特許第6880366号(P6880366)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6880366
(24)【登録日】2021年5月10日
(45)【発行日】2021年6月2日
(54)【発明の名称】吸収性物品
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/494 20060101AFI20210524BHJP
【FI】
   A61F13/494 200
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-150791(P2016-150791)
(22)【出願日】2016年7月29日
(65)【公開番号】特開2018-15480(P2018-15480A)
(43)【公開日】2018年2月1日
【審査請求日】2019年7月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000183462
【氏名又は名称】日本製紙クレシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100144048
【弁理士】
【氏名又は名称】坂本 智弘
(74)【代理人】
【識別番号】100186679
【弁理士】
【氏名又は名称】矢田 歩
(74)【代理人】
【識別番号】100189186
【弁理士】
【氏名又は名称】大石 敏弘
(74)【代理人】
【識別番号】100196645
【弁理士】
【氏名又は名称】宮本 陽子
(72)【発明者】
【氏名】水口 克
【審査官】 ▲桑▼原 恭雄
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−192338(JP,A)
【文献】 特開2014−068852(JP,A)
【文献】 特開2001−245922(JP,A)
【文献】 特開2006−263306(JP,A)
【文献】 特開平08−150163(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0256492(US,A1)
【文献】 特開2005−323685(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 13/494
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液透過性のトップシートと、液不透過性のバックシートと、トップシート及びバックシートの間に配置された吸収体と、を備える吸収性物品であって、
前記トップシート上において、前記吸収体の前側端部及び/又は後側端部を覆う位置にウエストシートが設けられ、
前記ウエストシートには、幅方向に延びる、略コの字状の切れ込みが形成されており、前記切れ込みは、長手方向中心に向かって開口しており、前記略コの字状の切れ込みの2つの端部を結ぶ直線上に、直線状又は破線状のエンボス部を設け、切れ込みが容易に起立するように構成されており、
前記切れ込みの開口部近傍において、前記トップシートと前記ウエストシートは接合されておらず、吸収性物品の着用時に、前記切れ込みの開口部が、前記トップシート及び前記ウエストシートの間に空間を形成可能である、吸収性物品。
【請求項2】
前記吸収性物品が、幅方向両側部に、長手方向に延びる一対の立体ギャザーを有しており、
前記切れ込みは、前記立体ギャザーの基部よりも内側に、かつ前記吸収体の長手方向両端部近傍に、長手方向と直行して設けられている、請求項1に記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記切れ込みの長手方向の寸法が、15mm以上150mm以下であり、幅方向の寸法が、長手方向の寸法よりも大きい、請求項1又は2に記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記ウエストシートが、スパンボンド不織布、サーマルボンド不織布、ポリエチレンフィルム、又はこれらのシートを組み合わせて接合した複合シートである、請求項1からのいずれかに記載の吸収性物品。
【請求項5】
テープ止めタイプの吸収性物品、又はパンツタイプの吸収性物品である、請求項1から
のいずれかに記載の吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、体液の漏れが抑制された吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に大人用紙おむつには、テープ止めタイプ、尿取りパッド、パンツタイプ等があり、これらの紙おむつは着用対象者の排泄における介護の必要度に応じて適宜選択されて使用される。これらの吸収性物品は、液透過性のトップシートと、液不透過性のバックシートと、両シートの間に配置された吸収体と、で構成されている。このような構成を採用することにより、尿等の体液は、吸収性物品のトップシートを透過して吸収体に吸収され、バックシートにより外部へ漏れないようになっている。
