(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ノズルは、前記ヘッド部側に位置する前記ノズルの根元が前記第1中心軸上に中心が位置する第2同心円上に位置しており、前記第2同心円は前記第1同心円以下の直径であることを特徴とする請求項2に記載の静電噴霧装置。
前記ヘッド部は、さらに、前記第1同心円に先端が位置するノズル群よりも内側に設けられた内側ノズルを備えていることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の静電噴霧装置。
前記外部電極は、前記ノズルの中心軸に対する前記ノズルから前方側に延びる液線の傾きが10度以内となる位置に設けられていることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の静電噴霧装置。
前記外部電極は、前記ノズルの中心軸に対する前記ノズルから前方側に延びる液線の傾きが5度以内となる位置に設けられていることを特徴とする請求項9又は請求項10に記載の静電噴霧方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1では、噴霧を均一にするために、外側に円環状に配置される多数のノズルと、内側に円環状に配置される多数のノズルと、で印加する電圧を変える、若しくは、内側に円環状に配置された多数のノズルを外側に円環状に配置された多数のノズルよりも突出させる手段が開示されている。
【0005】
このことからすれば、噴霧の均一性は、内外に多数のノズルが存在するときの問題と考えられ、多数のノズルが配置された円環状の部分が一層しか存在しない場合、つまり、内側に円環状に配置される多数のノズルが存在しない場合、特段問題なく、均一な噴霧が行えることになるが、多数のノズルが配置された円環状の部分が一層しか存在しない場合であっても、各ノズルの噴霧状態を観察すると、不安定な噴霧となる瞬間が時折現れることを発見した。
【0006】
この時折現れる不安定な噴霧のときであっても、粒子径が十分に小さい帯電ミストを発生させられればよいような空気清浄機等の用途にあっては問題にならない可能性がある。
【0007】
しかしながら、被塗物に塗料等の液体を塗布する場合には、不安定な噴霧となる瞬間が現れると、塗布ムラの原因となるおそれがあり、より一層、安定した噴霧が行えることが望まれる。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、塗料等の液体を被塗物に噴霧する複数のノズルを有する静電噴霧装置において、各ノズルから噴霧される塗料等の液体の噴霧状態の安定性を高めた静電噴霧装置及び静電噴霧方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記目的を達成するために、以下の構成によって把握される。
(1)本発明の静電噴霧装置は、電圧の印加によって発生する静電気力で液体噴霧部のノズルから液体を帯電状態で離脱させて前記液体を被塗物に噴霧する静電噴霧装置であって、前記液体噴霧部は、複数の前記ノズルからなるノズル群を有するヘッド部と、前記ノズル群の外側に配置され、前記ノズルに印加する電圧と同じ電圧が印加される外部電極と、を備えている。
【0010】
(2)上記(1)の構成において、前記外部電極が、前記ノズル群を囲むように設けられている。
【0011】
(3)上記(2)の構成において、複数の前記ノズルは、前記ノズルの先端が第1同心円上に位置するように配置されており、前記外部電極は、前記第1同心円の第1中心を通る前記第1同心円に垂直な第1中心軸上を中心として、前記ノズル群を円形に囲むように設けられている。
【0012】
(4)上記(3)の構成において、前記ノズルは、前記ヘッド部側に位置する前記ノズルの根元が前記第1中心軸上に中心が位置する第2同心円上に位置しており、前記第2同心円は前記第1同心円以下の直径である。
【0013】
(5)上記(3)又は(4)の構成において、前記ヘッド部は、さらに、前記第1同心円に先端が位置するノズル群よりも内側に設けられた内側ノズルを備えている。
【0014】
(6)上記(5)の構成において、前記内側ノズルは、前記第1中心軸上に位置するように設けられている。
【0015】
(7)上記(1)から(6)のいずれか1つの構成において、前記外部電極は、前記ノズルの中心軸に対する前記ノズルから前方側に延びる液線の傾きが10度以内となる位置に設けられている。
