特許第6880229号(P6880229)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6880229
(24)【登録日】2021年5月7日
(45)【発行日】2021年6月2日
(54)【発明の名称】リモートキーレスエントリーシステム
(51)【国際特許分類】
   E05B 49/00 20060101AFI20210524BHJP
   B60R 25/24 20130101ALI20210524BHJP
【FI】
   E05B49/00 J
   B60R25/24
【請求項の数】4
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2019-553702(P2019-553702)
(86)(22)【出願日】2018年8月30日
(86)【国際出願番号】JP2018032091
(87)【国際公開番号】WO2019097807
(87)【国際公開日】20190523
【審査請求日】2020年3月6日
(31)【優先権主張番号】特願2017-219365(P2017-219365)
(32)【優先日】2017年11月14日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000010098
【氏名又は名称】アルプスアルパイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】野崎 隆
【審査官】 藤脇 昌也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−121297(JP,A)
【文献】 特開2012−67463(JP,A)
【文献】 特開2014−218176(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05B 1/00 − 85/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車載器制御部と、車載器信号を送信する車載器送信部と、携帯機信号を受信する車載器受信部と、を備えた車載器と、
携帯機制御部と、加速度センサと、前記車載器信号を受信する携帯機受信部と、前記携帯機信号を送信する携帯機送信部と、を備えた携帯機と、
を備えたリモートキーレスエントリーシステムであって、
前記携帯機制御部は、前記車載器信号に基づいて、前記車載器から前記携帯機までの距離を算出し、前記加速度センサが計測した加速度に基づいて、前記携帯機の第1移動距離を算出し、前記携帯機送信部に少なくとも前記距離を含む前記携帯機信号を送信させ、
前記車載器制御部は、前記携帯機信号に含まれる前記距離に基づいて、前記携帯機の第2移動距離を算出し、
前記第1移動距離と、前記第2移動距離と、に基づいて、リレーアタックが行われたか判定する
リモートキーレスエントリーシステム。
【請求項2】
前記車載器制御部及び前記携帯機制御部の少なくとも一方は、前記第1移動距離と前記第2移動距離との差が第1閾値以上である場合、リレーアタックが行われたと判定する
請求項1に記載のリモートキーレスエントリーシステム。
【請求項3】
前記車載器は、車載器気圧センサを更に備え、
前記携帯機は、携帯機気圧センサを更に備え、
前記携帯機制御部は、前記携帯機気圧センサが計測した気圧に基づいて、前記携帯機の高度を算出し、
前記車載器制御部は、前記車載器気圧センサが計測した気圧に基づいて、前記車載器の高度を算出し、
前記携帯機の高度と、前記車載器の高度と、に基づいて、リレーアタックが行われたか判定する
請求項1又は請求項2に記載のリモートキーレスエントリーシステム。
【請求項4】
前記車載器制御部及び前記携帯機制御部の少なくとも一方は、前記携帯機の高度と前記車載器の高度との差が第2閾値以上である場合、リレーアタックが行われたと判定する
請求項3に記載のリモートキーレスエントリーシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リモートキーレスエントリーシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の解錠及び施錠を無線で制御するシステムとして、リモートキーレスエントリーシステム(以下「RKEシステム」という。)が利用されている。RKEシステムでは、車載器が定期的に無線信号を送信し、車両に接近したユーザの携帯機が当該無線信号に応答することにより、車両の解錠及び施錠が制御される。
【0003】
