(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6880096
(24)【登録日】2021年5月7日
(45)【発行日】2021年6月2日
(54)【発明の名称】保温二重鋼ラインパイプの加工プロセス
(51)【国際特許分類】
F16L 9/18 20060101AFI20210524BHJP
C21D 9/08 20060101ALI20210524BHJP
C21D 9/50 20060101ALI20210524BHJP
B21C 37/08 20060101ALI20210524BHJP
F16L 59/07 20060101ALI20210524BHJP
F16L 59/14 20060101ALI20210524BHJP
B21C 37/06 20060101ALI20210524BHJP
C22C 38/00 20060101ALN20210524BHJP
C22C 38/44 20060101ALN20210524BHJP
C22C 14/00 20060101ALN20210524BHJP
【FI】
F16L9/18
C21D9/08 F
C21D9/50 101A
B21C37/08 A
F16L59/07
F16L59/14
B21C37/06 K
!C22C38/00 302Z
!C22C38/44
!C22C14/00 Z
!C22C38/00 301Z
【請求項の数】8
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2019-63797(P2019-63797)
(22)【出願日】2019年3月28日
(65)【公開番号】特開2020-122568(P2020-122568A)
(43)【公開日】2020年8月13日
【審査請求日】2019年3月28日
(31)【優先権主張番号】201910086536.2
(32)【優先日】2019年1月29日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】519112151
【氏名又は名称】信達科創(唐山)石油設備有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100130111
【弁理士】
【氏名又は名称】新保 斉
(72)【発明者】
【氏名】張 書軍
(72)【発明者】
【氏名】鄭 ▲ビン▼
(72)【発明者】
【氏名】段 建良
(72)【発明者】
【氏名】董 健
(72)【発明者】
【氏名】林 越青
(72)【発明者】
【氏名】劉 祥
(72)【発明者】
【氏名】上官 豊収
【審査官】
柳本 幸雄
(56)【参考文献】
【文献】
特開平03−050497(JP,A)
【文献】
実開昭52−009816(JP,U)
【文献】
米国特許第04786088(US,A)
【文献】
特開平07−293718(JP,A)
【文献】
特開昭61−202042(JP,A)
【文献】
実開昭61−154388(JP,U)
【文献】
米国特許出願公開第2006/0196568(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 9/18
B21C 37/06
B21C 37/08
C21D 9/08
C21D 9/50
F16L 59/07
F16L 59/14
C22C 14/00
C22C 38/00
C22C 38/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地下石油及び地下熱源の採掘に適用され、かつ地面から1000−8000メートル深さでの作業に適用される保温二重鋼ラインパイプであって、
前記二重鋼ラインパイプの長さは1000−8000メートルであり、
媒体輸送鋼管と、ジャケット鋼管とを備え、かつジャケット鋼管が媒体輸送鋼管の外側に套設されており、前記媒体輸送鋼管と前記ジャケット鋼管の間に環状キャビティとなる隙間を有し、前記媒体輸送鋼管と前記ジャケット鋼管の間に支持ホルダーが設置されている保温二重鋼ラインパイプであって、前記環状キャビティが真空キャビティであり、前記ジャケット鋼管の両端が引き締められ、前記ジャケット鋼管の引き締め部位が複数のシールリングで前記媒体輸送鋼管の外壁とシールし、前記環状キャビティ内に相変化材料がさらに充填されており、前記支持ホルダーは、螺旋環状支持ホルダーまたはC字型支持ホルダーであり、支持ホルダーが前記螺旋環状支持ホルダーである場合、前記螺旋環状支持ホルダーは前記媒体輸送鋼管の外周側に套設され、かつ前記媒体輸送鋼管と接触せず、支持ホルダーが前記C字型支持ホルダーである場合、複数の前記C字型支持ホルダーは間隔を置いて前記媒体輸送鋼管の外周側に巻き付けられる
ことを特徴とする保温二重鋼ラインパイプの加工プロセスであって、
前記媒体輸送鋼管に使用される鋼板の表面を洗浄し、次に折り曲げ、レーザー溶接を行って、溶接して管にした後、熱処理を行い、製造された媒体輸送鋼管について非破壊検査を行うステップ(1)と、
前記螺旋環状支持ホルダーと前記媒体輸送鋼管を接触させることなく、螺旋環状支持ホルダーを前記非破壊検査に合格した媒体輸送鋼管の外周側に套設し、または前記媒体輸送鋼管の外周側にC字型支持ホルダーを間隔を置いて巻き付けるステップ(2)と、
前記ジャケット鋼管に使用される鋼板の表面を洗浄し、次に折り曲げ、前記支持ホルダーがジャケット鋼管の内壁をしっかりと支持するように、折り曲げる過程において外表面に支持ホルダーが設置された媒体輸送鋼管を内側に包み、包んだ後にレーザー溶接によりシールしてジャケット管にし、溶接して管にした後、ジャケット管を熱処理して、製造されたジャケット鋼管について非破壊検査を行い、ジャケット鋼管と媒体輸送鋼管の間における環状キャビティの厚みを2−7mmとするステップ(3)と、
