特許第6880044号(P6880044)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6880044高消化性加水分解ケラチン系材料を製造するための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6880044
(24)【登録日】2021年5月7日
(45)【発行日】2021年6月2日
(54)【発明の名称】高消化性加水分解ケラチン系材料を製造するための方法
(51)【国際特許分類】
   C12P 21/06 20060101AFI20210524BHJP
   A23K 10/26 20160101ALI20210524BHJP
   A61K 8/65 20060101ALI20210524BHJP
【FI】
   C12P21/06
   A23K10/26
   A61K8/65
【請求項の数】20
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2018-537449(P2018-537449)
(86)(22)【出願日】2017年1月16日
(65)【公表番号】特表2019-508028(P2019-508028A)
(43)【公表日】2019年3月28日
(86)【国際出願番号】EP2017050798
(87)【国際公開番号】WO2017121897
(87)【国際公開日】20170720
【審査請求日】2019年12月4日
(31)【優先権主張番号】16151355.1
(32)【優先日】2016年1月14日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】518247656
【氏名又は名称】テッセンデルロ グループ エヌ.ヴィー.
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】フィリエール, ロマン
(72)【発明者】
【氏名】ベルマンス, マーク
(72)【発明者】
【氏名】ロジャーズ, ジョエリ
(72)【発明者】
【氏名】デルモット, マシュー
(72)【発明者】
【氏名】ルッスアルン, ヴィンセント
【審査官】 西 賢二
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2015/014860(WO,A2)
【文献】 特開2013−174405(JP,A)
【文献】 特表2001−514499(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12P 21/00−41/00
A23K 10/00−50/90
A61K 8/00−8/99
A61Q 1/00−90/00
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/WPIDS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
分的に加水分解された、消化性ケラチン系材料を製造するための方法であって、
前記方法は、(1)水の存在下において、熱および2バール〜100バールの圧力を用いて、加水分解装置内でケラチン系材料を加水分解するステップと、(2)得られた部分的に加水分解されたケラチン系材料を空気乱流ミル中で、大気圧で、同時に乾燥および粉砕するステップであって、これにより、ペプシンおよび/または回腸消化率の低下が10%未満であり、かつ/または前記ペプシンおよび回腸消化率が引き続きそれぞれ75%および80%を超えるステップと、を含み、前記得られたケラチン系材料が少なくとも部分的に不溶性である材料を含み、乾燥粉体Beckman Coulter粒度分析器を用いてレーザー回折により測定した場合、体積分率でd50として測定した空気乱流ミルから排出される乾燥生成物の平均粒径は、20μm〜0.7mmであり、d90は1mm未満である、方法。
【請求項2】
空気乱流ミル中で少なくとも部分的に不溶性である材料を含む前記得られた部分的に加水分解されたケラチン系材料を同時に乾燥させて粉砕するステップは、前記ケラチン系材料が90℃未満の温度のまであるような温度で実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記空気乱流ミルは、生成物およびガスのストリーム(複数可)用の適切な入口および出口を有するチャンバを備え、前記チャンバ内では、回転部材は、多くの衝撃装置が備え付けられており、回転部材を高速で回転させることができ、前記回転部材は、20〜150m/秒の先端速度で回転する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記空気乱流ミルは分級機を備える、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記空気乱流ミルは、20℃〜500℃の温度で、ガスのフローを用いて動作される、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記ガスフローは、供給物1kg当たり1〜50m/時間であり、前記フローは、前記乾燥させたケラチン系材料の前記粒径に影響を及ぼすように調整することができ、滞留時間は10秒未満である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記乾燥させたケラチン系材料は、CIEL*a*b色空間を使用して測定された均質なクリーム色の淡色を有し、前記ケラチン系材料の(L)値が50以上であり、かつ/または(b)値が10以上である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記乾燥および粉砕された消化性ケラチン系材料は、乾燥粉体Beckman Coulter粒度分析器を用いてレーザー回折により測定した場合、20μm〜0.5mmの平均粒径(d50)を有する、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記乾燥および粉砕された消化性ケラチン系材料は、乾燥粉体Beckman Coulter粒度分析器を用いてレーザー回折により測定した場合、0.7mm未満のd90粒径を有し、かつ/または前記乾燥および粉砕された消化性ケラチン系材料は、乾燥粉体Beckman Coulter粒度分析器を用いてレーザー回折により測定した場合、10μm超のd10粒径を有する、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記乾燥および粉砕された消化性ケラチン系材料は、20以下のd10で割ったd90を有する、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記乾燥機および前記粉砕機から排出される前記乾燥および粉砕された消化性ケラチン系材料は、0.2g/cm上の注入密度を有する、請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記乾燥機および前記粉砕機から排出される前記乾燥および粉砕された消化性ケラチン系材料は、0.25g/cm上のタップかさ密度を有する、請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
