特許第6880028号(P6880028)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6880028金属をコーティングするために使用することができるポリベンゾキサジンおよびそのゴムへの結合
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6880028
(24)【登録日】2021年5月7日
(45)【発行日】2021年6月2日
(54)【発明の名称】金属をコーティングするために使用することができるポリベンゾキサジンおよびそのゴムへの結合
(51)【国際特許分類】
   C08G 14/073 20060101AFI20210524BHJP
   C08G 73/06 20060101ALI20210524BHJP
   C08G 73/02 20060101ALI20210524BHJP
   C09D 161/34 20060101ALI20210524BHJP
   C09D 179/04 20060101ALI20210524BHJP
   C09D 179/02 20060101ALI20210524BHJP
【FI】
   C08G14/073
   C08G73/06
   C08G73/02
   C09D161/34
   C09D179/04 Z
   C09D179/02
【請求項の数】10
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2018-531583(P2018-531583)
(86)(22)【出願日】2016年12月5日
(65)【公表番号】特表2019-505619(P2019-505619A)
(43)【公表日】2019年2月28日
(86)【国際出願番号】FR2016053211
(87)【国際公開番号】WO2017103375
(87)【国際公開日】20170622
【審査請求日】2019年12月3日
(31)【優先権主張番号】1562499
(32)【優先日】2015年12月16日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】514326694
【氏名又は名称】コンパニー ゼネラール デ エタブリッスマン ミシュラン
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100084663
【弁理士】
【氏名又は名称】箱田 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100093300
【弁理士】
【氏名又は名称】浅井 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100156982
【弁理士】
【氏名又は名称】秋澤 慈
(72)【発明者】
【氏名】フェデュルコ ミラン
(72)【発明者】
【氏名】リベッツォ マルコ
【審査官】 藤井 明子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−060545(JP,A)
【文献】 特開2011−207805(JP,A)
【文献】 特表2013−532768(JP,A)
【文献】 特開2010−265480(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 2/00−2/36、4/00−16/06、
61/00−61/12、65/00−67/04、
73/00−73/26、75/00−75/32、
79/00−79/14
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリベンゾキサジンの反復単位が式(I)または(II)に対応する少なくとも1つの単位を含む、前記ポリベンゾキサジン:
【化1】
式中:
− Z1は、少なくとも1個の炭素原子を含みかつO、S、NおよびPから選択される少なくとも1個のヘテロ原子を含んでいてもよい、少なくとも2価の、脂肪族、脂環式または芳香族結合基を表し;
− X1およびX2は、同一かまたは異なり、OまたはSを表し;
− Ar1およびAr2は、同一かまたは異なり、置換または非置換フェニレン基を表し;
− Z2は、Oまたは(S)n (記号「n」は1以上の整数を表す)を表し;
記号「*」は式(II)の単位の、炭素原子またはヘテロ原子への任意の結合を表す。
【請求項2】
Z1が、1個から20個までの炭素原子を含む脂肪族基または3個から20個までの炭素原子を含む脂環式基を表す、請求項1記載のポリベンゾキサジン。
【請求項3】
Z1が、C1-C20アルキレン基を表す、請求項2記載のポリベンゾキサジン。
【請求項4】
Z1が、6個から30個までの炭素原子を含む芳香族基を表す、請求項1記載のポリベンゾキサジン。
【請求項5】
Ar1およびAr2が、各々、非置換ベンゼン環を表す、請求項1〜4のいずれか1項記載のポリベンゾキサジン。
【請求項6】
X1およびX2が、各々、Sを表す、請求項1〜5のいずれか1項記載のポリベンゾキサジン。
【請求項7】
X1およびX2が、各々、Oを表す、請求項1〜5のいずれか1項記載のポリベンゾキサジン。
【請求項8】
Z2が、OまたはSを表す、請求項6または7記載のポリベンゾキサジン。
【請求項9】
ポリベンゾキサジンの反復単位が、式(I-1)または(II-1)に対応する少なくとも1つの単位を含む、請求項8記載のポリベンゾキサジン:
