特許第6880072号(P6880072)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ プロドゥイ デンタイル ピエール ロランの特許一覧

<>
  • 特許6880072-空気研磨用組成物 図000006
  • 特許6880072-空気研磨用組成物 図000007
  • 特許6880072-空気研磨用組成物 図000008
  • 特許6880072-空気研磨用組成物 図000009
  • 特許6880072-空気研磨用組成物 図000010
  • 特許6880072-空気研磨用組成物 図000011
  • 特許6880072-空気研磨用組成物 図000012
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6880072
(24)【登録日】2021年5月7日
(45)【発行日】2021年6月2日
(54)【発明の名称】空気研磨用組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 9/14 20060101AFI20210524BHJP
   A61K 6/20 20200101ALI20210524BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20210524BHJP
   A61K 47/04 20060101ALI20210524BHJP
   A61K 47/18 20060101ALI20210524BHJP
   A61K 47/10 20060101ALI20210524BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20210524BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20210524BHJP
   A61P 1/02 20060101ALI20210524BHJP
   A61K 8/19 20060101ALI20210524BHJP
   A61Q 11/00 20060101ALI20210524BHJP
   A61K 8/25 20060101ALI20210524BHJP
   A61K 8/26 20060101ALI20210524BHJP
   A61K 8/30 20060101ALI20210524BHJP
   A61K 8/44 20060101ALI20210524BHJP
   A61K 8/86 20060101ALI20210524BHJP
   A61K 8/73 20060101ALI20210524BHJP
   A61K 8/21 20060101ALI20210524BHJP
【FI】
   A61K9/14
   A61K6/20
   A61K47/02
   A61K47/04
   A61K47/18
   A61K47/10
   A61K47/38
   A61K47/36
   A61P1/02
   A61K8/19
   A61Q11/00
   A61K8/25
   A61K8/26
   A61K8/30
   A61K8/44
   A61K8/86
   A61K8/73
   A61K8/21
【請求項の数】14
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2018-560259(P2018-560259)
(86)(22)【出願日】2017年2月2日
(65)【公表番号】特表2019-504884(P2019-504884A)
(43)【公表日】2019年2月21日
(86)【国際出願番号】FR2017050225
(87)【国際公開番号】WO2017137680
(87)【国際公開日】20170817
【審査請求日】2019年12月16日
(31)【優先権主張番号】1650961
(32)【優先日】2016年2月8日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】518281328
【氏名又は名称】プロドゥイ デンタイル ピエール ロラン
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100173107
【弁理士】
【氏名又は名称】胡田 尚則
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【弁理士】
【氏名又は名称】出野 知
(74)【代理人】
【識別番号】100146466
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 正俊
(72)【発明者】
【氏名】バンサン モラ
(72)【発明者】
【氏名】クレマンス ピジュロン
【審査官】 渡邉 潤也
