(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6880140
(24)【登録日】2021年5月7日
(45)【発行日】2021年6月2日
(54)【発明の名称】光電センサ及び物体検出方法
(51)【国際特許分類】
G01S 7/481 20060101AFI20210524BHJP
【FI】
G01S7/481 A
【請求項の数】9
【外国語出願】
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2019-190117(P2019-190117)
(22)【出願日】2019年10月17日
(65)【公開番号】特開2020-98194(P2020-98194A)
(43)【公開日】2020年6月25日
【審査請求日】2020年1月31日
(31)【優先権主張番号】10 2018 125 826.7
(32)【優先日】2018年10月18日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】591005615
【氏名又は名称】ジック アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110001069
【氏名又は名称】特許業務法人京都国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ハルトムート ギンペル
(72)【発明者】
【氏名】マティアス イェーゲル
【審査官】
東 治企
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2018/0292512(US,A1)
【文献】
特開平08−178749(JP,A)
【文献】
特開2015−148605(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2006/0187470(US,A1)
【文献】
中国特許出願公開第107861317(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/48−7/51
G01S 17/00−17/95
G01C 3/00−3/32
G01B 11/00−11/30
G01J 1/00−1/60
G01J 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
監視領域(20)内の物体を検出するための光電センサ(10)であって、互いに分離した複数の光線(26)をそれぞれ1つの発光点(22b)から送出するための少なくとも1つの発光器(22)と、送出された前記光線(26)のための発光光学系(24)と、物体により反射されてそれぞれ受光点(32b)において入射する各反射光線(28)からそれぞれの受光信号を生成するための少なくとも1つの受光器(32)と、前記反射光線(28)のための受光光学系(30)と、前記受光信号から前記物体に関する情報を得るための評価ユニット(40)とを備える光電センサ(10)において、
前記受光光学系(30)及び/又は前記発光光学系(24)が画像フィールド角αの円環状の画像フィールド用の2レンズ式対物レンズであり、該対物レンズが第1レンズ(50)及び第2レンズ(52)を備え、前記第1レンズ(50)が、画像フィールド角αを持ついずれの個別の発光点及び/又は受光点の光束(54、56)も前記第2レンズ(52)の半分にのみ当たるように構成されていること、
前記2レンズ式対物レンズに関して、前記第1レンズ(50)の焦点距離をf1、直径をD1、該第1レンズ(50)と前記第2レンズ(52)の間の距離をdとしたときに不等式d≧(D1*f1)/(D1+2*f1*tanα)が満たされること、及び
少なくとも近似的にd=(D1*f1)/(D1+2*f1*tanα)が成り立つこと
を特徴とする光電センサ(10)。
【請求項2】
前記第2レンズ(52)の焦点距離f2が第1レンズ(50)と第2レンズ(52)の間の距離と一致していることを特徴とする請求項1に記載のセンサ(10)。
【請求項3】
前記第1レンズ(50)のF値k1が小さいことを特徴とする請求項1又は2に記載のセンサ(10)。
【請求項4】
前記発光点(22b)が第1の円周(48a)上に配置されていること、及び/又は、前記受光点(32b)が第2の円周(48b)上に配置されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のセンサ(10)。
【請求項5】
多数の発光器(22、22a)を備えていること、及び/又は、多数の受光器(32、32a)を備えていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のセンサ(10)。
【請求項6】
発光器(22)と受光器(32)が同軸配置を成し、発光光学系(24)と受光光学系(30)が共通の光学系にまとめられていることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のセンサ(10)。
【請求項7】
レーザスキャナとして構成され、可動の偏向ユニット(12)を備え、該偏向ユニット(12)を用いて周期的に監視領域を通過するように送出光線(26)を案内することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のセンサ(10)。