血液が、前記部分的に加水分解されたケラチン系材料と一緒に前記空気乱流ミルに供給され、血液および前記ケラチン系材料の量が、血液10〜50重量%および前記ケラチン系材料50〜90%である、請求項1〜12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
血液の有無にかかわらず前記得られたケラチン系材料が、それぞれ80%および90%より高いペプシンおよび/または回腸消化率を有する、請求項1〜13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記部分的に加水分解された、消化性ケラチン系材料が、羽毛、毛髪、羊毛、蹄、または爪から製造される、請求項1〜14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記空気乱流ミルは、低酸素含量の空気を用いて動作される、請求項5〜15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記乾燥および粉砕された消化性ケラチン系材料は、乾燥粉体Beckman Coulter粒度分析器を用いてレーザー回折により測定した場合、50μm〜300μmの平均粒径(d50)を有する、請求項8〜15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記乾燥および粉砕された消化性ケラチン系材料は、乾燥粉体Beckman Coulter粒度分析器を用いてレーザー回折により測定した場合、15μm超のd10粒径を有する、請求項9に記載の方法。
【請求項19】
血液の有無にかかわらず前記得られたケラチン系材料が、それぞれ82%および92%より高いペプシンおよび/または回腸消化率を有する、請求項14に記載の方法。
【請求項20】
ペットフード中において、または養殖飼料としての飼料および/もしくは飼料添加物、または化粧品中において、ペットフードおよび飼料嗜好品のための担体および/もしくは増量剤としての、請求項1〜19のいずれか一項に記載の方法によって得られた前記加水分解された部分的に不溶性のケラチン系材料の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、毛髪からのフェザーミールまたはミールなど、高消化性加水分解ケラチン系材料を製造するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
動物の羽毛、毛髪、羊毛、蹄、爪などはケラチン系材料の供給源である。このようなケラチン系材料は、一般に家禽、ブタ、畜牛、ヒツジなどからの副産物であり、タンパク質含量が高いが、そのようなタンパク質の多くは難消化性であり、例えばわずかに20%のタンパク質のみ消化され得る。家禽の羽毛は典型的には、β−ケラチンの形態で約80〜90%のタンパク質を含む。ケラチンは、結果として、タンパク質中で架橋する、比較的多い量のシステインを含有している。(ジ)スルフィド架橋度が高いことは、例えば羽毛におけるタンパク質の多くが消化不能である理由である。従って、ケラチンは、そのタンパク質含量が動物によって消化され得る前に切断される必要がある(McCasland and Richardson 1966,Poult.Sci.,45:1231−1236;Moranら、1966 Poult.Sci.,45:1257−1266)。このため、加水分解された羽毛は、消化性タンパク質およびアミノ酸の貴重な供給源を提供することができる。したがって、羽毛加水分解物(すなわち加水分解された羽毛)は、動物飼料、ペットフード、およびアクア飼料などの複数の方法で利用することができる。
【0003】
羽毛または毛髪を処理して消化率を高め、かつ家禽および家畜に給餌するためのタンパク質供給源としてそれらの使用を可能にする方法は、当技術分野で公知である。一般に、このような方法は、加水分解を用いてケラチン系タンパク質中のスルフィド架橋を破壊し、得られた加水分解タンパク質を飼料に組み込むことを含む。ケラチン含有原料を処理する一般的に使用される方法は、1)熱水および加圧処理法、2)酸、アルカリ、および/もしくは酵素加水分解法、または3)これらの組合せに細分される。
フェザーミールなど、部分的に加水分解されたケラチン系材料を製造するためのいくつかの方法は、米国特許第5772968号、同第4286884号、同第4172073号、および欧州特許第2832236号など、当技術分野で知られている。
【0004】
ケラチン系材料は、一般に、消化性を改善するために、完全にはモノアミノ酸に加水分解されることはない。ケラチン系材料の部分的加水分解から得られる材料は、部分的に水に不溶性であり、液体(溶解)と固体(不溶性材料)との混合物を含み得る。一般に、得られた生成物はその後乾燥されて固体生成物を得る。乾燥させることで、例えば、ペプシンおよび/または回腸消化率試験に従って材料の消化性を付与することができる。
【0005】
熱感受性アミノ酸およびポリペプチドの分解、ならびに得られる生成物の比較的低い消化率など、現在の手順の欠点により、過酷な処理条件を必要としないケラチン系材料の経済的な新規加水分解方法に引き続き関心が集まっている。
【0006】
国際特許第2015/014860号には、好ましくは、乾燥温度を低く保つために乾燥ステップを減圧下で実施するプロセスが記載されており、これにより、乾燥中にフェザーミールの分解がほとんど生じない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、良好な粉末特性を有する一方で、非常に高い消化率を有し、高い栄養価を有する部分的加水分解ケラチン系材料を効率的なプロセスで製造するための方法を提供することである。
【0008】
