(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6880053
(24)【登録日】2021年5月7日
(45)【発行日】2021年6月2日
(54)【発明の名称】製品の温度のリバースモデリングのシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
G01K 1/20 20060101AFI20210524BHJP
G01K 1/022 20210101ALI20210524BHJP
G01K 3/04 20060101ALI20210524BHJP
B65G 61/00 20060101ALN20210524BHJP
【FI】
G01K1/20
G01K1/022
G01K3/04
!B65G61/00 520
【請求項の数】6
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2018-545611(P2018-545611)
(86)(22)【出願日】2017年2月28日
(65)【公表番号】特表2019-512680(P2019-512680A)
(43)【公表日】2019年5月16日
(86)【国際出願番号】US2017020005
(87)【国際公開番号】WO2017151656
(87)【国際公開日】20170908
【審査請求日】2020年2月17日
(31)【優先権主張番号】62/301,964
(32)【優先日】2016年3月1日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】591003493
【氏名又は名称】キャリア コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】CARRIER CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【弁理士】
【氏名又は名称】富岡 潔
(72)【発明者】
【氏名】チャーネフ,ジョナサン
【審査官】
細見 斉子
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2008/093282(WO,A2)
【文献】
特開2005−140693(JP,A)
【文献】
特開2015−036323(JP,A)
【文献】
特開2002−183215(JP,A)
【文献】
独国特許出願公開第102005003562(DE,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2004/0243353(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2016/0196527(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2016/0216028(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2007/0276619(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01K 1/20, 1/022
G01K 3/04
B65G 61/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
輸送用筐体内で輸送される製品の温度履歴を推定する方法であって、
(a)前記製品が最終的な目的地に到達したときの実際の温度を、前記製品の実際の到着時の温度として測定することと、
(b)輸送時間に亘って前記輸送用筐体内で測定された周辺温度データを取得することと、
(c)前記輸送用筐体の前記周辺温度データにある程度基づいて推定される製品の温度履歴を備えた複数の推定された輸送温度データを作成することであって、各々が、推定される到着時の製品温度値を含む、複数の推定された輸送温度データを作成することと、
(d)前記推定される到着時の製品温度値と、前記製品の前記実際の到着時の温度との差が、温度閾値の範囲内にあるかどうかを判定し、そのような範囲内にある前記推定される到着時の製品温度値を、前記推定される製品の温度履歴のうちどれが生成したかを判定することと、
(e)前記ステップ(d)に応答して、輸送時間に亘る製品の推定される温度履歴を提供するように、前記複数の推定された輸送温度データの一つを選択することと、
を備えた方法。
【請求項2】
ステップ(a)は、元の場所以外の目的地に到達したときに前記製品の前記実際の温度を測定することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ステップ(c)は、前記製品の熱容量および熱伝導率の少なくとも一方を求めることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記温度閾値は調節可能である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
輸送用筐体内で輸送される製品の温度履歴を推定するためのシステムであって、
ネットワークと、
前記ネットワークと通信し、輸送時間に亘って前記輸送用筐体内で測定された周辺温度データを取得するように構成された第1のデータ記録装置と、
前記ネットワークと通信し、前記製品が最終的な目的地に到達したときの実際の温度を、前記製品の実際の到着時の温度として測定するように構成された第2のデータ記録装置と、
前記ネットワークと通信するリモートコンピューティングデバイスであって、前記輸送用筐体の前記周辺温度データにある程度基づいて推定される製品の温度履歴を備えた複数の推定された輸送温度データを作成するように構成され、前記複数の推定された輸送温度データの各々は、推定される到着時の製品温度値を含む、リモートコンピューティングデバイスと、
を備え、
前記リモートコンピューティングデバイスは、さらに、前記推定される到着時の製品温度値の各々と、前記製品の前記実際の到着時の温度との差が、温度閾値の範囲内にあるかどうかを判定し、その判定に応答して、輸送時間に亘る製品の推定される温度履歴を提供するように、前記複数の推定された輸送温度データのうちどれを選択するかを判定するように構成される、システム。
