特許第6880342号(P6880342)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 太陽インキ製造株式会社の特許一覧

特許6880342黒色感光性樹脂組成物、その硬化物、および硬化物からなる隠蔽層を備えたディスプレイ装置
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6880342
(24)【登録日】2021年5月7日
(45)【発行日】2021年6月2日
(54)【発明の名称】黒色感光性樹脂組成物、その硬化物、および硬化物からなる隠蔽層を備えたディスプレイ装置
(51)【国際特許分類】
   C08L 33/14 20060101AFI20210524BHJP
   C08K 3/04 20060101ALI20210524BHJP
   C08K 3/26 20060101ALI20210524BHJP
   C08K 3/34 20060101ALI20210524BHJP
【FI】
   C08L33/14
   C08K3/04
   C08K3/26
   C08K3/34
【請求項の数】7
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2020-558060(P2020-558060)
(86)(22)【出願日】2020年3月27日
(86)【国際出願番号】JP2020014077
(87)【国際公開番号】WO2020203791
(87)【国際公開日】20201008
【審査請求日】2020年11月2日
(31)【優先権主張番号】特願2019-69221(P2019-69221)
(32)【優先日】2019年3月29日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】310024066
【氏名又は名称】太陽インキ製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 真理
(72)【発明者】
【氏名】斧田 遥夏
(72)【発明者】
【氏名】吉田 正人
【審査官】 藤井 勲
(56)【参考文献】
【文献】 特開平06−192387(JP,A)
【文献】 特開平06−220145(JP,A)
【文献】 特開平10−298214(JP,A)
【文献】 特開2002−167526(JP,A)
【文献】 特開2008−058979(JP,A)
【文献】 特開2011−209710(JP,A)
【文献】 特開2013−095910(JP,A)
【文献】 特開2018−002957(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00 − 101/14
C08F 283/01
C08F 290/00 − 290/14
C08F 299/00 − 299/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)感光性樹脂、(B)光重合開始剤、(C)黒色顔料、および(D)フィラーを少なくとも含んでなる黒色感光性樹脂組成物であって、
前記(A)感光性樹脂が、結合部と、前記結合部に連結部を介して少なくとも2個の(メタ)アクリロイル基が結合したアクリレート化合物であって、連結部がカプロラクトン基、エチレンオキサイド基およびプロピレンオキサイド基からなる群より選択される少なくとも1種であり、一つの連結部中の炭素原子および酸素原子の総数が3〜15個であるアクリレート化合物を含み、
前記(D)フィラーが、炭酸カルシウムを含む、
ことを特徴とする、黒色感光性樹脂組成物。
【請求項2】
前記アクリレート化合物は、全ての連結部の炭素原子および酸素原子の総数が6〜165個である、請求項1に記載の黒色感光性樹脂組成物。
【請求項3】
前記(D)フィラーがさらにタルクを含む、請求項1または2に記載の黒色感光性樹脂組成物。
【請求項4】
前記(D)フィラーが、固形分換算で、前記感光性樹脂(A)成分100質量部に対して30〜0質量含まれる、請求項1〜3のいずれか一項に記載の黒色感光性樹脂組成物。
【請求項5】
前記(C)黒色顔料がカーボンブラックである、請求項1〜4のいずれか一項に記載の黒色感光性樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の黒色感光性樹脂組成物を硬化させて得られることを特徴とする、硬化物。
【請求項7】
ガラス基板と、
前記ガラス基板の一方の面の少なくとも一部に設けられた、請求項6に記載の硬化物からなる隠蔽層と、
を少なくとも備えたことを特徴とする、ディスプレイ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、黒色感光性樹脂組成物に関し、より詳細には、ディスプレイ装置のガラス基板の隠蔽に好適に使用できる黒色感光性樹脂組成物、その硬化物、および硬化物からなる隠蔽層を備えたディスプレイ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶素子、発光ダイオード素子、有機エレクトロルミネッセンス素子等を有する表示装置ではタッチパネル機能を有するディスプレイが採用されていることもあり、このような表示装置では、画像表示領域にITOの配線パターンが形成され、その周囲に金属配線パターンが形成されている。例えばカバーガラスにタッチパネル層を直接形成するタイプ(OGSタイプ)では、金属配線パターン等が視認されないようにカバーガラスの周囲に隠蔽層を形成した後にITOや金属配線パターンが形成される。そのため、遮光層には配線を隠蔽するための高い遮光性と、配線間での通電によるパネル誤作動を防止するため高い絶縁性が要求されている。さらに近年は、隠蔽層としてより高い光学濃度(OD)が求められるようになってきた。
【0003】