【化2】
(式中、「x」は、1から16までの整数であり、
記号「*」は式(II-1)の単位の、炭素原子またはヘテロ原子への任意の結合を表す)。
【請求項10】
基体の少なくとも表面が少なくとも部分的に金属であり、少なくとも前記金属の部分が請求項1〜9のいずれか1項記載のポリベンゾキサジンでコーティングされている、前記基体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
1.本発明の分野
本発明は、特に金属のゴムへの接着結合を意図する特に接着剤系において使用することができる熱硬化性樹脂に関する。
本発明は、より詳しくは、自動車用の空気入りタイヤまたは非空気入りタイヤのようなゴム物品の製造を意図する金属/ゴム複合体において特に接着剤層として使用することができるベンゾキサジン単位を有するポリマーまたは「ポリベンゾキサジン」に関する。
【背景技術】
【0002】
2.先行技術
金属/ゴム複合体は、特に自動車タイヤでは周知である。金属/ゴム複合体は、通常、炭素鋼製のワイヤ、フィルム、テープまたはコードのような金属補強用要素(または「補強材」)を含む、イオウによって架橋することができる不飽和ゴム、一般的にはジエンゴム製のマトリックスから構成されている。
金属/ゴム複合体は、上記タイヤの走行中に非常に高い応力、特に圧縮、屈曲または屈曲変動の繰り返し作用を受けるので、これらの複合体は、知られているように、多くの場合によっては相反する技術的基準、例えば均一性、可撓性、曲げ強度および圧縮強度、引張強度、耐摩耗性並びに耐腐食性を満たさなければならず、さらにこの性能を非常に高いレベルにできる限り長く維持しなければならない。
ゴムと補強材間の接着相間がこの性能の耐久性に主な役割を果たすことが容易に理解される。そのゴム組成物を炭素鋼に結合するための従来のプロセスは、上記鋼の表面を黄銅(銅/亜鉛合金)でコーティングすることからなり、上記鋼と上記ゴムマトリックス間の結合は上記ゴムの加硫または硬化の間に上記黄銅の硫化によってもたらされる。その接着を改善するために、加えて、これらのゴム組成物において、一般的には、接着促進添加剤として有機酸塩または金属錯体、例えばコバルト塩を使用する。
実際は、上記炭素鋼と上記ゴムマトリックス間の接着が直面する種々の応力、特に機械的応力および/または熱的応力の作用下に形成される硫化物の漸次的発生の結果として経時的に弱化することが可能であり、水分がある場合には上記の分解プロセスが加速されることが可能であることが知られている。さらに、コバルト塩の使用は、ゴム組成物を酸化や老化に対してより感受性とし、かつそのコストを著しく上昇させ、長い目で見れば、このタイプの金属塩に関する欧州規制における最近の展開に基づきゴム組成物におけるそのようなコバルト塩の使用を除外することが望ましいことは言うまでもない。
【0003】
上記の理由すべてにより、金属/ゴム複合体の製造業者、特に自動車タイヤの製造業者は、金属補強材をゴム組成物に接着結合するとともに上記の欠点を少なくとも部分的に克服するために新規な接着剤溶液を模索している。
従って、本出願法人によって出願された最近発行された出願WO 2014/063963号、WO 2014/063968号、WO 2014/173838号、WO 2014/173839号には、上記の目的を満たす尿素、ウレタンまたはチオ尿素単位を有する新規なポリマー、さらにはその最初のモノマーが記載されている。特に接着プライマーとして金属/ゴム複合体における金属上に使用されると、これらのポリマーは、引き続いて簡単な織物接着剤、例えば「RFL」(レゾルシノール/ホルムアルデヒドラテックス)接着剤または他の等価な接着剤組成物を使用することにより、あるいはこれらのゴムマトリックスに直接(すなわち、そのような接着剤を使用せずに)、これらのゴムマトリックスが、例えば、適切な官能化不飽和エラストマー、例えばエポキシ化エラストマーを含有する場合に、金属を上記ゴムマトリックスに接着結合することを可能にすることは極めて有利である。従って、特に、黄銅コーティングした金属補強材に結合するように意図させたゴム組成物においてコバルト塩(または、他の金属塩)を省略することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
これらの研究を続ける際に、本出願法人は、周囲温度で金属およびゴムに関して上述したポリマーと同じ接着能を有するが、熱硬化(架橋)すると、さらに熱安定性と化学安定性を改善した熱硬化性タイプの新規なポリマーを見出した。さらに、その特定のミクロ構造は、目標にされる特定の用途に応じて分子の可撓性を調節することを可能にすることも極めて有利である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
3.本発明の簡単な説明
本発明は、式(I)または(II)に対応する少なくとも1つの単位を含む少なくとも反復単位を含むポリベンゾキサジンに関する:
【化1】
式中:
− Z1は、少なくとも1個の炭素原子を含みかつO、S、NおよびPから選択される少なくとも1個のヘテロ原子を含んでいてもよい少なくとも2価の脂肪族、脂環式または芳香族結合基を表し;
− X1およびX2は、同一かまたは異なり、OまたはSを表し;
− Ar1およびAr2は、同一かまたは異なり、置換または非置換フェニレン基を表し;
− Z2は、Oまたは(S)n (記号「n」は1以上の整数を表す)を表す。