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−244303(JP,A)
【文献】 特開平11−035435(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/191903(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0125814(US,A1)
【文献】 特表2002−538191(JP,A)
【文献】 特開2004−313786(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬い歯組織の表面を空気研磨するための組成物であって、少なくとも、
・硬い歯組織を研磨するのに適する研磨性の第1の粉末であって、炭酸水素ナトリウム、炭酸カルシウム、グリシン、シリケート、シリカ、水酸化ケイ素、炭化ケイ素、粉末軽石、ダイヤモンド粉末、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、又はこれらの化合物の混合物を含む第1の粉末;
・ポロキサマー、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、カラギーナン、及びこれらの混合物から選択されるゲル化剤の第2の粉末;及び
・治療剤又は着色剤である、歯科処理剤の第3の粉末;
を含む組成物。
【請求項2】
前記第2の粉末が、0.5%〜80%の範囲内にある質量含有量で前記組成物中に存在する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記第2の粉末の粒子の平均粒度が0.5μm〜400μmの範囲内にある、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記第1の粉末が、炭酸水素ナトリウム、炭酸カルシウム、グリシン、又はかかる化合物の混合物を含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記第1の粉末がグリシンを含み、前記第2の粉末がポロキサマーを含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記第1の粉末が炭酸水素ナトリウムを含み、前記第2の粉末がポロキサマーを含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記第1の粉末が、前記組成物中に15%〜98%の範囲内にある質量含有量で存在する、請求項1〜6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
前記第1の粉末の平均粒度が5μm〜500μmの範囲内にある、請求項1〜7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
・15%〜98%の範囲内にある質量含有量で、前記第1の粉末;
・0.5%〜80%の範囲内にある質量含有量で、前記第2の粉末;及び
・0.005%〜25%の範囲内にある質量含有量で、前記第3の粉末;並びに
・必要に応じて、0.05%〜10%の範囲内にある質量含有量で、凝結防止剤;
を含む、請求項1〜8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
・70%〜98%の範囲内にある質量含有量で、前記第1の粉末;
・0.5%〜20%の範囲内にある質量含有量で、前記第2の粉末;及び
・0.005%〜25%の範囲内にある質量含有量で、前記第3の粉末;並びに
・必要に応じて、0.05%〜10%の範囲内にある質量含有量で、凝結防止剤;
を含む、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
・15%〜70%の範囲内にある質量含有量で、前記第1の粉末;
・20%〜80%の範囲内にある質量含有量で、前記第2の粉末;及び
・0.005%〜25%の範囲内にある質量含有量で、前記第3の粉末;並びに
・必要に応じて、0.05%〜10%の範囲内にある質量含有量で、凝結防止剤;
を含む、請求項9に記載の組成物。
【請求項12】
前記治療剤が、殺菌剤、抗炎症剤、麻酔剤、脱感作剤、再石灰化剤、収斂剤、又はかかる薬剤の混合物である、請求項1〜11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
ノズルと、請求項1〜12のいずれか一項に記載の組成物を収容しているタンクとを有する歯科用空気研磨ツールであって、前記ノズルが、前記組成物を液体のジェットにより取り囲んで加圧下で噴射するように構成されている、歯科用空気研磨ツール。
【請求項14】
歯組織の治療処置を行うための請求項1〜12のいずれか一項に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、本発明は、硬い歯組織の表面を空気研磨するための新規な組成物及び空気研磨方法におけるその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
