特許第6880052号(P6880052)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6880052チーグラー・ナッタ触媒活性を改善するための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6880052
(24)【登録日】2021年5月7日
(45)【発行日】2021年6月2日
(54)【発明の名称】チーグラー・ナッタ触媒活性を改善するための方法
(51)【国際特許分類】
   C08F 4/658 20060101AFI20210524BHJP
   C08F 10/00 20060101ALI20210524BHJP
【FI】
   C08F4/658
   C08F10/00 510
【請求項の数】17
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2018-543670(P2018-543670)
(86)(22)【出願日】2017年2月28日
(65)【公表番号】特表2019-507224(P2019-507224A)
(43)【公表日】2019年3月14日
(86)【国際出願番号】US2017019910
(87)【国際公開番号】WO2017151592
(87)【国際公開日】20170908
【審査請求日】2020年2月18日
(31)【優先権主張番号】62/301,894
(32)【優先日】2016年3月1日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】599168648
【氏名又は名称】ユニベーション・テクノロジーズ・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100128484
【弁理士】
【氏名又は名称】井口 司
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】ケヴィン・ジェイ・キャン
(72)【発明者】
【氏名】マイケル・ディー・アウェ
(72)【発明者】
【氏名】ウェズリー・アール・マリオット
【審査官】 佐藤 貴浩
(56)【参考文献】
【文献】 特開平01−318013(JP,A)
【文献】 特表2013−538899(JP,A)
【文献】 特開平02−199106(JP,A)
【文献】 特開平02−182705(JP,A)
【文献】 特表2003−503562(JP,A)
【文献】 国際公開第2016/016355(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 4/00− 4/82
C08F 6/00−246/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
チーグラー・ナッタ(ZN)触媒の修飾された前駆体組成物を形成する方法であって、
液体有機溶媒中のアルミニウムアルキル化合物での処理のために、少なくとも1つのチタン化合物を含む、前記ZN触媒の前駆体組成物を提供する工程であって前記少なくとも1つのチタン化合物とともに少なくとも1つのマグネシウム化合物を担体材料上に沈殿させる工程を含む、提供工程と、
前記前駆体組成物中の前記少なくとも1つのチタン化合物を、前記液体有機溶媒中の前記アルミニウムアルキル化合物で処理する工程であって、前記アルミニウムアルキル化合物が、前記前駆体組成物中の前記少なくとも1つのチタン化合物を前記ZN触媒の修飾された状態へと変換する、処理工程と、
前記前駆体組成物中の前記少なくとも1つのチタン化合物を前記前駆体組成物から前記修飾された状態へと変換する上で消費されない前記液体有機溶媒中の前記アルミニウムアルキル化合物の少なくとも一部分を除去して、前記ZN触媒の前記修飾された前駆体組成物を形成する工程と、を含み
前記少なくとも1つのチタン化合物とともに前記少なくとも1つのマグネシウム化合物を前記担体材料上に沈殿させる工程が、
3:1〜5:1(少なくとも1つのマグネシウム化合物のモル:少なくとも1つのチタン化合物のモル)のモル比の前記少なくとも1つのマグネシウム化合物及び前記少なくとも1つのチタン化合物を、テトラヒドロフラン中に溶解して、マグネシウム化合物/チタン化合物溶液を形成する工程と、
前記担体材料を、前記マグネシウム化合物/チタン化合物溶液中に混合する工程と、
前記テトラヒドロフランを除去して、前記ZN触媒の前記前駆体組成物を形成する工程と、を含む、方法。
【請求項2】
前記アルミニウムアルキルが、トリ−n−ヘキシルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、ジエチルアルミニウムクロリド、トリメチルアルミニウム、ジメチルアルミニウムクロリド、メチルアルミニウムジクロリド、トリイソブチルアルミニウム、トリ−n−ブチルアルミニウム、ジイソブチルアルミニウムクロリド、イソブチルアルミニウムジクロリド、(C)AlCl、(CO)AlCl、(C)AlCl、(CO)AlCl、(C12O)AlCl、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記アルミニウムアルキルが、トリ−n−ヘキシルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、ジエチルアルミニウムクロリド、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記除去ステップの後、前記修飾された前駆体組成物を乾燥させて、前記ZN触媒の前記修飾された前駆体組成物から前記液体有機溶媒を除去する工程を更に含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記前駆体組成物中の前記少なくとも1つのチタン化合物を前記アルミニウムアルキル化合物で処理する工程が、1:1〜10:1の範囲内の前記アルミニウムアルキル化合物対前記少なくとも1つのチタン化合物のモル比を提供する工程含む、請求項1〜のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記前駆体組成物中の前記少なくとも1つのチタン化合物を前記アルミニウムアルキル化合物で処理する工程が、4:1〜8:1の範囲内の前記アルミニウムアルキル化合物対前記少なくとも1つのチタン化合物のモル比を提供する工程含む、請求項1〜のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記前駆体組成物中の前記少なくとも1つのチタン化合物を前記アルミニウムアルキル化合物で処理する工程が、0.2:1〜1:1の範囲内の前記アルミニウムアルキル化合物対テトラヒドロフランのモル比を提供する工程含む、請求項1〜のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記液体有機溶媒が、イソペンタン、ヘキサン、ヘプタン、トルエン、キシレン、ナフサ(naptha)、