特許第6880278号(P6880278)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6880278免疫グロブリンFc断片のFcRnに対する結合親和力が維持される免疫グロブリンFc結合体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6880278
(24)【登録日】2021年5月7日
(45)【発行日】2021年6月2日
(54)【発明の名称】免疫グロブリンFc断片のFcRnに対する結合親和力が維持される免疫グロブリンFc結合体
(51)【国際特許分類】
   C07K 16/18 20060101AFI20210524BHJP
   C07K 14/435 20060101ALI20210524BHJP
   C12N 15/13 20060101ALN20210524BHJP
【FI】
   C07K16/18
   C07K14/435
   !C12N15/13
【請求項の数】13
【外国語出願】
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2020-78005(P2020-78005)
(22)【出願日】2020年4月27日
(62)【分割の表示】特願2016-525294(P2016-525294)の分割
【原出願日】2014年7月14日
(65)【公開番号】特開2020-125337(P2020-125337A)
(43)【公開日】2020年8月20日
【審査請求日】2020年5月27日
(31)【優先権主張番号】10-2013-0082509
(32)【優先日】2013年7月12日
(33)【優先権主張国】KR
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】515022445
【氏名又は名称】ハンミ ファーマシューティカル カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(72)【発明者】
【氏名】ファン サンユン
(72)【発明者】
【氏名】リ ジョン スー
(72)【発明者】
【氏名】ホン スン ヒ
(72)【発明者】
【氏名】チョイ イン ヨン
(72)【発明者】
【氏名】ジュン スン ヨプ
(72)【発明者】
【氏名】クォン セ チャン
【審査官】 斉藤 貴子
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2013/100702(WO,A1)
【文献】 特表2008−534676(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00−15/90
C07K 1/00−19/00
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/WPIDS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1分子の生理活性ポリペプチド及びFcRn結合領域を含む免疫グロブリンFc断片が非ペプチド性リンカーを介して連結された、生理活性ポリペプチド−免疫グロブリンFc断片の結合体であり、前記免疫グロブリンFc断片は、非ペプチド性ポリマーによるさらなる変性を有しておらず、
前記生理活性ポリペプチド−免疫グロブリンFc断片の結合体は、pH 6.0におけるFcRnに対する結合量(binding amount at pH 6.0)とpH 7.4におけるFcRnに対する結合量(binding amount at pH 7.4)の割合が、前記結合体で使用されたものと同じ免疫グロブリンFc断片のFcRnに対する結合量を結合体に使用されるのと同一の条件で測定することにより決定される割合の±6%以内であり、
前記免疫グロブリンFc断片は、ヒンジ領域、CH2ドメイン及びCH3ドメインを含み、
前記非ペプチド性リンカーは、前記免疫グロブリンFc断片のN末端に結合され、
前記非ペプチド性リンカーは、下記式(1)で表されるポリエチレングリコールである、結合体。
【化1】
(ここで、n=50〜250である。)
【請求項2】
前記生理活性ポリペプチド−免疫グロブリンFc断片の結合体は、下記数式(1)の結合割合が、前記結合体で使用されたものと同じ免疫グロブリンFc断片の当該結合割合の値の±6%内であることを特徴とする、請求項1に記載の結合体。
【数1】
【請求項3】
前記非ペプチド性リンカーの反応基は、アルデヒド基、プロピオンアルデヒド基、ブチルアルデヒド基、マレイミド基及びスクシンイミド誘導体からなる群から選択される、請求項1又は2に記載の結合体。
【請求項4】
前記生理活性ポリペプチドは、グルカゴン様ペプチド−1(GLP−1)、好中球増加因子(G−CSF)、エリスロポエチン(EPO)、グルカゴン、オキシントモジュリン、成長ホルモン放出ホルモン、成長ホルモン放出ペプチド、インターフェロン受容体、Gタンパク質共役受容体(G protein-coupled receptor)、インターロイキン、インターロイキン受容体、酵素類、インターロイキン結合タンパク質、サイトカイン結合タンパク質、マクロファージ活性因子、マクロファージペプチド、B細胞因子、T細胞因子、タンパク質A、アレルギー抑制因子、細胞壊死糖タンパク質、免疫毒素、リンホトキシン、腫瘍壊死因子、腫瘍抑制因子、転移成長因子、アルファ−1アンチトリプシン、アルブミン、α−ラクトアルブミン、アポリポタンパク質−E、高グリコシル化赤血球生成因子、アンジオポエチン類、ヘモグロビン、トロンビン、トロンビン受容体活性ペプチド、トロンボモデュリン、血液凝固第VII因子、第VIIa因子、第VIII因子、第IX因子、及び第XIII因子、プラスミノーゲン活性因子、フィブリン−結合ペプチド、ウロキナーゼ、ストレプトキナーゼ、ヒルジン、タンパク質C、C−反応性タンパク質、レニンインヒビター、コラゲナーゼインヒビター、スーパーオキシドディスムターゼ、レプチン、血小板由来成長因子、上皮細胞成長因子、表皮細胞成長因子、アンジオスタチン、アンジオテンシン、骨形成成長因子、骨形成促進タンパク質、カルシトニン、アトリオペプチン、軟骨誘導因子、エルカトニン、結合組織活性因子、組織因子経路インヒビター、卵胞刺激ホルモン、黄体形成ホルモン、黄体形成ホルモン放出ホルモン、神経成長因子、副甲状腺ホルモン、リラキシン、セクレチン、ソマトメジン、インスリン様成長因子、副腎皮質ホルモン、コレシストキニン、膵臓ポリペプチド、ガストリン放出ペプチド、コルチコトロピン放出因子、甲状腺刺激ホルモン、オートタキシン、ラクトフェリン、ミオスタチン、細胞表面抗原、ウイルス由来ワクチン抗原、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体及び抗体断片からなる群から選択される、請求項1又は2に記載の結合体。
【請求項5】
前記免疫グロブリンFc断片は非グリコシル化された、請求項1又は2に記載の結合体。
【請求項6】
前記免疫グロブリンFc断片は、IgG、IgA、IgD、IgE、IgM、これらの組み合わせ(combination)及びこれらのハイブリッド(hybrid)からなる群から選択されるものから誘導される、請求項1又は2に記載の結合体。
【請求項7】
前記免疫グロブリンFc断片はIgG4 Fc断片である、請求項1又は2に記載の結合体。
【請求項8】
前記生理活性ポリペプチド−免疫グロブリンFc断片の結合体は、pH 6.0におけるFcRnに対する結合量とpH 7.4におけるFcRnに対する結合量の割合が、前記結合体で使用されたものと同じ免疫グロブリンFc断片のFcRnに対する結合量を結合体に使用されるのと同一の条件で測定することにより決定される割合の±4%以内である、請求項1に記載の結合体。
【請求項9】
(a)FcRn結合領域を含む免疫グロブリンFc断片及び生理活性ポリペプチドを非ペプチド性リンカーを介して互いに連結させ、生理活性ポリペプチド−免疫グロブリンFc断片の結合体の混合物を製造するステップと、
(b)pH 6.0におけるFcRnに対する結合量(binding amount at pH 6.0)及びpH 7.4におけるFcRnに対する結合量(binding amount at pH 7.4)を下記数式(1)に代入して結合割合の値を算出したとき、前記生理活性ポリペプチド−免疫グロブリンFc断片の結合体の当該結合割合の値が、免疫グロブリンFc断片の結合割合の値±6.0%の範囲内である結合体を前記混合物から分離するステップとを含み、
前記(b)ステップで分離された結合体は、非ペプチド性リンカーが免疫グロブリンFc断片のN末端に結合された形態であり、
前記非ペプチド性リンカーは、下記式(1)で表されるポリエチレングリコールであり、
前記免疫グロブリンFc断片は、ヒンジ領域、CH2ドメイン及びCH3ドメインを含み、非ペプチド性ポリマーによるさらなる変性を有していない、請求項1又は2に記載の生理活性ポリペプチド−免疫グロブリンFc断片結合体の製造方法。
【数2】
【化2】
(ここで、n=50〜250である。)
【請求項10】
前記(b)ステップは、前記結合体を分離する前に数式(1)を用いて前記結合体の結合割合の値及び前記免疫グロブリンFc断片の結合割合を決定することを含む、請求項に記載の方法。
【請求項11】
