特許第6880135号(P6880135)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6880135-3次元の物体を付加製造する装置 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6880135
(24)【登録日】2021年5月7日
(45)【発行日】2021年6月2日
(54)【発明の名称】3次元の物体を付加製造する装置
(51)【国際特許分類】
   B22F 3/16 20060101AFI20210524BHJP
   B33Y 30/00 20150101ALI20210524BHJP
   B29C 64/153 20170101ALI20210524BHJP
   B33Y 50/00 20150101ALI20210524BHJP
   B29C 64/386 20170101ALI20210524BHJP
   B29C 64/268 20170101ALI20210524BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20210524BHJP
   B22F 3/105 20060101ALI20210524BHJP
   B28B 1/30 20060101ALI20210524BHJP
   B23K 26/21 20140101ALI20210524BHJP
   B23K 26/34 20140101ALI20210524BHJP
   B23K 26/00 20140101ALI20210524BHJP
   B23K 26/064 20140101ALI20210524BHJP
   B23K 26/066 20140101ALI20210524BHJP
   B23K 26/046 20140101ALI20210524BHJP
【FI】
   B22F3/16
   B33Y30/00
   B29C64/153
   B33Y50/00
   B29C64/386
   B29C64/268
   B33Y10/00
   B22F3/105
   B28B1/30
   B23K26/21 Z
   B23K26/34
   B23K26/00 M
   B23K26/064 Z
   B23K26/066
   B23K26/046
【請求項の数】12
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2019-175187(P2019-175187)
(22)【出願日】2019年9月26日
(62)【分割の表示】特願2018-16855(P2018-16855)の分割
【原出願日】2018年2月2日
(65)【公開番号】特開2020-20045(P2020-20045A)
(43)【公開日】2020年2月6日
【審査請求日】2019年9月26日
(31)【優先権主張番号】17187994.3
(32)【優先日】2017年8月25日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】506154834
【氏名又は名称】ツェーエル・シュッツレヒツフェアヴァルトゥングス・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(72)【発明者】
【氏名】ファービアン・ツォイルナー
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン・ディッケン
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン・フンツェ
【審査官】 瀧口 博史
(56)【参考文献】
【文献】 特許第6595638(JP,B2)
【文献】 国際公開第2013/110467(WO,A1)
【文献】 特表2016−540109(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0375456(US,A1)
【文献】 特表平09−504054(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22F 3/105,3/16
B29C 64/00−64/40
B33Y 10/00−99/00
