである。同時に、傾動角度に応じて、下壁面62によって形成されたコイルバネの下側支持体と上からバネを支える頭部50との間の距離は変化する。即ち減少する。これは、空洞の壁と球体の外側プロフィルが同心ではないために生じる。コイルバネ49の圧縮はこの減少に対抗し、これが傾動角度に応じたカウンタートルクを生じる。
【0047】
図15及び16は、前の実施形態の改良バージョンであり、コイルバネ49の下端と空洞51の下側制限壁との間の摩擦が、2つのベアリング53、54を挿入することによって減少する。以前の実施形態との更なる相違は、横断支持部材55が空洞51内部においてスタッド46のステム48に配置され、ベアリング53、54の内側リングが支持部材55の一部を形成するそれぞれのシャフトによって支持されることである。その他については、設計は、以前の実施形態と同じである。球体ヘッド20が溝24によって画定された垂直方向から傾動したとき、空洞50の壁面52は、静止ベアリング53、53に対して変位し、その後、ベアリング53、54の外側リングの変位が続く。このように滑動は生じない。その結果、コイルバネ49の長さが傾動角度に伴い減少し、発生した対抗力は角度変位に抵抗するので、その結果得られたカウンタートルクは、光学装置の傾きを相殺して、調節中、平衡を保てるようにする。
【0048】
図17〜19は、本発明の更に好ましい実施形態を示す。サイズが小さいにも関わらず、この解決法は、ヘッド組立体のレベリングを可能にし、ハウジング10の底面が、ハウジングを支持するスタンダと共に水平面に設定される必要がない。この実施形態の作動を理解するためには、3つの構造的部品、即ちハウジング10、ハウジング10に接続できる案内カップ65及び案内カップ65下方の付勢要素66の間の接続を理解しなければならない。ハウジング10の内部円筒形空洞において、案内インサート18の下端の僅かに下方に、当接ショルダ67が設置される。
【0049】
案内カップ65は、中央開口を備える中央球形区分と、外向きに曲がった水平リム68とを有し、リム68の外側エッジはショルダ67に当接する。図示する位置に案内カップ65を挿入した後、カップ65が落下するのを防止する支持リング69が配置される。
【0050】
付勢要素66は、案内カップ65の下方に配置され、付勢要素66は、案内カップ55の中央部の球形底面に嵌る形状を有する上側球形支持押圧面を有する。付勢要素66の中央から、以前の実施形態に示す案内スタッド15、36及び62の役割と同様の役割、即ち特に溝24に沿った球形ヘッド20の変位を案内し制限する役割を有する案内スタッド70が延びる。さらに、より小さい直径を持つ上側区分が溝24の中に延び、この区分はバネ72によって底から付勢された円筒形スリーブ71によって取り囲まれる。スリーブ72の落下は、案内スタッド70の上端に固定されたスクリュー73によって防止される。この実施形態において、溝24は、図17の断面図から分かるように以前の実施形態におけるよりずっと深い。
【0051】
偏心シャフトを持つ押圧組立体74は、付勢要素66の底の下方に配置される。見やすさのために、図18に示す調節ボタンが外側端に取付けられるシャフトを除いて、押圧組立体74の細部は図17に示さない。
【0052】
本実施形態の構造の説明を終えるにあたって、球形ヘッド20のネック部22に軸12と平行に延びる貫通孔が設けられ、調節ロッド76がこの孔に挿入され、ロッド76の上側頭部の下方に、穴より直径の小さい円筒形スピンドル77が設置され、スピンドル77の下端に、球形頭部78が細い短いピンを介して結合される。球形頭部78の直径は、円筒形スピンドル77の直径及びスリーブ71の穴の直径と同じである。円筒形スピンドル77は、バネ79によって取り囲まれ、その下端は孔の下側ショルダによって支持され、その上端は、調節ロッド76の頭部の底部に当接する。調節ロッド76は、図19の拡大図に示す押圧位置と、バネ79が図17に示す基本位置に調節ロッド76を移動した解除位置とを有する。
【0053】
図18において、球形ヘッド20の上部の深くなった部分には、レベリングのために必要な、軸12と直角を成す平面を有するレベリングバブル80が配置される。
【0054】
