特許第6880087号(P6880087)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6880087アディティブ製造された熱交換器を含んだクライオクーラー
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6880087
(24)【登録日】2021年5月7日
(45)【発行日】2021年6月2日
(54)【発明の名称】アディティブ製造された熱交換器を含んだクライオクーラー
(51)【国際特許分類】
   F25B 9/00 20060101AFI20210524BHJP
   F28F 21/02 20060101ALI20210524BHJP
【FI】
   F25B9/00 J
   F28F21/02
   F25B9/00 311
【請求項の数】18
【外国語出願】
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2019-10185(P2019-10185)
(22)【出願日】2019年1月24日
(62)【分割の表示】特願2017-512042(P2017-512042)の分割
【原出願日】2015年6月26日
(65)【公開番号】特開2019-66178(P2019-66178A)
(43)【公開日】2019年4月25日
【審査請求日】2019年1月24日
(31)【優先権主張番号】62/045,112
(32)【優先日】2014年9月3日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】62/060,234
(32)【優先日】2014年10月6日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】14/542,150
(32)【優先日】2014年11月14日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】503455363
【氏名又は名称】レイセオン カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100091214
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 進介
(72)【発明者】
【氏名】コンラド,セオドア ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】チョウ,ジェームズ アール.
(72)【発明者】
【氏名】アルミエント,クレイグ エー.
(72)【発明者】
【氏名】エリアス,ウィリアム イー.
【審査官】 森山 拓哉
(56)【参考文献】
【文献】 特表2001−505638(JP,A)
【文献】 特許第2828978(JP,B2)
【文献】 特開平10−185339(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0000149(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0186270(US,A1)
【文献】 特開2009−280812(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0048171(US,A1)
【文献】 特開平08−054150(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 9/00
F28F 21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
クライオクーラーの高温端と低温端との間を流体フロー方向に流体が流れるときに、前記流体に熱を伝達するように、また、前記流体から熱を吸収するように構成された熱交換器、
を有し、
前記熱交換器は、
炭素の少なくとも1つの同素形を有する基体であり、前記流体フロー方向に実質的に平行な方向での当該基体を通じての熱伝達よりも容易に、前記流体フロー方向に実質的に垂直な方向での当該基体を通じての熱伝達を可能にするように構成された基体と、
前記基体の上のナノ粒子の層であり、前記ナノ粒子は、鉛(Pb)、ニッケル(Ni)、又は少なくとも1つのランタニド元素若しくはランタニド合金を有する、ナノ粒子の層と、
を有する少なくとも1つのセクションを含む、
装置。
【請求項2】
前記熱交換器の前記少なくとも1つのセクションは、複数のセクションを有し、
前記複数のセクションが集合的に、複数の基体とナノ粒子の複数の層とを有する、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記熱交換器は更に、前記熱交換器の前記複数のセクションの中に細孔を有し、該細孔は、前記流体が前記熱交換器の中を流れて前記基体及び前記ナノ粒子の層と接触することを可能にするように構成されている、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記複数のセクションは、前記熱交換器を形成するように積み重ねられている、請求項2に記載の装置。
【請求項5】
前記ナノ粒子は、前記基体の上で格子パターンに配置されている、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記ナノ粒子は、少なくとも1つのランタニド元素又はランタニド合金を有し、且つ
前記基体は、カーボンナノチューブ又はグラフェンを有する、