近年、RKEシステムを搭載した車両に対するリレーアタックが問題となっている。リレーアタックは、不正者が中継器を利用して、車載器からの無線信号を正規のユーザの携帯機まで中継することにより、正規のユーザが車両から離れているにもかかわらず、車両を解錠させる解錠方法である。このようなリレーアタックへの対策として、携帯機にモーションセンサを搭載し、当該モーションセンサにより計測された携帯機の移動の有無に基づいて、リレーアタックを検出する方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017−088016号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、近年、リレーアタックの高度化により、携帯機の移動の有無だけではリレーアタックを検出することが困難になってきた。
【0006】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、リレーアタックを精度よく検出できるRKEシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一実施形態に係るリモートキーレスエントリーシステムは、車載器制御部と、車載器信号を送信する車載器送信部と、携帯機信号を受信する車載器受信部と、を備えた車載器と、携帯機制御部と、加速度センサと、前記車載器信号を受信する携帯機受信部と、前記携帯機信号を送信する携帯機送信部と、を備えた携帯機と、を備えたリモートキーレスエントリーシステムであって、前記携帯機制御部は、前記車載器信号に基づいて、前記車載器から前記携帯機までの距離を算出し、前記加速度センサが計測した加速度に基づいて、前記携帯機の第1移動距離を算出し、前記携帯機送信部に少なくとも前記距離を含む前記携帯機信号を送信させ、前記車載器制御部は、前記携帯機信号に含まれる前記距離に基づいて、前記携帯機の第2移動距離を算出し、前記第1移動距離と、前記第2移動距離と、に基づいて、リレーアタックが行われたか判定する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の各実施形態によれば、リレーアタックを精度よく検出できるRKEシステムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】RKEシステムの一例を示す図。
図2】車載器信号及び携帯機信号の一例を示す図。
図3】RKEシステムの動作の概要を説明する図。
図4】リレーアタックの概要を説明する図。
図5】携帯機制御部の機能構成の一例を示す図。
図6】車載器制御部の機能構成の一例を示す図。
図7】携帯機の動作の一例を示すフローチャート。
図8】車載器の動作の一例を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の各実施形態について、添付の図面を参照しながら説明する。なお、各実施形態に係る明細書及び図面の記載に関して、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重畳した説明を省略する。
【0011】
一実施形態に係るRKEシステム100について、図1図8を参照して説明する。本実施形態に係るRKEシステム100は、無線信号により車両を施錠及び解錠するためのシステムである。
【0012】
まず、RKEシステム100のハードウェア構成について説明する。図1は、RKEシステム100の一例を示す図である。図1のRKEシステム100は、携帯機1と、車載器2と、を備える。
【0013】
携帯機1は、RKEシステム100の正規のユーザ(車両のドライバなど)が携帯する装置である。図1の携帯機1は、携帯機受信部11と、携帯機送信部12と、携帯機制御部13と、加速度センサ14と、携帯機気圧センサ15と、を備える。
【0014】
携帯機受信部11は、車載器2が送信した車載器信号S2(無線信号)を受信するハードウェアである。車載器信号S2は、例えば、125kHzのLF(Low Frequency)信号であるが、これに限られない。また、車載器信号S2の通信可能距離は、例えば、1m以下であるが、これに限られない。携帯機受信部11は、車載器信号S2(無線信号)を電気信号に変換するアンテナと、車載器信号S2(電気信号)に復調などの所定の信号処理を施す受信回路と、を備える。受信回路は、ローノイズアンプ、フィルタ、ミキサ、及び復調回路などを含む。携帯機受信部11は、所定の信号処理を施した信号を携帯機制御部13に入力する。なお、受信回路は、独立したIC(Integrated Circuit)であってもよいし、携帯機制御部13に組み込まれていてもよい。
【0015】