前記生理活性ポリペプチドは、グルカゴン様ペプチド−1(GLP−1)、好中球増加因子(G−CSF)、エリスロポエチン(EPO)、グルカゴン、オキシントモジュリン、成長ホルモン放出ホルモン、成長ホルモン放出ペプチド、インターフェロン受容体、Gタンパク質共役受容体(G protein-coupled receptor)、インターロイキン、インターロイキン受容体、酵素類、インターロイキン結合タンパク質、サイトカイン結合タンパク質、マクロファージ活性因子、マクロファージペプチド、B細胞因子、T細胞因子、タンパク質A、アレルギー抑制因子、細胞壊死糖タンパク質、免疫毒素、リンホトキシン、腫瘍壊死因子、腫瘍抑制因子、転移成長因子、アルファ−1アンチトリプシン、アルブミン、α−ラクトアルブミン、アポリポタンパク質−E、高グリコシル化赤血球生成因子、アンジオポエチン類、ヘモグロビン、トロンビン、トロンビン受容体活性ペプチド、トロンボモデュリン、血液凝固第VII因子、第VIIa因子、第VIII因子、第IX因子、及び第XIII因子、プラスミノーゲン活性因子、フィブリン−結合ペプチド、ウロキナーゼ、ストレプトキナーゼ、ヒルジン、タンパク質C、C−反応性タンパク質、レニンインヒビター、コラゲナーゼインヒビター、スーパーオキシドディスムターゼ、レプチン、血小板由来成長因子、上皮細胞成長因子、表皮細胞成長因子、アンジオスタチン、アンジオテンシン、骨形成成長因子、骨形成促進タンパク質、カルシトニン、アトリオペプチン、軟骨誘導因子、エルカトニン、結合組織活性因子、組織因子経路インヒビター、卵胞刺激ホルモン、黄体形成ホルモン、黄体形成ホルモン放出ホルモン、神経成長因子、副甲状腺ホルモン、リラキシン、セクレチン、ソマトメジン、インスリン様成長因子、副腎皮質ホルモン、コレシストキニン、膵臓ポリペプチド、ガストリン放出ペプチド、コルチコトロピン放出因子、甲状腺刺激ホルモン、オートタキシン、ラクトフェリン、ミオスタチン、細胞表面抗原、ウイルス由来ワクチン抗原、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体及び抗体断片からなる群から選択される、請求項に記載の方法。
【請求項12】
前記免疫グロブリンFc断片は非グリコシル化された、請求項に記載の方法。
【請求項13】
前記免疫グロブリンFc断片は、IgG、IgA、IgD、IgE、IgM、これらの組み合わせ及びこれらのハイブリッドからなる群から選択されるものから誘導される、請求項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生理活性ポリペプチド及びFcRn結合領域を含む免疫グロブリンFc断片が非ペプチド性リンカーを介して連結された、生理活性ポリペプチド−免疫グロブリンFc断片の結合体であり、免疫グロブリンFc断片の固有の結合力を維持することを特徴とする結合体、前記結合体の製造方法、前記結合体のFcRnに対する固有の結合力を維持させる方法及び前記結合体を含み、免疫グロブリンFc断片のFcRnに対する固有の結合力が維持されたことを特徴とする、組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
タンパク質の血中半減期を延長させるために、ポリエチレングリコール重合体、アルブミン、脂肪酸、抗体Fc(constant region)などのキャリアを結合させたタンパク質結合体又は複合体に関する様々な研究が行われてきた。これまで知られてきた研究内容の大部分は、血中半減期を延長させて薬物投与間隔を短くし、患者の利便性を増大させることを目的としている。しかし、従来の多くの技術が、治療用タンパク質とキャリアタンパク質間の非特異的な結合による空間的な障害などによるタンパク質の活性減少などの問題を示した。また、血中アルブミンとの可逆的な結合により血中半減期を延長させる脂肪酸結合体の場合、タンパク質と脂肪酸の可逆結合により、タンパク質医薬品消失の最も多くの部分を占める腎クリアランス(renal clearance)を避けることができず、その血中半減期を大幅に延長するのに限界がある。
【0003】
また、タンパク質をはじめとする生理活性物質の半減期を延長させるために、免疫グロブリン断片を用いる努力がなされている。免疫グロブリンFcのCH2−CH3部分には、抗体の半減期を長くするFcRn(protection receptor)結合部位が存在する。FcRnはMHC クラスIに関連するタンパク質であり、血管内皮細胞で発現され、IgGとアルブミンに結合する。特徴的としては、pHが弱酸性であるときにIgGとFcRn間の結合が強く、中性pHでは結合力がないという点が挙げられる。従って、IgGが血管から血管内皮細胞にピノサイトーシス(pinocytosis)やエンドサイトーシス(endocytosis)により細胞内に入り、リソソーム(lysosome、pH 6.0)内に入ってもFcRnによって保護されるため、分解されずにリサイクル(recycling)により細胞膜と融合すると、pH 7.4においてIgGがFcRnから解離して再び血管に排出される。このような過程により、FcRn結合部位があるIgG1、IgG2及びIgG4の人体内半減期は平均3週間と、他のタンパク質に比べて長い。
【0004】
従って、免疫グロブリンのFc断片を生理活性物質に連結し、FcRnリサイクリングにより生理活性物質の半減期を延長させることができるが、ここで、生理活性物質と免疫グロブリンFc断片が互いに連結される際に、生理活性物質の活性を阻害せずに、かつ免疫グロブリンFc断片のFcRnに対する結合力も維持することのできる方法の開発が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】大韓民国公開特許第10−2012−0137271号
【特許文献2】大韓民国公開特許第10−2009−0008151号
【特許文献3】国際特許公開第97/34631号
【特許文献4】国際特許公開第96/32478号
【特許文献5】大韓民国特許出願第10−2006−0077377号
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】DRUG METABOLISM AND DISPOSITION 39:1469-1477、2011
【非特許文献2】H.Neurath, R.L.Hill, The Proteins, Academic Press, New York, 1979
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者らは、生理活性ポリペプチドの活性を阻害せずに、かつ免疫グロブリンFc断片自体のFcRnに対する固有の結合力が維持され、中性pHにおいてFcRnから容易に解離する結合体を製造するために鋭意努力した結果、生理活性ポリペプチド及びFcRn結合領域を含む免疫グロブリンFc断片を非ペプチド性リンカーで連結した結合体の場合、FcRnに対する免疫グロブリンFc断片の固有の結合力を維持しながらも、pH 7.4の中性では容易に解離することを確認し、本発明を完成した。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、生理活性ポリペプチド及びFcRn結合領域を含む免疫グロブリンFc断片が非ペプチド性リンカーを介して連結された、生理活性ポリペプチド−免疫グロブリンFc断片の結合体であり、前記生理活性ポリペプチド−免疫グロブリンFc断片の結合体は、pH 6.0におけるFcRnに対する結合量(binding amount at pH 6.0)とpH 7.4におけるFcRnに対する結合量(binding amount at pH 7.4)の割合が免疫グロブリンFc断片をFcRnに対して同一の条件で測定したときに示す割合の±6%以内である結合体を提供することを目的とする。
【0009】
また、本発明の目的は、生理活性ポリペプチド及びFcRn結合領域を含む免疫グロブリンFc断片が非ペプチド性リンカーを介して連結された、生理活性ポリペプチド−免疫グロブリンFc断片の結合体であり、前記生理活性ポリペプチド−免疫グロブリンFc断片の結合体は、pH 6.0におけるFcRnに対する結合量(binding amount at pH 6.0)とpH 7.4におけるFcRnに対する結合量(binding amount at pH 7.4)を下記数式(1)に代入して結合割合の値を算出したとき、結合割合の値が、免疫グロブリンFc断片をFcRnに対して同一の条件で測定したときに示す結合割合の±6%以内である結合体を提供することを目的とする。
【0010】
【数1】
【0011】
さらに、本発明は、(a)FcRn結合領域を含む免疫グロブリンFc断片及び生理活性ポリペプチドを、非ペプチド性リンカーを介して互いに連結させ、生理活性ポリペプチド−免疫グロブリンFc断片の結合体の混合物を製造するステップと、(b)pH 6.0におけるFcRnに対する結合量及びpH 7.4におけるFcRnに対する結合量を前記数式(1)に代入して結合割合の値を算出したとき、前記生理活性ポリペプチド−免疫グロブリンFc断片の結合体の結合割合の値が免疫グロブリンFc断片の結合割合の値の±6%の範囲内である結合体を分離するステップとを含み、免疫グロブリンFc断片のFcRnに対する固有の結合力を維持する、生理活性ポリペプチド−免疫グロブリンFc断片結合体の製造方法を提供することにある。
【0012】
さらに、本発明は、生理活性ポリペプチド及びFcRn結合領域を含む免疫グロブリンFc断片を非ペプチド性リンカーを介して連結させるステップを含む、生理活性ポリペプチド−免疫グロブリンFc断片結合体のFcRnに対する固有の結合力を維持させる方法を提供することを目的とする。
【0013】
さらに、本発明は、前記生理活性ポリペプチド−免疫グロブリンFc断片の結合体を含み、免疫グロブリンFc断片のFcRnに対する固有の結合力が維持されることを特徴とする、組成物を提供することを目的とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明の結合体は、FcRnに対する免疫グロブリンFc断片の固有の結合力を維持しながらも、pH 7.4のような中性では容易に解離するため、これを生理活性ポリペプチドの血中半減期の延長に有用に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】FcRnに結合されたタンパク質のリサイクリング過程の模式図を示したものである。
図2】酸性pHにおけるFcRnに対する免疫グロブリンタンパク質の結合体センソグラムを示したものである。
