特許第6880216号(P6880216)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6880216
(24)【登録日】2021年5月7日
(45)【発行日】2021年6月2日
(54)【発明の名称】自動車両
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/00 20060101AFI20210524BHJP
   G02B 5/10 20060101ALI20210524BHJP
   G02B 26/10 20060101ALI20210524BHJP
   G02B 5/08 20060101ALN20210524BHJP
【FI】
   G02B5/00 Z
   G02B5/10 A
   G02B26/10 104
   !G02B5/08 Z
【請求項の数】11
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2019-546810(P2019-546810)
(86)(22)【出願日】2018年1月4日
(65)【公表番号】特表2020-509412(P2020-509412A)
(43)【公表日】2020年3月26日
(86)【国際出願番号】EP2018050181
(87)【国際公開番号】WO2018157979
(87)【国際公開日】20180907
【審査請求日】2019年9月18日
(31)【優先権主張番号】102017104104.4
(32)【優先日】2017年2月28日
(33)【優先権主張国】DE
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】508108903
【氏名又は名称】ヴァレオ・シャルター・ウント・ゼンゾーレン・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100164688
【弁理士】
【氏名又は名称】金川 良樹
(72)【発明者】
【氏名】ホウ−ホアイ−ドゥック、グエン
(72)【発明者】
【氏名】ペーター、ホルバート
【審査官】 吉川 陽吾
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−287695(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2003/0227660(US,A1)
【文献】 特開2004−341048(JP,A)
【文献】 特開2003−131163(JP,A)
【文献】 特開2010−117494(JP,A)
【文献】 特開2000−149154(JP,A)
【文献】 特開2004−125636(JP,A)
【文献】 特開2012−063230(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/117542(WO,A1)
【文献】 特開2006−100772(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0186552(US,A1)
【文献】 特開2009−014698(JP,A)
【文献】 特開2016−080899(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学素子を備える発光ユニット(8)を有する光学式検出装置(3)を有する自動車両(1)であって、
前記光学素子(13)は、
‐反射性の第1自由曲面(F1)を有する第1側面(13a)と、
‐前記第1側面(13a)に対向する第2側面(13b)であって、屈折性の第2自由曲面(F2)を有する第2側面(13b)と、
を備え、
前記光学素子(13)は、
‐前記光学素子(13)において前記第2側面(13b)に入射したビーム束(10)の少なくとも大部分を、前記第2自由曲面(F2)を透過させて前記第1自由曲面(F1)に至らせるように、
‐前記第2自由曲面(F2)を透過して前記第1自由曲面(F1)に至った前記ビーム束(10)を、前記第1自由曲面(F1)で反射させるように、且つ
‐前記第1自由曲面(F1)から反射した前記ビーム束(10)を、前記第2自由曲面(F2)を介して出射させるように、
設計され、
‐前記第1自由曲面(F1)は、当該第1自由曲面(F1)に入射した前記ビーム束(10)の歪みを補償するように設計され、
‐前記第2自由曲面(F2)は、前記第1自由曲面(F1)から反射した前記ビーム束(10)を出射させる際に、反射時に増大させた拡がりを縮小させるように設計される、自動車両(1)
【請求項2】
前記光学素子(13)は、前記ビーム束(10)を前記第1自由曲面(F1)から出射させる際に、反射時に増大させた前記ビーム束(10)の拡がりを縮小させることにより、出射する前記ビーム束(10)が0.2°未満の拡がりを有するように設計される、
ことを特徴とする請求項に記載の自動車両(1)。
【請求項3】
前記光学素子(13)は、自由曲面レンズ(L)として設計され、
前記自由曲面レンズは、前記光学素子(13)の前記第1自由曲面(F1)を提供するように、前記自由曲面レンズ(L)の一側面に反射性コーティング(B)を有する、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の自動車両(1)
【請求項4】
前記反射性コーティング(B)は、特に金、銀、アルミニウム及び/又は銅である金属材料から構成される、
ことを特徴とする請求項に記載の自動車両(1)
【請求項5】
前記自由曲面レンズ(L)は、ガラス及び/又はプラスチックから構成される、
ことを特徴とする請求項又はに記載の自動車両(1)
【請求項6】
前記発光ユニット(8)は、少なくとも1つのビーム束(10)を提供するための光源(18)と、偏向ユニット(19)と、を備え、
前記偏向ユニット(19)は、連続する時間ステップ(t1、t2、t3)において、前記少なくとも1つのビーム束(10)を異なる所定の入射方向(E1、E2、E3)において偏向させるとともに、これを前記光学素子(13)の前記第2自由曲面(F2)へ放射するように設計され、
各入射方向(E1、E2、E3)は、各出射方向(A1、A2、A3)に対応し、