上記したような隠蔽層は、従来、黒色のフィルムをカバーガラス表面の所望の箇所に貼り付けたり、隠蔽性が得られるまで黒色インキを繰り返し塗布することが行われていたが、黒色の感光性樹脂を用いて隠蔽層を形成すること行われるようになってきた(例えば特許文献1)。
【0004】
また、黒色インキに使用される隠蔽材としてはカーボンブラック等が使用されてきたが、カーボンブラックは導電性の材料であるため、隠蔽性と絶縁性を満足するために、カーボンブラックに加えてタルクやイライト等の無機フィラーを併用することが提案されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2018−35219号公報
【特許文献2】特開平10−316904号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記したような感光性樹脂では、遮光性を向上させるために隠蔽材の配合量を増やすと、光が透過し難くなるため露光不良が生じ、その結果、硬化物のカバーガラスへの密着性が不十分となる。そのため、隠蔽性を維持しながら、絶縁信頼性やガラスとの密着性にも優れる感光性樹脂組成物は未だ実現されていないのが現状である。
【0007】
したがって、本発明の目的は、隠蔽性を維持しながら、絶縁信頼性やガラスとの密着性にも優れる黒色感光性樹脂組成物を提供することである。
【0008】
また、本発明の別の目的は、黒色感光性樹脂組成物を硬化させて得られる硬化物、および該硬化物からなる隠蔽層を備えたディスプレイ装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、特定の変性部位を有するエチレン性不飽和基含有化合物を感光性樹脂として使用し、黒色顔料に加えて特定の無機フィラーを併用することにより、隠蔽性を維持しながら、絶縁信頼性とガラスへの密着性を向上させることができるとの知見を得た。本発明は係る知見によるものである。
【0010】
すなわち、本発明による黒色感光性樹脂組成物は、(A)感光性樹脂、(B)光重合開始剤、(C)黒色顔料、および(D)フィラーを少なくとも含んでなる黒色感光性樹脂組成物であって、
前記(A)感光性樹脂は、結合部と、前記結合部に連結部を介して少なくとも2個の(メタ)アクリロイル基が結合したアクリレート化合物であって、連結部がカプロラクトン基、エチレンオキサイド基およびプロピレンオキサイド基からなる群より選択される少なくとも1種であり、一つの連結部中の炭素原子および酸素原子の総数が3〜15個であるアクリレート化合物を含み、
前記(D)フィラーが、炭酸カルシウムを含む、
ことを特徴とするものである。
【0011】
本発明の実施態様においては、前記アクリレート化合物は、全ての連結部の炭素原子および酸素原子の総数が6〜165個であることが好ましい。
【0012】
本発明の実施態様においては、前記(D)フィラーがさらにタルクを含むことが好ましい。
【0013】
本発明の実施態様においては、前記(D)フィラーが、樹脂成分に対して30〜50質量%含まれることが好ましい。
【0014】
本発明の実施態様においては、前記(C)黒色顔料がカーボンブラックであることが好ましい。
【0015】
また、本発明の別の実施態様による硬化物は、黒色感光性樹脂組成物を硬化させて得られることを特徴とする。
【0016】
また、本発明の別の実施態様によるディスプレイ装置は、
ガラス基板と、
前記ガラス基板の一方の面の少なくとも一部に設けられた、上記硬化物からなる隠蔽層と、
を少なくとも備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、特定の変性部位を有するエチレン性不飽和基含有化合物を感光性樹脂として使用し、黒色顔料に加えて特定の無機フィラーを併用することにより、隠蔽性を維持しながら、絶縁信頼性やガラスとの密着性にも優れる黒色感光性樹脂組成物を提供することができる。
【0018】
さらに本発明の別の態様においては、黒色感光性樹脂組成物を硬化させて得られる硬化物、および該硬化物からなる隠蔽層を備えたディスプレイ装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
[黒色感光性樹脂組成物]
本発明の黒色感光性樹脂組成物は、(A)感光性樹脂、(B)光重合開始剤、(C)黒色顔料、および(D)フィラーを必須成分として含むものであり、(A)感光性樹脂として、結合部と、前記結合部に連結部を介して少なくとも2個の(メタ)アクリロイル基が結合したアクリレート化合物であって、連結部がカプロラクトン基、エチレンオキサイド基およびプロピレンオキサイド基からなる群より選択される少なくとも1種であり、一つの連結部中の炭素原子および酸素原子の総数が3〜15個であるアクリレート化合物を含み、(D)フィラーとして、炭酸カルシウムを含むものである。以下、本発明の黒色感光性樹脂組成物を構成する各成分について詳細に説明する。
【0020】
<(A)感光性樹脂>
本発明の黒色感光性樹脂組成物に含まれる(A)感光性樹脂は、結合部と、前記結合部に連結部を介して少なくとも2個の(メタ)アクリロイル基が結合したアクリレート化合物であって、連結部がカプロラクトン基、エチレンオキサイド基およびプロピレンオキサイド基からなる群より選択される少なくとも1種であり、一つの連結部中の炭素原子および酸素原子の総数が3〜15個であるアクリレート化合物を含む。このような特定のアクリレート化合物を感光性樹脂として用い、フィラーとして後記する炭酸カルシウムと併用することにより、カーボンブラックを含む黒色感光性樹脂組成物であっても、隠蔽性を維持しながら、絶縁性とガラスへの密着性とを向上させることができる。この理由は明らかでないが、黒色感光性樹脂組成物は、露光時に深部まで光が届きにくくガラス基板との密着性が不十分となり易いが、上記したような特定のアクリレート化合物を感光性樹脂として使用することによりガラスとの密着性を向上させることができると考えられる。
【0021】