【請求項8】
前記評価ユニット(40)が前記光線(26)の送出から前記反射光線(28)の受光までの光伝播時間から前記物体の距離を測定するように構成されていることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のセンサ(10)。
【請求項9】
監視領域(20)内の物体を検出するための方法であって、互いに分離した複数の光線(26)がそれぞれ発光点(22b)から出発して発光光学系(24)を通じて送出され、物体により反射されて受光光学系(30)を通過した後でそれぞれ受光点(32b)に入射する各反射光線(28)からそれぞれの受光信号が生成され、前記物体に関する情報を得るために該受光信号が評価される方法において、
前記受光光学系(30)及び/又は発光光学系(24)が画像フィールド角αの円環状の画像フィールド用の2レンズ式対物レンズであり、該対物レンズが第1レンズ(50)及び第2レンズ(52)を備え、前記第1レンズ(50)の造形に基づいて、画像フィールド角αを持ついずれの個別の発光点及び/又は受光点の光束(54、56)も前記第2レンズ(52)の半分にのみ当たること、
前記2レンズ式対物レンズに関して、前記第1レンズ(50)の焦点距離をf1、直径をD1、該第1レンズ(50)と前記第2レンズ(52)の間の距離をdとしたときに不等式d≧(D1*f1)/(D1+2*f1*tanα)が満たされること、及び
少なくとも近似的にd=(D1*f1)/(D1+2*f1*tanα)が成り立つこと
を特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1又は11のプレアンブルに記載の光電センサ及び監視領域内の物体の検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
多くの光電センサは、監視領域内へ光線を送出し、物体により反射された光線を再び受光して、受光信号を電子的に評価する、という検知原理により作動する。また、公知の位相法又はパルス法で光伝播時間を測定することで、検知された物体の距離を特定することも多い。
【0003】
単一光線式の光検知器の測定領域を広げるために、まず、レーザスキャナで行われるように光線を動かすことが考えられる。この場合、レーザから発せられた光線が偏向ユニットを介して周期的に監視領域を掃引する。測定された距離情報に加えて、偏向ユニットの角度位置から監視領域内での物体の位置が推定され、以て監視領域内での物体の位置が2次元極座標で検出される。
【0004】
測定範囲の拡大と追加の距離データの取得を行う別の可能性として、複数の走査光線で複数の測定点を同時に検出することが挙げられる。これをレーザスキャナと組み合わせることもできる。そうすれば、単一の監視平面だけでなく、多数の監視平面を通じて3次元空間領域が捕らえられる。大抵のレーザスキャナでは走査運動が回転ミラーによって達成される。ただし、まさに複数の走査光線を用いる場合については、例えば特許文献1に記載されているように、発光器と受光器を有する測定ヘッド全体を回転させるという方法も従来技術で知られている。
【0005】
原理的には、単一光線式の装置の部品を重複させることで複数の走査光線を生じさせることができる。しかしそれは不必要にコストがかかり、また複雑である。そこで、従来技術として、同じ部品を多重的に利用するというアプローチがある。例えば特許文献2では、複数の発光器の走査光線が1つの共通の発光光学系を通じて生成され、所望の方向へ偏向される。
【0006】
さて、発光光学系でも、あるいは受光光学系でも、複数の光線に対して同時に用いることは確かに望ましい。しかしそうすると矛盾する要求が光学系に課される。即ち、一方でそれはコスト上の理由からできるだけ簡素であるべきだが、他方でそれはできるだけ広い画像フィールドにおいて全ての光線を同時に鮮明に結像させなければならない。
【0007】
簡単な光学系は単式レンズを用いて実現できる。しかしそうすると十分に大きな口径(例えばF値がk≦3)と十分に小さな点像を得るという与えられた境界条件の下ではせいぜい±5度という狭い角度範囲の画像フィールドしか得られない。従って、単式レンズでは密集した走査光線しか実現できない。走査光線間の有意義な間隔が数度であるとすると、先に挙げた5度未満という画像フィールド角の場合、単式レンズでは高々2〜3本の光線しか利用できず、従って、例えば30度といったより広い測定範囲は不可能である。
【0008】
他方、簡単な光学系を諦めて複数レンズ型の対物レンズを用いることも可能である。これにより、例えば±20度といったより広い画像フィールド角でも小さな点像を生成することができる。もっとも、それには通常少なくとも3個のレンズが必要であり、しかもそれ自体を調整しなければならない。
【0009】