請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記ナノ粒子の層の部分を形成しているインク、
を更に有する請求項1に記載の装置。
【請求項8】
クライオクーラー用の熱交換器を製造する方法であって、前記熱交換器は、流体フロー方向に流れる流体を含むように構成され、当該方法は、
前記熱交換器の複数のセクションを形成することを有し、
前記熱交換器の各セクションは、
炭素の少なくとも1つの同素形を有する基体であり、前記流体フロー方向に実質的に平行な方向での当該基体を通じての熱伝達よりも容易に、前記流体フロー方向に実質的に垂直な方向での当該基体を通じての熱伝達を可能にするように構成された基体と、
前記基体の上のナノ粒子の層であり、前記ナノ粒子は、鉛(Pb)、ニッケル(Ni)、又は少なくとも1つのランタニド元素若しくはランタニド合金を有する、ナノ粒子の層と
を有する、
方法。
【請求項9】
前記熱交換器の前記複数のセクションを形成することは、交互にされた基体及びナノ粒子の層を形成することを有する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記熱交換器の前記複数のセクションを形成することは、
前記基体の上に前記ナノ粒子の層を付与し、
前記基体及び前記ナノ粒子の層をセクションへと切断し、且つ
該セクションを積み重ねて前記熱交換器を形成する
ことを有する、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記熱交換器の各セクションを形成することが、
該セクション用の前記基体を形成し、且つ
該セクション用の前記基体の上に、該セクション用の前記ナノ粒子の層を付与する
ことを有する、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
当該方法は更に、前記熱交換器の前記複数のセクションの中に細孔を形成することを有し、前記細孔は、流体が前記熱交換器の中を流れて前記基体及び前記ナノ粒子の層と接触することを可能にするように構成される、請求項8に記載の方法。
【請求項13】
前記熱交換器の前記複数のセクションを形成することは、
各セクションについて、前記ナノ粒子を含有するインクを前記基体の上に印刷して、前記ナノ粒子の層を形成する
ことを有する、請求項8に記載の方法。
【請求項14】
クライオクーラー用の熱交換器を製造する方法であって、前記熱交換器は、流体フロー方向に流れる流体を含むように構成され、当該方法は、
前記熱交換器の複数のセクションを形成することを有し、
前記熱交換器が、交互にされた基体及び金属の層を有するよう、前記熱交換器の各セクションが、基体と該基体の上の金属の層とを有し、各セクションの前記金属の層が、ナノ粒子の層を有し、前記ナノ粒子は、鉛(Pb)、ニッケル(Ni)、又は少なくとも1つのランタニド元素若しくはランタニド合金を有
各セクションの前記基体は、前記流体フロー方向に実質的に平行な方向での前記基体を通じての熱伝達よりも容易に、前記流体フロー方向に実質的に垂直な方向での前記基体を通じての熱伝達を可能にするように構成される、
方法。
【請求項15】
各セクションの前記金属の層が、前記ナノ粒子を含有するインクを付与することによって形成される、
請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記ナノ粒子は、少なくとも1つのランタニド元素又はランタニド合金を有する、請求項14又は15に記載の方法。
【請求項17】
前記ナノ粒子を、
非水性液体中に金属塩を溶解させることによって第1の溶液を形成し、
前記第1の溶液を、非水性液体中に光開始剤を有する第2の溶液と混合し、且つ
得られた混合物を紫外線照射に曝す
ことによって製造する、
ことを更に有する請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記基体は、前記流体フロー方向に対して実質的に垂直を向いた実質的に平面状の表面を有し、
前記ナノ粒子の層は、前記基体の前記実質的に平面状の表面上にあり、
前記ナノ粒子は、前記基体の前記実質的に平面状の表面に対して平行に配置されている、請求項1に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して冷却システムに関する。より具体的には、本開示は、アディティブ(加法的に)製造された熱交換器を含んだクライオクーラー、並びに関連するシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
様々なコンポーネントを極低温まで冷却するために、しばしばクライオクーラーが使用されている。例えば、様々な宇宙及び空中イメージングシステムにおいて焦点面(フォーカルプレーン)アレイを冷却するために、クライオクーラーが使用され得る。例えば、パルス管冷凍機、スターリング冷凍機、ギフォード・マクマホン冷凍機、ターボ・ブレイトン冷凍機、及びジュール・トムソン冷凍機など、異なる設計を有する様々なタイプのクライオクーラーが存在する。これらのタイプのクライオクーラーは、クライオクーラー内を往復して流れる流体(例えば、液体又は気体)と熱を交換するのが典型的であるリジェネレータ又は向流(recuperative)熱交換器を含んでいる。熱がリジェネレータ又は向流(recuperative)熱交換器に蓄えられ、そしてそれから解放されることで、クライオクーラーの冷却動作を支援する。単純化のため、本明細書における表現“熱交換器”は、リジェネレータ、向流熱交換器、及びクライオクーラー内を流れる流体と熱を交換するその他の構造を含むものとする。
【0003】