本発明のこの目的は、好ましくは羽毛、毛髪、蹄、羊、または爪からの、部分的に加水分解された、消化性ケラチン系材料を製造するための方法によって達成され、本方法は、(i)水の存在下において、熱および約2バール〜約100バールの圧力を用いて、加水分解装置内でケラチン系材料を加水分解するステップと、(ii)得られた加水分解されたケラチン系材料を空気乱流ミル中で、ほぼ大気圧で、同時に乾燥および粉砕するステップであって、これにより、ペプシンおよび/または回腸消化率の低下が10%未満であり、かつ/またはペプシンおよび回腸消化率が引き続きそれぞれ75%および80%を超えるステップと、を含み、得られたケラチン系材料が少なくとも部分的に不溶性である材料を含み、乾燥粉体Beckman Coulter粒度分析器(Beckman Coulter)を用いてレーザー回折により測定した場合、空気乱流ミルから排出される生成物の平均粒径(d50)は、20μm〜0.7mmであり、d90は1mm未満である。
本発明のさらなる目的は、飼料用途のための改善された栄養価を有する部分的に加水分解された高消化性ケラチン系材料を提供することである。
【0009】
本発明のこれらおよび追加の態様を以下に説明する。
【0010】
本発明のプロセスは、多くの利点を有する。短時間で効率的に乾燥させることにより、例えば、好ましくは80%以上、さらには82%以上、例えば85%以上のペプシン消化率、および85%以上、さらには90%以上、例えば92%以上などの回腸消化率などの優れた品質特性を有する生成物が得られる。このプロセスは、さらに、1つの比較的簡単な設定で最大5つの操作を実施できるという点で効率的である。従来のプロセスでは、乾燥、粉砕、微粉化、冷却、およびふるい分けは、異なるステップで実施される操作であるが、現在のプロセスでは、これらの5つのステップを1回の操作で実施することができる。さらに、国際特許第2015/014860号に記載されている真空ディスク乾燥機で使用されている60〜90分に対して、数秒の短い滞留時間が可能である。
【0011】
本発明のプロセスはまた、サルモネラなどによる乾燥製品の微生物学的汚染のリスクを有意に軽減するというさらなる利益も有する。ロータの高速回転およびガスのフローによって生じる乱流、ならびに必要に応じて製造運転中のガスのフローの温度を容易に上昇させ得ることにより、空気乱流ミル内にデッドゾーンがないことは、生成物の蓄積やコールドスポットを避けるための重要な要素であり、これにより微生物汚染を防止し、軽減する。
【発明を実施するための形態】
【0012】
用語「約」は±20%、好ましくは±10%、より好ましくは±5%、最も好ましくは±2%を意味する。
用語「ケラチン系」は、「ケラチン性」という用語も包含し、羽毛、蹄、羊毛、爪、毛髪などのケラチン高含量を有する全ての材料を意味する。
【0013】
本明細書で使用される用語「ケラチン加水分解物」は、ケラチンを含む材料の加水分解後に得られる生成物を指す。
原材料
【0014】
本発明で使用されるケラチン系材料としては、好ましくは、羽毛、毛髪、羊毛、蹄または爪が挙げられる。羽毛は、家禽(鶏肉、七面鳥、アヒルなど)の副産物であり、毛髪および羊毛はブタ、畜牛、ヒツジなどの副産物である。蹄または爪は、様々な動物源由来であり、また、ケラチン系材料の供給源として粉砕形態で使用することができる。
【0015】
好ましい実施形態では、羽毛は、実質的な量で連続的に入手可能であるように、ケラチン系材料として使用される。これにより、ケラチン系材料の製造工場では、連続して製造できるようになる。
【0016】
有利なことに、本発明の方法に従って製造されたケラチン系材料は、動物飼料中のタンパク質の貴重な供給源および/またはアミノ酸の供給源となり得る。例えば、ケラチン系材料は、メチオニン、システイン、リジン、スレオニン、アルギニン、イソロイシン、ロイシン、バリン、ヒスチジン、フェニルアラニン、グリシン、セリン、プロリン、アラニン、アスパラギン酸、チロシン、トリプトファン、およびグルタミン酸のアミノ酸のうちの1つ以上の供給源となり得る。
【0017】
本発明で使用するためのケラチン系材料は、好ましくは、少なくとも17個のアミノ酸を含む高タンパク質含量(一般に、乾燥物質の70重量%超)を有する。タンパク質含量は、通常、窒素の総量を測定し、総窒素含量にいわゆるジョーンズ係数6.25を掛けることによって求められる。その結果は、タンパク質の理論量である。一般に、羽毛は固体で70〜90%のタンパク質を含む。屠殺場から採取された未処理の羽毛の固形量は一般に、約30重量%である。フェザーミールは、一般に、水分が8重量%未満であると仮定して、約72〜約87重量%のタンパク質を含有する。
【0018】
本発明の一実施形態では、屠殺動物の血液をケラチン系材料と一緒に処理することもできる。
【0019】
血液生成物は、加水分解ステップの前に未処理の羽毛または他のケラチン系材料と混合し、本発明のプロセスに従って加水分解および乾燥させて、食品または飼料製品としての使用に適したミールを得ることができる。あるいは、血液および羽毛は、別々の入口から加水分解装置に導入され、加水分解装置内で混合および加水分解される。別の好ましい実施形態では、凝固した血液は、空気乱流ミルに入る前に、加水分解されたケラチン系材料と組み合わされてもよい。
【0020】
本発明のこのような好ましい実施形態では、未処理の全血を生蒸気と直接接触させ、混合することによって最初に凝固させ、さらに遠心して、凝固血液から血液水を機械的に除去することができる。一般に「血栓」と呼ばれる凝固血液は、加水分解装置から排出される加水分解された羽毛と混合され、続いて空気乱流ミル中で混合物として乾燥させることができる。
あるいは、動物の屠殺後に凝固していない血液を使用することも可能である。血液は、EDTAおよびクエン酸塩などの従来の抗凝固剤で処理してもよい。あるいは、浸透圧ショック、pHショックなどによって赤血球を溶解させる。次いで、血液は、ケラチン系材料に関して記載された方法に従ってさらに処理されてもよく、この代替的実施形態では、好ましくは、未処理のケラチン系材料と混合させる。
【0021】
血液がケラチン系材料と組み合わせて使用される場合、羽毛または他のケラチン系材料と共に使用され得る血液に対するケラチン系材料の好適な量としては、1対10、好ましくは1.3対3の比が挙げられる。一般に、相対量は、血液約10〜50重量%、ケラチン系材料50〜90重量%、好ましくは血液25〜45重量%、ケラチン系材料55〜75重量%である。
加水分解プロセス
【0022】
