(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0026】
(1)鋳物砂
鋳物砂は、必須成分として、砂と、固体酸触媒とを備える。つまり、鋳物砂は、砂と、固体酸触媒とを備える鋳物砂組成物である。
【0027】
(1−1)砂
砂は、複数の粒子を含む。砂の粒度分布は、例えば、45μm以上、好ましくは、53μm以上、例えば、300μm以下、好ましくは、250μm以下、より好ましくは、212μm以下である。なお、砂の粒度分布は、例えば、JIS標準篩を用いて測定できる。
【0028】
砂として、例えば、天然珪砂および人工砂などが挙げられる。砂は、単独使用または2種以上併用することができる。
【0029】
天然珪砂は、石英(二酸化ケイ素:SiO
2)を主成分とするシリカ砂である。
【0030】
人工砂は、公知の方法(例えば、焼結法、溶融法、火炎溶融法など)により製造される。
【0031】
砂のなかでは、好ましくは、人工砂が挙げられる。
【0032】
人工砂として、例えば、酸化アルミニウム砂(アルミナ砂)、ムライト砂、ムライト−ジルコン砂、スピネル砂などが挙げられる。人工砂は、単独使用または2種以上併用することができる。
【0033】
人工砂のなかでは、好ましくは、ムライト砂およびスピネル砂が挙げられる。
【0034】
ムライト砂は、酸化アルミニウム(Al
2O
3)と二酸化ケイ素(SiO
2)との混合組成化合物(アルミノケイ酸塩)を主成分としている。
【0035】
ムライト砂において、酸化アルミニウムの含有割合は、例えば、50質量%以上、好ましくは、60質量%以上、例えば、90質量%以下、好ましくは、80質量%以下である。なお、ムライト砂における各成分の含有割合は、例えば、蛍光X線元素分析法により測定できる(以下同様)。
【0036】
ムライト砂において、二酸化ケイ素の含有割合は、例えば、5質量%以上、好ましくは、15質量%以上、例えば、45質量%以下、好ましくは、40質量%以下である。
【0037】
このようなムライト砂は、公知の製造方法(例えば、特開昭61−63333号公報に記載の方法、特開2003−251434号公報に記載の方法など)により調製することができる。
【0038】
また、ムライト砂は、市販品を用いることもできる。ムライト砂の市販品として、例えば、エスパール(山川産業社製)、セラビーズ(伊藤忠セラテック社製)などが挙げられる。
【0039】
スピネル砂は、スピネル型結晶構造を有している。スピネル砂は、酸化アルミニウム(Al
2O
3)と、酸化マグネシウム(MgO)と、二酸化ケイ素(SiO
2)との混合組成化合物を主成分としている。
【0040】
スピネル砂において、酸化アルミニウムの含有割合は、例えば、50質量%以上、好ましくは、60質量%以上、例えば、90質量%以下、好ましくは、85質量%以下、より好ましくは、70質量%以下である。なお、スピネル砂における各成分の含有割合は、例えば、蛍光X線元素分析法により測定できる(以下同様)。
【0041】
スピネル砂において、酸化マグネシウムの含有割合は、例えば、1質量%以上、好ましくは、5質量%以上、より好ましくは、15質量%以上、例えば、40質量%以下、好ましくは、35質量%以下である。
【0042】
スピネル砂において、二酸化ケイ素の含有割合は、例えば、0質量%を超過し、好ましくは、1質量%以上、より好ましくは、3質量%以上、例えば、20質量%以下、好ましくは、10質量%以下である。
【0043】
また、スピネル砂の混合組成化合物は、他の成分を含有することもできる。他の成分として、例えば、酸化鉄(例えば、Fe
2O
3など)が挙げられる。
【0044】
スピネル砂において、他の成分の含有割合は、例えば、0質量%以上、好ましくは、1質量%以上、例えば、10質量%以下、好ましくは、5質量%以下、より好ましくは、3質量%である。
【0045】
このようなスピネル砂を調製するには、例えば、まず、MgO系耐火物原料とAl
2O
3−SiO
2系耐火物原料とを混合するとともに粉砕する。より具体的には、MgO系耐火物原料およびAl
2O
3−SiO
2系耐火物原料を、公知の粉砕機(例えば、ボールミルなど)に投入して粉砕機を駆動させる。
【0046】
MgO系耐火物原料は、MgOの供給源となる耐火物原料である。MgO系耐火物原料として、例えば、マグネシアクリンカー、焼成マグネサイト(重焼マグネシア、軽焼マグネシア)、カンラン石、コーディエライト、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、スピネル、オリビン、MgOなどが挙げられる。
【0047】
MgO系耐火物原料は、単独使用または2種以上併用することができる。
【0048】
MgO系耐火物原料のなかでは、好ましくは、焼成マグネサイト、より好ましくは、重焼マグネシアが挙げられる。
【0049】
Al
2O
3−SiO
2系耐火物原料は、酸化アルミニウムと二酸化ケイ素との供給源となる耐火物原料である。Al
2O
3−SiO
2系耐火物原料として、例えば、合成ムライト、バン土頁岩、シャモット、焼熱焦宝石、焦宝石、フリントクレー、仮焼フリントクレー、カイヤナイト、シリマナイト、アンダルサイト、メタカオリン、カオリンなどが挙げられる。
【0050】
Al
2O
3−SiO
2系耐火物原料は、単独使用または2種以上併用することができる。
【0051】
また、Al
2O
3−SiO
2系耐火物原料には、Al
2O
3系耐火物原料を混合することができる。Al
2O
3系耐火物原料として、例えば、焼成ボーキサイト、ボーキサイト、水酸化アルミニウム、溶融アルミナ、焼結アルミナなどが挙げられる。
【0052】
Al
2O
3−SiO
2系耐火物原料のなかでは、好ましくは、合成ムライトおよび溶融アルミナの混合物が挙げられる。
【0053】
これによって、MgO系耐火物原料およびAl
2O
3−SiO
2系耐火物原料の混合原料粒子が調製される。
【0054】