図3】中性pHにおけるFcRnに対する免疫グロブリンタンパク質の結合体センソグラムを示したものである。
図4】GLP−1R作用剤(agonist)結合体のin vivo薬物動態比較試験の結果を示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の一態様は、生理活性ポリペプチド及びFcRn結合領域を含む免疫グロブリンFc断片が非ペプチド性リンカーを介して連結された、生理活性ポリペプチド−免疫グロブリンFc断片の結合体であって、前記生理活性ポリペプチド−免疫グロブリンFc断片の結合体は、pH 6.0におけるFcRnに対する結合量(binding amount at pH 6.0)とpH 7.4におけるFcRnに対する結合量(binding amount at pH 7.4)の割合が免疫グロブリンFc断片をFcRnに対して同一の条件で測定したときに示す割合の±6%以内である結合体である。
【0017】
一具体例として、本発明による結合体は、下記数式(1)の結合割合が免疫グロブリンFc断片の対応結合割合の値の±6%内であることを特徴とする。
【0018】
【数2】
(1)
【0019】
他の具体例として、本発明による結合体は、非ペプチド性リンカーが連結された生理活性ポリペプチドと免疫グロブリンFc断片をpH4.0〜9.0で反応させ、生理活性ポリペプチドが非ペプチド性リンカーを介して免疫グロブリンFc断片中、FcRn結合領域以外の部分に連結させたことを特徴とする。
【0020】
さらに、他の具体例として、本発明による結合体に含まれる非ペプチド性リンカーは、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコール−プロピレングリコール共重合体、ポリオキシエチル化ポリオール、ポリビニルアルコール、多糖類、デキストラン、ポリビニルエチルエーテル、生分解性高分子、脂質重合体、キチン、ヒアルロン酸、及びこれらの組み合わせからなる群から選択されることを特徴とする。
【0021】
さらに、他の具体例として、本発明による結合体に含まれる非ペプチド性リンカーは、下記一般式(1)で表されるポリエチレングリコール重合体であることを特徴とする。
【0022】
【化1】
ここで、n=10〜2400である。
【0023】
さらに、他の具体例として、本発明による結合体に含まれる前記非ペプチド性リンカーの反応基は、反応アルデヒド基、プロピオンアルデヒド基、ブチルアルデヒド基、マレイミド基及びスクシンイミド誘導体からなる群から選択されることを特徴とする。
【0024】
さらに、他の具体例として、本発明による結合体に含まれる生理活性ポリペプチドは、グルカゴン様ペプチド−1(GLP−1)、好中球増加因子(G−CSF)、ヒト成長ホルモン(hGH)、エリスロポエチン(EPO)、グルカゴン、オキシントモジュリン、インスリン、成長ホルモン放出ホルモン、成長ホルモン放出ペプチド、インターフェロン、インターフェロン受容体、Gタンパク質共役受容体(G protein-coupled receptor)、インターロイキン、インターロイキン受容体、酵素類、インターロイキン結合タンパク質、サイトカイン結合タンパク質、マクロファージ活性因子、マクロファージペプチド、B細胞因子、T細胞因子、タンパク質A、アレルギー抑制因子、細胞壊死糖タンパク質、免疫毒素、リンホトキシン、腫瘍壊死因子、腫瘍抑制因子、転移成長因子、アルファ−1アンチトリプシン、アルブミン、α−ラクトアルブミン、アポリポタンパク質−E、高グリコシル化赤血球生成因子、アンジオポエチン類、ヘモグロビン、トロンビン、トロンビン受容体活性ペプチド、トロンボモデュリン、血液凝固第VII因子、第VIIa因子 、第VIII因子、第IX因子、及び第XIII因子、プラスミノーゲン活性因子、フィブリン−結合ペプチド、ウロキナーゼ、ストレプトキナーゼ、ヒルジン、タンパク質C、C−反応性タンパク質、レニンインヒビター、コラゲナーゼインヒビター、スーパーオキシドディスムターゼ、レプチン、血小板由来成長因子、上皮細胞成長因子、表皮細胞成長因子、アンジオスタチン、アンジオテンシン、骨形成成長因子、骨形成促進タンパク質、カルシトニン、アトリオペプチン、軟骨誘導因子、エルカトニン、結合組織活性因子、組織因子経路インヒビター、卵胞刺激ホルモン、黄体形成ホルモン、黄体形成ホルモン放出ホルモン、神経成長因子、副甲状腺ホルモン、リラキシン、セクレチン、ソマトメジン、インスリン様成長因子、副腎皮質ホルモン、コレシストキニン、膵臓ポリペプチド、ガストリン放出ペプチド、コチコトロピン放出因子、甲状腺刺激ホルモン、オートタキシン、ラクトフェリン、ミオスタチン、細胞表面抗原、ウイルス由来ワクチン抗原、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体及び抗体断片からなる群から選択されることを特徴とする。
【0025】
さらに、他の具体例として、本発明による結合体に含まれるFcRn結合領域を含む免疫グロブリンFc断片は、CH2ドメイン、CH3ドメイン、又はその両方を含むことを特徴とする。
【0026】
さらに、他の具体例として、本発明による結合体に含まれる免疫グロブリンFc断片は、非グリコシル化されたことを特徴とする。
【0027】
さらに、他の具体例として、本発明による結合体に含まれる免疫グロブリンFc断片は、ヒンジ(hinge)領域を含むことを特徴とする。
【0028】
さらに、他の具体例として、本発明による結合体に含まれる免疫グロブリンFc断片は、IgG、IgA、IgD、IgE、IgM、これらの組み合わせ(combination)及びこれらのハイブリッド(hybrid)からなる群から選択されることを特徴とする。
【0029】
さらに、他の具体例として、本発明による結合体に含まれる免疫グロブリンFc断片は、IgG4 Fc断片であることを特徴とする。
【0030】
本発明の他の一態様は、(a)FcRn結合領域を含む免疫グロブリンFc断片及び生理活性ポリペプチドを非ペプチド性リンカーを介して互いに連結させ、生理活性ポリペプチド−免疫グロブリンFc断片の結合体の混合物を製造するステップと、(b)pH 6.0におけるFcRnに対する結合量及びpH 7.4におけるFcRnに対する結合量を前記数式(1)に代入して結合割合の値を算出したとき、前記生理活性ポリペプチド−免疫グロブリンFc断片の結合体の当該結合割合の値が、免疫グロブリンFc断片の結合割合の値±6.0%の範囲内である結合体を分離するステップを含み、免疫グロブリンFc断片のFcRnに対する固有の結合力を維持する、生理活性ポリペプチド−免疫グロブリンFc断片結合体の製造方法である。
【0031】
一つの具体例として、本発明に係る製造方法に使用される非ペプチド性リンカーは、下記一般式(1)で表されるポリエチレングリコール重合体であることを特徴とする。
【0032】
【化2】
ここで、n=10〜2400である。
【0033】
他の具体例として、本発明に係る製造方法において、前記(b)ステップで分離された結合体は、非ペプチド性リンカーが免疫グロブリンFc断片のN末端に結合された形態であることを特徴とする。
【0034】
本発明の他の一態様は、生理活性ポリペプチド及びFcRn結合領域を含む免疫グロブリンFc断片を非ペプチド性リンカーを介して連結させるステップを含む、生理活性ポリペプチド−免疫グロブリンFc断片結合体のFcRnに対する固有の結合力を維持させる方法である。
【0035】
他の具体例として、本発明に係る前記方法において固有の結合力の維持は、in vivoで行われることを特徴とする。
【0036】
本発明の他の一態様は、前記生理活性ポリペプチド−免疫グロブリンFc断片の結合体を含み、免疫グロブリンFc断片のFcRnに対する固有の結合力が維持されたことを特徴とする、組成物である。
【0037】
本発明は、一態様として、生理活性ポリペプチド及びFcRn結合領域を含む免疫グロブリンFc断片が非ペプチド性リンカーを介して連結された、生理活性ポリペプチド−免疫グロブリンFc断片の結合体であり、前記生理活性ポリペプチド−免疫グロブリンFc断片の結合体は、pH 6.0におけるFcRnに対する結合量(binding amount at pH 6.0)とpH 7.4におけるFcRnに対する結合量(binding amount at pH 7.4)の割合が免疫グロブリンFc断片をFcRnに対して同一の条件で測定したときに示す結合割合の±6%以内である結合体を提供する。
【0038】
本発明において生理活性ポリペプチド−免疫グロブリンFc断片の結合体の結合量とは、当該するpHでFcRnに結合しているか、又は結合しないままで存在する結合体のタンパク質の総濃度中でFcRnに結合している割合を指す。本発明において、このような結合量は、両pHポイントにおける結合量の比を計算するのに使われるため、一方の測定pHにおける絶対的な結合量を求め、そこから結合量比を計算しても良いが、結合体の結合量に比例しながら測定することも簡単な他の物理量を測定することにより代替することができる。例えば、表面プラズモン共鳴(SPR)の共鳴信号を測定し、pH 6.0と7.4における信号の比を計算して結合量の比を求めることができ、その他の方法も可能である。
【0039】
具体的には、本発明は、生理活性ポリペプチド及びFcRn結合領域を含む免疫グロブリンFc断片が非ペプチド性リンカーを介して連結された、生理活性ポリペプチド−免疫グロブリンFc断片の結合体であり、前記生理活性ポリペプチド−免疫グロブリンFc断片の結合体は、pH 6.0におけるFcRnに対する結合量(binding amount at pH 6.0)及びpH 7.4におけるFcRnに対する結合量(binding amount at pH 7.4)を下記数式(1)に代入して算出したとき、その値(結合割合)が、免疫グロブリンFc断片をFcRnに対して同一の条件で測定したときに示す値(結合割合)の±6%の範囲内であることを特徴とする結合体を提供する。