本発明のプロセスのステップ(i)におけるケラチン系材料の部分的加水分解は、好ましいプロセスにおいて、以下のとおりである:(a)未処理の羽毛または他のケラチン系材料、任意により未処理の血液を連続または不連続の垂直または水平加水分解装置に装填するステップと(未処理の羽毛の場合、これらは例えば55%〜70%の水分を有する。水分は、概して、屠殺場由来のものであり、引き抜かれる前に鳥が熱水に入れられ、引き抜かれた羽毛は、その後、水中で遠心分離機に搬送されるか、または受入れビン内の排出前に圧縮されるために水分が発生する)、(b)蒸気ジャケット(および/または直接蒸気の噴射)、ならびに水の蒸発および/または直接的蒸気の噴射による圧力上昇により加水分解装置を加熱するステップであって、5秒〜240分、好ましくは90秒〜30分、より好ましくは5分〜40分、および最も好ましくは10〜30分の間、約2バール〜約100バール、好ましくは約2〜約15バール、より好ましくは2〜8バールに圧力を維持するステップと、(c)減圧し、乾燥セクションへ排出するステップ。好適な加水分解を得るために、低い圧力では、一般に、より長い処理時間を要するが、高い圧力では、より短い処理時間を要する。
【0023】
未処理のケラチン系材料は、加水分解装置に装填する前にミルにより処理するか、または破砕させて、サイズを減少させることができる。一般に、羽毛、ブタ、または畜牛の毛髪のサイズを小さくする必要はない。
【0024】
水分を含む未処理のケラチン系材料は、一般に、加水分解装置に供給されたときに、約30〜約80%(水分を含むケラチン系材料の全重量に対する水分%)、好ましくは、含水量は約50重量%より多く、一般に約70%前後の含水量を有する。添加された水は除去する必要があり、かつ加水分解装置内で加熱するにはエネルギーを要するために、75重量%未満(すなわち、1重量部の乾燥物質ケラチン系材料に水分3重量部未満)の水分を使用することが好ましい。したがって、好ましい量の水は、約65重量%以下(ケラチン系材料、好ましくは羽毛の乾燥物質1重量部に対して、水は最大約2重量部)である。
加水分解装置は、一般に、高圧ではますますコストがかかるために、約15バール以下、好ましくは10バール以下の圧力で動作する。ただし、使用する機器の種類によっては、最大100バールの圧力を使用できる。圧力は一般に約2バール以上である。加水分解の程度を高め、かつ速度を上げるためには、高い圧力が好ましい。したがって、圧力は、好ましくは約4バール以上、さらにより好ましくは約6バール以上である。一般に、圧力は約9バール以下である。圧力は、バールの絶対値である。
【0025】
水熱加水分解反応は、水、温度、および圧力の作用によってペプチド結合を分解する。概して、酸または塩基は存在していないが、一部は屠殺場由来のケラチン系材料中に存在し得る。一般に添加した少量である試薬は、水酸化カルシウムまたはCibenza、Valkerase酵素調製物などの耐熱性酵素などを使用することが可能である。活性試薬として、水/蒸気のみによる加水分解反応を有することが好ましい。
ステップ(i)における加水分解は、一般に蒸気加水分解装置と呼ばれる加水分解装置中で実施される。このような加水分解装置は本質的に撹拌容器であり、バッチプロセスまたは連続プロセスとして操作することができる。加水分解装置は、好ましくは連続プロセスを可能にし、押出機または垂直攪拌容器などの撹拌管状容器である。加水分解装置は、水平加水分解装置または垂直加水分解装置であってもよい。撹拌は、好ましくは、ゆっくりと推進するスクリュータイプのミキサー、パドルなどを用いて行われる。
【0026】
加水分解ステップ(i)は、一般に、約5秒〜約240分、好ましくは90秒以上、および約15バール未満の圧力では、一般に、約5分〜約240分、好ましくは約10〜約180分持続する。低い圧力では、一般により長い反応時間を要する。加水分解装置中の滞留時間が約60分以下、最も好ましくは約40分以下であるような方法で反応を実施することが好ましい。
【0027】
蒸気は、間接加熱のために直接注入および/または使用してもよい。間接加熱は、例えば熱いオイルコイルの影響を受ける可能性がある。最終的に、圧力は必要とされる圧力でなければならず、水の量は、好ましくは選択された圧力および温度で飽和蒸気が存在するような量である。好ましくは、存在する蒸気の量は、ケラチン系材料1kg当たり約200g以上の蒸気である。
乾燥プロセスおよび付属部品を有する空気乱流ミル
【0028】
部分的に加水分解されたケラチン系材料は、その後、本発明のステップ(ii)に従って乾燥される。乾燥は一般に、複数のステップで行われる。第1のステップは、水の一部を蒸発させながら、蒸気加水分解装置から排出される混合物を大気圧にするステップを含む。この水蒸気は、熱酸化装置で直接酸化されてもよく、または凝縮され、排水処理工場などで処理されてもよい。
【0029】
本発明の1つの好ましい実施形態では、加水分解装置から排出される混合物は(混合物の水の一部は、圧力が低下することにより蒸発する)、加圧ステップに供される。このステップでは、ケラチン系材料の水の一部が除去されて、含水量が例えば約65重量%〜約45重量%となる。
【0030】
加水分解ステップの後にケラチン系材料から圧縮された水は、一般に粘性水(stick water)と呼ばれる。粘性水は、栄養価を有する可溶化タンパク質が豊富である。粘性水は、一般的に行われている廃熱回収として用いる蒸発によって濃縮され、かつ適切な乾燥システムを用いてそれ自体がさらに乾燥され、そのように安定化されるが、一般に濃縮し、加水分解された羽毛に戻して、乾燥フェザーミールを生成する。
【0031】
本発明の一実施形態では、加水分解ステップ後にケラチン系材料から押し出され得る粘性水は、好ましくは濃縮され、濃縮された溶液は、固体ケラチン系材料とは別個の空気乱流ミルに注入されるか、またはケラチン系材料を空気乱流ミルに導入する前にバックミックスする(mixed back)。
【0032】
本発明によるプロセスにおいて、代替的な、さらにより好ましい実施形態では、加水分解装置から排出されて大気圧まで減圧された混合物を、依然として高温で、空気乱流ミルに直接供給する。水分を含む熱いケラチン系材料は、周囲温度でガスストリームを使用して、空気乱流ミル中で材料を乾燥させ得るのに非常に多くのエネルギーを含む。水分を含むケラチン系材料は、一般に、例えば約80℃以上、例えば約90〜100℃など、約70℃以上の温度を有する。ケラチン系材料が大気圧であるために、温度は約100℃(周囲圧力に依存する)以下である。
【0033】
本発明の好ましい実施形態では、結果として得られ、依然として水分を含む部分的に加水分解されたケラチン系材料を約10重量%以下、好ましくは約8重量%以下の含水量まで乾燥させる。約4重量%より少ない量の水分まで乾燥させることは、一般には不要であるが、害はない。乾燥は、最も好ましくは約5〜7重量%の含水量まで実施される。乾燥させることにより、貯蔵安定性のある生成物が得られる。
【0034】