B23K 26/00−26/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エネルギービームによって固化することができる造形材料層を連続して層ごとに選択的に照射及び固化することによって3次元の物体を付加製造する装置において、前記装置は測定ユニットを備え、前記測定ユニットは、
視準光学系と、集束光学系と、前記視準光学系と前記集束光学系との間に位置する第1のビームスプリッタと、
前記エネルギービームの視準部分に関する情報を生成するよう構成された第1の測定デバイスであって、前記情報は前記視準光学系の現在の焦点距離を含むか、それに関連する、第1の測定デバイスと
前記エネルギービームの集束部分に関する情報を生成するように構成された第2の測定デバイスであって、前記情報は前記集束光学系の現在の焦点位置及び前記集束光学系の光学パラメータの少なくとも一つを含むか、それに関連し、前記集束光学系の光学パラメータは前記集束光学系の焦点距離を含む、第2の測定デバイスと、を備え
前記第1のビームスプリッタは、前記視準光学系を通って延びた前記エネルギービームの一部を反射して前記エネルギービームの視準部分(6)を提供するとともに、前記エネルギービームの一部を前記集束光学系を通って延ばして前記エネルギービームの集束部分を提供する、装置。
【請求項2】
前記エネルギービームの集束部分の少なくとも一部は前記集束光学系を通って造形平面上へ延びる第1の光ビーム経路を形成し、前記エネルギービームの視準部分の少なくとも一部は前記第1の測定デバイスへ延びる第2の光ビーム経路を形成し、第3の光ビーム経路が、前記造形平面及び/又は前記造形平面と前記集束光学系との間の表面から前記集束光学系を通って前記第2の測定デバイスへ延びる、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記第2の測定デバイスは、前記造形平面の一区間から放出される放射に関する情報を生成するように構成される、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記第1の測定デバイスは、前記第2の光ビーム経路を進む前記エネルギービームを2つの下位区分に分割するように構成された第2のビームスプリッタを備え、且つ/又は前記第2の測定デバイスは、前記エネルギービームのうち前記第3の光ビーム経路を進む部分を2つの下位区分に分割するように構成された第2のビームスプリッタを備える、請求項2又は請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記第1の測定デバイス及び/又は前記第2の測定デバイスは、2つの光センサを備え、第1の下位区分は、第1の光センサを介して測定され、第2の下位区分は、第2の光センサを介して測定される、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
同じ測定デバイスの少なくとも2つの光センサは、異なる距離をあけて配置され、且つ/又は前記第2のビームスプリッタに対して可動である、請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記第2の測定デバイスは、前記第3の光ビーム経路を進む放射を、前記造形平面(の一区間から溶融プール監視ユニットへ延びる第1の下位経路と、前記集束光学系と前記造形平面との間の表面から前記第2の測定デバイスの第2のビームスプリッタへ反射される第2の下位経路と、に分割するように構成された2色性ビームスプリッタを備える、請求項2〜6のいずれか一項に記載の装置。
【請求項8】
前記第1の測定デバイスによって生成される前記情報は、前記視準光学系の現在のビームパワーを含み、又はそれに関する、請求項1〜7のいずれか一項に記載の装置。
【請求項9】
前記第2の測定デバイスによって生成される前記情報は、造形平面の照射領域内の温度を含み、又はそれに関する、請求項1〜8のいずれか一つに記載の装置。
【請求項10】
前記集束光学系と造形平面(12)との間に配置された保護ガラスを有し、前記保護ガラスは、前記エネルギービームの少なくとも一部分を反射するように構成される、請求項1〜9のいずれか一つに記載の装置。
【請求項11】
前記保護ガラスによって反射された前記エネルギービームの焦点位置内に位置する光学絞りを有する、請求項10に記載の装置。
【請求項12】
