特許第6880217号(P6880217)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6880217
(24)【登録日】2021年5月7日
(45)【発行日】2021年6月2日
(54)【発明の名称】多層構造核燃料被覆管の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G21C 3/06 20060101AFI20210524BHJP
   B32B 1/08 20060101ALI20210524BHJP
   G21C 3/07 20060101ALI20210524BHJP
   F16L 9/02 20060101ALI20210524BHJP
【FI】
   G21C3/06 210
   B32B1/08
   G21C3/07
   G21C3/06 312
   F16L9/02
【請求項の数】9
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2019-546909(P2019-546909)
(86)(22)【出願日】2018年4月17日
(65)【公表番号】特表2020-510828(P2020-510828A)
(43)【公表日】2020年4月9日
(86)【国際出願番号】KR2018004435
(87)【国際公開番号】WO2018194343
(87)【国際公開日】20181025
【審査請求日】2019年8月27日
(31)【優先権主張番号】10-2017-0049971
(32)【優先日】2017年4月18日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】514140698
【氏名又は名称】カチョン ユニバーシティ オブ インダストリー−アカデミック コーオペレイション ファウンデイション
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ユン ヨンス
(72)【発明者】
【氏名】イ カンス
(72)【発明者】
【氏名】ウ ソンピル
(72)【発明者】
【氏名】キム インイェ
【審査官】 大門 清
(56)【参考文献】
【文献】 特開平04−042094(JP,A)
【文献】 特開平10−273746(JP,A)
【文献】 特開2008−026182(JP,A)
【文献】 特開昭61−044143(JP,A)
【文献】 特開2001−158928(JP,A)
【文献】 特表平10−510005(JP,A)
【文献】 国際公開第2002/024366(WO,A1)
【文献】 特開昭55−024786(JP,A)
【文献】 特開昭62−039787(JP,A)
【文献】 特開平03−064427(JP,A)
【文献】 韓国登録特許第10−1595436(KR,B1)
【文献】 米国特許第04728491(US,A)
【文献】 米国特許第06033493(US,A)
【文献】 米国特許第04751044(US,A)
【文献】 米国特許第04986957(US,A)
【文献】 特開昭57−064413(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21C 3/06−3/07
B32B 1/08
B21C 37/06
F16L 9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
核燃料焼結体が挿入される収容空間が与えられるジルコニウム合金の予備内管を前記予備内管よりも大きな直径を有する予備外管内に挿入し、前記予備内管内に充填材を充填して予備被覆管を形成する過程と、
前記予備被覆管の開口された両端部を遮断部材により閉塞する過程と、
前記予備被覆管の外側から内側へと圧力を加えて前記予備被覆管の直径を縮径させる過程と、
を含み、
前記予備外管及び前記予備内管は、互いに異なる金属から形成される多層構造核燃料被覆管の製造方法。
【請求項2】
前記予備外管を形成する金属は、0.0045barn〜440barnの熱中性子吸収断面積を有する請求項に記載の多層構造核燃料被覆管の製造方法。
【請求項3】
前記予備外管を形成する金属は、1ppm/K〜40ppm/Kの熱膨張係数を有する請求項に記載の多層構造核燃料被覆管の製造方法。
【請求項4】
前記予備外管は、前記予備内管よりも軟性が大きい請求項に記載の多層構造核燃料被覆管の製造方法。
【請求項5】
前記圧力を加える過程後に、
前記予備内管内の充填材を溶解させる過程をさらに含む請求項に記載の多層構造核燃料被覆管の製造方法。
【請求項6】
前記充填材を溶解させる過程後に、
前記予備外管と予備内管が密着固定されて製造される外管の外表面に保護層を形成する過程をさらに含む請求項に記載の多層構造核燃料被覆管の製造方法。
【請求項7】
前記保護層は、プラズマ表面処理により前記外管を構成する金属が酸化または窒化されて形成される請求項に記載の多層構造核燃料被覆管の製造方法。
【請求項8】
前記圧力を加える過程は、
前記予備被覆管の長手方向に互いに離間して配置される複数のロールユニットのそれぞれの離間距離が段階的に減少した複数のロールの間に前記予備被覆管を移動させて、前記予備被覆管の内側に加えられる圧力が次第に増加する請求項に記載の多層構造核燃料被覆管の製造方法。
【請求項9】
前記圧力を加える過程において、
前記予備外管は、前記予備内管よりも大きく収縮されて前記予備内管と互いに密着固定される請求項に記載の多層構造核燃料被覆管の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多層構造核燃料被覆管及び多層構造核燃料被覆管の製造方法に係り、さらに詳しくは、内管と外管が互いに異なる金属から形成された多層構造核燃料被覆管及び多層構造核燃料被覆管の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、原子力発電所は、核分裂により生じる熱で蒸気を発生させ、発生された蒸気の力でタービンを回して電気エネルギーを生産する場所であり、放射性物質の漏出を防ぎ、原電の安全を守るために、多重の防護壁から構成されている。中でも、第2の防護壁である核燃料被覆管は、核燃料焼結体を包み込んで原子炉を循環する1次系統の冷却水と、核分裂を引き起こす核燃料とを隔離させる核分裂反応中に生成された核分裂生成物が1次系統の冷却水に移されることを防止し、核分裂により生成された熱を有効に1次系統の冷却水に伝達する役割を果たす。