【0040】
【数3】
【0041】
前記結合割合の値は、pH 7.4において、前記結合体(又は免疫グロブリンFc断片)がFcRnに結合する量をpH 6.0において、前記結合体(又は免疫グロブリンFc断片)がFcRnに結合する量で除した値に100を乗じてパーセント(%)の値で表すことができる。
【0042】
前記結合割合の値を測定する方法は、特にこれに限定されるものではないが、モノクローナル抗体の半減期を予測するためのWeirong Wangグループが提案した方法(非特許文献1)を用いて算出することができる。前記文献に記述された方法では、結合割合の値が高いモノクローナル抗体の場合in vivo半減期が短いことが示された。
【0043】
前記結合割合の値を測定する方法は、特にこれに限定されるものではないが、具体的には、表面プラズモン共鳴(surface plasmon resonance)を利用することができる。
【0044】
例えば、FcRnをバイオセンサーチップ(例えば、Biacore CM5バイオセンサーチップ)にアミンカップリングキットなどを利用して固定させ、FcRnが固定されたバイオセンサーチップにFcRnとの結合程度を測定しようとする物質(例えば、結合体又は免疫グロブリンFc断片)を含む酸性の緩衝液(例えば、pH 6.0の緩衝液)を注入してFcRnに結合させた後、中性の緩衝液(例えば、pH 7.4の緩衝液)を注入することにより行うことができる。ここで、pH 6.0の緩衝液内のサンプルが注入完了する前に平衡状態における共鳴単位(resonance unit、RU)を測定してpH 6.0における結合量を算出し、pH 7.4の緩衝液注入後、共鳴単位を測定してpH 7.4における結合量を算出した後、前記pH 6.0における結合量をpH 7.4における結合量で除して結合割合を算出することができ、パーセンテージで表したい場合、前記除した値に100を乗じて結合割合の値を算出することができる。
【0045】
前記の方法において、前記pH 6.0の緩衝液は、FcRnとの結合程度を測定しようとする物質とFcRnとの結合を誘導することができれば、その組成は特に限定されるものではないが、その例としてリン酸塩などの塩を含む緩衝液が挙げられる。前記緩衝液に含まれる塩の濃度は、50〜200mMであってもよいが、これに限定されるものではない。また、FcRnが固定されたバイオセンサーチップに注入されるとき、前記緩衝液は、25℃前後の温度であってもよいが、緩衝液のpHが変わらない温度範囲内では、測定温度を変化させることができる。
【0046】
また、前記pH 6.0の緩衝液は、FcRnとの結合程度を測定しようとする物質を含むことができ、FcRnとの結合程度を測定することができれば、その濃度は、特に限定されるものではないが、その例として100nM〜12.5nMの濃度でFcRnとの結合程度を測定しようとする物質を含むことができる。
【0047】
前記の方法において、前記pH 7.4の緩衝液は、FcRnとの結合程度を測定しようとする物質とFcRn間の解離を誘導することができれば、その組成は特に限定されるものではないが、その例としてリン酸塩を含む緩衝液が挙げられる。前記緩衝液に含まれる塩の濃度は、50〜200 mMであってもよいが、これに限定されるものではない。
また、FcRnが固定されたバイオセンサーチップに注入されるとき、前記緩衝液は、25〜37℃の温度であってもよいが、これに限定されるものではない。具体的な実施形態において結合量の割合を測定する温度は25℃である。
【0048】
また、pH 6.0においてFcRnとこれとの結合程度を測定しようとする物質間の結合量は、pH 6.0のサンプル注入が完了する2〜60秒前に測定された共鳴単位の値であってもよい。測定時点でFcRnとこれとの結合程度を測定しようとする物質間の結合は、平衡状態(equilibrium state)にあることが好ましい。
【0049】
また、pH 7.4においてFcRnとこれとの結合程度を測定しようとする物質間の結合量は、pH 7.4の緩衝液の注入後10〜20秒後に測定された共鳴単位の値であってもよい。測定時点は、RU値が急速に変化する点とRU値が0になる前の間にあることが好ましい。
【0050】
免疫グロブリンFc断片と、本発明による結合体との間の結合割合の比較において、それぞれの結合割合の値は、同じ実験方法及び条件の下で算出された値であることが好ましいが、結合体の種類に応じて緩衝液の組成及び温度などには違いを示すことがある。
【0051】
上述の表面プラズモン共鳴は、結合割合の値を算出するための方法中の一つの例示であり、前記方法以外にも、酵素免疫吸着法(ELISA、enzyme immunosorbent assay)などのようにFcRnと結合体間の結合量を測定することができる方法であれば、如何なる方法でも使用可能である。また、前記結合量は、使用する方法に応じてその単位が異なることがある。
【0052】
このような方法により測定された生理活性ポリペプチドと、FcRn結合領域を含む免疫グロブリンFc断片が非ペプチド性リンカーを介して連結された生理活性ポリペプチド−免疫グロブリンFc断片の結合体の結合割合の値が、免疫グロブリンFc断片自体を利用し、同一の条件で測定して算出された結合割合の値と±6.0%の範囲内である場合、生体内持続性において優れた効果を有する。
【0053】
本発明では、生理活性ポリペプチド及びFcRn結合領域を含む免疫グロブリンFc領域を非ペプチド性リンカーで共有結合的に連結させる場合、結合体の形になっても、FcRnに対する免疫グロブリンFc断片の固有の結合力が維持され、細胞内のリサイクリングが円滑に起こり、体内半減期を延長させることができることを確認した。特に、非ペプチド性リンカーが免疫グロブリンFc断片のFcRn結合領域以外に結合する場合、FcRn結合力を低下させず、非ペプチド性重合体がポリエチレングリコールである場合、特にこれに限定されるものではないが、−[O−CH2−CH2n-においてnが10以上、具体的には10〜2400、より具体的には10〜480であり、さらに具体的に50〜250であるが、これに限定されるものではない。
【0054】
具体的には10〜2400、より具体的には50〜2400である場合、生理活性ポリペプチド及びFc領域の生理活性機能及びFcRn結合機能のそれぞれに影響を及ぼさないことを確認した。本発明は、そのような特徴に基づいたものである。
【0055】
本発明における「生理活性ポリペプチド−免疫グロブリンFc断片の結合体」は、生理活性ポリペプチド及びFcRn結合領域を含む免疫グロブリンFc断片が非ペプチド性リンカーを介して共有結合的に連結された結合体であって、pH 6.0におけるFcRnに対する結合量及びpH 7.4におけるFcRnに対する結合量を前記数式(1)に代入して算出したとき、その値が、免疫グロブリンFc断片の値に対して±6.0%の範囲を示すことを特徴とする。
【0056】
前記結合体において、非ペプチド性リンカーは、免疫グロブリンFc断片のうち、FcRn結合領域、例えば、CH2の252〜257、307〜311そしてCH3 433〜436(以上kabat numbering)領域から解離したアミノ酸の残基に結合されたものであってもよく、好ましくは、免疫グロブリンFcのN末端又はC末端、より好ましくはN末端に、本発明の非ペプチド性リンカーが連結された形であるが、これに限定されるものではない。
【0057】
免疫グロブリンFcのN末端又はC末端に、本発明の非ペプチド性リンカーが結合すると、FcRnに対する結合力をほぼ減少させず、免疫グロブリンFc断片固有のFcRnに対する結合力を結合体の形態でも維持させることができある。
【0058】
本発明における「非ペプチド性リンカー」は、繰り返し単位が2つ以上結合された生体適合性重合体を意味し、前記繰り返し単位は、ペプチド結合ではない任意の共有結合によって互いに連結される。このような非ペプチド性リンカーは、両末端又は三末端を有することができる。
【0059】
本発明に使用可能な非ペプチド性リンカーは、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコールとプロピレングリコールの共重合体、ポリオキシエチル化ポリオール、ポリビニルアルコール、ポリサッカライド、デキストラン、ポリビニルエチルエーテル、PLA(ポリ乳酸、polylactic acid)及びPLGA(ポリ乳酸 −グリコール酸、polylactic-glycolic acid)などの生分解性高分子、脂質重合体、キチン類、ヒアルロン酸及びこれらの組み合わせからなる群れから選択され、これに限定されるものではないが、好ましくは、ポリエチレングリコールであり、その例として下記一般式(1)で表されるポリエチレングリコール重合体が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0060】
【化3】
ここで、n=10〜2400であり、
好ましくは、n=10〜480であり、
さらに好ましくは、n=50〜250であるが、これに限定されるものではない。
【0061】
一方、前記一般式(1)で表されるポリエチレングリコールと対応する分子量を有する他の非ペプチド性リンカーも本発明の範疇に含まれる。
【0062】
また、 当該分野に周知のこれらの誘導体及び当該分野の技術水準で容易に製造できる非ペプチド性リンカーの誘導体も本発明の範囲に含まれる。
【0063】
本発明において、非ペプチド性リンカーとして使用されるポリエチレングリコールは、両側に結合された生理活性ポリペプチドと免疫グロブリンFc断片間に空間的な障害をもたらさず、生理活性ポリペプチドの生理的活性の維持及び免疫グロブリンFc断片のFcRn結合力の維持効果をいずれももたらすという利点がある。
【0064】