携帯機送信部12は、携帯機信号S1を無線で送信するハードウェアである。携帯機信号S1は、例えば、315MHzのUHF(Ultra High Frequency)信号であるが、これに限られない。また、携帯機信号S1の通信可能距離は、例えば、20m以下であるが、これに限られない。携帯機送信部12は、携帯機制御部13が生成した携帯機信号S1(電気信号)に変調などの所定の処理を施す送信回路と、携帯機信号S1(電気信号)を無線信号に変換するアンテナと、を備える。送信回路は、変調回路、ミキサ、フィルタ、及びパワーアンプなどを含む。なお、送信回路は、独立したICであってもよいし、携帯機制御部13に組み込まれていてもよい。また、携帯機受信部11及び携帯機送信部12が1つのICに含まれてもよい。
【0016】
携帯機制御部13は、携帯機1の全体の動作を制御する回路であり、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、及びRAM(Random Access Memory)を含む。CPUは、プログラムを実行することにより携帯機1の各構成を制御し、携帯機制御部13の機能を実現する。ROMは、CPUが実行するプログラムや各種のデータを記憶する。ROMには、携帯機1の識別情報である携帯機IDと、当該携帯機1と対応する車載器2の識別情報である車載器IDと、が予め記憶される。RAMは、CPUに作業領域を提供する。携帯機制御部13は、例えば、マイコンであるが、これに限られない。
【0017】
加速度センサ14は、携帯機1の加速度を定期的に計測し、計測した加速度を携帯機制御部13に入力する。
【0018】
携帯機気圧センサ15は、携帯機1の周囲の気圧を定期的に計測し、計測した気圧を携帯機制御部13に入力する。
【0019】
なお、携帯機1の構成は、図1の例に限られない。携帯機1は、携帯機受信部11、携帯機送信部12、携帯機制御部13、加速度センサ14、及び携帯機気圧センサ15に電力を供給する電池や、ユーザが車両の解錠及び施錠を手動で操作するための解錠ボタン及び施錠ボタンなどを備えてもよい。
【0020】
車載器2は、携帯機1が送信した携帯機信号S1に応じて、車両の施錠及び解錠を制御する装置であり、車両に搭載される。車載器2は、車両に搭載されたバッテリから電力を供給される。図1の車載器2は、車載器受信部21と、車載器送信部22と、車載器制御部23と、車載器気圧センサ24と、を備える。
【0021】
車載器受信部21は、携帯機1が送信した携帯機信号S1(無線信号)を受信するハードウェアである。車載器受信部21は、携帯機信号S1(無線信号)を電気信号に変換するアンテナと、携帯機信号S1(電気信号)に復調などの所定の信号処理を施す受信回路と、を備える。受信回路は、ローノイズアンプ、フィルタ、ミキサ、及び復調回路などを含む。車載器受信部21は、所定の信号処理を施した信号を車載器制御部23に入力する。なお、受信回路は、独立したICであってもよいし、車載器制御部23に組み込まれていてもよい。
【0022】
車載器送信部22は、車載器信号S2を無線で送信するハードウェアである。車載器送信部22は、車載器制御部23が生成した車載器信号S2(電気信号)に変調などの所定の処理を施す送信回路と、車載器信号S2(電気信号)を無線信号に変換するアンテナと、を備える。送信回路は、変調回路、ミキサ、フィルタ、及びパワーアンプなどを含む。なお、送信回路は、独立したICであってもよいし、車載器制御部23に組み込まれていてもよい。また、車載器受信部21及び車載器送信部22が1つのICに含まれてもよい。
【0023】
車載器制御部23は、車載器2の全体の動作を制御する回路であり、CPU、ROM、及びRAMを含む。CPUは、プログラムを実行することにより車載器2の各構成を制御し、車載器制御部23の機能を実現する。ROMは、CPUが実行するプログラムや各種のデータを記憶する。ROMには、車載器2の識別情報である車載器IDと、当該車載器2と対応する携帯機1の識別情報である携帯機IDと、が予め記憶される。RAMは、CPUに作業領域を提供する。車載器制御部23は、例えば、マイコンであるが、これに限られない。
【0024】
また、車載器制御部23は、CAN(Controller Area Network)などの車載ネットワークに接続され、車載ネットワークを介して接続されたドア制御部3と通信し、ドア制御部3に車両の施錠及び解錠を要求する。ドア制御部3は、車両のドアを施錠及び解錠する回路であり、車載器制御部23からの要求に応じてドアを施錠又は解錠する。ドア制御部3は、例えば、マイコンであるが、これに限られない。
【0025】
車載器気圧センサ24は、車載器2の周囲の気圧を定期的に計測し、計測した気圧を車載器制御部23に入力する。
【0026】
なお、車載器2の構成は、図1の例に限られない。車載器2は、車載器受信部21、車載器送信部22、車載器制御部23、及び車載器気圧センサ24に電力を供給する電池を備えてもよいし、車載ネットワークを介して、ドア制御部以外の車載部品(エンジン制御部など)と通信可能であってもよい。
