(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
投薬量設定アクチベーター(5;50)を備え、前記投薬部材(6;60)が第1の連結構造を有し、前記投薬量設定アクチベーター(5;50)が前記第1の連結構造(66;660)に対応する第2の連結構造(52;5250)を有し、前記第1の連結構造(66;660)が前記第2の連結構造(52;5250)に装着されるとき、前記投薬量設定アクチベーター(5;50)が前記投薬部材(6;60)に対してトルク抵抗性に接続される、請求項3に記載の医療用送達装置(1;10)。
前記投薬量設定アクチベーター(5;50)が、前記第2の連結構造(52;5250)が前記第1の連結構造(66;660)に装着されるときに前記投薬部材(6;60)にトルク抵抗性に接続されるダイヤルユニット(520)を含み、前記ダイヤルユニット(520)を回転させると前記投薬部材(6;60)が回転し、前記ロック状態では、前記ロック機構(530;2410)が前記ダイヤルユニット(520)の回転をブロックする、請求項4に記載の医療用送達装置(1;10)。
前記投薬量設定アクチベーター(5;50)が、容器(8;80)を所定の位置に保持するための容器座部(53;5230、5250、5320)を含み、前記容器(8;80)が前記容器座部(53;5230、5250、5320)によって前記所定の位置に保持されるとき前記医療用送達装置(1;10)が前記投薬量設定状態となり、前記容器座部(53;5230、5250、5320)が前記容器(8;80)を保持していないとき前記医療用送達装置(1;10)が前記ロック状態となるように、前記ロック機構(530;2410)が構成される、請求項4又は5に記載の医療用送達装置(1;10)。
容器(8;80)が前記投薬量設定アクチベーター(5;50)の前記容器座部(53;5230、5250、5320)に配置されるときに前記容器(8;80)の内部空間と前記投薬部材(6;60)の前記投薬チャンバ(611;6110)との間に開いた管路が形成されるように、前記送達オリフィス(62;620)が前記投薬量設定アクチベーター(5;50)の前記容器座部(53;5230、5250、5320)を前記投薬部材(6;60)の前記投薬チャンバ(611;6110)に接続する、請求項6に記載の医療用送達装置(1;10)。
前記投薬量設定アクチベーター(5;50)の前記容器座部(53;5230、5250、5320)が、前記容器(8;80)が前記投薬量設定アクチベーター(5;50)の前記容器座部(53;5230、5250、5320)に配置されるときに容器(8;80)のキャップを穿通するスパイク(532;5260)を含む、請求項6又は7に記載の医療用送達装置(1;10)。
前記投薬量設定アクチベーター(5;50)が、前記投薬量設定アクチベーター(5;50)の前記第2の連結構造(52;5250)が前記投薬部材(6;60)の前記第1の連結構造(66;660)に装着されるときに前記投薬部材(6;60)の前記送達オリフィス(62;620)を密封するオリフィス密封機構(54;540)を含む、請求項4から8のいずれか一項に記載の医療用送達装置(1;10)。
前記容器(8;80)が前記投薬量設定アクチベーター(5;50)の前記容器座部(53;5230、5250、5320)に配置され、前記ロッド要素(3;30)と前記投薬部材(6;60)が互いに対して第1の方向に回転するとき、流体が前記容器(8;80)から前記送達オリフィス(62;620)を通して前記投薬チャンバ(611;6110)へ移送される、請求項6から9のいずれか一項に記載の医療用送達装置(1;10)。
前記容器(8;80)が前記投薬量設定アクチベーター(5;50)の前記容器座部(53;5230、5250、5320)に配置され、前記ロッド要素(3;30)と前記投薬部材(6;60)が互いに対して第1の方向とは反対の第2の方向に回転するとき、前記流体が前記投薬チャンバ(611;6110)から前記送達オリフィス(62;620)を通して前記容器(8;80)へと移送される、請求項10に記載の医療用送達装置(1;10)。
前記容器(8;80)を前記容器座部(53;5230、5250、5320)に配置すると前記医療用送達装置(1;10)が前記ロック状態から前記投薬量設定状態に移行するように、前記投薬量設定アクチベーター(5;50)は、前記容器(8;80)が前記投薬量設定アクチベーター(5;50)の前記容器座部(53;5230、5250、5320)に配置されると前記容器(8;80)によって作動される前記ロック機構(530;2410)の解放部材(530)を備える、請求項6から11のいずれか一項に記載の医療用送達装置(1;10)。
前記解放部材(530)が、前記投薬量設定アクチベーター(5;50)に対してトルク抵抗性に接続され、前記ロック状態において前記医療用送達装置の対応する表面(2410)に係合するブロック表面を含む、請求項12に記載の医療用送達装置(1;10)。
前記容器(8;80)を前記容器座部(53;5230、5250、5320)の中に配置すると前記解放部材(530)が軸方向に移動するように構成される、請求項12又は13に記載の医療用送達装置(1;10)。
前記容器(8;80)を前記容器座部(53;5230、5250、5320)の中に配置する間に軸方向に移動されると、前記解放部材(530)のブロック表面が、前記医療用送達装置(1;10)の前記対応する表面(2410)と係合解除する、請求項13を引用する請求項14に記載の医療用送達装置(1;10)。
前記投薬量設定アクチベーター(5;50)の前記解放部材(530)が、前記医療用送達装置(1;10)が前記ロック状態にあるときに隠れ、前記医療用送達装置(1;10)が前記投薬量設定状態にあるときに見えるインジケータ(5330)を備える、請求項14又は15に記載の医療用送達装置(1;10)。
前記切り替え機構(4、34、35;40、330、510)が、前記医療用送達装置(1;10)が前記投薬量設定状態から前記送達状態へ切り替わるときに前記ロッド要素(3;30)の前記ステム部(31;310)の前記第1のねじ山配列(34、35;3320、3330)を前記投薬部材(6;60)の前記第2のねじ山配列(65;650)から係合解除する係合解除構造(34、411;3320、3340、4120)を含む、請求項17に記載の医療用送達装置(1;10)。
前記切り替え機構(4、34、35;40、330、510)の前記係合解除構造(34、411;3320、3340、4120)が、傾斜面(4120)によって画定されるリセス(4110)を有する解放シェル(41;410)を含み、
前記ステム部(31;310)の前記第1のねじ山配列(34、35;3320、3330)が、前記解放シェル(41;410)の前記リセス(4110)内に位置決めされるハンプ(3340)を有し、
前記解放シェル(41;410)の前記傾斜面(4120)が前記第1のねじ山配列(34、35;3320、3330)の前記ハンプ(3340)に作用することにより前記第1のねじ山配列(34、35;3320、3330)を前記第2のねじ山配列(65;650)から係合解除するように、前記切り替え機構(4、34、35;40、330、510)が、前記医療用送達装置(1;10)を前記投薬量設定状態から前記送達状態へ切り替えるときに前記解放シェル(41;410)を回転させるように構成されている、
請求項18に記載の医療用送達装置(1;10)。
前記投薬部材(6;60)と前記ロッド要素(3;30)を互いに対して回転させることにより前記ロッド要素(3;30)がその長手軸(38;380)に沿って前記送達オリフィス(62;620)に対して移動されるときに前記ロッド要素によって形成される投薬容積を示すように、前記ロッド要素(3;30)に連結されるカウンタ(63、63;340、630)を備える、請求項2から19のいずれか一項に記載の医療用送達装置(1;10)。
ケージ本体(20)、ばね要素(70)及び解放機構(90)を備え、前記ケージ本体(20)が前記送達オリフィス(620)に対して移動することにより前記送達オリフィス(620)を覆うように、前記ロッド要素(30)がその長手軸(380)に沿って前記送達オリフィス(620)に対して移動されると前記解放機構(90)が前記ばね要素(70)を作動させ、前記投薬チャンバ(620)が最小化する、請求項17から20のいずれか一項に記載の医療用送達装置(10)。
前記解放機構がロックアウト部材(90)を含み、前記ばね要素(70)が前記ケージ本体(20)と前記ロックアウト部材(90)の間に配置される、請求項21に記載の医療用送達装置(10)。
前記医療用送達装置の前記投薬量設定状態において、前記ロックアウト部材及び前記ケージ本体が、前記ロッド要素(30)の前記第1のねじ山配列(3320、3330)と前記第2のねじ山配列(650)とが互いに沿って移動するとき回転しないように構成されている、請求項22に記載の医療用送達装置(10)。
前記投薬部材(60)が前記長手軸(380)に沿って回転するときに認識可能なクリック音が生成されるように、前記投薬部材(60)と前記解放機構(90)が相互作用する、請求項21から24のいずれか一項に記載の医療用送達装置(10)。
【発明の概要】
【0008】
本発明によれば、このような必要は、独立請求項1の特徴により規定される医療用送達装置によって満たされる。好ましい実施形態は、従属請求項の主題である。
【0009】
特に、本発明は、ロッド要素及び投薬部材を備える医療用送達装置に関する。ロッド要素は、長手軸、遠位端及び近位端を有するステム部を有する。投薬部材は、送達オリフィスと、遠位端、近位端及び中空内部空間を有するチャンバ本体とを備える。ロッド要素のステム部は投薬部材のチャンバ本体の内部空間の中へ延び、送達オリフィスはロッド要素のステム部の近位端に隣接して配置される。医療用送達装置の投薬量設定状態において、ロッド要素は、ロッド要素のステム部と送達オリフィスとの間において投薬部材のチャンバ本体の内部空間に投薬チャンバが形成され、ロッド要素が送達オリフィスから遠ざかるときこの投薬チャンバが増大するように、その長手軸に沿って投薬部材の送達オリフィスに対して可動である。医療用送達装置は、特に、医療用送達装置をロック状態から投薬量設定状態へと変化させるためのロック機構を更に備える。これにより、医療用送達装置のロック状態において、ロッド要素をその長手軸に沿って投薬部材の送達オリフィスに対して移動させることが防止される。
【0010】
本発明及び開示される医療用送達装置の実施形態に関して使用される用語「近位」は、その使用目的において患者の身体の方に向く医療用送達装置の配向に関連し得る。これにより、医療用送達装置が患者に適用されるとき、部品の近位部分を患者の身体の方に向ける又は患者の身体のより近くに位置付けることができる。反対に、本発明及び開示される医療用送達装置の実施形態に関して使用される用語「遠位」は、その使用目的において患者の身体から離れる方に向く医療用送達装置の配向に関連し得る。例えば、従来のシリンジでは、近位端は通常シリンジの先端であり、遠位端は親指が押し当てられるプランジャの端部である。
【0011】
本発明及び開示される医療用送達装置の実施形態によるロッド要素のステム部は、柱又は円筒の形状を有することができる。投薬部材のチャンバ本体の内部空間へと延びる間に、ロッド要素の本体の遠位端はチャンバ本体の遠位端の近くに位置することができ、ロッド要素のステム部の近位端はチャンバ本体の近位端の近くに位置することができる。
【0012】
開示される医療用送達装置の実施形態のロッド要素及び送達オリフィスは、特定の用途又は装置によって送達される医薬若しくは薬物の投与のための形状を有することができる。例えば、装置が医薬の注射を目的としている場合、その形状は針とすることができる。このような一実施形態では、針は、後述するようにハウジングの内部空間からその近位開口部を通してハウジング又はその特定の部品の外へ延びることができる。或いは、針は、例えば眼の中に液滴を送達するような形状を有する吐出口、又はノズルなどとすることができる。送達オリフィスは、送達部材に接続されるために適合させることもできる。例えば、送達オリフィスは、ルアーロック又はルアーテーパーコネクタの雄又は雌部分を含むことができ、送達部材は対応する雌又は雄のルアーロックコネクタを備えることができる。送達オリフィスは投薬部材の近位端に配置することができる。