図17〜19に示す球形ヘッド組立体の作動は、好ましい2つの独立ステップを含む。第1ステップにおいて、軸12の垂直方向を調節する。ハウジング10の底を保持するスタンダの上面が水平ではない場合、第1ステップにおいて、調節ボタン75及びこれに接続された押圧組立体74を使用することによって、付勢要素66と案内カップ65との間に以前に設けられた圧力を解除し、それによって、付勢要素66の角度位置を所与の限界内で調節できる。限界は、主に、案内カップ65の中央開口の直径によって画定される。スタンダの上面が水平面とは大きく異なるので、調節範囲は±25°〜30°であれば充分である。
【0055】
この緩められた位置において、ネック部22から延びる調節ロッド76の上端が、押圧され、それによって、下端は、図19に示す位置に移動する。この位置において、円筒形スピンドル77及びこれから離間する球形頭部78は、両方ともスリーブ71の孔の中に在る。この位置において、ネック部22の位置の調節後に、付勢要素66が続き、軸12は、レベリングバブル80を使用することによって垂直位置に調節される。この調節後、調節ボタン75を回しかつ押圧組立体74を使用することによって、付勢要素66は案内カップ65に押圧され、案内カップ65のリム78はハウジング10の内側ショルダ67に押圧される。その結果、ハウジング10、案内カップ65及び付勢要素66は、堅固に接続され、軸12の方向は垂直になり、溝24における案内スタッド70の案内は、垂直平面においてのみ球形頭部78の回転を可能にする。本明細書において説明する押圧は、ハウジング10と球形ヘッド20との間の接続には影響を及ぼさないことに留意しなければならない。
【0056】
第2調節は上述のように行える。即ち、球形ヘッド20を溝24によって画定された範囲で傾動するか又は垂直に配置された案内スタッド70の周りで回転できる。これは、調節ロッド76の解除後に、図17に示す基準位置に戻れるようにし、球形頭部78は調節ロッド76の軸(及びそれと共にネック部22)が垂直方向との間の角度を閉じられるようにする。調節ロッド76の存在は、以前に説明した2自由度の調節を妨げない。どのような調節位置においても、球形ヘッド20及びこれに取り付けられた光学装置は、調節ヘッド15を回してハウジング10のスロット14を圧迫することによって固定できる。なぜなら、ハウジング10は案内インサート18を圧迫し、インサートを球形ヘッド20に押圧する。
【0057】
図17〜19をよく見えるようにするために、上述のトルク相殺構造は示さないが、前記の構造の使用は、この実施形態においても可能である。
【0058】
次に、以前の実施形態に比べて基準位置が180°回転した本発明に係わる球形ヘッド組立体の実施形態を示す図20〜24を参照する。以前の実施形態においては、組立体のハウジング10の底部(又は図には示さないがハウジング底部に取り付け可能ないわゆる底板)は、図には示さないスタンダ(典型的には三脚)に取付け可能であり、光学及び/又は電子装置を保持するための支持体は、解除可能に球形ヘッド20のネック部22の上部に取付け可能である。
【0059】
図20に示す組立体は、以前の実施形態において説明したネック部22の代わりにベース101を有する球形ヘッド100を持ち、ベース101は、平面状の底部を持ち、ベースは、のちに説明するように支持組立体の調節可能性を妨げないように上向きに円錐状に狭くなる。ベース101の底部には、ねじ切り穴が設けられ(図示せず)、これによって、スタンダとしての三脚の上に組立体を取り付けできる。球形ヘッド100は、ベース101に固定される球形本体99を持ち、球形本体99は、垂直中心軸102を持つ。軸は、使用中垂直位置に設定されることが好ましい。短い円筒形スタッド103が球形本体99の最上部から延び、その軸は、軸102の延長部に在る。スタッド103の役割は、図2、4及び6に示すスタッド25の役割と同じである。スタッド103は、図9及び10に示すように作ることもできる。
【0060】
図21及び22は、弾性プラスチック材料で作られた平行側壁を持ちかつ以前の実施形態において示した案内インサート18の役割を果たすブラケット105を示す。相違は、ブラケット105が、球体の最大直径を対称的に取り囲む2つの平面状側面106、107を持つことであり、側面間には、内側空洞が設けられ、空洞は、球形ヘッド100の直径に嵌る球形区分として形成される。ブラケット105の球形区分の高さは、球形ヘッド100の半径より大きく、したがって、ブラケットは、弾性変形後にしか球形ヘッド100に配置できない。サイズは、ブラケット105がその弾性変形によって球形ヘッド100上に(即ち、変形限界内で)嵌合できるように選択される。ブラケット105の内側球形区分には、側面106、107の端部間に延びる溝108が設けられ、溝108の幅は、スタッド103の外径に嵌まり、スタッド103の高さを受け入れるのに充分な深さを有する。スタッド103及び溝108は、以前の実施形態において球形ヘッド20がハウジングに対して案内されたように球形ヘッド100に対してブラケット105の変位を制限し案内するが、この場合、2つの嵌合要素の役割は交換されて、球形ヘッド100は、全く溝を持たない。