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1〜のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記液体有機溶媒が、脂肪族鉱物油である、請求項1〜のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記前駆体組成物中の前記少なくとも1つのチタン化合物を前記修飾された状態へと変換する上で消費されない前記アルミニウムアルキル化合物の前記部分を、追加の前駆体組成物中の少なくとも1つのチタン化合物を処理する上で使用するために再利用する工程を更に含む、請求項1〜のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記少なくとも1つのチタン化合物が、式、Ti(OR)を有し、式中、Rが、C1−C14脂肪族炭化水素部分、C1−C14芳香族炭化水素部分、及びCOR’(式中、R’が、C1−C14脂肪族もしくは芳香族炭化水素部分である)からなる群から選択され、Xが、Cl、Br、I、及びこれらの組み合わせからなる群から選択され、aが、0、1、及び2からなる群から選択され、bが、1〜4(境界値を含む)の整数であり、a+b=3もしくは4である請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記少なくとも1つのチタン化合物が、TiCl、TiCl、Ti(OCH)Cl、Ti(OC)Cl、Ti(OCOCH)Cl、及びTi(OCOCH5)Clからなる群から選択される請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記少なくとも1つのマグネシウム化合物が、式、MgXを有し、式中、Xが、Cl、Br、I、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される請求項1〜12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記少なくとも1つのマグネシウム化合物が、MgCl、MgBr、及びMgIからなる群から選択される請求項1〜12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記担体材料が、非多孔性シリカ支持体である請求項1〜12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記ZN触媒の前記修飾された前駆体組成物から前記液体有機溶媒を除去する工程を更に含む、請求項1〜15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記前駆体組成物中の前記少なくとも1つのチタン化合物を変換する上で消費されない前記液体有機溶媒中の前記アルミニウムアルキル化合物の少なくとも一部分を除去する工程が、前記液体有機溶媒中の前記アルミニウムアルキル化合物をヒドロキシル基で中和する工程を含む、請求項1〜15のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は一般に、チーグラー・ナッタ触媒に関し、特にチーグラー・ナッタ触媒の活性を改善するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
チーグラー・ナッタ(ZN)触媒は、少なくとも2つの部分、つまり、遷移金属化合物及び典型金属アルキル化合物からなる。遷移金属化合物は通常、チタンまたはバナジウムである。典型金属アルキル化合物は通常、アルミニウムアルキルである。一般的な慣例において、チタン構成要素は「触媒」と呼ばれ、アルミニウムアルキルは「共触媒」と呼ばれる。
【0003】
これに関して、アルミニウムアルキルは、ZN触媒において様々な役割を果たすと考えられている。例えば、アルミニウムアルキルは、ZN触媒の活性中心の形成においてアルキル化剤及び還元剤として作用すると考えられている。アルミニウムアルキルはまた、ZN触媒の活性においても役割を果たす。ZN触媒の活性の改善は、費用削減をもたらすことができる。例えば、触媒活性の改善は、触媒生産性の改善をもたらすことができる。触媒の生産性、つまり、触媒1グラム当たりで生成されるポリマーの量は通常、ポリオレフィン産業における新たな商業的発展を創出することも破壊することもできる、重要な経済的要因である。触媒の活性を改善することができれば、経済的利益がそれに続くだろう。
【0004】
ポリマー容積密度の増加は、より長い触媒滞留時間、反応器処理量の増加、及びより良好な反応器操作性を可能にする別の重要な特徴である。いくつかのZN触媒で行われるポリマー容積密度の改善は、触媒を重合反応器に供給する前に、触媒をアルミニウムアルキルで部分的に修飾することによって達成することができる。場合によっては、触媒活性は、このステップ中に減衰することがある。
【0005】
上記の考察を考慮して、ポリマー容積密度を改善しながら、ZN触媒の活性を改善または維持することに対する必要性が存在する。
【発明の概要】
【0006】
本開示は、チーグラー・ナッタ(ZN)触媒の活性を改善するための方法を提供する。具体的には、ZN触媒の部分的な修飾中に過剰なアルミニウムアルキルを除去することが、修飾されたZN触媒の保管中の喪失などの活性の喪失の軽減に役立つことが発見されている。この目的を達成するために、本開示は、液体有機溶媒中のアルミニウムアルキル化合物での処理のために、ZN触媒の前駆体組成物を提供することを含む、ZN触媒の修飾された前駆体組成物を形成する方法を提供する。ZN触媒の前駆体組成物は、液体有機溶媒中のアルミニウムアルキル化合物で処理される、少なくとも1つのチタン化合物を含む。アルミニウムアルキル化合物は、前駆体組成物中の少なくとも1つのチタン化合物をZN触媒の修飾された前駆体組成物へと変換する。その後、前駆体組成物中の少なくとも1つのチタン化合物を前駆体組成物から修飾された状態へと変換する上で消費されない液体有機溶媒中のアルミニウムアルキル化合物の少なくとも一部分及び反応副生成物化合物を除去して、本開示のZN触媒の修飾された前駆体組成物を形成する。
【0007】
前駆体組成物を提供することは、少なくとも1つのチタン化合物を担体材料上に沈殿(または含浸)させることを含む。少なくとも1つのチタン化合物は、式、Ti(OR)aXを有し、式中、Rは、C1−C14脂肪族炭化水素部分、C1−C14芳香族炭化水素部分、及びCOR’(式中、R’は、C1−C14脂肪族または芳香族炭化水素部分である)からなる群から選択され、Xは、Cl、Br、I、及びこれらの組み合わせからなる群から選択され、aは、0、1、及び2からなる群から選択され、bは、1〜4(境界値を含む)の整数であり、a+b=3または4である。少なくとも1つのチタン化合物は、TiCl、TiCl、Ti(OCH)Cl、Ti(OC)Cl、Ti(OCOCH)Cl、及びTi(OCOC)Clからなる群から選択される。
【0008】