前記各出射方向において、前記光学素子(13)の前記第2自由曲面(F2)に入射した前記ビーム束(10)が、前記光学素子(13)の前記1自由曲面(F2)で反射した後に、前記光学素子(13)の前記第2自由曲面(F2)から出射する、
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の自動車両(1)
【請求項7】
前記偏向ユニット(19)は、ミラー平面(21)を有するミラー(20)を備え、
前記発光ユニット(8)は、前記光源(18)により提供された前記少なくとも1つのビーム束(10)が前記ミラー平面(21)に主入射方向(22)において入射可能であるように構成され、
前記ミラー平面(21)が、前記主入射方向(22)に対して、当該主入射方向(22)に垂直な第1軸の周りに固定された第1角度(β)だけ傾斜するように、且つ前記第1軸に対して垂直な第2軸(S)の周りで様々な所定の第2角度(γ)だけ旋回可能であるように、前記ミラー(20)は配置され、
前記第1及び第2軸(S)は、具体的には前記ミラー平面(21)において延びる、
ことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の自動車両(1)
【請求項8】
入射方向範囲(25)が、各第2角度(γ)に対応付けられ、
前記入射方向範囲(25)のうちの第1入射方向範囲の前記入射方向(E1、E2、E3)は、前記入射方向範囲(25)のうちの第2入射方向範囲の前記入射方向(E1、E2、E3)と異なり、
前記第2入射方向範囲は、第3角度(δ)において前記第1入射方向範囲と異なり、
前記第3角度(δ)は、前記第1入射方向範囲に対応付けられた前記第2角度(γ)と前記第2入射方向範囲に対応付けられた前記第2角度(γ)との差の2倍大きい、
ことを特徴とする請求項に記載の自動車両(1)
【請求項9】
前記発光ユニット(8)は、配光を利用して、前記ミラー(20)の各設定された第2角度(γ)で前記光学素子(13)が照射されるように構成され、
前記配光は、長さを規定する各第1方向において最大の広がりを有し、
前記長さは、当該長さに対して垂直な前記配光の幅より数倍大きい、
ことを特徴とする請求項及びのいずれか一項に記載の自動車両(1)
【請求項10】
各設定された第2角度(γ)に対する前記各第1方向は、ゼロに等しくない第4角度を互いに含む、
ことを特徴とする請求項に記載の自動車両(1)
【請求項11】
前記光学素子(13)は、前記ミラー(20)の各設定された第2角度(γ)で前記光学素子(13)に入射する配光を、各出射配光において投影するように設計され、
前記各出射配光は、長さ(l0’、l1’、l2’)を規定する各第2方向において最大の広がりを有し、
前記長さは、当該長さ(l0’、l1’、l2’)に対して垂直な前記各出射配光の幅より数倍大きく、
前記第2方向は、それぞれ互いに対して平行である、
ことを特徴とする請求項乃至10のいずれか一項に記載の自動車両(1)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車両用の光学式検出装置の発光ユニット用の光学素子、光学式検出装置の発光ユニット、自動車両用の光学式検出装置、自動車両、及び光学素子を製造するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本件は、光学素子、特に光学式検出装置、特にレーザースキャナの発光ユニットにおいて使用される光学素子に関する。この場合、例えばレンズ、ミラー及び/又はリフレクタ、プリズム等の種々の光学素子が従来技術から知られている。このような光学素子は、典型的にはレーザースキャナ等の光学式検出装置の一部でもある。このような光学式検出装置に関して、光学式検出装置を使用して自動車両の周囲領域をもモニタリングすることが知られている。物体が自動車両の周囲領域において検出され得る。取得した物体に関する情報項目、例えば自動車両に対する物体の相対的位置が、取得装置によって自動車両のドライバー支援システムに提供され得る。ドライバー支援装置は、例えば、これらの情報項目に基づいて、自動車両と物体との衝突を回避するための措置を開始することができる。例えば、衝突前に自動車両を自動的に減速させる。
【0003】
従来技術によるレーザースキャナでは、典型的には、レーザースキャナの発光ユニットによって光ビームすなわちビーム束が周囲領域に発光され、周囲領域は走査方向まで走査角度を変えることによりスキャン(走査)される。光ビームが周囲領域にある物体に入射すると、直ちに光ビームの少なくとも一部が物体で反射してレーザースキャナに戻る。レーザースキャナの受光ユニットは、光ビームの反射した一部を受光し、光ビームの実行時間、又は光ビームの発光と光ビームの反射した一部の受光との間の持続時間に基づいて、自動車両からの物体の距離を決定する。また、光ビームの発光時に走査角度がわかっている場合、自動車両に対する物体の向き又は方向が決定され得る。次いで、自動車両に対する物体の相対位置が、向き及び距離から決定され得る。
【0004】
走査角度を変更するように、光ビームすなわちビーム束は、典型的には発光ユニットの偏向ユニットによって偏向される。この場合、偏向ユニットは、通常、回転可能及び/又は旋回可能なミラーとして設計される。ミラーは、光ビームを種々の走査方向に沿って反射する。走査方向は、旋回可能なミラーの旋回角度及び/又は配向によって設定される。本例において、光ビームが偏向可能な周囲領域が、発光ユニットの視野を形成する。本例において、特に旋回可能なミラーの寸法が制限されている水平方向における可能な限り最大の視野を実現するように、このようなミラーは、典型的には、レーザービーム束の主入射ビーム方向に対して所定の固定された角度で傾斜している。しかしながら、このために視野に不所望の歪みが生じる。例えば、鉛直方向に延びるべき線、すなわち車両の鉛直方向軸に対して平行に延びるべき線が走査のために提供される場合、前述の歪みによってこのような走査線は、鉛直方向に対して、且つ走査角度に応じて傾斜してしまう。特に、この傾斜は、走査角度が大きくなるほど大きくなる。したがって、複数の走査時間ステップに亘って観察すると、鉛直方向に対して平行に延びる複数の走査線は生じず、扇形の構造を有する走査線画像が生じてしまう。このため、この歪みの作用は、スマイリー作用又はバナナ作用とも称される。例えば特殊な形状の補正ミラー等の光学補償手段は、補償に必要な湾曲を有しているため、ビーム束の強い拡がりとこれに付随する非常に低いQファクターを必然的に招くという重大な欠点を有し得る。これは、周波数と半値幅又はFWHM(半値全幅)との比として定義される。したがって、ビーム束の品質の劣化が生じ、これが測定精度に悪影響を及ぼす。また、特に自動車分野での適用では、センサに利用できる設置スペースが非常に限られているため、スペース上の理由で複雑な光学システムを実装できないという問題も伴う。