歯科空気研磨用の粉末は、一般的に、グリシン、炭酸カルシウム又は炭酸水素ナトリウムをベースにしている。既知の粉末としては、特に、供給業者3M ESPEにより開発され、照会名「Clinpro(登録商標) Prophy Powder」で入手可能な歯肉縁下用途用のグリシンベースの粉末、及び供給業者Satelecにより照会名「Air−n−go Classic(登録商標)」で販売されている歯肉縁上用途用の炭酸水素ナトリウムベースの粉末が挙げられる。
【0003】
それにもかかわらず、処理時間の大幅な延長をもたらさずに、かかる処理をさらに機能化するために、既存の空気研磨処理を改善する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特に、処理時間の大幅な延長をもたらさずに処理された歯に対して有効な治療作用を奏することも可能にする改善された空気研磨処理を利用可能にする必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この目的のために、第1の態様において、本発明は、硬い歯組織の表面を空気研磨するための組成物であって、少なくとも、
・硬い歯組織を研磨するための研磨性の第1の粉末;
・ゲル化剤の第2の粉末;及び
・歯科処理剤の第3の粉末;
を含む。
【0006】
用語「硬い歯組織」は、エナメル質、象牙質及びセメント質を包含するために使用される。
【0007】
本発明の組成物は、第1に、硬い歯組織の空気研磨処理を行う役割を果たし、そして、第2に、ゲル化性の第2の粉末の存在のために、処理剤を含む活性ゲルを形成して、処理された歯に対して、長期の作用、特に治療作用が働くことを可能にする点で顕著である。より正確には、以下でより詳細に説明するように、本発明の組成物は、処理される組織から比較的短い距離でエアーポリッシャーによって噴射されたときに、所望の研磨を行う役割を果たし、そして、エアーポリッシャーを処理された歯から遠ざけられときに、本発明の組成物は、活性ゲルを形成する役割を果たす。したがって、本発明の組成物によって、単一の組成物及び単一の空気研磨ツールによって、2つの連続した作用を果たすことが可能であり、第1の作用は、硬い歯組織を研磨することであり、第2の作用は、形成された活性ゲル中に存在する処理剤により歯組織を処理することである。形成された活性ゲルは、硬い歯組織及び/又は軟らかい歯組織を処理する役割を果たすことができる。活性ゲルの形成は、歯科処理剤が比較的長時間作用することを可能にするのに有利である。したがって、本発明の組成物は、有利なことに、従来の歯科空気研磨処理を、ゲルを付着させることにより行うことができる任意のタイプの歯科処理と関連させることによって、従来の歯科空気研磨処理を大幅に機能化させることを可能にするが、処理をより複雑にせず、また、処理に必要な時間を長くしない。
【0008】
ゲル化剤は、有機化合物であることができる。変形例では、ゲル化剤は、無機化合物であることができる。
【0009】
一実施形態において、ゲル化剤は、ポロキサマー、カルボマー、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、海藻抽出物、果実抽出物、ゼラチン、植物種子ガム、植物滲出物、セルロース又はセルロース誘導体、微生物滲出物、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、クレー、及びそれらの混合物から選択することができる。
【0010】
ポロキサマー型のゲル化剤は、ポリエチレングリコール(PEG)−ポリプロピレングリコール(PPG)−ポリエチレングリコールブロックを有するコポリマーであることができる。
【0011】
例として、海藻抽出物型のゲル化剤は、寒天、カラギーナン、アルジネート、アルギン酸、又はフルセレランから選択することができる。例として、アルジネート型のゲル化剤は、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸カリウム、アルギン酸アンモニウム、アルギン酸カルシウム、又はプロパン−1,2−ジオールアルジネートから選択することができる。
【0012】
例として、果実抽出物型のゲル化剤はペクチンであることができる。
【0013】
例として、植物種子ガム型のゲル化剤は、イナゴマメガム、グアーガム、又はオート麦ガムから選択することができる。
【0014】
例として、植物滲出物型のゲル化剤は、アラビアガム、カラヤガム、又はトラガカントガムから選択することができる。
【0015】
例として、セルロース誘導体型のゲル化剤は、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルエチルセルロース、又はカルボキシメチルセルロースから選択することができる。