【0003】
ところで、テープ止めタイプやパンツタイプの紙おむつは、それ自体を単独で使用する場合と、その内側に尿取りパッドを併用する場合があるが、現在は、尿取りパッドと併用し、吸収性物品である尿取りパッドを、トップシート上に重ねて使用する場合がほとんどである。これは、紙おむつ1枚当たりのコストが高いためで、テープ止めタイプやパンツタイプの紙おむつに比して安価な尿取りパッドで排泄物を吸収して保持した後、尿取りパッドのみを交換することで、排泄後においても、よりコストの高いテープ止めタイプやパンツタイプの紙おむつを交換せずに済み、経済的に低いコストで紙おむつを使用できるためである。このような使用態様の広がりに対応して、近年では、テープ止めタイプやパンツタイプの紙おむつと併用されることを想定した、尿取りパッドも開発されている。
【0004】
一般に、テープ止めタイプの紙おむつは、介護度が重度の着用者であって、寝た状態で過ごす時間が長い着用者が着用している場合が多い。このような介護度が重度の着用者は、紙おむつを着用したまま排泄することが大半であるため、紙おむつから排泄物が漏れないことは、紙おむつの特に重要な品質となっている。紙おむつの幅方向に向かう排泄物の漏れである横漏れの防止に対しては、尿取りパッド、テープ止めタイプの紙おむつともに、立体ギャザーが有効であるため、尿取りパッドやテープ止めタイプの紙おむつには、立体ギャザーを備えているものが多い。例えば、特許文献1には、トップシートと、バックシートと、吸収体と、サイドフラップとを有する吸収性物品であって、装着時に股下域において、サイドフラップの側縁と折り返し線の間の接着固定された部分を基端部として上方に起立する二重の立体ギャザーが形成されることを特徴とする吸収性物品が開示されている。
【0005】
また、テープ止めタイプの紙おむつや、パンツタイプの紙おむつを、尿取りパッドと併用した際の、体液の漏れの防止については、尿取りパッドを、テープ止めタイプの紙おむつや、パンツタイプの紙おむつのトップシート上の適切な位置に配置し、使用中においても、尿取りパッドの位置が安定して維持されることも重要である(例えば、特許文献2参照)。このような尿取りパッドのずれ防止の問題のうち、幅方向のずれ防止に対しては、立体ギャザーが有効に作用することが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−179638号公報
【特許文献2】特開2004−261332号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
以上のように、紙おむつと尿取りパッドを併用した際の、幅方向の漏れや、幅方向のずれに対しては、立体ギャザーを設けることが有効であるものの、紙おむつの長手方向両端部にあたる背中側や腹側からの排泄物の漏れや、紙おむつ上、長手方向における尿取りパッドのずれに対しては、現在まで、有効な対策が施された紙おむつ少ない。したがって、本発明は、以上の課題に鑑みてなされたものであり、尿取りパッドと併用される吸収性物品であって、背中側や腹側からの体液の漏れが軽減されるとともに、併用される尿取りパッドの長手方向のずれを軽減可能な吸収性物品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の発明者は、上記課題を解決するため、鋭意研究を行った。その結果、トップシートと、バックシートと、吸収体と、を備える吸収性物品において、トップシート上であって、吸収体の前側端部及び/又は後側端部を覆う位置にウエストシートを設け、このウエストシートに、幅方向に延びる、略コの字状の切れ込みを形成した吸収性物品によれば、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。具体的には、本発明は、以下のものを提供する。
【0009】
(1)本発明の第1の態様は、液透過性のトップシートと、液不透過性のバックシートと、トップシート及びバックシートの間に配置された吸収体と、を備える吸収性物品であって、前記トップシート上において、前記吸収体の前側端部及び/又は後側端部を覆う位置にウエストシートが設けられ、前記ウエストシートには、幅方向に延びる、略コの字状の切れ込みが形成されており、前記切れ込みは、長手方向中心に向かって開口しており、前記略コの字状の切れ込みの2つの端部を結ぶ直線上に、直線状又は破線状のエンボス部を設け、切れ込みが容易に起立するように構成されており、前記切れ込みの開口部近傍において、前記トップシートと前記ウエストシートは接合されておらず、吸収性物品の着用時に、前記切れ込みの開口部が、前記トップシート及び前記ウエストシートの間に空間を形成可能である、吸収性物品である。