【0003】
核燃料被覆管が入っている原子炉の炉心においては、核燃料の核分裂連鎖反応による多大な熱エネルギーが生じ、これにより、原子炉を循環する1次系統の冷却水は、熱エネルギーを伝達されて2次系統の水を蒸発させる役割を果たすだけではなく、原子炉の内部を循環しながら核分裂反応により原子炉の炉心において生じる熱を冷やさ(冷却させ)なければならない。
【0004】
しかしながら、電力供給の遮断による冷却水循環の中止により福島原子力発電所が爆発したように、核分裂により生じた多大な熱を冷やさなければならない冷却システムの故障などが原因となって冷却水が正常に供給されなければ、原子炉の炉心が収容された原子炉の圧力容器の内部温度が急激に上がるだけではなく、核燃料被覆管をなす材料が高温の水蒸気と反応しながら急激な酸化反応が行われてしまうという不都合がある。
【0005】
冷却機能の喪失により核燃料被覆管をなす材料が高温の水蒸気(HO)と反応して酸化されれば、水素が大量に発生し、発生した水素は、原子炉の圧力容器の上部に溜まり、原子炉の圧力容器の上部に積もって水素の濃度が高くなれば、酸素と反応して水素の爆発が起こるという深刻な問題が生じる。福島原電事故においては、冷却水の循環の中止により核燃料被覆管において水素が生じ、原子炉の建物の上部に溜まった水素が空気と反応して水素の爆発が生じていた。
【0006】
のみならず、高温酸化及び腐食により核分裂生成物である放射性物質が外部に流出される虞があり、核燃料被覆管の取り替え周期が短くなって経済的な損失をきたす虞がある。しかも、急激な酸化反応に伴う核燃料被覆管の脆化現象は、材料の軟性を低下させて、核燃料集合体の安全性を驚かす虞がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】韓国登録特許公報第10−0963472号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、互いに異なる金属から製造された多層構造核燃料被覆管及び多層構造核燃料被覆管の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の実施形態に係る多層構造核燃料被覆管は、両端が開口されて内部に核燃料焼結体が挿入される収容空間が与えられるジルコニウム合金の内管と、前記内管と同軸に配置され、前記内管の外表面を取り囲むように前記内管よりも大きな直径を有する外管と、を備え、前記外管と内管は、互いに密着固定され、互いに異なる金属から形成されてもよい。
【0010】
前記外管を形成する金属は、1ppm/K〜40ppm/Kの熱膨張係数を有してもよい。
【0011】
前記外管を形成する金属は、0.0045barn〜440barnの熱中性子吸収断面積を有してもよい。
【0012】
前記外管は、前記内管よりも軟性が大きくてもよい。
【0013】
前記外管は、前記外管の外表面に配設される保護層を備えていてもよい。
【0014】
前記保護層は、前記外管を形成する金属の金属酸化物または金属窒化物であってもよい。
【0015】
本発明の他の実施形態に係る多層構造核燃料被覆管の製造方法は、核燃料焼結体が挿入される収容空間が与えられるジルコニウム合金の予備内管を前記予備内管よりも大きな直径を有する予備外管内に挿入し、前記予備内管内に充填材を充填して予備被覆管を形成する過程と、前記予備被覆管の開口された両端部を遮断部材により閉塞する過程と、前記予備被覆管の外側から内側へと圧力を加えて前記予備被覆管の直径を縮径させる過程と、を含み、前記予備外管及び前記予備内管は、互いに異なる金属から形成されてもよい。
【0016】
前記予備外管を形成する金属は、0.0045barn〜440barnの熱中性子吸収断面積を有してもよい。
【0017】
前記予備外管を形成する金属は、1ppm/K〜40ppm/Kの熱膨張係数を有してもよい。
【0018】
前記予備外管は、前記予備内管よりも軟性が大きくてもよい。
【0019】
前記圧力を加える過程後に、前記予備内管内の充填材を溶解させる過程をさらに含んでいてもよい。
【0020】
前記充填材を溶解させる過程後に、前記予備外管と予備内管が密着固定されて製造される外管の外表面に保護層を形成する過程をさらに含んでいてもよい。
【0021】
前記保護層は、プラズマ表面処理により前記外管を構成する金属が酸化または窒化されて形成されてもよい。
【0022】
前記圧力を加える過程は、前記予備被覆管の長手方向に互いに離間して配置される複数のロールユニットのそれぞれの離間距離が段階的に減少した複数のロールの間に前記予備被覆管を移動させて、前記予備被覆管の内側に加えられる圧力が次第に増加してもよい。
【0023】
前記圧力を加える過程において、前記予備外管は、前記予備内管よりも大きく収縮されて前記予備内管と互いに密着固定されてもよい。
【発明の効果】
【0024】
本発明においては、機械的な特性に優れたジルコニウム合金の内管を内側部に配設することにより、本発明に係る多層構造核燃料被覆管の機械的な強度を向上させることができ、これと同時に、ジルコニウム合金とは異なる金属からなる外管を外側部に配設することにより、冷却システムの故障などにより原子炉に冷却水を供給することができないといった事故が起きたときにも、ジルコニウムの酸化を防いで水素爆発の事故のリスクを減少させることができる。
【0025】
また、外管の外表面に保護層を形成することにより、外管がさらに優れた酸化抵抗性を有することができ、原子力事故の環境下での急激な温度の増加にも拘わらず、表面酸化の進行を防ぐことができるので、内管まで水分子が拡散されて酸化されることを有効に防ぐことができる。なお、高温酸化反応による核燃料の流出を防止して核燃料の安全性を高めて原子力の安定的な運転を可能にし、核燃料被覆管の取り替え周期を延ばして経済的な損失を予防することができる。
【0026】
なお、ジルコニウム合金からなる内管の熱膨張係数と略同じ熱膨張係数を有する金属から外管を形成することにより、高温の環境下において内管と外管との間に生じる隙間を防止することができ、これにより、核燃料から発せられる熱エネルギーを第1の系統の冷却水にさらに円滑に伝達することができて、核燃料の温度を下げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明の実施形態に係る多層構造核燃料被覆管を示す斜視図。
