特許第6880152号(P6880152)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6880152ウィンドレギュレータの車両への取付方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6880152
(24)【登録日】2021年5月7日
(45)【発行日】2021年6月2日
(54)【発明の名称】ウィンドレギュレータの車両への取付方法
(51)【国際特許分類】
   B60J 1/17 20060101AFI20210524BHJP
   B62D 65/06 20060101ALI20210524BHJP
   E05F 11/38 20060101ALI20210524BHJP
【FI】
   B60J1/17 B
   B62D65/06 B
   B62D65/06 A
   E05F11/38 G
【請求項の数】12
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2019-204949(P2019-204949)
(22)【出願日】2019年11月12日
(62)【分割の表示】特願2015-88402(P2015-88402)の分割
【原出願日】2015年4月23日
(65)【公開番号】特開2020-33012(P2020-33012A)
(43)【公開日】2020年3月5日
【審査請求日】2019年11月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】590001164
【氏名又は名称】シロキ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】特許業務法人 信栄特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】村松 厚志
(72)【発明者】
【氏名】山本 健次
【審査官】 浅野 麻木
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−004411(JP,A)
【文献】 特開平07−317432(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60J 1/17
B62D 65/06
E05F 11/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
窓ガラスを昇降させるウィンドレギュレータの車両への取付方法であって、
上下方向に延びるガイドレールと
窓ガラスが固定され、前記ガイドレールに沿って摺動可能なスライダと、
前記ガイドレールと前記スライダの摺動を円滑にするグリスと、を有し、
前記スライダは、前記グリスを前記ガイドレールの長手方向に塗布する塗布部を備えている、ウィンドレギュレータであって、
前記ガイドレールおよび前記スライダの少なくとも一方に前記グリスを付着させる第1工程と、
前記ガイドレールを前記車両へ取り付ける第2工程と、
前記ガイドレールを前記車両へ取り付けた後、前記スライダを作動させて前記塗布部により前記グリスを前記ガイドレールに広げる第3工程と、を有し、
前記第2工程の前では、前記ガイドレールの長手方向の一部のみ、および前記スライダの一部のみ、の少なくとも一方に前記グリスが付着されており、
前記第3工程の後では、前記ガイドレールのうち前記スライダが昇降することで前記塗布部が塗り広げることができる全域に前記グリスが広げられている、ウィンドレギュレータの取付方法。
【請求項2】
前記ガイドレールに前記グリスを付着させることを特徴とする、請求項1に記載のウィンドレギュレータの取付方法。
【請求項3】
前記ガイドレールの長手方向に直交する断面において前記ガイドレールは、
前記スライダに対向する主壁部と、
前記主壁部から屈曲して前記スライダに向かって延びる側壁部と、を備え、
前記スライダは、
前記主壁部に対向する本体部と、
前記側壁部が挿通されるガイド溝を形成するガイド部と、を備え、
前記塗布部は、前記スライダの上下動に伴って前記主壁部に付着された前記グリスを前記主壁部から前記側壁部に塗布することを特徴とする、請求項2に記載のウィンドレギュレータの取付方法。
【請求項4】
前記塗布部は少なくとも、前記主壁部と前記側壁部がなす内側の角部に付着された前記グリスを前記側壁部に塗布可能である、請求項3に記載のウィンドレギュレータの取付方法。
【請求項5】
前記塗布部は前記主壁部と隙間を介して対向する対向面を有し、