よりいっそう低い温度をクライオクーラーにて得ることを試みて、様々な設計が採用されてきた。それらの設計は、ガラス繊維、金属発泡体、積層(スタックト)スクリーン、鉛球及びレアアース球、並びにフォトエッチングされたディスクの使用を含む。しかしながら、極低温での冷却を実現することは、所望の温度が低下するにつれて、ますます困難になっている。例えば、約20ケルビン(約−423.7°F)の温度未満でもっと効率的な冷却を実現することへの1つの障害は、現在利用可能な熱交換器の不十分さである。この温度域では、一般に、低い容積比熱及び低い熱伝導率が、熱交換器への及びそれからの熱伝達の有効性を妨げる。また、現在の低温熱交換器は典型的に、低い多孔率を有し且つ低い周波数で動作しており、それにより、クライオクーラーの効率をかなり制限してしまい得る。
【発明の概要】
【0004】
本開示は、アディティブ製造された熱交換器を含んだクライオクーラー、並びに関連するシステム及び方法を提供する。
【0005】
第1の実施形態において、装置は、クライオクーラーの高温端と低温端との間を流体が流れるときに流体に熱を伝達するように、また、流体から熱を吸収するように構成された熱交換器を含む。熱交換器は、炭素の少なくとも1つの同素形の基体と、基体の上のナノ粒子の層とを有する少なくとも1つのセクションを含む。
【0006】
第2の実施形態において、方法は、クライオクーラー用の熱交換器を形成することを含む。熱交換器を形成することは、熱交換器の複数のセクションを形成することを含む。熱交換器の各セクションが、炭素の少なくとも1つの同素形の基体と、基体の上のナノ粒子の層とを含む。
【0007】
第3の実施形態において、方法は、クライオクーラー用の熱交換器を形成することを含む。熱交換器を形成することは、熱交換器の複数のセクションを形成することを含む。熱交換器が、交互にされた基体及び金属の層を有するよう、熱交換器の各セクションが、基体と該基体の上の金属の層とを含む。
【0008】
その他の技術的特徴が、以下の図面、説明、及び請求項から、当業者には容易に明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
より完全なる本開示の理解のため、ここでは、以下の図を含む添付図面とともに以下の説明を参照する。
図1】本開示に従ったアディティブ製法を用いて作製された1つ以上の部分を含む熱交換器を有するクライオクーラーの第1の例を示している。
図2A】本開示に従ったアディティブ製法を用いて作製された1つ以上の部分を含む熱交換器を有するクライオクーラーの第2の例を示している。
図2B】本開示に従ったアディティブ製法を用いて作製された1つ以上の部分を含む熱交換器を有するクライオクーラーの第2の例を示している。
図3】本開示に従ったアディティブ製法を用いて作製されたクライオクーラー熱交換器の部分の一例を示している。
図4】本開示に従ったクライオクーラー熱交換器用の基体の例を示している。
図5】本開示に従ったクライオクーラー熱交換器用の基体の例を示している。
図6】本開示に従ったアディティブ製法を用いて作製されたクライオクーラー熱交換器の部分の一具体例を示している。
図7】本開示に従ったアディティブ製法を用いてクライオクーラー熱交換器を形成する方法の例を示している。
図8】本開示に従ったアディティブ製法を用いてクライオクーラー熱交換器を形成する方法の例を示している。
図9】本開示に従ったアディティブ製法を用いてクライオクーラー熱交換器を形成する方法の例を示している。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に説明される図1−6、及び本明細書にて本発明の原理を説明するために使用される様々な実施形態は、単に例示によるものであり、本発明の範囲を限定するように解釈されるべきでない。当業者が理解するように、本発明の原理は、あらゆる種類の好適に構成された装置又はシステムにて実装され得る。
【0011】
図1は、本開示に従ったアディティブ製法を用いて作製された1つ以上の部分を含む熱交換器を有する第1の例のクライオクーラー100を示している。より具体的には、図1は、リジェネレータを有するパルス管冷凍機を例示しており、リジェネレータの一部がアディティブ製法を用いて作製されている。
【0012】
図1に示すように、クライオクーラー100は、圧縮機(コンプレッサ)102及び膨張機(エクスパンダ)アセンブリ104を含んでいる。圧縮機102は、膨張機アセンブリ104内の流体の流れを作り出す。例えば、圧縮機102は、各圧縮サイクル中に往復行程を行うピストンを含むことができ、指定された駆動周波数で多数の圧縮サイクルが行われる。ピストンは、故に、圧縮機102の動作中に、流体を膨張機アセンブリ104に押し込み、そして、流体を膨張機アセンブリ104から引き抜く。圧縮機102は、冷却システム内で少なくとも1つのガス又はその他の(1つ以上の)流体を動かすのに好適な如何なる構造を含んでいてもよい。
【0013】
圧縮機102により、流体が膨張機アセンブリ104に押し込まれ、そして引き抜かれる。この流体の往復運動が、流体の制御された膨張及び収縮とともに、膨張機アセンブリ104における冷却を生み出す。この例において、膨張機アセンブリ104は、高温端106及び低温端108を持つ。これらの名前が暗示するように、膨張機アセンブリ104の高温端106は、膨張機アセンブリ104の低温端108よりも高い温度にある。膨張機アセンブリ104の低温端108は、例えば約4ケルビン(約−452.5°F)又は設計に応じて更に低くなど、何らかの好ましく低い温度に至り得る。故に、膨張機アセンブリ104の低温端108は、例えば、冷却すべき装置又はシステムに熱的に結合され得る。