図2】本発明の実施形態に係る保護層が形成された多層構造核燃料被覆管を示す斜視図。
図3】本発明の他の実施形態に係る多層構造核燃料被覆管の製造方法を示す手順図。
図4】本発明の他の実施形態に係る縮管工程を行うための予備被覆管を製造する過程を示す斜視図。
図5】本発明の他の実施形態に係る縮管工程及び予備被覆管の内径の変化を示す断面図。
図6】本発明の他の実施形態に係る縮管工程後に充填材を溶解させる過程を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、添付図面に基づいて、本発明の実施形態をより詳しく説明する。しかしながら、本発明は以下に開示される実施形態に何ら限定されるものではなく、異なる様々な形態に具体化され、単にこれらの実施形態は本発明の開示を完全たるものにし、通常の知識を有する者に発明の範囲を完全に知らせるために提供されるものである。発明を詳細に説明するために、図面は誇張されてもよく、図中、同じ符号は、同じ構成要素を指し示す。
【0029】
図1は、本発明の実施形態に係る多層構造核燃料被覆管を示す斜視図であり、図2は、本発明の実施形態に係る保護層が形成された多層構造核燃料被覆管を示す斜視図である。ここで、図1の(a)は、多層構造核燃料被覆管の分解斜視図であり、図1の(b)は、多層構造核燃料被覆管の斜視図である。
【0030】
図1から図2を参照すると、本発明の実施形態に係る多層構造核燃料被覆管100は、両端が開口されて内部に核燃料焼結体が挿入される収容空間115が与えられるジルコニウム合金の内管110と、前記内管110と同軸に配置され、前記内管110の外表面を取り囲むように前記内管110よりも大きな直径を有する外管120と、を備え、前記外管120と内管110は、互いに密着固定され、互いに異なる金属から形成されてもよい。
【0031】
ジルコニウム合金の内管110は、後述する外管120の収容空間125に挿入されて配置されてもよく、一方向への両端部が貫通して内部に核燃料焼結体が挿入されるように収容空間(または、中空部)115を有する中空円筒状であってもよい。
【0032】
内管110は、外管120の収容空間125に挿入されて密着配置されるため、内管110の外径は外管120の内径よりも小さくなるように形成されてもよい。すなわち、外管120の収容空間125に内管110が挿入されるように、内管110の外径は外管120の内径よりも小さくてもよく、外管120の収容空間125に挿入されたジルコニウム合金の内管110は、多層構造核燃料被覆管100の最も内部に配置されてもよい。
【0033】
内管110の収容空間115に挿入される核燃料焼結体は、二酸化ウラニウムなどの核燃料物質を圧縮、焼結してセラミック製の円筒状の核燃料ペレットであって、核分裂を引き起こしてエネルギーを放出するものを核燃料と呼び、核燃料は、原子核が熱中性子若しくは高速中性子を吸収して核分裂をするときにエネルギーを生じさせるウラニウム(原子番号235と238)及びプルトニウム(原子番号239)などの原子からなってもよい。
【0034】
ここで、自然に存在するウラニウムを原子炉に装填される核燃料として用いるためには、適切な形状と特性を有する焼結体に加工しなければならないため、濃縮工程及び化学工程を通じてウラニウムを核燃料として用いられる最終化学的な形態である二酸化ウラニウム粉末に変換してもよく、変換された粉末状の二酸化ウラニウムを円筒状に成形し、高温処理してセラミックの核燃料焼結体として製造してもよい。
【0035】
このようにして製造された円筒状の核燃料焼結体は、核燃料被覆管の内部、すなわち、本発明の実施形態に係る内管110の収容空間115に挿入されてもよく、核燃料被覆管の両端部を円筒状の栓体で溶接密封して核燃料棒にしてもよい。原子炉に入る核燃料の最終形態は、束状の核燃料集合体であるため、上述した核燃料棒を再び複数個ずつ束ねて束状の核燃料集合体にしてもよく、核燃料集合体が原子炉の冷却水の中に装填されてはじめて、核分裂を始め、熱エネルギーを発散することになる。ここで、核分裂連鎖反応により発散される膨大な熱エネルギーは、核燃料被覆管の外側の冷却水に伝達される。
【0036】
このように、核燃料被覆管は、核燃料が安全に核分裂反応を引き起こすように保護し、放射性物質が外部に漏出することを防ぐように防護壁の役割を果たす非常に重要な構成要素であり、長期間にわたって用いなければならないため、優れた機械的特性及び小さな熱中性子吸収断面積を有さなければならない。
【0037】
本発明において内管110をなすジルコニウムは、熱中性子吸収断面積が0.18barnと非常に小さなため、核分裂を生じさせる熱中性子が核燃料被覆管に吸収される確率が減少して核分裂反応が有効に起こり、これにより、核分裂による熱エネルギーが生成可能になるので、有効に核燃料の出力を増加させることができる。なお、ジルコニウムは、小さな熱中性子吸収断面積だけではなく、原子炉の使用環境において優れた機械的強度を有するので、核燃料被覆管の材料として好適に用いられる。このとき、ジルコニウムに錫やニオブ、鉄、ニッケル、クロム、銅など少量の元素を適宜に添加してジルコニウム合金(Zircaloy)として製造する場合、機械的な強度がさらに増加して原子力の安定的な運転が可能になる。
【0038】
しかしながら、ジルコニウム合金からなる核燃料被覆管は、高温及び高圧において長時間に亘って水(HO)や水蒸気と接触している状態であるため、核燃料被覆管に甚だしい腐食現象が現れ、日本の福島原電事故のように冷却機能が失われる事故が起きたときに安全性の側面からみて非常に脆弱な特性を示すという不都合がある。すなわち、冷却システムの故障などにより原子炉に冷却水を供給することができない事故が起きる場合、ジルコニウムの酸化が急激に進んで被覆管の健全性が低下するという不都合があり、ジルコニウム二酸化及び腐食中に生成される水素ガスによる水素爆発の事故のリスクが増大されて核燃料の安全性をそれ以上保障することができなくなる。
【0039】
ジルコニウムが酸化される反応を式で表わせば、次の通りである。
【0040】
<反応式1>