【発明の概要】
【0005】
したがって、本発明の目的は、光学式検出装置の発光ユニット用の光学素子、発光ユニット、光学式検出装置、自動車両、及び光学素子を製造するための方法を特定することであり、これらにより、上述の問題に関して少なくとも改善が可能となる。
【0006】
この目的は、各独立請求項に記載の特徴を有する光学素子、発光ユニット、光学式検出装置、自動車両、及び光学素子を製造するための方法によって達成される。本発明の有利な実施形態は、従属請求項、説明及び図面の主題である。
【0007】
光学式検出装置の発光ユニット用の本発明による光学素子は、本例において、反射性の第1自由曲面を有する第1側面と、前記第1側面に対向する第2側面であって、屈折性の第2自由曲面を有する第2側面と、を備える。更に、光学素子は、前記光学素子において前記第2側面に入射したビーム束の少なくとも大部分を、前記第2自由曲面を透過させて前記第1自由曲面に至らせるように、前記第2自由曲面を透過して前記第1自由曲面に至った前記ビーム束を、前記第1自由曲面で反射させるように、且つ前記第1自由曲面から反射した前記ビーム束を、前記第2自由曲面を介して出射させるように、設計される。更に、前記第1自由曲面は、当該第1自由曲面に入射した前記ビーム束の拡がりを増大させるように設計され、前記第2自由曲面は、前記第1自由曲面から反射した前記ビーム束を出射させる際に、反射時に増大させた拡がりを縮小させるように設計される。
【0008】
したがって、本発明による光学素子は、有利には、反射性の、すなわち鏡面仕上げの自由曲面と、屈折性の自由曲面との両方を備え、これらの自由曲面を理由として異なる効果を達成することに関して有利に最適化され得る。このようにして、ビーム品質の低下という不利益を被ることなく、例えば反射性の自由曲面によって上述のバナナ作用のような歪みを補償することが有利に可能となる。なぜならば、反射性の自由曲面での反射時に増大したビームの拡がり又はビーム束の拡がりは、第2自由曲面によって有利に補償され得る、又は少なくとも縮小され得るからである。このようにして、ビーム束の拡がりを増大させることなく、且つQファクターを低下させることなく、所望の配光の目標とする変形が同時に有利に達成され得る。これらの機能は、反射特性と屈折特性との両方を備えた単独の光学素子によって提供されるため、これら2つの光学活性面を互いに対して正確に位置決めするための費用もかからない。更に、このようにして、大きな設置スペースもいらなくなる。これは、この光学素子を、設置スペースが限られたシステム又はユニット、特に例えばレーザースキャナで使用する場合に特に有利である。更に、反射特性及び屈折特性の両方を備える単独の光学素子を提供することにより、これらの特性を別個の光学素子、例えばミラーとこれから分離したレンズによって実現する場合よりも、光損失が大幅に少なくなる。光学素子は、レーザースキャナ当の光学式検出装置の発光ユニットに特に適しているが、有利には光学素子の使用される領域に制限はない。特に、本発明及びその実施形態による当該光学素子は、発散の増大やQファクターの低下によってビーム品質を低下させることなく、所与の配光の所望の平準化又は変化が達成可能な任意の光学システムにおいて使用可能である。
【0009】
本例において、ビーム束の拡がりは、典型的には拡がったビーム束の開口角を表す角度を使用して特定される、光の伝播方向における半値幅(FWHM)の増加として理解されたい。
【0010】
本発明の特に有利な一実施形態において、前記光学素子は第1配光を投影するように設計され、前記第1配光は特に複数の時間ステップに亘って前記光学素子の前記第2自由曲面に少なくとも1つの入射方向において入射可能であり、前記第1配光はその全体において特に複数の時間ステップに亘って前記光学素子の前記少なくとも1つの入射方向に対して垂直な第1平面に入射可能であり、且つ、前記第1配光は視野を提供する配光における2つの非平行な第1直線によって画定され、当該配光は2つの平行な第2直線による少なくとも1つの特定の出射方向に対して垂直な第2平面において画定される。
【0011】
換言すれば、光学素子は、光学素子に入射した配光であって、例えば、互いに離間した複数の線を有する線構造を備える配光を投影するように設計される。しかしながら、全ての線が互いに平行に延びる線構造を有する配光において、これらの線は、互いに大きい又は小さいサイズの角度を含む。本例において、好適には、複数の時間ステップに亘ってとは、レーザースキャナにおいてこの光学素子が適用されている間のことを意味しており、典型的には一方向に延びるビーム束により提供される個々の線が、光学素子に同時に入射せず、複数の連続的な時系列の時間ステップにおいて入射し、出射して前述のように投影をなす。
【0012】
本例において、一般に、第1及び第2平面は、それぞれ入射方向又は出射方向に対して平行に延びていない断面平面を指す。
【0013】
このようにして、いわゆるバナナ作用が有利に補償され得る。本例において、上述の補償は、好適には、光学素子の反射性の第1自由曲面の対応する設計によって主に達成される。しかしながら、反射性の第2自由曲面による更なる残余補償も有利に追加的に想定され得る。これは、特に光学素子が配置される設置スペースが非常に限られている場合、特に有利である。これは、例えば、光学素子が自動車両用のレーザースキャナにおいて使用される場合である。
【0014】