【0014】
膨張機アセンブリ104は、パルス管110及びリジェネレータ112を含んでいる。パルス管110は、それを通って流体が往復して移動する又は脈打つことができる通路を表す。リジェネレータ112は、流体と接触して流体と熱を交換する構造を表す。例えば、流体が膨張機アセンブリ104の高温端106から低温端108へと通るとき、流体からの熱をリジェネレータ112によって吸収することができる。流体が膨張機アセンブリ104の低温端108から高温端106へと通るとき、リジェネレータ112からの熱を流体によって吸収することができる。
【0015】
パルス管110は、多数のサイクル中に脈打つ又はその他の方法で往復運動する流体を保持するのに好適な構造を含んでいる。パルス管110は、好適な如何なる(1つ以上の)材料から形成されてもよく、また、好適な如何なるサイズ、形状、及び寸法を有していてもよい。パルス管110はまた、好適な如何なる方法で製造されてもよい。
【0016】
膨張機アセンブリ104の低温端108は、熱交換器114及び結合チャネル116を含んでいる。熱交換器114は一般に、膨張機アセンブリ104の低温端108における熱を除去するように動作する。結合チャネル116は、熱交換器114とリジェネレータ112とを流体的に結合する。
【0017】
より詳細に後述するように、リジェネレータ112は、アディティブ製法を用いて部分的又は全体的に製造される複数の部分118を含んでいる。例えば、一部の実施形態において、各部分118は、(i)炭素の少なくとも1つの同素形から形成された基体と、(ii)該基体の上のナノ粒子とを含むことができる。しかしながら、その他の基体及び/又は基体の上のその他の材料も使用され得る。
【0018】
図2A及び2Bは、本開示に従ったアディティブ製法を用いて作製された1つ以上の部分を含む熱交換器を有する第2の例のクライオクーラー200を示している。より具体的には、図2A及び2Bは、リジェネレータを有する二段スターリング冷凍機を例示しており、リジェネレータの一部がアディティブ製法を用いて作製されている。
【0019】
図2A及び2Bに示すように、圧縮機202が、膨張機アセンブリ204に流体的に結合され、膨張機アセンブリ204内で流体に往復運動させる。好適な如何なる圧縮機202がクライオクーラー200で使用されてもよい。膨張機アセンブリ204は、二段スターリング冷却システムの第1ステージ206の部分を表す。スターリング冷却システムの第2ステージ208はパルス管を含んでいる。
【0020】
第1ステージ206の部分を、図2Bに更に詳細に示している。図2Bに示すように、第1ステージ206は、第1及び第2ステージ206−208の中を巡回する流体がその中を通るリジェネレータ212を含んでいる。またもや、リジェネレータ212は、流体と接触して流体と熱を交換する構造を表す。例えば、流体が図2Bのリジェネレータ212を右から左に通るとき、流体からの熱をリジェネレータ212によって吸収することができる。流体が図2Bのリジェネレータ212を左から右に通るとき、リジェネレータ212からの熱を流体によって吸収することができる。
【0021】
より詳細に後述するように、リジェネレータ212は、アディティブ製法を用いて部分的又は全体的に製造される複数の部分218を含んでいる。一部の実施形態において、各部分218は、(i)炭素の少なくとも1つの同素形から形成された基体と、(ii)該基体の上のナノ粒子とを含むことができる。しかしながら、その他の基体及び/又は基体の上のその他の材料も使用され得る。
【0022】
図1、2A、及び2Bは、アディティブ製法を用いて作製された1つ以上の部分を含んだ熱交換器を有するクライオクーラーの例100、200を示しているが、図1、2A、及び2Bには様々な変更が為され得る。例えば、各リジェネレータ112、212又はその他の熱交換器は、如何なる数の部分118、218を含んでいてもよい。また、部分118、218はここでは物理的に隔てられて示されているが、これは単に図示の容易さのためである。クライオクーラー熱交換器のこれら様々な部分118、218は、好適な如何なる間隔を有していてもよく、あるいは、互いに物理的に接触していてもよい。また、図1、2A、及び2Bは、アディティブ製法を用いて作製された1つ以上の部分を含んだ熱交換器を含むクライオクーラーの例を表している。このような熱交換器が、例えば単一段のスターリング冷凍機又はギフォード・マクマホン冷凍機など、その他のタイプのクライオクーラーにて使用されてもよい。さらに、同じ又は同様の構造が、例えば逆ターボ・ブレイトン冷凍機又はジュール・トムソン冷凍機に関してなどで、向流熱交換器にて使用されてもよい。概して、あらゆる単一段又は多段のクライオクーラーが、アディティブ製法を用いて作製された少なくとも1つの部分を有するリジェネレータ、向流熱交換器、又はその他の熱交換器を含み得る。
【0023】
図3は、本開示に従ったアディティブ製法を用いて作製されたクライオクーラー熱交換器の部分118、218の一例を示している。図3に示すように、クライオクーラー熱交換器の部分118、218は、基体302及びナノ粒子層304を含んでいる。一部の実施形態において、基体302は概して、炭素の少なくとも1つの同素形を含んだ構造を表す。また、一部の実施形態において、ナノ粒子層304は概して、その中で、基体の上に(場合により、或るパターンで)ナノ粒子が付与されている層を表す。
【0024】