混合原料粒子における酸化アルミニウムの含有割合の範囲は、例えば、スピネル砂における酸化アルミニウムの含有割合の範囲と同様である。
【0055】
混合原料粒子における酸化マグネシウムの含有割合の範囲は、例えば、スピネル砂における酸化マグネシウムの含有割合の範囲と同様である。
【0056】
混合原料粒子における二酸化ケイ素の含有割合の範囲は、例えば、スピネル砂における二酸化ケイ素の含有割合の範囲と同様である。
【0057】
混合原料粒子の平均一次粒子径は、例えば、1μm以上、好ましくは、2μm以上、例えば、50μm以下、好ましくは、10μm以下である。なお、混合原料粒子の平均一次粒子径は、レーザー回折散乱法により測定できる。
【0058】
次いで、混合原料粒子を公知の造粒方法により造粒する。
【0059】
造粒方法として、例えば、湿式造粒(例えば、転動造粒、撹拌造粒など)、乾式造粒(例えば、圧粉造粒など)などが挙げられ、好ましくは、湿式造粒が挙げられ、より好ましくは、転動造粒が挙げられる。
【0060】
転動造粒により造粒する場合、好ましくは、混合原料粒子に造粒促進剤を添加しながら、混合原料粒子を撹拌する。
【0061】
造粒促進剤として、例えば、水、有機溶媒、無機バインダ(例えば、特開2016−107320号公報の[0031]段落に記載される無機バインダーなど)、有機バインダ(例えば、特開2016−107320号公報の[0032]段落に記載される有機バインダーなど)などが挙げられる。
【0062】
造粒促進剤は、単独使用または2種以上併用することができる。
【0063】
造粒促進剤のなかでは、好ましくは、ポリビニルアルコールが挙げられる。
【0064】
造粒促進剤(固形分)の添加割合は、混合原料粒子100質量部に対して、例えば、1質量部以上、好ましくは、2質量部以上、例えば、10質量部以下、好ましくは、5質量部以下である。
【0065】
これによって、混合原料粒子の造粒物(混合造粒物)が調製される。
【0066】
次いで、混合造粒物を篩分けして、混合造粒物の粒度分布を、例えば、75μm以上250μm以下に調整する。
【0067】
次いで、混合造粒物を、例えば、大気中において、下記の焼結温度に加熱して焼結させる。より具体的には、混合造粒物を、公知の焼結炉(例えば、ロータリーキルン炉)に投入して、焼結炉内を下記の焼結温度に加熱する。
【0068】
焼結温度は、例えば、1400℃以上、好ましくは、1500℃以上、例えば、1900℃以下である。焼結時間は、例えば、15分以上、好ましくは、30分以上、例えば、60分以下、好ましくは、45分以下である。
【0069】
このとき、MgO系耐火物原料とAl
2O
3−SiO
2系耐火物原料とが反応してスピネル型結晶構造が形成する。これによって、混合造粒物の焼結物が調製される。
【0070】
次いで、必要に応じて、混合造粒物の焼結物から、一次粒子径が上記した砂の粒度分布の上限を超過する過大粒子と、一次粒子径が上記した砂の粒度分布の下限未満の微小粒子とを除去する。
【0071】
過大粒子および微小粒子を除去するには、例えば、混合造粒物の焼結物を篩分けする。
【0072】
以上によって、スピネル砂が製造される。
【0073】
また、スピネル砂の製造方法は、上記の方法に制限されない。
【0074】
例えば、まず、MgO系耐火物原料およびAl
2O
3−SiO
2系耐火物原料を別々に粉砕する。これにより、MgO原料粒子およびAl
2O
3−SiO
2原料粒子が別々に調製される。その後、MgO原料粒子およびAl
2O
3−SiO
2原料粒子を混合して、混合原料粒子を調製する。そして、混合原料粒子を上記と同様に造粒した後、得られた混合造粒物を上記と同様に焼結させる。
【0075】
これによっても、スピネル砂を製造することができる。
【0076】
しかし、MgO系耐火物原料とAl
2O
3−SiO
2系耐火物原料とを混合するとともに粉砕して混合原料粒子を調製する態様が、後述する砂の酸消費量の観点から、別々に調製したMgO原料粒子およびAl
2O
3−SiO
2原料粒子を混合して混合原料粒子を調製する態様と比較してより好ましい。
【0077】
スピネル砂は、市販品を用いることもできる。スピネル砂の市販品として、例えば、ナイスビーズ(キンセイマテック社製)などが挙げられる。
【0078】
このようなムライト砂およびスピネル砂のうち、より好ましくは、スピネル砂が挙げられる。言い換えれば、砂は、より好ましくは、スピネル砂を含み、さらに好ましくは、スピネル砂からなる。
【0079】
砂がスピネル砂を含むと、鋳物砂の清掃性の向上を確実に図ることができる。
【0080】
このような砂の酸消費量は、例えば、2.0ml/50g以下、好ましくは、1.0ml/50g以下である。なお、酸消費量は、例えば、JACT(一般社団法人 日本鋳造協会)試験法S−4に準拠して測定できる(以下同様)。
【0081】
砂の酸消費量が上記下限以下であると、砂に混合される固体酸触媒が失活することを抑制できる。
【0082】
また、鋳物砂における砂の含有割合は、例えば、95質量%以上、好ましくは、98.0質量%以上、例えば、99.9質量%以下である。
【0083】
(1−2)固体酸触媒
固体酸触媒は、砂に混合される。固体酸触媒は、後述するバインダが鋳物砂に添加されたときに、バインダに含まれるフラン樹脂前駆体を硬化(完全硬化状態に)させる。固体酸触媒は、常温(25℃)において固体状を有する。
【0084】
固体酸触媒として、例えば、固体のヘテロポリ酸などが挙げられる。言い換えれば、固体酸触媒は、例えば、固体のヘテロポリ酸を含み、好ましくは、固体のヘテロポリ酸からなる。
【0085】
固体のヘテロポリ酸として、例えば、ケイタングステン酸(H
4SiW
12O
40・nH
2O)、ケイモリブデン酸(H
4SiMo
12O
40・nH
2O)、リンタングステン酸(H
3PW
12O
40・nH
2O)、リンモリブデン酸(H
3PMo
12O
40・nH
2O)、ケイタングストモリブデン酸(H
4SiW
xMo
12−xO
40・nH
