特許第6880156号(P6880156)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6880156
(24)【登録日】2021年5月7日
(45)【発行日】2021年6月2日
(54)【発明の名称】体積膨張装置
(51)【国際特許分類】
   F01K 25/10 20060101AFI20210524BHJP
   F01D 15/10 20060101ALI20210524BHJP
   F01K 27/00 20060101ALI20210524BHJP
【FI】
   F01K25/10 K
   F01D15/10 Z
   F01K27/00 Z
【請求項の数】6
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2019-213276(P2019-213276)
(22)【出願日】2019年11月26日
(65)【公開番号】特開2021-32241(P2021-32241A)
(43)【公開日】2021年3月1日
【審査請求日】2019年11月26日
(31)【優先権主張番号】2019/5564
(32)【優先日】2019年8月29日
(33)【優先権主張国】BE
(73)【特許権者】
【識別番号】593074329
【氏名又は名称】アトラス コプコ エアーパワー,ナームローゼ フェンノートシャップ
【氏名又は名称原語表記】ATLAS COPCO AIRPOWER,naamloze vennootschap
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100095898
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100196221
【弁理士】
【氏名又は名称】上潟口 雅裕
(72)【発明者】
【氏名】ペーター ハイアマン
【審査官】 所村 陽一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−231866(JP,A)
【文献】 特表2006−506570(JP,A)
【文献】 実開昭54−148734(JP,U)
【文献】 特開2008−202474(JP,A)
【文献】 特開2014−190285(JP,A)
【文献】 特開2009−221961(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01K 23/00−27/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスを膨張させるための体積膨張装置であって、
膨張することになるガス用の入口(3)及び膨張ガス用の出口(4)を有する少なくとも1つの膨張要素(2)と、
前記少なくとも1つの膨張要素(2)によって駆動されて、電気エネルギーを生成する発電機(5)と、
前記ガスを加熱するための凝縮器(9)及び圧縮器(10)を有するヒートポンプ(7)と、
を備え、
前記ヒートポンプ(7)の圧縮器(10)は、前記発電機(5)を用いて電気的に駆動され、前記凝縮器(9)は、2つの副凝縮器を備え、1つの副凝縮器は前記少なくとも1つの膨張要素(2)から上流側に、1つの副凝縮器は前記少なくとも1つの膨張要素(2)から下流側に配置され、もしくは、各々が凝縮器(9)を有する2つのヒートポンプ(7)が設けられ、1つの凝縮器は前記少なくとも1つの膨張要素(2)から上流側に、1つの凝縮器は前記少なくとも1つの膨張要素(2)から下流側に配置されることを特徴とする体積膨張装置。
【請求項2】
前記発電機(5)は、トランスミッション(6)によって前記少なくとも1つの膨張要素(2)に結合される、請求項1に記載の体積膨張装置。
【請求項3】
前記ヒートポンプ(7)の前記凝縮器(9)は、前記少なくとも1つの膨張要素(2)の入口(3)から上流側に配置される、請求項1又は2に記載の体積膨張装置。
【請求項4】
前記ヒートポンプ(7)の前記凝縮器(9)は、前記少なくとも1つの膨張要素(2)の出口()から下流側に配置される、請求項1又は2に記載の体積膨張装置。
【請求項5】
直列及び/又は並列に配置された複数の膨張要素(2)が存在する、請求項1からのいずれか一項に記載の体積膨張装置。
【請求項6】
前記体積膨張装置(1)は、前記ガスを加熱する1又は複数の熱交換器(12)をさらに備え、前記熱交換器(12)は、前記ヒートポンプ(7)の前記凝縮器(9)から上流側及び/又は下流側に配置される、請求項1からのいずれか一項に記載の体積膨張装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスを膨張させるための体積膨張装置に関する。
【0002】
詳細には、本発明は、例えば天然ガスなどのガスを膨張させることを対象とし、ガスは膨張時のガスの温度低下を補うために加熱される。