【0016】
(8)上記(1)から(7)のいずれか1つの構成において、前記ヘッド部は、前記液体を流出する流出部を有する第1ヘッド部と、前記流出部を覆うように前記第1ヘッド部に取り付けられ、複数の前記ノズルが設けられた第2ヘッド部と、前記流出部から複数の前記ノズルに至る前記液体の流れる流路上に設けられ、流路抵抗を有する抵抗部と、を備えており、前記外部電極は、円筒状であり、前記外部電極は、前後方向の位置の調節が可能に、前記第2ヘッド部の外周に螺合されている。
【0017】
(9)上記(1)から(8)のいずれか1つの構成において、前記ノズル及び前記外部電極に電圧を印加する電圧印加手段を備え、前記電圧印加手段が、前記外部電極に対して前記ノズルに印加する電圧と同じ電圧を印加する。
【0018】
(10)本発明の静電噴霧方法は、電圧の印加によって発生する静電気力で液体噴霧部のノズルから液体を帯電状態で離脱させて前記液体を被塗物に噴霧する静電噴霧方法であって、複数の前記ノズルからなるノズル群の外側に外部電極を配置して、前記外部電極に前記ノズルに印加する電圧と同じ電圧を印加する。
【0019】
(11)上記(10)の構成において、複数の前記ノズルは、前記ノズルの先端が第1同心円上に位置するように配置されており、前記外部電極は、前記第1同心円の第1中心を通る前記第1同心円に垂直な第1中心軸上を中心として、前記ノズル群を円形に囲むように設けられている。
【0020】
(12)上記(10)又は(11)の構成において、前記外部電極は、前記ノズルの中心軸に対する前記ノズルから前方側に延びる液線の傾きが5度以内となる位置に設けられている。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、塗料等の液体を被塗物に噴霧する複数のノズルを有する静電噴霧装置において、各ノズルから噴霧される塗料等の液体の噴霧状態の安定性を高めた静電噴霧装置及び静電噴霧方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための形態(以下、実施形態)について詳細に説明する。
なお、実施形態の説明の全体を通して同じ要素には同じ番号を付している。
また、特に断りがない場合、「先(端)」や「前(方)」等の表現は、各部材等において液体の噴霧方向側を表し、「後(端)」や「後(方)」等の表現は、各部材等において液体の噴霧方向と反対側を表すものとする。
【0024】
図1は本発明に係る実施形態の静電噴霧装置1の側面図である。
なお、
図1では、塗料等の液体がノズル31から噴霧されているところも模式的に示すようにしている。
【0025】
図1に示すように、静電噴霧装置1は、液体噴霧部20と、液体噴霧部20と被塗物10の間に電圧を印加する電圧印加手段60と、液体噴霧部20に液体貯蔵タンク70内の塗料等の液体を液体供給配管71を介して供給するポンプ72と、電圧印加手段60から被塗物10に接続される第1電気配線61に接続されたアース手段80と、を有している。
また、液体噴霧部20は、複数のノズル31からなるノズル群を有するヘッド部21と、ノズル群の外側に配置された外部電極50と、を備えている。
【0026】
なお、本実施形態では、アース手段80によって被塗物10がアースされるようになっているが、アース手段80は、必須の要件ではない。
しかしながら、被塗物10は作業者が触れる可能性があるので、安全面の観点からアース手段80を設けて被塗物10をアースすることが好ましい。
【0027】
(ポンプ)
ポンプ72は、液体貯蔵タンク70内の液体を所定の供給圧で液体供給配管71を介してヘッド部21に供給する供給装置である。
【0028】
そして、ポンプ72によって供給された液体がヘッド部21内の流路を通って、各ノズル31に供給される。
【0029】
(電圧印加手段)
電圧印加手段60は、被塗物10と液体噴霧部20との間に電圧を印加するための電圧電源である。
なお、後述するが、より詳細には、電圧印加手段60は、被塗物10と複数のノズル31及び外部電極50との間に電圧を印加する。
【0030】
そして、電圧印加手段60によって被塗物10と液体噴霧部20との間に電圧が印加されると、被塗物10と液体噴霧部20の間に静電気力が発生する。
この静電気力で各ノズル31に供給された液体が帯電するとともに、その静電気力によって、液体がノズル31から離脱させられ、噴霧されることになる。
