(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6880246
(24)【登録日】2021年5月7日
(45)【発行日】2021年6月2日
(54)【発明の名称】多価アルコールの脱色および脱臭方法
(51)【国際特許分類】
C07C 29/76 20060101AFI20210524BHJP
C07C 31/20 20060101ALI20210524BHJP
B01D 3/00 20060101ALI20210524BHJP
B01D 15/00 20060101ALI20210524BHJP
【FI】
C07C29/76
C07C31/20 B
B01D3/00 A
B01D15/00 K
【請求項の数】16
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2019-569892(P2019-569892)
(86)(22)【出願日】2018年7月31日
(65)【公表番号】特表2020-524150(P2020-524150A)
(43)【公表日】2020年8月13日
(86)【国際出願番号】KR2018008674
(87)【国際公開番号】WO2019027222
(87)【国際公開日】20190207
【審査請求日】2019年12月17日
(31)【優先権主張番号】10-2017-0098271
(32)【優先日】2017年8月2日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】518460716
【氏名又は名称】ジーエス カルテックス コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】GS CALTEX CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100107364
【弁理士】
【氏名又は名称】斉藤 達也
(72)【発明者】
【氏名】リー,ジュン ジョーン
(72)【発明者】
【氏名】ジェオン,サン ジュン
(72)【発明者】
【氏名】ナム,へー ゲウン
【審査官】
奥谷 暢子
(56)【参考文献】
【文献】
特表2012−504404(JP,A)
【文献】
特表平11−514007(JP,A)
【文献】
韓国登録特許第10−1536934(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 29/76
B01D 3/00
B01D 15/00
C07C 31/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
分離工程により収得され、異色および異臭物質を含有する第1多価アルコールを含有する第1混合液を製造する段階;
前記第1混合液を分別蒸留処理を通じて前記異色および異臭物質が少なくとも部分的に除去された第2多価アルコールを収得する段階;
前記第2多価アルコールに水を供給して第2混合液を生成する段階;
前記第2混合液をストリップ処理して前記異色および異臭物質が水と共に気化されることによって、ターゲット多価アルコールが濃縮または精製された前処理液を生成する段階;および
前記前処理液を吸着処理する段階;を含み、
前記ストリップ処理は、前記ターゲット多価アルコールの沸点より低く、水の沸点より高い温度で行われる、
多価アルコールの脱色および脱臭方法。
【請求項2】
前記混合液は、前記第1多価アルコール、水および中和剤を含む、請求項1に記載の多価アルコールの脱色および脱臭方法。
【請求項3】
前記中和剤は、炭酸塩または金属水酸化物のうち少なくとも一つを含む、請求項2に記載の多価アルコールの脱色および脱臭方法。
【請求項4】
前記中和剤は、前記第1多価アルコール100重量部に対して0.1〜1重量部の含量で含まれる、請求項2に記載の多価アルコールの脱色および脱臭方法。
【請求項5】
前記ストリップ処理において追加される水またはスチームの量は、前記第2多価アルコール100重量部に対して40〜200重量部である、請求項1に記載の多価アルコールの脱色および脱臭方法。
【請求項6】