前記測定ユニットによって生成される情報に応じて、前記エネルギービームの集束位置を制御するように構成された制御ユニットを有する、請求項1〜11のいずれか一つに記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エネルギービームによって固化することができる造形材料層を連続して層ごとに選択的に照射及び固化することによって3次元の物体を付加製造する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
そのような装置は、従来技術からよく知られており、エネルギービームを使用して造形材料層を選択的に照射し、エネルギービームによる照射のために造形材料が固化される。一定のプロセス品質を保証又は維持するために、エネルギービームのパワーやエネルギービームを介して造形材料内で使われるエネルギーなどの異なるプロセスパラメータを監視することが必要である。
【0003】
たとえば、エネルギービームの焦点位置のずれは、プロセス温度、たとえば装置の少なくとも1つの構成要素の温度の変動のために生じる可能性がある。そのような温度に誘起される焦点位置のずれは、補正する必要があり、そうでない場合は、焦点が外れたエネルギービームによる造形材料の照射により、物体の歪み、ずれが生じる。したがって、一定のプロセス品質を確保するように、様々なプロセスパラメータを監視及び制御することが好ましい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、目的は、プロセスパラメータの制御が改善された装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この目的は、本発明において、請求項1に記載の装置によって実現される。本発明の有利な実施形態は、従属請求項に準拠する。
【0006】
本明細書に記載する装置は、エネルギービームによって固化することができる粉末状の造形材料(「造形材料」)の層を連続して層ごとに選択的に照射及び固化することによって3次元の物体、たとえば技術的構成要素を付加製造する装置である。それぞれの造形材料は、金属、セラミック、又はポリマーの粉末とすることができる。それぞれのエネルギービームは、レーザビーム又は電子ビームとすることができる。それぞれの装置は、たとえば、選択的レーザ焼結装置、選択的レーザ溶融装置、又は選択的電子ビーム溶融装置とすることができる。
【0007】
この装置は、その動作中に使用されるいくつかの機能ユニットを備える。例示的な機能ユニットには、プロセスチャンバ、プロセスチャンバ内に配置された造形材料層を少なくとも1つのエネルギービームで選択的に照射するように構成された照射デバイス、及び所与の流動特性、たとえば所与の流動プロファイル、流速などでプロセスチャンバを通って少なくとも部分的に流れるガス状流体流を生成するように構成された流れ生成デバイスが挙げられる。
【0008】
本発明は、エネルギービームの視準(collimate)部分に関する情報及びエネルギービームの集束部分に関する情報を生成するように構成された少なくとも1つの測定デバイスを備える測定ユニットを提供するという概念に基づいている。したがって、エネルギービームの集束部分、たとえばエネルギービームのうち集束光学系と造形平面との間の部分に関する情報が生成されるだけでなく、エネルギービームの視準部分、たとえばエネルギービームのうち視準光学系と集束光学系との間の部分に関する情報も生成されるため、複数のプロセスパラメータを監視することができる。したがって、エネルギービームの焦点位置のずれ又は少なくとも1つの光学デバイス若しくは光学構成要素の焦点距離のずれを判定することができる。たとえばこれにより、少なくとも1つのプロセスパラメータを調整して、焦点位置のずれ又は焦点距離のずれを少なくとも部分的に補償することが可能になる。
【0009】
したがって、本発明によって、たとえば、エネルギービームの焦点位置を一定に保持することができ、照射しなければならない造形材料内への一定のエネルギー入力が可能になるため、一定のプロセス品質が満たされることを保証することができる。
【0010】
有利な実施形態によれば、この装置は、
−視準光学系と集束光学系との間に位置する第1のビームスプリッタを備え、第1の光ビーム経路が、視準光学系から集束光学系を通って造形平面上へ延び、第2の光ビーム経路が、視準光学系から第1の測定デバイスへ延び、第3の光ビーム経路が、造形平面及び/又は造形平面と集束光学系との間の表面から集束光学系を通って第2の測定デバイスへ延び、