ジャケット管の環状キャビティに相変化エネルギー貯蔵材料をセットして、次にジャケット鋼管の引き締め開口部で複数のゴムリングを取り付けてシールし、さらに環状キャビティについて真空化処理を行い、環状キャビティを真空にして、最後にジャケット鋼管の開口を溶接によりシールするステップ(4)と、
ステップ(4)で製造された二重鋼ラインパイプを50℃−280℃で30−60min熱処理し、冷却させた後、二重鋼ラインパイプの外側に防腐液を塗布し、本発明の保温二重鋼ラインパイプを得るステップ(5)とを含み、
前記ステップ(1)とステップ(2)の熱処理プロセスは、溶接された媒体輸送鋼管とジャケット鋼管を700℃−1070℃で10−40分間加熱処理し、次に還元性雰囲気下で冷却させて、さらに550℃−720℃の焼入れによって鋼管における内部応力を解消して、鋼管の靱性と硬度を調整することである
ことを特徴とする保温二重鋼ラインパイプの加工プロセス。
【請求項2】
地下石油及び地下熱源の採掘に適用され、かつ地面から1000−8000メートル深さでの作業に適用される保温二重鋼ラインパイプであって、
前記二重鋼ラインパイプの長さは1000−8000メートルであり、
媒体輸送鋼管と、ジャケット鋼管とを備え、かつジャケット鋼管が媒体輸送鋼管の外側に套設されており、前記媒体輸送鋼管と前記ジャケット鋼管の間に環状キャビティとなる隙間を有し、前記媒体輸送鋼管と前記ジャケット鋼管の間に支持ホルダーが設置されている保温二重鋼ラインパイプであって、前記環状キャビティが真空キャビティであり、前記ジャケット鋼管の両端が引き締められ、前記ジャケット鋼管の引き締め部位が複数のシールリングで前記媒体輸送鋼管の外壁とシールし、前記環状キャビティ内に相変化材料がさらに充填されており、前記支持ホルダーは、螺旋環状支持ホルダーまたはC字型支持ホルダーであり、支持ホルダーが前記螺旋環状支持ホルダーである場合、前記螺旋環状支持ホルダーは前記媒体輸送鋼管の外周側に套設され、かつ前記媒体輸送鋼管と接触せず、支持ホルダーが前記C字型支持ホルダーである場合、複数の前記C字型支持ホルダーは間隔を置いて前記媒体輸送鋼管の外周側に巻き付けられる
ことを特徴とする保温二重鋼ラインパイプの加工プロセスであって、
前記媒体輸送鋼管に使用される鋼板の表面を洗浄し、次に折り曲げ、レーザー溶接を行って、溶接して管にした後、熱処理を行い、製造された媒体輸送鋼管について非破壊検査を行うステップ(1)と、
前記螺旋環状支持ホルダーと前記媒体輸送鋼管を接触させることなく、螺旋環状支持ホルダーを前記非破壊検査に合格した媒体輸送鋼管の外周側に套設し、または前記媒体輸送鋼管の外周側にC字型支持ホルダーを間隔を置いて巻き付けるステップ(2)と、
前記ジャケット鋼管に使用される鋼板の表面を洗浄し、次に折り曲げ、前記支持ホルダーがジャケット鋼管の内壁をしっかりと支持するように、折り曲げる過程において外表面に支持ホルダーが設置された媒体輸送鋼管を内側に包み、包んだ後にレーザー溶接によりシールしてジャケット管にし、溶接して管にした後、ジャケット管を熱処理して、製造されたジャケット鋼管について非破壊検査を行い、ジャケット鋼管と媒体輸送鋼管の間における環状キャビティの厚みを2−7mmとするステップ(3)と、
ジャケット管の環状キャビティに相変化エネルギー貯蔵材料をセットして、次にジャケット鋼管の引き締め開口部で複数のゴムリングを取り付けてシールし、さらに環状キャビティについて真空化処理を行い、環状キャビティを真空にして、最後にジャケット鋼管の開口を溶接によりシールするステップ(4)と、
ステップ(4)で製造された二重鋼ラインパイプを50℃−280℃で30−60min熱処理し、冷却させた後、二重鋼ラインパイプの外側に防腐液を塗布し、本発明の保温二重鋼ラインパイプを得るステップ(5)とを含み、
ステップ(1)とステップ(3)では、鋼板をレーザー溶接して管にするとき、ビードの内部余盛高さが0.25mm以下である
ことを特徴とする保温二重鋼ラインパイプの加工プロセス。
【請求項3】
地下石油及び地下熱源の採掘に適用され、かつ地面から1000−8000メートル深さでの作業に適用される保温二重鋼ラインパイプであって、
前記二重鋼ラインパイプの長さは1000−8000メートルであり、
媒体輸送鋼管と、ジャケット鋼管とを備え、かつジャケット鋼管が媒体輸送鋼管の外側に套設されており、前記媒体輸送鋼管と前記ジャケット鋼管の間に環状キャビティとなる隙間を有し、前記媒体輸送鋼管と前記ジャケット鋼管の間に支持ホルダーが設置されている保温二重鋼ラインパイプであって、前記環状キャビティが真空キャビティであり、前記ジャケット鋼管の両端が引き締められ、前記ジャケット鋼管の引き締め部位が複数のシールリングで前記媒体輸送鋼管の外壁とシールし、前記環状キャビティ内に相変化材料がさらに充填されており、前記支持ホルダーは、螺旋環状支持ホルダーまたはC字型支持ホルダーであり、支持ホルダーが前記螺旋環状支持ホルダーである場合、前記螺旋環状支持ホルダーは前記媒体輸送鋼管の外周側に套設され、かつ前記媒体輸送鋼管と接触せず、支持ホルダーが前記C字型支持ホルダーである場合、複数の前記C字型支持ホルダーは間隔を置いて前記媒体輸送鋼管の外周側に巻き付けられる
ことを特徴とする保温二重鋼ラインパイプの加工プロセスであって、
前記媒体輸送鋼管に使用される鋼板の表面を洗浄し、次に折り曲げ、レーザー溶接を行って、溶接して管にした後、熱処理を行い、製造された媒体輸送鋼管について非破壊検査を行うステップ(1)と、
前記螺旋環状支持ホルダーと前記媒体輸送鋼管を接触させることなく、螺旋環状支持ホルダーを前記非破壊検査に合格した媒体輸送鋼管の外周側に套設し、または前記媒体輸送鋼管の外周側にC字型支持ホルダーを間隔を置いて巻き付けるステップ(2)と、