【0031】
具体的には、ノズル31の先端外周縁への表面張力や粘度による付着力に対して、液体を前方に引っ張る静電気力が釣り合うことで、ノズル31の先端側に供給された液体が、その先端で円錐形の形状となるテーラコーン90が形成される。
【0032】
このテーラコーン90は、電場の作用によって、液体中で正/負電荷の分離が起こり、過剰電荷で帯電したノズル31の先端のメニスカスが変形して円錐状となって形成されているものである。
そして、テーラコーン90の先端から静電気力によって液体が更に引っ張られ、その後、静電爆発によって液体が噴霧される。
【0033】
この噴霧された液体、つまり、ノズル31から離脱して液体粒子となった液体は、離脱前の状態に比べ、空気に触れる面積が飛躍的に大きくなるため溶媒の気化が促進され、その溶媒の気化に伴って帯電している電子間の距離が近づき、静電反発(静電爆発)が発生して、さらに、小さい粒径の液体粒子に分裂する。
【0034】
この分裂が起こると、さらに、分裂前に比べ空気に触れる表面積が増えることになるため、溶媒の気化が促進され、上述したのと同様に静電爆発が発生し、さらに、小さい粒径の液体粒子に分裂する。
このような静電爆発が繰り返されることで液体が霧化される。
【0035】
そして、そのように噴霧された液体は、帯電しているため、静電気力によって被塗物10に引き寄せられて高い効率で被塗物10に塗着することになる。
【0036】
(液体噴霧部)
図2は液体噴霧部20の斜視図であり、
図3は液体噴霧部20の中心を通る断面図である。
図3に示すように、液体噴霧部20は、ヘッド部21と外部電極50と、を備えている。
そして、ヘッド部21は、ポンプ72(
図1参照)によって供給部41に供給された液体が流出する流出部42を有する第1ヘッド部40と、流出部42を覆うように第1ヘッド部40に取り付けられ、複数のノズル31が設けられた第2ヘッド部30と、を備えている。
【0037】
また、第2ヘッド部30は、ノズル31への液体の供給口となる第1開口部35と、第1開口部35に連通し、第1ヘッド部40の流出部42から流出した液体がノズル31に供給されるように、ノズル31が挿入される複数のノズル31に対応した複数の第2開口部38と、を備えている。
【0038】
この複数の第2開口部38は、第1ヘッド部40と反対側に位置する第2ヘッド部30の前方側の外面部39に設けられており、
図2のノズル31の配置状態を見ればわかるように、複数の第2開口部38は、同心円上に位置するように配置されている。
【0039】
さらに、本実施形態では、第1ヘッド部40及び第2ヘッド部30を絶縁材料で形成するようにし、複数のノズル31を導電材料又は10
10Ω以下の表面抵抗の材料で形成するようにしている。
【0040】
そして、
図3に示すように、第2ヘッド部30は、内部に埋め込まれた導電材料で形成された接続電気配線23を有しており、この接続電気配線23によって、複数のノズル31及び外部電極50が電気的に接続されている。
【0041】
なお、接続電気配線23の端部23aは、第2ヘッド部30のフランジ部32の側面から露出しており、その端部23aに
図1に示すように、電圧印加手段60から被塗物10に接続される第1電気配線61と異なる電気配線であるもう一方の第2電気配線62が接続されている。
【0042】
したがって、電圧印加手段60は、ノズル31に対してだけでなく、外部電極50に対してもノズル31に印加する電圧と同じ電圧を印加するものになっている。
ただし、本実施形態のように、電圧印加手段60が1つの電圧印加手段である必要はなく、電圧印加手段60は、ノズル31に対する電圧印加手段と外部電極50に対する電圧印加手段の2つの電圧印加手段からなるものであってもよく、外部電極50に対して印加される電圧がノズル31に対して印加される電圧とほぼ等しい電圧とされていればよい。
【0043】
ところで、液体を良好にノズル31から離脱させ、噴霧するには、ノズル31の近くでは液体にかかる静電気力が弱く、液体が静電爆発を起こさないように前方側に引き出され、液体が先細りするように前方側に延びて、帯電状態が安定した先細りした部分に強く静電気力が作用し、静電爆発を起こすようにすることが好ましい。
つまり、ノズル31から離れるにしたがって液体にかかる静電気力が強くなるようにすることが好ましい。
【0044】