Zr+2HO→ZrO+2H
【0041】
したがって、ジルコニウムから形成された核燃料被覆管は、事故が起きたときに高温酸化反応により核燃料などを外部に流出させる虞があるだけではなく、水素爆発を生じさせる虞があるため、ジルコニウム合金からなる核燃料被覆管の不都合を解決し、核燃料の安全性を大幅に高めるためにジルコニウム合金の内管110を取り囲むように内管110とは異なる金属から外管120を形成してもよい。
【0042】
外管120は、一方向への両端部が貫通して内部に収容空間(または、中空部)125を有する中空円筒状であってもよく、外管120の内部に形成された収容空間125に内管110を挿入してもよい。
【0043】
外管120は、冷却機能を失うことにより内管110が酸化されて核燃料の流出及び水素爆発が起こることを防止するように内管110と同軸に配置されて内管110の外表面を取り囲んでもよく、外管120の収容空間125に内管110が挿入されて配置されるため、外管120の内径は、内管110の外径よりも大きくてもよい。
【0044】
より詳しく説明すれば、ジルコニウム合金の内管110とは異なる金属、例えば、耐腐食特性に優れた金属から形成される外管120は、冷却機能を失うことによる高温及び高圧の雰囲気において内管110が高温の水蒸気と反応して水素を生じさせることを防止することができ、内管110の収容空間115に入っている核燃料焼結体を高温酸化から保護して原子力の運転の安定性を高めることができる。換言すれば、原子力発電所において発生する水素爆発事故は、ジルコニウムの酸化特性との連関性が非常に深いため、内管110を外側から包み込むようにジルコニウム合金の内管110とは異なる金属から外管120を形成すれば、外管120は、冷却水部材に対する酸化抵抗性を向上させることができるので、事故が起きたときに内管110まで酸化されて腐食されることを防ぐことができる。
【0045】
したがって、ジルコニウム合金の内管と外管のメリットだけを取った本発明の二重構造核燃料被覆管は、機械的強度の向上とともに、高温酸化に対する事故のリスクを有効に減少させることができ、原子炉事故から内管110及び内管110内に収容された核燃料を保護することができて、原子力の安定的な運転を可能にする。
【0046】
上述したような特性を有する外管120と外管120の収容空間125に挿入された内管110は、互いに密着固定されてもよいが、外管120と内管110は、後述する多層構造核燃料被覆管100の製造方法において、予備外管220の外側にから内側へと印加される圧力と、予備内管210の収容空間115に充填される充填材230が外部圧力から支える力により互いに密着されて固定されてもよい。すなわち、外管120は、縮管工程中に内管110の外表面に完全に密着できるように、前記外管120は、前記内管110よりも軟性が大きくてもよく、これにより、外管120は、縮管工程中に内管110との間隔を最小化させることができて互いに密着固定されることが可能になる。このような外管120と内管110の密着方法については、後述する多層構造核燃料被覆管100の製造方法を通じて詳しく説明する。
【0047】
前記外管120を形成する金属は、1ppm/K〜40ppm/Kの熱膨張係数を有してもよい。
【0048】
内管110を形成するジルコニウムの熱膨張係数は、約3.3ppm/K〜4.0ppm/Kであって、内管110と互いに密着固定される外管120を形成する金属の熱膨張係数は、ジルコニウムと略同じである1ppm/K〜40ppm/Kの熱膨張係数を有してもよい。
【0049】
核分裂反応により甚だしい熱エネルギーが放出される核燃料被覆管において内管110と外管120の熱膨張係数が互いに大きな差分値を有する場合、互いに異なる膨張率による体積の膨張が生じて内管110と外管120との間に離間空間または隙間が生じることがある。すなわち、外管120の熱膨張係数が約3.3ppm/K〜4.0ppm/Kの熱膨張係数を有するジルコニウム合金の内管110よりも非常に大きな、例えば、40ppm/Kよりも大きな熱膨張係数を有する場合、高温の環境において外管120がジルコニウム合金の内管110よりもさらに多く膨張することになり、互いに密着固定された内管110と外管120は、熱膨張係数差により内管110の外表面と外管120の内表面との間に隙間が生じてしまう。
【0050】
内管110の外表面と外管120の内表面との間に隙間が生じると、熱伝導度が低くなるため、核分裂により生成された熱が核燃料被覆管を介して冷却水まで速やかに伝達することができないだけではなく、内管110の収容空間115に収容された核燃料が冷却水よりも高い温度を有してしまって、核燃料溶融及び原子炉事故の安全性を確保することができないという不都合がある。なお、原子炉の運転が止まったとき、温度の変化により内管または外管に亀裂が生じる虞があり、これにより、破壊が生じて核燃料に含まれている放射性物質が外部に流出されるという不都合が生じる。
【0051】
したがって、ジルコニウム合金からなる内管110の熱膨張係数と略同じである1ppm/K〜40ppm/Kの熱膨張係数を有する金属から外管120を形成することにより、内管110と外管120との間の隙間の発生を防止して、核燃料被覆管、さらに正確には、内管110の収容空間115に収容された核燃料焼結体から発せられる熱エネルギーを核燃料被覆管の外の冷却水にさらに円滑に伝達することができ、これにより、核燃料出力の向上及び核燃料焼結体の温度の降温を図ることができる。
【0052】
前記外管120を形成する金属は、0.0045barn〜440barnの熱中性子吸収断面積を有してもよい。
【0053】
外管120は、0.0045barn〜440barnの熱中性子吸収断面積を有する金属から形成されてもよいが、熱中性子吸収断面積とは、中性子吸収に対する断面積のことをいう。すなわち、熱中性子または高速中性子などの中性子は、電荷を有さないため、容易に原子核に近づいて各種の相互作用を引き起こすが、中でも、標的原子核に吸収される吸収反応に対する断面積を中性子吸収断面積と称する。中性子吸収断面積の単位としては、10−28またはbarnが用いられる。
【0054】
先ず、核分裂は、ウラニウム、プルトニウムのように重い原子核に中性子を照斜すれば、原子核が中性子を吸収しながら2つに割れて核分裂が起こり、原子核が2つに分裂されると同時に、多くの熱エネルギーと2〜3個の中性子が一緒に出る。