−第1の測定デバイスは、エネルギービームの視準部分に関する情報を生成するように構成され、
−第2の測定デバイスは、造形平面の一区間から放出される放射に関する情報及び/又はエネルギービームの集束部分に関する情報を生成するように構成される。
【0011】
したがって、視準光学系から出たエネルギービームを第1の光ビーム経路及び第2の光ビーム経路に分割するために、第1のビームスプリッタが使用され、第1の光ビーム経路は、視準光学系から集束光学系を通って造形平面上へ延び、造形材料を照射する。第2の光ビーム経路は、エネルギービームから分割され、視準光学系から第1の測定デバイスへ延びる。さらに、造形平面及び/又は造形平面と集束光学系との間の表面から延びる第3の光ビーム経路は、第1のビームスプリッタを介して第2の測定デバイスへ案内される。この実施形態により、エネルギービームの様々な部分の監視が可能になり、特に視準光学系と集束光学系との間のエネルギービームの視準部分及び集束光学系と造形平面との間の集束部分、並びに造形平面の少なくとも一区間から及び/又は集束光学系と造形平面との間の表面から放出される放射を、評価することができる。
【0012】
本出願の範囲内で、「放出(emission)」又は「放出される(emitted)」という用語は、反射される放射又は生成される放射などを指し、放射は、対応する物体又は表面から解放される。したがって、「放出(emission)」は、ビーム源からの放射の生成に制限されるものではなく、表面の放射の反射として又は定義された温度の物体によって放出される(熱)放射の反射としても理解することができる。
【0013】
さらに有利な実施形態によれば、第1の測定デバイスは、第2の光ビーム経路を進む第2のエネルギービームを2つの下位区分に分割するように構成された第2のビームスプリッタを備え、且つ/又は第2の測定デバイスは、第3の光ビーム経路を進む第3のエネルギービームを2つの下位区分に分割するように構成された第2のビームスプリッタを備える。
【0014】
第2の光ビーム経路を進む第2のエネルギービームを2つの下位区分に分割し且つ/又は第3の光ビーム経路を進む第3のエネルギービームを2つの下位区分に分割することによって、それぞれのエネルギービームが視準されているかどうかを判定、決定又は測定することが可能になる。言い換えれば、それぞれの測定デバイスに割り当てられた検出器に単一エネルギービームの光線が到達する角度を検出することが可能になる。したがって、エネルギービームが進むそれぞれの光ビーム経路に沿って2つの異なる位置で、それぞれのエネルギービームの直径が測定される。2つの異なる位置内で測定された2つの直径を比較することによって、エネルギービームの視準状態に関する情報を生成することができる。
【0015】
したがって、単一の検出器又は2つの検出器を有することが可能であり、たとえば下位区分の一方を隠すように構成されたシャッタユニットを使用して、2つの下位区分が検出器上へ連続して撮像され、その結果、エネルギービームの他方の下位区分を測定することができ、逆も同様である。たとえば、単一の検出器は、少なくとも2つの測定位置間で可動とすることができ、それぞれのエネルギービームの直径が、両方の位置で測定され、後に比較され、それぞれのエネルギービームの視準状態に関する情報を生成することができる。したがって、異なる測定位置へ進む2つの下位区分の光路長を変動させることができる。
【0016】
この装置は、第1の測定デバイス及び/又は第2の測定デバイスが2つの光センサを備え、第1の下位区分が第1の光センサを介して測定され、第2の下位区分が第2の光センサを介して測定されるという点でさらに改善することができる。
【0017】
この実施形態によれば、2つの下位区分に分割されたエネルギービームは、異なる光センサを介して測定され、これらの光センサは、異なる位置に配置され、すなわち第2のビームスプリッタに対して異なる距離をあけて配置される。言い換えれば、それぞれのエネルギービームの下位区分は、異なる距離を進み、すなわち2つの下位区分に対するビーム長又は光路長は異なる。したがって、それぞれのエネルギービームが適切に視準されていない場合、2つの下位区分のビーム径は異なる。この構成を提供することによって、それぞれのエネルギービームの視準状態及びレンズなどの光学構成要素のパラメータ、特に視準又は集束光学系の焦点距離に関する情報を生成することが可能になる。