2O)、リンバナドタングステン酸(H
3+xPV
xW
12−xO
40・nH
2O)、リンバナドモリブデン酸(H
3+xPVxMo
12−xO
40・nH
2O)、リンタングストモリブデン酸(H
3PW
xMo
12−xO
40・nH
2O)、ケイバナドタングステン酸(H
4+xSiV
xW
12−xO
40・nH
2O)、および、ケイバナドモリブデン酸(H
4+xSiV
xMo
12−xO
40・nH
2O)などが挙げられる。なお、固体のヘテロポリ酸の各化学式において、nは、0以上の整数を示し、xは、1以上11以下の整数を示す。
【0086】
固体のヘテロポリ酸は、単独使用または2種以上併用することができる。
【0087】
固体のヘテロポリ酸のなかでは、好ましくは、ケイタングステン酸、リンタングステン酸、リンモリブデン酸、リンバナドタングステン酸、および、リンバナドモリブデン酸が挙げられ、より好ましくは、鋳造におけるガス欠陥の要因となる原子(例えば、PおよびSなど)を含まないヘテロポリ酸が挙げられ、さらに好ましくは、ケイタングステン酸(H
4SiW
12O
40・nH
2O)が挙げられる。言い換えれば、固体のヘテロポリ酸は、好ましくは、ケイタングステン酸を含み、より好ましくは、ケイタングステン酸からなる。
【0088】
固体のヘテロポリ酸がケイタングステン酸を含むと、固体酸触媒が他の固体のヘテロポリ酸を含む場合と比較して、固体酸触媒の使用量の低減を図ることができながら、後述するバインダを安定して硬化させることができる。
【0089】
このような固体酸触媒の含有割合は、砂100質量部に対して、例えば、0.1質量部以上、好ましくは、0.3質量部以上、例えば、2質量部以下、好ましくは、1質量部以下、より好ましくは、0.7質量部以下である。
【0090】
また、鋳物砂における固体酸触媒の含有割合は、例えば、0.1質量%以上、好ましくは、0.2質量%以上、例えば、2質量%以下、好ましくは、0.8質量%以下、より好ましくは、0.6質量%以下である。
【0091】
固体酸触媒は、好ましくは、平均一次粒子径が5μm以下である第1粒子、および/または、平均一次粒子径が5μmを超過し40μm以下である第2粒子を少なくとも含む。
【0092】
第1粒子の平均一次粒子径は、例えば、0.2μm以上、好ましくは、0.4μm以上、例えば、5μm以下、好ましくは、3μm以下である。なお、第1粒子の平均一次粒子径は、例えば、JIS 8827−1(2008)に基づく最大フェレー径の長さ平均粒子径として測定できる。
【0093】
固体酸触媒における第1粒子の含有割合は、例えば、0質量%以上、好ましくは、20質量%以上、例えば、100質量%以下、好ましくは、80質量%以下、より好ましくは、40質量%以下である。
【0094】
固体酸触媒における第1粒子の含有割合が20質量%以上であると、後述する砂型の強度の向上を図ることができる。
【0095】
このような第1粒子を調製するには、まず、固体酸触媒を溶媒に溶解して、酸触媒溶液を調製する。
【0096】
溶媒として、例えば、水、エタノール、アセトンなどが挙げられる。溶媒は、単独使用または2種以上併用することができる。溶媒のなかでは、好ましくは、水が挙げられる。
【0097】
酸触媒溶液における固体酸触媒の濃度は、例えば、1.2g/cm
3以上、好ましくは、1.5g/cm
3以上、例えば、3.0g/cm
3以下、好ましくは、2.5g/cm
3以下である。
【0098】
次いで、酸触媒溶液を、公知のスプレードライヤーにより処理する。
【0099】
スプレードライヤーの噴霧方式として、例えば、4流体ノズル方式、アトマイザータイプディスク方式などが挙げられる。
【0100】
第1粒子を調製する場合、スプレードライヤーの噴霧方式として、好ましくは、4流体ノズル方式が選択される。
【0101】
また、スプレードライヤーの入口温度は、例えば、130℃以上、好ましくは、150℃以上、例えば、220℃以下、好ましくは、200℃以下である。
【0102】
スプレードライヤーの排気温度は、例えば、60℃以上、好ましくは、80℃以上、例えば、140℃以下、好ましくは、120℃以下である。
【0103】
スプレードライヤーの塔内差圧は、例えば、0.6kPa以上、好ましくは、0.8kPa以上、例えば、1.4kPa以下、好ましくは、1.2kPa以下である。
【0104】
なお、給気風量、ノズルエアーおよび送液速度は、適宜変更される。
【0105】
これにより、乾燥粉末が調製される。そして、乾燥粉末を、必要に応じて、上記した第1粒子の平均一次粒子径となるように篩分けする。以上によって、第1粒子が調製される。
【0106】
第2粒子の平均一次粒子径は、例えば、5μmを超過し、好ましくは、10μm以上、例えば、40μm以下、好ましくは、30μm以下である。なお、第2粒子の平均一次粒子径は、例えば、JIS 8827−1(2008)に基づく最大フェレー径の長さ平均粒子径として測定できる。
【0107】
固体酸触媒における第2粒子の含有割合は、例えば、0質量%以上、好ましくは、20質量%以上、より好ましくは、60質量%以上、例えば、100質量%以下、好ましくは、80質量%以下である。
【0108】
固体酸触媒における第2粒子の含有割合が20質量%以上であると、鋳物砂の清掃性の向上を確実に図ることができる。
【0109】
このような第2粒子を調製するには、まず、第1粒子の調製と同様に、酸触媒溶液を調製する。次いで、酸触媒溶液を、公知のスプレードライヤーにより処理する。
【0110】
第2粒子を調製する場合、スプレードライヤーの噴霧方式として、好ましくは、アトマイザータイプディスク方式が選択される。
【0111】
また、スプレードライヤーの入口温度は、例えば、140℃以上、好ましくは、160℃以上、例えば、220℃以下、好ましくは、210℃以下である。
【0112】
スプレードライヤーの排気温度は、例えば、70℃以上、好ましくは、90℃以上、例えば、150℃以下、好ましくは、130℃以下である。
【0113】