【0013】
本発明及び開示される医療用送達装置の実施形態による医療用送達装置は、塑性材料で作製することができる。特に、本医療用送達装置は、射出成型法で製造することのできる滅菌可能な塑性材料で作製することができる。
【0014】
ロッド要素、投薬部材、ハウジング又は別の部品に関して本明細書において使用される用語「〜の中へ延びる」は、完全に又は部分的に内部に配置されることに関連し得る。例えば、この用語は、部品の一部分が、部分的に他の部品の外側にあるが同他の部品の中に突出する構成に関連している。
【0015】
医療用送達装置にロック機構を設け、それにより送達装置のロックを可能にすることにより、医療用送達装置の使用が意図せずに開始されることを防止できる。同様に、例えば、液体を収容する容器が装置に対して適切に接近可能となる前に投薬量設定が開始されることを防止できる。例えば、バイアルのような容器から針などを通して物質が投薬量設定される場合、ロック機構は、針などが容器内の液体に適切に接近しているときにのみ投薬量設定が開始可能であることを保証できる。
【0016】
このように、本発明による医療用送達装置は、比較的単純な方式で適切且つ正確な投薬量設定を可能にする。特に、比較的小さな容積においても投薬量の改竄及び送達装置の誤用を防止することができる。これにより、医療用送達装置は特に自己投与に適したものとなリ得る。
【0017】
好ましくは、ロッド要素は、互いに沿って移動する第1のねじ山配列と第2のねじ山配列とを有し、医療用送達装置の投薬量設定状態では、ロッド要素の第1のねじ山配列により、ロッド要素はその長手軸に沿って投薬部材の送達オリフィスに対して可動であり、医療用送達装置のロック状態では、ロッド要素がその長手軸に沿って投薬部材の送達オリフィスに対して動かないように、ロッド要素の第1のねじ山配列と第2のねじ山配列を互いに沿って移動させることが防止される。
【0018】
開示される医療用送達装置の一般的な実施形態による第1のねじ山配列は、内側のねじ山配列とすることができ、それに対応して、第2のねじ山配列は外側のねじ山配列とすることができる。ねじ山配列に関する用語「外側の」は、ねじ山配列が配向される方向に関連し得る。特に、この用語は、対応する内側のねじ山配列と相互作用できるように、外側に向かって配向されているねじ山配列に関連し得る。同様に、ねじ山配列に関する用語「内側の」は、ねじ山配列が配向される反対の方向に関連し得る。
【0019】
本明細書において使用される用語「ねじ山」は、隆起部といった雄構造に関するか、或いは表面又は本体に沿ってその周りに延びる溝といった雌構造に関する。通常、ねじ山は、螺旋状の又は実質的に螺旋状の形状を有し、本体又は部品に沿ってその周りに延びる。
【0020】
本発明及び開示される医療用送達装置の実施形態による医療用送達装置内部において、投薬部材とロッド要素を互いに対して回転させることは、ロッド要素の周りを回転する投薬部材、投薬部材の中で若しくは周りを回転するロッド要素、又は共に反対方向へと回転する投薬部材とロッド要素のいずれかにより具現化することができる。効率的且つ適切な回転運動のために、投薬部材とロッド要素は同軸に構成することができる。
【0021】
第1及び第2のねじ山配列に関連して使用される用語「互いに沿って移動」は、ねじ山内又はねじ山上で移動又はシフトする部分に関連し得る。例えば、ピンなどの雄部材は、雌ねじの溝の中を同溝に沿って移動することができる。
【0022】
本発明の好ましい構成によれば、投薬部材は直接第2のねじ山配列を含むので、様々な治療用途に適した医療用送達装置の頑健で効率的な実装態様が達成され得る。投薬量設定のために多数の部品を具現化しなければならない事態を防止することができる。更に、投薬部材の第2のねじ山配列に係合するロッド要素の第1のねじ山配列は、医療用送達装置の投薬量設定状態において、特に10μlから1mlといった比較的小さな容積においても、液体を正確に投薬量設定することを可能にする。したがって、本医療用送達装置は、例えば容器から、液体を正確に投薬量設定することと、投薬量設定後における液体の簡便な自己投与とを可能にする。
【0023】
これにより、投薬部材は好ましくは第2のねじ山配列を含み、医療用送達装置の投薬量設定状態において、ロッド要素の第1のねじ山配列と投薬部材の第2のねじ山配列が互いに沿って移動し、ロッド要素がそのステム部の長手軸に沿って送達オリフィスに対して移動するように、ロッド要素の第1のねじ山配列が投薬部材の第2のねじ山配列と係合し、投薬部材がロッド要素に対して回転可能である。このような構成は、医療用送達装置の効率的な実装と、正確な動作を可能にする。
【0024】
医療用送達装置は、好ましくは投薬量設定アクチベーターを備え、投薬部材は第1の連結構造を有し、投薬量設定アクチベーターは第1の連結構造に対応する第2の連結構造を有し、第1の連結構造が第2の連結構造に装着されるとき、投薬量設定アクチベーターは投薬部材に対してトルク抵抗性に接続される。このような投薬量設定アクチベーターは、医療用送達装置を用いた正確な投薬量設定を可能にし得る。投薬量設定アクチベーターは、例えば、送達の前に取り外すことができる。
【0025】
投薬量設定アクチベーターは、好ましくは、ダイヤルユニットを回転させると投薬部材が回転するように第2の連結構造が第1の連結構造に装着されるときに投薬部材に対してトルク抵抗性に接続されるダイヤルユニットを備え、ロック状態では、ロック機構がダイヤルユニットの回転をブロックする。このようなダイヤルユニットは、簡便な投薬量設定動作のための手段により具現化され得る。例えば、ダイヤルユニットには、快適な手作業を可能にするリブなどの把持構造を設けることができる。
【0026】
更に、投薬量設定アクチベーターは、好ましくは、容器を所定の位置に保持するための容器座部を備え、容器が容器座部によって所定の位置に保持されるとき医療用送達装置が投薬量設定状態となり、容器座部が容器を保持していないとき医療用送達装置がロック状態となるように、ロック機構が構成される。
【0027】
本明細書において使用される用語「容器」は、液体又は流体を貯蔵及び輸送するために適したあらゆる液体リザーバに関連し得る。液体が医薬などであるとき、容器は特にバイアルとすることができる。これに関連して使用される用語「バイアル」は、液体形態、粉末化形態又はカプセル化形態の製薬製品又は製剤又は医薬を貯蔵するために広く使用される比較的小さなベッセル又はボトルに関連し得る。バイアルは、ガラス又はプラスチックといった滅菌可能な材料、例えば、ポリプロピレンから作製することができる。容器は、複数のバイアルといった複数の副容器を含むこともできる。この文脈における用語「所定の位置」とは、容器の開口が送達オリフィスに向かって配向されるような位置である。このような容器座部は、容器を、予めよく定めた位置に及び配向で接続することを可能にする。これにより、容器をシステム又は医療用送達装置に効率よく連結することができる。
【0028】
好ましくは、送達オリフィスは、容器が投薬量設定アクチベーターの容器座部に配置されるときに容器の内部空間と投薬部材の投薬チャンバとの間に開いた管路が形成されるように、投薬量設定アクチベーターの容器座部を投薬部材の投薬チャンバに接続する。開いた管路は、投薬量設定アクチベーターが長手軸の周りで回転するとき、液体を容器から投薬チャンバの中へ移送することを可能にする。具体的には、投薬量設定アクチベーターを回転させることにより、投薬チャンバが拡大又は縮小し、液体が容器から投薬チャンバの中へ又はその逆に移送されるように、ロッド要素が長手軸に沿って移動する。
【0029】
投薬量設定アクチベーターの容器座部は、好ましくは、容器が投薬量設定アクチベーターの容器座部に配置されるとき容器のキャップを穿通するスパイクを備える。多くの場合、容器は隔膜などの穿通可能なカバーにより閉じられる。スパイクを有することにより、送達オリフィス自体がキャップを穿通しなければならない事態を防止することができる。これにより、送達オリフィスを痛める又は汚染するリスクを低減することができる。例えば、キャップが隔膜を備え、送達オリフィスが針を有するとき、一般に針を汚染する、隔膜に針を通さなければならない事態を防止することができる。したがって、スパイクは、送達オリフィスを、注射などの投与のために準備のできた状態に保つことを可能にする。
【0030】
投薬量設定アクチベーターは、好ましくは、投薬量設定アクチベーターの第2の連結構造が投薬部材の第1の連結構造に装着されるときに投薬部材の送達オリフィスを密封するオリフィス密封機構を更に備える。このような構成により、残留容積を最小化することができる。有利には、オリフィス密封機構は、送達オリフィスの先端又は近位端の可能な限り近くに位置する。オリフィス密封機構は、送達オリフィスが挿入されるとき穴又は最薄部といった通路を形成するプラグなどの形状を有することができる。オリフィス密封機構は、シリコーンなどの塑性又は弾性の材料から作製することができる。オリフィス密封機構を用いて、送達オリフィスの保護を達成することができる。オリフィス密封機構は、投薬量設定アクチベーターが医療用送達装置に取り付けられていないとき、液体の漏出を防止することができる。更に、送達オリフィスの周囲の空気を含む自由空間が、オリフィス密封機構によって最小化され得る。同様に、容器の内容物と共に引き込まれて投薬チャンバの中に移送される空気の量が、減少するか、場合によっては少なくとも実質的に排除される。
【0031】
好ましくは、流体は、容器が投薬量設定アクチベーターの容器座部に配置され、ロッド要素と投薬部材が互いに対して第1の方向に回転するとき、容器から送達オリフィスを通して投薬チャンバへと移送される。これは、医療用送達装置の効率的設計及び快適な投薬量設定を可能にする。これにより、流体は、好ましくは、容器が投薬量設定アクチベーターの容器座部に配置され、ロッド要素と投薬部材が互いに対して第1の方向とは反対の第2の方向に回転するとき、投薬チャンバから送達オリフィスを通して容器へと移送される。これは投薬量設定の選択を可能にする。したがって、投薬チャンバ内の投薬量は、簡便に変更、調節及び選択された投薬量に合わせて前後に修正することができる。医療用送達装置を送達状態又はモードに切り替えた後、更なる投薬量設定はできない。
【0032】
ロッド要素のステム部の第1のねじ山配列及び/又は投薬部材の第2のねじ山配列は、互いに固定距離に位置決めされた複数の目違いを備えることができ、ロッド要素のステム部の第1のねじ山配列と投薬部材の第2のねじ山配列が互いに沿って移動するとき、ロッド要素のステム部の第1のねじ山配列と投薬部材の第2のねじ山配列がそれら複数の目違いと所定の回転角度で相互作用する。目違いは、例えば、ねじ山の壁のギャップとすることができる。
【0033】
これにより、目違いは、所定の回転角度の周りで投薬部材を回転させることにより投薬チャンバが所定の容積だけ変化するように位置させることができる。特に、所定の角度の周りに回転させる度に、投薬チャンバの容積は同じ所定量だけ変化することができる。同様に、投薬量設定の間に投薬容積が所定量だけ変化したことを示すシグナルを、医療用送達装置のユーザに提供することができる。
【0034】
好ましくは、投薬量設定アクチベーターは、容器を容器座部の中に配置すると医療用送達装置がロック状態から投薬量設定状態に移行するように、投薬量設定アクチベーターの容器座部に配置されるときに容器によって作動されるロック機構の解放部材を備える。このような解放部材は、容器座部に容器を置いたときに医療用送達装置が簡便且つ確実にロック解除されることを可能にする。同様に、容器が容器座部に位置決めされたときにのみ装置をロック解除する、即ち投薬量設定状態にすること、及びその間に、容器が容器座部内に適切に配置されることが保証される。したがって、このような解放部材は、容器の適切な設定の達成と、それと同時の又は一工程での装置のロック解除を可能にする。