【0018】
有利には、第2の測定デバイスは、第3の光ビーム経路を、造形平面の照射領域から溶融プール監視ユニットへ延びる第1の下位経路と、集束光学系と造形平面との間の表面、特に集束光学系の保護ガラスから第2の測定デバイスの第2のビームスプリッタへ反射される第2の下位経路とに分割するように構成された2色性ビームスプリッタを備える。
【0019】
2色性ビームスプリッタは、エネルギービームを分割し、又は2色性ビームスプリッタ上に概して入射する電磁放射をこの電磁放射の波長に応じて分割するように構成される。有利には、2色性ビームスプリッタは、第3のエネルギービームのうち、たとえば固化区間(固化ゾーン)内のエネルギービームの反射に起因するか又は造形平面と集束光学系との間の表面で反射されたエネルギービームの少しの部分又は定義された量だけを分割するように構成することができる。エネルギービームの大部分は、2色性フィルタを通過して第2の測定ユニットへ進むことが可能である。
【0020】
固化区間(固化ゾーン)の周りの隣接区間(隣接ゾーン)から放出される放射、たとえば熱接触のために固化区間に隣接する加熱区間によって間接的に生成される放射は、第3のエネルギービームから、より大量に分割される。たとえば、2色性スプリッタは、たとえば250nm〜3000nmの波長スペクトル内で造形平面から放出される(熱)放射を選択的に分割又は反射するように構成することができ、約1070nmの波長の放射は、少量だけ反射される。したがって、約1070nmの波長を有するエネルギービームが生成された場合、このエネルギービームは、主に2色性ビームスプリッタを通過することができ、このエネルギービームのうち少しの量だけが、2色性ビームスプリッタによって反射される。250nm〜3000nmの波長スペクトル内の造形平面、特に固化区間に隣接する区間から放出される放射は、2色性ビームスプリッタを少量だけ通過することができ、より多くの量は、2色性ビームスプリッタによって反射され、したがって溶融プール監視ユニットの方へ案内され、造形平面、すなわち固化区間に隣接する区間から放出される放射を測定又は分析することができる。
【0021】
この装置は、第1の測定デバイスによって生成される情報が、
−現在のビームパワー
−視準光学系の現在の焦点距離
を含み又はそれに関するという点でさらに改善することができる。
【0022】
したがって、エネルギービームのうち第2の光ビーム経路に沿って延びる部分を測定又は分析することによって、視準光学系を介して視準され、第1の測定ユニットの方へ案内されるエネルギービームの現在のビームパワーを特徴付けることが可能になる。さらに、視準光学系の現在の焦点距離を監視し又は特徴付け、温度の変動が視準光学系に与える影響を監視することが可能になる。したがって、この実施形態により、エネルギービームの視準を、又は言い換えれば、たとえば温度に誘起される歪み、ずれのために、エネルギービームの現在の焦点距離若しくは現在の焦点位置を補正する必要があるかどうかを、監視することが可能になる。
【0023】
この装置の別の実施形態によれば、第2の測定デバイスによって生成される情報は、
−現在の焦点位置
−造形平面の照射領域内の温度
−集束光学系の光学パラメータ、特に焦点距離
を含み又はそれに関する。
【0024】
上述した情報と同様に、第2の測定ユニットによって実行される監視により、集束光学系の現在の焦点位置又は現在の光学パラメータ、特に集束光学系の焦点距離の判定(決定)が可能になる。視準光学系の判定された焦点距離とともに、集束光学系及び視準光学系を備える光学システムの焦点距離を判定することが可能になる。さらに、造形平面の一区間の温度を判定することが可能になり、この区間は、エネルギービームが造形材料を直接照射して造形材料を固化する固化区間とすることができ、またこの区間は、固化区間との熱接触を維持し、それによってエネルギービームを介して間接的に加熱される固化区間に隣接する区間とすることができる。
【0025】
照射領域の温度を監視することによって、造形すべき物体の品質に関して記述することができ、物体の隣接する区間同士の間の高い温度勾配又は温度差を回避するように、プロセスパラメータを監視してそれぞれを制御することによって、物体内の欠陥を回避することができる。
【0026】
