【課題を解決するための手段】
【0005】
この目的のために、第1の態様において、本発明は、硬い歯組織の表面を空気研磨するための組成物であって、少なくとも、
・硬い歯組織を研磨するための研磨性の第1の粉末;
・ゲル化剤の第2の粉末;及び
・歯科処理剤の第3の粉末;
を含む。
【0006】
用語「硬い歯組織」は、エナメル質、象牙質及びセメント質を包含するために使用される。
【0007】
本発明の組成物は、第1に、硬い歯組織の空気研磨処理を行う役割を果たし、そして、第2に、ゲル化性の第2の粉末の存在のために、処理剤を含む活性ゲルを形成して、処理された歯に対して、長期の作用、特に治療作用が働くことを可能にする点で顕著である。より正確には、以下でより詳細に説明するように、本発明の組成物は、処理される組織から比較的短い距離でエアーポリッシャーによって噴射されたときに、所望の研磨を行う役割を果たし、そして、エアーポリッシャーを処理された歯から遠ざけられときに、本発明の組成物は、活性ゲルを形成する役割を果たす。したがって、本発明の組成物によって、単一の組成物及び単一の空気研磨ツールによって、2つの連続した作用を果たすことが可能であり、第1の作用は、硬い歯組織を研磨することであり、第2の作用は、形成された活性ゲル中に存在する処理剤により歯組織を処理することである。形成された活性ゲルは、硬い歯組織及び/又は軟らかい歯組織を処理する役割を果たすことができる。活性ゲルの形成は、歯科処理剤が比較的長時間作用することを可能にするのに有利である。したがって、本発明の組成物は、有利なことに、従来の歯科空気研磨処理を、ゲルを付着させることにより行うことができる任意のタイプの歯科処理と関連させることによって、従来の歯科空気研磨処理を大幅に機能化させることを可能にするが、処理をより複雑にせず、また、処理に必要な時間を長くしない。
【0008】
ゲル化剤は、有機化合物であることができる。変形例では、ゲル化剤は、無機化合物であることができる。
【0009】
一実施形態において、ゲル化剤は、ポロキサマー、カルボマー、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、海藻抽出物、果実抽出物、ゼラチン、植物種子ガム、植物滲出物、セルロース又はセルロース誘導体、微生物滲出物、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、クレー、及びそれらの混合物から選択することができる。
【0010】
ポロキサマー型のゲル化剤は、ポリエチレングリコール(PEG)−ポリプロピレングリコール(PPG)−ポリエチレングリコールブロックを有するコポリマーであることができる。
【0011】
例として、海藻抽出物型のゲル化剤は、寒天、カラギーナン、アルジネート、アルギン酸、又はフルセレランから選択することができる。例として、アルジネート型のゲル化剤は、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸カリウム、アルギン酸アンモニウム、アルギン酸カルシウム、又はプロパン−1,2−ジオールアルジネートから選択することができる。
【0012】
例として、果実抽出物型のゲル化剤はペクチンであることができる。
【0013】
例として、植物種子ガム型のゲル化剤は、イナゴマメガム、グアーガム、又はオート麦ガムから選択することができる。
【0014】
例として、植物滲出物型のゲル化剤は、アラビアガム、カラヤガム、又はトラガカントガムから選択することができる。
【0015】
例として、セルロース誘導体型のゲル化剤は、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルエチルセルロース、又はカルボキシメチルセルロースから選択することができる。
【0016】
例として、微生物滲出物型のゲル化剤は、キサンタンガム又はジェランガムから選択することができる。
【0017】
例として、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル型のゲル化剤は、ポリオキシエチレンステアレートであることができる。
【0018】
例として、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル型のゲル化剤は、ポリオキシエチレン−20−ソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレン−20−ソルビタンモノオレエート、ポリオキシエチレン−20−ソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレン−20−ソルビタンモノステアレート、又はポリオキシエチレン−20−ソルビタントリステアレートから選択することができる。
【0019】
例として、クレー型のゲル化剤は、カオリン、アルミノケイ酸マグネシウム、ベントナイト、又はヘクトライトから選択することができる。
【0020】
好ましくは、ゲル化剤は、ポロキサマー、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カラギーナン、及びそれらの混合物から選択される。
【0021】
一実施形態において、第2の粉末は、組成物中に、0.5%〜80%の範囲内、例えば0.5%〜50%の範囲内にある質量含有量で存在することができる。
【0022】
一実施形態において、第2の粉末の粒子の平均粒度は、0.5マイクロメートル(μm)〜400μmの範囲内にあることができる。
【0023】
特に断らない限り、用語「平均粒度」は、D50として知られている、母集団の中間の統計学的粒度分布によって与えられる寸法を指すために使用される。
【0024】