【0016】
例として、微生物滲出物型のゲル化剤は、キサンタンガム又はジェランガムから選択することができる。
【0017】
例として、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル型のゲル化剤は、ポリオキシエチレンステアレートであることができる。
【0018】
例として、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル型のゲル化剤は、ポリオキシエチレン−20−ソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレン−20−ソルビタンモノオレエート、ポリオキシエチレン−20−ソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレン−20−ソルビタンモノステアレート、又はポリオキシエチレン−20−ソルビタントリステアレートから選択することができる。
【0019】
例として、クレー型のゲル化剤は、カオリン、アルミノケイ酸マグネシウム、ベントナイト、又はヘクトライトから選択することができる。
【0020】
好ましくは、ゲル化剤は、ポロキサマー、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カラギーナン、及びそれらの混合物から選択される。
【0021】
一実施形態において、第2の粉末は、組成物中に、0.5%〜80%の範囲内、例えば0.5%〜50%の範囲内にある質量含有量で存在することができる。
【0022】
一実施形態において、第2の粉末の粒子の平均粒度は、0.5マイクロメートル(μm)〜400μmの範囲内にあることができる。
【0023】
特に断らない限り、用語「平均粒度」は、D50として知られている、母集団の中間の統計学的粒度分布によって与えられる寸法を指すために使用される。
【0024】
第1の粉末の研磨性粒子は、1以上、好ましくは1〜5の範囲内、より好ましくは1〜3の範囲内にあるモーススケールでの硬度を示すことができる。
【0025】
一実施形態において、第1の粉末は、炭酸水素ナトリウム、炭酸カルシウム、グリシン、シリケート、シリカ、水酸化ケイ素、炭化ケイ素、粉末軽石、ダイヤモンド粉末、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、又はこれらの化合物の混合物を含むことができる。
【0026】
第1の粉末は、有機粒子の粉末であることができ、この粒子は水溶性であることができる。好ましくは、第1の粉末は、炭酸水素ナトリウム、炭酸カルシウム、グリシン、又はかかる化合物の混合物を含むことができる。
【0027】
一実施形態において、第1の粉末は、15%〜98%の範囲内、例えば50%〜98%の範囲内にある質量含有量で組成物中に存在することができる。
【0028】
一実施形態において、第1の粉末の平均粒度は5μm〜500μmの範囲内にあることができる。
【0029】
好ましくは、歯科処理剤は治療剤であることができる。
【0030】
治療剤は、殺菌剤、抗炎症剤、麻酔剤、脱感作剤、再石灰化剤、収斂剤、又はかかる薬剤の混合物であることができる。
【0031】
好ましくは、脱感作剤は、フッ化ナトリウム、硝酸カリウム、シュウ酸、フッ化錫、又はそれらの混合物から選択することができる。
【0032】
好ましくは、再石灰化剤は、リン酸カルシウム、塩化カルシウム、硝酸カルシウム、リン酸ナトリウム、リン酸三カルシウム、ケイ酸三カルシウム、ハイドロキシアパタイト、シリケートガラス、又はそれらの混合物から選択することができる。
【0033】
好ましくは、殺菌剤は、クロルヘキシジンクロロハイドレート、クロルヘキシジンジクロロハイドレート、グルコン酸クロルヘキシジン、ジグルコン酸クロルヘキシジン、次亜塩素酸ナトリウム、第4級アンモニウム、ヨウ素誘導体、及びそれらの混合物から選択することができる。
【0034】
好ましくは、抗炎症剤は、ブトホルム、酢酸プレドニゾロン、β−グリチルレチン酸、非ステロイド系抗炎症剤、及びそれらの混合物から選択することができる。
【0035】
好ましくは、麻酔剤は、リドカインクロロハイドレートから選択することができる。
【0036】
好ましくは、収斂剤は、塩化アルミニウムから選択することができる。
【0037】
変形例では、歯科処理剤は、着色剤、例えば蛍光着色剤であることができる。例として、着色剤は、蛍光増白剤であることができる。例として、歯科処理剤は、したがって、ナトリウムフルオレセイン、ブリリアントブルー、及びそれらの混合物から選択することができる。
【0038】
例として、第3の粉末は、0.5μm〜500μmの範囲内、例えば0.5μm〜200μmの範囲内にある平均粒度を示すことができる。
【0039】