乾燥させることは、フェザーミールなどのケラチン系材料の最終品質にとって重要なステップである。一般的な乾燥技術では、消化率を低下させると考えられている。本発明の好ましい実施形態では、ステップ(ii)の乾燥は、乾燥が非常に効率的であるように、小粒子を形成しながら大気圧で行われる。大気圧にはわずかな真空が含まれており、多くの場合、この真空がガスのフローおよび粉体の輸送を助けるために使用される。粉体は、エアロック回転バルブによって乾燥サイクロンから回収することができる。ミル前の圧力は−5〜−8ミリバール、ミル後の圧力は−30〜−50ミリバールにすることができる。
【0035】
1つの好ましい実施形態では、ステップ(i)の結果生じる部分的に加水分解された材料は、低熱損傷が許容される方法で乾燥させ、これにより、ケラチン系材料の消化率の低下が制限され、ペプシンおよび/または回腸消化率がより高く、依然としてそれぞれ80%および85%、好ましくはそれぞれ約82%および90%、より好ましくは約85%および92%以上であることを特徴とするようになる。より好ましくは、乾燥ステップの前後で測定したペプシンおよび/または回腸消化率の低下は、好ましくは5%未満である。本発明者らは、このような熱損傷の少ない材料を得るために、同時に材料を粉砕しながら、ガスフローを用いて乾燥を行うことを見出した。本発明者らは、粉砕作用の結果生じる小粒子が加水分解された材料を速やかに乾燥させるのを助けることから、空気乱流ミルを使用することにより、インビトロでの消化率およびケラチン系材料の材料特性の更なる改善が達成可能であることを見出した。
【0036】
したがって、本発明によれば、ステップ(i)で得られた部分的に加水分解された材料は、空気乱流ミルを使用して、ガスストリーム、一般に空気(酸素中では少ない可能性がある)により、同時に乾燥および粉砕される。空気乱流ミルは、速い粉砕および乾燥効果の利点を有し、本発明によって空気乱流ミルを使用することにより、結果として、乾燥させる材料、および概して空気であるガスのフローを密閉されたチャンバ内の高速ロータに導入することで、ケラチン系材料は、乾燥されると同時に、ミルにより処理されるか、または粉砕される。
【0037】
空気乱流ミルは、一般に、生成物およびガスのストリーム(複数可)用に適切な入口および出口を有するチャンバ(ステータ)を備える。チャンバ内では、回転部材(ロータ)は、多くの衝撃装置が備え付けられており、回転部材を高速で回転させることができる。ステータの内壁は、付加的な摩擦およびせん断力を用いて粉砕効率を高めるために、波形シートなどの衝撃部材が並置されていることが好ましい。ロータは、一般に、出口に対して垂直に配置される。
【0038】
いくつかの型の空気乱流ミルが存在する。これらは、一般に、乱流空気粉砕ミルまたはボルテックス空気ミルと呼ばれる。これらのうちのいくつかは、脱水粉砕装置(spin drier and grinder)と称され、他のものは、「気流乾燥粉砕装置」とも称される。脱水粉砕装置および気流乾燥粉砕装置は、基本的に、水分を含む生成物を非常に短時間で乾燥させ、粉砕する。ロータは、一般に、出口に対して垂直に位置付けられる。本発明では、これらの全てを「空気乱流ミル」という概念のもとで使用することを意図している。これらは、より少ないエネルギーを使用すると思われるため、垂直に位置付けられたロータを使用することが好ましい。
【0039】
本発明では、Atritor(Cell Mill)、Hosokawa(Drymeister)、Larsson(Whirl flash)、Jackering(Ultra Rotor)、Rotormill、Gorgens Mahltechnik(TurboRotor)、またはSPXの当技術分野で知られているものなどの空気乱流ミルを、乾燥および粉砕のために使用され得る。このような空気乱流ミルのいくつかは、例えば米国特許第4747550号、国際特許出願第1995/028512号、および同第2015/136070号に記載されている。
空気乱流ミルは、大きい粒子と小さい粒子との分離を引き起こす分級器を備えてもよい。分級機を使用することにより、小さい粒子をさらなる処理のために残し、大きい粒子を粉砕装置に戻すことができる。別の実施形態では、分級機の外に2つの排出口を有することによって、異なる粒径、およびバルク特性を有する2つ以上のグレードの粒状フェザーミールが製造される。
【0040】
乾燥は、高速ロータ内へのガスストリーム(一般に空気であり、酸素中において少なくてもよい)を用いて行われる。入口温度は、一般に約20℃〜500℃、好ましくは約20℃〜450℃、さらにより好ましくは約20℃〜180℃である。温度がより高い端では注意深い処理を必要とすることがあり、かつ/または少ない量の加熱したガスを使用する必要がある場合もある。例えば、高ガス速度が必要な場合には、加熱したガスを約450℃の温度で使用し、第2のガスストリームを室温で使用することが可能となる。
空気の出口温度は、一般に100℃未満、好ましくは90℃未満である。ケラチン系供給物がより高い温度を有する場合、入口ガスの温度は低くてもよい。
【0041】
空気のフローは、一般に供給材料1kg当たり約5m/時間以上、好ましくは供給材料1kg当たり約10m/時間である。一般に、空気の量は、供給材料1kg当たり約50m/時間以下、好ましくは約40m/時間以下である。好適な、最も好ましい量は、例えば供給生成物1kg当たり15〜30m/時間、例えば20〜25m/時間である。
ガスフローは、供給材料と一緒にミルに直接供給することができ、または加水分解されたケラチン系材料は、間接的に1箇所に供給され、ガスストリームは1つまたはいくつかの他の場所で別々に空気乱流ミルに供給される。
【0042】
本発明で使用される空気乱流ミルは、好ましくは、生成物およびガスストリーム用の適切な入口および出口を有する密閉されたチャンバ(ステータ)を備え、垂直に配置されたシャフト(ロータ)には、ブレード、ディスク、プレートなどの多くの切断装置および衝撃装置が備え付けられており、高速で回転する。ステータの内壁は、付加的な摩擦およびせん断力により粉砕効率を高めるために、波形シートが並置されてもよい。
【0043】
ロータは、一般に、約10m/秒以上、より好ましくは約15m/秒以上、さらにより好ましくは約20m/秒以上の先端速度で回転する。一実施形態では、一般に、速度は約50m/秒以下、好ましくは約30m/秒以下である。好適な速度は、例えば約25m/秒である。さらにより好ましい別の実施形態では、先端速度は約150m/秒以下、好ましくは約100m/秒以下、最も好ましくは約75m/秒以下である。一般に、先端速度は約20m/秒以上、好ましくは約30m/秒以上である。
【0044】
粉砕装置は、かなりの熱を発生し得る。さらに、入ってくる水分を含むケラチン系材料は、室温より高い温度であり得る。有用であれば、ガスストリームは、例えばガスバーナーで直接加熱することによって(酸素レベルを低下させ、これにより点火の危険性を低下させる)、または蒸気もしくは熱い油との熱交換による間接加熱によって加熱することができる。