前記隙間は前記側壁部に向かって広がっている、請求項3または4に記載のウィンドレギュレータの取付方法。
【請求項6】
前記対向面のうち、前記側壁部から遠い側の端部が前記主壁部に弾性的に当接している、請求項5に記載のウィンドレギュレータの取付方法。
【請求項7】
前記塗布部は、前記ガイドレールの側壁部に当接可能で、前記ガイドレールへ接近する方向に弾性変形可能である、請求項2から6のいずれか一項に記載のウィンドレギュレータの取付方法。
【請求項8】
前記塗布部は、前記ガイドレールの前記側壁部と隙間を介して対向する部分を有し、
前記隙間は、前記側壁部が前記主壁部から起立する方向に向かって広がっている、請求項から6のいずれか一項に記載のウィンドレギュレータの取付方法。
【請求項9】
前記ガイドレールに凹部が設けられ、前記凹部に前記グリスが付着されている、請求項1から7のいずれか一項に記載のウィンドレギュレータの取付方法。
【請求項10】
前記第1工程では、前記ガイドレールの長手方向の一部のみに前記グリスを付着させる、請求項1に記載のウィンドレギュレータの取付方法。
【請求項11】
前記第1工程では、前記スライダの一部のみに前記グリスを付着させる、請求項1に記載のウィンドレギュレータの取付方法。
【請求項12】
前記第1工程では、前記ガイドレールの長手方向の一部のみ、および、前記スライダの一部のみ、に前記グリスを付着させる、請求項1に記載のウィンドレギュレータの取付方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウィンドレギュレータの車両への取付方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1などにより、車両に搭載されるウィンドレギュレータが知られている。ウィンドレギュレータは、上下方向に延びるガイドレールと、ガイドレールにガイドされて窓ガラスが固定されるスライダを備えている。スライダをガイドレールに沿って移動させることにより、窓ガラスが昇降される。
このようなウィンドレギュレータにおいて、ガイドレールとスライダの摺動面にはグリスが塗布されている。これにより、スライダがガイドレールに対して円滑に動作できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013−217027号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、このようなウィンドレギュレータは、出荷時にグリスがガイドレールの摺動面の全体に亘って塗布されている。このため、持ち運ぶ際に作業者の手に付着してしまったり、複数のウィンドレギュレータを積み重ねる際にグリスが他のウィンドレギュレータに付着してしまったりし、取扱い性に改善の余地があった。
そこで本発明は、出荷時の取り扱いが容易でかつスライダがガイドレールに対して円滑に動作できるウィンドレギュレータの車両への取付方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係るウィンドレギュレータの車両への取付方法は、
窓ガラスを昇降させるウィンドレギュレータの車両への取付方法であって、
上下方向に延びるガイドレールと
窓ガラスが固定され、前記ガイドレールに沿って摺動可能なスライダと、
前記ガイドレールと前記スライダの摺動を円滑にするグリスと、を有し、
前記スライダは、前記グリスを前記ガイドレールの長手方向に塗布する塗布部を備えているウィンドレギュレータであって、
前記ガイドレールおよび前記スライダの少なくとも一方に前記グリスを付着させる工程と、
前記ガイドレールを前記車両へ取り付ける工程と、
前記ガイドレールを前記車両へ取り付けた後、前記スライダを作動させて前記塗布部により前記グリスを前記ガイドレールに広げる工程と、を有する。
【0006】
上記のウィンドレギュレータの車両への取付方法によれば、ウィンドレギュレータの出荷前にグリスをガイドレールの長手方向の全面に塗布する必要がなくなる。そのため、ウィンドレギュレータの持ち運び時に作業者にグリスが付着しにくく、また、積み重ねても他のウィンドレギュレータにグリスが付着しにくい。また、ウィンドレギュレータの使用時には、事前にスライダを動作させることにより塗布部がグリスをガイドレールの長手方向に亘って塗布するので、スライダがガイドレールに対して円滑に動作できる。
【0007】
上記のウィンドレギュレータの車両への取付方法において、
前記ガイドレールに前記グリスを付着させてもよい。