前記ジャケット鋼管に使用される鋼板の表面を洗浄し、次に折り曲げ、前記支持ホルダーがジャケット鋼管の内壁をしっかりと支持するように、折り曲げる過程において外表面に支持ホルダーが設置された媒体輸送鋼管を内側に包み、包んだ後にレーザー溶接によりシールしてジャケット管にし、溶接して管にした後、ジャケット管を熱処理して、製造されたジャケット鋼管について非破壊検査を行い、ジャケット鋼管と媒体輸送鋼管の間における環状キャビティの厚みを2−7mmとするステップ(3)と、
ジャケット管の環状キャビティに相変化エネルギー貯蔵材料をセットして、次にジャケット鋼管の引き締め開口部で複数のゴムリングを取り付けてシールし、さらに環状キャビティについて真空化処理を行い、環状キャビティを真空にして、最後にジャケット鋼管の開口を溶接によりシールするステップ(4)と、
ステップ(4)で製造された二重鋼ラインパイプを50℃−280℃で30−60min熱処理し、冷却させた後、二重鋼ラインパイプの外側に防腐液を塗布し、本発明の保温二重鋼ラインパイプを得るステップ(5)とを含み、
ステップ(5)では、ステップ(4)で製造された二重鋼ラインパイプを熱処理する前に、S字型に折り曲げる
ことを特徴とする保温二重鋼ラインパイプの加工プロセス。
【請求項4】
前記螺旋環状支持ホルダーまたはC字型支持ホルダーは弾性材料で製造される
請求項1ないし3のいずれかに記載の保温二重鋼ラインパイプの加工プロセス。
【請求項5】
前記ジャケット鋼管の外側に防腐液層が塗布されている
請求項4に記載の保温二重鋼ラインパイプの加工プロセス。
【請求項6】
前記相変化材料はパラフィンである
請求項1ないし3のいずれかに記載の保温二重鋼ラインパイプの加工プロセス。
【請求項7】
前記環状キャビティの厚みは2−7mmである
請求項1ないし3のいずれかに記載の保温二重鋼ラインパイプの加工プロセス。
【請求項8】
前記媒体輸送鋼管とジャケット鋼管の材質は、ステンレス鋼、炭素鋼またはチタン合金のうちのいずれか1種または複数種の組み合わせである
請求項1ないし3のいずれかに記載の保温二重鋼ラインパイプの加工プロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保温ラインパイプの技術分野に関し、特に超長距離の保温二重鋼ラインパイプ及びその加工プロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、大部分の地域では冬季に石炭火力により暖房を行い、しかも熱の伝達過程で必然的に損失が発生するため、石炭使用量が急激に増加することになり、エネルギー資源の継続的な削減に伴い、エネルギー消費量の削減は解決すべき差し迫った問題の1つとなっている。
【0003】
地熱は地球内部に含まれる熱エネルギーであり、2つの異なる由来があり、1つは地球の外部から、もう1つは地球の内部からである。表面から内部にかけて、太陽放射による影響は徐々に弱まり、ある程度の深さになるとこの影響が消えて、一年中温度が変化しない、いわゆる「常温層」になる。さらに常温層から下方に向かって、地球内部の熱の影響によって地温が徐々に上昇し、このような地球内部からの熱エネルギーを「内部熱」と呼ぶ。地下100mまたは1km深くなるごとに地温の上昇量は地下増温率と呼ばれる。その開発と利用の観点から、地熱エネルギーは他の再生可能エネルギー源よりも開発の潜在力が高く、世界中からますます注目を集めている。
【0004】
現在、地熱資源は主に次のような用途に使われている。
【0005】
地熱発電:
地熱エネルギーを使う最も直接的な方法である。地熱発電の原理は、火力発電の原理と同様に、蒸気の熱エネルギーを蒸気タービンで機械エネルギーに変換してから、発電機を発電させることである。違いは、地熱発電には火力発電のような巨大なボイラーが必要ではなく、燃料を消費する必要もなく、使用されるエネルギーが地熱エネルギーである点にある。地熱発電プロセスは、地下の熱エネルギーを機械的エネルギーに変換してから、機械的エネルギーを電気エネルギーに変換するプロセスである。現在、地熱発電所で利用可能な熱媒体は、主に地下の天然蒸気及び熱湯である。
【0006】
地熱暖房:
地熱エネルギーの暖房、加熱及び給湯への直接の利用は地熱発電に次ぐ地熱利用方式である。
【0007】
地熱の農業での利用:
適切な温度の地熱水を使って農地を灌漑すると、農作物を早熟させて作物収量を増やすこと、地熱水を使って魚を育てると、28℃の水温で魚の肥育を促進し魚の収量を向上させること、地熱を使って温室を作り、育苗、野菜栽培、花を育てることを行うことや地熱を利用してバイオガスタンクを加熱すると、バイオガスの生産量を増やすことなどが挙げられる。
【0008】
地熱の工業での利用:
地熱水には、臭素、ヨウ素、ホウ素、カリウム、セシウム、重水やカリウム塩などの貴重な希少元素、放射性元素、希ガスや化合物が多く含まれており、防衛産業、原子力産業、化学産業、農業に欠かせない原料である。
【0009】
地熱による医療及び旅行:
地熱水は、高温、特殊な化学組成、ガス組成、少量の生物活性イオン及び放射性物質などを含み、一部の地熱地域ではスラッジが形成されて、人体に明らかな医学的及び健康的作用を与える。
【0010】
地熱エネルギーには幅広い利用価値があり、地熱資源をより有効に活用するためには、地熱利用率が低い、採掘可能な地熱資源が少ない、採掘コストが高いなどの問題を解決する必要がある。
【0011】
現在、限られた採掘技術のために、浅層の地熱エネルギーしか利用することができないが、採掘プロセスにおいてパイプの保温効果が乏しいため、地熱エネルギーの利用率をさらに低下させ、地熱エネルギーの採掘や利用が制限されてしまう。
【0012】
同様に、石油地下採掘プロセスにも、パイプラインの保温効果が低いことにより、石油採掘が困難となる場合がある。原油とも呼ばれる石油は、地下深部から採掘された茶黒色の可燃性粘稠液体であり、−50℃から35℃の間で凝固点を有し、採掘中のパイプラインの保温効果が乏しいと、採掘パイプラインで原油が凝固されやすくなり、円滑な採掘を確実にするためには、凝固した原油を適時に加熱することが必要であり、それによって、石油採掘のコストとサイクルが大幅に増える。そのため、石油採掘プロセスでも、保温効果の高いパイプラインが必要である。