本開示は、少なくとも1つのチタン化合物とともに少なくとも1つのマグネシウム化合物を担体材料上に沈殿(または含浸)させることを更に含む。少なくとも1つのマグネシウム化合物は、式、MgXを有し、式中、Xは、Cl、Br、I、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される。少なくとも1つのマグネシウム化合物は、MgCl、MgBr、及びMgIからなる群から選択される。少なくとも1つのチタン化合物とともに少なくとも1つのマグネシウム化合物を担体材料上に沈殿させることは、3:1〜5:1(少なくとも1つのマグネシウム化合物のモル:少なくとも1つのチタン化合物のモル)のモル比の少なくとも1つのマグネシウム化合物及び少なくとも1つのチタン化合物を、テトラヒドロフラン中に溶解して、マグネシウム化合物/チタン化合物溶液を形成すること、担体材料を、マグネシウム化合物/チタン化合物溶液中に混合すること、ならびにテトラヒドロフランを除去して、ZN触媒の前駆体組成物を形成することである。前駆体組成物は、8〜35重量パーセント(重量%)のテトラヒドロフラン(THF)を含有してもよく、重量%は、前駆体組成物の総重量に基づく。
【0009】
本開示では、アルミニウムアルキルは、トリ−n−ヘキシルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、ジエチルアルミニウムクロリド、トリメチルアルミニウム、ジメチルアルミニウムクロリド、メチルアルミニウムジクロリド、トリイソブチルアルミニウム、トリ−n−ブチルアルミニウム、ジイソブチルアルミニウムクロリド、イソブチルアルミニウムジクロリド、(C)AlCl、(CO)AlCl、(C)AlCl、(CO)AlCl、(C12O)AlCl、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される。特定の一実施形態において、アルミニウムアルキルは、トリ−n−ヘキシルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、ジエチルアルミニウムクロリド、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される。アルミニウムアルキルは、前駆体組成物中の少なくとも1つのチタン化合物を処理する上で、別個にまたは混合物として添加されてもよい。
【0010】
前駆体組成物中の少なくとも1つのチタン化合物をアルミニウムアルキル化合物で変換することは、1:1〜10:1の範囲内のアルミニウムアルキル化合物対少なくとも1つのチタン化合物のモル比を提供することを含む。前駆体組成物中の少なくとも1つのチタン化合物をアルミニウムアルキル化合物で変換することはまた、0.2:1〜1:1の範囲内のアルミニウムアルキル化合物対THFのモル比を提供することも含み得る。液体有機溶媒は、イソペンタン、ヘキサン、ヘプタン、トルエン、キシレン、ナフサ(naptha)、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される。追加の一実施形態において、液体有機溶媒は、脂肪族鉱物油である。
【0011】
除去ステップは、前駆体組成物中の少なくとも1つのチタン化合物をZN触媒の修飾された前駆体組成物へと変換する上で消費されないアルミニウムアルキル化合物の少なくとも一部分を含有する液体有機溶媒と、反応副生成物化合物とを分離する。除去後、前駆体組成物中の少なくとも1つのチタン化合物を修飾された状態へと変換する上で消費されないアルミニウムアルキル化合物の部分は、追加の前駆体組成物中の少なくとも1つのチタン化合物を処理する上で使用するために再利用することができる。
【0012】
その後、ZN触媒の修飾された前駆体組成物を乾燥させて、ZN触媒の修飾された前駆体組成物中のいかなる残りの液体有機溶媒も除去することができる。その後、ZN触媒の修飾された前駆体組成物を使用しても、使用のために保管してもよく、そのような保管は、所望される場合、脂肪族鉱物油中または不活性環境中であってもよい。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本開示は、チーグラー・ナッタ(ZN)触媒の活性を改善するための方法を提供する。具体的には、ZN触媒の部分的な修飾中に過剰なアルミニウムアルキルを除去することが、ZN触媒の修飾された前駆体組成物の保管中の喪失などの活性の喪失の軽減に役立つことが発見されている。本明細書で考察されるように、アルミニウムアルキルは、ZN触媒の修飾された前駆体組成物を形成する上で過剰量で使用される。修飾された前駆体組成物の調製中、未希釈でまたは液体有機溶媒中の溶液として、アルミニウムアルキルがZN触媒前駆体に添加されて、スラリーが形成される。液体有機溶媒は、スラリーを乾燥させることによって除去されて、ZN触媒の修飾された前駆体組成物が生成される。
【0014】
しかしながら、この時点までは、スラリー中に存在する過剰のアルミニウムアルキルは除去されないが、代わりに修飾されたZN触媒の細孔内及び/または表面上に蓄積されていた。この過剰のアルミニウムアルキルを修飾されたZN触媒上に蓄積させることが、修飾されたZN触媒においてある程度の「エイジング」をもたらす可能性があり、ただ保管されているだけでさえ、経時的に修飾されたZN触媒が徐々に活性を喪失することが発見されている。本開示は、ZN触媒の修飾された前駆体組成物の最終乾燥前に、過剰のアルミニウムアルキルを除去することによって、経時的なこの活性喪失を軽減することができることを発見している。
【0015】
本明細書で使用される場合、別段明記されない限り、単数形の「1つの(a)」、「1つの(an)」、及び「その」は、複数の参照対象を含む。例えば、本明細書で考察されるように、アルミニウムアルキル化合物は、ZN触媒の修飾された前駆体組成物を形成する方法において使用されるは、アルミニウムアルキル化合物のうちの2つ以上の使用を含む。
【0016】
本明細書における、特定の族に属する元素または金属への参照は、CRC Press,Inc.,1989によって発行され、著作権取得された元素周期表を参照する。また、族(複数可)へのいかなる参照も、族の番号付けのためのIUPACシステムを使用するこの元素周期表に反映される族(複数可)へのものとする。
【0017】
本開示のZN触媒の修飾された前駆体組成物は、遷移金属化合物として少なくともチタン及び共触媒としてアルミニウムアルキルを含む、支持された触媒である。ZN触媒の修飾された前駆体組成物は、まず担体材料を提供することによって形成される。本明細書で考察されるように、担体材料は、多孔性シリカ支持体または非多孔性シリカ支持体のいずれかであってもよい。本開示において使用される多孔性シリカ支持体及び非多孔性シリカ支持体はともに、互いに構造的及び化学的に異なるため、各々は、前駆体組成物を形成するために異なる方法で処理される。例えば、担体材料が多孔性シリカ支持体である場合、それを高温で乾燥させて、水、及び担体材料の表面上の反応性基の少なくとも一部分の両方を除去することができる。そのような反応性基としては、ヒドロキシル基及びシラノール基が挙げられるが、これらに限定されない。例として、多孔性シリカ支持体のそのような乾燥ステップは、600℃で1〜4時間行うことができる。