【0045】
空気乱流ミルは、ガスフロー用の1つ以上の入口を備える。これらのガスストリームのうちの1つ以上が加熱されてもよい。1つのガスストリームが加熱される場合には、約50℃以上の温度まで加熱することが好ましい。
【0046】
ガスフローは、異なる方法で導入することができる。一般に、主要なガスストリームは、空気乱流ミルの底部に導入される。この入口は、水を含む生成物入口と同じ入口であってもよい。このような場合、ガスフローは一般に生成物を輸送するために使用される。第2のガスストリームを使用して、ミルの粉砕および流動挙動に影響を与えることができる。特に、生成物をガスフローで輸送することが容易でない場合には、スクリューまたはポンプを介してミルに導入することができる。
【0047】
部分的に加水分解された材料の高消化性を維持するために、空気乱流ミル内における平均滞留時間は、好ましくは短く、例えば10秒未満、好ましくは5秒未満、より好ましくは2秒未満、さらにより好ましくは1秒未満である。ミル中で乾燥させる材料の平均滞留時間が短いことにより、効率的な乾燥が可能となり、ケラチン系材料の温度の比較的わずかな上昇が観察されるのみである。分級機が使用される場合、平均滞留時間は長くなるが、粉体が実際に粉砕装置内にある時間は、好ましくは10秒未満、さらにより好ましくは5秒未満のままである。
【0048】
好ましくは、空気乱流ミルから排出されるケラチン系材料の温度は、約30℃〜90℃の温度範囲、より好ましくは約40℃〜80℃、さらにより好ましくは約45℃〜75℃の温度範囲である。
【0049】
ガスフローは、任意により分級機を介して乾燥生成物とともに空気混入ミルから排出される。小粒子の形態の乾燥生成物は、ガスストリームから分離され、その分離は一般に1つ以上のサイクロン、好ましくは1つのサイクロン、もしくはバッグフィルタ、または両方の組み合わせによって行われる。
【0050】
サイズの大きい、大粒子をスクリーニングするため、かつ/または粉塵を除去するために、例えば水平ふるいなどで、サイクロンから排出されて得られた粉体をさらに分類することが可能である。さらに、より小さい粒径、およびより大きい粒径を有する様々なグレードのフェザーミールを製造することが可能である。
【0051】
ふるいの排除物(大粒の粒子および/または粉塵)は、好ましくは空気乱流ミル中でのさらなる処理のために供給物中に再度導入される。排除物と、水を含む供給材料とを混合すること(「バックミキシング」とも呼ばれる)により、供給操作、ならびに乾燥および粉砕の全体効率を改善することができる。
【0052】
好ましくは、1mm以下、好ましくは800μm以下の分画を有するふるい(または他の分級装置)で分類が行われる。分類は、例えば、300μm、500μm、または900μmの分画を有するふるいで行うことができる。
【0053】
さらに、空気乱流ミルに入る空気のフローは、滞留時間および/または粒径に影響を及ぼすように調節することができる。例えば、空気のフローは、チャンバ内の滞留時間および粉砕装置との接触時間に直接影響を及ぼす。空気のフローが多いほど滞留時間が短くなり、したがって粒子が大きくなり、その逆に、空気のフローが少ないと、粒子が小さくなる。粒径は、分級器の影響をさらに受ける。当業者は、空気乱流ミルを平衡させて、必要に応じた粒径をもたらすことができるであろう。
得られた乾燥ケラチン系材料(フェザーミール)
【0054】
部分的に加水分解されたケラチン系材料は、約10重量%以下の含水量を有する乾燥生成物(一般に、出発ケラチン系材料が羽毛である場合にはフェザーミールと呼ばれる)としてさらに使用される。
乾燥させた材料は、好ましくは8%未満の水分を含む。最も好ましくは、乾燥させた材料は5〜7重量%の含水量を有する。
【0055】
乾燥後の部分的に加水分解された材料は、好ましくは、それぞれ約80%および90%より高い、より好ましくは、それぞれ約82%および92%より高いペプシンおよび回腸消化率を有する。さらにより好ましいペプシン消化率は85%以上である。
【0056】
加水分解ステップにより、実質的に消化率が高くなるが、フェザーミールの大部分は淡水(demi water)には不溶である。一般に、フェザーミールの50重量%以上が不溶性であり、より一般には90重量%以上が不溶性である。
【0057】
空気乱流ミル中での乾燥および粉砕は、材料の色がクリーム色の淡褐色であり、従来の乾燥材料よりも明るく、かつより均質であるというさらなる利点を有する。粉体の色は、例えばCIE−L*a*b色空間による色度計を用いて測定することができる。明るい色は、比較的高い(L)値、任意により比較的高い(b)値と組み合わされることを特徴とする。高(L)値は粉体の明度を示し、高値(b)は明白な黄色を示す。
【0058】
一般に、ケラチン系材料の(L)値は約50以上、好ましくは54以上、より好ましくは約60以上である。
一般に、(b)値は約10以上、好ましくは12以上、より好ましくは約14以上である。
【0059】
(L)および(b)を組み合わせた値は、好ましくは50超の(L)値であり、10超、12超、または14超の(b)値である。(L)および(b)を組み合わせた値は、より好ましくは約54以上の(L)値であり、10超、12超、または14超の(b)値である。(L)および(b)を組み合わせた値は、さらにより好ましくは約60以上の(L)値であり、10超、12超、または14超の(b)値である。
【0060】
本発明に従って使用される加水分解、および乾燥粉砕方法から得られるケラチン系材料は、好ましくは、ペットフードおよび動物用飼料を配合するにあたって粉体が良好な流動特性、包装特性、ならびに良好な投与特性を有するような粉体特性を有する粉体の形態である。
【0061】
フェザーミールなどの消化性ケラチン系粉体材料は、少なくとも17個のアミノ酸、好ましくは少なくとも18個のアミノ酸(システインおよびチロシンなど)を含む。
【0062】
好ましくは、システインの量は、全タンパク質含量に対して約2重量%以上、より好ましくは約3重量%以上、さらにより好ましくは約4〜約5重量%以上である。
【0063】
好ましくは、チロシンの量は、全タンパク質含量に対して約1重量%以上、より好ましくは約1.5重量%以上、さらにより好ましくは約2〜約3重量%以上である。
【0064】
乾燥および粉砕された材料は、一般に、約99重量%を超える粒子が数mmより小さく、例えば約2mmより小さい粒子の形態である。一般に、取り扱いが容易で、例えば配合されたペットフードおよび動物用飼料にさらに加工することができる自由流動性粉体を有するように、約95重量%以上が約8μmより大きい。