前記ストリップ処理は、空気または窒素によるパージングをさらに含む、請求項1に記載の多価アルコールの脱色および脱臭方法。
【請求項7】
前記分別蒸留処理は、蒸留カラムでの初留を排出する段階をさらに含む、請求項1に記載の多価アルコールの脱色および脱臭方法。
【請求項8】
前記分別蒸留処理は、前記蒸留カラムの底部に収集される残留を除去する段階をさらに含む、請求項7に記載の多価アルコールの脱色および脱臭方法。
【請求項9】
前記吸着処理は、前記前処理液を活性炭処理することを含む、請求項1に記載の多価アルコールの脱色および脱臭方法。
【請求項10】
前記活性炭処理は、粉末活性炭または活性炭固定ベッドを使用する、請求項9に記載 の多価アルコールの脱色および脱臭方法。
【請求項11】
前記粉末活性炭を使用する場合、吸着処理液から前記活性炭を分離する工程をさらに含む、請求項10に記載の多価アルコールの脱色および脱臭方法。
【請求項12】
前記吸着処理は、前記前処理液100重量部に対して10〜100重量部の水を添加することをさらに含む、請求項9に記載の多価アルコールの脱色および脱臭方法。
【請求項13】
吸着処理液を減圧蒸発させる工程をさらに含む、請求項12に記載の多価アルコールの脱色および脱臭方法。
【請求項14】
前記分離工程は、多価アルコール発酵液に対するイオン交換処理、電気透析または減圧蒸留のうち少なくとも一つを含む、請求項1に記載の多価アルコールの脱色および脱臭方法。
【請求項15】
前記多価アルコール発酵液は、バイオマスから合成された2,3−ブタンジオールを含む、請求項14に記載の多価アルコールの脱色および脱臭方法。
【請求項16】
分離工程により収得された異色および異臭物質を含有する第1多価アルコールを分別蒸留処理して前記異色および異臭物質が少なくとも部分的に除去された第2多価アルコールを収得する分別蒸留ユニット;
前記分別蒸留ユニットから供給された第2多価アルコールに水を供給して生成される第2混合液をストリップ処理して前記異色および異臭物質が水と共に気化されることによって、ターゲット多価アルコールが濃縮または精製させるストリップユニット;および
前記ストリップユニットから供給される多価アルコールに残留する異色および異臭物質を除去する吸着ユニット;を含み、
前記ストリップ処理は、前記ターゲット多価アルコールの沸点より低く、水の沸点より高い温度で行われる、多価アルコールの脱色および脱臭システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多価アルコールの脱色および脱臭方法に関する。より詳細には、分離工程以後の多価アルコールの脱色および脱臭方法に関する。
【背景技術】
【0002】
多価アルコールは、一つの分子内に複数のヒドロキシ基(−OH)が存在する化合物であって、2価アルコールの場合、グリコール、3価アルコールの場合、グリセロールと呼ばれることがある。多価アルコールは、親水性、プロトン性溶剤として使用され、また、各種化粧料組成物、薬品添加剤、自動車の不凍液などのように多様な分野に適用されている。
【0003】
例えば、2,3−ブタンジオール(2,3−butanediol)は、電子材料添加剤、殺虫剤、化粧品、美容製品などの原料または添加剤として広範囲に使用され、キラル(chiral)特性によって医薬分野においても活用可能性が増加している。
【0004】
2,3−ブタンジオールは、2,3−ブテンオキシドの水和反応など化学的な方法で生成され得、また、特定の光学的活性の2,3−ブタンジオールの生成のためにバイオ基盤の発酵工程を通じて合成されることもできる。
【0005】
化粧品、医薬などに適用されるために、無色、無臭の2,3−ブタンジオールが生成される必要があるが、分離および精製過程で除去されていない微量の不純物によって2,3−ブタンジオール原液が、例えば、淡い黄色を帯び、悪臭を有することができる。
【0006】
また、微生物、菌株のようなバイオ基盤工程を利用して2,3−ブタンジオールが合成された場合、タンパク質、バイオマス(biomass)などに由来する異色、異臭物質が多数含まれ得る。
【0007】