有利には、上記組成物は、さらに、凝結防止剤を含んでもよい。例として、凝結防止剤は、無水コロイドシリカ、疎水性熱分解法シリカ、リン酸三カルシウム、及びそれらの混合物から選択することができる。凝結防止剤は、粉末状であることができ、この粉末の粒子は、例えば、0.5μm〜200μmの範囲内にある平均粒度を示す。
【0040】
好ましくは、上記組成物は、
・15%〜98%の範囲内にある質量含有量で、第1の粉末;
・0.5%〜80%の範囲内にある質量含有量で、第2の粉末;
・0.005%〜25%の範囲内、例えば0.005%〜20%の範囲内にある質量含有量で、第3の粉末;及び
・0.05〜10%の範囲内にある質量含有量で、凝結防止剤;
を含むことができる。
【0041】
一実施形態において、上記組成物は、
・70%〜98%の範囲内にある質量含有量で、第1の粉末;
・0.5%〜20%の範囲内にある質量含有量で、第2の粉末;
・0.005%〜25%の範囲内、例えば0.005%〜20%の範囲内にある質量含有量の第3で、粉末;及び
・0.05〜10%の範囲内にある質量含有量で、凝結防止剤;
を含むことができる。
【0042】
かかる配合例は、特に歯肉縁上処理に適している。
【0043】
一実施形態において、上記組成物は、
・15%〜70%の範囲内にある質量含有量で、第1の粉末;
・20%〜80%の範囲内、例えば40%〜80%の範囲内にある質量含有量で、第2の粉末;
・0.005%〜25%の範囲内、例えば0.005%〜20%の範囲内にある質量含有量で、第3の粉末;及び
・0.05〜10%の範囲内にある質量含有量で、凝結防止剤;
を含むことができる。
【0044】
かかる配合例は、特に歯肉縁下処理に適している。
【0045】
本発明は、ノズルと、上記組成物を収容しているタンクとを有する歯科空気研磨ツールであって、上記ノズルが、前記組成物を液体のジェットにより取り囲んで加圧下で噴射するように構成されている、歯科空気研磨ツールも提供する。
【0046】
本発明は、処理剤が歯組織の治療処置における薬剤として使用するための治療剤である上記のような組成物も提供する。
【0047】
かかる状況下では、治療処置は、少なくとも:
・硬い歯組織を空気研磨することであって、その間、ノズルが空気研磨中の処理された歯から第1の距離に位置する空気研磨ツールのノズルを介して、液体のジェットにより取り囲まれた上記組成物が、前記組織に対して加圧下で吹き付けられる、空気研磨;
・空気研磨後、ノズルを、第1の距離よりも大きい、処理された歯から第2の距離に配置すること;及び
・処理された歯から第2の距離にある、このように配置されたノズルを介して、液体のジェットにより取り囲まれた上記組成物を加圧下で吹き付けることによって、治療剤を含む活性ゲルを形成すること;
を含むことができる。
【0048】
本発明の他の特徴及び利点は、非限定的な例として与えられ、添付の図面を参照してなされる本発明の特定の実施形態の以下の説明から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
図1図1は、本発明の組成物を使用する歯肉縁上歯科処理方法の実施行為を示す図である。
図2図2は、本発明の組成物を使用する歯肉縁上歯科処理方法の実施行為を示す図である。
図3図3は、図1及び図2に示される方法によって処理された歯を示す。
図4図4は、本発明の組成物を使用する歯肉縁下処理方法の実施行為を示す図である。
図5図5は、本発明の組成物を使用する歯肉縁下処理方法の実施行為を示す図である。
図6図6は、図4及び図5に示される方法によって処理された歯を示す図である。
図7図7は、実施した研磨とゲルの形成の両方を示す、本発明の組成物の一例によって処理された基材の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0050】
図1は、本発明の方法の第1ステップを示す。第1ステップの間、歯Dは、本発明の組成物を使用する空気研磨にかけられる。図示した例では、歯Dは切歯である。当然のことながら、他のタイプの歯を処理することは、本発明の範囲を超えない。処理に供される歯Dは、その表面に複数のクラックFを呈し、クラックは、歯垢の沈着物などの、除去されるべき物質Sの沈着物で覆われている。
【0051】
この第1ステップ中、歯科空気研磨ツール10を使用して、空気研磨用組成物1をツール10のノズル11を介して加圧下で吹き付ける。より正確には、組成物1のジェットと、ジェット1を取り囲む液体のコーン15とが、ノズル11を介して吹き付けられる。例として、液体15は水であることができる。使用に適した空気研磨ツール10の一例は、供給業者Acteonにより紹介名Air−N−Go(登録商標)で販売されているエアーポリッシャーである。上記のように、スプレー組成物1は、少なくとも、次の3つの成分:研磨性粒子の第1の粉末、ゲル化剤の第2の粉末、及び歯科処理剤の第3の粉末、の混合物を含む。組成物1は粉末であることができる。第1の粉末は第2の粉末と異なっていてもよい。第1の粉末は第3の粉末と異なっていてもよい。第2の粉末は第3の粉末とは異なっていてもよい。変形例では、第2の粉末と第3の粉末は同一であってもよい。これは、例えば、使用されるゲル化剤がポロキサマーである場合に可能であり、ポロキサマーは、殺菌効果を有することができ、そのため、ゲル化剤と治療剤とを同時に構成することができる。以下で詳細に説明するように、ゲル化剤は、空気研磨ツール10によって噴射された液体と混合しながら、処理される歯の上にゲルを形成するように、構成される。有利には、組成物1は、上記のような凝結防止剤を含んでもよい。