【0055】
核分裂反応を式で表わせば、反応式2の通りである。
【0056】
<反応式2>
原子核+中性子→核分裂生成物(放射性物質)+2〜3個の中性子+熱エネルギー
【0057】
換言すれば、原子核と中性子とが反応しながら核分裂が起こり、一回の核分裂の際に放出された2〜3個の中性子は減速材によりエネルギーを失って減速される。原子核から放出されて減速された中性子(熱中性子)は、他の原子核にぶつかりながら再び核分裂を引き起こし、このような熱中性子により繰り返し的な核分裂反応(核分裂連鎖反応)が起こり、この過程において膨大な熱エネルギーが生じてしまう。
【0058】
このように、大量エネルギーを生産するための核分裂連鎖反応が起こるためには、減速された熱中性子が原子核に吸収されなければならないが、外管120を形成する金属が440barnよりも大きな熱中性子吸収断面積を有する場合、核分裂を生じさせる熱中性子が核燃料被覆管に吸収される確率が増加するため、核分裂反応が起こる確率が減少され、これにより、核分裂により生成された熱エネルギーが生成されず、核燃料の出力が低下するという不都合がある。これに対し、外管120を形成する金属が0.0045barnよりも小さな熱中性子吸収断面積を有する場合、核分裂反応に対しては有効であるといえるものの、実際に外管120を成形して製造することが困難であるという不都合が生じる。
【0059】
したがって、本発明の実施形態に係る外管120を形成する金属は、0.0045barn〜440barnの熱中性子吸収断面積を有してもよく、0.0045barn〜440barnの熱中性子吸収断面積を有する金属としては、例えば、Mg(0.059barn)、Si(0.13barn)、Pb(0.17barn)、Al(0.23barn)、Zn(1.1barn)、Nb(1.1barn)、Ba(1.2barn)、Sr(1.2barn)、Ge(2.3barn)、Fe(2.4barn)、Mo(2.4barn)、Cr(2.9barn)、Ti(3.3barn)、Cu(3.6barn)、Ni(4.5barn)、Te(4.5barn)、Sb(6.7barn)、Mn(13barn)、W(19barn)、Ta(21barn)、Co(35barn)、Hf(115barn)、Ir(440barn)などが挙げられる。外管120を形成する金属は、前記一つの金属に限定されず、0.0045barn〜440barnの熱中性子吸収断面積を有する金属であれば、外管120を形成することができる。
【0060】
本発明に係る外管120が1ppm/K〜40ppm/Kの熱膨張係数、0.0045barn〜440barnの熱中性子吸収断面積及びジルコニウムよりも高い軟性をいずれも満たせば、核燃料被覆管として非常に優れた効果を示すことができるが、3つの条件をいずれも満たさなくても、必要に応じて、選択的に外管120に必要な特性を与えることができる。
【0061】
本発明の他の実施形態によれば、外管120は、さらに優れた酸化抵抗性を有するために、前記外管120の外表面に配設される保護層121を備えていてもよく、前記保護層121は、前記外管120を形成する金属の金属酸化物または金属窒化物であってもよい。
【0062】
保護層121は、外管120を形成する金属、例えば、アルミニウムの金属酸化物である酸化アルミニウムまたはアルミニウムの金属窒化物である窒化アルミニウムであってもよく、外管120の外表面に緻密に且つ薄肉に形成された保護層121は、外管120の酸化抵抗性をさらに向上させて非常に優れた腐食抵抗特性を持たせることができる。
【0063】
このとき、事故環境または高温の水蒸気HO環境において水分子が外管120を通過して内管110の外表面まで流れ込んで内管110のジルコニウムと反応することを防止するためには、金属酸化物からなる保護層121がさらに有効であるが、金属窒化物からなる保護層121もまた外管120の外表面に緻密に形成されて優れた高硬度特性を有するので、原子力の安定的な運転を可能にする。
【0064】
本発明の一実施形態によれば、外管120を形成するアルミニウムが酸化されて形成された酸化アルミニウムの保護層121は、薄肉且つ緻密な形状にアルミニウムからなる外管の表面に形成されるため、酸化の進行を外管120の表面に制限して水分子が外管120を通過して内管110の外表面まで入り込むことを防止することができ、これにより、内管110のジルコニウムが水分子と反応して水素を生じさせる酸化反応を抑えることができ、酸化及び腐食から内管110の収容空間115に入っている核燃料焼結体を保護して原子力の運転の安定性を高めることができる。
【0065】
したがって、機械的強度に優れたジルコニウム合金の内管110を内側部に配設することにより、核燃料被覆管の機械的強度を向上させることができ、これと同時に、ジルコニウム合金とは異なる金属及び金属酸化物から形成された外管120を外側部に配設することにより、原子炉において冷却材が失われるという事故が起きても金属酸化膜の保護層121はそれ以上酸化されないので、内管110及び核燃料を保護することができる。
【0066】
以下においては、上述した多層構造核燃料被覆管100についてもう一回簡略に定義した後、本発明の実施形態に係る多層構造核燃料被覆管100の製造方法について説明する。
【0067】
前述したように、多層構造核燃料被覆管100は、外管120内にジルコニウム合金の内管110が挿入され、ジルコニウム合金の内管110は、核燃料の1次的な防護の役割を果たすとともに、多層構造核燃料被覆管100の機械的強度を向上させることができ、ジルコニウム合金の内管110とは異なる金属から形成された外管120は、冷却システムの故障などの事故から内管110の腐食を防ぐことができるので、原子炉の正常的な運転時はもとより、事故が起きたときにも原子力の運転の安全性を向上させることができる。
【0068】
図3は、本発明の他の実施形態に係る多層構造核燃料被覆管の製造方法を示す手順図であり、図4は、本発明の他の実施形態に係る縮管工程を行うための予備被覆管を製造する過程を示す斜視図である。また、図5は、本発明の他の実施形態に係る縮管工程及び予備被覆管の内径の変化を示す断面図であり、図6は、本発明の他の実施形態に係る縮管工程後に充填材を溶解させる過程を示す斜視図である。
【0069】