【0027】
次に、車載器信号S2及び携帯機信号S1について説明する。図2は、車載器信号S2及び携帯機信号S1の一例を示す図である。
【0028】
車載器信号S2は、プリアンブルと、データ部と、RSSI(Received Signal Strength Indicator)部と、を含む。プリアンブルは、その信号が車載器信号S2であることを示す所定のパターンを有する信号部分である。データ部は、情報(制御コマンドやデータなど)を有する信号部分である。本実施形態において、車載器信号S2のデータ部が有する情報には、携帯機1に応答を要求する応答要求と、車載器2が記憶している車載器IDと、が含まれる。RSSI部は、車載器信号S2のRSSI値を算出するための所定のパターンを有する信号部分である。
【0029】
携帯機信号S1は、プリアンブルと、データ部と、を含む。プリアンブルは、その信号が携帯機信号S1であることを示す所定のパターンを有する信号部分である。データ部は、情報(制御コマンドやデータなど)を有する信号部分である。本実施形態において、携帯機信号S1のデータ部が有する情報には、車載器2に車両の解錠を要求する解錠要求と、携帯機1が記憶している携帯機IDと、携帯機1が車載器信号S2のRSSI部のRSSI値に基づいて算出した携帯機1から車載器2までの距離Lと、第1移動距離L1と、携帯機1の高度H1と、が含まれる。第1移動距離L1及び高度H1については後述する。
【0030】
次に、RKEシステム100の動作及びリレーアタックの概要について説明する。図3は、RKEシステム100の動作の概要を説明する図である。本実施形態に係るRKEシステム100は、いわゆるスマートキーレスエントリーシステムであり、車両に搭載された車載器2が、応答要求を含む車載器信号S2を定期的に送信する。正規のユーザUが車両に接近すると、ユーザUが所持している携帯機1が車載器信号S2を受信し、当該車載器信号S2に応じて、解錠要求を含む携帯機信号S1を送信する。車載器2は、この携帯機信号S1を受信すると、車両を解錠する。これにより、ユーザUは、携帯機1を操作することなく、車両に接近するだけで、車両を解錠することができる。
【0031】
図4は、リレーアタックの概要を説明する図である。リレーアタックは、車両の近くにおり、中継器4Aを所持する不正者Aと、正規のユーザUの近くにおり、中継器4Bを所持する不正者Bと、により行われる。不正者Aは、中継器4Aにより車載器信号S2を受信し、受信した車載器信号S2を周波数変換して送信する。不正者Bは、中継器4Aが送信した車載器信号S2を受信し、受信した車載器信号S2を元の周波数に周波数変換して送信する。ユーザUが所持する携帯機1は、中継器4Bが送信した車載器信号S2を受信すると、当該車載器信号S2に応じて、解錠要求を含む携帯機信号S1を送信する。車載器2は、この携帯機信号S1を受信すると、車両を解錠する。このように、リレーアタックが行われると、ユーザUが車両から離れているにもかかわらず、車両が解錠される。
【0032】
本実施形態に係るRKEシステム100は、このようなリレーアタックを防ぐために、携帯機1の移動距離を利用して、リレーアタックが行われたかを判定する。
【0033】
次に、携帯機制御部13の機能構成について説明する。図5は、携帯機制御部13の機能構成の一例を示す図である。図5の携帯機制御部13は、携帯機認証部131と、距離算出部132と、第1移動距離算出部133と、携帯機高度算出部134と、携帯機記憶部135と、携帯機信号生成部136と、を備える。携帯機認証部131、距離算出部132、第1移動距離算出部133、携帯機高度算出部134、及び携帯機信号生成部136は、携帯機制御部13のCPUがプログラムを実行することにより実現される。また、携帯機記憶部135は、携帯機制御部13のROM及びRAMにより実現される。
【0034】
携帯機認証部131は、携帯機受信部11が受信した車載器信号S2を認証する。具体的には、携帯機認証部131は、携帯機受信部11から信号を入力されると、入力された信号に、車載器信号S2であることを示すプリアンブルが含まれるか確認する。プリアンブルが含まれない場合、携帯機認証部131は、入力された信号は車載器信号S2ではないと判定し、処理を終了する。一方、プリアンブルが含まれる場合、携帯機認証部131は、入力された信号は車載器信号S2であると判定し、当該車載器信号S2のデータ部に含まれる車載器IDを取得する。また、携帯機認証部131は、携帯機記憶部135から、自装置に対応する車載器2の車載器IDを読み出す。
【0035】