製造及び調整のコストの増大は受け入れるとしても、光学的な妥協がなおも必要である。単式レンズでは光軸に沿ったほぼ0度の画像フィールドだけであればk=1というF値を達成できるのに対し、例えば±15度という広い画像フィールド用の対物レンズではk≦3又はk≦2というF値さえ達成が難しい。しかし、受光口径を小さくすると装置の射程が短くなる。複数レンズ型の対物レンズの別の欠点は主光線が非常に大きな角度を持って像面に入射するということである。このような対物レンズを発光光学系として用いるとすれば、そもそも対物レンズに光を当てるために光源を傾けなければならない。一方、主光線の角度が非常に小さいテレセントリックな対物レンズで代用することは問題にならない。なぜなら3個より明らかに多くのレンズが必要となってしまうからである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】DE 197 57 849 B4
【特許文献2】DE 10 2015 121 839 A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の課題は、前述した種類の多光線システムを簡素化すること及び改良することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この課題は、請求項1又は11に記載の光電センサ及び監視領域内の物体の検出方法により解決される。本発明に係るセンサは、少なくとも1つの発光器を用いて複数の光線をそれぞれ1つの発光点から送出する多重式センサである。各発光点は実質的に発光器であり、そこから各々の送出光線が出て行くが、これらの発光点に物理的な発光器が存在することは差し当たり絶対に必要というわけではない。代わりに、いくつかの実施形態では、後でまた説明するように、1つの物理的な発光器でも複数の送出光線を複数又は全ての発光点で生成することができる。また、送出光線は、より大きな光束の内部にある光線という光線光学的な意味での光線と理解すべきではなく、互いに分離した光束、つまり、監視領域内で物体に当たったときに互いに間隔を空けた別々の光スポットをそれぞれ生成する個別化された走査光線と理解すべきものである。
【0013】
少なくとも1つの受光器が、物体の表面で反射されてそれぞれの受光点に当たる様々な方向からの反射光線から、それぞれの受光信号を生成することができる。発光点について述べたのと同様、各受光点は実質的に受光器であるが、各受光点にそれぞれ1つの受光器が物理的に存在している必要はない。こうして生成された受光信号が、物体に関する情報を得るために評価される。
【0014】
送出光線は発光光学系を通過する。この光学系は、例えば、各送出光線が所望の形状になるように、互いに明確に分かれるように、又は特定の放射方向を向くようにするものである。発光光学系は全ての発光点の全ての光線に対して1つだけ設けられている。もっとも、非常に多数の光線を用いるセンサのために、それぞれ複数の発光点と単一の発光光学系を備える複数のモジュールを組み合わせることは考えられる。複数の反射光線及びそれらの共通の受光光学系についても同様である。
【0015】
本発明の出発点となる基本思想は、発光光学系及び/又は受光光学系として画像フィールド角αを持つ円形の画像フィールド用の2レンズ式対物レンズを用いるということである。2レンズ式対物レンズは正確に2個のレンズ、つまり第1レンズと第2レンズを含み、他にレンズはない。ここでレンズとは特に集光レンズのことである。第1レンズは、画像フィールド角αを持ついずれの個別の像点乃至は発光点及び/又は受光点についても入射光束がそれぞれ第2レンズの半分にのみ当たるように成形されている。従って、このような光束、しかも好ましくは画像フィールド角αの全ての光束は、第2レンズの位置においては光軸の一方の側にのみ存在する。光軸を挟んで対向するフィールド点からの光束は第2レンズの面内では互いに交差しない。それらはもはや第2レンズの中心点をまともには照らさない。つまり、通常の対物レンズとは違ってここでは空間的につながった広い範囲の画像フィールド角(例えば−α〜0度〜α)は用いられず、分離した単独の画像フィールド角αだけが用いられる。画像フィールド角αの近傍には前記特性がまだ十分に実現されるような一定の許容範囲を含めてもよい。
【0016】
本発明には、2レンズ式対物レンズの特殊な設計によって単式レンズと対物レンズの両方の有用な特性が一つにまとめられるという利点がある。当然ながら、2レンズは3レンズや多レンズに比べて製造も調整も容易である。その代わり設計の自由度そのものはより制限されるが、本発明ではそれが十分に利用されるため、コストが下がるにもかかわらずより多くの走査光線がより広い画像フィールドにわたって鮮明に像を結ぶ。例えば、点像を大きくすることなく±20度のフィールド角を達成できる。これは例えば0.5ミリラジアン未満という要求を満たす。これにより、多数の互いに間隔を空けた光線を同じ光学系で生成することができる。この点で3レンズ又は多レンズの場合に比べて性能が劣ることはない。これが成功するのは、鮮明な境界を持つ光線が全面的には要求されず、画像フィールド角αに対応する円環上でのみ要求されるということによる。それでも2レンズ式対物レンズでは多レンズ式対物レンズとは違ってk≦2又はk=1にさえなる大きな口径、つまり小さなF値、ひいては大きな口径と、長い射程を得ることができる。しかも像面内での主光線の角度を非常に小さく保つことができ、それにより像側でほぼテレセントリックになった光学系を設計することができる。そうすると、発光路内で用いる場合に光源を傾ける必要がなくなり、回路基板上に平面的に半田付けすることができる。
【0017】