上記した特定のアクリレート化合物としては、結合部に、カプロラクトン基、エチレンオキサイド基およびプロピレンオキサイド基のいずれか1種以上の連結部を介して、少なくとも2個の(メタ)アクリロイル基が結合したアクリレート化合物(即ち、変性多官能(メタ)アクリレート)を好適に使用することができるが、一つの連結部中の炭素原子および酸素原子の総数が3〜15個であることが必要である。一つの連結部中の炭素原子および酸素原子の総数が3個未満であるような変性多官能アクリレートではガラス基板との密着性が不十分となり、一方、15個を超えると硬化膜の硬度が不十分となる。好ましい範囲は3〜10個である。なお、本明細書において(メタ)アクリロイル基とは、アクリロイル基およびメタアクリロイル基を総称する用語とし、また、(メタ)アクリレートとは、アクリレート、メタクリレートおよびそれらの混合物を総称する用語で、他の類似の表現についても同様である。
【0022】
カプロラクトン変性された(メタ)アクリレートは、例えば、多価アルコールと(メタ)アクリル酸とε−カプロラクトンとを反応させることによって調製することができる。また、本発明においては、カプロラクトン変性された(メタ)アクリレートとポリイソシアネート化合物とをウレタン化反応させて得られるカプロラクトン変性ウレタン(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性された(メタ)アクリレートとポリカルボン酸化合物とをエステル化反応させて得られるカプロラクトン変性ポリエステル(メタ)アクリレート、多価アルコールの水酸基の一部または全部がカプロラクトン基で変性された化合物と(メタ)アクリル酸とをエステル化反応させて得られるカプロラクトン変性(メタ)アクリレートであってもよい。
【0023】
カプロラクトン変性に用いられる多価アルコールとしては、例えば、トリメチロールエタン、ジトリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ジトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、グリセリン、ジグリセロール、トリメチロールメラミンなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0024】
また、カプロラクトン変性ウレタン(メタ)アクリレートに使用されるポリイソシアネート化合物としては、例えば、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、m−キシリレンジイソシアネート、m−フェニレンビス(ジメチルメチレン)ジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート化合物、ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、2−メチル−1,3−ジイソシアナトシクロヘキサン、2−メチル−1,5−ジイソシアナトシクロヘキサン、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等の脂肪族又は脂環式ジイソシアネート化合物などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、ポリイソシアネート化合物として、上記したジイソシアネート化合物を多価アルコールと付加反応させて得られるイソシアネート基を有するプレポリマー、上記したジイソシアネート化合物を環化三量化させて得られるイソシアヌレート環を有する化合物、上記したジイソシアネート化合物を水と反応させて得られる尿素結合やビュレット結合を有するポリイソシアネート化合物なども用いることができる。これらポリイソシアネート化合物は、は1種を単独で用いてもよく、2種以上の混合物として用いてもよい。
【0025】
また、カプロラクトン変性ポリエステル(メタ)アクリレートに使用されるポリカルボン酸化合物としては、例えば、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、セバシン酸、マレイン酸等の脂肪族ポリカルボン酸化合物、フタル酸、トリメリット酸等の芳香族ポリカルボン酸化合物等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、ポリカルボン酸化合物として、上記したポリカルボン酸化合物を多価アルコールと反応させて得られるカルボキシ基を有するプレポリマー等も用いることができる。
【0026】
(メタ)アクリレートとしては、単官能、多官能のいずれも使用できるが、硬化物の硬度の観点から多官能(メタ)アクリレートを好適に使用することができる。
【0027】
単官能(メタ)アクリレートとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ペンチルアクリレート、ヘキシルアクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、クレゾール(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、7−アミノ−3,7−ジメチルオクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、エチルジエチレングリコール(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ポリウレタンモノ(メタ)アクリレート、ポリエポキシモノ(メタ)アクリレート、ポリエステルモノ(メタ)アクリレート等が挙げられ、これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上の混合物として用いてもよい。
【0028】