そこで、本実施形態では、複数のノズル31は、上述した第2開口部38の配置される同心円より大きな直径の同心円上にノズル31の先端部が位置するように傾斜して配置されている。
【0045】
言い換えれば、複数のノズル31は、前方側から複数のノズル31を正面に見る正面視で、ノズル31の先端が第1同心円上に位置するように配置されている一方、ヘッド部21(第2ヘッド部30)側に位置するノズル31の根元が第1同心円の中心である第1中心を中心とする第2同心円上に位置しており、その第2同心円が第1同心円よりも小さい直径を有するものになっている。
なお、ノズル31の先端と根元とは、前後方向の位置が異なるので、この位置の違いを考慮してより正確に表現すると、ノズル31は、ヘッド部21(第2ヘッド部30)側に位置するノズル31の根元が、第1同心円の第1中心を通る第1同心円に垂直な第1中心軸(
図7のO軸参照)上に中心が位置する第1同心円よりも後方側の第2同心円上に位置しており、第2同心円は第1同心円以下の直径を有するものになっている。
そして、より詳細に言えば、第2同心円は第1同心円と平行の関係にある。
【0046】
そして、ノズル31から延びる液体(以降、ノズル31の先端から静電爆発に至るまでの液体の部分を液線と呼ぶ)間の距離が近いと、個別の液線にかかる静電気力が弱くなるが、上述のように、ノズル31を傾斜させていると、それぞれのノズル31から延びる液線が前方側に行くほど離間し、各液線に強く静電気力が作用できるようになり、上述したノズル31から離れるにしたがって液体にかかる静電気力が強くなる好ましい状態を実現することができる。
【0047】
次に、第1ヘッド部40及び第2ヘッド部30のより詳細な構成について説明する。
図3に示すように、第1ヘッド部40は、後方側の位置に設けられたフランジ部43と、そのフランジ部43の中央側に位置し、フランジ部43から前方側に向かって突出する第2ヘッド部30内に収容される外形が円柱状の第1突出部44と、を有している。
【0048】
また、第1ヘッド部40は、フランジ部43の中央側の位置に設けられ、フランジ部43から後方側に向かって突出し、液体を供給する液体供給配管71(
図1参照)が接続される供給部41が形成された第2突出部45を有している。
そして、第1ヘッド部40には、供給部41と流出部42を連通させるように、第1ヘッド部40の中央を貫通する貫通孔46が形成されている。
【0049】
一方、第2ヘッド部30は、後方側の位置に設けられ、中央に第1ヘッド部40の第1突出部44の外径とほぼ等しい内径の開口が形成された第1ヘッド部40のフランジ部43に対応したフランジ部32と、フランジ部32から前方側に向かって突出し、フランジ部32の開口側に開放された第1ヘッド部40の第1突出部44の外径とほぼ等しい凹部を有する覆い部33と、を有している。
【0050】
そして、第1ヘッド部40と第2ヘッド部30は、
図1に示すように、第2ヘッド部30のフランジ部32と第1ヘッド部40のフランジ部43がネジ25で共締めされることで、第1ヘッド部40と第2ヘッド部30とが一体化され、ヘッド部21になっている。
【0051】
また、
図3に示すように、第1ヘッド部40の第1突出部44の外周面44aと第2ヘッド部30のフランジ部32及び覆い部33の第1突出部44の外周面44aに対応する内周面34aとが接触して液体が第1ヘッド部40と第2ヘッド部30の間から漏れないようにされる。
一方、第1ヘッド部40の第1突出部44の流出部42が設けられている前方側の端面である第1面44bと第1ヘッド部40の流出部42に対向する第2ヘッド部30の第2面34bとの間は離間して、流出部42から複数のノズル31に至る液体の流れる流路が形成されている。
【0052】
そして、その第1面44bと第2面34bとで形成された流路には、流路抵抗を発生させる抵抗部材27が設けられ、ノズル31に至る液体の流れる流路上に流路抵抗を有する抵抗部が形成されている。
【0053】
例えば、抵抗部材27としては、第1面44bと第2面34bとで形成された流路となる空間と同じ外形に形成された不織布等の繊維からなる部材やガラスやセラミックを多孔質体状に成形した部材を用いることができる。
【0054】
なお、抵抗部材27は、水平方向に液体を噴霧するように液体噴霧部20の中心軸が水平に配置されたときに、最も上側に位置するノズル31と最も下側に位置するノズル31との間の水頭圧H(mmAq)以上の流路抵抗を有するように選ぶことが好ましい。