【0006】
また、本発明は、基体のための、それの少なくとも表面が部分的に金属である、特に上記基体のゴムへの接着結合のためのコーティングとしての上記ポリマーの使用に関する。
また、本発明は、任意の基体であって、それの表面が少なくとも部分的に金属であり、少なくとも上記金属部分が本発明に従う上記ポリマーでコーティングされている、上記基体に関する。
本発明およびその利点は、続く詳細な説明および例示的実施態様、さらに、下記を表しあるいは図示されているこれらの例に関する図面に照らして容易に理解されるであろう:
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】3つの化合物、フェノール、ホルムアルデヒドおよびアミン(R=アミンの残基)からのベンゾキサジン化合物の合成のための一般的原理(図1a);加熱によって、上記ベンゾキサジン化合物のオキサジン環を開環するための(開環)機序(図1b);
図2】ハロゲン化フェノール(記号Halはハロゲンを表している)、パラホルムアルデヒドおよびジアミンから出発する、本発明に従うポリベンゾキサジンの合成に使用することができる式(A)のハロゲン化ベンゾキサジン(Mで示されているモノマー)の合成のための一般スキーム(図2);
図3】ハロゲン化フェノール、p-ホルムアルデヒドおよび脂肪族タイプの特定のジアミンから出発する、本発明に従うポリベンゾキサジンの合成に使用することができる式(A-1)の特定のハロゲン化ベンゾキサジン(M-1で示されているモノマー)の合成のための可能なスキーム(図3);
図4】ハロゲン化フェノール、p-ホルムアルデヒドおよび芳香族タイプのもう1つの特定のジアミンから出発する、本発明に従うもう1つのポリベンゾキサジンの合成に使用することができる式(A-2)の特定のハロゲン化ベンゾキサジンのもう1つの例(M-2で示されているモノマー)の合成のためのもう1つの可能なスキーム(図4);
図5】ハロゲン化フェノール、p-ホルムアルデヒドおよびすべて脂肪族である特定のジアミンから出発する、本発明に従う他のポリベンゾキサジンの合成に使用することができる式(A-3)の特定のハロゲン化ベンゾキサジンの他の例(M-3で示されているモノマー)の合成のための他の3つの可能なスキーム(図5);
図6】ハロゲン化フェノール、p-ホルムアルデヒドおよびすべて脂肪族である特定のジアミンから出発する、本発明に従う他のポリベンゾキサジンの合成に使用することができる式(A-4)の特定のハロゲン化ベンゾキサジンの他の例(M-4で示されているモノマー)の合成のための他の3つの可能なスキーム(図6);
図7】ハロゲン化フェノール、p-ホルムアルデヒドおよびすべて脂肪族である特定のジアミンから出発する、本発明に従う他のポリベンゾキサジンの合成に使用することができるそれぞれの式(A-5)の特定のハロゲン化ベンゾキサジンの他の例(M-5で示されているモノマー)の合成のための他の3つの可能なスキーム(図7);
図8】ハロゲン化フェノール、p-ホルムアルデヒドおよび特定の脂肪族トリアミンから出発する、本発明に従うもう1つのポリベンゾキサジンの合成に使用することができる式(A-6)の特定のハロゲン化ベンゾキサジンのもう1つの例(M-6で示されているモノマー)の合成のためのもう1つの可能なスキーム(図8);
図9図2からの式(A)のハロゲン化ベンゾキサジン(モノマーM)および芳香族ジオールまたはチオールタイプの一般式(B)のもう1つのモノマー(Nで示されているモノマー)から出発する、本発明に従うポリベンゾキサジンポリマー(Pで示されているポリマー)の合成のための一般スキーム(図9);
図10】式(A-7)の特定のハロゲン化ベンゾキサジン(モノマーM-7)およびイオウ含有芳香族ジオールタイプ(チオエーテル機能を有する)の式(B-1)のもう1つの特定のモノマー(モノマーN-1)から出発する、本発明に従う特定のポリベンゾキサジンポリマー(P-1で示されているポリマー)の合成のためのスキーム(図10);
図11】上記の図10からの式(A-7)の特定のハロゲン化ベンゾキサジン(モノマーM-7)および芳香族チオールタイプ(エーテル機能を有する)の式(B-2)のもう1つの特定のモノマー(モノマーN-2)から出発する、本発明に従うもう1つのポリベンゾキサジン(P-2で示されているポリマー)の合成のためのスキーム(図11);
図12】式(A-7)のハロゲン化ベンゾキサジン(モノマーM-7)および芳香族チオールタイプ(チオエーテル機能を有する)の式(B-3)のもう1つの特定のモノマー(モノマーN-3)から出発する、本発明に従うもう1つのポリベンゾキサジン(P-3で示されているポリマー)の合成のためのスキーム(図12);
図13】ポリマーPの熱処理後にそのオキサジン環が開環されたときの図9からの本発明に従うポリベンゾキサジン(ここではP'で示されているポリマー)(図13);
図14】ポリマーP-1の熱処理後にそのオキサジン環が開環されたときの図10の本発明に従う特定のポリベンゾキサジン(ポリマーはP-1'で示されている)(図14);
図15】臭素化フェノール(化合物1)、p-ホルムアルデヒド(化合物3)および特定の脂肪族ジアミン(化合物2)から出発する、本発明に従うポリベンゾキサジン(図17からのポリマーP-4およびP-4')の合成に使用することができる式(A-8)の特定の臭素化ジベンゾキサジン(M-8で示されているモノマー)の合成のためのスキーム(図15);