上記のウィンドレギュレータの車両への取付方法によれば、ガイドレールの表面には外部からアクセスしやすいため、グリスを付着させやすく、作業性がよい。
【0008】
上記のウィンドレギュレータの車両への取付方法において、
前記ガイドレールの長手方向に直交する断面において前記ガイドレールは、
前記スライダに対向する主壁部と、
前記主壁部から屈曲して前記スライダに向かって延びる側壁部と、を備え、
前記スライダは、
前記主壁部に対向する本体部と、
前記側壁部が挿通されるガイド溝を形成するガイド部と、を備え、
前記塗布部は、前記スライダの上下動に伴って前記主壁部に付着された前記グリスを前記主壁部から前記側壁部に塗布してもよい。
【0009】
上記のウィンドレギュレータの車両への取付方法によれば、スライダがガイドレールに沿って上下動する際には、ガイドレールの側壁部がスライダのガイド部と摺接する。このときに、塗布部が側壁部にグリスを塗布するため、スライダを円滑に動作させることができる。
【0010】
上記のウィンドレギュレータの車両への取付方法において、
前記塗布部は少なくとも、前記主壁部と前記側壁部がなす内側の角部に付着された前記グリスを前記側壁部に塗布可能であってもよい。
上記のウィンドレギュレータの車両への取付方法によれば、角部を使って、決まった位置にグリスを付着させやすい。またグリスが広がり過ぎてしまっても、グリスが外部に露出しにくい。
【0011】
上記のウィンドレギュレータの車両への取付方法において、
前記塗付部は前記主壁部と隙間を介して対向する対向面を有し、
前記隙間は前記側壁部に向かって広がっていてもよい。
上記構成のウィンドレギュレータの車両への取付方法によれば、第二塗付部でグリスを広げる際に、主壁部に付着されたグリスを効率よく側壁部に送ることができる。
【0012】
上記のウィンドレギュレータの車両への取付方法において、
前記対向面のうち、前記側壁部から遠い側の端部が前記主壁部に弾性的に当接していてもよい。
上記のウィンドレギュレータの車両への取付方法によれば、第二塗付部でグリスを広げる際に、主壁部に付着されたグリスが側壁部と反対側に漏れることを防止できる。
【0013】
上記のウィンドレギュレータの車両への取付方法において、
前記塗布部は、前記ガイドレールの側壁部に当接可能で、前記ガイドレールへ接近する方向に弾性変形可能であってもよい。
上記のウィンドレギュレータの車両への取付方法によれば、塗布部が弾性変形することにより、適度な厚みでグリスをガイドレールに塗布できる。
【0014】
上記のウィンドレギュレータの車両への取付方法において、
前記塗布部は、前記ガイドレールの前記側壁部と隙間を介して対向する部分を有し、
前記隙間は、前記側壁部が前記主壁部から起立する方向に向かって広がっていてもよい。
上記のウィンドレギュレータの車両への取付方法によれば、塗布部によって、主壁部に付着されたグリスを側壁部の縁まで十分に広げることができる。
【0015】
上記のウィンドレギュレータの車両への取付方法において、
前記ガイドレールに凹部が設けられ、前記凹部に前記グリスが付着されていてもよい。
上記のウィンドレギュレータの車両への取付方法によれば、十分な量のグリスをガイドレールに付着させることができる。
【発明の効果】
【0016】
上記本発明によれば、出荷時の取り扱いが容易でかつスライダがガイドレールに対して円滑に動作できるウィンドレギュレータの車両への取付方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施形態に係る方法により車両に取り付けられるウィンドレギュレータの斜視図である。
図2図1におけるII矢視図である。
図3図2におけるIII−III線断面図である。
図4図2におけるIV−IV線断面図である。
図5図4におけるV−V線断面図である。
図6】本発明の変形例に係る図3と同様の図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施形態に係る方法により車両へ取り付けられるウィンドレギュレータ1を、図面を参照して詳細に説明する。図1は、ウィンドレギュレータ1の正面図である。ウィンドレギュレータ1は、車両に搭載され、窓ガラスを昇降させる装置である。図2は、図1のII矢視図である。以降では、特に断りがない限り、出荷直後で車両に取り付けられる前のウィンドレギュレータ1を説明する。
【0019】
図1および図2に示すように、ウィンドレギュレータ1は、ガイドレール10と、スライダ20と、車両に取り付けられるモータ5(駆動部の一例)を備えている。