【0065】
好ましい実施形態では、標準的なソフトウェアを使用するBeckman Coulter粒度分析器でのレーザー回折によって測定された平均粒径(d50;粒子の体積分率の50%がこの値より大きく、50%がこの値より小さいと定義される)は、約20μm〜約0.7mm、好ましくは約20μm〜約500μm、より好ましくは約50μm〜約300μmである。例えば、平均粒径は約75または約150μmである。
【0066】
d90は、好ましくは約1mm未満、より好ましくは約0.7mm未満である。d10は、好ましくは約10μm以上、より好ましくは約15μm以上である。
【0067】
上記のサイズは非常に有利である。従来のディスク乾燥機で乾燥させた加水分解羽毛は、乾燥機の出口で、平均2mm以上、かなり多くの場合、5mm以上の粒径を有する粗不均質粒径分布を有し、これには、さらに粉砕およびふるい分け装置、従って付加的な接地面積要件、付加的な粉塵の排出を必要とし、一般にはあまり魅力的でないプロセスの設定を行う必要がある。
【0068】
本発明の部分的に加水分解されたケラチン系材料の粒度分布は、比較的均一である。例えば、d90をd10で割った値は約20以下、好ましくは約15以下であり、d90は約1mm以下である。
【0069】
酸化防止剤および/または固化防止剤は、その酸化安定性およびその流動性をそれぞれ改善するために、ケラチン系粉体材料にブレンドすることができる。
【0070】
好ましい実施形態では、酸化防止剤を、乱流ミルの前に添加して、水分を含む供給材料に混合し、均質な取り込みを行い、そのような取り込みが完成した粉体に対して行われた場合の望ましくない斑点および凝集を回避する。
【0071】
本発明の好ましい実施形態では、ケラチン系粉体材料は、約0.2g/cm以上、より好ましくは約0.25g/cm以上、さらにより好ましくは約0.3g/cm以上の注入密度を有する。一般に、注入密度は、例えば約0.55g/cm以下など、約0.6g/cm以下である。
【0072】
本発明のさらに好ましい実施形態では、ケラチン質粉体材料は、約0.25g/cm以上、より好ましくは約0.3g/cm以上、さらにより好ましくは0.35g/cm以上、より好ましくは約0.4g/cm以上、さらにより好ましくは約0.45g/cm以上のタッピングかさ密度を有する。一般に、タップ密度は、例えば、0.65g/cm以下のように、約0.7g/cm以下である。
【0073】
さらなる実施形態では、ケラチン系粉体材料をペレット化して密度を増加させて、体積および輸送コストを最適化することができる。
いくつかのアミノ酸は、乾燥前または乾燥後に、部分的に加水分解されたケラチン系材料に加えることができる。特に、メチオニン、リジン、およびトリプトファンのうちの1つ以上、またはこれらのアミノ酸を比較的に多量に含む消化性タンパク質は、これらのアミノ酸の量がケラチン系材料中で比較的少ないことから、加えることが有用であり得る。
【0074】
乾燥した高消化性ケラチン系材料は、小さい袋、大きい袋、または他のバルク容器に詰めることができる。ケラチン系材料は、あらゆる種類のバルク容器、大きい袋、または他の容器に詰めて、輸送することができる。
【0075】
フェザーミールなどの消化性ケラチン系材料は、ペットフード中および/または養殖飼料中などの飼料として、飼料サプリメントとして使用することができる。この材料は、粉体形態で使用してもよいか、または従来の加工技術を用いて、顆粒、フレークなどの形態のより大きい投与単位に変換してもよい。フェザーミールは、他の成分のための担体として使用することができ、かつ/または増量剤として使用することができる。
【0076】
飼料の調製に使用される場合、本発明に従って製造されたケラチン系材料は、栄養的に許容される担体または増量剤、栄養的に許容される希釈剤、栄養的に許容される賦形剤、栄養的に許容されるアジュバント、または栄養活性成分のうちの1つ以上と共に使用されてもよい。ケラチン系材料は、それ自体が、香味剤、嗜好物質、および誘引物質などの他の機能的成分のための担体または増量剤であり得る。
【0077】
オプションで分級機、サイクロン、および空気供給源を備えた空気乱流ミルは、従来のディスク乾燥機または付帯設備を有する他の従来の乾燥機よりも実質的に少ない空間を占めるので、本発明のプロセスは従来のフェザーミール工場に容易に適用することができる。したがって、本発明はまた、従来の乾燥設備を、空気乱流ミルおよび付帯設備を有するサイクロンに置き換えることによって、フェザーミール工場を改装する方法に関する。
測定方法
【0078】
以下の方法を実施例で使用し、これらは、説明および請求項に記載のパラメータを測定する方法として適している:
【0079】
重量パーセント(重量%)の水分:水分を含むケラチン系材料を、真空ストーブ内にて減圧下で、乾燥剤を用いて一晩乾燥させる。乾燥ステップの前と後に材料を秤量し、すべての揮発性材料が水であると仮定して、初期測定重量を100%として用いて、水分量を計算する。
ケラチン系材料の溶解度は、1gのケラチン系材料を5mlの水に20℃で溶解させることによって決定される。液体の透明度は、人間の目によって判定される。フェザーミールは、ほとんどが水に溶けない。一般に、フェザーミールの50重量%以上が不溶性であり、より一般には90重量%以上が不溶性である。
【0080】
定量試験において、ケラチン系材料の溶解度は以下のように実施され得る:100gのフェザーミールを1000mLの水に混合し、混合物を20℃で15分間撹拌する。混合物を350μmフィルターで加圧濾過する。濾液およびフィルター上の固体を乾燥させ、その重量を測定する。この分析では、材料の含水量を補正する。すなわち、フェザーミールの含水量も同様に測定するものとする。さらに、濾過された水分を含む固形物中に残存している可溶性材料の量を補正する。
【0081】
ペプシン消化率は、前述の基準に従って、塩酸中のペプシン濃度0.02%を用いて、ISO 6655(1997年8月)に従って測定される。
【0082】
回腸消化率(Boisen消化率とも呼ばれる)は、S.Boisen、「Prediction of the apparent ileal digestibility of protein and amino acid in feedstuffs for pigs by in vitro analysis」(Animal Feed Science Technology,51,pp.29−43(1995年))に記載されており、さらに、「In vitro analysis for determining standardized ileal digestibility of protein and amino acids in actual batches of feedstuffs and diets for pigs」(Livestock Science,309:pp.182−185(2007年))に記載されている方法によって測定される。