図16】CD2Cl2に溶解したモノマーM-8の1H NMRスペクトル(500MHz)(図16);
図17】上記の図15からの式(A-8)の特定のハロゲン化ベンゾキサジン(モノマーM-8)および式(B-1)の特定のモノマー(モノマーN-1)から出発する、本発明に従う特定のポリベンゾキサジン(P-4で示されているポリマー)の合成のためのスキーム、さらにそのオキサジン環が開環したときのこのポリマーの構造(P-4'で示されているポリマー)(図17)。
【発明を実施するための形態】
【0008】
4.本発明の詳細な説明
最初に、ベンゾキサジンが一般式の化合物であることが思い起こされる:
【化2】
【0009】
添付の図1aは、ここでは(縮合反応)1分子のフェノール、2分子のホルムアルデヒドおよびアミン(Rはそのアミンの残基を示す)から出発する、2分子の水の脱離による、ベンゾキサジンの合成のための一般原理を思い起こさせる。
図1b自体は、加熱(記号Δで表されている)の間に上記化合物のオキサジン環を開環するための(開環)機序を思い起こさせる。
このように、多数のベンゾキサジン化合物またはモノマーは、これらの置換基のタイプに応じて種々のフェノールとアミンを使用して合成することができる。次いで、置換基のこれらの基は、重合可能な部位を示すとともに種々のベンゾキサジンポリマー(またはポリベンゾキサジン)の合成を可能にし得る。
ベンゾキサジンおよびそこから誘導されるポリベンゾキサジンは、今日では当業者にとって周知である生成物である;いくつかの発表例を引用すると、論文「「Polybenzoxazines−New high performance thermosetting resins: synthesis and properties」;N.N. Ghosh et al., Prog. Polym. Sci. 32 (2007), 1344-1391、または「Recent Advancement on Polybenzoxazine−A newly Developed High Performance Thermoset」, Y. Yaggi et al., J. Polym. Sci. Part A: Polym. Chem.: Vol.47 (2009), 5565-5576、さらに例えば特許または特許出願US 5 543 516号、WO 2013/148408号を挙げることができる。
上記文献に詳細に述べられているように、ポリベンゾキサジンは、高温において(例えばこれらの特定のミクロ構造によっては典型的には150℃より高くまたは200℃さえよりも高い)これらのオキサジン環を開環し、従って熱硬化性ポリフェノール樹脂構造をもたらす著しい能力を有する。
【0010】
本発明の特定のポリベンゾキサジンは、下記一般式(A)(Halは(少なくとも1つ、すなわち1つ以上)のハロゲンを表す)に対応するハロゲン化タイプのベンゾキサジン(本出願においてはMと呼ばれる)から誘導する:
【化3】
【0011】
添付の図2は、ハロゲン化フェノール、p-ホルムアルデヒドおよびジアミンから出発する、加熱下で水の脱離によるその合成のための一般のスキームを示す。
上記式(A)において、Z1は少なくとも2価である、すなわち2つを超える共有結合、例えば3または4つの共有結合を含むことができる結合基(スペーサ)を表す。好ましくは、Z1は、2価であり、すなわち2つの共有結合だけを含む。
Z1は、脂肪族、脂環式または芳香族であってもよい。エチレン系飽和または不飽和であってもよいこの基は、定義上、少なくとも1個(すなわち1個以上)の炭素原子を含み、かつO(酸素)、S(イオウ)、N(窒素)およびP(リン)から選ばれる少なくとも1個(すなわち1個以上)のヘテロ原子を含んでいてもよい。
本発明の1つの特定の実施態様によれば、Z1は、1個から20個まで、より好ましくは1個から16個まで、特に1個から12個までの炭素原子を含む脂肪族基、あるいは3個から20個まで、より好ましくは3個から16個まで、特に3個から12個までの炭素原子を含む脂環式基を表す。より好ましくはなお、Z1は、C1-C20、好ましくはC1-C16、特にC1-C12アルキレン基を表す。
【0012】
上記モノマーMの各ベンゼン環は、少なくとも1つ(すなわち1つ以上)のハロゲンを有する。そのうえ、式(A)のこのモノマーにおいて、少なくとも1つのベンゼン環または各ベンゼン環の1個以上の水素原子は、種々の置換基によって、例えば上記ポリマーの上記金属および/または上記ゴムへの接着を促進することができる官能基によって置換され得る(置換されてもよい)。
好ましくは、上記モノマーMの各ベンゼン環は、1個のハロゲン(Hal)または多くても2個、より好ましくは唯一のハロゲンを有し、唯一のハロゲンは上記オキサジン環の酸素に対してパラ位に位置していることがより好ましい。
1つの特に好ましい実施態様によれば、Halは、臭素を表す。
図3は、脂肪族タイプの特定のジアミン(ポリエチレンジアミン)から出発する、式(A-1)の特定のハロゲン化ベンゾキサジンの合成のための可能なスキームを示し、このベンゾキサジンは本発明に従うポリベンゾキサジンの次の合成のためのモノマー(M-1で示されているモノマー)として使用することができる。Z1がここでは-(CH2)x-メチレン基(ここで、記号「x」は、好ましくは1から20まで、より好ましくは1から16まで、特に1から12までの異なる整数を表す)を表すことに留意されたい。このような合成は、続く例示的実施態様においてさらに詳細に記載される(図15)。