そして、携帯機認証部131は、車載器信号S2から取得した車載器IDと、自装置に対応する車載器2の車載器IDと、を比較する。携帯機認証部131は、これらの車載器IDが一致しない場合、入力された信号は、対応する車載器2からの車載器信号S2ではない(他の車載器2からの車載器信号S2である)と判定し、処理を終了する。一方、車載器IDが一致する場合、携帯機認証部131は、入力された信号は、対応する車載器2からの車載器信号S2であると判定し、携帯機信号生成部136に携帯機信号S1の生成を要求する。
【0036】
距離算出部132は、車載器信号S2のRSSI部に基づいて、車載器信号S2のRSSI値を算出し、当該RSSI値に基づいて、携帯機1から車載器2までの距離Lを算出する。距離Lの算出方法は任意である。例えば、RSSI値と距離Lとが対応付けられたテーブルを携帯機記憶部135に予め保存しておき、RSSI値を算出した距離算出部132が、当該テーブルを参照することにより、距離Lを取得できる。なお、距離Lの算出方法はこれに限られない。
【0037】
第1移動距離算出部133は、加速度センサ14から加速度を取得し、取得した加速度を積分することにより、携帯機1の第1移動距離L1を算出する。すなわち、第1移動距離L1は、加速度センサ14により計測された携帯機1の加速度に基づいて算出された、携帯機1の移動距離である。
【0038】
携帯機高度算出部134は、携帯機気圧センサ15から気圧を取得し、取得した気圧に基づいて、携帯機1の高度H1を算出する。高度H1の算出方法は任意である。
【0039】
携帯機記憶部135は、自装置の携帯機IDと、自装置に対応する車載器2の車載器IDと、を予め記憶する。
【0040】
携帯機信号生成部136は、携帯機認証部131からの要求に応じて、携帯機信号S1を生成し、携帯機送信部12に無線で送信させる。具体的には、携帯機信号生成部136は、携帯機認証部131から携帯機信号S1の生成を要求されると、距離算出部132から距離Lを取得し、第1移動距離算出部133から第1移動距離L1を取得し、携帯機高度算出部134から高度H1を取得し、携帯機記憶部135から携帯機IDを取得する。そして、携帯機信号生成部136は、取得した距離L、第1距離L1、高度H1、及び携帯機IDと、解錠要求と、を含む携帯機信号S1を生成し、携帯機送信部12に入力する。
【0041】
次に、車載器制御部23の機能構成について説明する。図6は、車載器制御部23の機能構成の一例を示す図である。図6の車載器制御部23は、車載器認証部231と、リレーアタック判定部232と、第2移動距離算出部233と、車載器高度算出部234と、車載器記憶部235と、車載器信号生成部236と、を備える。車載器認証部231、リレーアタック判定部232、第2移動距離算出部233、車載器高度算出部234、及び車載器信号生成部236は、車載器制御部23のCPUがプログラムを実行することにより実現される。また、車載器記憶部235は、車載器制御部23のROM及びRAMにより実現される。
【0042】
車載器認証部231は、車載器受信部21が受信した携帯機信号S1を認証する。具体的には、車載器認証部231は、車載器受信部21から信号を入力されると、入力された信号に、携帯機信号S1であることを示すプリアンブルが含まれるか確認する。プリアンブルが含まれない場合、車載器認証部231は、入力された信号は携帯機信号S1ではないと判定し、処理を終了する。一方、プリアンブルが含まれる場合、車載器認証部231は、入力された信号は携帯機信号S1であると判定し、当該携帯機信号S1のデータ部に含まれる携帯機IDを取得する。また、車載器認証部231は、車載器記憶部235から、自装置に対応する携帯機1の携帯機IDを読み出す。
【0043】
そして、車載器認証部231は、携帯機信号S1から取得した携帯機IDと、自装置に対応する携帯機1の携帯機IDと、を比較する。車載器認証部231は、これらの携帯機IDが一致しない場合、入力された信号は、対応する携帯機1からの携帯機信号S1ではない(他の携帯機1からの携帯機信号S1である)と判定し、処理を終了する。一方、携帯機IDが一致する場合、車載器認証部231は、入力された信号は、対応する携帯機1からの携帯機信号S1であると判定し、リレーアタック判定部232にリレーアタックが行われたかの判定を要求する。
【0044】
リレーアタック判定部232は、第1移動距離L1、第2移動距離L2、携帯機1の高度H1、及び車載器2の高度H2に基づいて、リレーアタックが行われたかを判定する。また、リレーアタック判定部232は、前回受信した携帯機信号S1に含まれた距離Lを、次に携帯機信号S1を受信するまで記憶する。第2移動距離L2及び判定方法については後述する。
【0045】
第2移動距離算出部233は、携帯機信号S1に含まれる距離Lに基づいて、携帯機1の第2移動距離L2を算出する。すなわち、第2移動距離L2は、携帯機1と車載器2との間の距離Lに基づいて算出された、携帯機1の移動距離である。具体的には、第2移動距離算出部233は、前回受信した携帯機信号S1に含まれる距離Lと、今回受信した携帯機信号S1に含まれる距離Lと、の差を第2移動距離L2として算出する。