【0083】
アミノ酸分析、ランチオニンおよび脱カルボキシル化アミノ酸(カダベリン、プトレシン、またはヒスタミンなど)分析は、標準的なHPLC方法で実施される。
【0084】
粒子径分布は、Beckman Coulter(Beckman Coulter)粒度分析器−乾燥粉体システムで、レーザー回折によって測定されてきた。製造業者の標準ソフトウェアを使用した。結果は、体積分率に関係するd10、d50、d90などとして記載している。
【0085】
注入タップ密度は、100mLシリンダー(直径2.5cm)に一定量のフェザーミールを注ぎ、グラム単位で存在するミールの量を測定することによって測定することができる。タッピングは、ビーカーを振動面(0.5mmの垂直振動、毎分240回)に5分間置くことによって行われ、フェザーミールの体積を測定する。注入密度(g/cm)は、フェザーミールの量を100で割った量として計算される。タップ密度は、測定体積で割った同じグラム量である。
色測定は、標準技術に従って、CIE−Labを用いて行う。色度計は、標準ソフトウェアと共に使用した。
【0086】
本発明の精神および範囲から逸脱することなく、本明細書に記載された材料および方法に対して上述したものに加えてさらなる改変を行ってもよい。
【0087】
したがって、特定の実施形態が記載されているが、以下のものは単なる例であり、本発明の範囲を限定するものではない。
実施例
【0088】
7バールおよび飽和蒸気で作動する連続式垂直加水分解装置では、含水率65重量%のニワトリの羽毛を25分間処理した。部分的に加水分解されたケラチン系材料を、レットダウンバルブを介して大気圧にし、繊維状塊は、約55%の水を含有しており、95℃の温度であった。
【0089】
部分的に加水分解された羽毛を2つの異なる空気乱流ミルで乾燥させた。第1の空気乱流ミルの場合、供給物が加水分解装置から直接使用されたために、空気の入口温度は、ほぼ周囲温度であった。第1のミルには分級機が装備されており、約300μm以上の粒子はミルに戻した。生成物の供給は約200kg/時間とし、空気量は4000〜5000m/時間とした。第2セットの実験では、繊維状塊をスクリュープレスで圧縮して水を除去し、30℃未満まで冷却した。部分的に加水分解された羽毛中の残留水分は約45重量%であり、繊維状塊は空気乱流ミルへの供給物としてほぼ周囲温度で使用された。第2の空気乱流ミルは、120℃の温度で入口ガス(空気)を用いて操作した。ガスの量は約15〜30m/時間*kgであった。
【0090】
生成物の平均滞留時間は、第1のミルで約2秒、第2のミルで約1秒と推定された。乾燥および粉砕の間、生成物は約80℃より高い温度には達しなかった。
【0091】
乾燥および粉砕後の粒子の水分は約7%であった。全窒素物質のインビトロペプシン消化率(塩酸中のペプシン濃度0.02%)は85%以上であり、回腸(Boisen)消化率は92%であった。色は均一にクリームから淡褐色であった。
【0092】
得られた粉体は、有用なサイズおよび流動特性を有していた。粉体フェザーミールは、以下の特性によって特徴づけられ得る:
【表1】

(1)Beckman Coulter粒度分析器では、2mmより大きい粒子の測定は行わない。通常のフェザーミールには、このような大きい粒子が含まれるが、これらはこの表に示す結果では無視するものとする。
(2)国際出願2015/014860号に従って製造されたフェザーミール。
【0093】
さらに、いくつかのバッチの生成物についてCIE−Lab(L*a*b*色空間)に従って色測定を行った。(L)は明度を表し、L=0では黒色、L=100では白色である(したがって、(L)の数字が大きいほど、色は明るい)。ミル1は、最も明るい色を有するフェザーミールを製造した。ミル2はまた、従来の乾燥フェザーミールと比較して、また国際出願2015/014860号に従って製造されたフェザーミールと比較して、明るい色のフェザーミールとなった。(a)および(b)は、色測定値(a=赤−緑;b=黄−青;a=0およびb=0はニュートラルな灰色)を表す。このタイプの材料の(b)値が大きい場合は、黄色の色調を示す。(a)の値は一般に非常に低いが、強い色の材料は、4を超える(a)の値を有する。したがって、他のところで説明された(L)および(b)値と組み合わせて、(a)値が約4より低いことが好ましい。より好ましくは、(a)値は3.5未満である。結果を以下の表に示す。
【表2】
【0094】
この表から明らかであるように、空気乱流ミルにより処理し、乾燥させたフェザーミールの絶対色はより明るい。さらに、黄色の色調(b)は実質的に高く、フェザーミールが独特の外観となる。緑色/赤色の色調(a)は、すべての場合において低いが、フェザーミールが比較的暗い場合にはわずかに増加する。したがって、(L)および(b)は、空気乱流ミルで乾燥されたケラチン系材料のクリームがかった明るい色を示す。
実施例2
【0095】
空気乱流ミル(JACKERING、モデルUltra Rotor IIIa)では、前の実施例に記載されているように、約45重量%の残留含水量を有する加水分解された羽毛を供給量200kg/時間で乾燥させ、複数回運転させて粉砕する。空気乱流ミルは、160℃の温度で入口ガス(空気)を用いて操作した。ガスの量は約15〜30m/時間*kgであった。ロータの先端速度は50〜60m/秒であった。
【0096】
生成物の平均滞留時間は約1秒未満と推定された。乾燥および粉砕中、空気乱流ミルの出口での空気の温度が約90℃であったため、生成物は約80℃より高い温度に達しなかったと推定された。生成物を300μmのふるいでスクリーニングし、より小さい画分を下記のようにさらに特徴付けた。1つの試行では、大きい分画(約10〜15重量%)は、空気乱流ミル用の供給物に戻された。この運転は、スムーズに行われた。
【0097】
乾燥および粉砕後の粒子の水分は約6%(一般に5.7〜6.3重量%の間)であった。タンパク質(ケルダール(Kjelahl))の量は約88重量%であった。全窒素物質のインビトロペプシン消化率(塩酸中のペプシン濃度0.02%)は約85%であり、回腸(Boisen)消化率は約90%であった。色は均一にクリーム色であった。
【0098】
得られた粉体は、有用なサイズおよび流動特性を有していた。粉体フェザーミールは、以下の特性(体積%)によって特徴づけられ得る:d10:23μm;d50:70μm、およびd90:153μm。タップ密度は約0.38であった。