【背景技術】
【0003】
ガスの温度が大幅に低下するとガスは膨張後に低温になり過ぎるので、膨張装置の下流側で問題が生じる。
【0004】
天然ガスの一部を燃やす例えばボイラなどの装置がすでに知られており、それによって、燃焼ガスの発生熱が、膨張後の天然ガスを加熱するために使用されることになる。
【0005】
もしくは、ガス機関が天然ガスの一部を燃やし、結果的に例えば機械的負荷を駆動することになる装置も知られており、これにより、発生(余剰)熱が膨張後の天然ガスを加熱するために使用されることになる。
【0006】
上記の2つの事例において、膨張後の天然ガスの加熱は、例えば熱交換器によって直接行なうことができるが、中間回路の使用は排除しない。
【0007】
また、膨張装置も知られており、ガスはこの温度低下を補うためにヒートポンプを利用して加熱される。
【0008】
ヒートポンプの圧縮器を駆動するためにモータを使用することができる。
【0009】
この問題点は、燃焼機関の場合、燃料が必要であり、CO2が発生することになる。
【0010】
また、ヒートポンプを駆動するために圧縮器と膨張要素との間で機械的結合をもたらすことも可能である。ここでは圧縮器の軸が膨張要素に連結しているので付加的なエネルギー源又は燃料は不要であるが、ヒートポンプから出る軸が存在するので、他の技術的課題があることになる。ヒートポンプは閉じたユニットなので、このような軸はシールする必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、付加的なエネルギー又は燃料を必要としない体積膨張装置を設けることで、上記の及び他の問題点のうちの少なくとも1つに対する解決策を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の対象はガスを膨張させるための体積膨張装置であり、
膨張することになるガス用の入口及び膨張ガス用の出口を有する少なくとも1つの膨張要素と、
膨張要素によって駆動されて、電気エネルギーを生成する発電機と、
ガスを加熱するための凝縮器及び圧縮器を有するヒートポンプと、
を備え、
ヒートポンプの圧縮器は、発電機を用いて電気的に駆動されることを特徴とする。
【0013】
これは、ヒートポンプのための追加のエネルギー源又は燃料を必要としないという利点をもたらす。
【0014】
これは、環境に優しいだけでなく、使用できる膨張装置との強固な一体化をもたらすことができる。
【0015】
圧縮器の軸が膨張要素に連結されるので追加のエネルギー源又は燃料が不要である、圧縮器の膨張要素との機械的結合と比べて、本発明は、シールを必要とするヒートポンプから出る軸を必要としないという付加的な利点を有する。
【0016】
さらに、ヒートポンプの圧縮器の発電機との電気的接続により、ヒートポンプの圧縮器と膨張要素との間の軸との機械的結合に比べて大きな設計的自由度がもたらされる。
【0017】
本発明の実際的な実施に関して、ガスが加熱されるヒートポンプの凝縮器は、膨張要素の入口から上流側(膨張することになるガスが膨張する前に予熱される)、及び膨張要素の出口から下流側(膨張ガスが加熱される)の両方に配置することができる。
【0018】
別の実施形態は、2部品又は2段凝縮器に関し、凝縮器は2つの副凝縮器又は凝縮器部分を備え、凝縮器部分は、膨張機から上流側及び下流側に配置される。明白に、2つの別個の凝縮器を備えることもできる。
【0019】
膨張の前後でガスを加熱することで、ヒートポンプは、ガスの温度を高温に上昇させる必要がなく、これはより好都合でありよりエネルギー効率が良い。
【0020】
本発明の特徴を上手く示すことを目的として、非限定的に添付図面を参照して本発明による体積膨張機のいくつかの好ましい実施形態を例示的に以下に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明による体積膨張装置を示す概略図である。
図2】本発明による体積膨張装置の他の実施形態を示す。
図3】本発明による体積膨張装置の他の代替的な実施形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1に概略的に示される体積膨張装置1は、膨張要素2を備える。
【0023】
この膨張要素2は、例えばスクリュー式膨張要素2又は歯付き膨張機とすることができる。
【0024】
図1には唯一の膨張要素2が示されているが、複数の膨張要素2を直列/並列に配置することもできる。
【0025】
直列に配置された膨張要素2は、別のステップ又は「段」でガスを膨張させることができる。
【0026】
膨張要素2は、膨張することになるガス用の入口3及び膨張ガス用の出口4を備えることができる。
【0027】