センサのサイズが限定されているため、光学素子の寸法も、自動車両内の意図された設置位置に対して特に水平方向において制限される。例えば、バナナ作用の補償のために自由曲面ミラーを1つしか使用しない場合、バナナ作用の完全な補償は、典型的なレーザースキャナでは不適切である。なぜならば、このような自由曲面ミラーの水平方向における寸法が制限されているからである。バナナ作用を補償するのに自由曲面ミラーを1つしか使用しない実験で、以下の結果が得られた。このような補償ミラー用のレーザースキャナで典型的に利用可能な寸法の場合、鉛直方向からの少なくとも1°の逸脱は、35°の出射角度又は走査角度をもたらす。したがって、バナナ効果は、自由曲面ミラーを1つしか使用しない場合には完全に補償することができない。これに対し、本発明及びその実施形態による光学素子は、2つの異なる活性表面を組み合わせることにより、より小さい設計でバナナ作用を非常に良好に補償することができる。なぜならば、この補償は、反射性の第1自由曲面の対応する設計によるのみならず、屈折性の第2受光自由表面の対応する設計によって更に支援され得るからである。
【0015】
更に、屈折性の自由曲面によってビーム又はビーム束の拡がりの縮小が有利に達成されるだけでなく、種々の走査角度又は出射角度についての均一化も達成され得る。例えば単独の自由曲面ミラーでバナナ作用を補償する場合、出射する各ビーム束のより大きなビーム束の拡がりが生じるだけでなく、射出角度が大きいほど更に不均一となり顕著になるであろう。本発明による更なる屈折性の第2自由曲面の提供によって、出射角度に関係なくビーム束の拡がりを最小まで縮小することが有利に可能となる。特に、可能な限り最大の視野を、例えば自動車両内の意図された設置位置に対して特定の方向に、例えば水平方向に提供する必要がある場合に関して、特に大きな利点が、とりわけ非常に大きい出射角度において達成され得る。
【0016】
したがって、好適には、光学素子は、屈折性の自由曲面の中央領域を備える。屈折性の自由曲面は、更に、光出口領域において第2自由曲面を通って出射するビーム束の拡がりが、中央領域からの所定の第1方向に対する光出口領域の距離が大きいほど、より強力に縮小されるように形成される。このようにして、上述の拡がりの均一化が、特に有利で簡単な態様で提供され得る。更に、屈折性の自由曲面は、光出口領域において出射するビーム束が、中央領域からの第1方向に対して垂直な第2方向に対する光出口領域の距離とは無関係に、均一且つ強力に縮小されるように設計されることが想定され得る。
【0017】
さらに、光学素子は、拡がりの低減および光学素子によるバナナ効果の補償という上述の機能が、光学素子に入射する配光に関して実行可能となるように設計されることが好ましく、配光は、一つ又は複数のビーム束によって提供され得て、ビーム束は平行ではなく、むしろ逸脱し、特に共通の領域が生成され、共通の領域は、ビーム束によって発光される光学素子の領域よりも小さい。このように、光学素子は特に好適にレーザスキャナにおける状態に適応される。
【0018】
本発明の更なる有利な実施形態において、前記光学素子は、前記ビーム束を前記第1自由曲面から出射させる際に、反射時に増大させた前記ビーム束の拡がりを縮小させることにより、出射する前記ビーム束が0.2°未満の拡がりを有するように設計される。これは、好適には、150°までの、又は−75°から+75°までの出射角度範囲内の全ての出射角度に適用される。特に、わずか0.1°の拡がりが光学素子によって実現され得る。本例において、バナナ効果の補正に1つの自由曲面ミラーしか使用しなかった実験の結果では、0°の走査角度におけるビーム束の拡がりは、既に少なくとも0.2°である一方、35°の走査角度では、1.2°のビーム束の拡がりであることに留意されたい。このことから、特にビームの品質について、反射性及び屈折性の自由曲面を組み合わせた光学素子によって、大きな出射角度範囲に亘って拡がりの縮小とその均一化の両方について大きな利点が達成されることが明瞭に理解される。
【0019】
本発明の更なる有利な実施形態において、前記光学素子は、自由曲面レンズとして設計され、前記自由曲面レンズは、前記光学素子の前記第1反射性自由曲面を提供するように、前記自由曲面レンズの一側面に反射性コーティングを有する。このようにして光学素子は非常に簡単に提供され得る。特に、このような自由曲面レンズは、以下に詳述するように射出成形法により特に簡単に提供することができる。これにより、光学素子の特に費用効果の高い製造が可能とされる。更に、別個の光学素子の場合に熱膨張係数が異なるために生じ得る問題は、コーティングによって反射性の自由曲面を製造するで回避され得る。したがって、別個の光学素子を互いに適合させる必要がある場合には、異なる材料同士及び材料特性同士を適合させなくてはならないが、有利にはこれも不要である。
【0020】
好適には、反射性コーティングは、金属材料から構成される。なぜならば、このような金属材料は、反射特性を提供するのに特に適しているからである。原則として、この目的のためにあらゆる任意の金属材料が考えられる。その例は、金、銀、アルミニウム、及び/又は銅である。任意に設計された合金も、コーティングとして考えられる。この場合、銀は特に高い反射率を有するため、他のいずれのものより際立っている。
【0021】
好適には、自由曲面レンズは、ガラス及び/又はプラスチックから構成される。原則として、あらゆる任意の透明材料が自由曲面レンズについて考えられる。例えば、典型的なプラスチックは、PMMA(ポリメチルメタクリレート)又はPC(ポリカーボネート)である。この場合、ガラスは特に高い高度と引っかき抵抗性を有するためプラスチックに対して際立つものであるが、プラスチックは非常に軽量であるという点でガラスに対して大きな利点を有している。
【0022】
更に、本発明は、自動車両の光学式検出装置用の発光ユニットであって、本発明又はその実施形態のうちの1つによる光学素子を備える発光ユニットに関する。本発明及びその実施形態による光学素子について記載した特徴、特徴の組み合わせ、及びそれらの利点は、本例において、本発明による発光ユニットにも同様に適用される。
【0023】