第1の粉末の研磨性粒子は、1以上、好ましくは1〜5の範囲内、より好ましくは1〜3の範囲内にあるモーススケールでの硬度を示すことができる。
【0025】
一実施形態において、第1の粉末は、炭酸水素ナトリウム、炭酸カルシウム、グリシン、シリケート、シリカ、水酸化ケイ素、炭化ケイ素、粉末軽石、ダイヤモンド粉末、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、又はこれらの化合物の混合物を含むことができる。
【0026】
第1の粉末は、有機粒子の粉末であることができ、この粒子は水溶性であることができる。好ましくは、第1の粉末は、炭酸水素ナトリウム、炭酸カルシウム、グリシン、又はかかる化合物の混合物を含むことができる。
【0027】
一実施形態において、第1の粉末は、15%〜98%の範囲内、例えば50%〜98%の範囲内にある質量含有量で組成物中に存在することができる。
【0028】
一実施形態において、第1の粉末の平均粒度は5μm〜500μmの範囲内にあることができる。
【0029】
好ましくは、歯科処理剤は治療剤であることができる。
【0030】
治療剤は、殺菌剤、抗炎症剤、麻酔剤、脱感作剤、再石灰化剤、収斂剤、又はかかる薬剤の混合物であることができる。
【0031】
好ましくは、脱感作剤は、フッ化ナトリウム、硝酸カリウム、シュウ酸、フッ化錫、又はそれらの混合物から選択することができる。
【0032】
好ましくは、再石灰化剤は、リン酸カルシウム、塩化カルシウム、硝酸カルシウム、リン酸ナトリウム、リン酸三カルシウム、ケイ酸三カルシウム、ハイドロキシアパタイト、シリケートガラス、又はそれらの混合物から選択することができる。
【0033】
好ましくは、殺菌剤は、クロルヘキシジンクロロハイドレート、クロルヘキシジンジクロロハイドレート、グルコン酸クロルヘキシジン、ジグルコン酸クロルヘキシジン、次亜塩素酸ナトリウム、第4級アンモニウム、ヨウ素誘導体、及びそれらの混合物から選択することができる。
【0034】
好ましくは、抗炎症剤は、ブトホルム、酢酸プレドニゾロン、β−グリチルレチン酸、非ステロイド系抗炎症剤、及びそれらの混合物から選択することができる。
【0035】
好ましくは、麻酔剤は、リドカインクロロハイドレートから選択することができる。
【0036】
好ましくは、収斂剤は、塩化アルミニウムから選択することができる。
【0037】
変形例では、歯科処理剤は、着色剤、例えば蛍光着色剤であることができる。例として、着色剤は、蛍光増白剤であることができる。例として、歯科処理剤は、したがって、ナトリウムフルオレセイン、ブリリアントブルー、及びそれらの混合物から選択することができる。
【0038】
例として、第3の粉末は、0.5μm〜500μmの範囲内、例えば0.5μm〜200μmの範囲内にある平均粒度を示すことができる。
【0039】
有利には、上記組成物は、さらに、凝結防止剤を含んでもよい。例として、凝結防止剤は、無水コロイドシリカ、疎水性熱分解法シリカ、リン酸三カルシウム、及びそれらの混合物から選択することができる。凝結防止剤は、粉末状であることができ、この粉末の粒子は、例えば、0.5μm〜200μmの範囲内にある平均粒度を示す。
【0040】
好ましくは、上記組成物は、
・15%〜98%の範囲内にある質量含有量で、第1の粉末;
・0.5%〜80%の範囲内にある質量含有量で、第2の粉末;
・0.005%〜25%の範囲内、例えば0.005%〜20%の範囲内にある質量含有量で、第3の粉末;及び
・0.05〜10%の範囲内にある質量含有量で、凝結防止剤;
を含むことができる。
【0041】
一実施形態において、上記組成物は、
・70%〜98%の範囲内にある質量含有量で、第1の粉末;
・0.5%〜20%の範囲内にある質量含有量で、第2の粉末;
・0.005%〜25%の範囲内、例えば0.005%〜20%の範囲内にある質量含有量の第3で、粉末;及び
・0.05〜10%の範囲内にある質量含有量で、凝結防止剤;
を含むことができる。
【0042】
かかる配合例は、特に歯肉縁上処理に適している。
【0043】
一実施形態において、上記組成物は、
・15%〜70%の範囲内にある質量含有量で、第1の粉末;
・20%〜80%の範囲内、例えば40%〜80%の範囲内にある質量含有量で、第2の粉末;
・0.005%〜25%の範囲内、例えば0.005%〜20%の範囲内にある質量含有量で、第3の粉末;及び
・0.05〜10%の範囲内にある質量含有量で、凝結防止剤;
を含むことができる。
【0044】
かかる配合例は、特に歯肉縁下処理に適している。
【0045】
本発明は、ノズルと、上記組成物を収容
しているタンクとを有する歯科空気研磨ツールであって、上記ノズルが、前記組成物を液体のジェットにより取り囲んで加圧下で噴射するように構成されている、歯科空気研磨ツールも提供する。
【0046】
本発明は、処理剤が歯組織の治療処置における薬剤として使用するための治療剤である上記のような組成物も提供する。
【0047】
かかる状況下では、治療処置は、少なくとも:
・硬い歯組織を空気研磨することであって、その間、ノズルが空気研磨中の処理された歯から第1の距離に位置する空気研磨ツールのノズルを介して、液体のジェットにより取り囲まれた上記組成物が、前記組織に対して加圧下で吹き付けられる、空気研磨;
・空気研磨後、ノズルを、第1の距離よりも大きい、処理された歯から第2の距離に配置すること;及び
・処理された歯から第2の距離にある、このように配置されたノズルを介して、液体のジェットにより取り囲まれた上記組成物を加圧下で吹き付けることによって、治療剤を含む活性ゲルを形成すること;
を含むことができる。
【0048】
本発明の他の特徴及び利点は、非限定的な例として与えられ、添付の図面を参照してなされる本発明の特定の実施形態の以下の説明から明らかになる。