この装置の別の実施形態は、集束光学系と造形平面との間に保護ガラスが配置されることを提案し、保護ガラスは、エネルギービームの少なくとも一部分を反射するように構成される。保護ガラスは、エネルギービームを部分的に反射して第3の光ビーム経路に沿って延ばす表面を提供する。したがって、第2の測定デバイスを介してエネルギービームの反射部分を評価することができるので、保護ガラスにおけるエネルギービームの反射を使用して、プロセスパラメータを監視することができる。これにより、エネルギービームのうち視準光学系と集束光学系をすでに通過して保護ガラスで反射されるエネルギービームの部分として、エネルギービームの集束部分の特性を特徴付けることが可能になる。
【0027】
上述した実施形態は、エネルギービームのうち保護ガラスによって反射されたエネルギービームの部分の焦点位置内に位置する光学絞りが設けられるという点で改善することができる。この実施形態によって、望ましくない光ビーム経路に沿って延びるエネルギービーム又は光線の異なる様々な部分の濾過が可能になる。反射されたエネルギービームのうち、保護ガラスによって反射された部分だけが、それに応じて調整することができる光学絞りを通過することが可能である。したがって、この絞りによって、エネルギービームのうち評価する必要のあるエネルギービームの部分から、関係のない表面又は領域から放出された放射並びに散乱放射を分離することができる。
【0028】
この装置の別の実施形態は、有利には、測定ユニットによって生成される少なくとも1つの情報が品質管理システムへ伝達可能であることを提案する。したがって、測定ユニットによって生成される情報を品質管理システムのデータ記憶部内に記憶し、且つ/又はさらに処理して、たとえば造形すべき物体を特徴付け、且つ/又は物体の製造プロセス中にプロセスパラメータを記録することができる。これにより、物体の特徴を対応する製造プロセス又は製造プロセス中のパラメータにそれぞれ関連付けることが可能になる。
【0029】
別の有利な実施形態によれば、測定ユニットによって生成される少なくとも1つの情報に応じて、エネルギービームの少なくとも1つのプロセスパラメータ、特に焦点位置を制御するように構成された制御ユニットが設けられる。したがって、上述したように、エネルギービームの部分を監視することによって、少なくとも1つのプロセスパラメータの(「オンライン」)評価及び制御が可能になる。物体の製造プロセス中に関係するプロセスパラメータを監視することによって、プロセスパラメータの変化、たとえば焦点位置の変化により、現在製造されている物体に歪み、ずれ(偏差)が生じる前に、プロセスパラメータを補正又は調整することが可能になる。したがって、エネルギービームをその様々な部分、たとえば集束部分、反射部分、及び視準部分ごとに評価することによって、ずれが生じる前にそれぞれの構成要素を調整し、したがってそれぞれのパラメータを補正することが可能になる。したがって、光学構成要素、たとえばレンズの位置又は相対位置を調整して、温度変動による焦点距離又は焦点位置のずれを補償することができる。
【0030】
さらに、本発明は、エネルギービームによって固化することができる造形材料層を連続して層ごとに選択的に照射及び固化することによって3次元の物体を付加製造する装置を動作させる方法に関し、エネルギービームの視準部分に関する情報及びエネルギービームの集束部分に関する情報が生成される。
【0031】
この装置に関して記載するすべての特徴、利点、及び詳細は、この方法にも完全に移行可能であり、逆も同様であることが自明である。この方法は、好ましくは、上述した装置上で実行される。
【0032】
この方法の一実施形態によれば、エネルギービームは、視準光学系と集束光学系との間で、視準光学系から集束光学系を通って造形平面上へ延びる第1の光ビーム経路と、視準光学系から第1の測定デバイスへ延びる第2の光ビーム経路と、造形平面及び/又は集束光学系と造形平面との間の表面から集束光学系を通って第2の測定デバイスへ延びる第3の光ビーム経路とに分割され、エネルギービームの視準部分に関する情報は、第1の測定デバイスによって生成され、造形平面の一区間から放出される放射及び/又は集束光学系と造形平面との間の表面によって放出される放射並びに/又はエネルギービームの集束部分、に関する情報は、第2の測定デバイスによって生成される。
【0033】