【0013】
もう1つの好ましい実施態様によれば、Z1は、6個から30個まで、より好ましくは6個から20個までの炭素原子を含む芳香族基を表す。従って、図4は、この場合芳香族タイプの特定のジアミン(p-キシリレンジアミン)から出発する、本発明に従うもう1つのポリベンゾキサジンの次の合成のためのモノマー(M-2で示されているモノマー)として使用することができる、式(A-2)の特定のハロゲン化ベンゾキサジンのもう1つの例の合成のためのもう1つの可能なスキームを示す。
図5、6および7は、常に一方ではハロゲン化フェノールとパラホルムアルデヒドから、もう一方では種々の特定のジアミン、すべて脂肪族タイプから出発する、本発明に従うポリベンゾキサジンの合成のためのモノマー(それぞれM-3、M-4およびM-5で示されているモノマー)として使用することができるそれぞれ式(A-3)、(A-4)および(A-5)の特定のベンゾキサジンの他の例の合成のための3つの他の可能なスキームを示す。
【0014】
図5において、結合基Z1について(ポリエチレンオキシド)[-CH2-CH2-O-]単位の反復は、高結晶化度のポリベンゾキサジンをもたらすことが可能であり、図6において、Z1について(ポリプロピレンオキシド)メチル基の存在は2つのアミン末端基の反応性を低下させ、より低い結晶化度のポリベンゾキサジンをもたらすことを可能にする。図7において、(ポリエチレンチオエーテル)[-CH2-CH2-S-]反復単位におけるイオウ原子(ヘテロ原子)のスペーサZ1についての存在は、ポリベンゾキサジンの金属への接着を更に改善することが可能である。従って、ベンゾキサジンモノマーのZ1基の構造が最終ポリマーの特性を調節するためにかなり変更されてもよいことが分かる。これは、本発明の主要な利点を構成している。
図8は、今回ハロゲン化フェノール、パラホルムアルデヒドおよびトリアミン、トリス(3-アミノプロピル)アミンからなる特定の脂肪族ポリアミンから出発する、本発明に従うもう1つのポリベンゾキサジンの合成のためのモノマー(M-6で示されているモノマー)として使用することができる式(A-6)の特定のハロゲン化(トリ)ベンゾキサジン化合物のもう1つの例の合成のためのもう1つの可能なスキームを示す。
【0015】
それ故、本発明のポリベンゾキサジン(ポリマーP)は、下記の式(I)(オキサジン環の開環前)または式(II)(開環後)に対応する少なくとも1つの単位を含む構造的反復単位を含む不可欠な特徴を有する:
【化4】
式中:
− Z1は、ベンゾキサジン(モノマー)化合物に対してすでに上で示した主な定義および好ましい定義を有し;
− X1およびX2は、同一かまたは異なり、O(酸素)またはS(イオウ)を表し;
− Ar1およびAr2は、同一かまたは異なり、置換または非置換フェニレン基を表し;
− Z2は、Oまたは(S)n (記号「n」は1に等しい(1個のイオウ原子の場合)または1を超える(複数個のイオウ原子の場合)整数を表す)を表す。
【0016】
ポリマーは、ここでは、上記式(I)または(II)の少なくとも1つの単位を含む反復構造単位を有する任意のホモポリマーまたはコポリマー、特にブロックコポリマーとして理解されなければならない;本発明の上記ポリマーは、もちろんそれらの式(I)の単位と式(II)の単位を含んでもよい。
上記の式(II)において、その2つ記号「*」(同一かまたは異なる)がその単位の炭素原子またはヘテロ原子(好ましくはO、S、NおよびPから選ばれる)への任意の結合を表すことを当業者は直ちに理解するであろう。
図9は、図2からの式(A)のハロゲン化ベンゾキサジン(モノマーM)と(B)で示されている一般式の、芳香族ジオールまたはチオールタイプ(Nで示されている一般モノマー)の特徴を有するもう1つのモノマーとから出発する、本発明の上記ポリベンゾキサジン(ポリマーP)の重縮合による合成のための一般スキームを表す。
上記の一般式(I)および(II)において、好ましくは以下の特徴の少なくとも1つが満たされる:
− Ar1およびAr2は、各々、非置換ベンゼン環を表す;
− X1およびX2は、各々、イオウ原子かまたは酸素原子を表す;
− Z2は、OまたはS(すなわち「n」は1に等しい)、より好ましくはSを表す;
− Z1は、(CH2)x (ここで、「x」は、好ましくは1から20まで、より好ましくは1から16まで、特に1から12まで異なる)を表す。
【0017】
より好ましくは、上記の好ましい特徴の全てが同時に満たされる。
そのうえ、上記の式(I)および(II)において、少なくとも1つのまたは各ベンゼン環Ar1およびAr2の1個以上の水素原子は、例えば上記ポリマーの上記金属および/または上記ゴムへの接着を促進することが可能な官能基によって、同一かまたは異なる1つ以上の置換基によって置換され得る(置換されてもよい)。
また、図9のポリベンゾキサジン「P」、より正確にはその反復単位の少なくとも一部は、図13、そのオキサジン環の開環前(図13a、ポリマーP)および開環後(図13b、ポリマーP')に表されている。
図10は、式(A-7)の特定のハロゲン化ベンゾキサジン(モノマーM-7)およびイオウ含有芳香族ジオールタイプ(4,4'-チオジフェノール)の式(B-1)のもう1つの特定のモノマー(モノマーN-1)から出発する、式(I-1)の本発明に従う特定のポリベンゾキサジン(P-1で示されているポリマー)の合成のための特定のスキームを表す。