ガイドレール10は、上下方向に延びる長尺部材である。ガイドレール10は、車両に搭載された状態で、車両の前後方向における中央部分が車両の幅方向の内側に突出した形状を有している(図2参照)。ガイドレール10の上部に上プーリ6が設けられている。ガイドレール10の下部に下プーリ7が設けられている。ガイドレール10には、取付ブラケット4が設けられている。取付ブラケット4を介して、ガイドレール10は車体に取り付けられる。
【0020】
スライダ20は、ガイドレール10に移動可能に取り付けられている。スライダ20は、窓ガラスを支持可能とされている。スライダ20は、ガイドレール10にガイドされ、ガイドレール10に沿って摺動可能とされている。
【0021】
スライダ20は、上ワイヤ8および下ワイヤ9を介してモータ5に接続されている。上ワイヤ8の一端がスライダ20に取り付けられ、他端がモータ5に取り付けられている。上ワイヤ8は、上プーリ6に架け渡されている。下ワイヤ9の一端がスライダ20に取り付けられ、他端がモータ5に取り付けられている。下ワイヤ9は下プーリ7に架け渡されている。
【0022】
上述のように構成されたウィンドレギュレータ1は車両に取り付けられると、以下のようにして動作する。モータ5を駆動させて上ワイヤ8に張力を与えると、スライダ20がガイドレール10に沿って上方に移動し、窓ガラスが上昇する。モータ5を駆動させて下ワイヤ9に張力を与えると、スライダ20がガイドレール10に沿って下方に移動し、窓ガラスが下降する。
【0023】
図2に示すように、スライダ20は、ガイドレール10にガイドされる上ガイド部22および下ガイド部23を備えている。本実施形態において、上ガイド部22および、上ガイド部22より下方に設けられた下ガイド部23がガイドレール10の長手方向に沿って二か所に設けられている。以降の説明において、下ガイド部23と上ガイド部22を特に区別なく呼ぶ場合には、単にガイド部と呼ぶ。
【0024】
図3は、図2におけるIII−III線断面図である。図3は、ガイドレール10と、スライダ20の下ガイド部23の断面を示している。図3に示すように、本断面において、ガイドレール10は、スライダ20に対向する主壁部11と、主壁部11から屈曲してスライダ20に向かって延びる側壁部12と、を備えている。主壁部11は、内外方向について、スライダ20と対向している。車両の前後方向における中央に位置する主壁部11が、側壁部12よりも車両の幅方向の内側に突出している。
【0025】
スライダ20は、このガイドレール10の水平断面に対応する断面形状を有している。図3に示す断面において、スライダ20は、主壁部11に対向する本体部21と、下ガイド部23とを備えている。下ガイド部23は、本体部21からガイドレール10に向かって突出し、側壁部12が挿通されるガイド溝24を形成している。
【0026】
図3に示す断面において、側壁部12はL字状に形成されている。側壁部12は、第一部分13と、第二部分14とを有している。第一部分13は、主壁部11の後端から車両の幅方向外側に屈曲して延びた部位である。第二部分14は、第一部分13の先端から車両の前後方向における後方に向けて屈曲した部位である。第二部分14は、主壁部11と略平行に延びている。第一部分13は、主壁部11と第二部分14とを接続している。
【0027】
図3に示すように、ガイドレール10には、ガイドレール10とスライダ20の摺動を円滑にするグリスGが付着されている。本実施形態において、グリスGはガイドレール10の主壁部11に付着されている。より詳細には、グリスGは、主壁部11のうち、主壁部11と側壁部12がなす内側の角部に付着されている。さらに詳細には、グリスGは、主壁部11と側壁部12の第一部分13とのなす内側の角部に付着されている。また、グリスGは、側壁部12の第一部分13と第二部分14のなす内側の角部にも付着されている。
【0028】
スライダ20は、グリスGを、ガイドレール10の長手方向に沿って、スライダ20とガイドレール10の互いの摺動面に広げるように塗布できる塗布部を備えている。図3に示した第一塗布部30は、該断面におけるスライダ20の下ガイド部23の先端に設けられている。第一塗布部30は、側壁部12の第一部分13と第二部分14のなす内側の角部に向かって延びている。
【0029】
第一塗布部30の先端部は、側壁部12の第一部分13との間の隙間が車両の内方に向かって広がる形状とされている。また、第一塗布部30の先端部は、側壁部12の第二部分14との間の隙間が車両の後方に向かって広がる形状とされている。また、第一塗布部30の先端部は、ガイドレール10の側壁部12の第一部分13と第二部分14のなす内側の角部に付着されたグリスGに接触している。