【0035】
これにより、解放部材は、好ましくは、投薬量設定アクチベーターに対して、例えばそのスリーブユニットに対して、トルク抵抗性に接続され、ロック状態において医療用送達装置の対応する表面に係合するブロック表面を含む。同様に、装置がそのロック状態にあるとき、及び容器座部に配置されている容器がないとき、投薬量設定動作を含むダイヤルユニットの回転運動を安全に防止することができる。
【0036】
好ましくは、解放部材は、容器を容器座部の中に配置すると軸方向に移動するように構成される。これに関する用語「軸方向に移動」は、特にロッド要素のステム部の長手軸に沿った移動に関連し得る。解放部材のこのような軸方向の移動は、例えば、容器座部に配置されたときの、対応する容器の軸方向の移動によって誘導され得る。これは、ロック機構の効率的な実装を可能にする。
【0037】
これにより、解放部材のブロック表面は、好ましくは、容器を容器座部の中に配置する間に軸方向に移動させると、医療用送達装置の対応する表面と係合解除する。このような係合解除は、投薬量設定のための投薬量設定アクチベーターの回転運動のために効率的に空間を生じさせることができる。
【0038】
これにより、投薬量設定アクチベーターの解放部材は、好ましくは、医療用送達装置がロック状態にあるときには隠れ、医療用送達装置が投薬量設定状態にあるときには見えるインジケータを備える。このようなインジケータにより、医療用送達装置がロック状態にあるか又は投薬量設定状態にあるかを効率的に識別することができる。したがって、容器が容器座部上に正確に置かれ、装置が投薬量設定の準備ができていることを確認することができる。
【0039】
好ましくは、医療用送達装置は、医療用送達装置を投薬量設定状態から送達状態へと変化させるための切り替え機構を備え、医療用送達装置の投薬量設定状態では、ロッド要素に軸方向の力を加えることによりロッド要素をその長手軸に沿って移動させることが防止され、医療用送達装置の送達状態では、ロッド要素に軸方向の力を加えることにより、ロッド要素はその長手軸に沿って送達オリフィスに対して可動であり、互いに沿って移動するロッド要素の第1のねじ山配列と第2のねじ山配列によりロッド要素をその長手軸に沿って移動させることが防止される。
【0040】
医療用送達装置が送達状態にあるとき、本発明又は本明細書に開示される医療用送達装置の他の実施形態によりロッド要素を移動させることに関して使用される用語「軸方向の力」は、軸方向に移動させるためにロッド要素に加えられる力に関連し得る。典型的には、このような軸方向の力は、手動で、例えば親指でロッド要素の遠位端又はロッド要素に取り付けられた部分を押すことにより、生じさせることができる。
【0041】
これに関して用語「防止」は、ロッド要素を軸方向に移動させる軸方向の力を妨げることに関連し得る。軸方向の力が十分に大きい場合、例えば、軸方向の力による軸方向の移動が防止されていても装置の特定の部品又は機構を破壊又は変形させることにより、ロッド要素は依然として軸方向に移動しうることが分かる。したがって、軸方向の力による軸方向の移動を防止することは、装置の適切な使用に関連し得る。
【0042】
切り替え構造は、投薬量設定アクチベーターを備えることができる。特に、医療用送達装置は、投薬量設定アクチベーターが投薬部材に装着されるとき投薬量設定状態となるように、且つ投薬量設定アクチベーターが投薬部材から取り外されたときにのみ送達状態に切り替えることができるように、設計することができる。
【0043】
医療用送達装置に切り替え機構又は構造を設けることにより、使用時に、その投薬量設定状態と送達状態とを明確に区別することができる。投薬量設定状態からロック状態を分離することに加えて、これは、医薬などの液体の投薬量設定を液体の送達から機能的に分離することを可能にする。医療用送達装置は、ロック状態で出荷、販売及び/又は取得される。この状態では、意図しない作動又は空気などの事前投与がすべて防止できる。次いで、最初の工程において、装置は、例えば、容器を容器座部の中に置くことにより、投薬量設定状態に切り替えられる。この状態では、液体を、投薬チャンバの中へ正確な量で投与することができる。例えばロッド要素に軸方向の力を加えることによる、投薬量設定の正確性を損ない得る医療用送達装置の意図しない作動は、すべて防止することができる。これにより、液体の正確で安全な投薬量設定が簡便な方法で可能となり、投薬量設定選択が終了するまで液体が投与されないことが保証される。
【0044】
医療用送達装置を送達状態へ切り替えた後は、液体送達の間の正確な投薬量設定の妨害を妨げ得る、更なる投薬量設定の修正を防止することができる。また、送達状態において、それ以上の投薬量設定が不可能であり、したがって投与の間の意図しない投薬量の変更を防止するために手段を講じる必要がないため、医療用送達装置の作動は特に簡便であるといえる。これにより、液体の自己投与は特に簡便で安全となる。切り替え機構は、送達状態になった後は医療用送達装置を投薬量設定状態に戻すように切り替えることができないように具現化され得る。
【0045】
好ましくは、切り替え機構は、医療用送達装置を投薬量設定状態から送達状態へ変化させるとロッド要素のステム部の第1のねじ山配列を投薬部材の第2のねじ山配列から係合解除する係合解除又は機械的構造を備える。第1のねじ山配列を第2のねじ山配列から係合解除することにより、回転させることなくロッド要素を軸方向に移動させることが可能な構成が達成され得る。したがって、ロッド要素は、回転させることなく軸方向の力により移動させることができる。その間、第1及び第2のねじ山配列がもはや相互に係合しないため、回転運動によるステム部の前進は防止される。
【0046】
好ましくは、切り替え機構は、傾斜面により画定されるリセスを有する解放シェルを備え、ステム部の第1のねじ山配列は、解放シェルのリセス内に位置決めされるハンプを有し、切り替え機構は、解放シェルの傾斜面が第1のねじ山配列のハンプに作用することにより第1のねじ山配列を第2のねじ山配列から係合解除するように、医療用送達装置を投薬量設定状態から送達状態へ切り替えると解放シェルが回転するように構成される。このような解放シェルは、係合解除構造の簡便かつ効率的な実装を可能にし得る。
【0047】
ロッド要素は、その近位端側にストッパーを備えることができる。特に、ストッパーは、ロッド要素のステム部の近位端側に位置することができる。この文脈において用語「ストッパー」は、狭義のストッパー、即ちプラグ様シール部材に関連し得る。この用語は、ステム部などに装着されるOリングといった代替え的なシール部材にも関連し得る。ストッパーは、気密性を提供するために変形するために、ゴムなどの弾性材料又はエラストマー材料から作製することができる。ストッパーを用いることにより、ロッド要素は、投薬部材の投薬チャンバに気密性に配置することができる。同様に、投薬チャンバ内へと液体を引き込むことを可能にする、負圧、部分的真空又は真空を投薬チャンバ内に生じさせることができる。
【0048】
好ましくは、医療用送達装置は、投薬部材とロッド要素を互いに対して回転させることによりロッド要素がその長手軸に沿って送達オリフィスに対して移動したときにロッド要素によって形成される投薬容積を示すような、ロッド要素に連結されたカウンタを備える。カウンタをロッド要素に連結することにより、送達オリフィスに対するロッド要素の移動を、確認し、表示された投薬容積を調節することにより直接反映することが可能である。同様に、正確で純粋に機械的な投薬カウンタの効率的な実装が可能である。
【0049】
これにより、カウンタは、投薬部材の第2のねじ山配列に連結したままとすることができる。投薬部材は、もはや回転することができず、軸方向の力が加わるとロッド要素と共に長手方向に摺動する。
【0050】
上記医療用送達装置の動作又は使用において、及び他の医療用送達装置において、容器から流体を引き込むために、投薬チャンバ内に実質的な負圧が誘導される。特に、投薬量設定の間、ステム部は、その近位側に装着されたストッパーと共に送達オリフィスから遠ざかる方向へ移動される。これにより、負圧が生じ、この負圧は次いで容器から流体を吸引する。このような負圧はストッパーをある程度変形させる可能性があり、これは、特に比較的高い精度が達成されなければならないとき又は比較的小さな容積が投薬量設定されるとき、投薬量設定精度を損ない得る。したがって、特定の正確な投薬量設定を可能にする送達装置が必要とされている。
【0051】
これは、ロッド要素と投薬部材とを備える医療用送達装置に対応する本発明の別の更なる態様により解決される。ロッド要素は、長手軸、遠位端、近位端及びステム部の近位端のヘッド部分に取り付けられるストッパーを含むステム部を有する。投薬部材は、送達オリフィスと、遠位端、近位端及び中空内部空間を有するチャンバ本体とを備え、ロッド要素のステム部は投薬部材のチャンバ本体の内部空間の中へ延び、送達オリフィスはロッド要素のストッパーに隣接して配置され、ストッパーはチャンバ本体の内部空間に気密に嵌合する。
【0052】
特に、本発明の他の更なる態様の医療用送達装置のロッド要素のステム部のヘッド部分は複数のバルジを有し、ストッパーは対応する内部空間を有し、ステム部のヘッド部分全体がストッパーの内部空間に嵌合する。このようなバルジをステム部に設け、ストッパーを適切に成形することにより、ストッパーの変形を抑制する又は無くすことができる。このようにして、投薬量設定の精度を上昇させることができる。
【0053】
好ましくは、本発明の他の更なる態様の医療用送達装置の投薬量設定状態では、ロッド要素のステム部と送達オリフィスとの間において投薬部材のチャンバ本体の内部空間に投薬チャンバが形成され、ロッド要素が送達オリフィスから遠ざかるときこの投薬チャンバが増大するように、ロッド要素はその長手軸に沿って投薬部材の送達オリフィスに対して可動である。
【0054】
ストッパーは、好ましくは、ゴムなどの弾性材料又はエラストマー材料から作製される。
【0055】
好ましくは、ステム部のヘッド部分の複数のバルジは凸状である。このような凸状のバルジは、ストッパーの中に押し込まれ、ステム部上におけるストッパーの保持を増強する。ロッド要素のステム部のヘッド部分の複数のバルジの隣接域は、好ましくは、凹上の中間区間によって分離される。このような凹上の区間は、ステム部上でのストッパーの保持を更に補助する。
【0056】
好ましくは、ロッド要素のステム部は接触面を含み、接触面からヘッド部分が延びる。これにより、ストッパーは、好ましくは、ロッド要素のステム部の接触面と軸方向に接する。同様に、ストッパーは、バルジと接触面の間に締め付けることができ、それにより正確に位置決めすることができる。
【0057】
好ましくは、ロッド要素のステム部のヘッド部分は、ステム部の残りの部分と比較して小さな径を有する。同様に、比較的かさの大きいストッパーを、ストッパーを含むステム部の最大径を増加させることなく実装することができる。
【0058】
好ましくは、ロッド要素のステム部は、回転対称である。特に、ステム部の一部を形成するヘッド部分も回転対称である。これにより、ステム部はその長手軸を中心に回転対称であり、且つステム部はその長手軸に沿って可動である。このようなステム部の形状は、効率的に製造することができる。
【0059】
本発明による医療用送達装置において、並びに上述及び後述される本開示のすべての態様において、医療用送達装置は、好ましくは、ケージ本体、ばね要素及び解放機構を備え、解放機構は、ケージ本体が送達オリフィスに対して移動することにより送達オリフィスを覆うように、ロッド要素がその長手軸に沿って送達オリフィスに対して移動して投薬チャンバが最小化するとき、ばね要素を作動させる。
【0060】
これに関する用語「最小化した投薬チャンバ」は、特にある程度完全に空になった投薬チャンバに関連し得る。これにより、投薬チャンバは、ロッド要素を送達オリフィスに向かって前進させることによって実質的に消滅し得る。このような構成は、送達後に送達オリフィスを効率的に保護することを可能にする。これは、送達オリフィスが針又は針様の構成であるとき特に重要であり得る。