これにより、乾燥粉末が調製される。そして、乾燥粉末を、必要に応じて、上記した第2粒子の平均一次粒子径となるように篩分けする。以上によって、第2粒子が調製される。
【0114】
また、固体酸触媒が第1粒子および第2粒子を含む場合、第2粒子の含有割合は、第1粒子および第2粒子の総和に対して、例えば、60質量%以上80質量%以下である。
【0115】
(1−3)微粒子
鋳物砂は、任意成分として、微粒子をさらに含むことができる。
【0116】
鋳物砂が微粒子を含有すると、後述するバインダに有機溶媒を含有させても、鋳物砂の優れた清掃性を確保することができる。
【0117】
微粒子の平均一次粒子径は、例えば、0.5μm以上、例えば、20μm以下、好ましくは、15μm以下、より好ましくは、10μm以下、さらに好ましくは、5μm以下、とりわけ好ましくは、3μm以下である。なお、微粒子の平均一次粒子径は、例えば、下記条件により測定できる。
【0118】
装置:X線透過式沈降装置(例えば、SediGraph III、マイクロメリティックス社製など)
試料:3.5g
媒体種:0.2質量%ヘキサメタリン酸水溶液
媒体量:80ml
撹拌時間:30秒
超音波時間:30秒(撹拌と同じ)
密度設定:4.6g/cm
3
レイノルズ数設定:0.47
また、微粒子の平均一次粒子径が上記下限以上であれば、後述する砂型の強度の向上を確実に図ることができる。微粒子の平均一次粒子径が上記上限以下であれば、鋳物砂の清掃性のさらなる向上を図ることができる。
【0119】
微粒子として、例えば、ジルコン微粒子、アルミナ微粒子、シリカ微粒子などが挙げられる。
【0120】
微粒子は、単独使用または2種以上併用することができる。
【0121】
微粒子のなかでは、好ましくは、ジルコン微粒子が挙げられる。
【0122】
微粒子の含有割合は、砂100質量部に対して、例えば、0.3質量部以上、好ましくは、0.5質量部以上、より好ましくは、1.0質量部以上、例えば、2質量部以下、好ましくは、1.5質量部以下である。
【0123】
鋳物砂における微粒子の含有割合は、例えば、0質量%以上、好ましくは、0.5質量%以上、例えば、2質量%以下、好ましくは、1.2質量%以下である。
【0124】
(2)砂型用キット
上記した鋳物砂は、種々の鋳型の造形に好適に用いられる。鋳物砂の用途として、例えば、3次元積層造形(3Dプリンタ)、手込造形、機械造形などが挙げられ、好ましくは、3次元積層造形(3Dプリンタ)が挙げられる。言い換えれば、鋳物砂は、特に、3次元積層造形用(3Dプリンタ用)の鋳物砂として有用である。
【0125】
また、上記した鋳物砂は、単独で流通してもよく、砂型用キットに含まれて流通してもよい。
【0126】
砂型用キットは、上記した鋳物砂と、バインダとを備える。
【0127】
バインダは、鋳物砂を固化するために用いられる。バインダは、フラン樹脂前駆体を少なくとも含有する。
【0128】
フラン樹脂前駆体は、硬化することによりフラン樹脂となる。フラン樹脂前駆体は、酸存在下において、例えば、常温(25℃)で完全硬化状態(Cステージ)となる。
【0129】
フラン樹脂前駆体として、例えば、フルフリルアルコール、フラン樹脂プレポリマーなどが挙げられる。
【0130】
フラン樹脂プレポリマーとして、例えば、フルフリルアルコールの単独重合体、フルフリルアルコールとアルデヒド化合物との共重合体、フルフリルアルコールとフルフラールとの共重合体などが挙げられる。
【0131】
フラン樹脂前駆体は、単独使用または2種以上併用することができる。
【0132】
フラン樹脂前駆体のなかでは、好ましくは、フルフリルアルコールが挙げられる。
【0133】
バインダにおけるフラン樹脂前駆体の含有割合は、例えば、50質量%以上、好ましくは、60質量%以上、より好ましくは、70質量%以上、例えば、95質量%以下、好ましくは、90質量%以下である。
【0134】
また、バインダは、好ましくは、有機溶媒をさらに含有する。バインダが有機溶媒を含有すると、バインダにおけるフラン樹脂前駆体の含有割合を増加させることなく、後述する砂型の強度の向上を確実に図ることができる。そのため、後述する砂型の強度の向上を図ることができながら、フラン樹脂前駆体に起因するイグロス(強熱減量)の増加を抑制することができる。
【0135】
有機溶媒として、例えば、芳香族炭化水素類(例えば、ベンゼン、トルエン、キシレンなど)、ケトン類(例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなど)、エステル類(例えば、酢酸エチル、酢酸ブチルなど)、アルコール類(例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、n−ブタノール、イソプロパノール、イソブタノールなどの炭素数1〜6の低級アルコールなど)などが挙げられる。有機溶媒は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0136】
有機溶媒のなかでは、好ましくは、アルコール類が挙げられ、より好ましくは、炭素数1〜6の低級1価アルコールが挙げられ、さらに好ましくは、ブタノールおよびイソプロパノールが挙げられ、とりわけ好ましくは、イソプロパノールが挙げられる。
【0137】
バインダにおける有機溶媒の含有割合は、例えば、1質量%以上、好ましくは、4質量%以上、より好ましくは、8質量%以上、とりわけ好ましくは、10質量%以上、例えば、30質量%以下、好ましくは、25質量%以下、より好ましくは、20質量%以下である。
【0138】
有機溶媒の含有割合が上記下限以上であると、後述する砂型の強度の向上を確実に図ることができる。有機溶媒の含有割合が上記上限以下であると、鋳物砂の清掃性の向上を確実に図ることができる。
【0139】
バインダは、上記成分に加えて、さらに必要に応じて、硬化促進剤などを含有することができる。
【0140】