従来のインフレームフュージョン(inframe fusion)方法により製造された融合タンパク質に用いられていたペプチド性リンカーにおいては、生体内でタンパク質分解酵素により容易に切断され、キャリアによる活性薬物の血中半減期の延長効果を期待したほど得られないという欠点があり、本発明の非ペプチドリンカーを用いた結合体は、このような欠点を画期的に克服した。非ペプチドリンカーは、タンパク質分解酵素に抵抗性のある重合体を使用し、キャリアと類似したペプチドの血中半減期を維持することができる。従って、本発明で用いられる非ペプチド性リンカーは、前記のような役割、すなわち、生体内タンパク質分解酵素に抵抗性のある重合体であれば制限されることなく使用することができる。
【0065】
また、前記免疫グロブリンFc断片に結合される本発明の非ペプチド性リンカーは、一種類の重合体だけでなく、異なる種類の重合体の組み合わせを用いることもできる。
【0066】
本発明に使用される非ペプチド性リンカーは、免疫グロブリンFc断片及び生理活性ポリペプチドと結合する反応基を有する。
【0067】
前記非ペプチド性重合体の両末端の反応基は、反応アルデヒド基、プロピオンアルデヒド基、ブチルアルデヒド基、マレイミド(maleimide)基及びスクシンイミド(succinimide)誘導体からなる群から選択することが好ましい。前記におけるスクシンイミド誘導体としては、スクシンイミジルプロピオネート、ヒドロキシスクシンイミジル、スクシンイミジルカルボキシメチル又はスクシンイミジルカーボネートを使用することができる。特に、前記非ペプチド性リンカーが両末端に反応アルデヒド基を有する場合、非特異的反応を最小限に抑え、非ペプチド性リンカーの両末端で生理活性ポリペプチド及び免疫グロブリンとそれぞれ結合するのに効果的である。アルデヒド結合による還元性アルキル化により生成された最終的な産物は、アミド結合で連結されたものより遥かに安定的である。アルデヒド反応基は、低いpHでN末端に選択的に反応し、高いpH、例えば、pH 9.0の条件では、リジン残基と共有結合を形成することができる。ここで、非ペプチド性リンカーは、それ自体で少なくとも2つのアルデヒド基を含むものであるか、又は、少なくとも2つのアルコール基がアルデヒドを含む官能基で置換されたものであってもよい。
【0068】
前記非ペプチド性リンカーの両末端の反応基は、互いに同じものであってもよく、異なるものであってもよい。例えば、一方の末端にはマレイミド基を、もう一方の末端にはアルデヒド基、プロピオンアルデヒド基、又はブチルアルデヒドなどのアルキルアルデヒド基を有してもよい。両末端にヒドロキシ反応基を有するポリエチレングリコールを非ペプチド性リンカーとして利用する場合には、公知の化学反応により前記ヒドロキシ基を前述した様々な反応基で活性化するか、商業的に入手可能な修飾された反応基を有するポリエチレングリコールを用いることにより、本発明の結合体を製造することができる。
【0069】
本発明における「生理活性ポリペプチド」とは、生体内で何らかの生理作用を有するポリペプチドを総称する概念であり、ポリペプチド構造を有するという共通点を有し、様々な生理活性を有する。前記生理活性ポリペプチドとは、遺伝表現と生理機能を調整することにより、生体内における機能調節に関与する物質の欠乏や過度な分泌により正常でない病態を示す場合にそれを正常にする役割を果たすもの含み、一般的なタンパク質治療薬も含まれる。また、前記生理活性ポリペプチドは、天然型ポリペプチド以外にも、その誘導体もすべて含む概念である。
【0070】
本発明の結合体における生理活性ポリペプチドは、本発明の結合体の構造により血中半減期の延長を示す生理活性ポリペプチドであれば、特にその種類及びサイズに限定されない。本発明の一実施例では、代表的な生理活性ポリペプチドの例として、インスリン、インターフェロン、ヒト成長ホルモン及びGLP−1作用剤の様々な生理活性ポリペプチドを用いて結合体を製造し、前記ポリペプチドの種類及びサイズに関係なく、免疫グロブリンFc断片自体のFcRnに対する固有の結合力を依然として維持させることを確認した。
【0071】
生理活性ポリペプチドは、グルカゴン様ペプチド−1(GLP−1)、好中球増加因子(G−CSF)、ヒト成長ホルモン(hGH)、エリスロポエチン(EPO)、グルカゴン、オキシントモジュリン、インスリン、成長ホルモン放出ホルモン、成長ホルモン放出ペプチド、インターフェロン、インターフェロン受容体、Gタンパク質共役受容体(G protein-coupled receptor)、インターロイキン、インターロイキン受容体、酵素類、インターロイキン結合タンパク質、サイトカイン結合タンパク質、マクロファージ活性因子、マクロファージペプチド、B細胞因子、T細胞因子、タンパク質A、アレルギー抑制因子、細胞壊死糖タンパク質、免疫毒素、リンホトキシン、腫瘍壊死因子、腫瘍抑制因子、転移成長因子、アルファ−1アンチトリプシン、アルブミン、α−ラクトアルブミン、アポリポタンパク質−E、高グリコシル化赤血球生成因子、アンジオポエチン類、ヘモグロビン、トロンビン、トロンビン受容体活性ペプチド、トロンボモデュリン、血液凝固第VII因子、第VIIa因子、第VIII因子、第IX因子、及び第XIII因子、プラスミノーゲン活性因子、フィブリン−結合ペプチド、ウロキナーゼ、ストレプトキナーゼ、ヒルジン、タンパク質C、C−反応性タンパク質、レニンインヒビター、コラゲナーゼインヒビター、スーパーオキシドディスムターゼ、レプチン、血小板由来成長因子、上皮細胞成長因子、表皮細胞成長因子、アンジオスタチン、アンジオテンシン、骨形成成長因子、骨形成促進タンパク質、カルシトニン、アトリオペプチン、軟骨誘導因子、エルカトニン、結合組織活性因子、組織因子経路インヒビター、卵胞刺激ホルモン、黄体形成ホルモン、黄体形成ホルモン放出ホルモン、神経成長因子、副甲状腺ホルモン、リラキシン、シクレチン、ソマトメジン、インスリン様成長因子、副腎皮質ホルモン、コレシストキニン、膵臓ポリペプチド、ガストリン放出ペプチド、コチコトロピン放出因子、甲状腺刺激ホルモン、オートタキシン、ラクトフェリン、ミオスタチン、細胞表面抗原、ウイルス由来ワクチン抗原、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体及び抗体断片からなる群から選択されるものであってもよいが、これに限定されるものではない。また、前述の生理活性ポリペプチドは、天然型の生理活性ポリペプチドだけでなく、各ポリペプチドの作用剤、前駆物質、誘導体、断片、又は変異体をすべて包括する概念である。ここで、オキシントモジュリン誘導体の例は、特許文献1に開示されたものをすべて含み、インスリン分泌ペプチド誘導体の例については、特許文献2に開示されたものもすべて含むが、これらに限定されるものではない。
【0072】
本発明における「免疫グロブリンFc断片」とは、免疫グロブリンの重鎖と軽鎖の可変領域、重鎖定常領域1(CH1)及び軽鎖定常領域(CL1)を除いた、重鎖定常領域を意味する。ただし、前記Fc断片は、重鎖定常領域にヒンジ(hinge)部分を含むこともある。本発明において、前記免疫グロブリンFc断片は、免疫グロブリンFc断片のFcRnに対する結合力を維持しなければならないため、CH2ドメイン、CH3ドメイン、又はその両方を含むことが好ましい。
【0073】
また、本発明の免疫グロブリンFc断片は、生理活性ポリペプチドと非ペプチド性リンカーと互いに連結されても、固有のFcRn結合力を維持するものであれば、免疫グロブリンの重鎖と軽鎖の可変領域のみを除き、一部又は全重鎖定常領域1(CH1)及び/又は軽鎖定常領域1(CL1)を含む拡張されたFc断片であってもよい。
【0074】
このような免疫グロブリンFc断片は、生体内で代謝される生分解性のポリペプチドであるため、薬物のキャリアとして使用するのに安全である。また、免疫グロブリンFc断片は、免疫グロブリン分子全体に比べて相対的に分子量が少ないので、結合体の製造、精製及び収率の面で有利であるだけでなく、アミノ酸配列が抗体ごとに異なるため、高い非均質性を示すFab部分を除去することにより、物質の同質性が非常に高くなり、血中抗原性を誘発する可能性が低くなる効果も期待することができる。
【0075】
本発明における前記免疫グロブリンFc断片は、天然型アミノ酸配列だけでなく、その配列変異体(mutant)も含まれる。アミノ酸配列変異体とは、天然アミノ酸配列中の少なくとも1つのアミノ酸残基が欠失、挿入、非保存的もしくは保存的置換、又はそれらの組み合わせにより異なる配列を有するものを意味する。例えば、IgG Fcの場合、結合に重要であることが知られている214〜238、297〜299、318〜322又は327〜331位のアミノ酸残基が修飾に適した部位として用いられる。
【0076】
また、ジスルフィド結合を形成する部位が除去された変異体、天然FcからN末端のいくつかのアミノ酸が除去された変異体、天然FcのN末端にメチオニン残基が付加された変異体など、様々な種類の変異体が用いられる。また、エフェクター機能をなくすために、補体結合部位、例えばC1q結合部位が除去されてもよく、ADCC(antibody dependent cell mediated cytotoxicity)部位が除去されてもよい。このような免疫グロブリンFc断片の配列誘導体を製造する技術は、特許文献3、特許文献4などに開示されている。
【0077】
分子の活性を全体的に変化させないタンパク質及びペプチドにおけるアミノ酸交換は当該分野において公知である(非特許文献2)。最も一般的な交換は、アミノ酸残基Ala/Ser、Val/Ile、Asp/Glu、Thr/Ser、Ala/Gly、Ala/Thr、Ser/Asn、Ala/Val、Ser/Gly、Thy/Phe、Ala/Pro、Lys/Arg、Asp/Asn、Leu/Ile、Leu/Val、Ala/Glu、Asp/Gly間の交換である。
【0078】
場合によっては、リン酸化(phosphorylation)、硫酸化(sulfation)、アクリル化(acrylation)、グリコシル化(glycosylation)、メチル化(methylation)、ファルネシル化(farnesylation)、アセチル化(acetylation)及びアミド化(amidation)などにより修飾(modification)されてもよい。