【0010】
(2)本発明の第2の態様は、(1)に記載の吸収性物品であって、前記吸収性物品が、幅方向両側部に、長手方向に延びる一対の立体ギャザーを有しており、前記切れ込みは、前記立体ギャザーの基部よりも内側に、かつ前記吸収体の長手方向両端部近傍に、長手方向と直行して設けられていることを特徴とするものである。
【0011】
(3)本発明の第3の態様は、(1)又は(2)に記載の吸収性物品であって、前記切れ込みの長手方向の寸法が、15mm以上150mm以下であり、幅方向の寸法が、長手方向の寸法よりも大きいことを特徴とするものである。
【0012】
(削除)
【0013】
(5)本発明の第5の態様は、(1)から(4)のいずれかに記載の吸収性物品であって、前記ウエストシートが、スパンボンド不織布、サーマルボンド不織布、ポリエチレンフィルム、又はこれらのシートを組み合わせて接合した複合シートであることを特徴するものである。
【0014】
(6)本発明の第6の態様は、(1)から(5)のいずれかに記載の吸収性物品であって、テープ止めタイプの吸収性物品、又はパンツタイプの吸収性物品であることを特徴するものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明の吸収性物品においては、トップシート上であって、吸収体の前側端部及び/又は後側端部を覆う位置にウエストシートを設け、このウエストシートに、幅方向に延びる、長手方向中心に向かって開口した切れ込みを設けたので、背中側や腹側からの体液の漏れが効果的に防止される。また、尿取りパッドを本発明の吸収性物品と併用する際に、ウエストシートの開口部に、尿取りパッドを嵌合させることにより、尿取りパッドの長手方向のずれを効果的に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施形態に係る吸収性物品を、尿取りパッド50と併用した際の平面図である。
図2図1におけるX−X断面図である。
図3】実施例1の吸収性物品を示す図面である。
図4】比較例1の吸収性物品を示す図面である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図1及び図2を参照して、本発明の実施形態に係る吸収性物品について詳細に説明する。なお、実施形態の説明は、全体を通して同じ要素には同じ番号を付している。本明細書の説明において、吸収性物品1の着用時とは、吸収性物品1の着用時及び着用後の少なくとも一方をいう。また、吸収性物品1の長手方向とは、吸収性物品1が着用されたときに、着用者の前後にわたる方向であり、図中、符号Yで示す方向である。吸収性物品1の幅方向とは、長手方向に対して横又は直交する方向であり、図中、符号Xで示す方向である。さらに、身体側表面とは、吸収体等の各部材の表裏両面のうち、着用時に着用者の肌側に配される面であり、衣類側表面とは、バックシート等の各部材の表裏両面のうち、着用時に着用者の肌側とは反対側に向けられる面である。また、体液とは、尿、血液や軟便中の水分等の体内から体外に排出された液体をいう。さらに、本発明の吸収性物品1としては、幼児又は成人用を問わず、テープタイプの紙おむつやパンツタイプの紙おむつであることが好ましいが、以下に示す本実施形態の説明においては、テープタイプの紙おむつを例にとって、本発明の吸収性物品1を説明するものとする。
【0018】
<吸収性物品>
図1は、本発明の実施形態に係る吸収性物品1を、尿取りパッド50と併用した際の平面図であり、図2は、図1におけるX−X断面図である。本発明の吸収性物品1は、着用時に着用者の腹部を覆う前身頃10A、着用者の背部を覆う後身頃10C、前身頃10Aと後身頃10Cの間に位置し、着用者の股下にあてがわれる股下部10Bとに区分される。また、図1に示すように、本発明の吸収性物品1は、身体側表面側に配された液透過性のトップシート21、トップシート21に対向して配置された液不透過性のバックシート23、及びトップシート21とバックシート23との間に配置され、体液を吸収する吸収体22を備えた構成となっている。本発明の吸収性物品1は、使い捨ておむつであることが好ましく、大人用の使い捨ておむつであることがさらに好ましい。
【0019】
(トップシート)