したがって、視準光学系から出るエネルギービームは、集束光学系を通過する前にビームスプリッタによって分割され、第1の測定デバイスへ案内される。造形平面及び/又は集束光学系の後ろに配置された表面で反射される放射は、ビームスプリッタによって第2の測定ユニットへ案内される。これにより、関係するビーム部分、特に視準部分及び集束部分並びに造形平面の一区間及び/又は造形平面と集束光学系との間の表面から放出される放射を監視することが可能になる。
【0034】
本発明の例示的な実施形態について、図を参照して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】本発明の装置を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
この図は、エネルギービーム4によって固化することができる造形材料層3を連続して層ごとに選択的に照射及び固化することによって3次元の物体2を付加製造する装置1を示す。装置1は、エネルギービーム4の視準部分6に関する情報及びエネルギービーム4の集束部分7に関する情報を生成するように構成された2つの測定デバイス14、16を備える測定ユニット5を備える。したがって、測定デバイス14、16は、エネルギービーム4の異なる部分6、7を同時に測定し、測定ユニット5がエネルギービーム4の異なる部分6、7に関する情報を生成することが可能になるように構成される。
【0037】
測定ユニット5は、エネルギービーム4を分割する第1のビームスプリッタ8を備え、第1の光ビーム経路9は、視準光学系10から第1のビームスプリッタ8及び集束光学系11を通って造形平面12上へ延びる。したがって、エネルギービーム4のうち第1の光ビーム経路9に沿って延びる部分は、第1のビームスプリッタ8によって反射されず、造形平面12内で造形材料3を照射するために使用される。
【0038】
第1のビームスプリッタ8は、エネルギービーム4から、第2の光ビーム経路13に沿って視準光学系10から第1の測定デバイス14へ延びる部分を分割する。さらに、第1のビームスプリッタ8は、エネルギービーム4のうち第3の光ビーム経路15に沿って造形平面12又は造形平面12と集束光学系11との間の表面から集束光学系11を通って第2の測定デバイス16へ延びる反射部分を反射する。したがって、第1のビームスプリッタ8は、エネルギービーム4を分割するために使用され、第1の(エネルギー)光ビーム経路9は、第1のビームスプリッタ8を通過し、第2の(エネルギー)光ビーム経路13は、第1のビームスプリッタ8によって第1の測定デバイス14へ反射され、第3の(エネルギー)光ビーム経路15は、第1のビームスプリッタ8によって第2の測定デバイス16へ反射される。
【0039】
第1の測定デバイス14は、エネルギービーム4のうち第2の光ビーム経路13に沿って延びる部分を第1の下位区分18及び第2の下位区分19に分割する第2のビームスプリッタ17を備え、第1の下位区分18は、第1の光センサ20上に撮像され、第2の下位区分19は、第2の光センサ21を介して測定される。第1の光センサ20及び第2の光センサ21は、第2のビームスプリッタ17に対して異なる距離をあけて配置される。したがって、エネルギービーム4のうち第2の光ビーム経路13に沿って延びる部分の下位区分18、19の光路長は異なる。これにより、エネルギービーム4の視準部分6が適切に視準されているかどうか、又は視準光学系10の焦点距離を適合させなければならないかどうかを測定することが可能になる。光センサ20、21を介して、エネルギービーム4のパワーなど、エネルギービーム4及び/又は視準光学系10のさらなるパラメータを測定することもできる。
【0040】
第2の測定デバイス16の構成は、第1の測定デバイス14に類似している。したがって、同じ部分には同じ数字を使用する。第2の測定デバイス16もまた、第2のビームスプリッタ17及び2つの光センサ20、21を備え、2つの光センサ20、21は、第2のビームスプリッタ17に対して異なる距離をあけて配置される。第2の測定デバイス16の第2のビームスプリッタ17もまた、エネルギービーム4のうち第2のビームスプリッタ17上に入射する部分を第1の下位区分18及び第2の下位区分19に分割する。
【0041】
加えて、第2の測定デバイス16は、エネルギービーム4のうち保護ガラス23によって反射された部分の焦点位置内に配置された光学絞り22を備える。絞り22は、放射の濾過を可能にし、エネルギービーム4のうち保護ガラス23によって反射された部分だけが、光学絞り22を通過し、第2の測定デバイス16の第2のビームスプリッタ17を通過することが可能になる。エネルギービーム4のうち保護ガラス23で反射された部分以外の放射は、光学絞り22によって阻止される。