硬化促進剤としては、例えば、レゾルシン、クレゾール、ヒドロキノン、フロログルシノール、メチレンビスフェノール、ビスヒドロキシメチルフランなどが挙げられる。
【0141】
バインダにおける硬化促進剤の含有割合は、例えば、1質量%以上、好ましくは、5質量%以上、例えば、30質量%以下、好ましくは、15質量%以下である。
【0142】
(3)砂型の造形方法(製造方法)
次に、
図1〜
図6Bを参照して、砂型用キットを用いた3次元積層造形について説明する。
【0143】
図1に示すように、3Dプリンタ6は、3D−CADデータから砂型を造形できる装置である。3Dプリンタ6は、造形ユニット7と、リコータ13と、ジェットヘッド14と、図示しない操作部とを備えている。
【0144】
図3Aおよび
図3Bに示すように、造形ユニット7は、ジョブボックス11と、ステージ12と、支持軸18とを備えている。
【0145】
ジョブボックス11は、平面視略矩形枠の筒形状を有しており、上下方向に延びている。ジョブボックス11の上端部は、開放されている。
【0146】
ステージ12は、平面視略矩形の板状を有する。ステージ12は、ジョブボックス11内に位置する。ステージ12は、支持軸18の上端部に固定されている。支持軸18は、上下方向に昇降可能である。ステージ12は、支持軸18の昇降によりジョブボックス11内において上下方向に移動可能である。
【0147】
リコータ13は、上記した鋳物砂を貯留可能である。リコータ13は、貯留される鋳物砂をステージ12に供給可能である。リコータ13は、ステージ12に対して平行な状態で、ステージ12の上方を通過可能である。なお、以下において、リコータ13が移動可能な方向を横方向(X方向)とし、横方向および上下方向の両方向と直交する方向を縦方向(Y方向)とする。
【0148】
図2に示すように、リコータ13は、容器15と、ブレード16とを備えている。
【0149】
容器15は、上記の鋳物砂が貯留可能である。容器15は、縦方向に延びている(
図1参照)。容器15は、第1壁15Aおよび第2壁15Bと、底壁15Cとを備える。
【0150】
第1壁15Aおよび第2壁15Bは、横方向に互いに間隔を空けて配置される。底壁15Cは、容器15の下端部に位置する。
【0151】
容器15は、開口17を有している。開口17は、容器15の内外を連通する。開口17は、第1壁15Aの下端部に形成されている。開口17は、第1壁15Aと底壁15Cとの間に区画されている。開口17は、縦方向に延びている。開口17の縦方向の寸法は、ステージ12の縦方向の寸法と略同じである。
【0152】
ブレード16は、容器15内に配置されている。ブレード16は、振動可能である。ブレード16が振動すると、容器15に貯留される鋳物砂が開口17から排出される。ブレード16は、側面視L字状を有しており、プレート16Aと、突出部16Bとを有している。
【0153】
プレート16Aは、第1壁15Aに沿うように、第1壁15Aに対して間隔を空けて配置されている。
【0154】
突出部16Bは、プレート16Aの下端部から、第2壁15Bに向かって突出している。突出部16Bの遊端部(プレート16Aと反対側の端部)は、第2壁15Bに対して、横方向に間隔を隔てて配置されている。横方向における突出部16Bの遊端部と第2壁15Bとの間の間隔Lは、例えば、0.3mm以上、好ましくは、0.7mm以上、例えば、6.0mm以下、好ましくは、1.5mm以下である。
【0155】
なお、リコータ13は、図示しないが、鋳物砂が収容される鋳物砂タンクに接続されており、容器15内の鋳物砂の貯留量が所定値以下になると、鋳物砂タンクから鋳物砂が補給される。
【0156】
図4Aおよび
図4Bに示すように、ジェットヘッド14は、ステージ12上に形成された鋳物砂の層に上記したバインダを供給可能である。ジェットヘッド14は、図示しないが、バインダを収容するバインダタンクに接続されており、バインダタンクからバインダが補給される。
【0157】
また、ジェットヘッド14は、図示しない操作部と電気的に接続されている。ジェットヘッド14は、ステージ12に対して平行な状態で、ステージ12の上方を縦方向および横方向に通過可能である。
【0158】
3Dプリンタ6では、
図3Aおよび
図3Bに示すように、まず、鋳物砂を貯留するリコータ13は、横方向に移動するとともに、ブレード16が僅かに振動することにより、鋳物砂を開口17からステージ12上に層状となるように排出する(
図2参照)。
【0159】
これによって、ステージ12上に、第1鋳物砂層25(鋳物砂の層)が形成される。
【0160】
第1鋳物砂層25の厚みは、鋳物砂に含まれる最大粒子の粒径よりも大きく、例えば、200μm以上、好ましくは、250μm以上、例えば、400μm以下、好ましくは、300μm以下である。
【0161】
次いで、
図4Aおよび
図4Bに示すように、ジェットヘッド14は、図示しない操作部から入力される3D−CADデータに基づいて、第1鋳物砂層25のうち砂型となる部分に、バインダを添加して、第1添加部分26を形成する。
【0162】
第1添加部分26では、添加されたバインダが、鋳物砂に含まれる固体酸触媒と接触し、硬化することにより、鋳物砂を互いに接着する。これによって、第1添加部分26が、バインダ硬化物により固められる。
【0163】
次いで、
図5Aに示すように、ステージ12が、第1鋳物砂層25の厚み分下降する。その後、リコータ13が、第1鋳物砂層25上に、再度、鋳物砂を層状となるように排出する。これにより、第2鋳物砂層27(鋳物砂の層)を形成する。その後、
図5Bに示すように、ジェットヘッド14が、第2鋳物砂層27のうち砂型となる部分に、バインダを添加して、第2添加部分28を形成する。
【0164】
同様に、
図6Aおよび
図6Bに示すように、リコータ13による鋳物砂の層形成、および、ジェットヘッド14によるバインダの添加を順次繰り返す。鋳物砂の層形成がn回繰り返された場合、第1鋳物砂層25〜第n鋳物砂層が順次積層され、第1添加部分26〜第n添加部分が順次形成される。各鋳物砂の層の厚みの範囲は、上記の第1鋳物砂層25の厚みの範囲と同一である。
