【課題を解決するための手段】
【0005】
この目的は、本発明において、請求項1に記載の装置によって実現される。本発明の有利な実施形態は、従属請求項に準拠する。
【0006】
本明細書に記載する装置は、エネルギービームによって固化することができる粉末状の造形材料(「造形材料」)の層を連続して層ごとに選択的に照射及び固化することによって3次元の物体、たとえば技術的構成要素を付加製造する装置である。それぞれの造形材料は、金属、セラミック、又はポリマーの粉末とすることができる。それぞれのエネルギービームは、レーザビーム又は電子ビームとすることができる。それぞれの装置は、たとえば、選択的レーザ焼結装置、選択的レーザ溶融装置、又は選択的電子ビーム溶融装置とすることができる。
【0007】
この装置は、その動作中に使用されるいくつかの機能ユニットを備える。例示的な機能ユニットには、プロセスチャンバ、プロセスチャンバ内に配置された造形材料層を少なくとも1つのエネルギービームで選択的に照射するように構成された照射デバイス、及び所与の流動特性、たとえば所与の流動プロファイル、流速などでプロセスチャンバを通って少なくとも部分的に流れるガス状流体流を生成するように構成された流れ生成デバイスが挙げられる。
【0008】
本発明は、エネルギービームの視準(collimate)部分に関する情報及びエネルギービームの集束部分に関する情報を生成するように構成された少なくとも1つの測定デバイスを備える測定ユニットを提供するという概念に基づいている。したがって、エネルギービームの集束部分、たとえばエネルギービームのうち集束光学系と造形平面との間の部分に関する情報が生成されるだけでなく、エネルギービームの視準部分、たとえばエネルギービームのうち視準光学系と集束光学系との間の部分に関する情報も生成されるため、複数のプロセスパラメータを監視することができる。したがって、エネルギービームの焦点位置のずれ又は少なくとも1つの光学デバイス若しくは光学構成要素の焦点距離のずれを判定することができる。たとえばこれにより、少なくとも1つのプロセスパラメータを調整して、焦点位置のずれ又は焦点距離のずれを少なくとも部分的に補償することが可能になる。
【0009】
したがって、本発明によって、たとえば、エネルギービームの焦点位置を一定に保持することができ、照射しなければならない造形材料内への一定のエネルギー入力が可能になるため、一定のプロセス品質が満たされることを保証することができる。
【0010】
有利な実施形態によれば、この装置は、
−視準光学系と集束光学系との間に位置する第1のビームスプリッタを備え、第1の光ビーム経路が、視準光学系から集束光学系を通って造形平面上へ延び、第2の光ビーム経路が、視準光学系から第1の測定デバイスへ延び、第3の光ビーム経路が、造形平面及び/又は造形平面と集束光学系との間の表面から集束光学系を通って第2の測定デバイスへ延び、
−第1の測定デバイスは、エネルギービームの視準部分に関する情報を生成するように構成され、
−第2の測定デバイスは、造形平面の一区間から放出される放射に関する情報及び/又はエネルギービームの集束部分に関する情報を生成するように構成される。
【0011】
したがって、視準光学系から出たエネルギービームを第1の光ビーム経路及び第2の光ビーム経路に分割するために、第1のビームスプリッタが使用され、第1の光ビーム経路は、視準光学系から集束光学系を通って造形平面上へ延び、造形材料を照射する。第2の光ビーム経路は、エネルギービームから分割され、視準光学系から第1の測定デバイスへ延びる。さらに、造形平面及び/又は造形平面と集束光学系との間の表面から延びる第3の光ビーム経路は、第1のビームスプリッタを介して第2の測定デバイスへ案内される。この実施形態により、エネルギービームの様々な部分の監視が可能になり、特に視準光学系と集束光学系との間のエネルギービームの視準部分及び集束光学系と造形平面との間の集束部分、並びに造形平面の少なくとも一区間から及び/又は集束光学系と造形平面との間の表面から放出される放射を、評価することができる。
【0012】