【0018】
乾燥させた多孔性シリカ支持体は、有機アルミニウム化合物で処理され、有機アルミニウム化合物は、多孔性シリカ支持体の表面上の残りの反応性基の少なくともいくつかと反応する。例えば、乾燥させた多孔性シリカ支持体は、残りの反応性基の少なくともいくつかと反応するトリエチルアルミニウム(TEAL)で処理されてもよい。この反応は、液体有機溶媒(例えば、イソペンタンまたはヘキサン)中、乾燥させた多孔性シリカ支持体をTEALでスラリー化することによって行われる。その後、液体有機溶媒を多孔性シリカ支持体から分離し、多孔性シリカ支持体を乾燥させて、シリカ上TEALまたは「TOS」と称され得る乾燥粉末の形態の担体材料を得る。
【0019】
代替的な一実施形態において、非多孔性シリカ支持体は、担体材料として使用することができる。非多孔性シリカ支持体の例としては、分岐鎖へと融合されたミクロン未満のサイズの球から形成されるヒュームドシリカが挙げられる。非多孔性シリカ支持体上に存在するヒドロキシル基は、化学的にキャッピングされていてもよい。そのような非多孔性シリカ支持体の一例としては、Cabot Corporationによって製造されるCAB−O−SIL(登録商標)TS−610が挙げられる。
【0020】
その後、遷移金属化合物を電子供与体化合物中で溶液にし、担体材料を添加し、その後、電子供与体化合物を蒸発させて、遷移金属化合物を担体材料上に沈殿させることによって、遷移金属化合物が担体材料に添加される。例えば、TiCl及びMgClなどの遷移金属化合物は、テトラヒドロフラン(THF)中に溶解することができる。この溶液を担体材料に添加し、その後、THFを蒸発させて、遷移金属化合物を担体材料の細孔内及び/または表面に沈殿させる。一般に、電子供与体化合物は、担体材料を少なくとも60℃の温度で乾燥させ、それにより遷移金属化合物(例えば、少なくとも1つのチタン化合物)を担体材料上に沈殿させることによって、除去される。結果として得られる構造は、少なくとも1つのチタン化合物を含む「前駆体」組成物として知られている。少なくとも1つのチタン化合物に加えて、ZN触媒の前駆体組成物は、マグネシウム化合物を更に含んでもよい。
【0021】
ZN触媒の前駆体組成物は、液体有機溶媒中のアルミニウムアルキル化合物で処理される。ZN触媒の前駆体組成物は、本明細書に提供されるアルミニウムアルキル化合物のうちの1つ以上で処理されてもよい。所望される場合、前駆体組成物を処理する上で、アルミニウムアルキル化合物のうちの2つ以上を連続的または同時に使用することが可能である。例えば、前駆体触媒は、ジエチルアルミニウムクロリド(DEAC)及びトリ−n−ヘキシルアルミニウム(TnHAl)が添加されるイソペンタンまたはヘキサン中でスラリー化することができる。前駆体組成物中の少なくとも1つのチタン化合物を、液体有機溶媒中のアルミニウムアルキル化合物で処理することは、前駆体組成物中の少なくとも1つのチタン化合物をZN触媒の修飾された前駆体組成物へと変換する。
【0022】
本明細書で考察されるように、前駆体組成物中の少なくとも1つのチタン化合物を処理する上で、過剰のアルミニウムアルキル化合物が使用される。前駆体組成物中の少なくとも1つのチタン化合物を処理した後、前駆体組成物中の少なくとも1つのチタン化合物を修飾された状態へと変換する上で消費されないアルミニウムアルキル化合物の部分及び液体有機溶媒中の反応副生成物化合物を前駆体組成物から除去して、ZN触媒の修飾された前駆体組成物を形成する。この除去ステップは、ZN触媒の修飾された前駆体組成物を形成する上で消費されないアルミニウムアルキル化合物の少なくとも一部分及び反応副生成物化合物を除去することにより、触媒活性喪失の軽減に役立つ。
【0023】
除去ステップの後、ZN触媒の修飾された前駆体組成物を乾燥させてもよい。必要に応じて、ZN触媒の修飾された前駆体組成物とともに追加の共触媒を使用して、ZN触媒を完全に活性化してもよく、ここで、共触媒は反応器に別個に添加されてもよい。
【0024】
本開示のZN触媒において用いることができる担体材料は一般に、2μm(ミクロン)〜100μm(ミクロン)の範囲内の粒径分布、及び20μm(ミクロン)〜50μm(ミクロン)の範囲内の粒径中央値を有する。特定の例示的な実施形態において、担体材料は、2μm(ミクロン)〜80μm(ミクロン)の範囲内の粒径分布を有する。担体材料は、30μm(ミクロン)〜50μm(ミクロン)の範囲内、及び特定の例示的な実施形態において35〜45μm(ミクロン)の範囲内の粒径中央値を有する。担体材料は、粒子のうちの10%以下が10μm(ミクロン)未満の粒径を有し、かつ粒子のうちの10%以下が50μm(ミクロン)超の粒径を有する粒径分布を有してもよい。特定の例示的な実施形態において、担体材料は、粒子のうちの10%以下が12μm(ミクロン)未満の粒径を有し、かつ粒子のうちの8%以下が50μm(ミクロン)超の粒径を有する粒径分布を有してもよい。そのような担体材料が1グラム当たり200平方メートル〜1グラム当たり800平方メートル、及び特定の例示的な実施形態において1グラム当たり200平方メートル〜1グラム当たり350平方メートルの表面積を有することもまた、望ましくあり得る。
【0025】
担体材料は一般に、乾燥している、つまり、吸収された水を含まないべきである。担体材料の乾燥は一般に、それを少なくとも600℃の温度で加熱することによって実行される。
【0026】
本明細書で考察される実施形態について、担体材料は、非多孔性であっても、多孔性シリカ支持体であってもよい。例えば、多孔性シリカ支持体の平均細孔体積は、1.4ml/グラム〜3.5ml/グラの範囲であり得る。非多孔性シリカ支持体はまた、ZN触媒の前駆体組成物を形成する上でも使用することができ、本明細書で考察されるように、非多孔性シリカを電子供与体化合物中の遷移金属化合物と組み合わせ、その後噴霧乾燥して、ZN触媒の前駆体組成物を形成する。
【0027】
本明細書で言及されるように、本開示のZN触媒の前駆体組成物を形成するために使用される遷移金属化合物は、少なくとも1つのチタン化合物を含み得る。一般に、チタン化合物は、式、
Ti(OR)
を有し、式中、
Rは、C−C14脂肪族もしくは芳香族炭化水素部分、またはCOR’(式中、R’は、C−C14脂肪族もしくは芳香族炭化水素部分である)であり、
Xは、Cl、Br、I、及びこれらの組み合わせからなる群から選択され、
aは、0、1、または2であり、
bは、1〜4(境界値を含む)の整数であり、
a+b=3または4である。
【0028】
チタン化合物は個々に本開示の触媒中に存在しても、またはチタン化合物はこれらの組み合わせ中に存在してもよい。好適なチタン化合物の一覧としては、TiCl、TiCl、Ti(OCH)Cl、Ti(OC)Cl、Ti(OCOCH)Cl、及びTi(OCOC)Clが挙げられる。
【0029】