例えば、中国特許公開第105418367号公報において、2,3−ブタンジオール原液に活性炭を処理して異色誘発物質を除去する方法が提示されている。しかしながら、だが、活性炭の処理だけでは、2,3−ブタンジオール原液から異色、異臭誘発物質を全部除去するには限界がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、高い効率、除去容量を有する多価アルコールの脱色および脱臭方法を提供することにある。
【0009】
本発明の他の目的は、高い効率、除去容量の多価アルコールの脱色および脱臭システムを提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
1.分離工程により収得された第1多価アルコールを含有する混合液を製造する段階;前記混合液を蒸留処理を通じて異色および異臭物質を予備的に除去して、前処理液を生成する段階;および前記前処理液を吸着処理する段階を含む、多価アルコールの脱色および脱臭方法。
【0011】
2.前記1において、前記混合液は、前記第1多価アルコール、水および中和剤を含む、多価アルコールの脱色および脱臭方法。
【0012】
3.前記2において、前記中和剤は、炭酸塩または金属水酸化物のうち少なくとも一つを含む、多価アルコールの脱色および脱臭方法。
【0013】
4.前記2において、前記中和剤は、前記第1多価アルコール100重量部に対して0.1〜1重量部の含量で含まれる、多価アルコールの脱色および脱臭方法。
【0014】
5.前記1において、前記蒸留処理は、分別蒸留処理およびストリップ処理を含む、多価アルコールの脱色および脱臭方法。
【0015】
6.前記5において、前記分別蒸留処理は、前記混合液に対して直接行われ、前記ストリップ処理は、前記分別蒸留処理以後に収得された第2多価アルコールに対して行われる、多価アルコールの脱色および脱臭方法。
【0016】
7.前記6において、前記ストリップ処理は、前記第2多価アルコールに水またはスチームを注入した後、蒸留カラムまたは単蒸留を用いて水を除去することを含む、多価アルコールの脱色および脱臭方法。
【0017】
8.前記7において、前記ストリップ処理において追加される水またはスチームの量は、前記第2多価アルコール100重量部に対して40〜200重量部である、多価アルコールの脱色および脱臭方法。
【0018】
9.前記6において、前記ストリップ処理は、空気または窒素によるパージングをさらに含む、多価アルコールの脱色および脱臭方法。
【0019】
10.前記6において、前記分別蒸留処理は、蒸留カラムでの初留を排出する段階をさらに含む、多価アルコールの脱色および脱臭方法。
【0020】
11.前記10において、前記分別蒸留処理は、前記蒸留カラムの底部に収集される残留を除去する段階をさらに含む、多価アルコールの脱色および脱臭方法。
【0021】
12.前記1において、前記吸着処理は、前記前処理液を活性炭処理することを含む、多価アルコールの脱色および脱臭方法。
【0022】
13.前記12において、前記活性炭処理は、粉末活性炭または活性炭固定ベッドを使用する、多価アルコールの脱色および脱臭方法。
【0023】
14.前記13において、前記粉末活性炭を使用する場合、吸着処理液から前記活性炭を分離する工程をさらに含む、多価アルコールの脱色および脱臭方法。
【0024】
15.前記12において、前記吸着処理は、前記前処理液100重量部に対して10〜100重量部の水を添加することをさらに含む、多価アルコールの脱色および脱臭方法。
【0025】
16.前記15において、吸着処理液を減圧蒸発させる工程をさらに含む、多価アルコールの脱色および脱臭方法。
【0026】
17.前記1において、前記分離工程は、多価アルコール発酵液に対するイオン交換処理、電気透析または減圧蒸留のうち少なくとも一つを含む、多価アルコールの脱色および脱臭方法。
【0027】
18.前記17において、前記多価アルコール発酵液は、バイオマスから合成された2,3−ブタンジオールを含む、多価アルコールの脱色および脱臭方法。
【0028】
19.分離工程により収得された第1多価アルコールを蒸留処理する分別蒸留ユニット;前記分別蒸留ユニットから供給された第2多価アルコールを蒸留処理するストリップユニット;および前記ストリップユニットから供給される多価アルコールに残留する異色および異臭物質を除去する吸着ユニットを含む、多価アルコールの脱色および脱臭システム。