2官能(メタ)アクリレートの具体例としては、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−シクロヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、グリセロール1,3−ジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールヒドロキシピバレートジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジイルジメチレンジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、水添ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールFジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリカーボネートジ(メタ)アクリレート、又はこれらの単量体のポリアルキレンオキサイド付加物、ポリカプロラクトン付加物、ポリカーボネート付加物、ポリウレタンジ(メタ)アクリレート、ポリエポキシジ(メタ)アクリレート、ポリエステルジ(メタ)アクリレート等が挙げられ、これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上の混合物として用いてもよい。
【0029】
3官能(メタ)アクリレートの具体例としては、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ポリウレタントリ(メタ)アクリレート、ポリエポキシトリ(メタ)アクリレート、ポリエステルトリ(メタ)アクリレート等が挙げられ、これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上の混合物として用いてもよい。
【0030】
4官能以上の(メタ)アクリレートの具体例としては、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ポリエポキシテトラ(メタ)アクリレート、ポリエステルテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート等のペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等のヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールヘプタ(メタ)アクリレート等のヘプタ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールオクタ(メタ)アクリレート等のオクタ(メタ)アクリレート、4官能以上のポリウレタンポリ(メタ)アクリレート、4官能以上のポリエポキシポリ(メタ)アクリレート、4官能以上のポリエステルポリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。更に、それらの4官能以上の(メタ)アクリレート単量体のポリアルキレンオキサイド変性品付加物、ポリカプロラクトン変性品付加物、及びポリカーボネート変性品付加物等の変性品、4官能以上のポリウレタンポリ(メタ)アクリレート、4官能以上のポリエポキシポリ(メタ)アクリレート、4官能以上のポリエステルポリ(メタ)アクリレート等が挙げられ、これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上の混合物として用いてもよい。
【0031】
上記したカプロラクトン変性多官能(メタ)アクリレートは、市販のものを使用してもよく、例えばKAYARAD DPCA−20、KAYARAD DPCA−30、KAYARAD DPCA−60、KAYARAD DPCA−120等(いずれも、日本化薬株式会社)が挙げられる。
【0032】
また、エチレンオキサイド基またはプロピレンオキサイド基変性されたアクリレートとしては、例えば、トリメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンポリエトキシトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンポリプロポキシトリ(メタ)アクリレート、グリセリンポリエトキシトリ(メタ)アクリレート、グリセリンポリプロポキシトリ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAポリエトキシジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAポリプロポキシジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールポリエトキシヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールポリプロポキシヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0033】
本発明の黒色感光性樹脂組成物は、(A)感光性樹脂として、上記した変性多官能(メタ)アクリレート化合物以外の感光性樹脂が含まれていてもよい。例えば、上記したカプロラクトン変性されていない(メタ)アクリレートを制限なく使用することができる。これらのなかでも、絶縁性や硬度の観点から、ビスフェノールAとエピクロルヒドリンと(メタ)アクリル酸との反応により合成されるビスフェノールA型エポキシ(メタ)アクリレート樹脂、ビスフェノールSとエピクロルヒドリンと(メタ)アクリル酸との反応により合成されるビスフェノールS型エポキシ(メタ)アクリレート樹脂、ビスフェノールFとエピクロルヒドリンと(メタ)アクリル酸との反応により合成されるビスフェノールF型エポキシ(メタ)アクリレート樹脂、フェノールノボラックとエピクロルヒドリンと(メタ)アクリル酸との反応により合成されるフェノールノボラック型エポキシ(メタ)アクリレート樹脂等が挙げられ、これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上の混合物として用いてもよい。