【0079】
前述したFc変異体は、本発明のFc領域と同じ生物学的活性を示すが、 Fc断片の熱、pHなどに対する構造的安定性を向上させた変異体である。
【0080】
また、このようなFc断片は、ヒト及びウシ、ヤギ、ブタ、マウス、ウサギ、ハムスター、ラット、モルモットピックなどの動物の生体内から分離した天然のものから得てもよく、形質転換された動物細胞もしくは微生物から得られた組換えたもの又はその誘導体であってもよい。ここで、天然のものから得る方法は、全免疫グロブリンをヒト又は動物の生体から分離し、その後タンパク質分解酵素で処理して得ることができる。パパインで処理するとFab及びFcに切断され、ペプシンを処理すると、pF’c、及びF(ab)2に切断される。これらは、サイズ排除クロマトグラフィー(size-exclusion chromatography)などを用いてFc又はpF’cを分離することができる。
【0081】
ヒト由来のFc断片を微生物から得られた組換え免疫グロブリンFc断片であることが好ましい。
【0082】
また、免疫グロブリンFc断片は、天然型糖鎖、天然のものに比べて増加した糖鎖、天然のものに比べて減少した糖鎖、又は糖鎖が除去された形態であってもよい。このような免疫グロブリンFc糖鎖の増減又は除去には、化学的方法、酵素学的方法及び微生物を用いた遺伝工学的手法などの通常の方法が用いられる。ここで、Fcから糖鎖が除去された免疫グロブリンFc断片は、補体(c1q)の結合力が著しく低下し、抗体依存性細胞傷害又は補体依存性細胞傷害が減少又は除去されるので、生体内で不要な免疫反応を誘発しない。このようなことから、薬物のキャリアとしての本来の目的に、より合致する形は、糖鎖が除去されるか、非グリコシル化された免疫グロブリンFc断片である。
【0083】
本発明における「糖鎖の除去(Deglycosylation)」とは、酵素で糖を除去したFc断片を意味し、「(Aglycosylation)」とは、原核動物、好ましくは大腸菌で生産してグリコシル化 されていないFc断片を意味する。
【0084】
一方、免疫グロブリンFc断片は、ヒト又はウシ、ヤギ、ブタ、マウス、ウサギ、ハムスター、ラット、モルモットピックなどの動物起源であり、ヒト起源であることが好ましい。また、免疫グロブリンFc断片は、IgG、IgA、IgD、IgE、IgM由来であるか、又はそれらの組み合わせ(combination)もしくはそれらのハイブリッド(hybrid)によるFc断片であってもよい。ヒト血液に最も豊かなIgG又はIgM由来であることが好ましく、リガンド結合タンパク質の半減期を延長させることが知られているIgG由来であることが最も好ましい。
【0085】
一方、本発明において「組み合わせ(combination)」とは、二量体又は多量体を形成する際に、同一起源の単鎖免疫グロブリンFc断片をコードするポリペプチドが異なる起源の単鎖ポリペプチドに結合することを意味する。すなわち、IgG Fc、IgA Fc、IgM Fc、IgD Fc及びIgEのFc断片からなる群から選択される少なくとも2つの断片から二量体又は多量体を製造することができる。
【0086】
本発明における「ハイブリッド(hybrid)」とは、単鎖の免疫グロブリンFc断片内に少なくとも2つの異なる起源の免疫グロブリンFc断片に相当する配列が存在することを意味する用語である。本発明の場合、種々の形態のハイブリッドが可能である。すなわち、IgG Fc、IgM Fc、IgA Fc、IgE Fc及びIgD FcのCH1、CH2、CH3及びCH4からなる群れから1つ〜4つのドメインからなるドメインのハイブリッドが可能であり、ヒンジを含んでもよい。
【0087】
一方、IgGもIgG1、IgG2、IgG3及びIgG4のサブクラスに分けられ、本発明においては、それらの組み合わせ又はそれらのハイブリダイゼーションも可能である。IgG2及びIgG4サブクラスであることが好ましく、補体依存性障害(CDC、complementdependent cytotoxicity)などのエフェクター機能(effector function)のほとんどないIgG4のFc断片であることが最も好ましい。すなわち、本発明の薬物のキャリアとして最も好ましい免疫グロブリンFc断片は、ヒトIgG4由来の非グリコシル化されたFc断片である。ヒト由来のFc断片は、ヒト生体において抗原として作用し、それに対する新規な抗体を生成するなどの好ましくない免疫反応を起こす非ヒト由来のFc断片に比べて好ましい。
【0088】
本発明の一実施例では、インスリン、インターフェロン、ヒト成長ホルモン及びGLP−1作用剤をそれぞれをFcRn結合能力を有する免疫グロブリンFc断片と非ペプチド性重合体に連結し、結合体として、免疫グロブリンFc断片固有のFcRnに対する結合力を維持させ、中性のpHにおいてFcRnから容易に解離し、免疫グロブリンFc断片と類似した解離の程度を示す結合体を製造した(実施例、図2及び3)。また、本発明の結合体がインフレーム結合体に比べて体内持続性に優れていることを確認した(図4)。
【0089】
本発明の他の態様は、(a)FcRn結合領域を含む免疫グロブリンFc断片及び生理活性ポリペプチドを非ペプチド性リンカーを介して互いに連結させ、生理活性ポリペプチド−免疫グロブリンFc断片の結合体の混合物を製造するステップと、(b)pH 6.0におけるFcRnに対する結合量(binding amount at pH 6.0)及びpH 7.4におけるFcRnに対する結合量(binding amount at pH 7.4)を下記数式(1)に代入して結合割合の値を算出したとき、前記生理活性ポリペプチド−免疫グロブリンFc断片の結合体の当該結合割合の値が、免疫グロブリンFc断片の結合割合の値±6.0%の範囲内である結合体を分離するステップを含み、免疫グロブリンFc断片のFcRnに対する固有の結合力を維持する、生理活性ポリペプチド−免疫グロブリンFc断片結合体の製造方法を提供する。
【0090】
【数4】
【0091】
前記生理活性ポリペプチド、免疫グロブリンFc断片、非ペプチド性リンカー、結合体及び前記結合割合の値の算出については、前述した通りである。
【0092】
本発明の方法において、前記(a)ステップは、生理活性ポリペプチド及び免疫グロブリンFc断片を非ペプチド性リンカーを介して共有結合的に互いに連結させるステップである。(a)ステップは、(i)生理活性ポリペプチド又は免疫グロブリンFc断片のいずれか一方を、まず非ペプチド性リンカーの一末端の反応基に連結するステップ及び(ii)非ペプチド性リンカーの他末端の反応基に残りの一つを連結するステップを含んでもよく、ここで(i)と(ii)ステップの間に、非ペプチド性リンカーの一末端に生理活性ポリペプチド又は免疫グロブリンFc断片が結合されたものを分離するステップをさらに含んでもよい。このような結合体の製造において、特許文献4は、本発明の参考資料として引用される。
【0093】
このとき、生理活性ポリペプチドが非ペプチド性リンカーを介して免疫グロブリンFc断片中のFcRn結合領域以外の部分に連結されるために、非ペプチド性リンカーが連結された生理活性ポリペプチドと免疫グロブリンFc断片をpH 4.0〜9.0で反応させることができる。
【0094】
このような過程により結合体を製造すると、免疫グロブリンFc断片のFcRnに対する固有の結合力を維持する結合体以外にも、免疫グロブリンFc断片のFcRnに対する結合力が阻害された結合体などの副産物が発生し得る。従って、生理活性ポリペプチド及び免疫グロブリンFc断片を非ペプチド性リンカーを介して連結する反応の後に、これら混合物から免疫グロブリンFc断片のFcRnに対する固有の結合力を維持する生理活性ポリペプチド−免疫グロブリンFc断片結合体を分離する過程がさらに必要となる。
【0095】
従って、本発明の方法は、(b)pH 6.0におけるFcRnに対する結合量(binding amount at pH 6.0)及びpH 7.4におけるFcRnに対する結合量(binding amount at pH 7.4)を前記数式(1)に代入して結合割合の値を算出したとき、前記生理活性ポリペプチド−免疫グロブリンFc断片の結合体の当該結合割合の値が、免疫グロブリンFc断片の結合割合の値±6.0%の範囲内である結合体を分離するステップを含む。
【0096】
ここで、(b)ステップは、好ましくは、非ペプチド性リンカーが免疫グロブリンFc断片中のFcRn結合領域、例えばCH2の252〜257、307〜311そしてCH3 433〜436(以上cobat numbering)領域から解離したアミノ酸の残基に結合された結合体を分離するためのものであって、前記免疫グロブリンFc断片のN末端に非ペプチド性リンカーが結合され、Fc断片の固有のFcRn結合能が維持された結合体のみを特異的に分離するためのプロセスである。
【0097】
このとき、使用される非ペプチド性リンカー、生理活性ポリペプチドなどの種類によって分離精製条件は変わり得る。
【0098】
本発明他の一態様は、生理活性ポリペプチド及びFcRn結合領域を含む免疫グロブリンFc断片を非ペプチド性リンカーを介して連結させるステップを含む、生理活性ポリペプチド−免疫グロブリンFc断片結合体のFcRnに対する固有の結合力を維持させる方法を提供する。
【0099】
前記生理活性ポリペプチド、免疫グロブリンFc断片、非ペプチド性リンカー及び結合体については、前記で説明した通りである。
【0100】
本発明は、生理活性ポリペプチド及びFcRn結合領域を含む免疫グロブリンFc断片を非ペプチド性リンカーで連結させ、免疫グロブリンFc断片の固有のFcRn結合力を維持させながらも、中性のpHではFcRnと容易に解離されてリサイクリングが円滑に起こり、体内半減期が効果的に延長するという利点を有する。