【0013】
特許文献1には、媒体輸送鋼管の外側にジャケット鋼管を套設し、媒体輸送鋼管に複数の可動サポートを固定し、固定ブラケットの両端をそれぞれジャケット鋼管と媒体輸送鋼管に接続し、媒体輸送鋼管とジャケット鋼管との間に断熱綿を充填し、ジャケット鋼管と媒体輸送鋼管との間を真空状態にする真空保温パイプラインが開示されており、真空断熱によりパイプの保温性能を向上させているが、長さが大きいジャケット管の場合は、可動サポートは支持作用を効果的に果たすことができず、かつ該製品のジャケット鋼管と媒体輸送鋼管は固定ブラケットで接続されているため、数キロメートルの地下工事で使用すると変形しやすく、固定ブラケットの故障を引き起こし、その結果、パイプラインの耐用年数を大幅に短縮させる。
【0014】
特許文献2には、媒体輸送鋼管と、前記媒体輸送鋼管に套設されたPPR管と、前記PPR管に套設された保護鋼管とを含む二重鋼保温パイプが開示されており、前記媒体輸送鋼管とPPR管との間にシールキャビティが形成され、かつ媒体輸送鋼管とPPR管との間に両者の同軸を維持するための支持フレームが配置され、前記媒体輸送鋼管の外壁にはさらに加熱部材が設けられ、該二重鋼保温パイプの中央にはPPR管がさらに設置され、かつ媒体輸送鋼管の外壁に加熱部材が取り付けられて保温効果を実現しているものの、該鋼管は地下熱源採掘作業には適しておらず、PPR管を追加することで保温効果は高まるが、地熱温度が高い作業環境にあるため、PPRが加熱されて変形し、この結果、その保温効果が急激に低下してしまう。
【0015】
したがって、地下用の媒体輸送鋼管の保温効果を改善する方法は、地熱エネルギーの開発及び石油採掘におけるエネルギー損失などの様々な問題を解決する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】中国特許CN2643136Y(授権公告日:2004年9月22日)
【特許文献2】中国特許CN208090184U(授権公告日:2018年11月13日)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
上記問題に対して、本発明は、地下地熱資源と石油資源の採掘や開発に利用でき、保温効果が高いとともに、耐用年数が長く、かつ作業環境に応じた規格の超長距離ラインパイプを製造することが可能で、真空保温層が内部に設置されることによって、真空度が地下圧力や温度により影響されないように長期的に維持できる超長距離の保温二重鋼ラインパイプを提供することを目的とする。
【0018】
本発明の別の目的は、該超長距離の保温二重鋼ラインパイプの加工方法及び応用を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明に係る超長距離の保温二重鋼ラインパイプは、媒体輸送鋼管と、ジャケット鋼管とを備え、かつジャケット鋼管が媒体輸送鋼管の外側に套設されており、前記媒体輸送鋼管と前記ジャケット鋼管の間に環状キャビティとなる隙間を有し、前記媒体輸送鋼管と前記ジャケット鋼管の間に支持ホルダーが設置されており、前記環状キャビティが真空キャビティであり、前記ジャケット鋼管の両端が引き締められ、前記ジャケット鋼管の引き締め部位は複数のシールリングで前記媒体輸送鋼管の外壁とシールし、前記環状キャビティ内に相変化材料がさらに充填されており、前記支持ホルダーは、螺旋環状支持ホルダーまたはC字型支持ホルダーであり、支持ホルダーが前記螺旋環状支持ホルダーである場合、前記螺旋環状支持ホルダーは前記媒体輸送鋼管の外周側に套設され、かつ前記媒体輸送鋼管と接触せず、支持ホルダーが前記C字型支持ホルダーである場合、複数の前記C字型支持ホルダーは間隔を置いて前記媒体輸送鋼管の外周側に巻き付けられる。
【0020】
前記相変化材料は、有機相変化材料、好ましくは、パラフィンであり、環状キャビティに相変化材料が充填されていることにより、熱を効果的に保存するとともに、外部環境温度が低いときに熱を放出し、このようにラインパイプの保温性能を高める。
【0021】
前記螺旋環状支持ホルダーは媒体輸送鋼管と接触せずに、ジャケット鋼管の内壁をしっかりと支持し、ラインパイプにおける環状キャビティの連通性を保持することにより、真空化処理を容易にする。
【0022】
前記螺旋環状支持ホルダーまたはC字型支持ホルダーは、弾性材料で製造されるものであり、従来の支持ホルダーが鋼材などで固定されたり支持されたりするのが一般的であり、今のところ、弾性材料を支持構造としてジャケット鋼管を十分に支持することがなく、本発明で製造された二重鋼ラインパイプを地下で使用するときの機械的特性を高めるために、好ましくは弾性材料を支持材料とすることで、外部からの機械的力による媒体輸送鋼管へのダメージを緩和することができる。本発明に使用される弾性材料は、好ましくはゴムである。
【0023】
前記媒体輸送鋼管の外側に間隔を置いてC字型支持ホルダーが巻き付けられるため、取り付けやすくなり、また、隣接するC字型支持ホルダーと媒体輸送鋼管、ジャケット鋼管との間は環状キャビティとなる。開口方向と開口サイズが異なるC字型サポートにより、真空化処理を容易にすることができるように環状キャビティの連通性を保持する。
【0024】
二重鋼ラインパイプの安定性と保温性能がさらに確保され、特に地面から1000メートルを超える深さで作業する場合、作業環境圧力や温度などによりラインパイプの開口で変形が生じることがなく、本発明では、さらに、ジャケット鋼管の開口を溶接によりシールする。
【0025】
さらに保温効果を高めるために、環状キャビティの厚みを2−7mmとする。環状キャビティの厚みが大きすぎると、生産コストを高め、低すぎると、その保温効果を効果的に確保できなくなるので、環状キャビティの厚みが2−7mmである場合、その保温効果は最も好ましい。