2レンズ式対物レンズに関して、第1レンズの焦点距離をf1、直径をD1、第1レンズと第2レンズの間の距離をdとしたときに不等式d≧(D1*f1)/(D1+2*f1*tanα)が満たされることが好ましい。ここで距離dは好ましくは第1レンズの主面と第2レンズの第1の作用レンズ面(即ち、第1レンズの方に向いたレンズ面)の間で測定する。これは、画像フィールド角αの光束が第2レンズの半分にのみ当たるという既に提示した条件を数学的に定式化したものである。
【0018】
好ましくは少なくとも近似的に等式、即ちd=(D1*f1)/(D1+2*f1*tanα)が成り立つことが有用である。「少なくとも近似的に」とは、例えば5%又は10%という程度の許容差がまだ可能であり、光学系の特性が急には変化しない、という意味である。むしろ重要なのは、第2レンズもなお顕著な作用を発揮できるように、不等式の条件下でもなお光学系の像面に対して第2レンズの距離をできる限り大きく保つことである。そして、等式はこの距離が最大になっているという意味での最適解であり、この最適解は、近似的ではあるが、先に述べた許容差でもって達成してもよい。
【0019】
第2レンズの焦点距離f2は第1レンズと第2レンズの間の距離と一致していることが好ましい。そうすると2レンズ式対物レンズは像側でテレセントリックになる。これによりとりわけ、既に述べたように、発光光学系として用いる際に光源を互いに平行に向けることが可能になる。ここでの第1レンズと第2レンズの間の距離は、既に導入した距離dではなく、第2レンズの中央の厚みのほぼ半分だけずれた距離d’、つまり2つのレンズの主面間の距離であることが好ましい。もっとも、これを守ることは必須ではない。前の段落で論じたように、焦点距離f2が第1レンズと第2レンズの間の距離と近似的に等しければ既に有利であり、そうすれば2レンズ式対物レンズは像側で少なくともほぼテレセントリックになる。少なくとも中央の厚みの半分という範囲内の許容差は十分にまだ受け入れ可能である。
【0020】
第1レンズのF値k1が小さいこと、特にk1=1であることが好ましい。これがそもそも可能であると言うことが多レンズ式対物レンズに対する2レンズ式対物レンズの一つの利点である。k1をこのように選ぶと対物レンズ全体のF値の値kも小さくなる。このように小さなF値を用いれば特に高感度で射程の長いセンサを実装できる。
【0021】
発光点が第1の円周上に配置されていること、及び/又は、受光点が第2の円周上に配置されていることが好ましい。これらの円環は、2レンズ式対物レンズを設計する際の目標となる画像フィールド角αに対応している。このように発光点又は受光点と2レンズ式対物レンズの配置を互いに適合させれば、その最適化された特性がまさに利用される一方、代償として他の画像フィールド角に対する設計上の損失を受け入れたとしてももはや何ら影響はない。発光点又は受光点を円形に配置することは特にレーザスキャナにとっては一見すると意味がないように思われる。なぜなら、そこでは簡単な線上の配置で十分であり、それを用いて回転運動により一群の平面が走査されるからである。しかし、円環ではなく線にすると、本発明に従って2レンズ式対物レンズを通じて高い画質で所要の広い画像範囲にわたって像を結ぶことができない。また、円周に合わせて配置された発光点又は受光点でも、レーザスキャナにおいて等間隔に配置された平面を走査することは可能である。なぜなら、レーザスキャナの回転方向のずれは、必要とあれば補償も可能な時間的なずれを測定値に生じさせるにすぎないからである。
【0022】
第1の円周が発光光学系の光学的な中心軸を中心としていること、及び/又は、第2の円周が受光光学系の光学的な中心軸を中心としていることが好ましい。言い換えれば、各光学系の光学的な中心軸が円周の中心を貫通している。このようにすれば、光学系の特性が回転対称的である場合に各光線がそれぞれ同じ光線成形作用と偏向作用を受ける。
【0023】
発光点が第1の円周上に均等に配分されていること、及び/又は、受光点が第2の円周上に均等に配分されていることが好ましい。発光点又は受光点が正n角形を成すこのような均等な配置は、特に走査光線の間の角度間隔を均等にする上で、取り扱いがより簡単である。もっとも、円周上で不規則に配分することも可能であり、それでも走査光線間の角度間隔を均等に調節することができないことは決してない。
【0024】
3個以上の発光点又は受光点が設けられていることが好ましい。特に有利な個数としては5個、6個、8個又は16個が挙げられる。4個の場合は発光点及び/又は受光点を正方形又は長方形に配置しないことが好ましい。繰り返しになるが、前記個数は1つの光学センサ内に複数組み込むことができる発光/受光モジュールの個数であってもよい。その場合、走査光線の総数は組み込まれたモジュールの数に基づいて加算されるため、他の個数を作り出すことができる。
【0025】
本センサが多数の発光器又は光源、特に発光点毎に1つの発光器を備えていること、及び/又は、多数の受光器又は受光素子、特に受光点毎に1つの受光器を備えていることが好ましい。つまり、送出光線は、全てではないにしても少なくとも一部が専用の発光器により発光点において直接生成される。同じことが反射光線、受光点及び受光器についても言える。
【0026】