【0034】
(A)感光性樹脂として、上記した変性多官能(メタ)アクリレート以外に他の感光性樹脂を含む場合、変性多官能(メタ)アクリレートの配合量は、硬化物の硬化性やガラスとの密着性の観点から、感光性樹脂成分に対して5〜45質量%であることが好ましく、15〜35質量%であることがより好ましい。
【0035】
<(B)光重合開始剤>
光重合開始剤としては、具体的には例えば、ビス−(2,6−ジクロロベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジクロロベンゾイル)−2,5−ジメチルフェニルフォスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジクロロベンゾイル)−4−プロピルフェニルフォスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジクロロベンゾイル)−1−ナフチルフォスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジメトキシベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,5−ジメチルフェニルフォスフィンオキサイド、ビス−(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド等のビスアシルフォスフィンオキサイド類;2,6−ジメトキシベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、2,6−ジクロロベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルフォスフィン酸メチルエステル、2−メチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、ピバロイルフェニルフォスフィン酸イソプロピルエステル、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド等のモノアシルフォスフィンオキサイド類;フェニル(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フォスフィン酸エチル、1−ヒドロキシ−シクロヘキシルフェニルケトン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン等のヒドロキシアセトフェノン類;ベンゾイン、ベンジル、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインn−プロピルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインn−ブチルエーテル等のベンゾイン類;ベンゾインアルキルエーテル類;ベンゾフェノン、p−メチルベンゾフェノン、ミヒラーズケトン、メチルベンゾフェノン、4,4’−ジクロロベンゾフェノン、4,4’−ビスジエチルアミノベンゾフェノン等のベンゾフェノン類;アセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1,1−ジクロロアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−1−プロパノン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル)−1−[4−(4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタノン、N,N−ジメチルアミノアセトフェノン等のアセトフェノン類;チオキサントン、2−エチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン等のチオキサントン類;アントラキノン、クロロアントラキノン、2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−tert−ブチルアントラキノン、1−クロロアントラキノン、2−アミルアントラキノン、2−アミノアントラキノン等のアントラキノン類;アセトフェノンジメチルケタール、ベンジルジメチルケタール等のケタール類;エチル−4−ジメチルアミノベンゾエート、2−(ジメチルアミノ)エチルベンゾエート、p−ジメチル安息香酸エチルエステル等の安息香酸エステル類;1,2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)−,2−(O−ベンゾイルオキシム)]、エタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−,1−(O−アセチルオキシム)等のオキシムエステル類;ビス(η5−2,4−シクロペンタジエン−1−イル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−1−イル)フェニル)チタニウム、ビス(シクロペンタジエニル)−ビス[2,6−ジフルオロ−3−(2−(1−ピル−1−イル)エチル)フェニル]チタニウム等のチタノセン類;フェニルジスルフィド2−ニトロフルオレン、ブチロイン、アニソインエチルエーテル、アゾビスイソブチロニトリル、テトラメチルチウラムジスルフィド等が挙げられ、これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上の混合物として用いてもよい。
【0036】
α−アミノアセトフェノン系光重合開始剤の市販品としては、IGM Resins社製のOmnirad 907、369、369E、379等が挙げられる。また、アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤の市販品としては、IGM Resins社製のOmnirad TPO、819等が挙げられる。オキシムエステル系光重合開始剤の市販品としては、BASFジャパン株式会社製のIrgacure OXE01、OXE02、株式会社ADEKA製N−1919、アデカアークルズ NCI−831、NCI−831E、常州強力電子新材料社製TR−PBG−304などが挙げられる。