【0055】
このような抵抗部を設けるようにすると、水平方向に液体を噴霧するように液体噴霧部20の中心軸が水平に配置されたときに、最も上側に位置するノズル31と最も下側に位置するノズル31との間の位置の違いによる水頭圧H(mmAq)以上の流路抵抗があるため、液体が自重によって下側に位置するノズル31側に流れることが回避され、どのノズル31に対してもほぼ等しい量の液体を供給することができる。
【0056】
また、静電気力によって液体をノズル31から噴霧する装置では、安定した噴霧を行うためにノズル31の内径は、例えば、0.2mmφ以上0.5mmφ以下程度とするのが好ましく、内径が小さいことに伴って、異物等による目詰まりが発生しやすいが、この抵抗部材27がフィルタとしての役割も果たすため、目詰まりの発生を抑制する効果も奏する。
【0057】
なお、抵抗部の流路抵抗が大きすぎると、各ノズル31に液体を良好に供給することができなくなるため、抵抗部は液体を供給するポンプ72の供給圧に対して90%以下の流路抵抗を有するようにしておくことが好ましい。
【0058】
さらに、目詰まりの点からいえば、本実施形態のように、ヘッド部21が第1ヘッド部40と第2ヘッド部30とに分解してノズル31の清掃が行い易くなっているため、ノズル31内に液体が固着して目詰まりが発生したとしても容易にその目詰まりを解消できるようになっている。
【0059】
そして、液体噴霧部20は、前後方向の位置の調節が可能に、第2ヘッド部30の外周に螺合された外部電極50を備えている。
【0060】
具体的には、外部電極50は、内周面に螺合溝が形成された導電材料若しくは10
10Ω以下の表面抵抗の材料で形成された円筒状の部材になっており、第2ヘッド部30の外周に設けられた螺合溝に螺合することで第2ヘッド部30に対して取り付けられるようになっている。
【0061】
したがって、第2ヘッド部30に対する外部電極50の螺合量を変えることで外部電極50を前後方向に移動させることができ、前後方向の位置の調節ができるようになっている。
【0062】
この外部電極50は、複数のノズル31からなるノズル群を囲むように設けられている。
具体的には、外部電極50は、前方側から複数のノズル31を正面に見る正面視で、ノズル31の先端が位置する第1同心円の中心である第1中心を中心としてノズル群を円形に囲むように設けられている。
なお、前後方向の位置関係を考慮してより正確に表現すると、外部電極50は、第1同心円の第1中心を通る第1同心円に垂直な第1中心軸(
図7のO軸参照)上を中心として、ノズル群を円形に囲むように設けられている。
【0063】
次に、
図4及び
図5を参照しながら、外部電極50の役割等を含め、より詳細に説明を行う。
図4は外部電極50を取り外した状態を示す図であり、
図4(a)は
図1の点線枠囲み部分Aに対応する部分の拡大図であり、
図4(b)は液体を噴霧しているところを示す写真である。
【0064】
また、
図5は外部電極50を取り付けた状態を示す図であり、
図5(a)は
図1の点線枠囲み部分Aに対応する部分の拡大図であり、
図5(b)は液体を噴霧しているところを示す写真である。
なお、
図4(a)及び
図5(a)では、電圧を印加したときに現れる等電位曲線を併せて示している。
【0065】
図4(b)を見るとわかるように、外部電極50を取り外した状態であっても、ノズル31の先端からは液線が延びて、その液線の先端で静電爆発が起きて液体の噴霧自体はできている。
しかしながら、丸で囲む部分に注目すると、ノズル31の先端近傍でひげのように分離する液体が散見される。
【0066】
このように、液線の先端ではなく、ノズル31の先端近傍でひげのように分離する液体は、帯電状態が不安定であるため、分離後の静電爆発の繰り返しの状態も、液線の先端から静電爆発によって放出される液体微粒子と異なるものとなり、塗布ムラの原因となるおそれがある。
【0067】
そこで、この原因を調査したところ、
図4(a)に示すように、ノズル31の先端の外側の縁部(丸囲み部分B参照)に電界が集中する状態が起きていることを発見した。
このように、電界が集中する部分(以下、電界集中部ともいう)があると、電界集中部に近い位置の液線の部分が強く帯電し、部分的に静電爆発が発生することで、
図4(b)に見られるような、ひげのように分離する液体が発生するのではと推察される。
【0068】