図3から図6を参照すると、本発明の他の実施形態に係る多層構造核燃料被覆管100の製造方法は、核燃料焼結体の挿入される収容空間が与えられるジルコニウム合金の予備内管210を前記予備内管210よりも大きな直径を有する予備外管220内に挿入し、前記予備内管210内に充填材230を充填して予備被覆管200を形成する過程と、前記予備被覆管200の開口された両端部を遮断部材240により閉塞する過程と、前記予備被覆管200の外側から内側へと圧力を加えて前記予備被覆管200の直径を縮径させる過程と、を含み、前記予備外管220及び前記予備内管210は、互いに異なる金属から形成されてもよい。なお、前記圧力を加える過程後に、前記予備内管210内の充填材230を溶解させる過程をさらに含んでいてもよい。
【0070】
先ず、核燃料焼結体の挿入される収容空間が与えられ、機械的強度に優れたジルコニウム合金から製造された予備内管210を用意し、核燃料被覆管の腐食抵抗性を向上可能な予備外管220を用意する(S100)。本発明において、予備内管210としては、ジルコニウム合金を用いてもよく、予備外管220としては、0.0045barn〜440barnの熱中性子吸収断面積を有し、1ppm/K〜40ppm/Kの熱膨張係数を有する金属を用いてもよい。このとき、予備外管220は、予備内管210よりも軟性が大きくてもよい。
【0071】
より詳しく説明すれば、前記予備外管220を形成する金属は、0.0045barn〜440barnの熱中性子吸収断面積を有してもよいが、熱中性子吸収断面積とは、標的原子核に熱中性子が吸収される吸収反応に対する断面積のことをいう。予備内管210の収容空間に核燃料焼結体が挿入され、核燃料焼結体に含まれている核燃料、例えば、ウラニウム−235の原子核に中性子を照射すれば、原子核が中性子を吸収しながら2つに割れる核分裂が起こり、核分裂が起こりながら、多くの熱エネルギーとともに2〜3個の中性子が出る。
【0072】
換言すれば、原子核と中性子とが反応しながら核分裂が起こり、一回の核分裂の際に放出された2〜3個の中性子は減速材によりエネルギーを失って減速される。減速された中性子(熱中性子)は、再び他の原子核にぶつかりながら再び核分裂を引き起こし、このような熱中性子により核分裂連鎖反応が起こる。
【0073】
このように、大量エネルギーを生産するための核分裂連鎖反応が起こるためには、減速された熱中性子が原子核に吸収されなければならないが、予備外管220を形成する金属が440barnよりも大きな熱中性子吸収断面積を有する場合、核分裂を生じさせる熱中性子が核燃料被覆管に吸収される確率が増加するため、核分裂反応が起こる確率が減少され、これにより、核分裂により生成された熱エネルギーが生成されず、出力が低下するという不都合がある。これに対し、予備外管220を形成する金属が0.0045barnよりも小さな熱中性子吸収断面積を有する場合、核分裂反応に対しては有効であるといえるものの、実際に予備外管220を成形して製造することが困難であるという不都合が生じる。
【0074】
また、前記予備外管220を形成する金属は、1ppm/K〜40ppm/Kの熱膨張係数を有してもよいが、予備内管210を形成するジルコニウムの熱膨張係数は、約3.3ppm/K〜4.0ppm/Kであって、後述する縮管工程を通じて予備内管210と互いに密着固定される予備外管220を形成する金属の熱膨張係数は、ジルコニウムと略同じである1ppm/K〜40ppm/Kの熱膨張係数を有してもよい。
【0075】
核分裂反応により甚だしい熱エネルギーが放出される核燃料被覆管において予備内管210と予備外管220の熱膨張係数が互いに異なる場合、互いに異なる膨張率による体積の膨張が生じて予備内管210と予備外管220との間に隙間が生じることがある。
【0076】
予備内管210の外表面と予備外管220の内表面との間に隙間が生じると、熱伝導度が低くなるため、核分裂により生成された熱が核燃料被覆管を介して冷却水まで速やかに伝達することができないだけではなく、予備内管210の収容空間に収容された核燃料が冷却水よりも高い温度を有してしまって、原子炉事故の安全性を確保することができないという不都合がある。
【0077】
したがって、ジルコニウム合金からなる予備内管210の熱膨張係数と略同じである1ppm/K〜40ppm/Kの熱膨張係数を有する金属から形成された予備外管220を設けることにより、核分裂による高温の環境においても予備内管210と予備外管220との間の隙間の発生を予め防止して、予備内管210の収容空間に収容された核燃料焼結体から発せられる熱エネルギーを冷却水にさらに円滑に伝達して核燃料の出力を向上させることができる。
【0078】
前述した特性を有する予備外管220及び予備内管210を設けた後、核燃料焼結体の挿入される収容空間が与えられるジルコニウム合金の予備内管210を予備内管210よりも大きな直径を有する予備外管220内に挿入し(S200)、予備内管210内に充填材230を充填して予備被覆管200を形成してもよい(S300)。
【0079】
予備内管210は、図3の(a)に示すように、予備外管220の収容空間に挿入されてもよいが、このとき、予備外管220と予備外管220内に挿入された予備内管210との間には所定の離間間隔が存在してしまう。すなわち、予備内管210の外径が予備外管220に挿入できる程度の直径を有さなければならないため、予備内管210の外径は、予備外管220の収容空間直径に対して所定の小さな値を有してもよい。
【0080】
従来には、このような複数の管間の離間を解消するために、マンドレルを挿入した後、引き抜きながら外部から圧力を加えることにより、複数の多重管間の密着力を増加させたり、直径を縮径させたりし、引っ張る方法を用いていた。しかしながら、このような方法は、予備内管210内にマンドレルを挿入した状態で行われ、予備内管210とマンドレルとの摩擦により内管110がダメージを受けたり欠陥が生じたりするという不都合が来たされた。
【0081】
一方、本発明の実施形態に係る縮管工程は、たとえ予備内管210及び予備外管220間に離間間隔が存在するとしても、予備内管210の欠陥の発生を抑えたり防止したりし、予備外管220と予備内管210を密着させることができる。すなわち、従来のマンドレルの構成要素が不要であり、予備内管210と構成要素との摩擦がないので、予備内管210が摩擦により引きちぎれたり破損されたりして欠陥が生じることを抑えたり防止したりすることができる。