【0037】
その他、特開2004−359639号公報、特開2005−097141号公報、特開2005−220097号公報、特開2006−160634号公報、特開2008−094770号公報、特表2008−509967号公報、特表2009−040762号公報、特開2011−80036号公報記載のカルバゾールオキシムエステル化合物等を挙げることができる。
【0038】
光重合開始剤の配合量は、固形分換算で、感光性樹脂(A)成分100質量部に対して、5〜20質量部であることが好ましく、7〜15質量部であることがより好ましい。7質量部以上であれば、樹脂組成物の光硬化性が良好となり硬化物の硬度や密着性がより一層良好となる。また、15質量部以下であれば、アウトガスの低減効果が得られるとともに、深部硬化性が低下しにくい。
【0039】
上記した(B)光重合開始剤と併用して、光開始助剤または増感剤を用いてもよい。光開始助剤または増感剤としては、ベンゾイン化合物、アントラキノン化合物、チオキサントン化合物、ケタール化合物、ベンゾフェノン化合物、3級アミン化合物、およびキサントン化合物などを挙げることができる。特に、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、4−イソプロピルチオキサントン等のチオキサントン化合物を用いることが好ましい。チオキサントン化合物が含まれることにより、深部硬化性を向上させることができる。これらの化合物は、光重合開始剤として用いることができる場合もあるが、光重合開始剤と併用して用いることが好ましい。また、光開始助剤または増感剤は1種類を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0040】
なお、これら光重合開始剤、光開始助剤、および増感剤は、特定の波長を吸収するため、場合によっては感度が低くなり、紫外線吸収剤として機能することがある。しかしながら、これらは樹脂組成物の感度を向上させることだけの目的に用いられるものではない。必要に応じて特定の波長の光を吸収させて、表面の光反応性を高め、レジストパターンのライン形状および開口を垂直、テーパー状、逆テーパー状に変化させるとともに、ライン幅や開口径の精度を向上させることができる。
【0041】
<(C)黒色顔料>
黒色顔料は、無機顔料であっても、有機顔料であってもよく、例えば、カーボンブラック、四三酸化鉄、黒酸化チタン、銅マンガンブラック、銅クロムブラックおよびコバルトブラック等の無機顔料、並びにシアニンブラックおよびアニリンブラック等の有機顔料が挙げられ、これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上の混合物として用いてもよい。また、赤、青、緑、黄色等の顔料を混合し黒色とした顔料混合物も黒色顔料に含まれる。また、黒色顔料は、本発明の効果を阻害しない範囲内で、他の顔料や染料などの着色剤を併用しても良い。
【0042】
上記したなかでも、ガラスとの密着性の観点から、カーボンブラックが好ましい。また、カーボンブラックを使用することにより、すじやゆず肌状の模様が形成されていない、平滑性の高い遮蔽層を形成することができる。さらに、カーボンブラックであれば、少量の添加で遮蔽部のOD値を3〜6の範囲とすることができ、絶縁性を維持しつつ、遮蔽性をより高めることができる。OD値は例えば、透過濃度計(ビデオジェット・エックスライト株式会社製、X−Rite 361T(V))を用いて測定することができる。
【0043】
カーボンブラックとしては、例えば、チャネルブラック、オイルファーネスブラック、ガスファーネスブラック、サーマルブラック、アセチレンブラック、ボーンブラックなどを上げることができる。これらのなかでも、絶縁性の観点からはグラファイト構造が未発達で電気抵抗値が大きなカーボンブラックを併用することが望ましい。
【0044】
上記した黒色顔料は、市販のものを使用してもよく、例えば、MA−100、MA−100R、MA−600、#25、#3230、33250(いずれも三菱ケミカル株式会社製)、REGAL99R(キャボット社製)、Raven860U、Raven780ULTRA(いずれもコロンビアンケミカルズ社製)、Prix 25(デグサ社製)、HTC#100(日鉄ケミカル&マテリアル株式会社製)等が挙げられる。
【0045】
黒色顔料の配合量は、隠蔽性、硬化物の硬度やガラスとの密着性の観点から、組成物全体に対して3.5〜7.5質量%であることが好ましい。黒色顔料の配合量を3.5質量%以上とすることで高い光学濃度を維持して隠蔽性を十分なものとすることができる。また、7.5質量%以下とすることにより、深部露光が十分なものとなり満足する密着性や硬度の硬化物を得ることができる。
【0046】
<(D)フィラー>
本発明の黒色感光性樹脂組成物は、フィラーとして炭酸カルシウムを含む。上記したように、黒色感光性組成物は露光した際の深部硬化が不十分であるという問題を有するものの、本発明においては、感光性樹脂として、上記した変性多官能(メタ)アクリレート化合物を使用し、フィラーとして、炭酸カルシウムを使用することにより、隠蔽性を維持しながら、ガラスへの密着性や絶縁信頼性を向上させることができる。従来から、シリカ、タルク、硫酸バリウム等はフィラーとして、黒色感光性組成物に添加されることがあったが、上記した特定の変性多官能(メタ)アクリレートと炭酸カルシウムとを併用すると、予想外にも絶縁信頼性とガラス基板との密着性とを両立できることがわかった。その理由は明らかではないが、特定の変性多官能(メタ)アクリレートと炭酸カルシウムとの併用により、隠蔽性を維持できる程度のOD値を有する樹脂組成物とした場合であっても、絶縁信頼性とガラスへの密着性とを高い次元で両立できるものと考えられる。