好適には、発光ユニットは、少なくとも1つのビーム束を提供するための光源を備える。光源は、例えば複数の別個の光源を備え得る。例えば、光源は、少なくとも1つのレーザーダイオード、好適には複数のレーザーダイオード、例えばレーザーダイオードアレイを備える。更に、発光ユニットは、好適には、偏向ユニットを備える。偏向ユニットは、連続する時間ステップにおいて、少なくとも1つのビーム束を異なる所定の入射方向において偏向させるとともに、これを光学素子の第2自由曲面へ放射するように設計される。本例において、各入射方向は、各出射方向に対応する。各出射方向において、光学素子の第2曲面に放射されたビーム束が、光学素子の第1自由曲面で反射した後に、光学素子の第2自由曲面から出射する。したがって、光学素子へのビーム束の入射放射の本入射方向に応じて、このビーム束は、特定の出射方向において、又は各出射範囲において、有利に出射する。このようにして、所定の周囲領域、特に発光ユニットの視野は、変動によって、特に入射方向の時系列的変動によって有利に走査され得る。
【0024】
本発明の更なる有利な実施形態において、前記偏向ユニットは、ミラー平面を有するミラーを備える。好適には、本例において、ミラーは、MEMS(微小電気機械システム)ミラーである。更に、前記発光ユニットは、好適には、前記光源により提供された前記少なくとも1つのビーム束が前記ミラー平面に主入射方向において放射可能であるように構成され、前記ミラー平面が、前記主入射方向に対して、当該主入射方向に垂直な第1軸の周りに固定された第1角度だけ傾斜するように、且つ前記第1軸に対して垂直な第2軸の周りで様々な所定の第2角度だけ旋回可能であるように、前記ミラーは配置され、特に、前記第1及び第2軸は、前記ミラー平面において延びる。ミラーを第2軸を中心として旋回させることにより、すなわちミラーを各時間ステップにおいて異なる第2角度に設定することにより、種々の入射方向における光学素子への入射ビーム束の偏向が有利に提供され得る。
【0025】
特に自動車両内の意図された設置位置に対する少なくとも1つの方向、特に水平方向における特に大きな視野は、有利には、固定された第1角度によるミラーの更なる傾斜によって提供され得る。しかしながら、この固定角度は、前述のバナナ作用を同時に引き起こすため、本発明又はその実施形態のうちの1つによる本構成における光学素子の使用が特に有利である。したがって、本構成により、特に大きい視野が、歪みがなく且つ同時に非常に高いビーム品質を以て提供され得る。本例において、固定された第1角度は、例えば、主入射方向とミラー平面との間の角度として定義され、0乃至90°、好適には10乃至80°、例えば57°である。この角度が小さいほど、すなわちミラー平面の表面法線と主入射方向との間の角度が大きくなるほど、バナナ作用が大きくなる。好適には、この構成によって、少なくとも1つの方向において少なくとも100°の、特に好適には少なくとも150°の開口角を含む視野が提供され得る。更に、視野は、これに対して垂直な方向において、例えば鉛直方向において、少なくとも10°、特に少なくとも20°、例えば26°の開口角を有することが好適である。
【0026】
本発明の更なる有利な実施形態において、入射方向範囲が、各第2角度に対応付けられ、前記入射方向範囲のうちの第1入射方向範囲の前記入射方向は、前記入射方向範囲のうちの第2入射方向範囲の前記入射方向と異なり、前記第2入射方向範囲は、第3角度において前記第1入射方向範囲と異なり、前記第3角度は、前記第1入射方向範囲に対応付けられた前記第2角度と前記第2入射方向範囲に対応付けられた前記第2角度との差の2倍大きい。
【0027】
このようにして、走査点だけでなく、例えば自動車両内の意図された設置位置に対して垂直に配向された走査線が、個々の時間ステップにおいて有利に提供され得る。したがって、ミラーで反射して各時間ステップにおいて光学素子に入射するビーム束は、ある程度まで一方向において拡大するため、単一の入射方向だけでなく、1つの平面に位置する複数の入射方向を含む。したがって、入射面が各時間ステップにおいて多少とも提供される。入射面は、実システムにおいて特定の、しかし非常に薄い厚さを有する。したがって、各時間ステップにおいて提供される入射面は、前述の第3角度において異なる。したがって、例えば、ミラー平面の配向が2つの時間ステップの間で2°の角度だけ変更される場合、結果として生じるそれぞれの入射面は4°の角度、すなわち前記角度の2倍だけ異なる。
【0028】
本発明の更なる有利な実施形態において、前記発光ユニットは、例えば1つの入射方向又は入射面に対して垂直な特に断面平面で観察される配光を利用して設定された前記ミラーの各第2角度で前記光学素子が照射されるように構成され、前記配光は、長さを規定する各第1方向において最大の広がりを有し、前記長さは、当該長さに対して垂直な前記配光の幅より数倍大きい。このような配光を提供するために、対応するビーム形成素子が設けられ得る。例えば、光源によって提供されたビーム束は、FAC(高速軸コリメート)レンズによって1つの延長方向において最小幅まで縮小され得る。一方で、光束は、当該方向に対して垂直な方向において縮小されないか、広がりがほとんど縮小されない。したがって、断面においてその幅より顕著に大きい長さ、具体的には1桁大きい長さを有するビーム束が、各時間ステップにおいて、旋回可能なミラーを介して光学素子に放射される。
【0029】
しかしながら、主入射方向に対してミラーが傾斜する固定された第1角度を理由として、各第1方向、すなわち、断面における各ビーム束の長手方向延長を各時間ステップにおいて表す、ミラーの設定された各第2角度に対する前記各第1方向は、結果としてゼロに等しくない第4角度を互いに含む。したがって、各時間ステップにおいて光学素子に入射する光ストリップは、互いに平行ではなく、互いに各第4角度を含む。基準方向に対する、例えば、0°のミラーの第2角度において生じる光ストリップの延長線に対するこれらの長手方向に延びる光ストリップの傾きは、本例において、現在の偏向角度、すなわちミラーの第2角度が大きいほど大きい。
【0030】
これにより、ミラーの固定された第1角度によって引き起こされるバナナ作用であって、光学素子により有利に補償されるバナナ作用が説明される。したがって、前記光学素子は、前記ミラーの各設定された第2角度で前記光学素子に入射する配光を、各出射配光において投影するように設計され、前記各出射配光は、長さを規定する各第2方向において最大の広がりを有し、前記長さは、当該長さに対して垂直な前記各出射配光の幅より数倍大きく、前記第2方向は、それぞれ互いに対して平行であることが特に有利である。換言すれば、光学素子に時系列で入射するとともに互いに対して平行でない光ストリップ又は光線は、それぞれ互いに対して平行な光ストリップ、又は光線、又は走査線において投影され得る。