【0082】
このため、予備内管210内には、縮管工程において予備内管210と予備外管220との密着力を増加させたり、直径を縮径させたり、引き抜いたりするために加えられる圧力による変形及び欠陥の発生を抑えるために、図4の(b)、(c)に示すように、充填材230を充填させて予備被覆管200を形成することができる。
【0083】
充填材230は、予備被覆管200を構成するために予備内管210内に充填されるものであって、より具体的には、予備外管220と予備内管210との密着力を増加させたり、製造される多層構造核燃料被覆管100の直径を変化させたり、引き抜いたりするための縮管工程が行われるとき、予備被覆管200に加えられる圧力を緩衝させる役割を果たすことができる。すなわち、充填材230は、図4の(b)、(c)に示すように、予備内管210の収容空間に満充填されてもよく、縮管工程において予備被覆管200の外側から予備被覆管200の内側へと加えられる圧力に対する支承力を示すようにしてもよい。
【0084】
予備内管210の収容空間に充填するとき、大きな塊状の固体も、予備内管210に傷付きが生じることを減少させるための充填材230として、水溶性及び化学溶液に容易に溶解可能な可溶性を有する微粉パウダーを用いることができ、微粉パウダーは、縮管工程が完了した後、予備被覆管200の充填材230を溶解させるときに水溶液及び化学溶液などの溶解用溶液を予備内管210内の充填材230に万遍なく浸透させることができる。
【0085】
図5の手順図のように、予備被覆管200が形成されれば、予備被覆管200の予備外管220及び予備内管210間の密着力を増加させ、所望の形状、直径及び長さを有するように多層構造核燃料被覆管100を製造するための縮管工程を開始してもよい(S400)。
【0086】
このとき、縮管工程のために、予備被覆管200の開口された両端部を遮断部材240により閉塞してもよい(S410)。
【0087】
予備被覆管200の両端部を閉塞することは、予備外管220及び予備内管210の両端部の露出領域を遮断部材240を介して外部と遮断することにより行われるが、この過程は、予備外管220に予備内管210を挿入した後、予備外管220と予備内管210の開放された両端部のうちの一方の端部の露出部分を先に遮断部材240で覆った後、充填材230を充填し、残りの他方の端部の露出部分を遮断部材240で覆って閉塞してもよい。
【0088】
遮断部材240は、図5に示すように、予備被覆管200の両端部の露出部分を覆って両端部を閉塞することができるものであって、遮断部材240で予備被覆管200の予備外管220及び予備内管210の露出領域を外部と遮断することにより、予備内管210内の充填材230は外に抜け出ずに安定的な縮管工程を行うことができる。遮断部材240としては、両端部の露出部位が覆える種々の部材が使用可能である。
【0089】
予備被覆管200の開口された両端部を遮断部材240で閉塞した後、予備被覆管200の外側から内側へと圧力を加える縮管工程を通じて予備被覆管200の直径を縮径させることができ、前記圧力を加える過程において、前記予備外管220は、前記予備内管210よりも大きく収縮されて前記予備内管210と互いに密着固定されてもよい(S420)。
【0090】
また、前記圧力を加える過程は、前記予備被覆管200の長手方向に互いに離間して配置される複数のロールユニット310a、310b、310cのそれぞれの離間距離が段階的に減少した複数のロールの間に前記予備被覆管200を移動させて、前記予備被覆管200の内側に加えられる圧力が次第に増加可能である。
【0091】
予備被覆管200は、縮管装置300を通じて予備外管220と予備内管210との離間距離を減少させて互いに密着固定させ、圧縮及び引抜を通じて予備被覆管200の直径を縮径させ、長さを増加させることができる。ここで、縮管工程は、図5に基づいて説明する。
【0092】
縮管装置300は、外部からローラーで予備被覆管200を圧縮することにより、予備被覆管200の長さを長くしたり、直径を縮径させたりすることができ、外部から圧力を加えることにより、予備被覆管200の予備外管220及び予備内管210を互いに密着固定させることができる。このとき、縮管装置300は、予備被覆管200の長手方向(すなわち、一方向)を基準として互いに離間して配置される少なくとも一つ以上のロールユニット310a、310b、310cを備えていてもよい。すなわち、本発明においては、予備被覆管200の長手方向を基準として第1のロールユニット310a、第2のロールユニット310b及び第3のロールユニット310cが互いに離間して配備される。このとき、それぞれのロールユニット310a、310b、310cは、予備被覆管200を間に挟んで予備被覆管200の外側面に接触される第1のロール311a、311b、311c及び第2のロール312a、312b、312cを備えて、第1のロール311a、311b、311c及び第2のロール312a、312b、312cの間に予備被覆管200が進むことにより、予備被覆管200の外側から内側へと押し出す圧力を加えることができる。すなわち、第1のロール311a、311b、311c及び第2のロール312a、312b、312cは、予備被覆管200を基準として予備被覆管200の外側面にそれぞれ対向するように接触されて配備されてもよく、予備被覆管200が第1のロール311a、311b、311c及び第2のロール312a、312b、312cの間を通るときに第1のロール311a、311b、311c及び第2のロール312a、312b、312cと接触して加えられる圧力により予備被覆管200の直径を縮径させたり、予備外管220と予備内管210とを密着接触させたりすることができる。
【0093】
ここで、図5の(a)に示すように、複数のロールユニット310a、310b、310cを通った予備被覆管200の地点をA、B、Cと分類し、それぞれの直径及び厚さについて述べると、図5の(b)に示すように、予備被覆管200が経たロールユニット310a、310b、310cが増加するにつれて、予備被覆管200の直径、すなわち、予備内管210収容空間の直径がD1からD3へと次第に縮径されることが分かる。これは、複数のロールユニット310a、310b、310cのそれぞれの第1のロール311a、311b、311c及び第2のロール312a、312b、312c間の離間距離が段階的に減少することにより、予備被覆管200に加えられる圧力が次第に増加することにより変形可能である。