トップシート21は、体液が吸収体22へと移動するような液透過性を備えた基材を用いればよく、例えば、サーマルボンド不織布等の不織布、サーマルボンド不織布/スパンボンド不織布を積層した複合不織布、開口ポリエチレンフィルム等の開口性フィルム、ポリエチレンフォーム、ウレタンフォーム等の発泡フィルム、あるいは、これらを積層した複合シートといった材料から形成される。また、トップシート21は、液透過性を向上させるために、表面にエンボス加工や穿孔加工を施すことが好ましく、エンボス加工や穿孔加工は、従来公知の方法により実施することができる。さらに、トップシート21の肌への刺激を低減させるために、トップシート21にローション、酸化防止剤、抗炎症成分、pH調整剤、抗菌剤、保湿剤等を含有させることも好ましい。トップシート21の坪量は、強度及び加工性の観点から、13g/m以上50g/m以下であることが好ましい。トップシート21の形状は、特に制限されるものではないが、体液を漏れがないように吸収体22へと誘導するため、吸収体22を覆う形状であればよい。
【0020】
(吸収体)
吸収体22は、体液を吸収、保持するものであり、例えば、フラッフパルプや高吸収性樹脂(Super Absorbent Polymer;SAP)を含有している。吸収体22の基材は、一般に生理用ナプキン、おむつ、尿取りパッド50等の吸収性物品に使用されるものであれば特に制限はなく、例えば、フラッフパルプ、コットン、レーヨン、アセテート、ティシュ、吸収紙、親水性不織布といった材料から形成される。これらの中でも、吸収性の観点から、フラッフパルプを使用することが好ましい。斯かるフラッフパルプとしては、木材パルプ、合成繊維、ポリマー繊維、非木材パルプ等を綿状に解繊したものを挙げることができる。また、吸収体22の基材の坪量は、吸収性能及び肌触りを良好なものとするため、100g/m以上800g/m以下とすることが好ましい。
【0021】
吸収体22のSAPとしては、体液を吸収し、かつ、逆流を防止できるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、ポリアクリル酸ナトリウム系、ポリアスパラギン酸塩系、(デンプン−アクリル酸)グラフト共重合体、(アクリル酸−ビニルアルコール)共重合体、(イソブチレン−無水マレイン酸)共重合体及びそのケン化物、といった材料から形成されたものを挙げることができる。これらの中でも、重量当たりの吸収量の観点から、ポリアクリル酸ナトリウム系を使用することが好ましい。吸収体22のSAPの坪量は、吸収性能及び肌触りを良好なものとする観点から、50g/m以上500g/m以下とすることが好ましく、SAPの重量は、15%以上50%以下であることが好ましい。
【0022】
吸収体22は、基材とSAPとを含有するものが好ましく、その構成は、基材中にSAP粒子を混合して形成したもの、あるいは、基材間にSAP粒子を固着したSAPシートが好ましい。また、SAP粒子の漏洩防止や吸収体22の形状安定化の観点から、吸収体22をキャリアシートに包むことが好ましい。キャリアシートの基材としては、親水性を有するものであればよく、ティシュ、吸収紙、エアレイド不織布等の親水性不織布を挙げることができる。吸収体22がキャリアシートを複数備える場合には、キャリアシートの基材は同一のものであっても異なるものであってもよい。
【0023】
吸収体22の形状としては、特に限定されるものではなく、例えば、矩形状、砂時計状、I字状等を挙げることができる。吸収体22は、2層以上を重ねて用いてもよい。
【0024】
(ウエストシート)
本発明の吸収性物品1は、トップシート21上であって、吸収体22の前側端部及び/又は後側端部を覆う位置にウエストシート27が設けられている。このウエストシート27は、吸収体22の前側端部を覆う位置のみに設けられていてもよく、後側端部を覆う位置のみに設けられていてもよいが、前側端部を覆う位置と、後側端部を覆う位置の両方に設けられていることが好ましい。ウエストシート27としては、スパンボンド不織布、サーマルボンド不織布、ポリエチレンフィルム、又はこれらのシートを組み合わせた複合シートを用いることができる。ウエストシート27は、1枚のシートのみで構成されていてもよいが、剛性を持たせるため、2枚以上のシートからなる複合シートであることが好ましい。ウエストシート27を、2枚以上のシートからなる複合シートから形成する場合、2枚以上のシートは、ホットメルト接着剤、熱融着、ヒートエンボス加工等の手段により接合されていることが好ましい。また、ウエストシート27を構成する素材は、親水性の素材であっても、撥水加工が施された素材であっても、疎水性の素材であってもよいが、着用者の背中側や腹側からの体液の漏れを効果的に防止する観点からは、撥水加工が施された素材や疎水性の素材を用いることが好ましい。ウエストシート27の坪量は、15g/m以上100g/m以下であることが好ましく、20g/m以上70g/m以下であることがより好ましい。