【0030】
スライダ20がガイドレール10に対して動かすと、第一塗布部30は、第一部分13と第二部分14のなす内側の角部に付着されたグリスGを、第一部分13および第二部分14に広げることができる。
なお、この第一塗布部30は、スライダ20がガイドレール10の内外方向にばたつくことを抑制する機能も担っている。
【0031】
図4は、図2におけるIV−IV線断面図である。図4は、ガイドレール10と、スライダ20の上ガイド部22の断面を示している。
図4に示すように、上ガイド部22は、ガイドレール10の側壁部12を収容するガイド溝24を形成している。上ガイド部22は、ガイドレール10よりも車両の前後方向の後方に位置する内壁面25から突出する第二塗布部40を備えている。この第二塗布部40は、内壁面25から車両の前後方向の前方に向かって突き出す基部41と、基部41の先端から車両の幅方向の内側に向かって屈曲した先端部42とを備えている。第二塗布部40の先端部42の主壁部11に向かい合う面のうち、側壁部12から遠い側の端部がガイドレール10の主壁部11と弾性的に当接している。
【0032】
図4に示すように、この第二塗布部40は、ガイドレール10の側壁部12の第一部分13と隙間A1、A2,A3を介して対向している。
主壁部11と先端部42の主壁部11に向かい合う面との間に形成された隙間A1は、先端部42と主壁部11との接触点から側壁部12に向かって広がっている。第二塗布部40の主壁部11に対向する表面は、主壁部11に対して、車両の後方に向かって主壁部11から離間するように傾斜されている。
【0033】
側壁部12の第一部分13と先端部42の側壁部12と向かい合う面との間に形成された隙間A2は、主壁部11から第二部分14に向かって広がっている。この隙間A2は、側壁部12が主壁部11から側壁部12が起立する方向に向かって広がっている。第二塗布部40の第一部分13に対向する表面15は、側壁部12の第一部分13に対して、車幅方向の外側に向かって第一部分13から離間するように傾斜されている。
【0034】
側壁部12の第二部分14と基部41の第二部分に向かい合う面との間に形成された隙間A3は、車幅方向の外側に向かって広がっている。第二塗布部40の第二部分14に対向する表面は、側壁部12の第二部分14に対して、車両の後方に向かって第二部分14から離間するように傾斜されている。
【0035】
ガイドレール10に対してスライダ20を動かすと、まず、第二塗布部40の先端部42の主壁部11に向かい合う面が、ガイドレール10の主壁部11に付着されたグリスGを側壁部12に向かって広げる。さらに、第二塗布部40の先端部42の第一部分13に向かい合う面が、グリスGを側壁部12の第一部分13上で車両の外方向に向かって広げる。さらに、第二塗布部40の基部41が、グリスGを第二部分14で車両の後方に向かって広げる。このようにして、ガイドレール10に対してスライダ20を動かすと、第二塗布部40は主壁部11に付着されたグリスGを側壁部12に広げることができる。
【0036】
このように、隙間A1は側壁部13に向かって広がっているため、第二塗付部40でグリスGを広げる際に、主壁部11に付着されたグリスGを効率よく側壁部13に送ることができる。また、ガイドレール10の主壁部11の表面は外部からアクセスしやすいため、グリスGを付着させやすく、作業性がよい。
【0037】
また、第二塗布部40の先端部42の主壁部11に向かい合う面のうち、側壁部13から遠い側の端部が主壁部11に弾性的に当接している。このため、第二塗付部40でグリスGを広げる際に、主壁部11に付着されたグリスGが側壁部12と反対側に漏れることを防止できる。
【0038】
図5は、図4におけるV−V線断面図である。図5に示すように、第二塗布部40は、ガイドレール10の長手方向に対しても傾斜している。第二塗布部40の第一部分13に対向する表面15は、側壁部12の第一部分13に対して、車両の下方に向かってガイドレール10との距離が離間するように傾斜されている。
このように、第二塗布部40の側壁部12に対向する表面は、ガイドレール10の側壁部12に対して、車両の幅方向および上下方向について傾斜している。
【0039】
(車両への取付方法)
次に、上述のように構成されるウィンドレギュレータ1の車両への取付方法を説明する。
まず、ウィンドレギュレータ1を組み立てる。例えば、ガイドレール10にスライダ20を取り付け、それぞれ上下のプーリ6,7に架け渡しながらスライダ20へ上下のワイヤ8,9を取り付ける。さらに上下のワイヤ8,9をモータ5に取り付ける。