本開示のZN触媒の前駆体組成物を形成するために使用される遷移金属化合物はまた、少なくとも1つのマグネシウム化合物を含み得る。様々な実施形態について、少なくとも1つのマグネシウム化合物は、少なくとも1つのチタン化合物とともに担体材料上に沈殿され得る。一般に、マグネシウム化合物は、式、
MgX
を有し、式中、Xは、Cl、Br、I、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0030】
そのようなマグネシウム化合物は個々に本開示のZN触媒の前駆体組成物中に存在しても、またはマグネシウム化合物はこれらの組み合わせ中に存在してもよい。好適なマグネシウム化合物の一覧としては、MgCl、MgBr、及びMgIが挙げられる。本開示の特定の例示的な実施形態において、マグネシウム化合物は、無水MgClであり得る。
【0031】
前駆体組成物は、20℃から最大で電子供与体化合物の沸点の範囲内の温度で、チタン化合物及びマグネシウム化合物を電子供与体化合物中に溶解することによって形成することができる。チタン化合物は、マグネシウム化合物の添加前もしくは後、またはそれと同時に電子供与体化合物に添加することができる。チタン化合物及びマグネシウム化合物の溶解は、電子供与体化合物中のこれら2つの化合物を撹拌することによって、及びいくつかの例において還流することによって、促進することができる。
【0032】
一般に、マグネシウム化合物及びチタン化合物は、所望されるモル比で電子供与体化合物中に溶解される。例えば、マグネシウム化合物及びチタン化合物を、テトラヒドロフラン中で、3:1〜5:1(少なくとも1つのマグネシウム化合物のモル:少なくとも1つのチタン化合物のモル)のモル比で電子供与体化合物中に溶解して、マグネシウム化合物/チタン化合物溶液を形成することができる。担体材料を、マグネシウム化合物/チタン化合物溶液と混合し、その後、電子供与体化合物(例えば、テトラヒドロフラン)を除去して、ZN触媒の前駆体組成物を形成する。
【0033】
ZN触媒の前駆体組成物について、マグネシウム化合物は、1モルのチタン化合物当たり0.5〜56モルのマグネシウム化合物の範囲内の量で存在してもよい。本開示の特定の例示的な実施形態において、マグネシウム化合物は、1モルのチタン化合物当たり1.5〜11モルのマグネシウム化合物の範囲内の量で本開示の触媒中に存在してもよい。本開示の特定の例示的な実施形態において、マグネシウム化合物は、1モルのチタン化合物当たり1.5〜7モルのマグネシウム化合物の範囲内の量で本開示の触媒中に存在してもよい。一般に、チタン化合物及びマグネシウム化合物は、本明細書に記載されるように、電子供与体化合物中でのそれらの溶解を促進する形態で使用することができる。
【0034】
前駆体組成物は、チタン化合物及びマグネシウム化合物が溶解した後、電子供与体化合物を除去して(例えば、乾燥させて)、前駆体組成物を担体材料上に沈殿させることによって、単離することができる。前駆体組成物は、一般に2〜100μm(ミクロン)の範囲内の平均粒径を有する微細な流動性粒子の形態で単離することができる。
【0035】
上記の手順に従って調製された場合、前駆体組成物は、式、
MgTi(OR)[ED]
を有し、式中、
1.EDは、電子供与体化合物であり、
2.mは、≧0.5〜≦56、及び特定の例示的な実施形態において≧1.5〜≦11であり、
3.nは、0、1、または2であり、
4.pは、≧2〜≦116、及び特定の例示的な実施形態において≧6〜≦14であり、
5.qは、≧2〜≦85、及び特定の例示的な実施形態において≧3〜≦10であり、
6.Rは、C−C14脂肪族もしくは芳香族炭化水素部分、またはCOR’(式中、R’は、C−C14脂肪族もしくは芳香族炭化水素部分である)であり、
7.Xは、Cl、Br、I、及びこれらの組み合わせからなる群から選択され、
8.元素チタン(Ti)の添字は、アラビア数字の1である。
【0036】
その後、前駆体組成物は、1重量部の担体材料中、0.003〜2部、及び特定の例示的な実施形態において0.1〜0.33部の前駆体組成物の重量比で含浸され得る。前駆体組成物はまた、1対2の重量比で含浸されてもよい。
【0037】
電子供与体化合物は一般に、25℃で液体であり、かつチタン化合物及びマグネシウム化合物の両方を溶解することが可能であり得る任意の有機化合物であり得る。好適な電子供与体化合物の一覧としては、脂肪族及び芳香族カルボン酸のアルキルエステル、脂肪族エーテル、環状エーテル、ならびに脂肪族ケトンなどの化合物が挙げられる。特定の実施形態において、好適な電子供与体化合物は、C−C飽和脂肪族カルボン酸のアルキルエステル、C−C芳香族カルボン酸のアルキルエステル、C−C、及び好ましくはC−C脂肪族エーテル、C−C環状エーテル、及び特定の実施形態においてC環状モノエーテルまたはジエーテル、C−C、及び特定の実施形態においてC−C脂肪族ケトンであり得る。特定の例示的な実施形態において、電子供与体化合物は、数ある中でも、ギ酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、エチルエーテル、ヘキシルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、アセトン、またはメチルイソブチルケトンであり得る。
【0038】
電子供与体化合物は個々に本開示の触媒中に存在しても、またはそれらはこれらの組み合わせ中に存在してもよい。一般に、電子供与体化合物は、1モルのチタン化合物当たり2〜85モルの電子供与体化合物の範囲内で存在してもよい。特定の実施形態において、電子供与体化合物は、1モルのチタン化合物当たり3〜10モルの電子供与体化合物の範囲内の量で本開示の触媒中に存在してもよい。前駆体組成物は、8〜35重量パーセント(重量%)の電子供与体化合物(THFなど)を含有してもよく、重量%は、前駆体組成物の総重量に基づく。
【0039】
その後、担体材料を少なくとも60℃の温度で乾燥させ、それにより少なくとも1つのチタン化合物及びマグネシウム化合物(存在する場合)を担体材料上に沈殿させることによって、電子供与体化合物が除去されて、ZN触媒の前駆体組成物が形成される。
【0040】
既に考察されたように、非多孔性シリカは、担体材料として使用することができ、非多孔性シリカを電子供与体化合物中の遷移金属化合物と組み合わせ、その後噴霧乾燥して、ZN触媒の前駆体組成物を形成する。本明細書で考察されるように、例えば、非多孔性ヒュームドシリカを、マグネシウム化合物/チタン化合物溶液と混合してもよい。例えば、窒素雰囲気(<5ppmのHO)中、約70℃の温度で混合物を撹拌し、反応させてもよい。電子供与体化合物(例えば、テトラヒドロフラン)を噴霧乾燥プロセスによって除去して、ZN触媒の前駆体組成物を形成する。そのような噴霧乾燥プロセスの一例としては、回転式アトマイザーを備えた閉サイクル噴霧乾燥機が挙げられる。そのようなプロセスのための非多孔性ヒュームドシリカの一例としては、0.1μm〜1μmの範囲内の粒径を有するもの(Cabot Corporation製造のCAB−O−SIL(登録商標)TS−610など)が挙げられる。