【0031】
更に、本発明は、本発明又はその実施形態のうちの1つによる発光ユニットを備える、例えばレーザースキャナ等の自動車両用の光学式検出装置にも関する。また、光学式検出装置は、物体から反射したそれぞれの出射走査ビーム又は走査線の反射部分を検出するための適切な受光ユニットも備え得る。
【0032】
更に、本発明は、本発明又はその実施形態のうちの1つによる光学式検出装置を有する自動車両にも関する。
【0033】
本発明及びその実施形態による発光ユニットについて記載した特徴、特徴の組み合わせ、及びそれらの利点は、本発明による光学式検出装置にも同様に適用される。好適には、光学式検出装置は、レーザースキャナとして設計される。
【0034】
更に、本発明は、光学素子、特に本発明又はその実施形態のうちの1つによる光学素子を製造するための方法にも関する。本方法によれば、溶融材料が、キャビティを備える射出成形金型に注ぎ込まれる。更に、本例において、前記キャビティは、前記光学素子の前記第1自由曲面に対応する第1の所定の自由曲面を有する第1側面と、前記光学素子の前記第2自由曲面に対応する第2の所定の自由曲面を有する第2側面とを備える。更に、少なくとも前記射出成形金型が前記材料で充填された状態において、前記キャビティの前記第1側面は、前記キャビティの前記第2側面に対向する。更に、前記材料を、その後固体状態に変態させ、前記材料は少なくとも前記固体状態において透明である。前記射出成形金型から取り外されて自由曲面レンズを形成する前記材料は、前記キャビティの前記第1側面により形成された前記材料の所定の自由曲面において、反射性コーティングを使用してコーティングされる。
【0035】
本発明及びその実施形態のいずれかによる光学素子は、本方法により、特に単純且つ費用効果の高い態様で製造され得る。
【0036】
本発明の更なる特徴は、特許請求の範囲、図面、及び図面の説明から生じる。上述した特徴及び特徴の組み合わせ、並びに以下の図面の説明で言及する特徴及び/又は図面にのみ示す特徴及び特徴の組み合わせは、それぞれ特定された組み合わせにおいてだけでなく、他の組み合わせにおいても又は単独でも、本発明の範囲から逸脱することなく利用可能である。したがって、実施形態は、図面に明示的に示され説明されていないが特徴の別個の組み合わせによって説明された実施形態から生じ、生成され得る本発明に含まれ開示されているとみなされるべきである。最初に作成された独立請求項の全ての特徴を含まない実施形態及び特徴の組み合わせも開示されているとみなされるべきである。また、実施形態及び特徴の組み合わせは、特に特許請求の範囲に示された特徴の組み合わせを超えるか又は逸脱する上記実施形態によって開示されているとみなされるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1】本発明による自動車両の実施形態を概略的に示す図。
図2】本発明の例示的な一実施形態による光学素子を概略的に示す図。
図3】本発明の例示的な一実施形態による光学素子を有する光学式検出装置の発光ユニットを概略的に示す図。
図4a】従来技術によるレーザースキャナによって生成された第1走査配光を概略的に示す図。
図4b】ビームの拡がりを補償せずにレーザースキャナによって生成された第2走査配光を概略的に示す図。
図4c】本発明の例示的な一実施形態による光学素子を有するレーザースキャナによって生成された第3走査配光を概略的に示す図。
図5】本発明の例示的な一実施形態による光学素子用の自由形状レンズを製造するための方法を概略的に示す図。
【発明を実施するための形態】
【0038】
図面において、同一、及び機能的に同一の要素には同一の参照符号が付される。図示の座標系も同じ座標系であるとみなされるべきである。
【0039】
図1は、本発明の例示的な一実施形態による自動車両1を示す。本例において、自動車両1は乗用車として設計されている。自動車両1は、自動車両1の運転時に自動車両のドライバーを支援するように設計されたドライバー支援システム2を備えている。ドライバー支援システム2は、自動車両1の周囲領域をモニタリングするように設計された少なくとも1つの光学式検出装置3を備えている。特に、自動車両1の周囲領域4における物体Oの距離及び向きが取得装置3によって取得され得るとともに、例えばドライバー支援システム2の制御ユニット5に提供され得る。制御ユニット5は、例えば物体Oの距離が所定の閾値を下回る場合、衝突回避のために自動車両1を自動的に減速させ得る。本例において、ドライバー支援システム2は、2つの取得装置3を備える。第1取得装置3は、自動車両1の前方領域6に配置され、自動車両1の前方の周囲領域4をモニタリングするように設計される。第2取得装置3は、自動車両1の後方領域7に配置され、自動差h量1の後方の周囲領域4をモニタリングするように使用される。更なる取得装置3を、例えば自動車両1の側方領域に設けてもよい。
【0040】
本例において、光学式検出装置3はレーザースキャナとして設計され、発光ユニット8及び受光ユニット9を備えている。発光ユニット8は、光ビーム束10を周囲領域4に発光し、受光ユニット9は物体Oで反射した光ビーム束10の一部11を受光する。受光ユニット9は、光ビーム束10の発光と光ビーム束10の反射部分11との間の実行時間に基づいて物体Oの距離を取得することができる。本例において、光ビーム束10は、様々な走査角度αに沿って連続的に及び/又は段階的に配向される。したがって、周囲領域4は、光ビーム束10によって格子状にスキャン(走査)される。図1によれば、走査角度αの水平方向成分は、車両の長手方向と車両の横手方向とに及ぶ水平面に示される。車両の長手方向と車両の鉛直方向とに及ぶ平面における走査角度αの水平方向成分及び走査角度αの鉛直方向成分(図示せず)は、発光ユニット8に既知であるため、自動車両1に対する物体Oの向き及び/又は方向も把握される。異なる走査方向に向けられた光ビーム束10によって照明される周囲領域4の角度範囲12は、少なくとも図示の水平方向において発光ユニット8の視野を形成する。本例において、例えば、150°の開口角又は角度範囲12を有する視野が水平方向において提供され得る。鉛直方向における、すなわちy‐z平面における視野の開口角は、例えば20°乃至30°、例えば26°であり得る。