基体302は、その上にナノ粒子又はその他の材料を堆積、形成、又はその他の方法で置くことができる好適な(1つ以上の)材料を含む。特定の実施形態において、基体302は、例えばカーボンナノチューブ又はグラフェンなど、炭素の好適な(1つ以上の)同素形から形成される。基体302はまた、例えばカーボンナノチューブ又はグラフェンのシートを製造すること又は購入することによってなど、好適な如何なるやり方で形成されてもよい。
【0025】
ナノ粒子層304は、好適な(1つ以上の)材料から形成されたナノ粒子を含む。特定の実施形態において、ナノ粒子層304は、エルビウム(Er)、プラセオジム(Pr)、ホルミウム(Ho)、ガドリニウム(Gd)、又はその他の(1つ以上の)ランタニド元素若しくは(1つ以上の)合金から形成されたナノ粒子を含む。しかしながら、留意されたいことには、このナノ粒子は、非常に低い温度で非常に高い容積比熱を持つ好適な如何なる(1つ以上の)材料から形成されてもよい。その他の材料例は、鉛(Pb)、ニッケル(Ni)、又はその他の(1つ以上の)元素若しくは(1つ以上の)合金を含み得る。ナノ粒子はまた、好適な如何なる手法で付与されてもよい。技術の例は、インクジェットプリンタを用いて、懸濁されたナノ粒子を含有するインクを基体上に印刷することを含む。
【0026】
より詳細に後述するように、所望の熱伝達特性、流体フロー特性、又は熱交換器におけるその他の特性を達成するために、基体302の多孔率及びナノ粒子層304にナノ粒子を用いて形成されるパターンを制御又は変更することができる。例えば、基体上にナノ粒子が付与された後に、その構造が、その構造内に1つ以上の所望サイズの細孔(ポア)を作り出すように、1つ以上のポスト製造処理操作を受け得る。これは、例えば1つ以上のレーザを用いることによってなど、好適な如何なる手法で遂行されてもよい。一部の実施形態において、熱交換器内の流体の流れを実質的に妨げないように、多孔率が十分に高くなるように制御することができ、従来構造と比較して低減された、熱交換器内での圧力降下を得ることができる。
【0027】
炭素同素体から形成された基体の使用とナノ粒子とを組み合わせることは、実装に応じて様々な利点をもたらすことができる。例えば、クライオクーラーの高温端と低温端との間での熱交換器内の熱流は、クライオクーラーの全体的な冷却能力及び有効性を低下させる。しかしながら、カーボンナノチューブ又はグラフェンのような炭素同素体から形成された基体は、容易に、熱交換器内で軸方向(図1での上/下、又は図2Bでの左/右)に熱が伝わることを実質的に阻止しながら、径方向又は横方向(図1での左/右、又は図2Bでの上/下)に熱が伝わることを可能にする。本明細書において、用語“軸方向”は、熱交換器のより長い寸法に沿った熱交換器の軸に対して実質的に平行な方向を指す。用語“径方向”及び“横方向”は、軸方向に対して実質的に垂直な方向を指す。このように熱伝達を支援することにより、熱交換器内の軸方向の熱流を実質的に抑制することができながら、ナノ粒子層304の中及び外への径方向/横方向の熱伝達を向上させることができ、熱交換器内での端部間(エンド・ツー・エンド)熱伝導損失を低減して、クライオクーラーの全体的な冷却能力及び有効性を高める助けとなる。
【0028】
他の一例として、ナノ粒子の付与は、従来のクライオクーラー製造技術を用いてよりも遥かに小さいフィーチャ(造形)サイズを達成するように精密に制御され得る。例えば、ナノ粒子を含有するインクを基体上に印刷することは、約5ミクロンから10ミクロンほどの小ささの(又は更に小さい)フィーチャサイズで行われ得る。これは、所望の熱伝達をなおも達成しながら遥かに低い圧力損失を持つ熱交換器の設計を容易にする。これはまた、従来の低温クライオクーラーに対して有意に高い周波数での動作を可能にすることができる。それは何故なら、より小さいフィーチャサイズは、より小さい、基体302/ナノ粒子層304とクライオクーラー内の流体との間の距離での、より迅速な熱交換を支援するからである。
【0029】
これら及びその他の特徴は、クライオクーラー100、200が、より小型のパッケージ内で、より高い周波数で動作することを可能にする。例えば、4ケルビンの温度に到達しようとする多くの従来クライオクーラーは、1ヘルツ(Hz)と20Hzとの間の周波数で動作することが多い。本明細書に記載されるアプローチは、例えば約30Hzから約60Hzの間など、より高い周波数で使用されることができる。クライオクーラーのサイズ/質量は典型的にその周波数とは逆に増減するので、これは、クライオクーラー100、200のサイズ/質量を低減する助けとなる。また、これら及びその他の特徴は、クライオクーラー100、200が、固体材料のいっそう効果的な使用による効率増大を達成することを可能にする。さらに、これら及びその他の特徴は、クライオクーラー100、200が圧力降下を低減してクライオクーラー100、200における伝導損を低減することを可能にする。全体として、これは、クライオクーラー100、200が、例えば20ケルビン未満の温度(約10ケルビン又は約4ケルビンを含めて)などの、より低い極低温をいっそう効率的且つ効果的に達成することを可能にする。
【0030】
図3は、アディティブ製法を用いて作製されたクライオクーラー熱交換器の部分118、218の一例を示しているが、図3には様々な変更が為され得る。例えば、(1つ以上の)材料の更なる層が、好適な(1つ以上の)位置に使用され得る。また、本開示は、熱交換器における炭素同素体及びナノ粒子との使用のみに限定されるものではない。様々なその他の構造及び技術(例えば、化学気相成長など)が、クライオクーラーの熱交換器をアディティブ(加法的)に製造するために使用され得る。特定の例として、1つ以上のランタニド合金を適用するために、以下の化学気相成長(CVD)技術を使用することができる。一例の技術は、望ましい金属/合金組成を有するとともにこの金属/合金をシート基板上に直接的に堆積させるように真空下で加熱される球体/ペレットの形態をした開始材料を使用する。他の一例の技術は、各ランタニド又はその他の金属の複数のサブミクロン層を設けてスタックを形成し、その後に、このスタックが、各金属層の間での相互拡散を促進する(故に、合金を形成する)ように、上昇された温度に晒される。