【0101】
このとき、固有の結合力の維持は、in vivoで行われてもよい。
【0102】
本発明の他の一態様は、生理活性ポリペプチド−免疫グロブリンFc断片の結合体を含み、免疫グロブリンFc断片のFcRnに対する固有の結合力が維持されたことを特徴とする、組成物を提供する。
【0103】
前記生理活性ポリペプチド、免疫グロブリンFc断片、及び結合体については、前記で説明した通りである。
【実施例】
【0104】
以下、下記例により本発明をより詳しく説明する。ただし、下記例は本発明を例示するためのものに過ぎず、本発明の範囲がこれらに限定されるものではない。
【0105】
実施例:FcRn結合部位を含む免疫グロブリンFc断片及び生理活性タンパク質の結合体の製造
【0106】
(1)免疫グロブリンFc断片の製造
本発明者が既に出願した特許文献5「メチオニン残基が除去された免疫グロブリンFc領域の大量生産方法」により免疫グロブリンFc断片を製造した。
【0107】
(2)インスリン−結合体の製造
3.4 kDaプロピオン(propion)−ALD2 PEG(IDB、韓国)をインスリンのβ鎖のN末端に特異的にペグ化(PEGylation)させるために反応させた。反応液は、陽イオン交換カラムを使用して精製した。インスリン結合体の製造のために、精製されたモノペグ化インスリンと免疫グロブリンFcを反応させた。このとき、反応は、免疫グロブリンFcのN末端に特異的に送るためにpH 6.0〜8.2で行われた。反応が終結した後、反応液は陰イオン交換カラムを使用し、1次精製した後、疎水性カラムを使用して2次精製し、位置特異的に連結されたインスリン−結合体を得た。
【0108】
(3)インターフェロン−結合体の製造
3.4 kDaプロピオン−ALD2 PEG(IDB. 韓国)をヒトインターフェロンアルファ−2b(hIFNα−2b、分子量19kDa)が溶解した緩衝溶液に添加して反応させた。インターフェロンアルファのアミノ末端部位に選択的にPEGが連結され、PEGとインターフェロンアルファが1:1で結合された連結体を得るために、前記反応混合物を陰イオン交換カラムを行ってモノペグ化されたインターフェロン(mono-PEGylated IFNα−2b)を精製した。精製されたモノペグ化インターフェロンを免疫グロブリンFcのN末端に特異的に送るためにpH5.5〜6.5の条件で反応させた。結合反応後に生成されたインターフェロン−結合体を精製するために、反応混合物を陰イオン交換カラムに通過させてインターフェロン−結合体分画を得た。さらに、疎水性カラムを行い、最終的に位置特異的に連結されたインターフェロン−結合体を最終精製した。
【0109】
(4)ヒト成長ホルモン−結合体の製造
3.4 kDaプロピオン−ALD2 PEG(IDB.韓国)をヒト成長ホルモン(hGH、分子量22kDa)が溶解した緩衝溶液に添加して反応させた。ヒト成長ホルモンのアミノ末端部位に選択的にPEGが連結され、PEGとヒト成長ホルモンが1:1で結合された連結体を得るために、前記反応混合物を陰イオン交換カラムを行ってモノペグ化されたヒト成長ホルモン(mono-PEGylated hGH)を精製した。精製されたモノペグ化ヒト成長ホルモンに免疫グロブリンFc領域のN末端に特異的に結合させるために、またN末端に特異的に送るためにpH5.5〜6.5において反応させた。結合反応後、反応混合物を陰イオン交換カラムを行うことにより、最終的に位置特異的にヒト成長ホルモン−結合体分画を精製した。
【0110】
(5)GLP−1R作用剤−結合体の製造
3.4 kDaプロピオン−ALD2 PEG(IDB.韓国)をイミダゾ−アセチルエクセンディン−4(CAエクセンディン−4、Bachem、スイス)のリジン(Lysine)と位置特異的に反応させた後、PEGとGLP−1R作用剤が1:1で結合された連結体を得るために、前記反応混合物を陽イオン交換カラムを行ってモノペグ化された(mono-PEGylated)エクセンディン−4を精製した。免疫グロブリンFcのN末端と特異的にモノペグ化されたエクセンディン−4が連結されたGLP−1R作用剤−結合体を製造するためにpH5.0〜8.2の条件で反応させた。カップリング反応後、疎水性カラムと陰イオン交換カラムを用いた2段階精製法を用いて、最終的に位置特異的に結合されたGLP−1R作用剤−結合体を精製した。
【0111】
比較例:インフレームGLP−1R作用剤−免疫グロブリン断片結合体の製造
本発明の結合体に対する比較例として、GLP−1R作用剤と約50kDaのFcRn部位を含む免疫グロブリンFcを、リンカーなしで遺伝子組換えの方法により融合タンパク質の形態に製造した。インフレームGLP−1R作用剤−免疫グロブリンFc結合体は、親和性カラムを使用して培養液から精製した。
【0112】
実験例1:FcRnに対する結合力の評価
エンドサイトーシス(endocytosis)により細胞内に流入されたタンパク質のうち、FcRn結合部位を有するタンパク質は、酸性pHにおいてFcRnに結合し、流入されたタンパク質のうち、FcRnに結合していないタンパク質は、リソソーム分解(lysosomal degradation)により削除される。ここで、FcRnに結合されたタンパク質は、中性pHで解離すると、再び細胞表面に排出されるのに対して、解離されないFcRn結合タンパク質は、リソソーム分解を経る。このようなメカニズムを図1に示した。
【0113】
従って、生理活性タンパク質にFcRn結合部位を含む免疫グロブリンFcを非ペプチド性リンカーを介して連結した、実施例の結合体が免疫グロブリンFc単独のFcRnに対する結合力をそのまま維持するか、また、中性pHで容易に解離して血中に排出されるかを下記実験により確認した。
【0114】
具体的には、免疫グロブリン断片のFcRnに対する結合力が、本発明の結合体を形成しても変化がないことを確認するために、SPR(surface Plasmon resonance、BIACORE 3000)を利用してFcRnと実施例又は比較例の結合体との間の結合力を確認した。FcRnはSino Biological Incから購入したヒトFCGRT&B2Mの二量体(dimer)の形態の受容体を使用した。FcRnをCM5チップにアミン結合法を用いて固定化させた後、100nM〜12.5nMの濃度で結合体を流し入れ、その結合力を確認した。ただし、このFcRnを媒介とする半減期の延長のメカニズムはpHに依存するため、中性と酸性に対する実験をそれぞれ行った。
【0115】
(1)酸性pHにおけるFcRnに対する免疫グロブリンタンパク質結合体の結合力の測定
エンドサイトーシスされたタンパク質のFcRn結合は、酸性pHにおいて起こるので、これを再現するために、pH 6.0のリン酸バッファ(phosphate buffer)を基本バッファ−1(running buffer-1)として使用した。すべての免疫グロブリン断片−タンパク質結合体は、この基本バッファ−1で希釈して結合を誘導し、解離も基本バッファ−1で行った。チップに固定化されたFcRnに免疫グロブリン断片−タンパク質結合体を4分間かけて流し入れ結合を誘導した後、6分間の解離過程を経た。その後、異なる濃度の免疫グロブリン断片−タンパク質結合体を結合させるためにFcRnと結合されている免疫グロブリン断片−タンパク質結合体にpH 7.4のHEPESバッファ(HBS−EP)を約30秒間流し入れた。酸性におけるFcRnと免疫グロブリン断片−タンパク質結合体の結合力は、BIAevaluationプログラムの1:1 Langmuir binding with drifting baseline modelを用いて分析し、その結果を図2に示した。
【0116】
(2)中性pHにおけるFcRnに対する免疫グロブリン断片−タンパク質の結合体の結合力の測定
FcRnに結合した後、細胞外への排出は酸性pHから中性pHに変わりながら行われるため、これを再現するために、基本バッファとしてHEPESバッファ(pH 7.4、基本バッファ−2)を使用した。ただし、FcRnと免疫グロブリン断片−タンパク質の結合体間の結合は、基本バッファ−1で免疫グロブリン断片−タンパク質の結合体を希釈して4分間結合を誘導し、その後、FcRnで免疫グロブリン断片−タンパク質の結合体の解離過程は同一の基本バッファ−2を使用して1分間流し入れて、センサーグラムを確認し、その結果を図3に示した。このとき、FcRnから免疫グロブリン断片−タンパク質の結合体の解離の程度を結合割合(%)で表示し、これは、次のような数式(1)に従う。ここで、pH 6.0の試料の注入が完了する2秒前に測定した共鳴単位をpH 6.0における結合量に比例する物理量で、pH 7.4における解離ステップ(dissociation)に入り、10秒後に測定した共鳴単位をpH 7.4における結合量に比例する物理量として選択し、結合割合を算定した。
【0117】
【数5】
【0118】
ここで、「結合割合」とは、FcRnから免疫グロブリン断片−タンパク質の結合体が、どの程度容易に解離するかを意味する。この数字が小さければ小さいほど、中性において解離が良くなされ、FcRnを媒介としたリサイクルがよく行われることが予想され、逆にその数字が大きいほど、中性において解離が良くなされないため、FcRnに結合してエンドサイトーシスになってもリソソーム分解過程を通じて除去される可能性が高いことが予想される。
【0119】
その結果、図2及び3に示されるように、実施例の様々な免疫グロブリン断片−タンパク質の結合体は、濃度依存的にFcRnに結合するという結果を示した。また、前記の結果を下記表1に再度示し、数式(1)で算出した実施例の結合体の解離程度を表2に示した。
【0120】
FcRnと免疫グロブリン断片−タンパク質結合体のpH 6.0における結合力の比較
【表1】