この例において、すでに記載されている本発明の1つの好ましい実施態様によれば、モノマーM-7の各ベンゼン環が唯一のハロゲン(Hal)、より好ましくは臭素を有し、このハロゲンがより詳しくは上記オキサジン環の上記酸素にパラ位に位置していることに留意されたい。
また、図10からのこのポリベンゾキサジンまたはより正確にはその反復単位の少なくとも一部は、図14、充分な加熱後のそのオキサジン環の開環前(図14a、ポリマーP-1)と開環後(図14b、ポリマーP-1')に表されている。
【0018】
従って、1つの特に好ましい実施態様によれば、本発明の上記ポリベンゾキサジンは、特定の式(I-1)(上記オキサジン環の開環前)または(II-1)(開環後)に対応する少なくとも1つの単位を含む反復単位に特徴を有する:
【化5】
【0019】
図11は、芳香族チオールタイプ(さらにエーテル機能を有する)の上記の特定のハロゲン化ベンゾキサジン(モノマーM-7)および式(B-2)のもう1つの特定のモノマー(モノマーN-2)から出発する、式(I-2)の本発明に従うもう1つの特定のポリベンゾキサジン(P-2で示されているポリマー)の合成のためのもう1つの特定のスキームを表す。
図12は、上記の特定のハロゲン化ベンゾキサジン(モノマーM-7)および芳香族チオールタイプ(さらにチオエーテル機能を有する)のもう1つの特定のモノマー(モノマーB2)から出発する、式(I-3)の本発明に従うもう1つの特定のポリベンゾキサジン(P-3で示されているポリマー)の合成のためのもう1つの特定のスキームを表す。
上記の図10についてのように、図11および12のこれらの例において、特に、すでに示した本発明の1つの好ましい実施態様によれば、上記モノマーM-7の各ベンゼン環が、より詳しくは上記オキサジン環の酸素にパラ位に位置する、唯一のハロゲン(Hal)、より好ましくは臭素を有することに留意されたい。
また、すでに示したように、図13および14は、これらのオキサジン環が開環すると、図9および図10からの本発明に従うポリベンゾキサジンを表す(ここではそれぞれP'およびP-1'で示される)。
【0020】
典型的には、本発明の上記ポリベンゾキサジンは、式(I)または(II)の単位を有する十から数百まで、好ましくは50から300までの構造単位、特に図10〜14および17において例として表されるような構造単位を含み得る。
本発明の上記ポリベンゾキサジンは、接着プライマーとしてまたは単独の接着剤層として、少なくとも表面が少なくとも部分的に金属である少なくとも基体をコーティングし、特にこの基体をゴムに付着させるために使用することができることは有利である。
また、本発明は、特に炭素鋼のような鋼製の、上記基体に関する。上記鋼は、ブライト(すなわちコーティングされていない)鋼であり得、あるいはアルミニウム、銅、亜鉛およびこれらの金属のうちの少なくとも1つと少なくとも1つの他の金属(この金属はこの群に属していても属していなくてもよい)との合金からなる群から選ばれる表面金属と呼ばれる第2の金属の少なくとも1の層で少なくとも部分的にコーティングされていてもよい(それ故、鋼とポリベンゾキサジン層の間に位置する中間層)。この表面金属は、特に黄銅である。
【0021】
上記ゴムを上記ポリベンゾキサジン層に付着させるために、任意の既知の接着剤系、例えば、天然ゴムのような少なくとも1種のジエンエラストマーを含む「RFL」タイプの従来の織物接着剤またはゴムとポリエステルまたはポリアミドのような従来のポリマー間に満足な接着を与えることが知られている任意の等価な接着剤、例えば、特許出願WO 2013/017421号、WO 2013/017422号、WO 2013/017423号、WO 2015/007641号、WO 2015/007642号に記載されている接着剤組成物が使用し得る。
上記の接着剤コーティングプロセスの前に、本発明の上記ポリマーの表面を、例えば物理的におよび/または化学的に活性化して上記ゴムへのその接着剤の取込みおよび/またはその最終接着を改善することが有利であり得る。物理的処理は、例えば、電子ビームのような放射線またはプラズマによる処理からなり得る;化学処理は、例えば、エポキシ樹脂および/またはイソシアネート化合物の槽を前もって通過することからなり得る。
そのポリベンゾキサジン層を備えている上記金属基体とそれが接触している上記ゴム層間の結合が問題の上記ゴム物品の最終の硬化(架橋)の間に明確に与えられることを当業者は容易に理解するであろう。
【実施例】
【0022】
5.本発明の例示的実施態様
本出願において、特に明確に指示されない限り、示されるすべてのパーセント(%)は質量%である。
下記の試験は、最初に、ベンゾキサジン化合物(モノマーM-8)の合成、次いで、本発明に従う好ましいポリベンゾキサジン(ポリマーP-4)の合成を記載する。最後に、本発明のポリベンゾキサジンの優れた接着性能を示すために付着性試験を実施する。
【0023】
5.1.ハロゲン化ベンゾキサジン化合物(モノマーM-8)の合成
この合成のために、温度計、窒素導入口、マグネチックスターラおよびコンデンサーを備えた250mlの三つ口丸底フラスコを準備する。
この合成は、下記に詳述されているように、図15に示される操作手順に従って実施し、2つの溶媒(無水トルエンと無水エタノール)の存在下に3つの化合物:ハロゲン化フェノール(化合物1;4-ブロモフェノール;Aldrich製品B75808)、脂肪族ジアミン(化合物2;1,8-ジアミノオクタン;Aldrich製品D22401)およびp-ホルムアルデヒド(化合物3;Aldrich製品158127)から出発する。