【0165】
その後、バインダが添加されていない鋳物砂を、例えば、エアブローなどにより、砂型30から除去する。
【0166】
以上によって、砂型30が製造される。砂型30は、鋳物砂と、鋳物砂を互いに接着するバインダ硬化物とを含有している。なお、
図5Bおよび
図6Aでは、便宜上、砂型30の表面が段差を有するように示されているが、実際には、砂型30の表面は、
図6Bに示すように、略平滑に形成されている。
【0167】
<作用効果>
上記した鋳物砂は、砂と、固体酸触媒とを備える。固体酸触媒は、砂に混合される。そのため、鋳物砂にバインダを添加したときに、バインダを早期に硬化させることができ、砂型を効率よく造形することができる。
【0168】
また、固体酸触媒は、好ましくは、固体のヘテロポリ酸を含む。そのため、鋳物砂にバインダを添加したときに、バインダを確実に硬化させることができる。
【0169】
また、固体酸触媒は、好ましくは、ケイタングステン酸を含む。そのため、鋳物砂における固体酸触媒の含有割合の低減を図ることができながら、バインダを安定して硬化させることができる。
【0170】
また、固体酸触媒は、好ましくは、第1粒子を少なくとも含む。第1粒子の平均一次粒子径は、5μm以下である。固体酸触媒における第1粒子の含有割合は、好ましくは、上記下限以上である。そのため、砂型の強度の向上を図ることができる。
【0171】
また、固体酸触媒は、好ましくは、第2粒子を少なくとも含む。第2粒子の平均一次粒子径は、5μmを超過し40μm以下である。固体酸触媒における第2粒子の含有割合は、好ましくは、上記下限以上である。
【0172】
そのため、3次元積層造形において、砂型から、バインダが添加されていない鋳物砂を円滑に除去できる優れた清掃性を確保できる。
【0173】
また、砂型用キットは、上記した鋳物砂と、バインダとを備える。バインダは、フラン樹脂前駆体および有機溶媒を含有する。バインダにおける有機溶媒の含有割合は、上記範囲である。
【0174】
そのため、砂型用キットから製造される砂型の強度の向上を確実に図ることができる。
【0175】
しかるに、バインダは、フラン樹脂前駆体に起因するイグロス(強熱減量)を含んでいる。イグロスは、鋳造におけるガス欠陥の要因となるため低減することが望まれている。上記の構成では、バインダが有機溶媒を含有しているので、バインダにおけるフラン樹脂前駆体の含有割合を増加させることなく、砂型の強度の向上を図ることができる。その結果、砂型の強度の向上を図ることができながら、イグロスの増加を抑制することができる。
【0176】
また、鋳物砂は、好ましくは、微粒子をさらに備える。微粒子の平均一次粒子径は、20μm以下である。そのため、バインダに有機溶媒を含有させても、鋳物砂の優れた清掃性を確保することができる。
【実施例】
【0177】
次に、本発明を、準備例、実施例および比較例に基づいて説明するが、本発明は、下記の実施例によって限定されるものではない。なお、「部」および「%」は、特に言及がない限り、質量基準である。また、以下の記載において用いられる配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなどの具体的数値は、上記の「発明を実施するための形態」において記載されている、それらに対応する配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなど該当記載の上限値(「以下」、「未満」として定義されている数値)または下限値(「以上」、「超過」として定義されている数値)に代替することができる。
【0178】
<人工砂の準備>
(準備例1)
重焼マグネシア(MgO系耐火物原料)と、合成ムライトおよび溶融アルミナの混合物(Al
2O
3−SiO
2系耐火物原料)とを、粉砕機に投入した。次いで、重焼マグネシアと、合成ムライトおよび溶融アルミナの混合物とを、混合しながら粉砕して混合原料粒子を得た。
【0179】
混合原料粒子において、Al
2O
3の含有割合は約66質量%、MgOの含有割合は約26質量%、SiO
2の含有割合は約5質量%であった。また、混合原料粒子の平均一次次粒子径は、2.3μmであった。
【0180】
次いで、混合原料粒子を転動造粒機に投入した。そして、混合原料粒子にポリビニルアルコール水溶液(造粒促進剤)を添加しながら、7分間高速撹拌した。これによって、混合原料粒子を造粒して、混合造粒物を得た。
【0181】
次いで、混合造粒物を篩分けして、混合造粒物の粒度分布を、75μm以上250μm以下に調整した。
【0182】
次いで、混合造粒物を、焼結炉に投入して、大気下において1600℃にて焼結させた。これによって、焼結物を得た。焼結物は、粒子状を有していた。
【0183】
次いで、焼結物を篩分けして、過大粒子と微小粒子とを除去した。過大粒子の一次粒子径は、212μmを超過していた。微小粒子の一次粒子径は、53μm未満であった。
【0184】
以上によって、スピネル型結晶構造を有する人工砂A(スピネル砂)を準備した。
【0185】
人工砂Aにおいて、Al
2O
3の含有割合は66.4質量%、SiO
2の含有割合は5.1質量%、MgOの含有割合は26.6質量%、Fe
2O
3の含有割合は0.3質量%、その他成分の含有割合は1.6質量%であった。また、人工砂Aの酸消費量は、0.6ml/50gであった。
【0186】
(準備例2)
重焼マグネシア(MgO系耐火物原料)を、粉砕機に投入して粉砕した。これによって、MgO原料粒子を得た。MgO原料粒子の平均一次粒子径は、2.2μmであった。
【0187】
また、合成ムライトおよび溶融アルミナの混合物(Al
2O
3−SiO
2系耐火物原料)を、重焼マグネシア(MgO系耐火物原料)とは別途、粉砕機に投入して粉砕した。これによって、Al
2O
3−SiO
2原料粒子を得た。Al
2O
3−SiO
2原料粒子の平均一次粒子径は、2.3μmであった。
【0188】
次いで、MgO原料粒子およびAl