【0046】
車載器高度算出部234は、車載器気圧センサ24から気圧を取得し、取得した気圧に基づいて、車載器2の高度H2を算出する。高度H2の算出方法は任意である。
【0047】
車載器記憶部235は、自装置の車載器IDと、自装置に対応する車載器2の車載器IDと、第1閾値Lthと、第2閾値Hthと、を予め記憶する。第1閾値Lth及び第2閾値Hthは、リレーアタックが行われたか判定するために予め設定された閾値である。
【0048】
車載器信号生成部236は、定期的に車載器信号S2を生成し、車載器送信部22に無線で送信させる。具体的には、車載器信号生成部236は、定期的に、車載器記憶部235から車載器IDを取得し、取得した車載器IDと、応答要求と、を含む車載器信号S2を生成し、車載器送信部22に入力する。
【0049】
次に、携帯機1の動作について説明する。図7は、携帯機1の動作の一例を示すフローチャートである。上述の通り、車載器2は、定期的に車載器信号S2を送信している。携帯機1は、車載器信号S2を受信すると、図7の動作を実行する。
【0050】
携帯機受信部11が車載器信号S2を受信すると、まず、携帯機認証部131が、車載器信号S2を認証する(ステップS101)。携帯機認証部131が車載器信号S2の認証に失敗した場合(ステップS102のNO)、すなわち、受信した車載器信号S2が、携帯機1に対応する車載器2からの車載器信号S2ではなかった場合、携帯機1は動作を終了する。
【0051】
一方、携帯機認証部131が車載器信号S2の認証に成功した場合(ステップS102のYES)、すなわち、受信した車載器信号S2が、携帯機1に対応する車載器2からの車載器信号S2であった場合、携帯機認証部131は、携帯機信号生成部136に携帯機信号S1の生成を要求する。
【0052】
携帯機信号生成部136に携帯機信号S1の生成が要求されると、距離算出部132は、車載器信号S2に基づいて、距離Lを算出する(ステップS103)。
【0053】
また、第1移動距離算出部133は、加速度センサ14が計測した加速度に基づいて、携帯機信号S1を前回送信してから現在までの携帯機1の移動距離を、第1移動距離L1として算出する(ステップS104)。
【0054】
また、携帯機高度算出部134は、携帯機気圧センサ15が計測した気圧に基づいて、携帯機1の高度H1を算出する(ステップS105)。なお、ステップS103〜S105の順番は任意である。
【0055】
その後、携帯機信号生成部136は、距離L、第1移動距離L1、及び高度H1と、自装置の携帯機IDと、解錠要求と、を含む携帯機信号S1を生成する(ステップS106)。そして、携帯機送信部12は、生成された携帯機信号S1を無線で送信する(ステップS107)。携帯機1は、以上の動作を、車載器信号S2を受信するたびに実行する。
【0056】
次に、車載器2の動作について説明する。図8は、車載器2の動作の一例を示すフローチャートである。車載器2は、携帯機信号S1を受信すると、図8の動作を実行する。
【0057】
車載器受信部21が携帯機信号S1を受信すると、まず、車載器認証部231が、携帯機信号S1を認証する(ステップS201)。この際、車載器認証部231は、携帯機信号S1に含まれる距離Lが、所定距離未満であることを認証条件としてもよい。所定距離は、例えば、2mであるが、これに限られない。車載器認証部231が携帯機信号S1の認証に失敗した場合(ステップS202のNO)、すなわち、受信した携帯機信号S1が、車載器2に対応する携帯機1からの携帯機信号S1ではなかった場合、車載器2は動作を終了する。
【0058】
一方、車載器認証部231が携帯機信号S1の認証に成功した場合(ステップS202のYES)、すなわち、受信した携帯機信号S1が、車載器2に対応する携帯機1からの携帯機信号S1であった場合、車載器認証部231は、リレーアタック判定部232にリレーアタックが行われたかの判定を要求する。
【0059】
リレーアタック判定部232が判定を要求されると、第2移動距離算出部233は、携帯機信号S1に含まれる距離Lと、前回受信した携帯機信号S1に含まれた距離Lと、の差を第2移動距離L2として算出する(ステップS203)。
【0060】
次に、リレーアタック判定部232は、算出された第2移動距離L2と、携帯機信号S1に含まれる第1移動距離L1と、の差(|L1−L2|)と、第1閾値Lthと、を比較する(ステップS204)。リレーアタックが行われていない場合、第1移動距離L1と第2移動距離L2とは略一致するため、その差は小さくなる。一方、リレーアタックが行われた場合、第1移動距離L1はユーザUの移動距離に応じた値になるのに対して、第2移動距離L2はユーザUと不正者Bとの間の距離の変化に応じた値となるため、第1移動距離L1と第2移動距離L2との差は大きくなり得る。