【0025】
(切れ込み)
本発明において、ウエストシート27には、幅方向に延びる略コの字状の切れ込み271が形成されおり、この切れ込み271は、長手方向中心に向かって開口している。切れ込み271の開口部近傍においては、トップシート21とウエストシート27は互いに接合しておらず、吸収性物品1の着用時に、切れ込み271の開口部がトップシート21及びウエストシート27の間に空間を形成可能となっている。このような構成を採用することにより、吸収性物品1の着用時に、切れ込み271が起立して、体液に対する堰として作用し、吸収性物品1の背中側及び腹側からの体液の漏れを効果的に防止することができる。また、図1及び図2に示すように、本発明の吸収性物品1を、尿取りパッド50と併用する際、切れ込み271の内側に尿取りパッド50を配置して、開口部に嵌合することにより、吸収性物品1により尿取りパッド50が安定に保持され、尿取りパッド50の長手方向へのずれを効果的に防止することもできる。なお、本発明の吸収性物品1が、幅方向両側部に、長手方向に延びる一対の立体ギャザー32を有している場合、略コの字状の切れ込み271は、立体ギャザー32の基部よりも内側であって、吸収体22の長手方向両端部近傍に、吸収性物品1の長手方向と直行して設けられていることが好ましい。
【0026】
略コの字状の切れ込み271の寸法は、吸収性物品1の長手方向における寸法が15mm以上150mm以下であることが好ましく、30mm以上100mm以下であることがより好ましい。吸収性物品1の幅方向における、略コの字状の切れ込み271の寸法は、長手方向の寸法よりも大きければよいが、より具体的には、50mm以上300mm以下であることが好ましく、100mm以上250mm以下であることがより好ましい。切れ込み271の寸法を、上記の範囲内のものとすることにより、吸収性物品1の背中側及び腹側からの漏れが効果的に防止されて、吸収性物品1を、尿取りパッド50と併用した際の尿取りパッド50の長手方向のずれが効果的に防止される。なお、略コの字状の切れ込み271の、幅方向に延びる辺については、直線から構成されていてもよいし、長手方向中心側又は長手方向端部側に向かって凸となる、孤を描いた曲線により構成されていてもよい。
【0027】
本発明においては、略コの字状の切れ込み271の2つの端部(開口部が開口して切れ込み271が起立する際の基部)を結ぶ直線状に、直線状又は破線状のエンボス部272が設けられていることが好ましい。このようなエンボス部272を設けることにより、このエンボス部272を谷として切れ込み271の基部が折り曲げられやすくなり、吸収性物品1の着用時に、切れ込み271が開口して、容易に立ち上がるようになる。したがって、このような構成を採用することにより、吸収性物品1の背中側及び腹側からの体液の漏れを効果的に防止することができ、切れ込み271の開口部に、尿取りパッド50を嵌合させやすくもなる。
【0028】
さらに、本発明においては、ウエストシート27上、略コの字状の切れ込み271の、長手方向中心線よりの部位に、長手方向中心に向かって開口する追加の切れ込みが設けられていてもよい(図示せず)。このような追加の切れ込みが設けられていることにより、吸収性物品1を着用した際の、背中側及び腹側からの体液の漏れが、より効果的に抑制される。
【0029】
(バックシート)
バックシート23は、吸収体22が保持している体液が衣類を濡らすことを防止できるような液不透過性を備えた基材を用いればよく、樹脂フィルム、あるいは、樹脂フィルムと不織布とを積層した複合シート等の材料から形成される。バックシート23に用いることができる樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエステル、ポリビニルアルコール、ポリエチレン、ポリプロピレン等からなるフィルムや、ポリエチレンとポリプロピレンの複合フィルム等が挙げられる。また、複合シートに用いることができる不織布としては、特に、その製法を限定されることなく、例えば、スパンボンド不織布やメルトブロー不織布、あるいは、スパンボンド不織布/メルトブロー不織布、スパンボンド不織布/メルトブロー不織布/スパンボンド不織布を積層した複合不織布、及びこれらの複合材料を挙げることができる。
【0030】
バックシート23の坪量は、強度及び加工性の観点から、15g/m以上100g/m以下であることが好ましい。また、装着時の蒸れを防止するため、バックシート23は、通気性を持たせることが好ましい。バックシート23に通気性を備えさせるためには、例えば、基材の樹脂フィルムにフィラーを配合したり、バックシート23にエンボス加工を施したりすればよい。ここで、フィラーとしては、炭酸カルシウムを挙げることができ、その加工方法としては、公知の方法を制限なく利用することができる。