【0042】
測定ユニット5は、第2の測定デバイス16に割り当てられた2色性ビームスプリッタ24をさらに備え、2色性ビームスプリッタ24は、放射が放射の波長に応じて選択的に濾過(反射)され、又は2色性ビームスプリッタ24を通過するように構成される。特に、エネルギービーム4のうち造形平面12の一区間から放出され又は保護ガラス23で反射された部分、すなわち第3の光ビーム経路15に沿って延びる部分は、波長に応じて2色性ビームスプリッタ24によって濾過される。これにより、エネルギービーム4の2つの異なる部分を、すなわち保護ガラス23若しくは造形平面12で反射された部分又は造形平面12の一区間から放出された部分、特に熱放射を、濾過することが可能になる。したがって、造形平面12によって、特にエネルギービーム4が造形材料3を直接照射する固化区間に隣接する区間によって放出された放射を測定することができる。
【0043】
特に、2色性ビームスプリッタ24は、エネルギービーム4の波長が少量だけ反射されるように設計することができ、又は言い換えれば、エネルギービーム4の波長を有する放射は、その最大部分が2色性ビームスプリッタ24を通過することができる。したがって、エネルギービーム4のうち2色性ビームスプリッタ24を通過する部分25は主に、エネルギービーム4のうち、保護ガラス23又は固化区間で反射され、集束光学系11を通過し、第1のビームスプリッタ8で反射された部分である。エネルギービーム4の部分25は、第2の測定デバイス16へ案内され、この場合も光学絞り22によって濾過され、後に第2のビームスプリッタ17によって2つの下位区分18、19に分割され、光センサ20、21上へ撮像される。
【0044】
さらに、部分26(造形平面12の一区間によって放出される熱放射)は主に、部分26の波長が、2色性ビームスプリッタ24が通過させるように設計された波長とは異なるため、2色性ビームスプリッタ24によって反射される。部分26は主に、造形平面12によって、特に固化区間に隣接する区間によって放出される。したがって、部分26は、造形平面12によって放出され、保護ガラス23及び集束光学系11を通過する。後に部分26は、第1のビームスプリッタ8及び2色性ビームスプリッタ24によって反射され、溶融プール監視ユニット27へ案内される。溶融プール監視ユニット27は、部分26を測定するように構成され、特に溶融プール監視ユニット27は、たとえばその部分26が放出された造形平面12の区間の温度を判定(決定)するために、少なくとも1つの光センサ(図示せず)を備える。
【0045】
この図から導出することができるように、装置1、特に測定ユニット5により、エネルギービーム4及び造形平面12から放出される放射の様々な部分の判定(決定)が可能になる。特に、視準部分6及び集束部分7並びに造形平面12から放出される放射の部分26に関する情報を生成することが可能になる。これにより、たとえば温度差によるエネルギービーム4の焦点ずれを回避又は補正するために、様々なプロセスパラメータ、特に視準光学系10及び集束光学系11の焦点距離の定義された調整が可能になる。さらに、固化区間及び隣接区間内の温度を測定することによって、固化区間と隣接区間との間の温度勾配を判定することができる。したがって、判定された温度勾配が事前定義された値を超過する場合、それぞれのプロセスパラメータを、特にエネルギービーム4のパワーを調整することができ、特に低減させることができる。
【0046】
上述した方法は、図に示す装置1上で実行することができることが自明である。
【符号の説明】
【0047】
1 装置
2 3次元の物体
3 造形材料、造形材料層
4 エネルギービーム
5 測定ユニット
6 視準部分
7 集束部分
8 第1のビームスプリッタ
9 第1の光ビーム経路
10 視準光学系
11 集束光学系
12 造形平面
13 第2の光ビーム経路
14 第1の測定デバイス
15 第3の光ビーム経路
16 第2の測定デバイス
17 第2のビームスプリッタ
18 第1の下位区分
19 第2の下位区分
20 第1の光センサ
21 第2の光センサ
22 光学絞り
23 保護ガラス
24 2色性ビームスプリッタ
25 (エネルギービームの一つの)部分
26 (エネルギービームの一つの)部分
27 溶融プール監視ユニット
図1