* ka:結合定数(association rate constant)、kd:解離定数(dissociation rate constant)、KD:親和定数(affinity constant)、結合割合:pHを6.0から7.4に転換したとき、pH 7.4における結合量をpH 6.0における結合量で除した後、100を乗じた値
【0121】
FcRnと免疫グロブリン断片−タンパク質結合体の解離度の比較
【表2】
【0122】
前記表1と表2に示されるように、免疫グロブリン断片単独(治療用タンパク質が結合されていない独立したFc)と本発明の結合体を互いに比較したとき、酸性や中性における結合力に有意な差が示されないことを確認した。すなわち、本技術で生産された免疫グロブリンタンパク質の結合体は、免疫グロブリンが生理活性タンパク質と結合しても免疫グロブリン断片のFcRnに対する結合特性が変わらず、特に、サイズが互いに異なる様々な生理活性タンパク質に対して結合体を形成しても類似した結果を示すことを確認した。一方、比較例のインフレームGLP−1R作用剤−免疫グロブリン断片結合体の場合、結合割合の値が高く、中性で適切に解離できないため、生理活性タンパク質の半減期を延長する際に、本発明の結合体に比べてその効果が低いことを示した。
【0123】
実験例2:GLP−1R作用剤−結合体のin vivo薬物動態比較試験
実施例(5)のGLP−1R作用剤−結合体とインフレームGLP−1R作用剤−免疫グロブリン断片結合体のin vivo薬物動態を比較するために、正常なSDラットを用いて血中濃度の変化を確認した。
【0124】
具体的には、前記動物にGLP−1R作用剤−結合体(400mcg/kg)、インフレームGLP−1R作用剤−免疫グロブリン断片結合体(400mcg/kg)を2mL/kgの投与量になるように、各物質を生理食塩水で希釈して皮下投与した。そして、前記試験物質を投与してから4、8、24、48、72、96、120、144、168、192、216、240、288、312、及び336時間後にラットの頸静脈から採血して血清に分離した。その後、血清試料を酵素免疫法により薬物濃度を定量し、その結果を図4に示した。
【0125】
その結果、GLP−1R作用剤−結合体とインフレームGLP−1R作用剤−免疫グロブリン断片結合体の血中半減期は、それぞれ40.9時間及び28時間であり、最大血清濃度は1758.6ng/mL及び742.7ng/mLを示した。すなわち、同一容量の薬物を、正常ラットに皮下投与したとき、本発明のGLP−1R作用剤−結合体がインフレームGLP−1R作用剤−免疫グロブリン断片結合体より体内吸収及び持続性の面で優れた結果を示した(図4)。
【0126】
以上の説明から、本発明が属する技術分野の当業者であれば、本発明がその技術的思想や必須の特徴を変更することなく、他の具体的な形態で実施できることを理解するであろう。なお、上記実施例は、全ての面において例示的なものであり、限定的なものでないことを理解すべきである。本発明の範囲は、前記詳細な説明ではなく、特許請求の範囲の意味及び範囲とその等価概念から導かれるすべての変更や変形された形態を含むものであると解釈すべきである。
次に、本発明の好ましい態様を示す。
1. 生理活性ポリペプチド及びFcRn結合領域を含む免疫グロブリンFc断片が非ペプチド性リンカーを介して連結された、生理活性ポリペプチド−免疫グロブリンFc断片の結合体であり、
前記生理活性ポリペプチド−免疫グロブリンFc断片の結合体は、pH 6.0におけるFcRnに対する結合量(binding amount at pH 6.0)とpH 7.4におけるFcRnに対する結合量(binding amount at pH 7.4)の割合が免疫グロブリンFc断片をFcRnに対して同一の条件で測定したときに示す割合の±6%以内である結合体。
2. 前記生理活性ポリペプチド−免疫グロブリンFc断片の結合体は、下記数式(1)の結合割合が免疫グロブリンFc断片の当該結合割合の値の±6%内であることを特徴とする、上記1に記載の結合体。
【数1】

3. 前記結合体は、非ペプチド性リンカーが連結された生理活性ポリペプチドと免疫グロブリンFc断片をpH4.0〜9.0で反応させ、生理活性ポリペプチドを、非ペプチド性リンカーを介して免疫グロブリンFc断片中のFcRn結合領域以外の部分に連結させた、上記1又は2に記載の結合体。
4. 前記非ペプチド性リンカーは、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコール−プロピレングリコール共重合体、ポリオキシエチル化ポリオール、ポリビニルアルコール、ポリサッカライド、デキストラン、ポリビニルエチルエーテル、生分解性高分子、脂質重合体、キチン、ヒアルロン酸、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、上記1又は2に記載の結合体。
5. 前記非ペプチド性リンカーは、下記一般式(1)で表されるポリエチレングリコール重合体である、上記1又は2に記載の結合体。
【化1】

ここで、n=10〜2400である。
6. 前記非ペプチド性リンカーの反応基は、反応アルデヒド基、プロピオンアルデヒド基、ブチルアルデヒド基、マレイミド基とスクシンイミド誘導体からなる群から選択される、上記1又は2に記載の結合体。
7. 前記生理活性ポリペプチドは、グルカゴン様ペプチド−1(GLP−1)、好中球増加因子(G−CSF)、ヒト成長ホルモン(hGH)、エリスロポエチン(EPO)、グルカゴン、オキシントモジュリン、インスリン、成長ホルモン放出ホルモン、成長ホルモン放出ペプチド、インターフェロン、インターフェロン受容体、Gタンパク質共役受容体(G protein-coupled receptor)、インターロイキン、インターロイキン受容体、酵素類、インターロイキン結合タンパク質、サイトカイン結合タンパク質、マクロファージ活性因子、マクロファージペプチド、B細胞因子、T細胞因子、タンパク質A、アレルギー抑制因子、細胞壊死糖タンパク質、免疫毒素、リンホトキシン、腫瘍壊死因子、腫瘍抑制因子、転移成長因子、アルファ−1アンチトリプシン、アルブミン、α−ラクトアルブミン、アポリポタンパク質−E、高グリコシル化赤血球生成因子、アンジオポエチン類、ヘモグロビン、トロンビン、トロンビン受容体活性ペプチド、トロンボモデュリン、血液凝固第VII因子、第VIIa因子、第VIII因子、第IX因子 、及び第XIII因子、プラスミノーゲン活性因子、フィブリン−結合ペプチド、ウロキナーゼ、ストレプトキナーゼ、ヒルジン、タンパク質C、C−反応性タンパク質、レニンインヒビター、コラゲナーゼインヒビター、スーパーオキシドディスムターゼ、レプチン、血小板由来成長因子、上皮細胞成長因子、表皮細胞成長因子、アンジオスタチン、アンジオテンシン、骨形成成長因子、骨形成促進タンパク質、カルシトニン、アトリオペプチン、軟骨誘導因子、エルカトニン、結合組織活性因子、組織因子経路インヒビター、卵胞刺激ホルモン、黄体形成ホルモン、黄体形成ホルモン放出ホルモン、神経成長因子、副甲状腺ホルモン、リラキシン、セクレチン、ソマトメジン、インスリン様成長因子、副腎皮質ホルモン、コレシストキニン、膵臓ポリペプチド、ガストリン放出ペプチド、コルチコトロピン放出因子、甲状腺刺激ホルモン、オートタキシン、ラクトフェリン、ミオスタチン、細胞表面抗原、ウイルス由来ワクチン抗原、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体及び抗体断片からなる群から選択される、上記1又は2に記載の結合体。
8. 前記FcRn結合領域を含む免疫グロブリンFc断片は、CH2ドメイン、CH3ドメイン、又はその両方を含む、上記1又は2に記載の結合体。
9. 前記免疫グロブリンFc断片は非グリコシル化された、上記1又は2に記載の結合体。
10. 前記免疫グロブリンFc断片は、ヒンジ(hinge)領域をさらに含む、上記1又は2に記載の結合体。
11. 前記免疫グロブリンFc断片は、IgG、IgA、IgD、IgE、IgM、これらの組み合わせ(combination)及びこれらのハイブリッド(hybrid)からなる群から選択される、上記1又は2に記載の結合体。
12. 前記免疫グロブリンFc断片はIgG4 Fc断片である、上記1又は2に記載の結合体。
13. (a)FcRn結合領域を含む免疫グロブリンFc断片及び生理活性ポリペプチドを非ペプチド性リンカーを介して互いに連結させ、生理活性ポリペプチド−免疫グロブリンFc断片の結合体の混合物を製造するステップと、
(b)pH 6.0におけるFcRnに対する結合量(binding amount at pH 6.0)及びpH 7.4におけるFcRnに対する結合量(binding amount at pH 7.4)を下記数式(1)に代入して結合割合の値を算出したとき、前記生理活性ポリペプチド−免疫グロブリンFc断片の結合体の当該結合割合の値が、免疫グロブリンFc断片の結合割合の値±6.0%の範囲内である結合体を分離するステップとを含み、
免疫グロブリンFc断片のFcRnに対する固有の結合力を維持する、生理活性ポリペプチド−免疫グロブリンFc断片結合体の製造方法。
【数2】

14. 前記非ペプチド性リンカーは、下記一般式(1)で表されるポリエチレングリコール重合体である、上記13に記載の方法。
【化2】

ここで、n=10〜2400である。
15. 前記(b)ステップで分離された結合体は、非ペプチド性リンカーが免疫グロブリンFc断片のN末端に結合された形態である、上記13に記載の方法。
16. 生理活性ポリペプチド及びFcRn結合領域を含む免疫グロブリンFc断片を非ペプチド性リンカーを介して連結させるステップを含む、生理活性ポリペプチド−免疫グロブリンFc断片結合体のFcRnに対する固有の結合力を維持させる方法。
17. 前記固有の結合力の維持は、in vivoで行われる、上記16に記載の方法。
18. 上記1に記載の生理活性ポリペプチド−免疫グロブリンFc断片の結合体を含み、免疫グロブリンFc断片のFcRnに対する固有の結合力が維持されたことを特徴とする、組成物。
図1
図2
図3
図4