本出願の範囲内で、「放出(emission)」又は「放出される(emitted)」という用語は、反射される放射又は生成される放射などを指し、放射は、対応する物体又は表面から解放される。したがって、「放出(emission)」は、ビーム源からの放射の生成に制限されるものではなく、表面の放射の反射として又は定義された温度の物体によって放出される(熱)放射の反射としても理解することができる。
【0013】
さらに有利な実施形態によれば、第1の測定デバイスは、第2の光ビーム経路を進む第2のエネルギービームを2つの下位区分に分割するように構成された第2のビームスプリッタを備え、且つ/又は第2の測定デバイスは、第3の光ビーム経路を進む第3のエネルギービームを2つの下位区分に分割するように構成された第2のビームスプリッタを備える。
【0014】
第2の光ビーム経路を進む第2のエネルギービームを2つの下位区分に分割し且つ/又は第3の光ビーム経路を進む第3のエネルギービームを2つの下位区分に分割することによって、それぞれのエネルギービームが視準されているかどうかを判定、決定又は測定することが可能になる。言い換えれば、それぞれの測定デバイスに割り当てられた検出器に単一エネルギービームの光線が到達する角度を検出することが可能になる。したがって、エネルギービームが進むそれぞれの光ビーム経路に沿って2つの異なる位置で、それぞれのエネルギービームの直径が測定される。2つの異なる位置内で測定された2つの直径を比較することによって、エネルギービームの視準状態に関する情報を生成することができる。
【0015】
したがって、単一の検出器又は2つの検出器を有することが可能であり、たとえば下位区分の一方を隠すように構成されたシャッタユニットを使用して、2つの下位区分が検出器上へ連続して撮像され、その結果、エネルギービームの他方の下位区分を測定することができ、逆も同様である。たとえば、単一の検出器は、少なくとも2つの測定位置間で可動とすることができ、それぞれのエネルギービームの直径が、両方の位置で測定され、後に比較され、それぞれのエネルギービームの視準状態に関する情報を生成することができる。したがって、異なる測定位置へ進む2つの下位区分の光路長を変動させることができる。
【0016】
この装置は、第1の測定デバイス及び/又は第2の測定デバイスが2つの光センサを備え、第1の下位区分が第1の光センサを介して測定され、第2の下位区分が第2の光センサを介して測定されるという点でさらに改善することができる。
【0017】
この実施形態によれば、2つの下位区分に分割されたエネルギービームは、異なる光センサを介して測定され、これらの光センサは、異なる位置に配置され、すなわち第2のビームスプリッタに対して異なる距離をあけて配置される。言い換えれば、それぞれのエネルギービームの下位区分は、異なる距離を進み、すなわち2つの下位区分に対するビーム長又は光路長は異なる。したがって、それぞれのエネルギービームが適切に視準されていない場合、2つの下位区分のビーム径は異なる。この構成を提供することによって、それぞれのエネルギービームの視準状態及びレンズなどの光学構成要素のパラメータ、特に視準又は集束光学系の焦点距離に関する情報を生成することが可能になる。
【0018】
有利には、第2の測定デバイスは、第3の光ビーム経路を、造形平面の照射領域から溶融プール監視ユニットへ延びる第1の下位経路と、集束光学系と造形平面との間の表面、特に集束光学系の保護ガラスから第2の測定デバイスの第2のビームスプリッタへ反射される第2の下位経路とに分割するように構成された2色性ビームスプリッタを備える。
【0019】
2色性ビームスプリッタは、エネルギービームを分割し、又は2色性ビームスプリッタ上に概して入射する電磁放射をこの電磁放射の波長に応じて分割するように構成される。有利には、2色性ビームスプリッタは、第3のエネルギービームのうち、たとえば固化区間(固化ゾーン)内のエネルギービームの反射に起因するか又は造形平面と集束光学系との間の表面で反射されたエネルギービームの少しの部分又は定義された量だけを分割するように構成することができる。エネルギービームの大部分は、2色性フィルタを通過して第2の測定ユニットへ進むことが可能である。