【0026】
防腐層が防腐液を塗布することで形成されるものであり、防腐液は、組成として、シリコーンオイル50−60重量部、亜鉛粉20−30重量部、クエン酸1−3重量部、エポキシ樹脂5−8重量部、アルミナ1−5重量部、珪藻土1−5重量部、ポリアクリルアミド5−10重量部からなり、好ましくは、前記防腐液は、組成として、シリコーンオイル55重量部、亜鉛粉25重量部、クエン酸2重量部、エポキシ樹脂6重量部、アルミナ3重量部、珪藻土3重量部、ポリアクリルアミド8重量部からなる。防腐液の上記組成を所定の比率で均一に混合した後、ジャケット鋼管の外壁に複数層塗布することにより、厚み0.1−0.3mmの防腐層を形成する。
【0027】
好ましくは、前記二重鋼ラインパイプの長さは1000−8000メートルである。
【0028】
好ましくは、前記媒体輸送鋼管とジャケット鋼管の材質は、ステンレス鋼、炭素鋼またはチタン合金のうちのいずれか1種または複数種の組み合わせである。
【0029】
好ましくは、環状キャビティの厚みは2−7mmである。
【0030】
ステンレス鋼の主成分は、C 0.019重量%−0.020重量%、Si 0.49−0.50重量%、Mn 1.25重量%−1.26重量%、P 0.022重量%、S 0.00005重量%、Ni 5.16重量%−5.17重量%、Cr 22.46重量%−22.52重量%、N 0.163重量%−0.180重量%、Cu 0.003重量%−0.006重量%、Mo 3.07重量%−3.09重量%であり、残量はFe及び不可避的な不純物であり、前記ステンレス鋼は、引張強さ≧655MPa、降伏強さ≧620MPaであり、内部降伏圧力が89.3MPa、崩壊圧力が74.1MPaに達する。
【0031】
炭素鋼の主成分は、C 0.11重量%、Si 0.22重量%−0.24重量%、Mn 1.44重量%−1.5重量%、P 0.008重量%−0.012重量%、S 0.001重量%、Cr 0.58重量%−0.59重量%、Ni 0.14重量%、Cu 0.24重量%、Mo 0.15重量%−0.16重量%であり、残量はFe及び不可避的な不純物であり、前記炭素鋼は、引張強さ≧795MPa、降伏強さ≧760MPaであり、内降伏圧力が103.4MPa、崩壊圧力が86.2MPaに達する。
【0032】
チタン合金は、TA18合金であり、Al 2.0重量%−3.5重量%、V 1.5重量%−3.0重量%、Fe 0.25重量%、C 0.05重量%、N 0.05v%、H 0.015重量%、O 0.12v%を主成分とし、残量がTi及び不可避的な不純物である。前記TA18合金は、引張強さ≧655MPa、降伏強さ≧620MPaであり、内降伏圧力が89.3MPa、崩壊圧力が74.1MPaに達する。
【0033】
本発明はさらに、該超長距離の保温二重鋼ラインパイプの加工プロセスを提供し、具体的には、以下のステップを含む。
(1)前記媒体輸送鋼管に使用される鋼板の表面を洗浄し、具体的には、界面活性剤(好ましくは、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム)と浄水で超音波洗浄槽において複数回洗浄し、きれいに洗浄した鋼板を風乾し、次に折り曲げ、レーザー溶接方式で溶接して管にし、ただし、レーザー溶接をするときに、高さが0.25mmを超えないようにビードの内部余盛高さを厳格に制御しなければならない。レーザー溶接の鋼板に内部バリがないから、磨く必要はない。なお、超長距離鋼管の場合、連続して溶接作業を行うことになる。溶接鋼管を熱処理し、好ましくは、熱処理プロセスとして、まず、700℃−1070℃で10−40分間加熱処理し、次に水素ガスである還元性雰囲気下で冷却させて、さらに550℃−720℃での焼入れによって鋼管における内部応力を解消して、鋼管の靱性と硬度を調整し、熱処理後の媒体輸送鋼管について定径及び非破壊検査を行う。
(2)前記螺旋環状支持ホルダーと媒体輸送鋼管を接触させることなく、螺旋環状支持ホルダーを検査に合格した媒体輸送鋼管の外周側に套設し、または媒体輸送鋼管の外周側に間隔を置いてC字型支持ホルダーを巻き付ける。
(3)前記ジャケット鋼管に使用される鋼板の表面を洗浄し、次に折り曲げ、支持ホルダーがジャケット鋼管としっかりと接触するように、折り曲げ過程において外表面に支持ホルダーが巻き付けられた媒体輸送鋼管を内側に包み、包んだ後にレーザー溶接によりシールしてジャケット管にし、溶接して管にした後、ジャケット管を熱処理して、製造されたジャケット鋼管について定径及び非破壊検査を行い、ジャケット鋼管と媒体輸送鋼管の間における環状キャビティの厚みを2−7mmとする。
(4)ジャケット管の環状キャビティに相変化エネルギー貯蔵材料をセットして、次にジャケット鋼管の引き締め開口部で複数のゴムリングを取り付けてシールし、さらに環状キャビティについて真空化処理を行い、環状キャビティを真空にして、最後にジャケット鋼管の開口を溶接によりシールする。
(5)ステップ(4)で製造された二重鋼ラインパイプを熱処理することで、実際に地下で作業するときに、熱膨脹を受けることにより生じ得る応力を解消する。前記熱処理プロセスとは、二重鋼ラインパイプを50℃−280℃で30−60min熱処理し、次に室温になるまで空冷させ、かつジャケット鋼管の外側に防腐液を塗布して、本発明の保温二重鋼ラインパイプを得ることである。
【0034】
好ましくは、本発明では、ステップ(5)において、ステップ(4)で製造された二重鋼ラインパイプを熱処理する前に、取り付けて使用するときのラインパイプの機械的性能の低下を防止するように、S字型に折り曲げる。
【0035】
本発明における超長距離の保温二重鋼ラインパイプは、地下石油及び地下熱源の採掘に適用でき、かつ地面から1000−8000メートルの深さでの作業に適用できる。
【発明の効果】
【0036】