発光器にはその光を複数の送出光線に分割するために光線分割素子が割り当てられていることが好ましい。このようにすれば単一の物理的な発光器が複数の発光点又は全ての発光点の担当にさえなる。また、複数の物理的な発光器の光を分割すること、例えば2個の発光器からの光線をそれぞれ3分割して6個の発光点を得ることも考えられる。
【0027】
受光器は位置分解され、複数の作動領域を受光点に有していることが好ましい。この実施形態では同じ受光器が複数又は全ての受光点の担当となる。そのために該受光器は特に画素マトリックスを備えており、受光信号を取得するために受光点上の画素だけが用いられる。他の画素も場合によっては信号を生成するが、それは無視される又は読み出されない。また、そのような画素を完全に非作動状態にすること、例えばSPAD(シングルフォトンアバランシェダイオード)のマトリックスにおいて受光点上の画素にだけ狙いを定めて降伏電圧を超えるバイアス電圧をかけることも考えられる。
【0028】
発光器と受光器が同軸配置を成し、発光光学系と受光光学系が共通の光学系にまとめられていることが好ましい。これにより非常にコンパクトな構造が得られる。この場合、1つの2レンズ式対物レンズだけが共通の光学系としてあり、それが発光及び受光光学系として二重の役割を果たす。
【0029】
本センサがレーザスキャナとして構成され、可動の偏向ユニットを備え、該ユニットを用いて周期的に監視領域を通過するように送出光線を案内することが好ましい。冒頭で説明したように、レーザスキャナは可動の偏向ユニットの運動とともに監視領域を複数の平面において走査する。2レンズ式対物レンズの広い画像フィールドによって、平面間の間隔を広げること、又は走査平面により全体としてカバーされる仰角方向の空間角度範囲を広げることができる。偏向ユニットは、少なくとも発光器とそれに備わる共通の発光光学系並びに場合によっては受光器及び少なくとも評価ユニットの一部を収納した、実質的に可動の測定ヘッドを成している回転可能な走査ユニットの形で構成されていることが好ましい。
【0030】
評価ユニットは光線の送出から反射光線の受光までの光伝播時間から物体の距離を測定するように構成されていることが好ましい。これにより本センサは距離測定型となる。あるいは、単に物体の有無を確認して例えばスイッチ信号として出力する。
【0031】
本発明に係る方法は、前記と同様のやり方で仕上げていくことが可能であり、それにより同様の効果を奏する。そのような効果をもたらす特徴は、例えば本願の独立請求項に続く従属請求項に模範的に記載されているが、それらに限られるものではない。
【0032】
以下、本発明について、更なる特徴及び利点をも考慮しつつ、模範的な実施形態に基づき、添付の図面を参照しながら詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図2】(a)画像フィールド点の円形の配置の概略図、(b)画像フィールド点の直線的な配置の概略図、及び(c)画像フィールド点の円環状の配置の概略図。
【
図3】円形に配置された発光点又は受光点の平面図。
【
図4】円環状の画像フィールド用の2レンズ式対物レンズと光線の模範的な進路の概略図。
【
図5】
図4の対物レンズの第2レンズの平面図であって、第1レンズの光学的な作用を具体的に示すための図。
【発明を実施するための形態】
【0034】
図1はレーザスキャナとしての実施形態における光電センサ10の概略断面図である。本センサ10は大きく分けて可動式の走査ユニット12と台座ユニット14を含む。走査ユニット12は光学的な測定ヘッドである一方、台座ユニット14には、給電部、評価用電子機器、接続部等、その他の要素が収納されている。稼働時には、監視領域20を周期的に走査するために、台座ユニット14の駆動装置16を用いて走査ユニット12が回転軸18を中心として回転駆動される。
【0035】
走査ユニット12において、複数の光源22a(例えばLED又は端面放射型発光器若しくはVCSELの形をしたレーザ)を有する発光器22が、共通の発光光学系24の助けを借りて、互いに対して角度のずれを持つ複数の発射光線26を生成し、これらの光線が監視領域20内へ送出される。発射光線26が監視領域20内で物体に当たると、それに対応する反射光線28がセンサ10まで戻ってくる。反射光線28は共通の受光光学系30により複数の受光素子32aを有する発光器32へと導かれ、各受光素子32aがそれぞれ電気的な受光信号を生成する。受光素子32aは別々の部品でも、統合されたマトリックス配置の画素であってもよく、例えばフォトダイオード、APD(アバランシェダイオード)、又はSPAD(シングルフォトンアバランシェダイオード)である。
【0036】
全くの模範例として4つの光源22aと受光素子32aが断面図において上下に描かれている。実際にはこれらのグループのうち少なくとも1つが本発明の好ましい実施形態では円形内又は円周上に配置されている。これについてはまた後でより詳しく説明する。ただし、それは物理的な光源22a及び受光素子32aに関することではなく、発射光線26の出発点としての実質的な発光点及び反射光線28の終点としての受光点に関するのみである(もっとも今の例では発光点及び受光点は発光器及び受光器と一致している)。
図1から離れて、1つの物理的な光源で複数の発光点を生成すること、又は複数の受光点を同じ物理的な受光部品に収めることも考えられる。
【0037】