【0047】
本発明においては、フィラーとして炭酸カルシウムに加えてさらにタルクを含むことが好ましい。特定の2種のフィラーを使用することにより、本発明の効果をより一層顕著なものとすることができる。
【0048】
炭酸カルシウムとタルクとの配合比は、質量基準において1:9〜9:1であることが好ましく、炭酸カルシウムおよびタルクの両特性を活かすことができる観点から、2:1〜1:2がより好ましく、特にガラスとの密着性の観点から1:1〜1:2が好ましい。
【0049】
炭酸カルシウムおよびタルクの平均粒子径は、好ましくは10μm以下であり、より好ましくは0.1〜5μmである。なお、本明細書中、平均粒子径は、電子顕微鏡で無作為に選んだ無機フィラー20個の長軸径を測定し、その算術平均値として算出される個数平均粒子径とする。
【0050】
また、炭酸カルシウムおよびタルクの平均一次粒子径は、長軸径は好ましくは10μm以下であり、より好ましくは1〜5μmである。一方、短軸径は好ましくは10μm以下であり、より好ましくは0.1〜1μmである。なお、本明細書中、平均粒子径は、電子顕微鏡で無作為に選んだ無機フィラー20個の長軸径および短軸径をそれぞれ測定し、その各算術平均値として算出される個数平均粒子径とする。
【0051】
炭酸カルシウムを含むフィラーの合計配合量は、絶縁性と密着性の観点から、固形分換算で、感光性樹脂(A)成分100質量部に対して、30〜60質量部であることが好ましく、40〜50質量部であることがより好ましい。
【0052】
また、本発明においては、上記した炭酸カルシウムおよびタルク以外にも、本発明の効果を阻害しない範囲内で、他のフィラーが含まれていてもよく、例えば、硫酸バリウム、チタン酸バリウム、酸化ケイ素粉、微粉状酸化ケイ素、無定形シリカ、クレー、炭酸マグネシウム、酸化アルミニウム、雲母粉などの公知慣用のフィラーが含まれていてもよい。
【0053】
<その他の成分>
黒色感光性樹脂組成物には、必要に応じてさらに、密着促進剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、分散剤などの成分を配合することができる。これらは、黒色感光性インクの分野において公知の物を使用することができる。また、シリコーン系、フッ素系、高分子系などの消泡剤およびレベリング剤の少なくともいずれか1種、イミダゾール系、チアゾール系、トリアゾール系等のシランカップリング剤、防錆剤、蛍光増白剤などのような公知慣用の添加剤類の少なくともいずれか一種を配合することができる。
【0054】
本発明においては、黒色感光性樹脂組成物の調製や粘度調整のため、有機溶剤を使用することができる。このような有機溶剤としては、ケトン類、芳香族炭化水素類、グリコールエーテル類、グリコールエーテルアセテート類、エステル類、アルコール類、脂肪族炭化水素、石油系溶剤などを挙げることができる。より具体的には、例えば、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼン等の芳香族炭化水素類;セロソルブ、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、カルビトール、メチルカルビトール、ブチルカルビトール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル等のグリコールエーテル類;酢酸エチル、酢酸ブチル、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート(カルビトールアセテート)、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテートなどのエステル類;エタノール、プロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール等のアルコール類;オクタン、デカン等の脂肪族炭化水素;石油エーテル、石油ナフサ、水添石油ナフサ、ソルベントナフサ等の石油系溶剤等である。このような有機溶剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上の混合物として用いてもよい。
【0055】
本発明の黒色感光性樹脂組成物において、上述した各必須成分、並びに任意成分との混練分散は、三本ロールやブレンダー等の機械が用いられる。こうして各成分が分散された黒色感光性樹脂組成物は、スクリーン印刷法、バーコーター、ブレードコーターなど適宜の塗布方法で、カバーガラス等のガラス基板上に塗布され、露光により硬化物を形成することができる。露光は、従来公知の露光装置(UV露光装置等)を用いて行うことができ、例えば、1000〜1500mJ/cmの露光量にて紫外線を照射することにより、黒色感光性樹脂組成物を硬化させることができる。
【0056】
隠蔽性の観点から、本発明の黒色感光性樹脂組成物を用いて形成された硬化物は、OD値が3〜6の範囲であることが好ましく、3〜4の範囲がより好ましい。本発明において、OD値を測定する条件としては、膜厚10μmの硬化膜を硬化物として測定する。なお、OD値とは、透過濃度計を用いて透過光量を測定し、下記式:
OD値=−log10(T/100)
(式中、Tは透過率(%)を表す)
に基づいて算出することができる。
【0057】
本発明の黒色感光性樹脂組成物を用いて形成された硬化物からなる隠蔽層は、上記のように十分な隠蔽性を有するものであっても、絶縁信頼性やガラス基板との密着性に優れるため、一方の面の少なくとも一部に隠蔽層を設けたガラス基板をディスプレイ装置のカバーガラスとして好適に使用することができる。
【実施例】
【0058】
以下に実施例および比較例を示して本発明について具体的に説明するが、本発明が下記実施例に限定されるものではない。なお、以下において「部」および「%」とあるのは、特に断りのない限り全て質量基準である。