【0031】
本発明においては、液拡散性シートをトップシート21の衣類側表面側に設けてもよい。この場合、体液は、まずトップシート21を通って吸収体22へ順次拡散し、吸収体22により吸収される。ここで、体液が吸収体22に吸収された後、前後左右に素早く拡散していくことが好ましいが、トップシート21の下に液拡散性シートを設けて拡散を促進することにより、体液を広く吸収体22の全体に移動させ、効率よく吸収させることができる。
【0032】
液拡散性シートは、0.1mm以上の厚さ及び18g/m以上の坪量を有する親水性不織布であり、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル等の合成繊維系からなるエアスルー不織布、ポイントボンド不織布、スパンボンド不織布を使用することができる。これらの中でも特に、液戻り防止性能に優れるエアスルー不織布が好適である。
【0033】
さらに、吸収性物品1は、着用者のフィット性を向上させるために、立体ギャザー用弾性部材を有する立体ギャザー32、レッグギャザー用弾性部材を有するレッグギャザー(図示しない)、ウエストギャザー用弾性部材を有するウエストギャザー(図示しない)を備えていてもよい。レッグギャザー、ウエストギャザーを有することにより、吸収性物品1の脚部開口部、胴部に伸縮性を持たせて、着用時のフィット感を高めて体液が外部に漏れ出ることを防止し、立体ギャザー32を有することにより横漏れを防止する。
【0034】
(サイドフラップ及びサイドパネル)
吸収性物品1の後身頃10Cの幅方向両側部には、少なくとも一対のサイドフラップ24が形成されており、サイドフラップ24それぞれの、自由端側の幅方向側縁部にはサイドパネル25が、サイドパネル25の幅方向側縁部には2つのファスニングテープ26が設けられていることが好ましい。なお、本明細書の説明においては、サイドパネル25とファスニングテープ26とが別々の部材として説明されているが、サイドパネル25及びファスニングテープ26は、別々の部材により形成されたものに限定されず、両者が一体となって形成されたものであってもよい。ここで、片方のサイドパネル25上の2つのファスニングテープ26は、吸収性物品1の長手方向に沿って離間して設けられていることが好ましく、展開状態において、ファスニングテープ26の身体側表面(肌当接面)には、前身頃10Aと後身頃10Cとを締結するための面ファスナーを構成するフック部材からなる締結手段が設けられると共に、締結手段の自由端側の各ファスニングテープ26の先端部には、つまみしろが設けられていることが好ましい。一方、前身頃10Aの衣類側表面であるバックシート23表面には、面ファスナーを構成するループ部材で形成されたターゲットテープ(図示しない)が設けられており、吸収性物品1を着用者に装着した状態では、締結手段がループ部材であるターゲットテープに固定されることが好ましい。なお、フック部材とは、面ファスナーを構成する部材のうち、フック状突起からなる部材を指し、ループ部材とは、フック部材と対を成す部材であって、ループ状に密集して起毛された部材を指す。面ファスナーは、このフック部材とループ部材とが対となって構成されている。吸収性物品1を着用する場合、後身頃10Cを着用者の背部にあてた状態で、前身頃10Aを着用者の腹部側に持っていき、ファスニングテープ26をターゲットテープに締結することで、着用者に装着させることができる。
【0035】
ここで、サイドフラップ24の基材としては、ポリエチレン、ポリオレフィン、ポリスチレン等からなる不織布を挙げることができ、これらの基材を単独で、あるいは複数組み合わせてもよい。また、サイドパネル25及びファスニングテープ26の基材としては、ポリエチレン、ポリオレフィン、ポリスチレン等からなる樹脂フィルムや不織布を挙げることができ、これらの基材を単独で、あるいは複数組み合わせてもよい。
【0036】
<吸収性物品の製造方法>
吸収性物品1の製造方法としては、特に限定はなく、従来公知の方法を採用することができ、例えば、トップシート21とバックシート23との間に吸収体22を挟持し、さらに、切れ込み271を形成したウエストシート27、サイドフラップ24、サイドパネル25、ファスニングテープ26、及びターゲットテープ、加えて適宜液拡散性シートや立体ギャザー32を配置した後、トップシート21とバックシート23とを一部あるいは全周にわたってホットメルト接着剤やヒートエンボス、超音波エンボス、高周波エンボス等を用いて固定することで製造することができる。
【0037】