【0061】
そこで、リレーアタック判定部232は、第1移動距離L1と第2移動距離L2との差が第1閾値Lth以上である場合(ステップS204のNO)、リレーアタックが行われたと判定する(ステップS205)。第1閾値Lthは、例えば、50cmであるが、これに限られない。リレーアタック判定部232が、リレーアタックが行われたと判定した場合、車載器2は、動作を終了する。すなわち、第1移動距離L1と第2移動距離L2との差が第1閾値Lth以上である場合、車両は解錠されない。
【0062】
一方、第1移動距離L1と第2移動距離L2との差が第1閾値Lth未満である場合(ステップS204のYES)、車載器高度算出部234は、車載器気圧センサ24が計測した気圧に基づいて、車載器2の高度H2を算出する(ステップS206)。
【0063】
次に、リレーアタック判定部232は、算出された車載器2の高度H2と、携帯機信号S1に含まれる携帯機1の高度H1と、の差(|H1−H2|)と、第2閾値Hthと、を比較する(ステップS207)。リレーアタックが行われていない場合、高度H1は、車両の近くにいるユーザUが所持する携帯機1の高度となるため、高度H1と高度H2との差は所定の範囲に収まると考えられる。一方、リレーアタックが行われた場合、高度H1は、車両から離れた場所(例えば、車両とは異なるフロア)にいるユーザUが所持する携帯機1の高度となるため、高度H1と高度H2との差は大きくなり得る。
【0064】
そこで、リレーアタック判定部232は、高度H1と高度H2との差が第2閾値Hth以上である場合(ステップS207のNO)、リレーアタックが行われたと判定する(ステップS205)。第2閾値Hthは、例えば、80cmであるが、これに限られない。リレーアタック判定部232が、リレーアタックが行われたと判定した場合、車載器2は、動作を終了する。すなわち、高度H1と高度H2との差が第2閾値Hth以上である場合、車両は解錠されない。
【0065】
一方、高度H1と高度H2との差が第2閾値Hth未満である場合(ステップS207のYES)、リレーアタック判定部232は、リレーアタックが行われていないと判定し(ステップS208)、ドア制御部3に車両の解錠を要求する(ステップS209)。解錠を要求されたドア制御部3は、ドアを解錠する。
【0066】
以上説明した通り、本実施形態に係るRKEシステム100は、携帯機1の第1移動距離L1及び第2移動距離L2と、携帯機1の高度H1と、車載器2の高度H2と、に基づいて、リレーアタックが行われたか判定する。
【0067】
不正者は、中継器4Bから送信する車載器信号S2の強度を調整することにより、携帯機1が算出する距離Lを改竄し、結果として第2移動距離L2を改竄することが可能である。しかしながら、不正者は、携帯機1の内部で算出される第1移動距離L1を把握したり改竄したりすることができないため、第1移動距離L1と第2移動距離L2との差が第1閾値Lth未満となるように、第2移動距離L2を改竄することは極めて困難である。言い換えると、リレーアタックが行われた場合、第1移動距離L1と第2移動距離L2との差が第1閾値Lth以上となる可能性が高い。したがって、本実施形態によれば、携帯機1の第1移動距離L1及び第2移動距離L2に基づいて、リレーアタックを精度よく検出することができる。
【0068】
また、不正者は、携帯機1の内部で算出される高度H1を改竄できないため、車両と異なる高度(例えば、異なるフロアや階段上)にいるユーザUに対してリレーアタックが行われた場合、高度H1と高度H2との差が第2閾値Hth以上となる可能性が高い。したがって、本実施形態によれば、携帯機1の高度H1と、車載器2の高度H2と、に基づいて、車両と異なる高度にいるユーザUに対するリレーアタックを精度よく検出することができる。
【0069】
このように、本実施形態に係るRKEシステム100は、リレーアタックを精度よく検出し、リレーアタックを検出した場合には車両を解錠しないように制御する。この結果、本実施形態によれば、リレーアタックにより車両が不正に解錠されることを抑制し、車両の防盗性を高めることができる。
【0070】
なお、図8の例では、リレーアタック判定部232は、第1移動距離L1及び第2移動距離L2に基づくリレーアタックの判定と、高度H1及び高度H2に基づくリレーアタックの判定と、の両方を行っているが、いずれか一方だけを行ってもよい。
【0071】