また、体積膨張装置1は、膨張要素2で駆動することができる発電機5を備える。
【0028】
発電機5は、電気エネルギーを生成することができる。
【0029】
発電機5は、トルク伝達トランスミッション6によって膨張要素2に結合される。
【0030】
本発明では必須ではないが、トランスミッション6は、例えばギヤボックスとすることができる。ベルト式トランスミッション、たわみ継手、直結も可能である。
【0031】
また、膨張装置1は、ヒートポンプ7を備える。
【0032】
図示のように、ヒートポンプ7は、例えば周囲空気などの熱源から熱を抽出する蒸発器8、ガスに熱を放出することができる凝縮器9、ヒートポンプ7を循環する冷媒を圧縮する圧縮器10、及び凝縮冷媒を膨張させるスロットルバルブ11を備える。
【0033】
この場合、上記蒸発器8は、周囲空気から熱を抽出できる空冷式熱交換器である。
【0034】
図1に示すように、凝縮器9は、膨張要素2の入口3の上流側に配置される。
【0035】
本発明によれば、ヒートポンプ7の圧縮器10は、発電機5によって電気的に駆動される。このことは、発電機5から生成される電気エネルギーの一部がヒートポンプ7の圧縮器10を駆動するのに使用されることを意味する。
【0036】
この場合、圧縮器10は、結果的に、実際の圧縮器要素及び駆動装置、例えば電気モータを備える圧縮器装置と考えることができる。換言すると、図1に概略的に示される圧縮器10と発電機5との間の結合手段は、発電機5と上記電気モータとの間の結合部と考えることができる。
【0037】
体積膨張装置1の動作は非常に単純で以下の通りである。
【0038】
膨張することになるガスが最初にヒートポンプ7の凝縮器9を通過する。
【0039】
ヒートポンプ7、詳細にはヒートポンプ7の圧縮器10が、発電機5によって、より詳細には発電機5によって生成された電気エネルギーによって駆動される。
【0040】
凝縮器9を通過する間に、膨張することになるガスが加熱される。
【0041】
次に、膨張することになるガスが入口3を通って膨張要素2の中に入る。
【0042】
膨張要素2によって膨張されたガスが温度低下を経験する。
【0043】
膨張プロセスの間に、膨張要素2が発電機5を駆動するので、発電機によって電気エネルギーが生成される。
【0044】
ガスが出口4を通って膨張要素2から出ると、ガスは続いて膨張装置1から出る。
【0045】
膨張要素2の入口3から上流側に凝縮器9を配置することで、膨張ガス塊につき最も多くの電力が生成される。換言すると、ガスを膨張前に加熱することで膨張ガス塊につきより多くのエネルギーを回収することができる。
【0046】
図2は、図1の変形例を示し、この場合、ヒートポンプ7の凝縮器9は、膨張要素2の出口4から下流側に配置される。また、膨張装置1は、ガスを加熱するための熱交換器12を備え、熱交換器12は、ヒートポンプ7の凝縮器9から上流側であるが、膨張要素2の出口4から下流側に組み込まれる。
【0047】
熱交換器12は、この場合、追加の消費電力なしに付加的な冷却を利用できるという利点を有し、付加的な冷却は、冷凍製品用の冷蔵倉庫のために、サーバを備えるデータセンタを冷却するために、又はビルの空気調節のために適用できる。
【0048】
その他の点に関して、膨張装置1及びその動作は図1と同じである。
【0049】
上記の熱交換器12を使用すると、ガスは予熱することができ、これによりヒートポンプ7は、ガスをさらに加熱することができる。
【0050】
図2の実施例では発電機によって生成される電力はより少ないが、熱交換器によって生成される冷気は、上手く使うことができるので、さもなければ冷気を生成するために又は冷却するために必要な電力を節約することができる。さらに、ガスがすでに部分的に加熱されているので、ヒートポンプ7に必要な電力はより少ない。
【0051】
冷気又は冷却に対する需要が高い場合、これは膨張ガス塊につき生成されより多くの正味電力につながる場合さえある。
【0052】
図3は、図1のさらに他の変形例を示し、この場合、2つのヒートポンプ7が設けられており、各ヒートポンプ7のうちの一方の凝縮器9が膨張要素2の入口3から上流側に配置され、各ヒートポンプ7のうちの他方の凝縮器9が膨張要素2の出口4から下流側に配置される。
【0053】
膨張の前及び後でガスを加熱することで、各ヒートポンプ7は、ガスの温度を高温に上昇させる必要がなく、このことはより好都合でありよりエネルギー効率が良いであろう。
【0054】
本発明は、実施例として説明されて各図面に示された実施形態に限定されるものではなく、本発明の体積膨張機は、様々な形態及び寸法で実現できる。
【符号の説明】
【0055】
1 膨張装置
2 膨張要素
3 入口
4 出口
5 発電機
6 トランスミッション
7 ヒートポンプ
8 蒸発器
9 凝縮器
10 圧縮器
11 スロットルバルブ
図1
図2
図3