【0052】
歯Dに対するスプレー組成物1の衝撃は、歯Dの表面を清浄にし、沈着物Sを除去する役割を果たす。この第1ステップの間、ノズル11は、処理のために、歯Dから比較的短い距離d1に位置する。その結果、組成物1のジェットは、比較的高い圧力で歯Dに衝突し、それによって歯D上に存在する沈着物Sを除去する。例として、距離dは0.5センチメートル(cm)以下である。
【0053】
さらに、最終ステップの間、依然としてこの高い圧力のために、組成物1の成分は歯D上に数秒間を超えて堆積することはなく、衝撃直後に歯Dの表面から物質Sと一緒に除去される。例として、この第1ステップの間の歯の処理は、少なくとも1秒間続くことができ、例として、3秒間続くことができる。有利には、第1の粉末は、次の化合物のうちの少なくとも1種を含むことができる:炭酸水素ナトリウム、炭酸カルシウム、グリシン、シリケート、シリカ、水酸化ケイ素、炭化ケイ素、粉末軽石、ダイヤモンド粉末、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、又はこれらの化合物の混合物。有利には、第1の粉末は、次の化合物のうちの少なくとも1種を含むことができる:炭酸水素ナトリウム、炭酸カルシウム、グリシン、又はかかる化合物の混合物。
【0054】
研磨ステップを実行したら、使用者は、ノズル11を距離d2で配置するために、このようにしてクリーニングされた歯Dからノズル11を少し離し、歯D上に活性ゲル20を形成する。図1図3に示されている例では、歯の処理部分は歯肉の上方に位置している:これは歯肉縁上歯科処理方法である。例として、距離dは0.6cm以上、例えば1cmである。このステップの実行を図2に示す。活性ゲル20は、ツール10によって吹き付けられた第2の粉末と水との混合の結果として形成される。歯Dに対して吹き付けられる組成物1の衝撃圧力が減少することにより、組成物1の成分が歯D上に堆積し、ゲル化剤が液体と混合することによってゲルを形成することが可能になるため、このゲル20は、ノズル11が歯Dから比較的遠くにある場合にだけ形成される。有利には、ゲル化剤は、ポロキサマー、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、カラギーナン、及びそれらの混合物から選択することができる。形成された活性ゲル20は、組成物1中に最初に存在していた歯科処理剤を含む。歯科処理剤は、上記の治療剤であることができる。活性ゲル20は、歯Dの表面に存在するクラックFを充填し、比較的長い時間、例えば少なくとも1分間、例えば数分間にわたって、歯科処理を行うのに役立つ。活性ゲル20は、そのため、次の作用のうちの少なくとも1つを果たすことを可能にする:処理された歯組織の再石灰化、脱感作又は殺菌。活性ゲル20は、望ましい歯科処理を行うように歯Dと接触したままであるように構成される。有利なことに、活性ゲル20は、歯科処理が行われると患者の口腔内で徐々に溶解するように水溶性であってもよい。
【0055】
第1及び第2のステップの後に得られた処理された歯D’が図3に示されている。図示されているように、未処理の歯Dに最初に存在したクラックFは、本発明の処理の結果として充填される。
【0056】
図4〜6は、歯周炎に罹患した歯Dの処理を示す。この歯Dは図示されている例では大臼歯である。最初に、歯Dの表面に存在する物質Sを除去するために、ツール10を使用して上記のような組成物により空気研磨が行われる(図4参照)。クリーニングを行ったら、次に、歯の上に活性ゲル20を形成するために、処理された歯からノズル11を遠ざける(図5参照)。活性ゲル20は、特に、圧排された歯肉Gと歯Dとの間に存在する歯周ポケットPに形成される。実行される処理は、歯周炎を治療するために役立ち、歯肉自体を回復させる。形成されたゲル20は、また、処理された歯のエナメル質を回復させるために再石灰化剤を含むことができる。処理後、処理された歯D’を支持する健康な歯肉G’が得られる。このタイプの歯肉縁下処理のために、多量の弱研磨力の研磨性粒子を含むか、又は少量の強研磨力を有する研磨剤を含む組成物を使用することが有利に可能である。
【実施例】
【0057】
実施例では、特に断らない限り、全ての割合が質量百分率として表されており、温度は摂氏(℃)で測定され、圧力は大気圧(1バール)に等しいとみなされる。
【0058】
実施例1