【0031】
図4及び5は、本開示に従ったクライオクーラー熱交換器用の基体の例を示している。より具体的には、図4及び5は、図1、2A、及び2Bのリジェネレータ112、212、又はその他の好適なクライオクーラー熱交換器の中の様々な部分118、218に使用され得る基体302の例を示している。
【0032】
図4は、カーボンナノチューブ402のシート400の一部の拡大図を示している。図4にて見て取れるように、カーボンナノチューブ402は、概して平面状であり、シート400内で実質的に横方向に走る。ここではカーボンナノチューブ402がシート内でランダムな経路で走っているが、より規則的な経路がシート400内に与えられてもよい。
【0033】
カーボンナノチューブ402のこの構成は、流体がシート400中を流れてカーボンナノチューブ402及び隣接する(1つ以上の)ナノ粒子層304内のナノ粒子と接触することを可能にする。流体とカーボンナノチューブ402との間で熱伝達が起こることができる。熱伝達はまた、カーボンナノチューブ402と、隣接する(1つ以上の)ナノ粒子層304(ここでは、流体とナノ粒子との間で熱伝達が起こっている)の中のナノ粒子との間でも起こることができる。シート400の多孔率は、例えば、シート400内のカーボンナノチューブ402の量及びサイズと、何らかのポスト製造処理操作(例えば、シート400中でのレーザエッチングなど)とに基づいて制御されることができる。また、シート400の全体的なサイズ及び形状は、例えば所望の容積熱容量及び熱交換器の形状などの様々なファクタに基づき得る。
【0034】
シート400内での熱輸送は概してカーボンナノチューブ402に沿って起こる。図4にて見て取れるように、カーボンナノチューブ402はシート400内で概して横方向(左右)に走っている。結果として、カーボンナノチューブ402を通じて輸送される熱のうちのかなりの部分が、シート400内で横方向に輸送される。カーボンナノチューブ402は小さい程度でシート400内を軸方向(上下)に走っており、これは、シート400の軸方向にかなり小さい量の熱輸送をもたらす。なお、熱交換器の容積熱容量を調節するように、カーボンナノチューブ402を、1つ以上のその他の材料でドープすること又はそれとともに共析出させることも可能である。
【0035】
図5では、グラフェン(時折“グラフェンペーパー”と呼ばれる)のシート500が使用されている。図5にて見て取れるように、シート500は、炭素原子の密な六角形配列502を用いて形成された薄い構造を表す。例えばレーザエッチングによってなどの好適な手法で、グラフェンのシート500内に細孔を形成することができる。これは、流体がシート500中を流れてグラフェンと接触することを可能にする。流体とグラフェンとの間で熱伝達が起こることができ、熱伝達はまた、グラフェンと、隣接する(1つ以上の)ナノ粒子層304(ここでは、流体とナノ粒子との間で熱伝達が起こっている)の中のナノ粒子との間でも起こることができる。なお、ディスク形状であるように示されているが、シート500の全体的なサイズ及び形状は、例えば所望の容積熱容量及び熱交換器の形状などの様々なファクタに基づき得る。
【0036】
またもや、シート500内での熱輸送は、主に炭素原子の配列502に沿って、概して横方向に起こる。配列502はシート500内で横方向(左右)に配されるので、配列502を通じて輸送される熱のうちのかなりの部分が、シート500内で横方向に輸送される。配列502は小さい程度でシート500内を軸方向(上下)に走っており、これは、シート500内の軸方向にかなり小さい量の熱輸送をもたらす。
【0037】
図4及び5は、クライオクーラー熱交換器用の基体の例を示しているが、図4及び5には様々な変更が為され得る。例えば、各部分118、218は、例えば、長方形シート、円形ディスク、ドーナツ形ディスク、又はその他の規則的若しくは不規則な形状など、好適な如何なるフォームファクタを有していてもよい。また、上述のように、本開示は、炭素同素体を含有する基体との使用に限定されるものではない。
【0038】
図6は、本開示に従ったアディティブ製法を用いて作製されたクライオクーラー熱交換器の部分118、218の一具体例を示している。この例において、ナノ粒子層304は、ナノ粒子の横線及び縦線を持つ格子パターンで印刷されている。しかしながら、留意されたいことには、ナノ粒子のその他のパターン又は追加のパターンが使用されてもよい。
【0039】
これまた図6に示すように、構造内に細孔602が形成されている。細孔602は、クライオクーラー熱交換器の部分118、218の中を流体が流れるための通路を表す。細孔602は、例えばレーザエッチングによってなど、好適な如何なる手法で形成されてもよい。好適な如何なる数の細孔が、好適な如何なるパターンで形成されてもよい。
【0040】
ナノ粒子を付与するために印刷が使用される実施形態において、この印刷及びレーザプロセスは、例えば多孔率、水力学的及び固体のフィーチャサイズ、フィーチャ間隔、並びにパターンなどのパラメータに対する精密な制御を可能にし得る。一部の実施形態において、印刷されるナノ粒子材料(層304を形成する格子線)及び流路(細孔602)の双方について、約5ミクロンから10ミクロンのフィーチャサイズを使用し得る。