【0041】
上記に考察されたように、ZN触媒の前駆体組成物は、液体有機溶媒中のアルミニウムアルキル化合物で処理される。前駆体組成物を処理する上で、アルミニウムアルキル化合物のうちの2つ以上を連続的または同時に使用することが可能である場合、ZN触媒の前駆体組成物は、本明細書に提供されるアルミニウムアルキル化合物のうちの1つ以上で処理されてもよい。
【0042】
液体有機溶媒は、非極性であり、かつ前駆体組成物ではなくアルミニウムアルキルを溶解することができるべきである。アルミニウムアルキルを溶解するために用いることができる液体炭化水素溶媒の中には、イソペンタン、ヘキサン、ヘプタン、トルエン、キシレン、ナフサ、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される液体有機溶媒がある。他の液体有機溶媒は、Kaydol(商標)及びHydrobrite(商標)550などの脂肪族鉱物油を含んでもよく、そのような脂肪族鉱物油は、非多孔性シリカ支持体で形成されるZN触媒の前駆体組成物で有用である。
【0043】
アルミニウムアルキル化合物は、前駆体組成物の部分修飾剤として作用し、アルミニウムアルキル化合物は、本開示のZN触媒の修飾された前駆体組成物の形成に役立つ。アルミニウムアルキル化合物(部分修飾剤化合物)は一般に、式、
Al(R”)X’
を有し、式中、
X’は、ClまたはOR”’
(R”及びR”’は同じであっても異なっていてもよく、かつC−C14飽和炭化水素部分である)であり、
dは、0〜1.5であり、
eは、1または0であり、
c+d+e=3である。
【0044】
そのようなアルミニウムアルキル化合物は個々に本開示のZN触媒の修飾された前駆体組成物中に存在しても、またはそれらはこれらの組み合わせ中に存在してもよい。好適なアルミニウムアルキル化合物の一覧としては、トリ−n−ヘキシルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、ジエチルアルミニウムクロリド、トリメチルアルミニウム、ジメチルアルミニウムクロリド、メチルアルミニウムジクロリド、トリイソブチルアルミニウム、トリ−n−ブチルアルミニウム、ジイソブチルアルミニウムクロリド、イソブチルアルミニウムジクロリド、(C)AlCl、(CO)AlCl、(C)AlCl、(CO)AlCl、(C12O)AlCl、及びこれらの組み合わせからなる群から選択されるものが挙げられる。好ましくは、アルミニウムアルキルは、トリ−n−ヘキシルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、ジエチルアルミニウムクロリド、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される。本明細書で考察されるように、部分修飾剤化合物のうちの2つ以上が使用される場合、部分修飾剤化合物は、別個に及び/または混合物として添加されてもよい。上記に提供されるものに対応する臭素化合物及びヨウ素化合物を使用して、前駆体組成物を修飾することも可能である。
【0045】
一般に、アルミニウムアルキル化合物は、0:1超〜10:1(アルミニウムアルキル化合物のモル:Tiのモル)、及び特定の例示的な実施形態において4:1〜8:1(アルミニウムアルキル化合物のモル:Tiのモル)のアルミニウムアルキル化合物対Tiのモル比を有する本開示のZN触媒の修飾された前駆体組成物中に存在してもよい。前駆体組成物中の少なくとも1つのチタン化合物をアルミニウムアルキル化合物で変換することはまた、0.2:1〜1:1の範囲内のアルミニウムアルキル化合物対THF(すなわち、Alのモル:THFのモル)のモル比を提供することも含み得る。2つ以上のアルミニウムアルキルが使用される場合、各々が同じTHFに対するモル比を有しても、その独自の個々のTHFに対するモル比を有してもよい。例えば、第1のアルミニウムアルキル化合物は、0.2:1のTHFとのモル比を有してもよい一方で、第2のアルミニウムアルキル化合物は、0.5:1のTHFとのモル割当を有してもよい。
【0046】
前駆体組成物中の少なくとも1つのチタン化合物を処理した後、前駆体組成物中の少なくとも1つのチタン化合物を修飾された状態へと変換する上で消費されないアルミニウムアルキル化合物の部分及び液体有機溶媒中の反応副生成物化合物を前駆体組成物から除去して、ZN触媒の修飾された前駆体組成物を形成する。除去ステップは、前駆体組成物中の少なくとも1つのチタン化合物を変換する上で消費されないアルミニウムアルキル化合物の部分及び反応副生成物化合物を含有する液体有機溶媒から、ZN触媒の修飾された前駆体組成物を分離することを可能にする既知の濾過及び/または傾瀉技術を使用して達成することができる。除去ステップ中または除去ステップ後のいずれかに、アルミニウムアルキル化合物または前駆体組成物中のチタン化合物の変換中に形成された反応副生成物化合物を含有しない液体有機溶媒で、ZN触媒の修飾された前駆体組成物を濯ぐことも可能である。換言すると、除去ステップ中または除去ステップ後のいずれかに、新鮮な液体有機溶媒で、ZN触媒の修飾された前駆体組成物を濯ぐことが可能である。
【0047】
追加の一実施形態において、除去ステップはまた、前駆体組成物中の少なくとも1つのチタン化合物を修飾された状態へと変換する上で消費されないアルミニウムアルキル化合物及び/または液体有機溶媒中の反応副生成物化合物を中和することを含み得る。例えば、ヒドロキシル基などの反応性基を有する化合物を使用して、前駆体組成物中の少なくとも1つのチタン化合物を修飾された状態へと変換する上で消費されないアルミニウムアルキル化合物と反応させ、それを中和してもよい。そのような化合物の一例としては、反応に利用可能なヒドロキシル基を有するシリカを挙げることができる。他の反応性化合物の使用もまた可能であり、そのような反応性基はチタン化合物とは反応も干渉もしない。
【0048】
本開示はまた、前駆体組成物中の少なくとも1つのチタン化合物を修飾された状態へと変換する上で消費されないアルミニウムアルキル化合物の部分を、追加の前駆体組成物中の少なくとも1つのチタン化合物を処理する上で使用するために再利用することも更に含む。これは、ZN触媒の修飾された前駆体組成物を形成する上での更なる費用削減及び効率の実現を可能にする。
【0049】
その後、除去ステップの後、ZN触媒の修飾された前駆体組成物を乾燥させて、ZN触媒の修飾された前駆体組成物から残りの液体有機溶媒を除去することができる。乾燥ステップは、20℃〜80℃、及び特定の例示的な実施形態において50℃〜70℃の温度で行うことができる。
【0050】
結果として得られるZN触媒の修飾された前駆体組成物は、流動性固体微粒子状材料であり、その後、これを使用しても、使用のために保管してもよく、そのような保管は、所望される場合、脂肪族鉱物油中または不活性環境中(乾燥窒素ガスまたはアルゴンガス下など)であってもよい。
【0051】