以下の表1に示す組成を有する空気研磨用組成物を調製した。
【0059】
【表1】
【0060】
組成物は以下のようにして調製した。
【0061】
第1の予備混合物Aは、炭酸水素ナトリウムの上記量の半分及びAerosil R972の上記量の半分を、硝酸カルシウム・4水和物及びリン酸水素ナトリウム・12水和物を含む混合物に加えることによって調製した。混合物を商標Frogeraisで販売されているキューブミキサーを使用して均質化した。次いで、混合物を、振動篩を使用して200μmで篩い分けした。
【0062】
炭酸水素ナトリウムの上記量の残りの半分、Aerosil R972の上記量の残りの半分、ナトリウムサッカリン、フッ化ナトリウム、硝酸カリウム、及びポロキサマーを混合することによって、第2の予備混合物Bを調製した。混合物を商標Frogeraisで販売されているキューブミキサーを使用して均質化した。次いで、混合物を、振動篩を使用して200μmで篩い分けした。
【0063】
次いで、上記の表1に示す組成物を得るために、予備混合物A及びBを均質化した。
【0064】
このようにして得られた組成物を、供給業者Poitemill Forplexにより販売されているハンマーミル及び振動篩をそれぞれ使用して粉砕し200μmで篩い分けした。
【0065】
得られた空気研磨用の粉末組成物は、良好なドライフローを示し、供給業者Malvernにより販売されているレーザー粒度計型装置で測定した場合に70μm〜90μmの範囲内にあるD50平均粒度を示した。
【0066】
歯科空気研磨ツールに組み込まれた場合、組成物は、まず、歯肉縁上研磨を行い、次に、空気研磨ツールのノズルを遠ざけることによって、処理された歯に再石灰化及び脱感作用のゲルを形成する。この点に関して、図7は、実施例1の組成物が歯科空気研磨ツールによって吹き付けられた黒色塗料の層でコーティングされたカード基材SUの写真である。ゾーンZは、短距離で「処理された」ゾーンに対応する。これらのゾーンZは、ゲルを形成せずに研磨された。ゾーンZで行った研磨の後、黒色塗料のコーティングが除去され、それにより、下にある基材が露出し、これは図7の写真では白く見えることが分かる。ゾーンZは、ゾーンZのように、最初に研磨されたゾーンに対応し、空気研磨ツールのノズルが次に移動してゲルを形成する。これらのゾーンZは、ゲルの形成のために、図7の写真では灰色に見える。
【0067】
実施例2
以下の表2に記載の配合を有する空気研磨用組成物を調製した。
【0068】
【表2】
【0069】
上記の表2に記載の組成物は、炭酸カルシウムに、サッカリンナトリウム、クロルヘキシジンクロロハイドレート、硝酸カリウム、β−リン酸三カルシウム、カラギーナンゲル化剤、及びAerosil R972を、この順序で加えることにより得た。
【0070】
次に、混合物を、供給業者Servoliftにより販売されているビンブレンダータイプのミキサーを使用して均質化した。次に、得られた組成物を振動篩により篩い分けした。
【0071】
得られた組成物は、供給業者Malvernにより販売されている「Mastersizer 2000」型レーザー粒度計を使用して測定した場合、40μm〜60μmの範囲内にある平均粒度を示した。
【0072】
このようにして調製された組成物は、研磨し、次いで、歯周ポケットを処理するための殺菌「ドレッシング」を構成するゲルを形成するための歯肉縁上又は歯肉縁下用途に適している。
【0073】
実施例3
以下の表3に記載の配合を有する空気研磨用組成物を調製した。
【0074】
【表3】
【0075】
この組成物は、供給業者Poitemill Forplexにより販売されているハンマーミルによりグリシンをミリングすることにより調製した。その後、粉砕されたグリシンに、サッカリンナトリウム、ペパーミント精油、リドカインクロロハイドレート、ハイドロキシアパタイト、Methocel E4M及びAerosil R972を、この順序で加えた。組成物を、供給業者Olsaにより販売されているVミキサーを使用して均質化し、次いで、振動篩により300μmで篩い分けした。
【0076】
得られた組成物は、Malvern社により販売されている「Mastersizer 2000」型レーザー粒度計で測定した場合に、15μm〜35μmの範囲内にある平均粒度を示した。
【0077】
このようにして調製された組成物は、歯周ポケット内に適用された場合に、活性ゲルを形成した後、ポケットをクリーニングしながら軟らかい歯組織に麻酔をかけるために使用することができる。
【0078】
実施例4
以下の表4に記載の配合を有する空気研磨用組成物を調製した。
【0079】
【表4】
【0080】
グリシンの上記量の半分及びAerosil R972の上記量の半分を塩化アルミニウムとカオリンの混合物に添加することにより、予備混合物Aを調製した。この混合物を商標Frogeraisで販売されているキューブミキサーを使用して均質化し、次いで、振動篩により200μmで篩い分けした。