次に、ガイドレール10の主壁部11にグリスGを付着させる。図3図4で示した箇所にグリスGを付着させる。例えば、グリスGをガイドレール10の長手方向に沿った一部分に付着させる。この工程にて、ウィンドレギュレータ1は完成し、製品として出荷される。このガイドレール10の主壁部11の表面は外部に露出されているので、グリスGを付着させやすい。
次に、車両の組み立て者は、主壁部11にグリスGが付着されたガイドレール10を車両に取り付ける。この後、スライダ20を作動させて第一塗布部30および第二塗布部40によりガイドレール10に付着されたグリスGをガイドレール10に広げる。これにより、ガイドレール10の長手方向の一部に付着されたグリスGが、長手方向の略全域に亘って広げられる。
【0040】
(効果)
このように、本実施形態に係るウィンドレギュレータ1の車両への取付方法によれば、ウィンドレギュレータ1の出荷前には、図3図4に示すように、ガイドレール10とスライダ20の摺動面の一部にのみグリスGが付着されている。つまり、ウィンドレギュレータ1の出荷前にグリスGをガイドレール10の長手方向の広範囲に塗布する必要がない。そのため、ウィンドレギュレータ1の持ち運び時に作業者にグリスGが付着しにくい。また、複数のウィンドレギュレータ1を積み重ねる際に、他のウィンドレギュレータ1にグリスGが付着しにくい。
また、ウィンドレギュレータ1の使用時には、事前にスライダ20を動作させることにより塗布部がグリスGをガイドレール10の長手方向に亘って塗布するので、スライダ20がガイドレール10に対して円滑に動作できる。
【0041】
また、スライダ20がガイドレール10に沿って移動する際には、ガイドレール10の主壁部11がスライダ20に摺接する場合よりも、ガイドレール10の側壁部12がスライダ20に摺接する場合の方が多い。本実施形態においては、グリスGが主壁部11に付着されており、第二塗布部40がこのグリスGを側壁部12に塗布可能に設けられている。このため、スライダ20をガイドレール10に対して円滑に動作させることができる。
【0042】
本実施形態に係るウィンドレギュレータ1の車両への取付方法において、第二塗布部40は、主壁部11と側壁部12がなす内側の角部に付着されたグリスGを側壁部12に塗布可能である。このため、グリスGを付着させる工程において、決まった位置にグリスGを付着させやすく、作業が容易になる。また、グリスGが広がりすぎた場合でも、該角部はスライダ20とガイドレール10の隙間の奥に位置しているため、グリスGが外部に露出しにくい。このため、作業者にグリスGがさらに付着しにくい。
【0043】
本実施形態に係るウィンドレギュレータ1において、第一塗布部30は、ガイドレール10の側壁部12に当接可能であり、ガイドレール10へ接近する方向に弾性変形可能である。塗布部によりグリスGを広げる工程において、第一塗布部30が弾性変形することにより、グリスGを適度な厚みでガイドレール10に塗布できる。
【0044】
本実施形態に係るウィンドレギュレータ1において、第二塗布部40はガイドレール10と隙間Aを介して対向しており、該隙間Aは側壁部12が主壁部11から起立する方向に向かって広がっている。つまり、第二塗布部40の側壁部12に対向する表面は、ガイドレール10の側壁部12に対して、車両の幅方向および上下方向について傾斜されている。これにより、第二塗布部40が主壁部11に付着されたグリスGを側壁部12に効率的に広げることができる。
【0045】
(変形例)
なお、グリスGを付着させる部位は特に限定されない。図6は、本発明の変形例に係るウィンドレギュレータのスライダ20とガイドレール10Aの断面図である。図6は、ガイドレール10Aの長手方向に直交する断面を示している。図6に示すように、ガイドレール10Aに凹部16を設け、この凹部16にグリスGを付着させてもよい。凹部を使って十分な量のグリスGをガイドレール10Aに付着させることができる。なお、この凹部16は、ガイドレール10の長手方向に沿って延びる溝として形成してもよいし、長手方向に沿って間欠的に設けてもよい。
【符号の説明】
【0046】
1 ウィンドレギュレータ
4 取付ブラケット
5 モータ
6 上プーリ
7 下プーリ
8 上ワイヤ
9 下ワイヤ
10 ガイドレール
11 主壁部
12 側壁部
13 第一部分
14 第二部分
20 スライダ
21 本体部
22 上ガイド部
23 下ガイド部
24 ガイド溝
25 内壁面
30 第一塗布部
40 第二塗布部
41 基部
42 先端部
G グリス
図1
図2
図3
図4
図5
図6