発光器22と受光器32は、
図1に示した実施形態では共に回路基板34上に配置されている。この基板は回転軸18上にあり、駆動部16のシャフト36に結合されている。なお、これは単なる模範例と理解すべきであり、実際には任意の数及び配置の回路基板が考えられる。発光器22と受光器32が二軸型で隣接している光学的な基本構造も必須ではなく、単一光線式の光電センサ又はレーザスキャナに関係する公知のいかなる構造でも置き換え可能である。一例としてビームスプリッタを持つ又は持たない同軸配置が挙げられる。
【0038】
非接触式の給電及びデータインターフェイス38が可動式の走査ユニット12と静止した台座ユニット14とを接続している。台座ユニット14内には制御及び評価ユニット40があるが、少なくともその一部は走査ユニット12内の回路基板34上又は他の場所に収納されていてもよい。制御及び評価ユニット40は発光器22を制御し、受光器32の受光信号を受け取って更に評価する。また、同ユニットは駆動部16を制御し、レーザスキャナに関して公知である角度測定ユニット(図示せず)の信号を受け取る。角度測定ユニットは各時点における走査ユニット12の角度位置を特定する。
【0039】
前記評価のため、好ましくは、検知された物体までの距離が公知の光伝播時間法で測定される。これを角度測定ユニットから得られる角度位置に関する情報と合わせれば、走査平面内にある全ての対象点の2次元極座標が各走査周期の完了毎に角度と距離で利用可能となる。各時点の走査平面はその都度の反射光線28の識別情報と受光素子32aのいずれかにおける該光線の検出とを通じて同様に分かるから、結果として全体で3次元的な空間領域が走査される。
【0040】
これにより物体の位置又は輪郭が分かり、それをセンサインターフェイス42経由で出力することができる。センサインターフェイス42又は別の接続部(図示せず)は逆にパラメータ設定用インターフェイスとして機能する。また、センサ10は危険の発生源(例えば危険な機械)を監視するための安全技術に用いられる安全センサとして構成することもできる。その場合、機械の稼働中に操作者の進入を許してはならない防護区域が監視される。操作者の脚等の防護区域への許可なき侵入を認識すると、センサ10は機械の緊急停止を発動する。安全技術に用いられるセンサ10は特に高い信頼性で作動しなければならないため、例えば機械の安全に関する規格EN13849や非接触型防護装置(beruehrungslos wirkende Schutzeinrichtungen;BWS)に関する機器規格EN61496といった高い安全要求を満たさなければならない。その場合、防護区域への物体の侵入時に安全確保用の電源停止信号を出力するために、特にセンサインターフェイス42を安全な出力インターフェイス(Output Signal Switching Device;OSSD)として構成することができる。
【0041】
図示したセンサ10は回転式の測定ヘッド、即ち走査ユニット12を有するレーザスキャナである。なお、図示したように発光・受光モジュールだけが一緒に回転するのではなく、他にも類似のモジュールを回転軸18との関係で高さ又は角度をずらして設けることも考えられる。あるいは回転ミラー又は切り子面ミラーホイールを用いて周期的な偏向を行うことも考えられる。なお、複数の発射光線26の場合、該複数の発射光線26が監視領域20にどのように入射するかはその都度の回転位置に依存するということに注意が必要である。なぜなら、公知の幾何学的な考察から分かるようにそれらの光線の配置が回転ミラーにより回転するからである。更に別の実施形態では走査ユニット12が回転運動の代わりに又は追加的に該回転運動の軸に垂直な第2の軸を中心として上下に揺動することで、仰角方向にも走査運動を生じさせる。
【0042】
レーザスキャナとしての実施も模範例である。周期的な運動がない多重式センサも可能である。これは実質的に、静止した走査ユニット12とそれに対応する電子機器(但し台座ユニット14はない)のみから成り、特にフラッシュLiDARの変型となる。
【0043】
センサ10の回転中、各発射光線26によりそれぞれ1つの面が走査される。偏向角が0°の場合、つまり
図1にはない水平な発射光線によってのみ、監視領域20の平面が走査される。他の発射光線は、偏向角に応じて異なる鋭さで形成される円錐の側面を走査する。上方及び下方に異なる角度で偏向される複数の発射光線26の場合、全体的な走査構造は複数の砂時計を入れ子にしたようなものになる。本明細書ではこれらの円錐側面も単に走査平面と呼ぶことがある。
【0044】
本発明では発光光学系24及び/又は受光光学系30が画像フィールド角αの円環状の画像フィールドのために設計されている。その動機付けについて
図2(a)〜(c)に基づいて説明する。
【0045】
理想的な場合、光学系24、30は
図2(a)のようにイメージサークル44の内側に全ての画像フィールド位置46を鮮明に映し出すはずである。しかし、冒頭での議論によると、単式レンズではそれは非常に小さなイメージサークル44に対してしか達成されない。一方、それに適した対物レンズはコストがかかりすぎる上、他の光学的な制限を必然的に伴う。
【0046】
レーザスキャナにとって面的な結像は必ずしも必要ではない。なぜなら、光源22a及び受光素子32aを直線的に配置すればもう仰角方向に互いにずれた走査平面が生じるからである。それには