【0020】
固化区間(固化ゾーン)の周りの隣接区間(隣接ゾーン)から放出される放射、たとえば熱接触のために固化区間に隣接する加熱区間によって間接的に生成される放射は、第3のエネルギービームから、より大量に分割される。たとえば、2色性スプリッタは、たとえば250nm〜3000nmの波長スペクトル内で造形平面から放出される(熱)放射を選択的に分割又は反射するように構成することができ、約1070nmの波長の放射は、少量だけ反射される。したがって、約1070nmの波長を有するエネルギービームが生成された場合、このエネルギービームは、主に2色性ビームスプリッタを通過することができ、このエネルギービームのうち少しの量だけが、2色性ビームスプリッタによって反射される。250nm〜3000nmの波長スペクトル内の造形平面、特に固化区間に隣接する区間から放出される放射は、2色性ビームスプリッタを少量だけ通過することができ、より多くの量は、2色性ビームスプリッタによって反射され、したがって溶融プール監視ユニットの方へ案内され、造形平面、すなわち固化区間に隣接する区間から放出される放射を測定又は分析することができる。
【0021】
この装置は、第1の測定デバイスによって生成される情報が、
−現在のビームパワー
−視準光学系の現在の焦点距離
を含み又はそれに関するという点でさらに改善することができる。
【0022】
したがって、エネルギービームのうち第2の光ビーム経路に沿って延びる部分を測定又は分析することによって、視準光学系を介して視準され、第1の測定ユニットの方へ案内されるエネルギービームの現在のビームパワーを特徴付けることが可能になる。さらに、視準光学系の現在の焦点距離を監視し又は特徴付け、温度の変動が視準光学系に与える影響を監視することが可能になる。したがって、この実施形態により、エネルギービームの視準を、又は言い換えれば、たとえば温度に誘起される歪み、ずれのために、エネルギービームの現在の焦点距離若しくは現在の焦点位置を補正する必要があるかどうかを、監視することが可能になる。
【0023】
この装置の別の実施形態によれば、第2の測定デバイスによって生成される情報は、
−現在の焦点位置
−造形平面の照射領域内の温度
−集束光学系の光学パラメータ、特に焦点距離
を含み又はそれに関する。
【0024】
上述した情報と同様に、第2の測定ユニットによって実行される監視により、集束光学系の現在の焦点位置又は現在の光学パラメータ、特に集束光学系の焦点距離の判定(決定)が可能になる。視準光学系の判定された焦点距離とともに、集束光学系及び視準光学系を備える光学システムの焦点距離を判定することが可能になる。さらに、造形平面の一区間の温度を判定することが可能になり、この区間は、エネルギービームが造形材料を直接照射して造形材料を固化する固化区間とすることができ、またこの区間は、固化区間との熱接触を維持し、それによってエネルギービームを介して間接的に加熱される固化区間に隣接する区間とすることができる。
【0025】
照射領域の温度を監視することによって、造形すべき物体の品質に関して記述することができ、物体の隣接する区間同士の間の高い温度勾配又は温度差を回避するように、プロセスパラメータを監視してそれぞれを制御することによって、物体内の欠陥を回避することができる。
【0026】
この装置の別の実施形態は、集束光学系と造形平面との間に保護ガラスが配置されることを提案し、保護ガラスは、エネルギービームの少なくとも一部分を反射するように構成される。保護ガラスは、エネルギービームを部分的に反射して第3の光ビーム経路に沿って延ばす表面を提供する。したがって、第2の測定デバイスを介してエネルギービームの反射部分を評価することができるので、保護ガラスにおけるエネルギービームの反射を使用して、プロセスパラメータを監視することができる。これにより、エネルギービームのうち視準光学系と集束光学系をすでに通過して保護ガラスで反射されるエネルギービームの部分として、エネルギービームの集束部分の特性を特徴付けることが可能になる。
【0027】