【請求項6】
前記温度閾値は調節可能である、請求項5に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2016年3月1日に出願した米国特許出願番号62/301,964号の優先権を主張する国際特許出願であり、その米国特許出願は、その全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
開示される実施形態は一般に、温度のモデル化に関し、より詳細には、製品の温度のリバースモデリングのシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0003】
冷凍製品などの多くの製品は、温度要件を有する。温度計を製品自体の中に置く、または製品自体と接触させるには、時間と金銭の両方の点において法外に費用がかかる場合がある。したがって温度測定は、周りを取り巻く周辺空気から取得するのが典型的である。しかしながら周辺空気の温度の測定は、実際に所望される情報、すなわち製品の温度の代わりをするには不十分な場合がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
さらに、食品の積み荷を容認する、または拒絶するプロセスは、温度プローブを介して製品の温度を取得する作業を伴うが、その作業単独では、製品の考えられる温度履歴を示すことはない。したがって、積み荷が容認されるべきか、または拒絶されるべきかを判定するために製品の温度をモデル化する改良された方法に対する要望が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一態様において、輸送用筐体内で輸送される製品の温度履歴を推定する方法が提供される。方法は、製品の実際の終了温度を測定することと、輸送用筐体の周辺温度データを取得することと、輸送用筐体の周辺空気温度データにある程度基づいて複数の模擬トリップを作成し、この複数の模擬トリップの各々は、推定される終了製品温度値を含むことと、推定される終了製品温度値と、製品の実際の終了温度との差が、温度閾値の範囲内にあるかどうか判定することとを含む。一実施形態において、温度閾値は調節可能である。
【0006】
一実施形態において、製品の実際の温度を測定することは、元の場所以外の目的地に到達したときに製品の実際の温度を測定することを含む。一実施形態において、輸送用筐体の周辺温度データを取得することは、トリップの継続時間にわたって輸送用筐体の中で周辺空気温度データを測定することを含む。一実施形態において、輸送用筐体の周辺空気温度データにある程度基づいて複数の模擬トリップを作成することは、製品の熱質量及び熱伝導率の少なくとも一方を求めることを含む。
【0007】
一態様において、輸送用コンテナ内で輸送される製品の温度履歴を推定するためのシステムが提供される。システムは、ネットワークと、ネットワークと通信し、輸送用筐体の周辺温度データを取得するように構成された第1のデータ記録装置と、ネットワークと通信するリモートコンピューティングデバイスであって、輸送用筐体の周辺空気温度データにある程度基づいて複数の模擬トリップを作成するように構成され、前記複数の模擬トリップの各々は、推定される終了製品温度値を含むリモートコンピューティングデバイスとを含む。
【0008】
一実施形態において、システムはさらに、ネットワークと通信する第2のデータ記録装置を含み、第2のデータ記録装置は、製品の実際の温度を測定するように構成される。システムの一実施形態において、リモートコンピューティングデバイスは、推定される終了製品温度値と、製品の実際の温度との差が、温度閾値の範囲内にあるかどうかを判定するようにさらに構成される。一実施形態において、温度閾値は調節可能である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本開示の一実施形態によるモデリングシステムの概略図である。
【
図2】本開示の一実施形態による製品温度を逆方向にモデル化するための方法の概略的なフロー図である。
【
図3】本開示の一実施形態による製品温度のリバースモデルを描くグラフである。
【
図4】本開示の一実施形態による製品温度のリバースモデルを描くグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本開示の原理の理解を促す目的で、次に図面に示される実施形態を参照されたく、同じものを描写するのに特有の言語が使用される。それでもやはり、本開示の範囲の限定はこれによって全く意図されないことが理解されよう。
【0011】
図1は、10で全体的に示される、製品温度測定システムの一実施形態を概略的に示す。示される実施形態において、システム10は、リモートコンピューティングデバイス14および第1のデータ記録装置16と通信するネットワーク12を含む。リモートコンピューティングデバイス14は、有線または無線接続を介して、第1のデータ記録装置16と直接通信し得ることを理解されたい。
【0012】
データ記録装置16は、取り込みエンジン18と、計算エンジン20と、インターフェースエンジン22と、データベース24と、電線28を介して取り込みエンジン18と通信可能に接続された第1の温度測定装置26とを含む。第1の温度測定装置26は、当分野で既知の任意の手段を介して、例えば無線式にデータ記録装置16に通信可能に接続され得ることを理解されたい。データ記録装置16は、1つの非制限的な例を挙げると、例えば冷凍トラックなどの輸送用筐体(図示せず)の中の周辺空気温度を測定するように構成される。示される実施形態において、第1の温度測定装置26は、輸送用筐体内で製品コンテナ36の上に置かれる。第1の温度測定装置26は、中の周辺空気温度を測定するのに適した輸送用筐体の中のいかなる場所にも配置され得ることを理解されたい。
【0013】