【0061】
可能な一実施形態では、ケージ本体は、医療用送達装置のハウジングである。同様に、投薬量の送達後、ばね要素は、ハウジングを送達オリフィスに対して移動させることにより、送達オリフィスを保護する又は覆う。換言すれば、送達オリフィス又は針は、ばね要素によってハウジングの中に後退させられる。
【0062】
好ましくは、解放機構はロックアウト部材を備え、ばね要素はケージ本体とロックアウト部材の間に配置される。このようなロックアウト部材は、装置の使用(例えば、投薬量設定、送達など)中にあらゆる回転運動からばね要素を区別することを可能にする。同様に、投薬量設定及び投薬量設定の表示の精度は、比較的高くなり得る(即ち、送達の前と後で同じ投薬量設定表示)。特に、投薬量設定中にばね要素の回転に起因する妨害が生じることが防止され得る。
【0063】
これにより、医療用送達装置の投薬量設定状態において、ロックアウト部材及びケージ本体は、好ましくは、ロッド要素の第1のねじ山配列と第2のねじ山配列とが互いに沿って移動するとき回転しないように構成される。また、好ましくは、医療用送達装置の投薬量設定状態において、切り替え機構の回転時に、医療用送達装置の解放シェルが投薬量設定状態から送達状態へ切り替えられ、解放機構は送達プロセスの最後に作動される準備が整う。このような構成は、投薬量設定の間にばね要素をあらゆる回転運動から効率的に分離することを可能にする。
【0064】
好ましくは、投薬部材と解放機構とは、投薬部材が長手軸に沿って回転するときに認識可能なクリック音が生成されるように、相互作用する。これに関して用語「認識可能なクリック音」は、可聴音及び/又は知覚可能なシグナルに関連し得る。このクリック音は、特に、投薬部材と解放機構とが係合することにより生成され得る。
【0065】
上述の医療用送達装置の動作又は使用において、並びに他の医療用送達装置において、更に汎用的には、一般に液体物質が隔膜などにより閉じられた容器から引き出されるあらゆる用途において、通常、シリンジの針が容器又はバイアルの隔膜又はカバーを穿通し、物質がその針を通してシリンジの中に引き込まれる。シリンジの中に移された後、医薬物質は適切な方式で送達される。例えば、物質は、例えば針を介して皮下又は筋肉内に注射することができるか、又は経口的に適用することができるか、又は例えば患者の眼若しくは鼻の中に液滴として供給することができる医薬物質とすることができる。
【0066】
容器の隔膜又はカバーを穿通するとき、シリンジの針は、多くの場合隔膜によって汚染される。しかしながら、このような汚染は、例えば注射を伴うときといった多くの用途において望ましくない。更に、特にシリンジが注射装置といった特定の装置であるとき、多くの場合液体物質の前に大量の空気がシリンジの中に引き込まれる。シリンジ内のこのような空気は、通常、プライミング工程において、物質を適用する前にシリンジの外に排出されなければならない。プライミング工程は、特に液体の量が比較的小さいとき(例えば約10μlから1mlの範囲)、正確な量の液体を投薬量設定及び送達することを困難にし得る。
【0067】
したがって、完全な状態で正確な投薬量の液体を送達することを可能にする装置又はプロセスが必要とされている。この必要性は、容器を、送達オリフィスを有する送達装置に接続するためのアダプタを扱う本発明の別の更なる態様により解決される。このアダプタは、送達装置へアダプタを接続し且つ送達装置からアダプタを接続解除するように構成された装着構造と、送達オリフィスの先端に対して容器を所定の位置に保持するための容器座部とを備える。容器がアダプタの容器座部に配置され、アダプタの装着構造が送達装置に接続されると、容器の内部空間と送達装置の送達オリフィスの内部空間との間に開いた管路が形成される。アダプタの容器座部は、容器が投薬量設定アクチベーターの容器座部に配置されるとき容器の開口のキャップを穿通するスパイクを備える。
【0068】
送達装置は、液体物質を投与するための装置とすることができる。例えば装置は液体医薬を適用するための薬物送達装置とすることができる。このような送達装置により、医薬などの液体物質は、眼のための液滴、経口投薬などといった適切な形態で送達又は投与することができる。特に、送達装置は、物質を皮下又は筋肉内に注射するための注射装置とすることができる。
【0069】
アダプタの送達オリフィスは、送達装置から送達される医薬の特定の適用又は投与のための形状を有することができる。それは、例えば送達装置が医薬の注射を目的としている場合、針とすることができる。このような実施形態では、送達オリフィス又は針は、ハウジングの内部空間からその近位開口を通してハウジング又はその特定部品の外へと延びることができる。送達オリフィスは、送達部材に接続されるために適合させることもできる。例えば、送達オリフィスは、ルアーロック又はルアーテーパーコネクタの雄又は雌部分を含むことができ、送達部材は対応する雌又は雄のルアーロックコネクタを備えることができる。送達オリフィスの他の実施例は、ノズル、バルブ、流体ガイドなどである。
【0070】
容器は、上述及び後述のような容器であり得る。容器座部は、容器を、予めよく定めた位置に及び配向で接続することを可能にする。容器座部の文脈における用語「所定の位置」とは、容器の開口が送達オリフィスに向かって配向されるような位置である。これにより、容器をシステム又は医療用送達装置に効率よく連結することができる。
【0071】
容器のキャップは隔膜又は弾性ストッパーを備えることができる。一般に、このような隔膜又はストッパーは、容器の開口内に、同開口を密封するために配置される。キャップは、開口及び隔膜又はストッパーの周りに配置又はクリンプ留めされる、金属又はプラスチック製のカバーを更に備えることができる。カバーは、隔膜又はストッパーを保持及び保護することができる。
【0072】
アダプタは、塑性材料から作製することができる。特に、アダプタは、射出成型法で製造することのできる滅菌可能な塑性材料で作製することができる。アダプタは、実質的に円筒形状にすることができる。また、アダプタは、更に詳細に後述するように投薬量アクチベーターといった別の装置の一部とすることができるか又は別の装置に統合することができる。送達装置又は薬物送達装置は、シリンジ又は別の注射装置といった針デバイスとすることができる。
【0073】
開いた管路により、アダプタが送達装置に装着されて容器が容器座部に配置されるとき、液体を容器から送達装置の投薬チャンバの中に移すことが可能となる。アダプタにより、送達オリフィス自体がキャップを穿通しなければならない事態がスパイクを用いて防止される。これにより、送達装置の送達オリフィスを痛める又は汚染するリスクを低減することができる。例えば、キャップが隔膜を備えるとき、送達オリフィスが隔膜を穿通し、典型的に送達オリフィスを汚染又は脱ケイすること、及び送達オリフィス又はその先端を傷つけることが防止され得る。このようにして、スパイクは、送達オリフィスを、注射などの投与のために準備のできた状態に保つことを可能にする。同様に、アダプタは、正確な投薬量の液体を完全な状態で送達することを可能にする。
【0074】
好ましくは、スパイクは容器座部の内部空間内に延びる。このようなスパイクの構成は、容器が容器座部に配置されたとき又は置かれたときに容器のキャップを直接穿通することを可能にする。そのため、容器座部が、容器開口がスパイクの方に向いた状態で容器を保持するために適合されているとき、有利であり得る。
【0075】
好ましくは、スパイクは先端を含む。先端は、キャップ又はその隔膜若しくはストッパーを突き刺して貫通するために十分鋭利に具現化することができる。このようなスパイクは、適切な方式でキャップを簡便に穿通することを可能にする。そのため、スパイクは、好ましくは、先端からスパイクを長手方向に通るコンジットを備える。これに関して用語「長手方向」は、スパイクの方向に関連し得る。特に、スパイクは、容器の軸に沿って配向することができる。スパイクのコンジットは、容器を送達オリフィスに接続し、液体を容器から送達オリフィス又は投薬チャンバへ移すことを可能にする。
【0076】
好ましくは、アダプタは、アダプタの装着構造が送達装置に接続されるとき、送達装置の送達オリフィスを密封する送達オリフィス密封機構を更に備える。このような構成は、送達オリフィスの周り、及び特にその先端の周りの空気の容積を最小化することを可能にする。有利には、オリフィス密封機構は、送達オリフィスの先端又は近位端の可能な限り近くに位置する。オリフィス密封機構を用いて、送達オリフィスの保護及び汚染の低減を達成することができる。更に、送達オリフィス又はその先端の周囲の空気を含む自由空間が、送達オリフィス密封機構によって最小化され得る。同様に、容器内の液体と共に引き込まれて送達オリフィスにより移送される空気の量が、減少し得るか、場合によっては少なくとも実質的に排除され得る。また、オリフィス密封機構は、アダプタが送達装置に取り付けられていないとき、薬物の漏出を防止することができる。
【0077】
アダプタは、好ましくは、中に送達オリフィス密封機構が気密に配置される密封機構ホルダを更に備える。例えば、このような密封機構ホルダは、送達オリフィス密封機構と一致するリセスとして具現化することができる。次いで、送達オリフィス密封機構はわずかに圧縮されて、リセス内に摩擦により保持されるようにリセス内部に押し込まれる。送達オリフィス密封機構は、好ましくは、プラグとして成形される。
【0078】
送達オリフィス密封機構は、好ましくは、アダプタの装着構造が送達装置に接続されるときに送達オリフィスが通る通路を含む。通路内において送達オリフィスは気密に受容され得る。このために、送達オリフィスが通路内に配置されるときに送達オリフィス密封機構が軽く変形して送達オリフィスを送達オリフィス密封機構内に締め付けるように、通路の径は送達オリフィスの径よりやや小さくすることができる。
【0079】
好ましくは、送達装置の送達オリフィスは、アダプタの装着構造が送達装置に接続されるとスパイクのコンジットの中へ延びる。同様に、送達オリフィスは、スパイクの比較的近くに配置することができ、これにより、送達オリフィスの周り及び特にその先端の周りの空気の容積を最小化することができる。このようにして、液体が容器から送達オリフィス又は投薬チャンバ内に移されるとき、比較的少量の空気を送達オリフィスによって引き込むことが可能となる。
【0080】
これにより、送達オリフィス密封機構は、好ましくは、コンジットが先端の反対側で終端するスパイクの一側面においてスパイクに気密に接する。これは、送達オリフィスの先端の周りの空気の量を最小化することができるように、送達オリフィス先端の周りの自由空間を更に最小化することができる。
【0081】
好ましくは、送達オリフィス密封機構はシリコーンから作製される。シリコーンが特に有利であり得る場合、送達オリフィスも塑性材料から作製されてよい。具体的には、シリコーンを送達オリフィス密封機構に使用するとき、送達オリフィス密封機構による送達オリフィスの汚染が防止され得る。シリコーンも、密封機構ホルダの内部に気密に配置されるために及び送達オリフィスをコンジット内に気密に受容するために、十分な弾性を有する。
【0082】
アダプタに関して、液体を患者に送達する方法は、以下の工程:溶液内の液体、送達オリフィスを有する送達装置及び先行する請求項のいずれか一項によるアダプタを得る工程;容器をアダプタの容器座部に配置する工程;アダプタの装着構造を送達装置に接続し、容器をアダプタの容器座部に配置する間に、液体を容器から送達装置内にその送達オリフィスを介して引き込む工程;アダプタを送達装置から連結解除する工程;並びに任意選択的に送達オリフィスを介して送達装置の外へ液体を提供する工程を含む。
【0083】
本方法の工程は、上述に列挙したものとは別の順序で具現化することもできる。
【0084】
本発明による方法は、上述のアダプタに関して記載された利点を効率的に達成することを可能にする。
【発明を実施するための形態】
【0086】