図2(b)のように画像フィールド位置46の直線的な配置の上で鮮明な像を結ぶような光学系があれば足りる。しかしそれも、より大きなイメージサークル44に対してはコストの高い対物レンズがなければ不可能である。
【0047】
一方、本実施形態では、
図2(c)に示したように、鮮明な結像はただ1つの画像フィールド角αに対してしか要求されない。同図では画像フィールド位置46の円環が画像フィールド角αに対応している。光学系の設計はこの固定された画像フィールド角αに向けられることが好ましいが、一定の周辺領域においてもなお結像が鮮明であることは排除されない。もっとも、円環から逸れた(特に、小さくなる側の)画像フィールド角については、それはもはや設計上の要求事項ではない。十分に鮮明な結像の一定の許容帯を持つ画像フィールド角αは、センサ10の光線26、28の間にできるだけ大きな間隔を得るため、
図2(c)ではできるだけ大きく、例えばα±15度とする。この円環状の画像フィールドへの限定により、既に単式レンズでもカバー角がある程度改善されて、例えば±8度に達することができる。後で
図4及び5に基づいて説明する本発明の光学系24、30の設計ではそれがもっと明らかに改善される。
【0048】
図3は円周48a〜b上の光源22a又は受光素子32aの好ましい配置を平面図で示している。好ましくは、図示したように光学系24、30の光学的な中心軸が円周48a〜bの中心を貫通するようにする。
図3は実施形態に応じて発光路及び/又は受光路に該当するため参照符号が二重に記入されている。
【0049】
円周48a〜b上の配置に基づいて、画像フィールド角αに対応する円環状の画像フィールドだけが実質的に光学系24、30により利用される。故にこの配置は、光学系24、30のうち最適化された領域がまさに利用されるため、特に有利である。αから外れた画像フィールド角に関する光学系24、30の結像誤差は実際には重要ではない。
【0050】
図1に関して光源22aと発光点22bとの違いについて既に簡単に述べた。発光点22bは発射光線26の起点である。これは同時に物理的な光源22aの場所でもよい。しかし、一方で光源22aには半導体部品として一定の(ここでは正方形の)底面があり、それは発光面そのものより大きい。その上、同じ1つの物理的な光源22aを用いて複数の発光点22bから発射光線を発生させることもあり得る。もちろん、発光点22bは厳密には数学的な意味での点ではなく有限の広がりを持つため、一部(特に中心)だけしか円周48a〜bの上には配置できない。発光点22bに関する以上の説明は受光点32bにも当てはまる。センサ10の光学的な特性にとって最終的には発光点22b又は受光点32bの配置が重要なのであって、発光器22、光源22a、受光器26又は受光素子32aの配置ではない。
【0051】
図1の実施形態では各発光点22bが専用の光源22aにより、また各受光点32bが専用の受光素子32aによりそれぞれ実現されている。これに代えて様々な方法で変形が可能である。例えば、同じ光源22aが光線分割素子等を通じて複数の又は全ての発光点22bから発射光線26を発生させることができる。光源22aを機械的に動かすことで、複数の又は全ての発光点22bから順番に発射光線26を生成することができる。光源22aの機械的な運動なしでも、MEMSミラー、光学フェイズドアレイ又は音響光学変調器等を用いて発射光線26に円周48a又はその一部を巡回させることができる。
【0052】
一方、複数の受光点32bも同様に別々の受光素子32aで実現してもよいし、受光素子32aを集積した多重配列の画素又は画素領域で実現してもよい。受光側でも円周48b又はその一部に沿って受光素子32aを機械的に動かしたり、可動のMEMSミラー等を用いて反射光線28を適宜偏向させたりすることが考えられる。別の実施形態では複数又は全ての受光点32bの受信光が共通の受光素子へ導かれる。それでも各々の反射光線28の同一性を確認できるようにするために、発射光線26を順次オンにしたり発射光線の多重パルス列を時間的に符号化したりすることによって多重化することが考えられる。
【0053】
図3は3個の発光点22b又は受光点32bが円周48a〜bに沿って均等に配分された例を示している。これ以外にも3、4、5、6、7、8、…16及びそれ以上の様々な個数が考えられ、その配置を不規則にすることも考えられる。
【0054】
図4は第1レンズ50と第2レンズ52を有する2レンズ式対物レンズの概略図である。両レンズ50、52は好ましくは集光レンズである。この対物レンズは発光光学系24及び/又は受光光学系32として用いることができる。先に
図2に関して説明したように、円環状の画像フィールドに対して最適化された単式レンズでは最大±8度の画像フィールド角が可能である。2レンズ式対物レンズではそれが大幅に改善され、±20度以上となる。
【0055】
図4には、光軸を挟んで互いに反対側にある、画像フィールド角αに対応した2本の模範的な光束54、56が描かれている。この画像フィールド角αとそれにより決まる円環状の画像フィールドに対して2レンズ式対物レンズが最適化されている。
【0056】