【0041】
図2は、本発明の例示的な一実施形態による光学式検出装置3の発光ユニット8用の光学素子13を概略的に示す。光学素子13は、反射性、鏡面性、及び非透明性である自由曲面F1を有する第1側面13aと、第1側面13aに対向する第2側面13bであって、透明性及び屈折性を有する第2自由曲面F2を有する第2側面13bと、を備える。光学素子13は、例えば、鏡面性の自由曲面F1を提供するようにコーティングBを使用して一側面がコーティングされた自由曲面レンズLとして提供され得る。本例において、自由曲面レンズLは、任意の透明な材料、例えばガラス又はプラスチックから形成され得る。鏡面性及び/又は反射性コーティングBは、好適には金属材材料、又は金属材料の組み合わせ、又は合金から構成される。本例において、2つの自由曲面F1、F2は、凹面、凸面、湾曲面、ファセット、平滑面、球面、非球面、又は本例においてこれらの任意の組み合わせにおいて形成され得る。光学素子13は、図示例において上面図、すなわちx‐z平面において概略的に示されている。
【0042】
光学素子13に入射した光ビーム束10であって、光学素子13の第2側面13bに入射した光ビーム束10は、大部分が第2自由曲面F2を透過して、反射性の自由曲面F1から反射して、第2自由曲面F2を介して再び出射する。本例において、異なる入射方向E1、E2、E3は、光ビーム束が光学素子13から出射する各出射方向A1、A2、A3に対応する。光学素子13が、例えばレーザースキャナである光学式検出装置3で使用される場合、好適には、個々の光ビーム束10は、光学素子13に時系列で連続して入射する。図2に示す例では、一例として、第1光ビーム束10が第1入射方向E1において第1時点t1で入射し、第2光ビーム束10が第2入射方向E2において第2時点t2で入射し、第3光ビーム束10が第3入射方向E3において第3時点t3で入射する。これらの異なる入射方向E1、E2、E3は、例えば旋回可能なミラー20によって提供され得る。ミラー20については以下で詳述する。更に、本例において理解を容易にすべく3つの異なる入射方向E1、E2、E3のみが示されているが、多数の更なる入射方向及び対応する出射方向が、発光ユニット8によって同様に提供され得る。
【0043】
有利には、光学素子13は、光学素子13の第2側面13bに入射した配光を、所定の態様で形成及び/又は平準化された出射配光において投影するように設計される。したがって、例えば、入射配光が不所望の歪み作用を含む場合、このような不所望の歪み作用は、有利には、光学素子13によって補償され得る。好適には反射性の自由曲面F1によって少なくとも大部分が達成されるこのような平準化を提供するために、湾曲表面領域又は互いに対して異なった態様で傾斜した表面領域を提供することが必須であり、これにより、反射光束の強い拡がりが生じる。反射性の自由曲面F1での反射により生じるこれらの拡がりは、有利には、第2自由曲面F2により低減され、更に均質化される。したがって、光学素子13を介して設置スペースに特に有効な態様で特に高いビーム品質を有する所望の配光を出射させることができ、これは測定精度に有利である。
【0044】
図3は、本発明の例示的な一実施形態による光学式検出装置3用の発光ユニット8を概略的に示す。発光ユニットは、光ビーム束10を提供するための光源18を備える。本例において、光源18は、単数又は複数のレーザーダイオード又は他の光源を備え得るとともに、例えばレーザーダイオードアレイとして具現化され得る。更に、光源18は、パルス状に動作し得る。これにより、ビーム束10の形態の光パルスが、各時間ステップt1、t2、t3において提供される。好適には、光源18は、単色光束10を発光するように設計される。これらの単色光束の波長は、任意の波長範囲、好適には可視波長範囲及び/又は赤外線範囲及び/又は紫外線範囲であり得る。例えば、光源18は、905nmの波長を有する光を発光するように設計され得る。
【0045】
更に、発光ユニット8は、ミラー20を含む偏向ユニット19を備える。好適には、ミラー20はMEMSミラーである。更に好適には、ミラー20は、平面ミラー表面21を備える。入射ビーム束10は、ミラー20によって種々の方向E1、E2、E3に偏向され得る。可能な限り最大の視野を提供することができるように、ミラー20又はその平面ミラー表面21は、入射光ビーム束10の主入射方向22に対して固定角度βだけ傾斜している。本例では、ミラー20は、図示の座標系のx軸に対して平行に延びる軸で回転する。
【0046】
光学素子13へのビーム束10の入射に対して異なる入射方向E1、E2、E3を提供するように、ミラー20は、第2旋回軸Sを中心として更に旋回可能である。第2旋回軸Sは、x軸に対して垂直に延びるとともに、本例において種々の所定角度γでミラー平面内にある。したがって、各時間ステップt1、t2、t3において設定された本角度γは、光ビーム束10が光学素子13で偏向される所定の入射方向E1、E2、E3を提供する。
【0047】
更に、この発光ユニット8によって周囲4をスキャンするためには、個々の走査点ではなく、走査線を発することが好適である。好適には、全ての走査線が、自動車両1上の光学式検出装置3の意図された設置位置に対して垂直方向に延びる。このような走査線を提供するように、光ビーム束10は、一方向において幅広とされ、及び/又はこれに対して垂直な方向において幅狭とされ得る。この目的のために、発光束10のビーム幅を一方向において、本例においてx方向に幅狭とするFACレンズ23が、例えば、光源18と偏向ユニット19との間のビーム路に配置され得る。更に、FACレンズ23のコリメータレンズ24をビーム路の下流に接続して、光束10を、特に好適にはx方向のみにおいてコリメートし、ビーム束をy−z平面においてミラー20に集束させることも可能である。ここから生じるビーム束10は、ミラー20で反射した後に入射範囲25に亘って広がる。この入射範囲25において第1方向E1に延びる光ビームの全ては、本例において一平面に位置する。本例において、光ビーム束10は、ミラー20のゼロ位置、すなわち、γが0°に等しい位置に示されている。したがって、第1入射方向E1における光ビーム束10の側面図が図3に示され、これは、図2では平面図として示されている。したがって、異なる偏向角度γに対して、入射範囲21の拡大は、それぞれ角度δにおいて異なる時系列シーケンスをもたらす。これは、第1入射方向E1及び第2入射角度E2について図2に一例として示されている。