以下の記載では、特定の用語は、利便性を理由に使用されており、本発明を制限することを意図していない。用語「右」、「左」、「上」、「下」、「下方」、及び「上方」は図面内での方向を指す。用語法は、明示的に言及された用語と、それらその派生語及び同様の意味を有する用語を含む。また、空間に関連する用語、例えば「下」、「下方」、「下側」、「上方」、「上側」、「近位」などは、一つの要素又はフィーチャの、図に示される別の要素又はフィーチャとの関係を説明するために使用されている場合がある。これら空間関連用語は、図示される位置及び配向に加えて、使用時又は動作時の装置の複数の異なる及び配向を包含することを意図している。例えば、図中の装置を逆さまにすると、他の要素又はフィーチャの「下方」又は「下」と記載されている要素が、次に他の要素又はフィーチャの「上方」又は「上」になる。したがって、例示的用語「下方」は、「上方」及び「下方」の位置及び配向を包含しうる。装置は、それ以外の方向を向く(90度回転する又は他の配向に向く)こともあり、本明細書において使用される空間関連記述子は適宜解釈される。同様に、様々な軸に沿った及び軸周りの運動の記載は、様々な特定の装置の位置及び配向を含む。
【0087】
様々な態様及び例示的実施形態の図面及び記載における繰り返しを回避するため、多くのフィーチャが複数の態様及び実施形態に共通であることを理解されたい。記載又は図面から一つの態様が省略されていることは、この態様が、同態様を組み込んだ実施形態から欠落していることを意味するものではない。実際、この態様は、明瞭性のため、及び冗長な説明を避けるために省略されていてもよい。これに関して、以下は本明細書の残りの部分に当てはまる:図面を明瞭に示すために、図面が明細書の直接関連部分において説明されていない参照記号を含む場合は、直前の又は直後の記載部分を参照する。更に、明瞭性の理由で、図面において、部品のすべてのフィーチャに参照記号が付与されていない場合、同じ部品を示す他の図面を参照する。二つ以上の図面において同様の番号は、同じ又は同様の要素を表す。
【0088】
図1は、投薬量設定状態にある、本発明による医療用送達装置1の第1の実施形態を示している。医療用送達装置1は、投薬量設定アクチベーター5及び注射装置を備える。注射装置は、遠位側本体区間21及び近位側本体区間25を含むハウジング2を有する。ハウジング2は、内部空間、ハウジング2の遠位端側に配置された指用フランジ23に設けられた遠位開口、及びハウジング2の近位端側24に設けられた近位開口を有する。本体2の端部側24に隣接して、外周に複数の溝241が設けられる。遠位側本体区間21は、軸方向のインジケータ窓211と、インジケータ窓211の垂直方向上方の軸方向のチャンバ窓251を有する近位側本体区間25とを備えている。近位側本体区間25は更に一対の保持アーム252を有する。
【0089】
ハウジング2の内部空間には、垂直方向に整列するステム部31及びステム部の下端のゴム製ストッパー32を含むロッド要素3と、強調表示要素64を含む投薬部材6とが配置されている。ステム部31とゴム製ストッパー32は、ハウジング2の近位側本体区間25のチャンバ窓251を通して可視である。投薬部材6の強調表示要素64は、遠位側本体区間21のインジケータ窓211に保持及び案内される。遠位側本体区間21及び近位側本体区間25は、ハウジング2の当接リング22により分離される。当接リング22は水平な上面を有する。
【0090】
ハウジング2の上側本体区画25は、投薬量設定アクチベーター5の透明なスリーブ部分51により包囲されている。スリーブ部分51は、垂直に延びる中空のシリンダーとして形成されており、
図1に示される開始位置において、ハウジング2の上側本体区画25を囲む。投薬量設定アクチベーター5は、シリンダー部分55 と、複数の保持アームを有するネックホルダ531を有するバイアル座部53とを更に備える。シリンダー部分55は、スリーブ部分51から上方向に向かって垂直に延びる。バイアル座部53は、内部に、シリンダー部分55の一部として位置する。
【0091】
図2では、医療用送達装置1は、単体の部品が見えるように分解図で示されている。医療用送達装置1は、容器としてバイアル8を受容するように設計されている。一般的な様式で、バイアル8は、本体83と、キャップ82によって閉じられるネック部81とを有する。本体83の内部空間には、注射装置によって送達又は注射される液体医薬が貯蔵される。
【0092】
ロッド要素3は、ステム部31と同軸に延び、且つ同ステム部を部分的に囲む中空の本体部分33を含む。本体部分33は近位方向においてアーム区間34へと連続する。アーム区画34の各々は、ステム部31に向かって実質的に半径方向に突出するピン35をその近位端に含む。ピン35はロッド要素の第1のねじ山配列3の雄部材を形成する。ピン35は、内側に、即ちロッド要素3の長手軸38の方向に押し込むことができるように、ある程度柔軟性にアーム区画34に取り付けられる。
【0093】
医療用注射装置1の投薬部材6は、透明で、外表面を有するチャンバ本体として中空のチャンバシリンダー61を備える。チャンバシリンダー61の外表面にはねじ山65が走っている。更に、外表面61には投薬マーキング63が設けられる。チャンバシリンダー61の内部空間は、ロッド要素3のステム部31とゴム製ストッパー32とを受容するように寸法決めされる。これにより、ゴム製ストッパー32は、チャンバシリンダー61の内部空間に気密に嵌合するような寸法を有する。その近位端において、チャンバシリンダー61は、雄連結構造66に連続し、そこから送達針62が近位方向に突出する。投薬部材6とハウジング2の間には、ばね7が位置している。
【0094】
医療用注射装置は、解放シェル41と二つの支持区画42とを有する切り替えアクチベーター4を更に備える。解放シェル41は、係合解除構造の、軸方向に延びる二つの長手方向リセス411を備える。解放シェル41は、ロッド要素3を受容するように寸法決めされた中空の内部空間を更に有する。特に、解放シェル41とそのリセス411がロッド要素3上に配置されるとき、ロッド要素3のアーム区画34は、アーム区画34がリセス411内に位置するように解放シェル6がロッド要素3の周りで回転されない限り、内側に押される。これについては以下で更に詳細に説明する。
【0095】
図3は、開始位置にある、組み立てられた医療用送達装置1を示す。医療用送達装置1は、近位端が上に、遠位端が下に位置するように直立に整列した状態で提示されている。切り替えアクチベーター4は、ハウジング2の遠位側本体区間21の中空内部空間の中に延びている。ロッド要素3は、切り替えアクチベーター4を通って垂直に延びる。ロッド要素3のステム部31とゴム製ストッパー32とは、投薬部材6のチャンバシリンダー61内部に配置される。更に詳細には、チャンバシリンダー61は、ロッド要素3のステム部31と本体部分33又はアーム区画34との間に位置決めされる。アーム区画34は、ピン35がステム部31に向かって水平方向に突出して投薬部材6のねじ山65の内部に位置するように、解放シェル41によりロッド要素3のステム部31の長手軸38に向かって押される。このように、ピン35はねじ山411に係合している。
【0096】
図3では、長手軸38は垂直に延びている。長手軸38は、ハウジング2、切り替えアクチベーター4、投薬量設定アクチベーター5、投薬部材6、ばね7及び装置1全体の長手軸に相当する。ロッド要素3のステム部31は、その近位端に球頭部を有し、その上にゴム製ストッパー32が置かれている。
【0097】
投薬量設定アクチベーター5のスリーブ部分51は、ハウジング2の近位側本体区間25上に逆さまに配置されている。これにより、投薬量設定アクチベーター5の遠位端がハウジング2の当接リング23の水平表面に接っしている。ハウジング2の内部空間には、開口を有するバリヤがスリーブ部分51とシリンダー部分55との間に配置されている。ロッド要素3は、雄連結構造66がバリヤの開口を通って投薬量設定アクチベーター5のシリンダー部分55の中へ延びるように、バリヤに当接する。バリヤに隣接して、投薬量設定アクチベーター5は、投薬部材6の雄連結構造66に嵌合して相互係合する雌連結構造52を備える。
【0098】
投薬部材6は、ロッド要素3及び切り替えアクチベーター4と共に、ハウジング2の内部に配置される。これにより、近位側本体区間25の保持アーム252が、チャンバシリンダー61と雄連結構造66との間に配置されている投薬部材6の襟部を保持する。同様に、ハウジング2が、投薬部材6、ロッド要素3及び切り替えアクチベーター4に装着される。投薬部材6の襟部とハウジング2のバリヤとの間には、ばね7が配置される。これにより、ばね7は予め加圧される。
【0099】
投薬量設定アクチベーター5のシリンダー部分55の中空内部空間の中には、バイアル座部53が位置決めされる。その保持アームを有するネックホルダ531とは別に、バイアル座部は、バイアル静止部と、バイアル静止部から上方向に垂直に突出するスパイク532とを含む。医療用送達装置1を準備するステップにおいて、バイアル8は、上部を下にして投薬量設定アクチベーター5及びそのバイアル座部53に押し込まれる。これにより、キャップ82を有するバイアル8のヘッドが保持アームのフランジ端を通過するように、ネックホルダ531の保持アームは外側に移動する。バイアル8が十分に押し下げられると、保持アームのフランジ端は、バイアル8が安全に保持されるように、バイアル8のヘッドの背後でネック81の中にスナップ係合する。このようにして、バイアル8は、上部を下にして医療用送達装置1に垂直に装着される。
【0100】
バイアル8がバイアル座部53の中に押し込まれている間、スパイク532の先端が隔膜821を含むキャップ82を穿通する。スパイク532の下方には送達針62の先端が配置されている。送達針62は、針密封機構54により覆われる。送達針は、スパイク532から雄連結構造66を通ってチャンバシリンダー61の内部空間の中へ延びる。同様に、
図3に示される開始位置において、スパイク532は送達針62と共に、バイアル8の内部空間と投薬部材6のチャンバシリンダー61の内部空間との間に輸送チャネルとしての開いた管路を形成する。これにより、針密封機構54は、送達針62とスパイク532との間の自由空間を最小化する又は無くすことを可能にする。
【0101】
図4及び
図5は、投薬量調節後の、即ち特定量の医薬をバイアル8から投薬部材6のチャンバシリンダー61の投薬チャンバ611の中へ移送した後の、医療用送達装置1を示す。
図4の上の矢印によって示されるように、投薬量調節のために、投薬量設定アクチベーター5はハウジング2に対して反時計回りに回転される。これにより、ハウジング2は、その遠位側本体区間21において、患者の片手により保持することができ、患者は他方の手で投薬量設定アクチベーター5のシリンダー部分55をハウジング2に対して回転させることができる。利便性のために、遠位側本体区間21の外表面には把持用リブが設けられる。投薬部材6は投薬量設定アクチベーター5に雄連結構造66及び雌連結構造52を介してトルク抵抗性に接続されるため、投薬部材6は投薬量設定アクチベーター5と一緒に回転する。したがって、投薬部材6はロッド要素3に対して回転し、ピン35をねじ山65に沿って移動させる。同様に、下の矢印によって示されるように、ロッド要素3はステム部31の長手軸38に沿って下方へ移動する。
【0102】
ロッド要素3を下方へと軸方向に移動させると、ゴム製ストッパー32と投薬部材6のチャンバシリンダー61の遠位端との間に投薬量設定チャンバ611が生じ、増大する。その間、投薬量設定チャンバ61内に負圧が生成されて、医薬がバイアル8からスパイク532及び送達針62を通して投薬量設定チャンバ611内に吸引される。投薬量設定チャンバ611の大きさは、ロッド要素3を下方へ又は遠位方向に移動させる投薬アクチベーター5の回転量に対応する。
【0103】
ハウジング2の外周の溝241は、回転されると投薬量設定アクチベーター5のスリーブ51と相互作用する。これにより、スリーブ51が特定の量又は角度だけ回転される間に、患者が聞き感じることのできるクリックシグナルが生じる。したがって、患者は、投薬量設定アクチベーター5を回転させてクリック音を知覚するとき、投薬量設定された容積の医薬が所定の容積だけ変更されたことを認知する。このような所定容積は、例えば25μlとすることができる。