【0094】
本発明においては、ロールユニット310a、310b、310cを3つ備え、それぞれのロールユニット310a、310b、310cは、第1のロール311a、311b、311c及び第2のロール312a、312b、312cという2つのロールを構成することを開示したが、ロールの数及びロールユニット310a、310b、310cの数はこれに何ら限定されることがなく、種々の数に変更可能である。なお、本発明の図5の(b)においては、予備被覆管200の直径が大幅に縮径されることを示しているが、これは、直径の変化を説明するための違いが感じられるように示すものである。
【0095】
一方、縮管工程により予備外管220と予備内管210との密着力を増加させて互いに密着固定する方法について、図5の(a)に基づいてより具体的に説明すれば、予備外管220は、第1のロール311a、311b、311c及び第2のロール312a、312b、312cの間を移動することにより、ロールが加える圧力により予備被覆管200の内側に圧力が加えられる。このとき、予備被覆管200の予備内管210内に存在する充填材230は、予備内管210の収容空間に満充填されているため、内側に加えられる圧力から予備内管210を支えることになる。すなわち、相対的に述べると、充填材230は、外部から加えられる圧力に対して予備内管210を外側に支える力を有しているため、予備内管210が一定の位置にあり、予備外管220は、外部の圧力により予備内管210よりも大きく収縮されて予備内管210側に押されるため、予備外管220と予備内管210は、互いに密着固定されることが可能である。すなわち、前記予備外管220は、前記予備内管210よりも軟性が大きくてもよいが、予備外管220は、予備被覆管200に圧力が加えられる間に予備内管210の外表面に完全に密着できるように予備内管210よりも軟性が大きくてもよく、予備外管220は、予備内管210よりも十分な軟性を有しているので、予備内管210との間隔を最小化させることができて、予備内管210と互いに密着固定されることが可能である。
【0096】
前述した方法により縮管工程が完了すれば(S500)、図6の(a)に示すように、予備被覆管200の閉塞された両端部を開放して(S510)、予備被覆管200の両端部が外部に露出された状態で予備内管210内の充填材230を溶解させて除去してもよい(S520)。すなわち、予備被覆管200の両端部に配備された遮断部材240を除去して予備被覆管200の両端部を開放し、図6の(b)に示すように、溶液Sの入れられた容器Lに浸漬させて充填材230を溶解させてもよい。
【0097】
充填材230を溶解するための溶液としては、上述した溶液(水溶性溶液、化学性溶液)を用いることができ、本発明においては、予備被覆管200を溶液に浸漬させて充填材230を除去していたが、これに限定されず、予備内管210の収容空間に溶液を注ぎ込んで充填材230の間に溶液を浸透させて充填材230を溶解させてもよい。
【0098】
充填材を用いた縮管工程により予備内管210と予備外管220が互いに密着固定された予備被覆管200の充填材230を溶解させて除去することにより、内管110と外管120の密着力が増加して互いに密着固定された被覆管が得られる。
【0099】
前記充填材230を溶解させる過程後に、前記予備外管220と予備内管210が密着固定されて製造される外管120の外表面に保護層121を形成する過程をさらに含んでいてもよく(S600)、前記保護層121は、プラズマ表面処理により前記外管120を構成する金属が酸化または窒化されて形成されてもよい。
【0100】
図2を再び参照すると、充填材230を溶解させた後、予備外管220と予備内管210が互いに密着固定されて製造された被覆管の外表面、さらに詳しくは、外管120の外表面に保護層121を形成してもよい。保護層121は、金属酸化膜または金属窒化膜であってもよいが、このような金属酸化膜または金属窒化膜を形成するための一般的な表面処理工法は、約600℃〜1000℃の高温工程において行われてもよい。しかしながら、高温において外管120の表面処理が施されれば、被覆管の機械的な特性及び化学的な特性が低下するという不都合が生じるため、被覆管の機械的な特性の変化及び結晶構造の変化を極力抑えられる低温工程が求められる。
【0101】
このことから、本発明においては、金属酸化膜または金属窒化膜の形成のために低温工程のプラズマ表面処理方法を用いている。プラズマ表面処理は、プラズマの高いエネルギーが被覆管の熱処理温度を約200℃〜500℃ほど有効に下げることができるので、低温においても外管120の表面処理を施すことが可能になり、その結果、被覆管の機械的な特性及び結晶構造の変化を極力抑えることができる。
【0102】
したがって、本発明に係る保護層121は、プラズマ表面処理により形成可能であり、プラズマ環境におけるガス粒子(例えば、O)と外管120を形成する金属とを反応させて外管120の外表面をなしている金属を金属酸化物に変化させることができる。換言すれば、低温工程のプラズマ表面処理で外管120を形成する金属の外表面に薄肉且つ緻密な金属酸化物の保護層121を形成することにより、被覆管の機械的特性を保持することができるとともに、外管120を形成する金属と酸素または水蒸気との接触を防止して外管120のさらに優れた腐食防止特性を与えることができる。保護層121を形成することにより現れる効果は、前術した保護層121の効果と同様であるため、繰り返される説明(または、効果)は省略する。
【0103】
このように、本発明の詳細な説明の欄においては、具体的な実施形態について説明したが、本発明の範囲から逸脱しない限度内において種々に変形可能である。よって、本発明の範囲は、説明された実施形態に制限されて定められてはならず、特許請求の範囲だけではなく、この特許請求の範囲と均等なものにより定められるべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6