【発明の効果】
【0029】
本発明の実施例によれば、分離/精製工程を通じて生成された多価アルコール脱色/脱臭工程において、例えば活性炭処理のような吸着処理前に蒸留処理を行うことができる。したがって、気化または分別蒸溜メカニズムによって異色、異臭物質が除去されて、前記吸着処理のロードが減少し、異色、異臭物質の除去効率/除去容量が増加することができる。
【0030】
前記蒸留処理は、複数ステップの連続蒸留工程を含むことができる。前記蒸留処理は、分別蒸留処理およびストリップ(stripping)処理を含むことができる。前記分別蒸留処理を通じて沸点の差異によって異色、異臭物質をバルク単位で除去し、前記ストリップ処理を通じて残留する異色、異臭物質がさらに微小単位で除去され得る。
【0031】
前記蒸留処理以後、吸着処理を行って、実質的に異色、異臭物質が完全に除去された無色、無臭の多価アルコールが収得され得る。例えば、バイオ基盤で合成されて、多数の不純物、異色、異臭物質が含まれた2,3−ブタンジオール合成液から実質的に無色、無臭の2,3−ブタンジオールが生成され得る。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】本発明の実施例による多価アルコールの脱色および脱臭システムを説明するための概念図である。
【
図2】本発明の実施例による多価アルコールの脱色および脱臭方法を示す工程流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の好ましい実施例を提示するが、これらの実施例は、本発明を例示するものに過ぎず、添付の特許請求範囲を制限するものではなく、本発明の範疇および技術思想範囲内で実施例に対する多様な変更および修正が可能であることは、当業者にとって明白なことであり、このような変形および修正が添付の特許請求範囲に属することも当然のことである。
【0034】
図1は、本発明の実施例による多価アルコールの脱色および脱臭システムを説明するための概念図である。
図2は、本発明の実施例による多価アルコールの脱色および脱臭方法を示す工程流れ図である。
【0035】
以下では、
図1および
図2を参照して、多価アルコールの脱色および脱臭システム、および方法を共に説明する。
【0036】
図1を参照すると、例示的な実施例による多価アルコールの脱色および脱臭システム100(以下、「システム」と略記する)は、蒸留ユニットおよび吸着ユニットCを含むことができる。例示的な実施例によれば、前記蒸留ユニットは、分別蒸留ユニットAおよびストリップ(stripping)ユニットBを含むことができる。
【0037】
分別蒸留ユニットAは、第1貯蔵部200および分別蒸留カラム210を含むことができる。ストリップユニットBは、第2貯蔵部205およびストリップカラム230を含むことができる。吸着ユニットCは、吸着処理チャンバー250を含むことができる。
【0038】
図2を参照すると、第1多価アルコールを含有する第1混合液を製造することができる(例えば、段階S10)。例示的な実施例によれば、前記第1多価アルコールは、多価アルコール発酵液に対する分離工程以後に収集される多価アルコールであり得る。
【0039】
一部の実施例において、前記多価アルコール発酵液は、バイオ原料物質(またはバイオマス)を菌株を利用して発酵させて生成され得る。前記バイオ原料物質は、穀類(kernel)、木質系および/またはデンプン系物質を使用することができる。例示的な実施例において、前記バイオ原料物質としてデンプン系物質を使用することができ、前記デンプン系物質の例としてとうもろこし、ライ麦などのようなデンプン含有穀類、キャッサバ(cassava)、原糖(raw−sugar)、グルコース(glucose)などを使用することができる。
【0040】
前記菌株として例えば、ジオール(diol)含有発酵産物の生産能力を有する微生物を特別な制限なしに活用することができる。例えば、前記微生物としてクレブシエラ(Klebsiella)、バシラス(Bacillus)、セラチア(Serratia)、エンテロバクター(Enterobacter)、クロストリジウム(Clostridium)、酵母、大腸菌(E.coli)などが活用され得る。