【0104】
投薬量設定の間に投薬量設定アクチベーター5がハウジング2に対して回転するとき、投薬部材6の強調表示要素64内に見える数が、投薬量設定チャンバ611の容積に対応して変化する。更に詳細には、強調表示要素64は、ハウジング2に対して軸方向に又は垂直に可動であるが、接線方向には可動でないように、インジケータ窓211内で案内される。また、強調表示要素64は、ねじ山65に係合するそれぞれのリブを介してねじ山65に接続する。したがって、投薬量設定アクチベーター5がハウジング2に対して回転するとき、強調表示要素64は、ねじ山65と相互作用するリブによって垂直に移動する。強調表示要素64がインジケータ窓211の上端にある
図1と比較して、
図4では、強調表示要素は下方に移動し、投薬量設定チャンバ611の容積に対応する投薬マーキングの数の上に位置している。
【0105】
投薬量設定アクチベーター5は、両方向に回転させることができる。これにより、反時計回りの回転が投薬容積611を増大させ、逆に、時計回りの回転が、医薬がバイアル8に戻るように投薬容積611を減少させる。
【0106】
図6及び
図7では、投薬量設定アクチベーター5がバイアル8と共に取り外された、投薬量設定後の医療用送達装置1が示されている。
図6の矢印によって示されるように、上述のように投薬量が設定された後、患者又はユーザが、投薬量設定アクチベーター5をハウジング2から上方に又は近位方向に引き抜く。これにより、投薬部材6の雄連結構造66が投薬量設定アクチベーター5の雌連結部材52と係合解除する。また、針62が露出するように、投薬量設定アクチベーター5の静止部に接続されている針密封機構54が針62から引き抜かれる。
【0107】
図8及び
図9は、投薬量設定状態から、医薬の注射の準備が整った送達状態へと切り替えられた後の注射装置を示している。
図8の矢印によって示されるように、切り替えのために、切り替えアクチベーター4は、ハウジング2に対して及びロッド要素3に対して時計回りに回転される。これにより、患者は、片手でハウジング2の遠位側本体区間21を再び保持することができ、他方の手で切り替えアクチベーター4をハウジング2に対して回転させることができる。
【0108】
言及された切り替えアクチベーター4の回転は、その解放シェル41のリセス411をロッド要素3のアーム区画34と整列させる。これにより、ピン35がねじ山65から外れて係合解除するように、それまで半径方向に引っ張られていたアーム区画34が外側に向かって投薬部材6から遠ざかる。
図7に示される送達状態では、ピン35は、ねじ山65から完全に係合解除されている。これにより、ロッド要素3の軸方向の移動は、もはやピン35によって防止されない。また、切り替えアクチベーター4の更なる回転又は逆回転は、ロッド要素の遠位端3において、切り替えアクチベーター4の最小用量インターロックリセス内で回転する柔軟性のラチェットアームによってブロックされる。したがって、送達装置1は、送達状態に切り替わると、投薬量設定状態に戻るように切り替えることはできない。
【0109】
図10及び
図11では、注射後の送達状態にある注射装置が示されている。これまでの図と比較して、
図10及び
図11では、注射装置は180°回転されて逆さまになっている。
図10の矢印によって示されるように、切り替えアクチベーター4は下方に移動する。更に詳細には、医薬を注射するために、軸方向の力が切り替えアクチベーター4の遠位端に加えられる。例えば、このような軸方向の力は、ハウジング2を保持する患者の手の親指によって提供することができる。注射の間、そのゴム製ストッパー32が投薬チャンバ611内に押し込まれ、医薬が送達針62から供給されるように、軸方向の力が切り替えアクチベーター4からロッド要素3に伝達される。注射後は、
図11に示すように、医薬が実質的に完全に送達されるように、投薬チャンバ611の容積は最小化される。
【0110】
加えて、ロッド要素3を下方へと軸方向に移動させる間に、ハウジング2の近位側本体区間52の保持アーム252は、切り替えアクチベーター4の支持区画42によって、軸38の方向から離れる方向に外側に向かって押される。注射後、保持アーム252は、ハウジング2及び投薬部材6が互いから係合解除するように、投薬部材6の襟部から完全係合解除される。
図12及び
図13に示されるように、これは、ハウジング2と投薬部材6との間で初期状態として予め応力を加えられていたばね7のばね力が、注射装置の他の部品に対して、特に針62に対して、ハウジング2を軸方向に移動させることを可能にする。同様に、針62は後退することによりハウジング2によって完全に覆われ、これにより注射後の針62による傷害を防止することができる。
【0111】
図14は、注射装置1から分離されたバイアル8を有する投薬量設定アクチベーター5を示す。図示のように、雌連結構造52は、注射装置1の雄連結構造66に対応する内側輪郭を有する。同様に、雌連結構造52は、雄連結構造とトルク抵抗性型嵌合するように設計されている。
【0112】
連結構造52とバイアル座部53との間に、投薬量設定アクチベーター5は密封機構ホルダ56を有している。密封機構ホルダ56は、開口側が下方に延びる、実質的にカップ形状である。密封機構ホルダ56の内部には針密封機構54が配置される。針密封機構54は、シリコーンから作製され、プラグ様形態を有している。装着のため、針密封機構は、密封機構ホルダ56内に配置されると少し圧縮されるように寸法決めされる。このように、針密封機構54は密封機構ホルダ56に固く接続される。
【0113】
上方に延びるスパイク53の先端5321は、薄刃を有する形状である。これにより、バイアル8のキャップ82の隔膜821を簡便に穿孔することができる。薄刃に隣接して、先端5321は垂直なコンジット5322の上端である開口を有する。コンジット5322は、スパイク532全体を貫通して延び、密封機構ホルダ56の上端中に開口する。
【0114】
投薬量設定アダプタ5が注射装置1に装着されている状態を示す
図15に見ることができるように、針密封機構54は垂直な通路541を有し、それを通って注射装置1の投薬部材6の針62が延びている。針62の先端は、スパイク532のコンジット5322の下部区間の中へ、上方に少し突出する。針62の先端の周りの自由空間は気積55を形成する。気積55は、投薬量設定アクチベーター5の注射装置1への装着及び注射装置1からの装着解除を簡便且つ安全にすることのできる許容差を生じさせる。それでもなお、バイアル8から液体を引き出したとき含まれる空気が最小容積となるように、気積55は最小化される。
【0115】
図16は、ロック状態にある本発明による医療用送達装置10の第2の実施形態を示している。医療用送達装置は、投薬量設定アクチベーター50及び注射装置を備える。注射装置は、その下端又は底部端で指用フランジ230に連続する遠位側本体区間210を含むハウジング20を有する。ハウジング20は、中空内部空間、指用フランジ230に設けられた遠位開口、及びハウジング20の近位端側240に設けられた近位開口(
図16では見えない)を有する。本体区間210には、軸方向のインジケータ窓2110が設けられている。
【0116】
ハウジング20の内部空間には、プッシュコン350を含むロッド要素30と強調表示要素340とが配置される。強調表示要素340は、本体区画210のインジケータ窓2110内に保持及び案内される。強調表示要素340を通して投薬部材60の投薬マーキング630が見え、これは
図16ではゼロを示している。ハウジング20の上部には、投薬量設定アクチベーター50のスリーブユニット510が配置される。このスリーブユニット510は垂直に延びる中空のシリンダーとして形成されており、
図16に示す開始位置においてハウジング20の本体区画210の上部を囲む切開部を有する。
【0117】
スリーブユニット510はその上部にダイヤル式装着リング5110を備え、これにより、投薬量設定アクチベーター50のダイヤルユニット520に回転可能に接続される。ダイヤルユニット520は実質的に円筒形状であり、スリーブユニット510から上方向に垂直に延びる。ダイヤルユニット520の外表面は、簡便な手動操作を可能にする把持用リブ5210を備えている。外表面は更に、投薬量設定アクチベーター50の解放部材530を見ることのできる窓開口5220を有している。更に、ダイヤルユニット520は、二つのスナップ嵌合式アームを有するネックホルダ5230を備える。
【0118】
医療用送達装置10は、容器としてのバイアル80を受容するように具現化されている。一般的な様式で、バイアル80は、本体830と、キャップ820によって閉じられるネック部810とを有する。本体830aの内部空間には、注射装置によって送達又は注射される液体医薬が貯蔵される。
【0119】
図17では、医療用送達装置10は、単体の部品が分離されて見えるように分解図で示されている。ロッド要素30は、ステム部310と同軸に延び、且つ装着時に同ステム部を囲む中空の本体部分330を含む。本体部分330はアーム区画3320を有し、アーム区画の各々は、その一端で本体部分330の静止部に固定され、他端に外側に向かって延びる解放ハンプ3340を有する。更に、アーム区画340の各々は、実質的に半径方向に、ステム部310に向かって突出するピン3330(
図17では見えない)を備える。遠位端において、ロッド要素30の本体部分330は、四つのクリップ式ラッチ3310を含む。ステム部310の近位側軸方向端部に対し、以下に更に詳細に示すようにゴム製ストッパー320が装着される。
【0120】
注射装置の投薬部材60は、チャンバ本体として中空のチャンバシリンダー610を備える。チャンバシリンダー610の外表面にはねじ山650が走っている。更に、外表面610には投薬マーキング630が設けられている。チャンバシリンダー610の内部空間は、ロッド要素30のステム部310とゴム製ストッパー320とを受容するように寸法決めされる。これにより、ゴム製ストッパー320は、チャンバシリンダー610の内部空間に気密に嵌合するような寸法を有する。その近位端において、チャンバシリンダー610は雄連結構造660に連続し、そこから送達針620が近位方向に突出する。投薬部材60とハウジング20の間には、解放機構のロックアウト部材90とばね70が位置決めされる。
【0121】
医療用送達装置10は、遠位側基部リング430から半径方向に延びる解放シェル410を有する切り替えアクチベーター40と、スリーブリセス部分420とを更に備える。解放シェル410は、係合解除構造の二つの軸方向の傾斜面4120によって画定された、軸方向に延びる二つのリセス4110を備える。解放シェル41は、ロッド要素30を受容するように寸法決めされた中空の内部空間を更に有する。特に、解放シェル410とそのリセス4110がロッド要素30上に配置されるとき、解放ハンプ3340がリセス4110の中へ延びるように、ロッド要素30のアーム区画3320がリセス4110に位置決めされる。以下に更に詳細に記載するように、解放シェル410の回転により、アーム区画3320が持ち上がるか又は半径方向に屈曲するように、傾斜面4120の一つがそれぞれの解放ハンプ3340に作用する。スリーブリセス部分420において、切り替えアクチベーターには更に、第2のランプ4210及びバックアップ部材4220が設けられる。
【0122】
図17に更に見ることができるように、本体20には、端部側240に隣接する外周に複数の溝2410が設けられている。遠位端に、投薬量設定アクチベーター50のスリーブユニット510は第1のランプ5130を含み、そこからガイドトラック5120が軸方向に延びている。
【0123】
投薬量設定アクチベーター50の解放部材530は、リング部分5310から近位方向へと軸方向に延びる軸方向舌部区間を有する。軸方向舌部区画の軸方向端部近傍には、矢印の形状を有するインジケータ5330が設けられる。また、解放部材530のリング部分5310からは、二つのステム部5320が近位方向に向かって軸方向に延び、リング部分5310の内側にブロック表面が形成される。