【0041】
図6は、アディティブ製法を用いて作製されるクライオクーラー熱交換器の部分118、218の一具体例を示しているが、図6には様々な変更が為され得る。例えば、その他の又は追加の規則的若しくは不規則な配置のナノ粒子及び細孔が使用されてもよい。また、細孔602の使用は、図6に示した基体302及びナノ粒子層304の特定の実装に限定されるものではない。さらに、上述のように、本開示は、ナノ粒子との使用に限定されるものではない。
【0042】
図7−9は、本開示に従ったアディティブ製法を用いてクライオクーラー熱交換器を形成する方法の例700、800、900を示している。図7に示すように、ステップ702にて、基体と、ナノ粒子を含有するインクとが取得される。これは、例えば、カーボンナノチューブ又はグラフェンのシートを製造、購入、又はその他の方法で取得することを含み得る。これはまた、ランタニド元素、ランタニド合金、又はその他のナノ粒子を含有するインクを製造、購入、又はその他の方法で取得することを含み得る。
【0043】
ステップ704にて、ナノ粒子層を形成するように、基体上にインクが印刷される。これは、例えば、インクジェットプリンタを用いて、基体上にインクを印刷することを含み得る。例えばOPTOMEC AEROJETプリンタなど、好適な如何なるインクジェットプリンタが使用されてもよい。また、インクは、例えば格子パターン又はその他のパターンなど、好適な如何なるやり方で付与されてもよい。
【0044】
ステップ706にて、ナノ粒子層内のナノ粒子を溶かすように、熱処理が実行される。これは、例えば、約150℃(約302°F)で熱処理を実行することを含み得る。特定の一例として、これは、光焼結プロセスを実行することを含み得る。この熱処理は、ナノ粒子を用いて形成される格子パターン又はその他の(1つ以上の)パターンにおける連続性を確保する助けとするために、ナノ粒子を溶かす。
【0045】
ステップ708にて、この構造体が穿孔される。これは、例えば、レーザを用いて基体中に細孔を形成することを含み得る。細孔の位置に応じて、これは、ナノ粒子パターン中に細孔を形成することを含むこともあるし含まないこともある。ステップ710にて、この構造体が複数のディスクへと切断され、これらのディスクが、ステップ712にて、熱交換器を形成するように積み重ねられる。これは、例えば、レーザを用いて構造体をディスクへと切断することを含み得る。これはまた、好適な接合剤又はその他の機構を用いてディスクを積層することを含み得る。なお、ディスクの使用は単に例示のためであり、熱交換器は、他の所望断面形状のセクション(区画)を有していてもよい。得られた構造体が、完成した熱交換器を表し得る。あるいは、その他の処理工程が実行されて、完成した熱交換器の製造を完了し得る。
【0046】
図8に示すように、ステップ802にて、ナノ粒子を含有するインクが取得される。これは、例えば、ランタニド元素、ランタニド合金、又はその他のナノ粒子を含有するインクを製造、購入、又はその他の方法で取得することを含み得る。
【0047】
ステップ804にて、基体が形成される。これは、例えば、インクジェットプリンタ又はその他の装置を用いて、カーボンナノチューブ又はグラフェンを所望の基体の形状に形成することを含み得る。しかしながら、留意されたいことには、その他の好適技術を用いて、例えば炭素の同素形を含有する基体を作り出してもよい。ステップ806にて、ナノ粒子層を形成するように、基体上にインクが印刷される。これは、例えば、インクジェットプリンタを用いて、基体上にインクを格子パターン又はその他の(1つ以上の)パターンで印刷することを含み得る。
【0048】
ステップ808にて、更なる基体及びナノ粒子層を形成すべきかの決定が為される。これは、例えば、所望数の基体及びナノ粒子層が製造されたかを決定することを含み得る。更なる基体及びナノ粒子層が必要な場合、このプロセスはステップ804へと戻り、先に製造されたナノ粒子層の上に別の基体が形成され得る。
【0049】
そうでない場合、ステップ810にて、ナノ粒子層内のナノ粒子を溶かすように、熱処理が実行され、そして、ステップ812にて、この構造体が穿孔される。これは、例えば、約150℃(約302°F)又はその他の温度で、光焼結プロセス又はその他の熱処理を実行することを含み得る。これはまた、レーザを用いて基体中に細孔を形成することを含み得る。得られた構造体が、完成した熱交換器を表し得る。あるいは、その他の処理工程が実行されて、完成した熱交換器の製造を完了し得る。
【0050】
図9に示すように、ステップ902にて、基体が取得される。これは、例えば、カーボンナノチューブ又はグラフェンのシートを製造、購入、又はその他の方法で取得することを含み得る。しかしながら、留意されたいことには、基体はその他の(1つ以上の)好適材料から形成されてもよい。
【0051】
ステップ904にて、基体の上に金属の層が形成される。これは、例えば、金属ナノ粒子(例えば、1つ以上のランタニド金属又は合金など)を含有するインクを基体上に印刷して、ナノ粒子層を形成することを含み得る。これはまた、CVD技術を使用することを含んでいてもよい。上述のように、1つのCVD技術は、所望の金属又は合金組成を持つ球体/ペレットを真空下で加熱して、シート基板上に直接的に金属/合金を堆積させる。別の1つのCVD技術は、複数層の金属を形成し、該金属を加熱して合金を形成する。
【0052】