従来技術に比べて、本発明は以下の有益な効果を有する。本発明に係る超長距離の保温二重鋼ラインパイプは、優れた保温性能と耐食性を有し、その環状キャビティが真空状態であり、しかも内部に相変化エネルギー貯蔵材料が充填されているので、媒体輸送鋼管の保温性能が十分に確保できる。それを用いて地下エネルギーを採掘する場合、外部温度が低下すると、ラインパイプにおいて媒体輸送鋼管内の温度が影響されないことを効果的に確保できる。地下で作業するときの圧力、温度などによる影響を解消するように、本発明では、螺旋環状支持ホルダーまたはC字型支持ホルダーを用いてジャケット鋼管を支持して、キャビティの連通性を確保する。本発明に係る二重鋼ラインパイプは、耐用年数が長いため、石油、地下熱源の採掘コストを大幅に低下させる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【
図1】本発明の実施例1による超長距離の保温二重鋼ラインパイプの側断面構造の模式図
【
図2】本発明の実施例2による超長距離の保温二重鋼ラインパイプの側断面構造の模式図
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、図面及び実施例によって本発明をさらに説明する。
【0039】
本発明の実施例または従来技術における技術案をより明瞭に説明するために、以下、実施例において使用される図面を簡単に説明するが、勿論、以下説明する図面は本発明の実施例の一部に過ぎず、当業者であれば、創造的な努力を必要とせずに、これら図面に基づいて他の図面を想到し得る。
【0040】
本発明に係る超長距離の保温二重鋼ラインパイプは、
図1に示されるように、媒体輸送鋼管1、ジャケット鋼管2を備え、かつジャケット鋼管2が媒体輸送鋼管1の外部に套設されており、前記媒体輸送鋼管1とジャケット鋼管2の間に環状キャビティ3となる隙間を有し、前記媒体輸送鋼管1と前記ジャケット鋼管2の間に支持ホルダーが設置されており、前記環状キャビティ3が真空キャビティであり、前記ジャケット鋼管2の両端が引き締められ、前記ジャケット鋼管2の引き締め部位が複数のシールリング4で前記媒体輸送鋼管1の外壁とシールし、前記環状キャビティ3内に相変化材料がさらに充填されており、前記支持ホルダーは、螺旋環状支持ホルダー5であり、前記螺旋環状支持ホルダー5は前記媒体輸送鋼管1の外周側に套設され、かつ前記媒体輸送鋼管1と接触しない。
【0041】
いくつかの実施例では、本発明に係る超長距離の保温二重鋼ラインパイプは、
図2に示されるように、媒体輸送鋼管1、ジャケット鋼管2を備え、かつジャケット鋼管2が媒体輸送鋼管1の外部に套設されており、前記媒体輸送鋼管1とジャケット鋼管2の間に環状キャビティ3となる隙間を有し、前記媒体輸送鋼管1と前記ジャケット鋼管2の間に支持ホルダーが設置されており、前記ジャケット鋼管2の両端が引き締められ、前記ジャケット鋼管2の引き締め部位が複数のシールリング4で前記媒体輸送鋼管1の外壁とシールし、前記環状キャビティ3内に相変化材料がさらに充填されており、前記支持ホルダーはC字型支持ホルダー6であり、複数の前記C字型支持ホルダー6は間隔を置いて前記媒体輸送鋼管1の外周側に巻き付けられる。
【0042】
いくつかの実施例では、本発明に係る超長距離の保温二重鋼ラインパイプの環状キャビティの厚みは2−7mmである。
【0043】
いくつかの実施例では、本発明に係る超長距離の保温二重鋼ラインパイプにおける螺旋環状支持ホルダーまたはC字型支持ホルダーは、弾性材料、好ましくは、ゴムで製造される。
【0044】
いくつかの実施例では、本発明に係る超長距離の保温二重鋼ラインパイプにおける相変化材料は、有機相変化材料、好ましくは、パラフィンで製造される。
【0045】
本発明に係る二重鋼ラインパイプにおける媒体輸送鋼管とジャケット鋼管の材料は、ステンレス鋼、炭素鋼またはチタン合金のうちの1種または複数種の組み合わせである。
【0046】
以下、具体例によって、異なる組み合わせの鋼材を用いて本発明に係る保温二重鋼ラインパイプを製造するプロセスについて説明する。
【0048】
C 0.019重量%、Si 0.49重量%、Mn 1.25重量%、P 0.022重量%、S 0.00005重量%、Ni 5.16重量%、Cr 22.46重量%、N 0.163重量%、Cu 0.003重量%、Mo 3.07重量%を主成分とし、残量がFe及び不可避的な不純物であるステンレス鋼を媒体輸送鋼管に使用される鋼材、Al 3.5重量%、V 1.5重量%−3.0重量%、Fe 0.25重量%、C 0.05重量%、N 0.05重量%、H 0.015重量%、O 0.12重量%を主成分とし、残量がTi及び不可避的な不純物であるチタン合金としてのTA18合金をジャケット鋼管とする。選択された上記鋼材(二種の鋼材の長さは1000メートルである)を用いて、
図1に示される構造を有する1000メートルの保温二重鋼ラインパイプを製造し、具体的には、製造プロセスは以下のとおりである。
【0049】
(1)前記媒体輸送鋼管に使用される鋼板の表面を洗浄し、具体的には、界面活性剤(好ましくは、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム)と浄水で超音波洗浄槽において複数回洗浄し、きれいに洗浄した鋼板を風乾し、次に折り曲げ、レーザー溶接方式で溶接して内径31mmの管にし、ただし、レーザー溶接をするときに、高さが0.25mm(好ましくは、高さ0.20mm)を超えないようにビードの内部余盛高さを厳格に制御しなければならない。なお、溶接は一括して連続的に溶接すること。溶接鋼管を熱処理し、好ましくは、熱処理プロセスとして、まず、700℃で20分間加熱処理し、次に還元性雰囲気(好ましくは、水素ガス)下で冷却させて、さらに550℃での焼入れによって鋼管における内部応力を解消して、鋼管の靱性と硬度を調整し、熱処理後の媒体輸送鋼管について定径及び非破壊検査を行う。