【0124】
投薬量設定アクチベーター50のダイヤルユニット520の内側には、雌連結構造5250が遠位方向に延びる。以降の図面に更に詳細に示されるように、投薬部材60の雄連結構造660に嵌合する雌連結構造5250が形成される。その遠位端において、ダイヤルユニット520はスリーブ装着構造5240を更に有し、その上にスリーブユニット510のダイヤル装着リング5110をスナップ留めすることができる。スリーブ装着構造5240及びダイヤル装着リング5110によって接続されているとき、ダイヤルユニット520とスリーブユニットは、回転することはできるが、互いに対して軸方向に移動することはできない。
【0125】
図17に更に示されるように、キャップ820は隔膜8210を備えている。以降の図面に更に詳細に見ることができるように、投薬量設定アクチベーター50は更に針密封機構540を備え、この針密封機構は、雌連結構造5250の内部において、投薬部材60の針620の先端の周りに配置される。
【0126】
図18は、ロック状態の開始位置にある、組み立てられた医療用送達装置10を示す。この場合、装置は、近位端が上に、遠位端が下になるように直立に整列した状態で提示されている。切り替えアクチベーター40は、ハウジング20の遠位側本体区間210の中空内部空間の中に延びている。ロッド要素30は、切り替えアクチベーター40を通って垂直に延びる。ロッド要素30の本体部分330のクリップラッチ3310は、ステム部310、プッシュコン350及び本体部分330が固定的に接続されるように、プッシュコン350の対応するスリットにスナップ留めされる。
【0127】
ロッド要素30のステム部310は、凹状の中間区間によって分離された二つの凸状のバルジを含むヘッド部分3110を有する。ヘッド部分3110は、当接面3120により、遠位方向に向かって軸方向に制限される。ストッパー320は、ステム部310のヘッド部分3110に対応する内部空間を有し、ストッパーが当接面3120に接触するように、ヘッド部分3110全体がストッパー320の内部空間に嵌入する。ロッド要素30のステム部310とストッパー320は、投薬部材60のチャンバシリンダー610の内部に配置される。
【0128】
更に詳細には、チャンバシリンダー610は、ロッド要素30のステム部310と本体部分330とアーム区画3320の間に位置決めされる。ロッド要素の第1のねじ山配列30の雄部材を形成するピン3330は、投薬部材の第2のねじ山配列60の雌部材であるねじ山650の中に係合する。ピン3330は、外側に向かって移動する、即ちロッド要素30の長手軸380から遠ざかることができるように、アーム区画3320によってある程度柔軟性である。解放ハンプ3340はアーム区画3320からピン3330とは反対方向へ突出する。ロック状態では、それらハンプは切り替えアクチベーター40のリセス4110の中へ延びる。アーム区間3320は、ピン3330及び解放ハンプ3340と一緒に、ハンマーに類似の形状を有する。
【0129】
図18では、長手軸380は垂直に延びている。この長手軸は、ハウジング20、切り替えアクチベーター40、投薬量設定アクチベーター50、投薬部材60、ばね70及び医療用送達装置10全体の長手軸に相当する。投薬量設定アクチベーター50のスリーブユニット510はハウジング20の本体区画210に上部を下にして配置され、ハウジング20は一度の回転整列でスリーブユニット510を受容する形状を有している。ハウジング20の内部空間には、開口を有するバリヤがスリーブユニット510とダイヤルユニット520の間に配置されている。ロッド要素30は、雄連結構造660がバリヤの開口を通って投薬量設定アクチベーター50のダイヤルユニット520の中へ延びるように、このバリヤに当接する。バリヤに隣接して、投薬量設定アクチベーター50は、投薬部材60の雄連結構造660に嵌合して相互係合する雌連結構造5250を備える。これにより、ダイヤルユニット520と投薬部材60とはトルク抵抗性に接続される。
【0130】
投薬部材60は、ロッド要素30及び切り替えアクチベーター40と共に、ハウジング20の内部に配置され、保持される。投薬部材60の襟部とハウジング20のバリヤとの間には、ばね70が配置されている。ここで、ばね70は予め加圧されている。
【0131】
投薬量設定アクチベーター50のダイヤルユニット520の中空内部空間内にはバイアル座部が形成され、このバイアル座部は、ネックホルダ5230、解放部材530の静止表面、雌連結構造5250の上端、及び雌連結構造5250の上端から垂直に延びるスパイクを含む。リング部分5310のブロック表面は、ハウジング20の近位端側240の対応する表面としての溝2410に係合する。これにより、ダイヤルユニット520の回転運動が防止され、医療用送達装置10がロック状態となる。
【0132】
図19及び
図20には、ロック状態から投薬量設定状態へ変化した後の医療用送達装置10が示されている。医療用送達装置10を準備するステップにおいて、バイアル80は、上部を下にして投薬量設定アクチベーター50及びそのバイアル座部に押し込まれる。これにより、バイアル80が、解放部材530の静止表面に当接し、リング部分5310のブロック表面がハウジング20の溝2410と係合解除するまでこの表面を下方に移動させる。このように、ダイヤルユニット520がスリーブユニット510及びハウジング20に対して回転可能となり、医療用送達装置がロック解除され、即ち投薬量設定状態となる。解放部材530がバイアル80によって下方に移動されると、インジケータ5330が窓開口5220を通して見えるようになるまで、軸方向舌部区画がダイヤルユニット520の窓開口5220に沿って移動する。同様に、医療用送達装置10のユーザ又は患者は、バイアル80が適切に設定されていること、及び医療用送達装置10がもはやロック状態になく、投薬量設定状態にあることを知る。また、インジケータ5330は、投薬量設定を開始するためにダイヤルユニット520を回転させる方向を示す。
【0133】
バイアル80が容器座部に下方に押し込まれるとき、キャップ820を有するバイアル80のヘッドが保持アームのフランジ端を通過するように、ネックホルダ5230の保持アームは外側に移動する。バイアル80が十分に押し下げられると、保持アームのフランジ端は、バイアル80が安全に保持されるように、バイアル80のヘッドの背後でネック810の中にスナップ係合する。このようにして、バイアル80は、上部を下にして医療用送達装置10に垂直に装着される。
【0134】
更に、バイアル80がバイアル座部の中に押し込まれている間、スパイク5260の先端が隔膜8210を含むキャップ820を穿通する。送達針620の先端はスパイク5260の下方に配置される。送達針620は、針密封機構540により部分的に覆われる。送達針620は、スパイク5260からチャンバシリンダー610の雄連結構造660を通って延びる。同様に、
図20に示される投薬量設定状態において、スパイク5260は送達針620と共に、バイアル80の内部空間と投薬部材60のチャンバシリンダー610の内部空間との間に輸送チャネルとしての開いた管路を形成する。これにより、針密封機構540は、漏出を排除し、送達針620とスパイク5260との間の自由空間を最小化することを可能にする。投薬量設定状態では、ロッド要素30のアーム区画3320の解放ハンプ3340は、依然として切り替えアクチベーター40のリセス4110内に位置している。また、ロッド要素30のアーム区画3320のピン3330は投薬部材60のねじ山650に係合する。
【0135】
図21及び
図22は、投薬量調節後の、即ち特定量の医薬がバイアル80から投薬部材60のチャンバシリンダー610の投薬チャンバ6110の中へ移された後の、医療用送達装置10を示す。上部の矢印によって示されるように、投薬量設定のために、投薬量設定アクチベーター50のダイヤルユニット520は、スリーブユニット510とハウジング20に対して反時計回りに回転される。これにより、ユーザは、一方の手によってハウジング20の本体区画210を保持し、他方の手で投薬量設定アクチベーター50のダイヤルユニット520をハウジング20及びスリーブユニット510に対して回転させることができる。投薬部材60はダイヤルユニット520に雄連結構造660及び雌連結構造5250によりトルク抵抗性に接続されるため、投薬部材60は投薬量設定アクチベーター50と一緒に回転する。したがって、投薬部材60はロッド要素30に対して回転し、ピン3330をねじ山650に沿って移動させる。同様に、下方の矢印によって示されるように、ロッド要素30は長手軸380に沿って下方に移動する。
【0136】
ロッド要素30を下方向へと軸方向に移動させると、ゴム製ストッパー320と投薬部材60のチャンバシリンダー610の遠位端との間に投薬量設定チャンバ6110が生じ、増大する。その間、投薬量設定チャンバ610内に負圧が生成されて、液体又は医薬がバイアル80からスパイク5260及び送達針620を通して投薬量設定チャンバ6110内に吸引される。ロッド要素30のステム部310のヘッド3110にはバルジ3110が設けられるので、ストッパー320は固く保持されて負圧によって生じる変形が最小化される又は無くなる。投薬量設定チャンバ6110の大きさは、ロッド要素30を下方へ又は遠位方向に移動させるダイヤルシェル520の回転量に対応する。
【0137】
ハウジング20の近位端側240の外周の溝2410は、回転されると投薬量設定アクチベーター50のダイヤルユニット520と相互作用する。したがって、ユーザが投薬量設定アクチベーター50のダイヤルユニット520を回転させてクリック音を知覚するとき、投薬量設定された容積の医薬が所定の容積だけ変更されたことを認知する。このような所定容積は、例えば25μlとすることができる。
【0138】
投薬量設定の間に投薬量設定アクチベーター50がハウジング20に対して回転するとき、ロッド要素30の強調表示要素340内に見える数が投薬量設定チャンバ6110の容積に対応して変化する。更に詳細には、強調表示要素340は、ハウジング20に対して軸方向に又は垂直に可動であるが、接線方向には可動でないように、ハウジング20のインジケータ窓2110内で案内される。また、強調表示要素340は、ねじ山650に係合するそれぞれのリブを介してねじ山650に接続する。したがって、ダイヤルユニット520がハウジング20に対して回転するとき、強調表示要素340は、ねじ山650と相互作用するリブによって垂直に移動する。強調表示要素340がインジケータ窓2110の上部区間にある
図19と比較して、
図21では、強調表示要素は下方に移動しており、投薬量設定チャンバ6110の容積に対応する投薬マーキングの数の上に位置している。
【0139】
投薬量設定アクチベーター50のダイヤルシェル520は、両方向に回転させることができる。これにより、反時計回りの回転が投薬容積6110を増大させ、逆に、時計回りの回転が、液体又は医薬がバイアル80に戻るように投薬容積6110を減少させる。
【0140】
図23及び
図24では、投薬量設定アクチベーター50がバイアル80と共に取り外された、投薬量設定後の医療用送達装置10が示されている。矢印によって示されるように、上述のように投薬量が設定されたら、ユーザが、投薬量設定アクチベーター50をハウジング20から上方に又は近位方向に引き抜く。これにより、投薬部材60の雄連結構造660が投薬量設定アクチベーター50の雌連結構造5250と係合解除する。また、針620が露出するように、投薬量設定アクチベーター50の静止部に接続されている針密封機構540が針620から引き抜かれる。
【0141】
投薬量設定アクチベーター50が引き抜かれると、医療用送達装置10は、投薬量設定状態から、液体又は医薬を注射する準備の整った送達状態へと切り替わる。送達状態に切り替わるために、切り替えアクチベーター40は、ハウジング20に対して及びロッド要素30に対して軸380の周りを一定の範囲にわたって回転する。これにより、切り替えアクチベーター40のリセス4110を画定している傾斜面4120がロッド要素30の解放ハンプ3340に作用する。傾斜配向により、傾斜面4120は解放ハンプ3340を接線方向に外側方向に押す。これにより、アーム区画3320が外側に向かって屈曲し、ピン3330が投薬部材60のねじ山650から係合解除する。