【0081】
グリシン、サッカリンナトリウム、レモン精油、メチルセルロース、及びAerosil R972の上記量の残りの半分を混合することによって、第2の予備混合物Bを調製した。この混合物を、供給業者Servoliftにより販売されているキューブミキサーを使用して均質化し、次いで、商標Frewittを有する振動グラインダーを使用して200μmで篩い分けした。
【0082】
その後、予備混合物Aと予備混合物Bを均質化した。次いで、得られた組成物を断片化し、そして上記表4に記載の組成物を得るために、Frewittにより販売されているコーンミルを使用して200μmで篩い分けした。この組成物は、良好なドライフローと、供給業者Malvernにより販売されているレーザー粒度計タイプの装置により測定した場合に25μm〜45μmの範囲内にあるD50平均粒度を示した。
【0083】
このようにして調製された組成物は、歯肉縁下研磨を行うため、及び、その後、エアーポリッシャーのノズルを遠ざけることによって、止血ゲルを形成して、ゲルをすすいだ後、塩化アルミニウムによる処理の故に、溝を開いた状態に保つために使用することができる。
【0084】
「・・・〜・・・の範囲内にある」という用語は、境界を含むものとして理解されるべきである。
本発明に関連する発明の実施態様の一部を以下に示す。
[態様1]
硬い歯組織の表面を空気研磨するための組成物であって、少なくとも、
・硬い歯組織を研磨するのに適する研磨性の第1の粉末であって、炭酸水素ナトリウム、炭酸カルシウム、グリシン、シリケート、シリカ、水酸化ケイ素、炭化ケイ素、粉末軽石、ダイヤモンド粉末、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、又はこれらの化合物の混合物を含む第1の粉末;
・ポロキサマー、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、カラギーナン、及びこれらの混合物から選択されるゲル化剤の第2の粉末;及び
・治療剤又は着色剤である、歯科処理剤の第3の粉末;
を含む組成物。
[態様2]
前記第2の粉末が、0.5%〜80%の範囲内にある質量含有量で前記組成物中に存在する、態様1に記載の組成物。
[態様3]
前記第2の粉末の粒子の平均粒度が0.5μm〜400μmの範囲内にある、態様1又は2に記載の組成物。
[態様4]
前記第1の粉末が、炭酸水素ナトリウム、炭酸カルシウム、グリシン、又はかかる化合物の混合物を含む、態様1〜3のいずれか一項に記載の組成物。
[態様5]
前記第1の粉末がグリシンを含み、前記第2の粉末がポロキサマーを含む、態様1〜4のいずれか一項に記載の組成物。
[態様6]
前記第1の粉末が炭酸水素ナトリウムを含み、前記第2の粉末がポロキサマーを含む、態様1〜5のいずれか一項に記載の組成物。
[態様7]
前記第1の粉末が、前記組成物中に15%〜98%の範囲内にある質量含有量で存在する、態様1〜6のいずれか一項に記載の組成物。
[態様8]
前記第1の粉末の平均粒度が5μm〜500μmの範囲内にある、態様1〜7のいずれか一項に記載の組成物。
[態様9]
・15%〜98%の範囲内にある質量含有量で、前記第1の粉末;
・0.5%〜80%の範囲内にある質量含有量で、前記第2の粉末;及び
・0.005%〜25%の範囲内にある質量含有量で、前記第3の粉末;並びに
・必要に応じて、0.05%〜10%の範囲内にある質量含有量で、凝結防止剤;
を含む、態様1〜8のいずれか一項に記載の組成物。
[態様10]
・70%〜98%の範囲内にある質量含有量で、前記第1の粉末;
・0.5%〜20%の範囲内にある質量含有量で、前記第2の粉末;及び
・0.005%〜25%の範囲内にある質量含有量で、前記第3の粉末;並びに
・必要に応じて、0.05%〜10%の範囲内にある質量含有量で、凝結防止剤;
を含む、態様9に記載の組成物。
[態様11]
・15%〜70%の範囲内にある質量含有量で、前記第1の粉末;
・20%〜80%の範囲内にある質量含有量で、前記第2の粉末;及び
・0.005%〜25%の範囲内にある質量含有量で、前記第3の粉末;並びに
・必要に応じて、0.05%〜10%の範囲内にある質量含有量で、凝結防止剤;
を含む、態様9に記載の組成物。
[態様12]
前記治療剤が、殺菌剤、抗炎症剤、麻酔剤、脱感作剤、再石灰化剤、収斂剤、又はかかる薬剤の混合物である、態様1〜11のいずれか一項に記載の組成物。
[態様13]
ノズルと、態様1〜12のいずれか一項に記載の組成物を収容しているタンクとを有する歯科用空気研磨ツールであって、前記ノズルが、前記組成物を液体のジェットにより取り囲んで加圧下で噴射するように構成されている、歯科用空気研磨ツール。
[態様14]
歯組織の治療処置を行うための態様1〜12のいずれか一項に記載の組成物。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7