化合物1(2当量、10.38g、すなわち60ミリモル)、次いでエタノール(51ml)を丸底フラスコに注入する。ここでエタノールの存在は重要であり、不安定なトリアジンタイプの中間生成物の形成を防止する。次いで、撹拌しながら、化合物2(1当量、4.32g、すなわち30ミリモル)、化合物3(4当量、3.60g、すなわち120ミリモル)、最後にトルエン(102ml)を導入する。この反応媒体を72時間加熱還流(約75℃)し、次いで回転蒸発器に50℃で50ミリバール下に置いて溶媒を蒸発させる。このようにして、レモンイエロー色の油状物を得る。
次いで、この油状物は、ジエチルエーテル/シクロヘキサン溶離剤を用いて、10:35(最初)から10:20(最後)に変動する上記2つの溶媒の容積比で、SiO2カラム上で第1の精製を受ける。上記モノマー(M-8)を含有する精製した画分を再び混ぜ合せ、溶媒を蒸発させる。このようにして、淡黄色の固形物を得る。この固形物をメタノール(80ml当たり1g)に入れ、30分間加熱還流(65℃)する。次いで、上記モノマーの結晶化のためにこの溶液を周囲温度(約20℃)に冷却する。得られた固体生成物を、ろ過(Buechnerフィルター)によって分離する。このようにして、白色結晶を得、これを真空オーブン内で50℃において一晩乾燥して、微量の溶媒を除去する(約60%の反応収率)。
CD2Cl2に溶解した、このようにして合成した上記モノマーM-8の1H NMRスペクトル(500MHz)を、添付の図16に再現する。このNMR分析は、下記の結果を示す:
1H MMR (500 MHz) CD2Cl2: 1.29 (m, 8H), 1.51 (m, 4H), 2.67 (m, 4H), 3.92 (s, 4H), 4.82 (s, 4 H), 6-62 - 6-64- (d, 2H), 7.08 (s, 2H), 7.17 - 7.19 (d, 2H).
【0024】
5.2.ポリベンゾキサジン(ポリマーP-4)の合成
この合成は、2つのモノマー:上記の段階(モノマーM-8)において得られたベンゾキサジンおよびすでに図10に記載されている式(B-1)(4,4'-チオジフェノール;モノマーN-1)のイオウ含有芳香族ジオールから出発する、以下に詳細に記載されている図17に示される操作手順に従って実施する;これは炭酸ナトリウム(Na2CO3;Sigma Aldrich製品13418)、その(無水)溶媒DMA(N,N-ジメチルアセトアミド;Sigma Aldrich製品38839)およびトルエン(Acros Organics製品No. 364411000)の存在下にある。上記2つのモノマー(M-8およびN-1)は、前もって真空中50℃で一晩乾燥し、上記炭酸ナトリウムでは150℃の温度以外は同様に乾燥する。
この合成は、窒素導入口、温度計、マグネチックスターラ並びにコンデンサーおよび蒸留ブリッジ(加熱マントルを備える)を置いたディーン・スタークセパレーターを備えている100mlの四つ口丸底フラスコにおいて実施する。この反応フラスコにおいて温度計が少なくとも100℃の温度に達するまでこの装置はホットエアガンを使用して真空中で乾燥する。すべてを周囲温度(20℃)に冷却し、次いで、この装置は合成の間中窒素流れ下に置く。
次いで、最初に式(A-8)の上記モノマーM-8(1当量、1.5g、すなわち2.79ミリモル)、次に式(B-1)の上記モノマーN-1(1当量、0.61g、すなわち2.79ミリモル)を上記丸底フラスコに導入する。次に20mlのDMA(両方のモノマーの溶媒)、次いで、塩基として4mlのトルエン中のNa2CO3(3当量、0.89g、すなわち8.36モル)懸濁液を添加する。すべてをN2下で5分間パージし、次いで、この反応媒体を105℃に加熱する。この温度に達する(約115℃の加熱マントル温度)と、約90分間実施される共沸蒸留(水/トルエン蒸留)を容易にするためにディーン・スターク装置の蒸留ブリッジを110℃(加熱マントルによって)に加熱する。次に、この反応媒体の温度を130℃に達するまで、30分毎に10℃の段階で徐々に増加する。この温度で一晩(12時間)放置し、次いで、周囲温度(20℃)に冷却する。最後に、この反応混合物を250mlの蒸留水に激しく(磁気バー)撹拌しながら注入する;これを30分間(20℃)撹拌し、このようにして得られた沈殿をろ過(Buechnerフィルター)によって分離し、100mlの蒸留水で洗浄する;この洗浄中に、カーボネートを抽出するために、中性pHに達するまで、酸(10%HCl水溶液)を滴下する。この沈殿を100mlの蒸留水で再び洗浄し、真空中80℃で一晩(約12時間)乾燥する。
【0025】
このようにして、下記の結果を示す、溶媒DMA-d6における1H NMR(500MHz)分析によって証明されるように、図17からの上記ポリマーP-4を得た:
7.36-7.38 (d, 2H), 7.21-7.33 (m, 2H), 7.11-7.16 (m, 5H), 6.99-7.0 (s, 2H) 6.8-6.82 (d, 1H), 6.62 (s, 1H), 6.78-6.80 (d, 1H), 4.24 (s, 4H), 3.55-3.80 (m, 4H), 2.07-2.14 (m, 4H), 1.08-1.40 (m, 12H).