使用される場合、ZN触媒の修飾された前駆体組成物は、重合反応器に供給されてもよく、活性化は、ZN触媒の修飾された前駆体組成物を形成する上で使用される化合物と同じであっても異なっていてもよい追加の活性化剤化合物で完了され得る。活性化中、アルミニウムアルキル化合物は、1モルのチタン化合物当たり1〜400モルのアルミニウムアルキル化合物の範囲内の量で本開示のZN触媒の修飾された前駆体組成物中に存在してもよい。例えば、ZN触媒の修飾された前駆体組成物の活性化は、1:1〜60:1の範囲内のアルミニウムアルキル化合物対少なくとも1つのチタン化合物のモル比を提供することを含み得る。
【0052】
特定の例示的な実施形態において、追加の活性化剤化合物及びZN触媒の修飾された前駆体組成物は任意で、別個の供給ラインを通して反応器に供給されてもよい。特定のそのような実施形態において、追加の活性化剤化合物は、希釈されていない形態(「未希釈」)または液体有機溶媒(例えば、イソペンタン、ヘキサン、もしくは鉱物油)中の追加の活性化剤化合物の溶液の形態のいずれかで、反応器中に噴霧されてもよい。そのような溶液は、2〜30重量パーセントの活性化剤化合物を含有し得る。特定のそのような実施形態において、追加の活性化剤化合物は、活性化されたZN触媒の前駆体組成物とともに供給される活性化剤化合物及びチタン化合物の量とともに、10:1〜400:1、及び特定の例示的な実施形態において15:1〜60:1の反応器中の総Al対Tiのモル比(Alのモル:Tiのモル)を提供するような量で、反応器に添加することができる。反応器に添加される活性化剤化合物の追加の量は、反応器中でZN触媒の修飾された前駆体組成物と反応し、その活性化を完了することができる。
【0053】
本開示のZN触媒は、重合プロセスにおいて使用することができる。重合プロセスは、気相プロセス(流体床プロセスなど)において、かつ実質的に触媒毒(例えば、水分、酸素、CO、CO、及びアセチレン)の不在下で、重合反応を開始するのに十分な温度及び圧力で、モノマー(複数可)流を触媒有効量の活性化されたZN触媒と接触させることによって実行することができる。コモノマーもまた、重合プロセス中に使用することができる。そのようなコモノマーの例としては、本開示のZN触媒でポリマーを形成する上でモノマー(例えば、エチルレン)と共重合され得る、1つ以上のC−Cコモノマーが挙げられる。
【0054】
本開示の活性化されたZN触媒を使用して、様々なポリマーを生成物として生成することができる。本開示のZN触媒で調製され得るポリマーとしては特に、主要モルパーセント(例えば、≧90%)のエチレン及び少数モルパーセント(例えば、≦10%)の1つ以上のC−Cアルファオレフィンを含むコポリマーが挙げられる。一般に、C−Cアルファオレフィンは、第4の炭素原子よりも二重結合に近くあり得るそれらの炭素原子のいずれにも、いかなる分岐も含有しない。好適なC−Cアルファオレフィンの例としては、プロピレン、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1,4−メチルペンテン−1、ヘプテン−1、及びオクテン−1が挙げられる。本開示の特定の例示的な実施形態において、C−Cアルファオレフィンは、プロピレン、ブテン−1、ヘキセン−1,4−メチルペンテン−1、及びオクテン−1を含み得る。
【実施例】
【0055】
以下の節において、アラビア数字は、本開示の実施例(Ex)を指示し、大文字は比較例(CEx)を指示する。別段記述されない限り、本明細書で使用される全ての化合物及び試薬は、SIGMA−ALDRICHから取得し、供給時の状態で使用した。
【0056】
前駆体組成物の調製
実施例において使用される前駆体組成物を、欧州特許明細書第EP1891125号(その全体が参照により本明細書に組み込まれる)に記載されるように調製した。
【0057】
比較例(CEx)
前駆体組成物調製物の総重量に基づいて、約15重量%のテトラヒドロフラン(THF)を含有する4.0gの前駆体組成物調製物を、撹拌しながら35mlのヘキサン中に懸濁する。3.8mmolのジエチルアルミニウムクロリド(DEAC)(0.62Mのヘキサン溶液として)を、この懸濁液に添加する。懸濁液を周囲温度(約23℃)で30分間撹拌させ、その後、1.6mmolのトリ−n−ヘキシルアルミニウム(TnHAl)(1Mのヘキサン溶液として)を添加する。懸濁液を更に30分間撹拌させてから、触媒を真空下で乾燥させて、揮発物を除去する。
【0058】
イソブタン(500mL)を希釈剤として使用して、1Lのオートクレーブ反応器中で研究室スラリー重合を実行する。反応器を、昇温(100℃)、窒素パージ下で完全に乾燥させ、約40℃まで冷却してから、希釈剤及び1−ヘキセンコモノマー(10mL)を充填する。水素(1500mL)及びエチレン(150psi)を反応器中に充填する。約50対1のモル比のAl/Ti(触媒由来のTi)で、トリエチルアルミニウム(TEAL)を共触媒として使用する。
【0059】
特定の量の触媒を反応器中に導入し(以下、表1)、反応器内部温度を85℃で維持する。要求に応じてエチレンを供給して、所与の反応器圧力を維持する。実験の終結時、反応器を冷却し、通気する。反応器の内容物を皿に移動させる。いかなる残留揮発物も蒸発させてから、最終ポリマー重量を決定する。調製直後、ならびに1日間、2日間、及び9日間エイジングさせた後に、比較例A(CEx A)の触媒を研究室スラリーバッチ反応器中で評価する。
【0060】
本発明の実施例(Ex)
比較例A用に調製したもののように、しかし以下の変更をもって、本発明の実施例用の触媒を調製する。前駆体組成物調製物の総重量に基づいて、約15重量%のテトラヒドロフラン(THF)を含有する4.0gの前駆体組成物調製物を、撹拌しながら35mlのヘキサン中に懸濁する。3.8mmolのジエチルアルミニウムクロリド(DEAC)(0.62Mのヘキサン溶液として)を、この懸濁液に添加する。懸濁液を周囲温度(約23℃)で30分間撹拌させ、その後、1.6mmolのトリ−n−ヘキシルアルミニウム(TnHAl)(1Mのヘキサン溶液として)を添加する。懸濁液を更に30分間撹拌させる。撹拌を停止し、固体を沈殿させる。懸濁液から上清を傾瀉し、ヘキサンを残りの固体に添加する。短時間混合し、固体を沈殿させ、その後、上清を傾瀉する。この洗浄プロセスをもう一度繰り返し、その後、結果として得られる固体を真空下で乾燥させて、いかなる残りの揮発物も除去する。傾瀉−洗浄ステップは、部分活性化ステップから、いかなる副生成物ならびに/または未反応のアルミニウムアルキル化合物(TnHAl及びDEAC)も除去する役割を果たす。あるいは、固体を濾過し、洗浄して、類似の最終結果を達成する。
【0061】
スラリーバッチ反応器実行:調製直後、ならびに1日間及び6日間エイジングさせた後に、本発明の実施例1の触媒を研究室スラリーバッチ反応器中で評価する。
【0062】
【表1】
【0063】
表1に見られるように、Ex1の触媒は、6日間のエイジング後でさえその初期活性を維持し、これは、9日間の過程を通じてその初期活性の約40%を喪失したCEx Aとは異なった。
本願発明には以下の態様が含まれる。
項1.