【0041】
所望のターゲットジオールを考慮して前記バイオ原料物質および菌株を選択することができる。本発明の例示的な実施例において、前記ターゲットジオールは、2,3−ブタンジオールであり得る。一実施例において、前記ターゲットジオールは、2,3−ブタンジオールの光学異性体のうち2R,3S−ブタンジオールを含むことができる。
【0042】
一部の実施例において、2,3−ブタンジオール生成のために、前記バイオ原料物質としてキャッサバ、前記菌株としてクレブシエラを使用することができる。例えば、前記菌株としてクレブシエラオキシトカ(K.oxytoca)、クレブシエラニューモニエ(K.pneumoniae)などを使用することができ、好ましくはクレブシエラオキシトカ(K.oxytoca)を使用することができる。
【0043】
例示的な実施例によれば、前記多価アルコール発酵液は、糖化工程および発酵工程を通じて製造され得る。例えば前記バイオ原料物質を粉砕した後、淡水のような液体内に混合し、糖化酵素を投入して前記バイオ原料物質と反応させて糖化液を製造することができる。前記糖化酵素は、例えばアミラーゼ系酵素を含むことができる。
【0044】
以後、前記糖化液に前記菌株を投入して発酵培養液を製造することができる。前記発酵培養液は、例えば、ターゲットジオールである2,3−ブタンジオールだけでなく、モノアルコール、他のグリコール類(例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,2−プロピレングリコール、ジプロピレングリコールなど)を含むことができる。また、前記発酵培養液は、各種無機塩、有機酸、および前記菌株またはその代謝産物に由来したバイオ副産物のような異色、異臭誘発不純物を含むことができる。
【0045】
前記分離工程は、所望のターゲットジオールを選択的に収集するための工程を含むことができる。例えば、前記分離工程は、イオン交換工程、電気透析工程、減圧蒸留工程などを含むことができる。
【0046】
本発明の実施例による脱色および脱臭方法およびシステムは、前記分離工程以後に行われるための工程および工程システムであり得る。
【0047】
例示的な実施例によれば、前記第1混合液は、前記第1多価アルコール(例えば、2,3−ブタンジオール)、水、および中和剤を含むことができる。また、前記第1混合液内には、前記分離工程で除去されていない異色および異臭物質を含むことができる。
【0048】
一部の実施例において、前記中和剤は、炭酸塩および/または金属水酸化物を含むことができる。前記炭酸塩の非制限的な例としてNaHCO3、KHCO3、Na2CO3、K2CO3、CaCO3などが挙げられ、これらは、単独で使用されたり、2種以上が混合されて使用され得る。前記金属水酸化物の非制限的な例としてNaOH、Ca(OH)2、Mg(OH)2などが挙げられ、これらは、単独で使用されたり、2種以上が混合されて使用され得る。
【0049】
前記炭酸塩または金属水酸化物は、前記第1混合液のpHを調節し、前記第1混合液内に存在する有機酸、無機酸などの酸物質を中和あるいは沈殿反応を通じて除去することができる。また、前記炭酸塩の添加を通じて沸点の差異を通した異色、異臭物質の除去が促進され得る。したがって、前記蒸留ユニットでの異色、異臭物質の除去効率性が向上することができる。
【0050】
一部の実施例において、中和処理効率のために、1価炭酸塩および2価炭酸塩が共に使用され得る。例えば、前記中和剤としてKHCO3およびCaCO3を共に使用することができる。
【0051】
一実施例において、前記中和剤は、前記第1混合液に含まれた第1多価アルコール100重量部に対して約0.1〜1重量部の含量で含まれ得る。前記中和剤の含量が約0.1重量部未満の場合、上述した酸除去効果が十分に具現されないことがある。前記中和剤の含量が約1重量部を超過する場合、例えば分別蒸留の終了時に発生する残留の量が増加して回収率が低くなり得る。
【0052】
前記第1混合液において、水は、前記第1多価アルコール100重量部に対して約5〜10重量部で含まれ得る。水の含量が約5重量部未満の場合、異色、異臭物質を含む不純物が十分に溶解しないことがある。水の含量が約10重量部を超過する場合、工程収率および効率が阻害され得る。