【0061】
図22に示すようにブラケット105の外側プロフィルは、両方とも垂直面を有する2つの平行の線形区分109、121において接線方向に継続する2つの制限壁106、107の間で円弧形である。ブラケット105の外壁は部分的に湾曲し、その後、端区分において、制限側面106、107に対して直角を成す平面状面を持ち、側面は平面状面によって接続される。
【0062】
図23は、以前の実施形態のハウジング10と同じ役割を果たす支持部材110を示すが、この場合には、円筒形ではなく、2つの離間した平行の壁によって制限された剛性部材であり、湾曲内部及び部分的に湾曲する外面を有し、かつブラケット105の外面に正確に嵌まってかつ下からブラケットに挿入できる内部ネスト120を有する。図23において、2つの壁の一方のみ即ち壁111のみ見える。なぜなら、他方の壁は被覆されるからである。
【0063】
図24は、組み立て済みの状態でこの実施形態を示す。第1組立ステップにおいて、ブラケット105は、可撓性の限度内で開くように押圧され、球形ヘッド100から延びるスタッド103がブラケット105の内部の溝108の中にぴったりと嵌まるように、球形ヘッド100に押し付けられる。その後、ブラケット105は、ブラケットによって包まれた球形ヘッド100と共に、下から支持部材110の内部ネスト120の中へ引き入れられ、ブラケット105は、それぞれの閉鎖プレート112、113(図21)をスクリューで支持部材110に取り付けることによって、落下しないように固定される。図21は固定スクリュー114を示す。
【0064】
再び、図23を見ると、支持部材110は、上側水平プレート115を有し、その中央から軸102の延長に、ねじ切りボルト116が延び、これによって、カメラ、ビデオレコーダ又はその他の光学又は電子装置を支持部材110の上側プレート115に取り付けられるようにする。ねじ切りボルト116の下端は、平坦な広い調節ディスク117に接続される。調節ディスクは、支持部材110の上側部分に作られたギャップに嵌合し、その直径は、支持部材110の幅より大きく、凸凹のある外壁を持つので、ねじ切りボルト116を回して、カメラを接続又はこれから取外しするために使用できる。
【0065】
ベース101において固定される球形ヘッド100上で、支持部材110を2つの軸の周りで任意の位置に調節できる。軸102と直角を成す軸の周りでの回転は、溝108に沿って軸102を含む平面においてのみ即ち傾動のみ可能である。案内は、軸102の周りでの回転を防止しない。支持部材110は、任意の調節された位置で固定できる。このために、支持部材110の側面において、ナット(図示せず)にねじ式に接続されかつ好ましくはギザギザ付きの大きい調節ボタン118を持つ調節ボルトが使用され、ボルトの内側端は、ブラケット105の外面に嵌る押圧プレート119が設置される。任意の調節された位置において、調節ボタン118及びその押圧プレート119を使用することによって、支持部材110の位置は、球形ヘッド100に対して固定できる。圧力を緩めることによって、支持部材110の位置は再び調節できる。
【0066】
図25の断面図は、組立体の内部設計をよく示す。図25は、支持部材110の内部に作られた溝108が球形ヘッド100の最上部に設置されたスタッド103をどのように取り囲むか及びスタッド103の両側にそれぞれのバネ122、123を配置でき、バネ122、123の外側端が、閉鎖プレート112、113によって保持され固定されたそれぞれの閉鎖部材に当接し、その内側端がスタッド103によって支持されることを、示す。支持部材110が図の平面に対して直角を成す水平軸の周りで任意の方向に回されたとき、回転方向に在るバネ122、123の後バネは圧縮され、圧縮力は、回転角度に比例して増大する。このようにして、この実施形態も、傾動トルクの相殺のための単純な可能性を持つ。
【0067】