上述した実施形態は、エネルギービームのうち保護ガラスによって反射されたエネルギービームの部分の焦点位置内に位置する光学絞りが設けられるという点で改善することができる。この実施形態によって、望ましくない光ビーム経路に沿って延びるエネルギービーム又は光線の異なる様々な部分の濾過が可能になる。反射されたエネルギービームのうち、保護ガラスによって反射された部分だけが、それに応じて調整することができる光学絞りを通過することが可能である。したがって、この絞りによって、エネルギービームのうち評価する必要のあるエネルギービームの部分から、関係のない表面又は領域から放出された放射並びに散乱放射を分離することができる。
【0028】
この装置の別の実施形態は、有利には、測定ユニットによって生成される少なくとも1つの情報が品質管理システムへ伝達可能であることを提案する。したがって、測定ユニットによって生成される情報を品質管理システムのデータ記憶部内に記憶し、且つ/又はさらに処理して、たとえば造形すべき物体を特徴付け、且つ/又は物体の製造プロセス中にプロセスパラメータを記録することができる。これにより、物体の特徴を対応する製造プロセス又は製造プロセス中のパラメータにそれぞれ関連付けることが可能になる。
【0029】
別の有利な実施形態によれば、測定ユニットによって生成される少なくとも1つの情報に応じて、エネルギービームの少なくとも1つのプロセスパラメータ、特に焦点位置を制御するように構成された制御ユニットが設けられる。したがって、上述したように、エネルギービームの部分を監視することによって、少なくとも1つのプロセスパラメータの(「オンライン」)評価及び制御が可能になる。物体の製造プロセス中に関係するプロセスパラメータを監視することによって、プロセスパラメータの変化、たとえば焦点位置の変化により、現在製造されている物体に歪み、ずれ(偏差)が生じる前に、プロセスパラメータを補正又は調整することが可能になる。したがって、エネルギービームをその様々な部分、たとえば集束部分、反射部分、及び視準部分ごとに評価することによって、ずれが生じる前にそれぞれの構成要素を調整し、したがってそれぞれのパラメータを補正することが可能になる。したがって、光学構成要素、たとえばレンズの位置又は相対位置を調整して、温度変動による焦点距離又は焦点位置のずれを補償することができる。
【0030】
さらに、本発明は、エネルギービームによって固化することができる造形材料層を連続して層ごとに選択的に照射及び固化することによって3次元の物体を付加製造する装置を動作させる方法に関し、エネルギービームの視準部分に関する情報及びエネルギービームの集束部分に関する情報が生成される。
【0031】
この装置に関して記載するすべての特徴、利点、及び詳細は、この方法にも完全に移行可能であり、逆も同様であることが自明である。この方法は、好ましくは、上述した装置上で実行される。
【0032】
この方法の一実施形態によれば、エネルギービームは、視準光学系と集束光学系との間で、視準光学系から集束光学系を通って造形平面上へ延びる第1の光ビーム経路と、視準光学系から第1の測定デバイスへ延びる第2の光ビーム経路と、造形平面及び/又は集束光学系と造形平面との間の表面から集束光学系を通って第2の測定デバイスへ延びる第3の光ビーム経路とに分割され、エネルギービームの視準部分に関する情報は、第1の測定デバイスによって生成され、造形平面の一区間から放出される放射及び/又は集束光学系と造形平面との間の表面によって放出される放射並びに/又はエネルギービームの集束部分、に関する情報は、第2の測定デバイスによって生成される。
【0033】
したがって、視準光学系から出るエネルギービームは、集束光学系を通過する前にビームスプリッタによって分割され、第1の測定デバイスへ案内される。造形平面及び/又は集束光学系の後ろに配置された表面で反射される放射は、ビームスプリッタによって第2の測定ユニットへ案内される。これにより、関係するビーム部分、特に視準部分及び集束部分並びに造形平面の一区間及び/又は造形平面と集束光学系との間の表面から放出される放射を監視することが可能になる。
【0034】
本発明の例示的な実施形態について、図を参照して説明する。