図23及び24に示される送達状態では、ピン3330は、ねじ山650から完全に係合解除されている。このように、軸方向の力によって生じるロッド要素30の軸方向の移動は、もはやピン3330によって防止されない。
【0142】
図25、
図26及び
図27に示すように、言及された切り替えアクチベーター40の回転は、投薬量設定アクチベーター50をハウジング20から引き抜くと自動的に生じる。これら図面は、下の複数の部品がどのように相互作用するかが見えるように、投薬量設定アクチベーター50のスリーブユニット510を透視図で示している。スリーブユニット510は二つの第1ランプ5130と、付属の二つの第2ランプ4110を含む切り替えアクチベーター40とを備えている。特に、
図25に見ることができるように、医療用送達装置の投薬量設定状態10では、スリーブユニット510の第1ランプ5130は切り替えアクチベーター40の第2ランプ4210の下方にある。第1及び第2ランプ5130、4210は、互いの方に向く傾斜した摺動面を有する。これにより、切り替えアクチベーター40の第2ランプ4210の傾斜した摺動面が下を向き、スリーブユニット510の傾斜した第1ランプ5130が上を向く。
【0143】
図26に示すように、投薬量設定アクチベーター50がスリーブユニット510と共に本体20に対して上方に移動すると、第1ランプ5130の傾斜した摺動面が第2ランプ4210の傾斜した摺動面に接する。同様に、切り替えアクチベーター40が反時計回り方向に回転するように、切り替えアクチベーター40の第2ランプ4210はスリーブユニット510のランプ5130に沿って摺動する。
【0144】
図27は、送達状態において、第1ランプ5130が軸方向に第2ランプ4210を通過できるように、切り替えアクチベーター40が十分に回転することを示す。このようにして、投薬量設定アクチベーター50は、ハウジング20から引き抜いて取り外すことができる。同時に、医療用送達装置10は、その投薬量設定状態から送達状態へ切り替えられる。意図しない切り替えアクチベーター40の逆回転を防止するために、切り替えアクチベーター40のバックアップ部材4220はハウジング20の対応する要素の背後にスナップ係合する。このように、医療用送達装置10は、安全に送達状態に保つことができる。
【0145】
切り替えアクチベーター40を回転させると、ロックアウト部材90は、切り替えアクチベーター40のロックアウト部材90に対する回転により作動される準備が整う。特に、第2ランプ4210は、ロックアウト部材の対応する突起と相互作用する。これにより、ロックアウト部材90のインジケータ標識が見えて投薬量設定が終了していることが示される。更に、ロックアウト部材90を作動させ、それにより解放機構を作動させることにより、以下に示すように送達後にばね70がハウジング20を移動させる準備が整う。
【0146】
図28及び
図29は、注射前の、送達状態にある医療用送達装置10の注射装置を示している。これまでの図と比較して、
図28及び
図29では、注射装置は180°回転して逆さまになっている。
図28の矢印によって示されるように、ロッド要素30は下方に移動する。更に詳細には、液体又は医薬を注射するために、手動による軸方向の力がロッド要素30のプッシュコン350の遠位端に加えられる。例えば、このような軸方向の力は、ハウジング20を保持するユーザの手の親指によって提供することができる。注射の間、軸方向の力がロッド要素30からストッパー320に伝達されることにより、ストッパーが投薬チャンバ6110の中に押し込まれ、液体又は医薬が送達針620から供給される。注射後は、
図29に示すように、液体が実質的に完全に送達されるように、投薬チャンバ6110の容積は最小化される。
【0147】
図30及び
図31は、送達後に針620が保護されている注射装置を示す。特に、ケージ本体としてのハウジング20とロックアウト部材90との間で初期状態において予め応力を加えられていたばね70のばね力が、注射装置の他の部品に対して、特に針620に対して、ハウジング20を軸方向に移動させる。同様に、針620は後退することによりハウジング20によって完全に覆われ、これは注射後の針620による傷害を防止できる。加えて、ロックアウト部材90は、ユーザに対し、注射が完了し、注射装置がそれ以上使用できないことを知らせる。
【0148】
本発明の態様及び実施形態を説明する本明細書及び添付図面は、保護される発明を定義する特許請求の範囲を限定するものではない。換言すれば、本発明は、添付図面と上述の記載において例示され、詳細に記載されているものの、そのような例示及び記載は説明的又は例示的なものであって、限定的なものではない。本明細書及び特許請求の精神及び範囲から逸脱することなく、様々な機械的、構成的、構造的、電気的、及び動作的変更を加えることが可能である。いくつかの場面では、本発明を曖昧にしないために、周知の回路、構造及び技術が詳細に示されていない。したがって、当業者であれば、特許請求の範囲及び精神内において、変更及び修正を加えることができることが分かるであろう。特に、本発明は、上記及び下記に記載される様々な実施形態の特徴のいずれかの組み合わせを含む更なる実施形態を網羅する。
【0149】
本開示内容は、上述又は後述に記載されていないかもしれないが、図面に示される更なる特徴のすべてを個別に含む。また、図面及び明細書に記載される実施形態の単一の代替物及びその特徴の単一の代替物は、本発明の対象物又は開示される対象物から放棄されうる。本開示は、特許請求の範囲又は例示的実施形態に定義される特徴からなる対象物、並びに前記特徴を含む対象物を含む。
【0150】
更に、特許請求の範囲において、「備える」、「含む」といった文言は、他の要素又はステップを排除するものではなく、単数は複数を排除しない。単一のユニット又はステップは、特許請求の範囲に記載される複数の特徴の機能性を満たしうる。複数の特定の手段が互いに異なる従属請求項に記載されているという事実は、これら手段の組み合わせが有利に使用できないことを示すものではない。また、属性又は値に関する「実質的に」、「ほぼ」、「約」などの用語は特に、それぞれ正確に属性又は値を規定する。所与の数値又は範囲の文脈における用語「約」は、例えば、所与の値又は範囲の20%以内、10%以内、5%以内、2%以内である値又は範囲を指す。連結又は接続されると記載される構成要素は、電気的に又は機械的に又は直接連結されていても、或いは一又は複数の中間的構成要素を介して間接的に連結されていてもよい。特許請求の範囲におけるいずれの参照記号も、同範囲を限定するものではない。
【0151】
本開示は、医療用送達装置の以下の実施形態、アダプタの以下の実施形態、及び方法の以下の実施形態を更に含む。
【0152】
実施形態1は、長手軸、遠位塩、近位端を有するステム部と、ステム部の近位端のヘッド部分に装着されるストッパーとを有するロッド要素、並びに送達オリフィスと、遠位端、近位端及び中空の内部空間を有するチャンバ本体とを含む投薬部材を備え、ロッド要素のステム部が、投薬部材のチャンバ本体の内部空間の中に延び、送達オリフィスが、ロッド要素のストッパーに隣接して配置され、ストッパーがチャンバ本体の内部空間の中に気密に嵌合する医療用送達装置である。ステム部のヘッド部分は複数のバルジを有し、ストッパーは対応する内部空間を有し、ステム部のヘッド部分の全体がストッパーの内部空間の中に嵌合する。
【0153】
実施形態2は、投薬量設定状態において、ロッド要素のステム部と送達オリフィスとの間において投薬部材のチャンバ本体の内部空間に投薬チャンバが形成され、ロッド要素が送達オリフィスから遠ざかるときこの投薬チャンバが増大するように、ロッド要素がその長手軸に沿って投薬部材の送達オリフィスに対して可動である、実施形態1による医療用送達装置である。
【0154】
実施形態3は、ストッパーが弾性材料から作製される、実施形態1又は2による医療用送達装置である。
【0155】
実施形態4は、ステム部のヘッド部分の複数のバルジが凸状である、実施形態1から3のいずれか一つによる医療用送達装置である。
【0156】
実施形態5は、ロッド要素のステム部のヘッド部分の複数のバルジの隣接域が凹上の中間区間によって分離されている、実施形態1から4のいずれか一つによる医療用送達装置である。
【0157】
実施形態6は、ロッド要素のステム部が当接面を含み、この当接面からヘッド部分が延びる、実施形態1から5のいずれか一つによる医療用送達装置である。
【0158】
実施形態7は、ストッパーがロッド要素のステム部の当接面に軸方向に接する、実施形態6による医療用送達装置である。
【0159】
実施形態8は、ロッド要素のステム部のヘッド部分の直径がステム部の静止部に比較して小さい、実施形態1から7のいずれか一つによる医療用送達装置である。
【0160】
実施形態9は、ロッド要素のステム部が回転対称である、実施形態1から8のいずれか一つによる医療用送達装置である。
【0161】
実施形態10は、送達装置へアダプタを接続し且つ送達装置からアダプタを接続解除するように構成された装着構造と、送達装置の送達オリフィスの先端に対して容器を所定の位置に保持するための容器座部とを備える、送達オリフィスを有する送達装置に容器を接続するためのアダプタである。容器がアダプタの容器座部に配置され、アダプタの装着構造が送達装置に接続されるとき、容器の内部空間と送達装置の送達オリフィスの内部空間との間に開いた管路が形成される。アダプタの容器座部は、容器がアダプタの容器座部に配置されるとき容器の開口のキャップを穿通するスパイクを含む。
【0162】
実施形態11は、容器座部のスパイクが容器の内部座部内に延びる、実施形態1によるアダプタである。
【0163】
実施形態12は、容器座部のスパイクが先端を含む、実施形態10又は11によるアダプタである。
【0164】
実施形態13は、容器座部のスパイクが、先端から長手方向にスパイク全体に走るコンジットを含む、実施形態12によるアダプタである。
【0165】
実施形態14は、アダプタの装着構造が送達装置に接続されると送達装置の送達オリフィスを密封する送達オリフィス密封機構を更に備える実施形態10から13のいずれか一つによるアダプタである。
【0166】
実施形態15は、送達オリフィス密封機構が気密に配置される密封機構ホルダを備える、実施形態14によるアダプタである。
【0167】
実施形態16は、送達オリフィス密封機構が、アダプタの装着構造が送達装置に接続されるときに送達オリフィスが通る経路を含む、実施形態14又は15によるアダプタである。
【0168】
実施形態17は、アダプタの装着構造が送達装置に接続されると送達装置の送達オリフィスが容器座部のスパイクのコンジットの中へ延びる、実施形態13及び実施形態15又は16によるアダプタである。
【0169】
実施形態18は、送達オリフィスの密封機構が、コンジットが先端の反対側で終端するスパイクの一側面で容器座部のスパイクに気密に当接する、実施形態17によるアダプタである。
【0170】
実施形態19は、送達オリフィスの密封機構がプラグ形状を有している、実施形態14から18のいずれか一つによるアダプタである。
【0171】
実施形態20は、送達オリフィスの密封機構がシリコーンから作製される、実施形態14から19のいずれか一つによるアダプタである。
【0172】
実施形態21は、溶液内の液体、送達オリフィスを有する送達装置及び実施形態10から20のいずれか一つによるアダプタを得ること;容器をアダプタの容器座部に配置すること;アダプタの装着構造を送達装置に接続し、容器をアダプタの容器座部に配置する間に、液体を容器から送達装置内にその送達オリフィスを介して引き込むこと;アダプタを送達装置から連結解除すること;並びに送達オリフィスを介して送達装置の外へ液体を提供することを含む、液体を患者に送達する方法である。