図20〜25に示す実施形態においては、ベース101の水平位置は三脚の調節によって保証できると想定されている。この実施形態を以前の実施形態と比較すると、この実施例においては、球形本体100の位置が固定され、調節可能な部分を構成しカメラを保持するのが支持部材110(以前の実施形態のハウジングに相当する)であることを除けば、1つのボタンによる位置固定及び垂直面の維持は、以前の実施形態の対応する特性と変わらないことが分かるはずである。
【0068】
次に、図26及び27は、図20〜25に示す実施形態の機能がレベリング機能によって補完される実施形態を示す。即ち、三脚の上面及びベース101の平面が水平ではない場合、スタッド103の軸の位置を垂直位置に調節する機能である。
【0069】
この実施形態は、以前の実施形態の球形ヘッド100の本体99がベース101と一体のピースで作られた図20〜25と異なる。図26〜27に示す実施形態において、球形ヘッドは、相互に3自由度で回転できる2つの部品、即ち球形シェル124とシェル124の球面空洞に挿入されこれに嵌合するスロット付き内側球体125とから成る。ベース101は、スロット付き内側球体125の下向きに広くなる円錐形底部である。
【0070】
スタッド103は、球形シェル124の最上部から延び、その役割は、以前の実施形態において説明するものと同じであり、支持部材110の内部に配置されるブラケット105の溝108の中に嵌合する。球形シェル124の下部において、軸102に平行に延びる円筒形穴が設けられ、その中に、外側円筒面とスロット付き内側球体125に嵌る内側球面空洞とを有する案内インサート126が配置される。案内インサート126は、図2に示す案内インサート18と同様であり、同じ役割を有し、同様に底部において2枚の閉鎖プレートによって固定される。スロット付き内側球体125の内において、斜めに延びるスロット127が設けられ、その幅は、2つの別個の部品の外側の部品128設けられたねじ切り穴に嵌合されたねじ切り調節ボルト129を押圧することによって僅かに変更できる。スロット127が調節ボルト129によって開かれたとき、スロット付き内側球体125は、球形シェル124の内壁に押し付けられ、球形シェル124は、スロット付き球体及びベース101に堅固に接続される。調節ボルト129が緩められると、球形シェル124の位置は、スロット付き内側球体125に対して任意の方向に変更でき、軸102及びスタッド103の垂直方向の調節を行える。図26の立面図において、球形シェル124の本体において、側方部分に、上から開かれるネスト130が設置され、その中へ、同様に上から見えるレベリングバブル131を配置できる。レベリングバブル131によって、球形シェル124は、ベース101の平面に関係なく常に水平位置に調節できる。球形シェル124とスロット付き内側球体125が相互に堅固に接続された後、ブラケット105を保持する支持部材110は、以前の実施形態に関連して説明したのと同様に、2自由度で調節できる。
【0071】
本発明に係るヘッド組立体は、その最も単純な実施形態においても、使用者の基本的ニーズに合わせて相互に直角を成す2つの平面の周りで回転でき、かつ単一の操作要素で快適に調節位置を固定しかつ固定された接続をハウジング10に設計された手法を用いて緩めることができる。必要又は要請があれば、組立体は、二次元移動の制限を終了して三次元調節を可能にするための任意の要素で補完でき、この調節の固定及び緩めは、2次元調節において使用されるのと同じ操作要素によって行える。自由度の変更は、別個の操作要素を用いて行えるが、付加的な操作要素を必要としない場合には、図9及び10に示す手法でも可能である。更に必要があれば、傾動角度の増大に応じて増大する傾動トルクの相殺のために上記の選択肢を維持することもそれなしとすることも可能である。また、スタンダの平面が水平ではない場合又は水平にならすことができない場合、そのレベリングが前に説明した2自由度の調節可能性に影響を及ぼさない単一の操作要素によって、水平位置を調節することができる。本発明に従った解決法は、本明細書において説明し図示する好ましい実施形態の任意の1つに限定されない。支持部材110は、例えば上下に配置された2つの部品から作ることができ、球形ヘッド100上に配置される部品のみ可撓性であり、外側の剛性部品は、安定性を保証し、他の1つは球形ヘッドへの配置を保証する。この場合、スタッド103は、外側剛性部品に作られた溝の中まで延びる。
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