【0050】
(2)材質を弾性ゴムとする前記螺旋環状支持ホルダーと媒体輸送鋼管を接触させることなく、螺旋環状支持ホルダーを検査に合格した媒体輸送鋼管の外周側に套設する。
【0051】
(3)前記ジャケット鋼管に使用される鋼板の表面を洗浄し、次に折り曲げ、支持ホルダーがジャケット鋼管の内壁をしっかりと支持するように、折り曲げ過程において外表面に支持ホルダーが套設された媒体輸送鋼管を内側に包み、包んだ後にレーザー溶接によりシールしてジャケット管にし、ジャケット鋼管と媒体輸送鋼管の間の環状キャビティの厚みを7mmとし、溶接したジャケット管についてステップ(1)と同様な熱処理を行うことで、ジャケット鋼管の機械的特性を高め、製造されたジャケット鋼管について定径及び非破壊検査を行う。
【0052】
(4)ジャケット管の環状キャビティに相変化エネルギー貯蔵材料をセットして、次にジャケット鋼管の引き締め開口部で複数のゴムリングを取り付けてシールし、さらに環状キャビティについて真空化処理を行い、環状キャビティを真空にして、最後にジャケット鋼管の開口を溶接によりシールする。
【0053】
(5)ステップ(4)で製造された二重鋼ラインパイプをS字型に折り曲げ、次に熱処理することで、実際に地下で作業するときに、熱膨脹を受けることにより生じ得る応力を解消する。前記熱処理プロセスとは、二重鋼ラインパイプを50℃で60min熱処理し、次に室温になるまで空冷させ、成分として、シリコーンオイル55重量部、亜鉛粉25重量部、クエン酸2重量部、エポキシ樹脂6重量部、アルミナ3重量部、珪藻土3重量部、ポリアクリルアミド8重量部からなる塗布防腐液を塗布することである。防腐液の上記組成を所定の比率で均一に混合した後、ジャケット鋼管の外壁に複数層塗布して、厚み0.1mmの防腐層を形成し、本発明に係る1000メートルの保温二重鋼ラインパイプを製造する。
【0054】
実施例2
Al 2.0重量%、V 1.5重量%、Fe 0.25重量%、C 0.05重量%、N 0.05重量%、H 0.015重量%、O 0.12重量%を主成分とし、残量がTi及び不可避的な不純物であるチタン合金TA18を、媒体輸送鋼管を製造するための材料とする。C 0.11重量%、Si 0.22重量%、Mn 1.44重量%、P 0.008重量%、S 0.001重量%、Cr 0.58重量%、Ni 0.14重量%、Cu 0.24重量%、Mo 0.15重量%を主成分とし、残量がFe及び不可避的な不純物である炭素鋼を、ジャケット鋼管を製造するための材料とする。選択された上記鋼材(二種の鋼材の長さは3000メートルである)を用いて、
図2に示される構造を有する長さ3000メートルの保温二重鋼ラインパイプを製造し、該ラインパイプの製造プロセスは、具体的には、以下のとおりである。
【0055】
(1)前記媒体輸送鋼管に使用される鋼板の表面を洗浄し、具体的には、界面活性剤(好ましくは、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム)と浄水で超音波洗浄槽において複数回洗浄し、きれいに洗浄した鋼板を風乾し、次に折り曲げ、レーザー溶接方式で溶接して内径44.5mmの管にし、ただし、レーザー溶接をするときに、高さが0.25mm(好ましくは、高さ0.20mm)を超えないようにビードの内部余盛高さを厳格に制御しなければならない。なお、溶接は一括して連続的に溶接すること。溶接鋼管を熱処理し、好ましくは、熱処理プロセスとして、まず、800℃で25分間加熱処理し、次に還元性雰囲気(好ましくは、水素ガス)下で冷却させ、さらに600℃での焼入れによって鋼管における内部応力を解消して、鋼管の靱性と硬度を調整し、熱処理後の媒体輸送鋼管について定径及び非破壊検査を行う。
【0056】
(2)検査に合格した媒体輸送鋼管の外表面に、弾性ゴムで製造されたC字型支持ホルダーを間隔を置いて巻き付ける。
【0057】
(3)前記ジャケット鋼管に使用される鋼板の表面を洗浄し、次に折り曲げ、折り曲げ過程において外表面に支持ホルダーが巻き付けられた媒体輸送鋼管を内側に包み、包んだ後にレーザー溶接によりシールしてジャケット管にし、ジャケット鋼管と媒体輸送鋼管の間の環状キャビティの厚みを5mmとし、溶接したジャケット管についてステップ(1)と同様な熱処理を行うことで、ジャケット鋼管の機械的特性を高め、製造されたジャケット鋼管について定径及び非破壊検査を行う。
【0058】
(4)ジャケット管の環状キャビティに相変化エネルギー貯蔵材料をセットして、次にジャケット鋼管の引き締め開口部で複数のゴムリングを取り付けてシールし、さらに環状キャビティが真空になるように、環状キャビティについて真空化処理を行い、最後にジャケット鋼管の開口を溶接によりシールする。
【0059】
(5)ステップ(4)で製造された二重鋼ラインパイプをS字型に折り曲げ、次に熱処理することで、実際に地下で作業するときに、熱膨脹を受けることにより生じ得る応力を解消する。前記熱処理プロセスとは、二重鋼ラインパイプを150℃で30min熱処理し、次に室温になるまで空冷させ、実施例1における防腐液を塗布し、本発明に係る3000メートルの保温二重鋼ラインパイプを製造することである。
【0060】
実施例3
C 0.11重量%、Si 0.24重量%、Mn 1.5重量%、P 0.012重量%、S 0.001重量%、Cr 0.58重量%、Ni 0.14重量%、Cu 0.24重量%、Mo 0.16重量%を主成分とし、残量がFe及び不可避的な不純物である炭素鋼を、媒体輸送鋼管を製造するための材料とする。C 0.020重量%、Si 0.50重量%、Mn 1.26重量%、P 0.022重量%、S 0.00005重量%、Ni 5.17重量%、Cr 22.52重量%、N 0.163重量%、Cu 0.006重量%、Mo 3.07重量%−3.09重量%を主成分とし、残量がFe及び不可避的な不純物であるステンレス鋼を、ジャケット鋼管を製造するための材料とする。選択された上記鋼材(二種の鋼材の長さは5000メートルである)を用いて、長さ5000メートルの保温二重鋼ラインパイプを製造し、該ラインパイプの製造プロセスは以下のとおりである。