【0048】
図3に示すy方向に幅広とされたこのビーム束10によって、y方向においてすなわち、例えば鉛直方向において、例えば26°の開口角を有する走査線が提供され得る。一方、これに対して垂直な、すなわち図で示すx方向における、この発光された光ビーム束10の開口角は、例えば0.1°でしかない。しかしながら、x方向における、特に全ての入射方向E1、E2、E3及び対応する出射方向A1、A2、A3におけるこのように小さい開口角は、光学素子13によってのみ達成され得る。これについて、図4a乃至4cを参照して詳細に説明する。
【0049】
図4aは、光学素子13を有さない従来技術による発光ユニットによって出射した第1配光14aを概略的に示す。本例において、特定の角度α0、α1及びα2は、偏向角度を表す。この偏向角度において、発光ユニットによって発光された光ビーム束が出射する。特に、このような配光14aは、例えば0°の出射角度αにおける出射方向に対して垂直な断面平面において観察される複数の時間ステップt1、t2、t3に亘って生じるであろう。0°の出射角度は、光学素子13を有さず例えば平面状の偏向ミラーのみを有する図3による配置構成を利用して、ここではα0で特定される。これに応じて、視野は、x‐z平面、例えば水平方向に対して−α2から+α2までの角度範囲に亘って広がる、α1は例えば30°であり、α2は例えば75°である。ミラー20が入射光ビーム束10の主入射方向22に対して有する固定角度βにより、光学素子13がなくても、出射配光14aが生じ、これにより、個々の走査線は、各方向における各長さl0、l1、l2を有する。これらの長さは、互いに対して平行に延びるのではなく、鉛直方向に対して多少傾斜している。本例において、偏向角度αが大きいほど、走査線は、鉛直方向すなわち図においてy方向に対してそれぞれ対応するその長手方向延長線において強く傾斜する。一例として、視野を画定する走査線15a、15bにのみ参照符号を付す。したがって、視野は、少なくとも一方向において、ここではX方向において互いに対して平行に延びない2つの直線によって画定される。視野のこの歪み又は変形は、光学式検出装置の実際に利用可能な視野の事実上の減少をもたらすため望ましくない。この視野の平準化は、光学素子13によって有利に達成され得る。
【0050】
図4aに示されるこの配光は、本例におけるその形成において、図3の発光ユニットによる連続的な時間ステップにおいてミラー20から光学素子13に入射する配光に対応する。これは、光学素子によって有利に平準化され得るとともに、これによりバナナ作用が補償され得る。
【0051】
図4bは、図3に示す光学素子13の代わりに自由曲面ミラーが1つのみ配置された場合に生じる視野14bを概略的に示す。本例において、視野を画定する走査要素16a、16bは、互いに対して平行な、特にそれらの間に位置する全ての他の走査線に対して平行な2つの直線として延びている。1つの自由曲面ミラーのみによる視野の平準化は、各ビーム束の著しい拡がりを不利に引き起こすが、これは特にx方向における各走査線の幅の拡大で顕著である。更に、このような幅の拡大は、走査角度及び/又は出射角度αが大きくなるほど顕著になる。
【0052】
本発明及びその実施形態による光学素子13によれば、有利には図4に示すバナナ作用を完全に補償すると同時に、個々のビーム束の拡がりを最小に低減することができる。これを図4cに示す。特に、図4cは、本例において、図4cは、例えば図3に示す発光ユニット8の実施形態によって生じる第3配光を概略的に示す。各走査線は、その各長さl0.l1、l2に対して互いに平行に延びるとともに、特に図4bの配光14bとは対照的に、その長さl0、l1、l2に対して垂直な著しく減少した幅を有する。視野は、同じくx方向において2つの平行な走査線17a、17bによって画定される。これらの走査線は、互いに対して平行に延びる直線として表され得る。
【0053】
更に、各入射方向E1、E2、E3及びこれに対応する各射出方向A1、A2、A3は、特に各入射方向E1、E2、E3に対応する各自由曲面F1、F2の表面領域が、異なる入射方向E1、E2、E3に対して重なり合わないような態様において、第2自由曲面F2及び特に第1自由曲面F1の個々の表面領域に割り当てられ得る。好適には、異なる出射方向A1、A2、A3に対する第2自由曲面F2の各出射領域も重なり合わず、且つ特に入射領域とも重なり合わない。したがって、特に単純な態様において、第2自由曲面の各入射及び出射領域、及び第1自由曲面の各反射領域を、バナナ作用の補償及び拡がりの補償に対する各出射角度について有利に達成すべき各効果に対して、有利に最適化することができる。各自由曲面F1及びF2のこの目的に対して必要な実施形態及び構成は、反射法則及び屈折法則に基づいて簡単に計算されて提供され得る。
【0054】
図5は、光学素子13用の自由曲面レンズLを製造するための射出成形方法を概略的に示す。この目的のために、キャビティ27を備える射出成形金型26が設けられる。このキャビティ27は、光学素子13の第1自由曲面F1に対応する第1所定自由曲面F1’を有する第1側面27aと、光学素子13の第2自由曲面F2に対応する第2所定自由曲面F2’を有する第2側面27bと、を備えている。光学素子13を製造するように、溶融形態の材料28が、射出成形金型26のキャビティ27に注ぎ込まれる。これを矢印29で示す。次いで、材料27を固体状態に変態させる。このような変態は、例えば材料27の硬化又は冷却によって達成され得る。こうして固体材料27は、所望の自由曲面F1、F2を有する自由曲面レンズLを形成する。射出成形金型26から自由曲面レンズLを取り外した後、キャビティ27の第1自由曲面F1’を有して形成された第1側面13aは、光学素子13の鏡面をなす第1自由形状表面F1を提供するように、反射性又は鏡面コーティングBを使用してコーティングされる。
図1
図2
図3
図4a
図4b
図4c
図5