また、ベージュ色の粉末の形のこのポリマーP-4を、DSC(示差走査熱量測定)によって-80℃と+260℃の間を10℃/分の勾配で分析した(Mettler Toledo DSC「822-2」装置;窒素雰囲気)。この分析は、最初の通過(-80℃と+260℃の間)では、200℃より高く、最高240℃で発熱状態(上記オキサジン環の開環および上記ポリマーを架橋に対応する)を示した。第2および第3のDSCの間の通過は、-80℃と+260℃の間で行い、見かけのガラス転移(Tg)は可視できず、本発明の上記ポリマーの非常に高い熱的安定性を証明している。
【0026】
5.3.金属/ゴム複合体における接着試験
わずかに黄色の透明な溶液を形成するために、前もって調製したポリマーP-4の一部分(650mg)を8mlのトルエン/DTP(1,3-ジメチル-3,4,5,6-テトラヒドロ-2(1H)-ピリミジノン; CAS 7226-23-5)混合物(10:1の容積比で)に溶解し、次いで、それの一部(0.7ml)を10cm×2.5cmおよび0.3mmの厚さの寸法を有する黄銅のテープ(フィルム)に一様に付着させた;一方では、微量の溶媒を除去するために、もう一方では、上記ポリマーのオキサジン環を少なくとも部分的に開環(すなわち完全にまたは部分的に開環)するために、このアセンブリを175℃で(換気によって)5分間、次いで真空中230℃で追加の5分間炉内に入れ、この最終工程は上記ポリマーの色の顕著な変化を伴い、鮮黄色に変化する。
次いで、周囲温度に冷却した後、表面にこのようにして形成されたポリベンゾキサジンのその薄(5〜10μm厚)層を備えたテープを、最初にエポキシ樹脂(ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、約1%)とイソシアネート化合物(カプロラクタム-ブロックトイソシアネート化合物、約5%)をベースとする第1の水性槽(約94%水)に浸漬することによって通例の2工程接着剤コーティング操作(2槽接着剤コーティング)に供し、その第1の接着剤コーティング工程に続いて、乾燥(100℃で2分間)、次いで熱処理(200℃で5分間)に供した。次に、このようにして処理されたテープを、レゾルシノール(約2%)とホルモール(約1%)とゴムラテックス(約16%のNR、SBRおよびVP-SBRゴム)をベースとするRFL接着剤(約81重量%の水)の第2の水性槽に浸漬させた;最後に、このテープを炉内で130℃において2分間乾燥し、次いで、200℃で5分間熱処理した。
引き続き、このようにしてポリベンゾキサジンフィルムでコーティングされ、次いで接着剤でコーティングされた黄銅テープを、乗用車タイヤのベルト補強体用の従来のゴム組成物の2層の間に配置したが、その組成物は、天然ゴムと、充填剤としてカーボンブラックとシリカと、加硫系(イオウおよびスルフェンアミド促進剤)をベースとし;この組成物はコバルト塩がない。次いで、このようにして調製された金属/ゴム複合試験片を、押圧下に置き、すべてを20バールの圧力下で165℃において15分間硬化した(加硫した)。
【0027】
そのゴムの加硫後、ゴムマトリックスと金属テープの間に上記ゴムマトリックス中にコバルト塩がないにもかかわらず優れた接着結合が得られた;これは、剥離試験(20℃で)において、上記ゴムマトリックス自体に組織的に欠損が生じ、金属とゴムの間の界面には生じなかったことがわかったことによる。
他の接着結合試験は、コーティングされていないブライト鋼テープについて実施した;これらの試験も、上記ゴムに対して優れた接着を示した(上記ゴムマトリックスにおける組織的欠損)。
結論として、本発明に従う上記ポリベンゾキサジンは、引き続き簡単な織物接着剤、例えばRFL接着剤を使用してゴムマトリックスに接着結合することができること、あるいはこれらのゴムマトリックスに直接(すなわち、そのような接着剤を使用せずに)、例えば、これらのゴムマトリックスが適切な官能化不飽和エラストマー、例えばエポキシ化エラストマーを含有する場合に、接着結合することができるという主要な利点を上記金属基体に与える。
従って、黄銅のような接着剤金属層でコーティングされていてもよく、さらに金属塩、特にコバルト塩がないゴムマトリックスに取り囲まれている金属基体を使用してもよい。
さらに、これが本文書の序論に記載したその他の既知のポリマーと比較して有意な利点を構成し、本発明の上記ポリベンゾキサジンは、高温で、これらのオキサジン環を開環し、従って、熱硬化性ポリフェノール樹脂構造をもたらす著しい能力を有する。このことにより、良好な熱的安定性を与え、200℃より高い温度で目に見える相転移がない。最後に、これらの特定のミクロ構造が標的にされる特定用途に応じて分子の可撓性を調節することを可能にすることは極めて有利である。
図1a
図1b
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17