第1レンズ50は光束54、56の光線直径を所定の断面まで減少させるが、それは最大でまだ第1レンズ50への入射時の半分もある。そしてこの縮小された断面は第2レンズ52の半分だけに当たる。これにより第2レンズ52は所与の箇所では常に1つのフィールド点からの光でのみ照らされ、光軸を挟んでその反対側にあるフィールド点からの光では照らされない。
【0057】
図5は2レンズ式対物レンズのこの光学的な特性を第2レンズ52の平面図で再度示している。互いに反対側にあるフィールド点の光束54、56並びに54’、56’は交差せず、それぞれ光軸を挟んで反対側の第2レンズ52の半分には到達しない。横方向に隣接するフィールド点は多少重なっても構わない。第2レンズ52の中心は照らされない状態にある。
【0058】
この定性的に説明した特性は2レンズ式対物レンズのパラメータに基づいてより正確に説明することができる。求めるのは、1本の光束54、56の全ての光線が光軸に対して完全に一方の側でフィールド点まで到達するような、第1レンズ50の主面と第2レンズ52の第1の光学的な作用面との間の距離dである。
【0059】
dが可変である場合、第1レンズの中心を通る光束50、52の主光線は横方向のずれtanα*dを持ち、関係する周縁光線は更に追加の横方向のずれ(D1/2)/f1*dを持つ。ここでD1は用いられる直径、f1は第1レンズ50の焦点距離である。全体としてこの横方向のずれにより周縁光線が光軸を超えて外へ動くようにする必要がある。それには横方向のずれD1/2が必要である。従って、以下の不等式が満たされなければならない。
[(D1/2)/f1+tanα]*d≧D1/2
これは次のように変形できる。
d≧(D1*f1)/(D1+2*f1*tanα)
【0060】
ここで、dには少なくとも等式に近い数値を選ぶことが有利である。不等式において残余の差が大きければ大きいほど、第2レンズ52はむしろ像面のすぐ近くまで接近する。そこではレンズは有効な作用をほとんど発揮できない。
【0061】
2つのレンズ50、52は平凸型、凸平型、両凸型、及び、可能であれば凸凹型又は凹凸型として実装することができる。ただし最後の2つの場合もなお集光レンズである。古典的な屈折レンズ、フレネルレンズ若しくは回折型の光学系又はそれらの組み合わせが可能である。2つのレンズ50、52はこれらの一般的な成形特性及び作用原理において互いに違っていてもよいし、一致していてもよい。2つのレンズ50、52は異なる焦点距離f1、f2、異なる直径D1、D2及び異なる形状を有していてもよい。
【0062】
有利な実施形態では、先に示した不等式に基づいて2つのレンズ50、52の間の距離が選ばれるだけでなく、f2=d’という選択も行われる。ここでd’はレンズ50、52の主面間の距離である。これは第2レンズ52の中央の厚みに応じて前記距離dより若干大きくなる。
【0063】
この焦点距離f2では第2レンズ52の前側の焦点面が第1レンズ50の主面内に置かれる。その結果、主光線が対物レンズの像面内で光軸に平行に走る。つまり対物レンズが像側でテレセントリックになる。これにより、とりわけ発光光学系24としての利用に際して、光源22aを互いに平行に向けてもよくなり、傾斜させる必要がなくなる。焦点距離f2を距離d’に厳密に合わせなくても、f2≒d’とするだけでも利点はある。なぜなら、そうすればもう像側の主光線の角度が0度にはならないにせよ明らかに小さくなるからである。
【0064】
更に好ましくは、第2レンズ52の直径D2が、光束54、56の貫通に必要とされる程度の大きさしかないように選ばれる。このようにすれば2レンズ式対物レンズが3つのパラメータだけで完全に決まる。即ち、第1レンズの直径D1と焦点距離f1は自由に選択できる。第2レンズ52の距離dは前述の不等式から得られる。最後に焦点距離f2は距離d’に設定される。
【0065】
こうして分かったこれらの寸法から、それ自体公知である幾何光学(近軸光学)の公式を用いて対物レンズの全体の焦点距離fを算出することもできる。逆に2レンズ式対物レンズをその近軸的な基本寸法だけで確定することができる。即ち、対物レンズの焦点距離f、対物レンズの口径D=D1、円形の画像フィールドのフィールド角αである。
【0066】
別の好ましい実施形態では、非常に大きいがまだ実現可能な第1レンズのf値k1:=f1/D1=1を用いて前記関係を非常に分かりやすい方法で簡略化する。
d=f1/(1+2tanα)、例えばα=30度ならd≒0.5*f1
f2=d’≒d≒f1/(1+2tanα)
【0067】
こうして、この好ましい実施形態については、所望のフィールド角α毎及び所望の口径D=D1毎に、全ての焦点距離f1、f2と距離d又はd’が2レンズ式対物レンズの設計のために定まる。ここでも必要に応じて、組み合わされた2つのレンズの全体の焦点距離を計算するためのそれ自体公知である公式を用いてこれらの全ての値を対物レンズのfとDの所望の値から直接求めることもできる。
【0068】
最後にまた数値例を挙げる。
対物レンズの焦点距離 f=19mm
口径 D=20mm(レンズ1の直径)→k=D/f=1.05
第1レンズ F2-ガラス:f1=29.8mm、中央の厚み4mm、非球面の凸平型
第2レンズ F2-ガラス:f2=21.6mm、中央の厚み5mm、球面の凸平型
レンズ間の距離 d=14.8mm、第2レンズから像面までの距離:4.2mm
画像フィールド角 α=±15.4度
スポット径 20μm(=約1mrad)