【0061】
(1)前記媒体輸送鋼管に使用される鋼板の表面を洗浄し、具体的には、界面活性剤(好ましくは、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム)と浄水で超音波洗浄槽において複数回洗浄し、きれいに洗浄した鋼板を風乾し、次に折り曲げ、レーザー溶接方式で溶接して内径31.8mmの管にし、ただし、レーザー溶接をするときに、高さが0.25mm(好ましくは、高さ0.20mm)を超えないようにビードの内部余盛高さを厳格に制御しなければならない。なお、溶接は一括して連続的に溶接すること。溶接鋼管を熱処理し、好ましくは、熱処理プロセスとして、まず、900℃で30分間加熱処理し、次に還元性雰囲気(好ましくは、水素ガス)下で冷却させ、さらに650℃での焼入れによって鋼管における内部応力を解消して、鋼管の靱性と硬度を調整し、熱処理後の媒体輸送鋼管について定径及び非破壊検査を行う。
【0062】
(2)材質を弾性ゴムとする前記螺旋環状支持ホルダーと媒体輸送鋼管を接触させることなく、螺旋環状支持ホルダーを検査に合格した媒体輸送鋼管の外周側に套設する。
【0063】
(3)前記ジャケット鋼管に使用される鋼板の表面を洗浄し、次に折り曲げ、支持ホルダーがジャケット鋼管の内壁をしっかりと支持するように、折り曲げ過程において外表面に支持ホルダーが套設された媒体輸送鋼管を内側に包み、包んだ後にレーザー溶接によりシールしてジャケット管にし、ジャケット鋼管と媒体輸送鋼管の間の環状キャビティの厚みを2mmとし、溶接したジャケット管についてステップ(1)と同様な熱処理を行うことで、ジャケット鋼管の機械的特性を高め、製造されたジャケット鋼管について定径及び非破壊検査を行う。
【0064】
(4)ジャケット管の環状キャビティに相変化エネルギー貯蔵材料をセットして、次にジャケット鋼管の引き締め開口部で複数のゴムリングを取り付けてシールし、さらに環状キャビティについて真空化処理を行い、環状キャビティを真空にして、最後にジャケット鋼管の開口を溶接によりシールする。
【0065】
(5)ステップ(4)で製造された二重鋼ラインパイプをS字型に折り曲げ、次に熱処理することで、実際に地下で作業するときに、熱膨脹を受けることにより生じ得る応力を解消する。前記熱処理プロセスとは、二重鋼ラインパイプを200℃で30min熱処理し、次に室温になるまで空冷させ、実施例1における防腐液を塗布し、本発明に係る5000メートルの保温二重鋼ラインパイプを製造することである。
【0066】
実施例4
Al3.5重量%、V 3.0重量%、Fe 0.25重量%、C 0.05重量%、N 0.05重量%、H 0.015重量%、O 0.12重量%を主成分とし、残量がTi及び不可避的な不純物であるチタン合金TA18を、媒体輸送鋼管とジャケット鋼管を製造するための材料とする。選択された上記鋼材(二種の鋼材の長さは5000メートルである)を用いて、ステップ(5)において二重鋼ラインパイプの熱処理プロセスだけを変更する以外、実施例1におけるプロセスと同様に、長さ8000メートルの保温二重鋼ラインパイプを製造し、ここで、ステップ(5)における熱処理プロセスは、具体的には、二重鋼ラインパイプを280℃で60min熱処理し、次に室温になるまで空冷させ、実施例1における防腐液を塗布し、本発明に係る8000メートルの保温二重鋼ラインパイプを製造することである。
【0067】
本発明の実施例1−4で製造された保温二重鋼ラインパイプについて試験を行い、それぞれ地下作業環境をシミュレーションして熱源を採掘し、取った水の温度をそれぞれ250℃、200℃、150℃及び100℃と想定し、実施例1で製造された1000メートルの二重鋼ラインパイプを用いて100℃の水を揚水し、ラインパイプの外部環境としては地面から1000メートルから地表までの温度をシミュレーションし(該ラインパイプを地面からの1000メートルまで入れて100℃の水を揚水するように設定する)、ラインパイプについてラインパイプの最上端が室温となるうように勾配昇温を行い、前記と同様に、実施例2で製造された3000メートルの二重鋼ラインパイプを用いて150℃の水を揚水し、実施例3で製造された5000メートルの二重鋼ラインパイプを用いて200℃の水を揚水し、実施例4で製造された8000メートルの二重鋼ラインパイプを用いて250℃の水を揚水し、ラインパイプの出口で揚水した水の温度をテストした結果、実施例1で製造された1000メートルのラインパイプを用いて揚水した水の温度は98℃、実施例2で製造された3000メートルのラインパイプを用いて揚水した水の温度は142℃、実施例3で製造された5000メートルのラインパイプを用いて揚水した水の温度は190℃、実施例4で製造された8000メートルのラインパイプを用いて揚水した水の温度は242℃であった。このことから、本発明で製造された超長距離の保温二重鋼ラインパイプは、極めて優れた保温性能を有することが分かり、試験後にテストした二重鋼ラインパイプを測定したところ、該ラインパイプにおける媒体輸送鋼管とジャケット鋼管はいずれも明らかな機械的変形が生じなかったことが分かった。
【0068】
本明細書では、具体例を用いて本発明の原理及び実施形態を説明したが、以上の実施例は本発明の方法及びその主旨を理解しやすくするために説明するものに過ぎず、また、当業者であれば、本発明の趣旨に基づいて、具体的な実施形態及び応用範囲のいずれも変化できる。前記のように、本明細書の内容は本発明を制限とない。
【符号の説明】
【0069】
1、媒体輸送鋼管
2、ジャケット鋼管
3、環状キャビティ
4、ゴムリング
5、螺旋環状支持ホルダー
6、C字型支持ホルダー