例えば、リレーアタック判定部232が第1移動距離L1及び第2移動距離L2に基づくリレーアタックの判定だけを行う場合には、携帯機気圧センサ15及び車載器気圧センサ24は不要である。車載器2は、ステップS206,S207を省略し、第1移動距離L1と第2移動距離L2との差が第1閾値Lth未満である場合(ステップS204のYES)、リレーアタックが行われていないと判定すればよい(ステップS208)。
【0072】
また、リレーアタック判定部232が高度H1及び高度H2に基づくリレーアタックの判定だけを行う場合には、加速度センサ14は不要である。車載器2は、ステップS203,S204を省略し、携帯機信号S1の認証が成功した場合(ステップS202のYES)、高度H2を算出すればよい(ステップS206)。
【0073】
また、リレーアタック判定部232は、高度H1及び高度H2に基づくリレーアタックの判定を行った後に、第1移動距離L1及び第2移動距離L2に基づくリレーアタックの判定を行ってもよい。
【0074】
また、車載器制御部23の代わりに、又は車載器制御部23と共に、携帯機制御部13が第1移動距離L1、第2移動距離L2、携帯機1の高度H1、及び車載器2の高度H2に基づいて、リレーアタックが行われたかを判定してもよい。すなわち、携帯機制御部13がリレーアタック判定部を備えてもよい。携帯機制御部13は、車載器制御部23と同様の方法で、リレーアタックが行われたか判定することができる。この場合、車載器2が第2移動距離L2及び高度H2の少なくとも一方を含む車載器信号S2を送信し、携帯機1が車載器信号S2に含まれる第2移動距離L2及び高度H2の少なくとも一方を利用してリレーアタックが行われたか判定すればよい。
【0075】
また、図8の例では、携帯機1が、携帯機信号S1を前回送信してから次に送信するまでの第1移動距離L1を、常に算出可能な場合を想定している。このような処理は、携帯機1が、携帯機信号S1の送信後に加速度センサ14から入力された加速度を、次に携帯機信号S1を送信するまで全て記憶しておく、又は携帯機信号S1の送信後に加速度センサ14から加速度を入力されるたびに、第1移動距離L1を更新することにより可能である。しかしながら、このような処理は、携帯機1に要求される記憶容量や計算量の増大を招く恐れがある。
【0076】
そこで、携帯機1は、携帯機信号S1を前回送信してから所定時間T1が経過した時点で、記憶中の加速度を消去したり、更新中の第1移動距離L1をリセットしたりしてもよい。この処理によれば、携帯機信号S1を前回送信してから所定時間T1以上経過した後に、次の携帯機信号S1を送信する場合、携帯機1は、第1移動距離L1を算出できない。しかしながら、所定時間T1を、車載器信号S2の送信間隔より長く設定することにより、携帯機1が、車載器信号S2を連続的に受信し、携帯機信号S1を連続的に送信する場合、2回目以降に携帯機信号S1を送信する際には、携帯機1は、第1移動距離L1を算出することができる。
【0077】
この場合、車載器2は、第1移動距離L1を含まない携帯機信号S1(1回目に受信した携帯機信号S1)を受信した場合、当該携帯機信号S1に応じた解錠の制御(図8のステップS203〜S209)を行わず、第1移動距離L1を含む携帯機信号S1(2回目以降に受信した携帯機信号S1)を受信した場合に、当該携帯機信号S1に応じた解錠の制御(図8のステップS203〜S209)を行えばよい。これにより、リレーアタックを精度よく検出しつつ、携帯機1に要求される記憶容量や計算量を低減することができる。
【0078】
なお、上記実施形態に挙げた構成等に、その他の要素との組み合わせなど、ここで示した構成に本発明が限定されるものではない。これらの点に関しては、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更可能であり、その応用形態に応じて適切に定めることができる。
【0079】
また、本国際出願は、2017年11月14日に出願した日本国特許出願第2017−219365号に基づく優先権を主張するものであり、当該出願の全内容を本国際出願に援用する。
【符号の説明】
【0080】
1:携帯機
2:車載器
3:ドア制御部
11:携帯機受信部
12:携帯機送信部
13:携帯機制御部
14:加速度センサ
15:携帯機気圧センサ
21:車載器受信部
22:車載器送信部
23:車載器制御部
24:車載器気圧センサ
100:RKEシステム
131:携帯機認証部
132:距離算出部
133:第1移動距離算出部
134:携帯機高度算出部
135:携帯機記憶部
136:携帯機信号生成部
231:車載器認証部
232:リレーアタック判定部
233:第2移動距離算出部
234:車載器高度算出部
235:車載器記憶部
236:車載器信号生成部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8