以上、本発明を実施形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記の実施形態に記載の発明の範囲には限定されないことは言うまでもなく、上記実施形態に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。また、そのような変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【実施例】
【0038】
以下、本発明について、実施例を挙げて詳細に説明する。なお、本発明は、以下に示す実施例に何ら限定されるものではない。
【0039】
<実施例1>
(吸収体の作製)
パルプシートを粉砕して解繊したフラッフパルプ50gと、高吸収性ポリマー15gとをともに積繊した吸収体マットを準備し、長さ700mm、幅330mmにカットした。この吸収体をトップシート、ウエストシート及びバックシートとともに積層するとともに、一対の横漏れ防止用立体ギャザー、サイドフラップ、サイドパネル等を形成し、長さ840mm、幅540mmのテープ止めタイプの吸収性物品を作製し、実施例1のサンプルとした。なお、トップシートとしては、スパンボンド不織布(坪量15g/m)を2枚を用い、ウエストシートとしては、通気性ポリエチレンフィルム(坪量20g/m)及びスパンボンド不織布(坪量20g/m)を貼り合わせた複合シートを用い、バックシートとしては、通気性ポリエチレンフィルム(坪量20g/m)及びスパンボンド不織布(坪量20g/m)を貼り合わせた複合シートを用いた。ここで、2枚のウエストシートには、長手方向の寸法が40mm、幅方向の寸法が120mmの略コの字状の切れ込みを形成し、これらの切れ込みが、吸収体の長手方向両端部近傍に位置するようにした。各切れ込みにおいては、略コの字状の切れ込みの二つの端部(基部)を結ぶ直線上には、直線状のエンボス部を形成し、コの字状の切れ込みが起立して、トップシートと離間可能なように構成した。得られた吸収性物品の概要を図3に示す。得られた吸収性物品については、モニターテストの官能評価により、腹側からの尿漏れ、便漏れのし難さ、背中側からの尿漏れ、便漏れのし難さ、併用する尿取りパッドのずれにくさを評価した。以上の結果を表1に示す。
【0040】
(尿漏れし難さ)
20名のパネラーにより、吸収性物品の着用時の腹側及び背中側からの尿漏れについて、「尿漏れがある」又は「尿漏れがない」の選択で調査を行い、以下の基準により評価を行った。
◎:「尿漏れがない」が16人以上20人以下のとき
○:「尿漏れがない」が11人以上15人以下のとき
△:「尿漏れがない」が6人以上10人以下のとき
×:「尿漏れがない」がいないか、1人以上5人以下の時
【0041】
(便漏れし難さ)
20名のパネラーにより、吸収性物品の着用時の腹側及び背中側からの便漏れについて、「便漏れがある」又は「便漏れがない」の選択で調査を行い、以下の基準により評価を行った。
◎:「便漏れがない」が16人以上20人以下のとき
○:「便漏れがない」が11人以上15人以下のとき
△:「便漏れがない」が6人以上10人以下のとき
×:「便漏れがない」がいないか、1人以上5人以下の時
【0042】
(ずれにくさ)
20名のパネラーにより、吸収性物品と併用する尿取りパッドの長手方向のずれにくさについて、「ずれやすい」又は「ずれにくい」の選択で調査を行い、以下の基準により評価を行った。
◎:「ずれにくい」が16人以上20人以下のとき
○:「ずれにくい」が11人以上15人以下のとき
△:「ずれにくい」が6人以上10人以下のとき
×:「ずれにくい」がいないか、1人以上5人以下の時
【0043】
<比較例1>
図4に示すように、ウエストシートを設けなかった点以外は、実施例1と同様の方法により、尿とりパッドを作製して、比較例1のサンプルとし、実施例1と同一の試験・評価を行った。得られた結果を表1に示す。
【0044】
以上の結果を表1に示す。
【表1】
【0045】
表1から明らかなように、トップシート上にウエストシートを設け、切れ込みを設けた実施例1の吸収性物品では、ウエストシート及び切れ込みを設けなかった、比較例1の吸収性物品に比較して、尿漏れのし難さ、便漏れのし難さがともに改善され、尿取りパッドのずれにくさも良好なものとなった。以上より、トップシート上にウエストシートを設け、ウエストシートに切れ込みを設けることにより、体液の漏れが少なく、併用する尿取りパッドがずれにくい吸収性物品を提供できることが分かる。
【符号の説明】
【0046】
1 吸収性物品
10A 前身頃
10B 股下部
10C 後身頃
21 トップシート
22 吸収体
23 バックシート
24 サイドフラップ
25 サイドパネル
26 ファスニングテープ
27 ウエストシート
271 切れ込み
272 エンボス部
32 立体ギャザー
50 尿取りパッド
図1
図2
図3
図4