【0053】
前記異色、異臭物質の非制限的な例としてアセトアルデヒド(acetaldehyde)、アセトイン(acetoin)、ジアセチル(diacetyl)、フルフラール(furfural)、メタノール(methanol)などが挙げられる。
【0054】
前記第1混合液を蒸留処理して異色、異臭物質を少なくとも部分的に除去することができる(例えば、段階S20)。例示的な実施例によれば、前記蒸留処理は、分別蒸留処理およびストリップ処理を含むことができる。
【0055】
分別蒸留ユニットAでは、前記第1混合液を直接供給されて分別蒸留処理して、第2多価アルコールを生成することができる(例えば、段階S22)。前記第2多価アルコールは、前記第1多価アルコールから異色、異臭物質が少なくとも部分的に除去されたアルコール液を意味する。
【0056】
前記第1混合液は、第1供給流路105を介して分別蒸留ユニットAに含まれた第1貯蔵部200に導入され得る。第1供給流路105は、前記分離工程のための装置、チャンバー、カラムなどに連結されて、前記第1多価アルコールを供給され得る。
【0057】
第1貯蔵部200に供給された前記第1混合液は、分別蒸留カラム210に供給されて、沸点の差異によって第1多価アルコールが分別蒸留カラム210の上部から第1排出ライン110)に排出されて前記第2多価アルコールが収得され得る。
【0058】
例えば、前記第1多価アルコールの沸点は、前記異色、異臭物質より低いことがあり、これに伴い、分別蒸留カラム210のトップ(Top)部で前記第1多価アルコールが分離されて排出され得る。
【0059】
例えば、分別蒸留カラム210で第1多価アルコールが分離されて排出され得る温度は、60℃〜80℃であり、圧力は、7mbar〜10mbarの範囲に維持され得る。
【0060】
第1排出ライン110を介して排出された前記第2多価アルコールは、第1コンデンサ310を介して凝縮されて、第2供給流路120を介して移動することができる。
【0061】
一部の実施例において、分別蒸留カラム210から排出される初留は、例えば、第2供給流路120から分岐される第2排出ライン125を介して外部に除去され得る。例えば、分別蒸留の初期段階では、前記多価アルコールおよび不純物(異色、異臭物質を含む)が分子間の相互作用によって沸点の差異にもかかわらず、前記第1多価アルコールと共に気化して排出され得る。したがって、前記初留を排出、除去することによって、前記第2多価アルコールでの純度を向上させることができる。
【0062】
一実施例において、前記初留は、例えば、第1コンデンサ310と連結された第1回収ライン115を介してさらに分別蒸留カラム210に還流されることもできる。この場合、ターゲット多価アルコールの収率を向上させ、工程副産物あるいは廃棄物の量を減少させることができる。
【0063】
第1貯蔵部200内には、上述した分別蒸留処理以後の未処理された前記第1混合液の残留が貯蔵され得る。前記残留は、分別蒸留ユニットAから外部に除去または排出して前記第2多価アルコールの純度を向上させることができる。
【0064】
例えば、前記第1混合液に含まれた多価アルコールの総100重量部のうち、前記初留および/または残留が除去されて、約85〜90重量部が前記第2多価アルコールとして生成され得る。
【0065】
以後、第2供給流路120からストリップユニットBに供給される前記第2多価アルコールに対してストリップ処理を行うことができる(例えば、段階S24)。
【0066】
例示的な実施例によれば、前記第2多価アルコールに水が付加された第2混合液が第2貯蔵部205に供給され得る。例えば、水供給流路127を介して第2貯蔵部205内に水が供給されて、前記第2多価アルコールと混合された前記第2混合液が生成され得る。
【0067】
一部の実施例において、第2貯蔵部205にスチームが供給されて、第2多価アルコールと混合された第2混合液が生成されることもできる。
【0068】