2O
3−SiO
2原料粒子を転動造粒機に投入した。そして、MgO原料粒子およびAl
2O
3−SiO
2原料粒子にポリビニルアルコール水溶液(造粒促進剤)を添加しながら、7分間高速撹拌した。これによって、MgO原料粒子およびAl
2O
3−SiO
2原料粒子を混合しながら造粒して、混合造粒物を得た。
【0189】
混合造粒物において、Al
2O
3の含有割合は約66質量%、SiO
2の含有割合は約5質量%、MgOの含有割合は約26質量%であった。
【0190】
次いで、混合造粒物を篩分けして、混合造粒物の粒度分布を、75μm以上250μm以下に調整した。
【0191】
次いで、準備例1と同様にして、混合造粒物を焼結させた後、焼結物を篩分けして、スピネル型結晶構造を有する人工砂B(スピネル砂)を準備した。
【0192】
人工砂Bにおいて、Al
2O
3の含有割合は66.1質量%、SiO
2の含有割合は5.1質量%、MgOの含有割合は26.7質量%、Fe
2O
3の含有割合は0.4質量%、その他成分の含有割合は1.7質量%であった。また、人工砂Bの酸消費量は、1.5ml/50gであった。
【0193】
(準備例3)
エスパール#75(ムライト砂、山川産業社製)を人工砂Cとして準備した。
【0194】
(準備例4)
準備例1で得られた人工砂Aと天然珪砂とを、質量比が40:60(人工砂A:天然珪砂)となるように混合した。これにより、混合砂Dを準備した。
【0195】
<酸触媒の準備>
(準備例5)
ケイタングステン酸水和物(H
4[SiW
12O
40]・30H
2O)を、水(溶媒)に溶解して、ケイタングステン酸溶液を調製した。ケイタングステン酸溶液の濃度は、2.08g/cm
3であった。
【0196】
次いで、ケイタングステン酸溶液を、スプレードライヤー(GF社製、MDL−050CM)により、以下の条件で処理した。
噴霧方式:4流体ノズル方式、
入口温度:170℃、
排気温度:100℃、
塔内差圧:1.0kPa、
バグフィルター差圧:0.3kPa、
給気風量:1.0m
3/min、
ノズルエアー
一次圧力:0.6MPaG、流量1:40NL/min、流量2:40NL/min、
送液速度
流量1:5mL/min、流量2:5mL/min。
【0197】
これによって、乾燥粉末を得た。
【0198】
次いで、乾燥粉末を、公称目開き250μmのSUS製篩(60メッシュ)により篩分けして、篩下粒子を固体酸触媒Aとして得た。
【0199】
固体酸触媒Aは、ケイタングステン酸(化学式:H
4[SiW
12O
40])を含む。固体酸触媒Aの平均一次粒子径は、0.8μmであり、固体酸触媒Aは、第1粒子に相当した。
【0200】
(準備例6)
準備例5と同様にして調製したケイタングステン酸溶液を、スプレードライヤー(大川原化工機社製、CLT−8)により、以下の条件で処理した。
噴霧方式:アトマイザータイプディスク方式、
入口温度:175℃、
排気温度:115℃、
送液速度:15mL/min、
アトマイザー:25Hz。
【0201】
これによって、乾燥粉末を得た。
【0202】
次いで、乾燥粉末を、公称目開き150μmのSUS製篩(100メッシュ)により篩分けして、篩下粒子を固体酸触媒Bとして得た。
【0203】
固体酸触媒Bは、ケイタングステン酸(化学式:H
4[SiW
12O
40])を含む。固体酸触媒Bの平均一次粒子径は、19.4μmであり、固体酸触媒Bは、第2粒子に相当した。
【0204】
(準備例7)
ケイタングステン酸水和物(H
4[SiW
12O
40]・30H
2O)を、リンタングステン酸水和物(H
3[PW
12O
40]・30H
2O)に変更したこと以外は、準備例6と同様にして、固体酸触媒Cを得た。
【0205】
固体酸触媒Cは、リンタングステン酸(化学式:H
3[PW
12O
40])を含む。固体酸触媒Cの平均一次粒子径は、22.1μmであり、固体酸触媒Cは、第2粒子に相当した。
【0206】
(準備例8)
ケイタングステン酸30水和物(H
4[SiW
12O
40]・30H
2O)を、リンタングステン酸30水和物(H
3[PW
12O
40]・30H
2O)に変更したこと以外は、準備例5と同様にして、固体酸触媒Dを得た。
【0207】
固体酸触媒Dは、リンタングステン酸(化学式:H
3[PW
12O
40])を含む。固体酸触媒Dの平均一次粒子径は、1.3μmであり、固体酸触媒Dは、第1粒子に相当した。
【0208】
(準備例9)
ケイタングステン酸30水和物(H
4[SiW
12O
40]・30H
2O)を、リンモリブデン酸30水和物(H
3PMo
12O
40・30H
2O)に変更したこと以外は、準備例5と同様にして、固体酸触媒Eを得た。
【0209】
固体酸触媒Eは、リンモリブデン酸(化学式:H
3PMo
12O
40)を含む。固体酸触媒Eの平均一次粒子径は、1.5μmであり、固体酸触媒Eは、第1粒子に相当した。
【0210】
(準備例10)
ケイタングステン酸30水和物(H
4[SiW
12O
40]・30H
2O)を、リンバナドタングステン酸30水和物に変更したこと以外は、準備例5と同様にして、固体酸触媒Fを得た。
【0211】
固体酸触媒Fは、リンバナドタングステン酸(化学式:H
4PVW
11O
40)を含む。固体酸触媒Fの平均一次粒子径は、1.5μmであり、固体酸触媒Fは、第1粒子に相当した。
【0212】
(準備例11)
ケイタングステン酸30水和物(H
4[SiW
12O
40]・30H
2O)を、リンバナドモリブデン酸30水和物に変更したこと以外は、準備例5と同様にして、固体酸触媒Gを得た。
【0213】
固体酸触媒Gは、リンバナドモリブデン酸(化学式:H
4PVMo
11O
40)を含む。固体酸触媒Gの平均一次粒子径は、1.5μmであり、固体酸触媒Gは、第1粒子に相当した。
【0214】
(準備例12)
パラトルエンスルホン酸(PTS)と、硫酸と、水とを含有するパラトルエンスルホン酸水溶液を、液体酸触媒Hとして準備した。液体酸触媒Hにおいて、PTSの濃度は、50質量%〜70質量%であり、硫酸の濃度は、2.0質量%以下であった。