【0059】
<黒色感光性樹脂組成物の調製>
下記表1に記載の各成分を配合し3本ロールミルで混練することにより、同表に記載の各黒色感光性樹脂組成物を得た。
【0060】
なお、表中の*1〜*14は以下のとおりである。
*1:DPCA−60:カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(日本化薬株式会社製)
*2:M−360:トリメチロールプロパンEO(エチレンオキサイド)変性トリアクリレート(東亜合成株式会社製)
*3:SP4010−9:ノボラック型エポキシアクリレート(昭和電工株式会社製)
*4:DPHA:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(日本化薬株式会社製)
*5:VR−77−11:ビスフェノール型エポキシアクリレート(日本化薬株式会社製)
*6:アクリエステルHO:2−ヒドロキシエチルメタクリレート(三菱ケミカル株式会社製)
*7:Omnirad TPO:ジフェニル(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フォスフィンオキサイド(IGM Resins社製)
*8:MA−100:カーボンブラック(三菱ケミカル株式会社製)
*9:ケイシツCaCO:炭酸カルシウム(丸尾カルシウム株式会社、平均一次粒子径(長軸径):2μm、(短軸径):0.4μm)
*10:LMP−100タルク/FG105:タルク(富士タルク工業株式会社製)
*11:FUSELEX WX:シリカ(株式会社龍森製)
*12:B−30:硫酸バリウム(堺化学工業株式会社製)
*13:KAYAMER PM−2:カプロラクトン変性2−ヒドロキシエチルメタクリレートのリン酸エステル(日本化薬株式会社製)
*14:BYK−9077:分散剤(ビックケミー・ジャパン株式会社製)
【0061】
<評価>
(1)ガラス密着性評価
ガラス基板(ソーダガラス製、長さ160mm、幅110mm、厚さ約2.0mm)の片面の表面をアルコールで脱脂処理した後、脱脂処理した表面の全体に、スクリーン印刷法(300メッシュ)にて、上記のようにして得られた各黒色感光性樹脂組成物を、硬化後の塗膜の厚さが10μmになるように塗布して塗膜を形成した。塗膜に、露光装置(UVコンベア炉)にて紫外線を、露光量1200mJ/cmにて露光して塗膜を硬化させ、ガラス基板上に硬化膜を形成した。なお、露光量はORC社のUV−351を用いて測定した。
【0062】
続いて、ガラス基板上に形成した硬化膜に、JIS K5600−5−6:1999(ISO2409:1992)に準拠してクロスカットテープピール試験を実施した。下記評価基準によりガラス基板と硬化膜との密着性の評価を行った。
◎:JIS K5600−5−6:1999 8.3の表1の分類0または1に該当。
○:JIS K5600−5−6:1999 8.3の表1の分類2に該当。
△:JIS K5600−5−6:1999 8.3の表1の分類3に該当。
×:JIS K5600−5−6:1999 8.3の表1の分類4または5に該当。
評価結果は下記表1に示されるとおりであった。
【0063】
また、上記した硬化膜を形成したガラス基板を、温度121℃、湿度97%の環境下に82時間放置する処理(PCT処理)を行った後、上記と同様にしてガラス基板と硬化膜との密着性の評価を行った。評価結果は下記表1に示されるとおりであった。
【0064】
(2)絶縁信頼性評価
上記した(1)ガラス密着性評価において、ガラス基板に代えて、L/S=100μm/100μmの櫛型電極が一方の面に設けられたガラスエポキシ基板を使用した以外は同様にして硬化膜を形成した。次いで、硬化膜の絶縁信頼性を、絶縁劣化評価試験器(IMV株式会社製 MIG−8600B)を用いて、温度121℃、湿度97%の環境下で30Vの電圧を印加し、絶縁抵抗値の経時的に測定した。絶縁抵抗値が1×10Ω以下となった時の経過時間を測定し、以下の基準により絶縁信頼性を評価した。
◎:1×10Ω以下になるまでの経過時間が70時間以上
○:1×10Ω以下になるまでの経過時間が40時間以上70時間未満
△:1×10Ω以下になるまでの経過時間が15時間以上40時間未満
×:1×10Ω以下になるまでの経過時間が15時間未満
評価結果は下記表1に示されるとおりであった。
【0065】
(3)隠蔽性評価
上記した硬化膜を形成したガラス基板のOD値を、透過濃度計(ビデオジェット・エックスライト株式会社製、X−Rite 361T(V))を用いて測定した。測定結果は下記表1に示されるとおりであった。なお、表1中の「−」は未測定を表す。
また、硬化膜を形成したガラス基板を目視にて確認したところ、実施例1〜5の黒色感光性樹脂組成物を使用したものは、いずれも下地への隠蔽性が良好であった。
【0066】
【0067】
表1に示されるように、実施例1〜5の黒色感光性樹脂組成物は、感光性樹脂として、連結部中の炭素原子および酸素原子の総数が3〜15個である変性多官能(メタ)アクリレート化合物(即ち、DPCA−60、M−360)が含まれ、且つフィラーとして炭酸カルシウムを含んでいるため、優れた隠蔽性を維持しつつ、ガラス基板に対する良好な密着性と絶縁性が得られることがわかる。
【0068】
これに対し、感光性樹脂として、連結部中の炭素原子および酸素原子の総数が3〜15個である変性多官能(メタ)アクリレート化合物を使用した場合であっても、フィラーとして、タルク、シリカ、硫酸バリウム等の無機フィラーを単独で使用した場合、ガラス基板に対する密着性と絶縁信頼性との両立が困難であることがわかる(比較例1、3、4)。
【0069】
また、感光性樹脂として、変性していない通常の多官能(メタ)アクリレート化合物(即ち、DPHA)を使用した場合は、たとえフィラーとして炭酸カルシウムを使用していた場合であっても、ガラス基板に対する密着性と絶縁信頼性との両立が困難であることがわかる(比較例2)。