一部の実施例において、前記第2多価アルコール100重量部に対して水またはスチームの含量は、使用されるカラムの段数によって約40〜200重量部であり得る。前記水またはスチームの添加量が約40重量部未満の場合、ストリップ処理を通した異色、異臭物質の除去を行うことが容易でないことがある。前記水またはスチームの添加量が約200重量部を超過する場合、ストリップユニットBでのロードが過度に増加して、ターゲットアルコールの生産性と収率が低下し得る。
【0069】
前記第2混合液は、第2貯蔵部205からストリップカラム230に供給されてストリップ処理が行われ得る。前記ストリップ処理により前記第2混合液内に残留する異色、異臭物質が水と共に気化して除去され得る。
【0070】
例示的な実施例によれば、前記ストリップ処理は、ターゲット多価アルコールの沸点より低く、水の沸点より高い温度で行われ得る。また、前記ストリップ処理は、前記分別蒸留処理での温度(例えば、前記分別蒸留処理での最大温度)より低い温度で行われ得る。
【0071】
例えば、前記ストリップ処理は、約20℃〜30℃の温度、約15mbar〜25mbarの圧力条件下で行われ得る。
【0072】
例示的な実施例によれば、ストリップカラム230を利用することだけでなく、単蒸留を用いて水を除去する過程を経ることもできる。
【0073】
前記ストリップ処理により前記分別蒸留で沸点の差異によって除去されにくい異色、異臭物質が、例えば水との水素結合などのような相互作用により除去され得る。
【0074】
一実施例において、ppm水準の異色、異臭物質が前記ストリップ処理を通じて除去され得る。一実施例において、前記分別蒸留処理を通じて除去されていない微細異臭物質が前記ストリップ処理を通じて追加的に除去され得る。
【0075】
一実施例において、前記ストリップ処理中に、空気または窒素によるパージングを行って、前記異色、異臭物質の除去が促進され得る。
【0076】
前記異色、異臭物質が含有された水は、ストリップカラム230の上部(例えば、トップ部)から気化および取出されて、第2排出ライン235を介して排出され得る。
【0077】
一部の実施例において、第2排出ライン235から排出された水は、第2コンデンサ330および第2回収ライン125を介してストリップカラム230内に還流され得る。この場合、水に一部含まれたターゲット多価アルコールが回収されて、工程収率が向上することができる。
【0078】
異色、異臭物質が気化して少なくとも部分的に除去されることによって、前記第2混合液からターゲット多価アルコールがさらに濃縮または精製された前処理液が生成され得る。
【0079】
以後、前記前処理液を吸着処理して残留する異色、異臭物質を追加的に除去することができる(例えば、段階S30)。一部の実施例において、前記吸着処理を通じて異色、異臭物質が実質的に完全に除去され得る。
【0080】
前記前処理液は、第2貯蔵部205と連結された第3供給流路130を介して吸着ユニットCの吸着処理チャンバー250に供給され得る。
【0081】
例えば、吸着剤が吸着処理チャンバー250内で前記前処理液と接触または混合され得る。例示的な実施例によれば、前記吸着剤は、活性炭を含むことができる。
【0082】
例えば、吸着処理チャンバー250内に投入された粉末活性炭が前記前処理液と撹拌を通じて接触し、残留する異色、異臭物質が除去され得る。
【0083】
吸着反応の活性化のために、前記前処理液100重量部に対して10〜100重量部の水が追加され得、吸着処理チャンバー250内の温度は、約70℃〜90℃の温度に維持され得る。
【0084】
前記活性炭は、前記前処理液100重量部に対して0.3〜1.0重量部で使用され得る。前記活性炭を既存の工程に比べて相対的に少ない量を使用するにもかかわらず、異色、異臭物質の除去を効率的に行うことができる。
【0085】
一部の実施例において、吸着処理チャンバー250は、活性炭が固定化されたベッドまたはカラムを含むことができる。活性炭が固定化されたベッドまたはカラムを使用する場合、前記システムは、前記ベッドまたはカラム洗浄のための洗浄部をさらに含むこともできる。
【0086】