【0215】
<微粒子の準備>
(準備例13)
ジルコン微粒子(A−PAX、キンセイマテック社製、平均一次粒子径1μm)を、ジルコン微粒子Aとして準備した。
【0216】
(準備例14)
ジルコン微粒子(ジルコンフラワー#350、キンセイマテック社製、平均一次粒子径15μm)を、ジルコン微粒子Bとして準備した。
【0217】
(実施例1〜39および比較例1,2)
各準備例で得られた砂(人工砂A〜Cおよび混合砂Dのそれぞれ)と、各準備例で得られた酸触媒(固体酸触媒A〜Gおよび液体酸触媒Hのそれぞれ)と、必要に応じて各準備例で得られた微粒子(ジルコン微粒子AおよびBのそれぞれ)とを、表1〜表6に示す処方となるように、常温(25℃)において混合した。これによって、鋳物砂を調製した。
【0218】
また、フルフリルアルコール(フラン樹脂前駆体)と、レゾルシン(硬化促進剤)と、必要に応じて有機溶媒とを、表1〜表6に示す処方となるように、常温(25℃)において混合した。これによって、バインダを調製した。
【0219】
以上によって、砂型用キットを準備した。
<抗折力試験>
各実施例および各比較例で得られた砂型用キットを、3次元積層造形装置にセットし、リコータによる鋳物砂の層形成、および、ジェットヘッドによるバインダの添加を順次繰り返して、
図7Aに示すように、一辺Dが14.0mm、長さLが70.0mmである正四角柱の試験柱(砂型)を造形した。なお、各鋳物砂の層の厚みは、0.28mmであった。また、リコータにおける突出部の遊端部と第2壁との間の間隔L(
図2参照)は、1.0mmであった。
【0220】
その試験柱を、室温24℃、湿度45%の条件下で、1時間または24時間放置した。
【0221】
そして、
図7Bに示すように、試験柱の3点曲げにおける抗折力試験を実施するために、試験柱の長さ方向が水平となるように、試験柱を2つの支点に支持させた。2つの支点間の距離L
1は、50mmであった。これにより、試験柱を試験装置(SC−200D−B、東海エスイー社製)にセットした。
【0222】
次いで、試験柱の長さ方向の中央に対して垂直方向に荷重Fを加えた。そして、試験柱が折れたときの荷重から、下記式(1)により、抗折力(強度)を算出した。
【0223】
式(1):
抗折力=3FL
1/2D
3
(式(1)中、Fは、荷重[kg]を示し、L
1は、支点間距離[cm]を示し、Dは、試験柱の一辺の長さ[cm]を示す。)
そして、上記の抗折力試験を5回繰り返して抗折力の平均値を算出した。その結果を、1時間放置後の抗折力の平均値を強度−1h、24時間放置後の抗折力の平均値を強度−24hとして表1〜表6に示す。
【0224】
なお、比較例1および2では、1時間放置後の試験柱が硬化していなかった。そのため、1時間放置後の抗折力は測定不可であった。
【0225】
また、下記の基準により、1時間放置後の抗折力(強度−1h)および24時間放置後の抗折力(強度−24h)を評価した。
1時間放置後の抗折力(強度−1h):
○:20kg/cm
2以上、
△:1kg/cm
2以上20kg/cm
2未満、
×:硬化しない。
24時間放置後の抗折力(強度−24h):
○:30kg/cm
2以上、
△:1kg/cm
2以上30kg/cm
2未満、
×:硬化しない。
【0226】
<清掃性試験>
各実施例および各比較例で得られた砂型用キットを、3次元積層造形装置にセットし、リコータによる鋳物砂の層形成、および、ジェットヘッドによるバインダの添加を順次繰り返して、
図8Bに示すように、互いにサイズが異なる複数(6つ)の穴を有する試験片(砂型)を造形した。
【0227】
試験片は、平面視矩形状の平板形状を有していた。試験片の厚みは、14.0mmであった。試験片の長手方向の寸法は、180.0mmであった。試験片の幅方向の寸法は、50.0mmであった。6つ穴の内径は、小さい順に、5.0mm、10.0mm、15.0mm、20.0mm、25.0mm、30.0mmであった。
【0228】
なお、各鋳物砂の層の厚みは、0.28mmであった。また、リコータにおける突出部の遊端部と第2壁との間の間隔L(
図2参照)は、1.0mmであった。
【0229】
次いで、作業者は、試験片を鋳物砂の層から取り出した。
図8Aに、比較例1の鋳物砂を用いた試験片を、試験片の厚み方向から撮影した写真を示す。
図8Bに、実施例26の鋳物砂を用いた試験片を、試験片の厚み方向から撮影した写真を示す。
【0230】
その後、エアブローにより、バインダが添加されていない鋳物砂(以下、未硬化砂とする。)を試験片から除去した。また、必要に応じて、エアブロー後にさらにハケによって、未硬化砂を試験片から除去した。
【0231】
また、下記の基準により、清掃性を評価した。
4以上:エアブローのみにより未硬化砂を試験片から円滑に除去できる。
3以上4未満:エアブローにより未硬化砂の大部分(50%以上)を試験片から除去でき、ハケにより未硬化砂の残部を円滑に除去できる。
2以上3未満:エアブローにより未硬化砂の一部(10%以上50%未満)を試験片から除去でき、ハケにより未硬化砂の残部を除去できる。
1以上2未満:エアブローにより未硬化砂をわずか(10%未満)に試験片から除去でき、ハケにより未硬化砂の残部を除去できる。
0以上1未満:エアブローでは未硬化砂が試験片からほとんど除去できないが、ハケにより未硬化砂を除去できる。
【0232】
<イグロス測定>
上記した抗折力試験と同様にして、試験柱(砂型)を造形した。そして、試験柱から試料を採取して、JIS Z2601−1993 付属書6に準拠して、イグロスを測定した。
【0233】
また、下記の基準により、イグロスを評価した。その結果を、表1〜表6に示す。
◎:1.5%未満
○:2.0%未満1.5%以下
△:2.0%以上。
【0234】
【表1】
【0235】
【表2】
【0236】
【表3】
【0237】
【表4】
【0238】
【表5】
【0239】
【表6】