システム10はさらに、ネットワーク12と通信する第2のデータ記録装置30を含む。第2のデータ記録装置30は、第2の温度測定装置32を含んでおり、製品コンテナ36の中に保管され、その中で輸送される製品34の実際の温度を測定するように構成される。第2のデータ記録装置30は典型的には、輸送用筐体の経路に沿った場所のうちの1つまたは複数に配置される。リモートコンピューティングデバイス14は、有線または無線接続を介して第2のデータ記録装置30と直接通信し得ることを理解されたい。システム10は、本明細書に記載される方法にある程度基づいて製品コンテナ36内に保管され、その中で輸送される製品34の温度履歴を推定するように構成される。
【0014】
図2は、輸送用筐体の中に保管され、その中で輸送される製品34の温度履歴を推定する方法を例示しており、方法は全体的に100で示される。方法100は、製品34の実際の温度を測定するステップ102を含む。一実施形態において、製品34の実際の温度を測定することは、元の場所以外の目的地に到着したとき製品34の実際の温度を測定することを含む。
図1を参照すると、製品34の輸送の目的地、例えば最終目的地に到達すると、ユーザは、第2のデータ記録装置30の第2の温度測定装置32を利用して製品34の温度を測定してよい。
【0015】
方法100はさらに、輸送用筐体の周辺温度データを取得するステップ104を含む。一実施形態において、ステップ104は、第1のデータ記録装置16を操作して、トリップの継続時間にわたって輸送用筐体の中で周辺空気温度データを測定することを含む。
【0016】
方法100はさらに、輸送用筐体の周辺空気温度データにある程度基づいて複数の模擬トリップを作成するステップ106を含んでおり、複数の模擬トリップの各々は、推定される終了製品温度値を含む。一実施形態において、ステップ106はさらに、製品34の熱質量、熱伝導率及び熱特性の少なくとも1つを求めることを含む。例えば、ユーザは、リモートコンピューティングデバイス14を操作して、輸送される製品34の種類、いくつかの非制限的な例を挙げると、例えば特定の種類の肉、生鮮食品、アイスクリームなどを選択してよい。リモートコンピューティングデバイス14は、製品34の熱質量及び/または熱伝導率及び/または他の熱特性をメモリに記憶する、またはネットワーク12からダウンロードしてよい。
【0017】
方法100はさらに、推定される終了製品温度値と、製品34の実際の温度との差が、温度閾値の範囲内にあるかどうかを判定するステップ108を含む。一実施形態において、温度閾値は調節可能である。
【0018】
一つの例を通してみると、単に例示の目的で、製品34がその元の場所を出る前にユーザは、第1のデータ記録装置16を操作して、輸送用筐体の中の周辺空気温度データの収集を開始する。このトリップの継続時間の間、第1のデータ記録装置16は、輸送用筐体の中の周辺空気温度を測定し記録する。ひとたび製品34が所望される目的地に到達すると、別のユーザが第1のデータ記録装置16を操作して、このトリップの継続時間にわたる周辺空気温度データをネットワーク12を介してリモートコンピューティングデバイス14に伝達する。
【0019】
一実施形態において、ひとたびリモートコンピューティングデバイス14が第1のデータ記録装置16からの周辺空気温度データと、到着時の製品34の実際の温度を受信すると、リモートコンピューティングデバイス14は、模擬トリップを開始するために、推定される開始製品温度値を選択する。推定される開始製品温度値に基づいて、リモートコンピューティングデバイス14は、以下の計算を利用して、製品と、周辺空気との推定される温度差を生成する。
【0020】
ΔT
n+1=k(A
n−T
n)
この場合、A
nは、所与の時間における周辺空気温度値であり、T
nは、所与の時間における製品の推定される温度であり、kは、製品34の熱伝導率及び/または熱質量である。
【0021】
複数の模擬トリップ38の一例が
図3に示される。グラフのx軸40は時間であり、y軸42は、華氏(°F)での製品34の推定される温度である。製品34の温度履歴を推定するために、単に例示の目的で、リモートコンピューティングデバイス14はまず、例えばおおよそ80°F(地点44で示される)などの推定される開始製品温度値を選択する。熱伝導率及び熱質量値kがおおよそ0.0375と仮定すると、リモートコンピューティングデバイス14は、次の時間間隔(すなわちt
1)において、ライン46によって示される周辺空気温度値と、推定される開始製品温度値との差を取得する。
【0022】
示される例において、地点48で示される、時間t
1における周辺空気温度値は、おおよそ39°Fである。したがってリモートコンピューティングデバイス14は、その後、時間t
2における製品34の温度差がおおよそ−1.5375°Fであると推定し、結果として、おおよそ78.4625°Fの、時間t
2における推定される製品温度が得られる。リモートコンピューティングデバイス14は、推定される終了製品温度(例えばおおよそ80°Fの開始温度の場合おおよそ63°F)が求められるまで、そのトリップの継続時間全てに相当する時間にわたって継続して製品34の温度を推定する。
【0023】
製品34の実際の温度が、トリップの終わりにおおよそ44°Fと測定され、温度閾値が、±1°Fとして確立されたならば、リモートコンピューティングデバイス14は、どの模擬トリップがおおよそ44°F±1°Fの推定される終了製品温度を生成するかを判定する。
図4に示されるように、リモートコンピューティングデバイスは、模擬トリップ52が、おおよそ44°F±1°Fの推定される終了製品温度を生み出すことを判定する。したがって、ユーザは、模擬トリップ38’を調べて、トリップの持続時間にわたって製品34の温度履歴を推定してよい。
【0024】
したがって、現行のシステム10及び方法100によって、ユーザが、周辺空気温度データと、最終的な目的地に到達したときの製品34の実際の温度とを利用することによって製品34の温度履歴を推定することを可能にし、これによりユーザに価値ある情報を提供し、ユーザが、製品34の温度履歴に基づいて製品の容認または拒否のより優れた判断を行うことを可能にすることを理解されたい。
【0025】
本開示は、図面及び上述の記載に例示され詳細に記載されてきたが、これは、例示とみなすべきであり、性質を制限するものではなく、特定の実施形態のみが示され記載されてきたが、本開示の趣旨の範囲内にある全ての変更形態及び修正形態が保護されることが望まれることを理解されたい。