チーグラー・ナッタ(ZN)触媒の修飾された前駆体組成物を形成する方法であって、
液体有機溶媒中のアルミニウムアルキル化合物での処理のために、少なくとも1つのチタン化合物を含む、前記ZN触媒の前駆体組成物を提供することと、
前記前駆体組成物中の前記少なくとも1つのチタン化合物を、前記液体有機溶媒中の前記アルミニウムアルキル化合物で処理することであって、前記アルミニウムアルキル化合物が、前記前駆体組成物中の前記少なくとも1つのチタン化合物を前記ZN触媒の修飾された状態へと変換する、処理することと、
前記前駆体組成物中の前記少なくとも1つのチタン化合物を前記前駆体組成物から前記修飾された状態へと変換する上で消費されない前記液体有機溶媒中の前記アルミニウムアルキル化合物の少なくとも一部分及び反応副生成物化合物を除去して、前記ZN触媒の前記修飾された前駆体組成物を形成することと、を含む、方法。
項2.
前記アルミニウムアルキルが、トリ−n−ヘキシルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、ジエチルアルミニウムクロリド、トリメチルアルミニウム、ジメチルアルミニウムクロリド、メチルアルミニウムジクロリド、トリイソブチルアルミニウム、トリ−n−ブチルアルミニウム、ジイソブチルアルミニウムクロリド、イソブチルアルミニウムジクロリド、(C)AlCl、(CO)AlCl、(C)AlCl、(CO)AlCl、(C12O)AlCl、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、項1に記載の方法。
項3.
前記アルミニウムアルキルが、トリ−n−ヘキシルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、ジエチルアルミニウムクロリド、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、項1に記載の方法。
項4.
前記除去ステップの後、前記修飾された前駆体組成物を乾燥させて、前記ZN触媒の前記修飾された前駆体組成物から前記液体有機溶媒を除去することを更に含む、項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
項5.
前記前駆体組成物中の前記少なくとも1つのチタン化合物を前記アルミニウムアルキル化合物で処理することが、1:1〜10:1の範囲内の前記アルミニウムアルキル化合物対前記少なくとも1つのチタン化合物のモル比を提供することを含む、項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
項6.
前記前駆体組成物中の前記少なくとも1つのチタン化合物を前記アルミニウムアルキル化合物で処理することが、4:1〜8:1の範囲内の前記アルミニウムアルキル化合物対前記少なくとも1つのチタン化合物のモル比を提供することを含む、項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
項7.
前記前駆体組成物中の前記少なくとも1つのチタン化合物を前記アルミニウムアルキル化合物で処理することが、0.2:1〜1:1の範囲内の前記アルミニウムアルキル化合物対テトラヒドロフランのモル比を提供することを含む、項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
項8.
前記液体有機溶媒が、イソペンタン、ヘキサン、ヘプタン、トルエン、キシレン、ナフサ(naptha)、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
項9.
前記液体有機溶媒が、脂肪族鉱物油である、項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
項10.
前記前駆体組成物中の前記少なくとも1つのチタン化合物を前記修飾された状態へと変換する上で消費されない前記アルミニウムアルキル化合物の前記部分を、追加の前駆体組成物中の少なくとも1つのチタン化合物を処理する上で使用するために再利用することを更に含む、項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
項11.
前記前駆体組成物を提供することが、少なくとも1つのチタン化合物を担体材料上に沈殿させることを含む、項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
項12.
前記少なくとも1つのチタン化合物が、式、Ti(OR)aXを有し、式中、Rが、C1−C14脂肪族炭化水素部分、C1−C14芳香族炭化水素部分、及びCOR’(式中、R’が、C1−C14脂肪族または芳香族炭化水素部分である)からなる群から選択され、Xが、Cl、Br、I、及びこれらの組み合わせからなる群から選択され、aが、0、1、及び2からなる群から選択され、bが、1〜4(境界値を含む)の整数であり、a+b=3または4である、項11に記載の方法。
項13.
前記少なくとも1つのチタン化合物が、TiCl、TiCl、Ti(OCH)Cl、Ti(OC)Cl、Ti(OCOCH)Cl、及びTi(OCOCH5)Clからなる群から選択される、項11または12に記載の方法。
項14.
前記少なくとも1つのチタン化合物とともに少なくとも1つのマグネシウム化合物を前記担体材料上に沈殿させることを更に含む、項11に記載の方法。
項15.
前記少なくとも1つのマグネシウム化合物が、式、MgXを有し、式中、Xが、Cl、Br、I、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、項14に記載の方法。
項16.
前記少なくとも1つのマグネシウム化合物が、MgCl、MgBr、及びMgIからなる群から選択される、項15に記載の方法。
項17.
前記少なくとも1つのチタン化合物とともに前記少なくとも1つのマグネシウム化合物を前記担体材料上に沈殿させることが、
3:1〜5:1(前記少なくとも1つのマグネシウム化合物のモル:少なくとも1つのチタン化合物のモル)のモル比の前記少なくとも1つのマグネシウム化合物及び前記少なくとも1つのチタン化合物を、テトラヒドロフラン中に溶解して、マグネシウム化合物/チタン化合物溶液を形成することと、
前記担体材料を、前記マグネシウム化合物/チタン化合物溶液中に混合することと、
前記テトラヒドロフランを除去して、前記ZN触媒の前記前駆体組成物を形成することと、を含む、項12に記載の方法。
項18.
前記担体材料が、非多孔性シリカ支持体である、項11〜17のいずれか1項に記載の方法。
項19.
前記ZN触媒の前記修飾された前駆体組成物から前記液体有機溶媒を除去することを更に含む、項1〜18のいずれか1項に記載の方法。
項20.
前記前駆体組成物中の前記少なくとも1つのチタン化合物を変換する上で消費されない前記液体有機溶媒中の前記アルミニウムアルキル化合物の少なくとも一部分及び反応副生成物化合物を除去することが、前記液体有機溶媒中の前記アルミニウムアルキル化合物をヒドロキシル基で中和することを含む、項1〜19のいずれか1項に記載の方法。