ステップ906にて、この構造体が穿孔される。これは、例えば、レーザを用いて構造体の中に細孔を形成することを含み得る。ステップ908にて、この構造体が複数のディスクへと切断され、これらのディスクが、ステップ910にて、熱交換器を形成するように積み重ねられる。これは、例えば、レーザを用いて構造体をディスクへと切断することを含み得る。これはまた、好適な接合剤又はその他の機構を用いてディスクを積層することを含み得る。なお、ディスクの使用は単に例示のためであり、熱交換器は、他の所望断面形状のセクションを有していてもよい。得られた構造体が、完成した熱交換器を表し得る。あるいは、その他の処理工程が実行されて、完成した熱交換器の製造を完了し得る。
【0053】
図7−9は、アディティブ製法を用いてクライオクーラー熱交換器を形成する方法の例700、800、900を示しているが、図7−9には様々な変更が為され得る。例えば、各図が一連のステップを示しているが、各図の様々なステップは、重なっていたり、並行して行われたり、異なる順序で行われたり、又は複数回行われたりしてもよい。また、その他のアディティブ製造技術が使用されてもよい。
【0054】
上述のナノ粒子は、現在既知の又は将来開発される好適な如何なる技術を用いて製造されてもよい。例えば、一部の実施形態において、米国特許第7789935号(その全体をここに援用する)に記載された技術を用いて、上述のようにして使用されるナノ粒子を製造することができる。
【0055】
他の実施形態において、ランタニド元素又はランタニド合金のナノ粒子をサポートするように、米国特許第7789935号に記載された技術を変更することができる。ランタニド元素は水と反応して水素ガスと金属水酸化物とを生成するので、ランタニドナノ粒子は、有機又はその他の非水性溶液を用いて製造され得る。
【0056】
更なる他の実施形態において、ランタニドナノ粒子は、米国特許出願第14/542150号(その全体をここに援用する)に記載されるようにして製造され得る。そのアプローチによれば、ランタニドナノ粒子は、有機溶媒(例えば、アルコールなど)又はその他の非水性液体に溶解されたランタニド化合物(例えば、金属塩など)を用いて製造されることができる。この溶液が、有機溶媒(例えば、アルコールなど)又はその他の非水性液体の中に光開始剤(例えば、ベンゾフェノンなど)を含有した別の溶液と混ぜ合わされる。この混合の前、最中、又は後に、この(1つ以上の)溶液中に溶解された1つ以上のガス(例えば、酸素など)を実質的に除去するために、この(1つ以上の)溶液が脱気され得る。得られた混合物が、少なくとも規定時間量、紫外線(UV)照射に曝され、そして、混合物が乾燥される。残った残留物がランタニドナノ粒子を含有する。
【0057】
特定の実施形態において、ランタニドナノ粒子は、以下のようにして製造されてもよい。高性能液体クロマトグラフィ(HPLC)グレードのイソプロピルアルコール中におよそ10−3Mのベンゾフェノンを含有する溶液を調合するとともに、HPLCグレードのイソプロピルアルコール中におよそ10−3Mの高純度の無水塩化エルビウムを含有する別の溶液を調合する。これらの溶液中に、例えば最短で約15分など、乾燥窒素を泡立てることで、溶解している酸素をこれらの溶液から抜くことができる。およそ50mlの上記ベンゾフェノン溶液を、およそ25mlの上記エルビウム溶液と混ぜ合わせ、例えばペトリ皿などの容器内に置く。この容器を、例えば水銀ランプ又はその他の卓上UVライトからのUV照明に、好適な時間長さ(例えば、約2分と約10分との間など)だけ曝す。この混合物を、例えば約12時間にわたって室温のアクティブ気流の中で等により、乾燥させ、そして、得られた残留物がエルビウムナノ粒子を含有する。
【0058】
なお、上で援用した米国特許第7789935号はまた、ナノ粒子を含有するインクを策定する技術についても開示しており、それがここで使用され得る。しかしながら、現在既知の又は将来開発されるその他の技術を用いて、ランタニド又はその他のナノ粒子を含有するインクを策定してもよい。
【0059】
本特許文献の全体を通して使用される特定の単語及びフレーズの定義を説明しておくことが有益であるかもしれない。用語“含む”及び“有する”、並びにこれらの派生語は、限定なしでの包含を意味する。用語“又は”は、及び/又はを意味する包括的なものである。“〜と関連付けられる”なる言い回し、及びその派生語は、〜を含む、〜の中に含まれる、〜と相互接続される、〜を含有する、〜内に含有される、〜に又は〜と接続する、〜に又は〜と結合する、〜と通信可能である、〜と協働する、〜と交互である、〜隣り合う、〜に近接した、〜に又は〜と結合される、〜を有する、〜の特性を有する、〜に又は〜と関係を有する、又はこれらに類するものを意味し得る。“〜のうちの少なくとも1つ”なる言い回しは、アイテムのリストとともに使用されるとき、リストアップされたアイテムのうちの1つ以上の様々な組み合わせが使用され得ることを意味し、リスト内の1つのアイテムのみが必要とされることもある。例えば、“A、B、及びCのうちの少なくとも1つ”は、以下の組み合わせ:A、B、C、AとB、AとC、BとC、及びAとBとC、のうちの何れをも含む。
【0060】
本開示は、特定の実施形態及び概して関連する方法を述べてきたが、これらの実施形態及び方法の改変及び並べ替えが当業者に明らかになる。従って、以上の実施形態例の説明は、本開示を定めたり制約したりするものではない。以下の請求項によって規定される本開示の精神及び範囲を逸脱することなく、その他の変形、代用、及び改変も可能である。
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9