粉末活性炭が吸着剤として使用される場合、異色、異臭物質が吸着した活性炭を分離する工程が追加に行われ得る。例えば、吸着処理チャンバー250からターゲット多価アルコールが含有された吸着処理液が第4供給流路140を介して濾過部400に供給され得る。濾過部400を介して活性炭が異色、異臭物質と共に濾過され、高純度の実質的に無色、無臭のターゲット多価アルコールが収集流路150を介して獲得され得る。
【0087】
一部の実施例において、濾過部400から排出される処理液は、第3回収ライン145を介して吸着処理チャンバー250にリサイクルされて、吸着処理が繰り返して行われることもできる。
【0088】
一部の実施例において、前記吸着処理時に水が添加される場合、濾過部400から排出される吸着処理液に対し減圧蒸発を通じて水を除去することによって、異色、異臭成分を追加的に除去することができる。
【0089】
以下では、具体的な実験例を参照して、本発明の実施例による多価アルコールの脱色および脱臭方法について詳細に説明する。実験例に含まれた実施例および比較例は、本発明を例示するものに過ぎず、添付の特許請求範囲を制限するものではなく、本発明の範疇および技術思想の範囲内で実施例に対する多様な変更および修正が可能であることは、当業者にとって明白なことであり、このような変形および修正が添付の特許請求範囲に属することも当然のことである。
【0090】
<実施例および比較例>
実施例1
原料物質としてキャッサバを粉砕した後、糖化させて炭素源として使用し、K.oxytoca GSC112 LK菌株を使用して2,3−ブタンジオールを含む多価アルコール発酵液を収得した後、前記発酵液を濾過、電気透析、イオン交換、蒸留過程を経て2,3−ブタンジオール(第1多価アルコール)を得た。前記2,3−ブタンジオール(第1多価アルコール)100重量部に対して、K2CO3 0.4重量部および水5重量部が混合された第1混合液を製造し、減圧分別蒸溜カラムの上部を介して最大温度80℃で多価アルコール(第2多価アルコール)90重量部を取り出した。
【0091】
以後、前記第2多価アルコール100重量部に対して40重量部の水を追加してストリップカラムを介して24℃の温度でストリップ処理した後、底部に残留する前処理液を前処理液100重量部に対して活性炭0.3重量部と超純水10重量部が内蔵されたチャンバー内に供給して、80℃の条件下に30分間500rpmの速度で撹拌させた。
【0092】
吸着処理された液を濾過膜に通過させて、最終的に2,3−ブタンジオールを収得した。
【0093】
実施例2
実施例1でストリップ処理された前処理液を前処理液100重量部に対して活性炭0.6重量部と超純水100重量部が内蔵されたチャンバー内に供給して、80℃の条件下に30分間500rpmの速度で撹拌させた。
【0094】
撹拌が終わった吸着処理液を濾過膜に通過させた後、濾過液を減圧蒸発を通じて13mbar、24℃の温度で水を除去して、最終的に2,3−ブタンジオールを収得した。
【0095】
比較例
実施例1と同じ第1多価アルコールを第1多価アルコール100重量部に対して50重量部の水と5重量部の活性炭が内蔵された処理チャンバーに供給して撹拌後、減圧蒸発を通じて40mbar、50℃の条件で水を除去し、10mbarの条件で2,3−ブタンジオールを取得した。
【0096】
<実験例>
実施例および比較例によって収得された2,3−ブタンジオール液に対してガスクロマトグラフィーを利用して2,3−ブタンジオールの純度(面積比)を測定した。具体的に、ガスクロマトグラフィー分析は、Agilent 6890 GC−MS(カラム:HP−5MS)を使用して行われた。
【0097】
品質評価のために実施例および比較例によって収得された2,3−ブタンジオール液の色に対してAPHA Color indexを測定した。また、30人のパネルを対象として下記の評価基準に基づいて異臭発現の有無を官能評価して、平均点数を計算した。評価結果は、下記の表1に示す。
【0098】
<異臭評価>
1:強い異臭が発生
2:中間程度の異臭が発生
3:浅い異臭が短く発生
4:無臭
【0100】
表1を参照すると、蒸留処理が行われた実施例の場合、比較例に比べて異色、異臭物質の除去量が顕著に上昇した。
【0101】
活性炭の吸着時に水を添加した後、減圧蒸発で水を除去した実施例2の場合、実質的に異色、異臭物質が完全に除去されたことが分かる。