なお、ひげのように分離する液体は、必ずしも、ノズル31から外側に対応した位置から発生しているわけではないが、これは、部分的な静電爆発の余波等の影響でひげの分離する方向が定まっていないだけであり、本質的な原因は、この電界集中部にあるものと推察される。
【0069】
一方、
図5(a)に示すように、外部電極50を設けるようにすると、
図4(a)で見られていた電界集中部が見られなくなる(
図5の丸囲み部分B参照)。
そして、
図5(b)を見るとわかるように、ノズル31の先端近傍でひげのように分離する液体も見られなくなっており、ノズル31の先端から延びる液線の先端での静電爆発による液体の噴霧だけの状態になっている。
【0070】
なお、外部電極50を設けることで、ひげのように分離する液体が全くでない状態になっているかは定かではないが、観察した限りにおいては、発見できておらず、ひげのように分離する液体の発生確率が大幅に低減できているものと考えられる。
【0071】
当然、外部電極50がノズル31よりも大きく後方側に位置すると、上記のような効果が得られなくなると考えられるが、上記改善を行う過程で外部電極50の良好な配置に関しても一応の目安を得ることができたので、以下、
図6を参照しながら、この点について説明する。
【0072】
図6は外部電極50の配置について説明するための図であり、
図6(a)は外部電極50を設けていない状態を示した図であり、
図6(b)は外部電極50を設けた状態を示した図である。
なお、
図6(a)の上側の図は
図4(a)に対応した図になっており、
図6(b)の上側の図は
図5(a)に対応した図になっている。
また、
図6(a)及び
図6(b)のZ軸はノズル31の中心軸を示している。
【0073】
静電気力による引っ張り方向は、等電位曲線に直交する方向に働くため、
図6(a)の上側の図に示すように、外部電極50を設けていないときには、電界集中部(丸囲み部分B参照)の影響を受けて、引っ張り方向を示すW軸を見るとわかるように、ノズル31の中心軸(Z軸参照)に対して外側に傾いている。
このため、
図6(a)の下側の図に示すように、ノズル31から前方側に延びる液線の方向(L軸参照)は、ノズル31の中心軸(Z軸参照)に対して外側に角度θ1で傾いた状態になっている。
【0074】
一方、
図6(b)に示すように、外部電極50を設けて、
図6(b)の上側の図に示すように、ノズル31の外側の端部(丸囲み部分B参照)に電界が集中するのが緩和されると、ノズル31の先端側に現れる等電位曲線の歪みが解消され、ノズル31の前方に現れる等電位曲線は、ノズル31の先端面に対して平行な状態に近づく。
【0075】
このため、
図6(b)の上側の図に示すように、引っ張り方向を示すW軸がノズル31の中心軸(Z軸参照)に対してあまり傾かなくなり、
図6(b)の下側の図に示しように、ノズル31から前方側に延びる液線の方向(L軸参照)がノズル31の中心軸(Z軸参照)に対してあまり傾かず、
図6(b)の下側の図を見るとわかるとおり、ノズル31の中心軸(Z軸参照)に対するノズル31から前方側に延びる液線の傾きが小さくなる。
【0076】
なお、
図6(b)では、わかりやすいように、ノズル31の中心軸(Z軸参照)とノズル31から前方側に延びる液線の方向(L軸参照)及び引っ張り方向(W軸参照)とが一致している場合として図示しているが、完全に一致するようにする必要はない。
【0077】
つまり、ノズル31の中心軸(Z軸参照)に対してノズル31から前方側に延びる液線が、外側や内側に大きく傾かない状態となり、問題となるほどの電界集中部がないようになっていればよい。
【0078】
具体的には、外部電極50を前後方向に移動させて、ノズル31の中心軸(Z軸参照)に対するノズル31から前方側に延びる液線の外側や内側への傾きが10度以内となる位置に、外部電極50が位置するように外部電極50を配置するのが好適であり、より好ましくは、傾きが5度以内となる位置に、外部電極50が位置するように外部電極50を配置するのがよい。
【0079】
ところで、外部電極50に印加する電圧がノズル31に印加する電圧と大きく異なると、外部電極50とノズル31の間の電位差によって、等電位曲線状態が歪むおそれがあるため、外部電極50には、ノズル31に印加する電圧と同じ電圧を印加することが好ましい。
【0080】
なお、ここでいう同じ電圧とは、完全に同じであることを意味するものではなく、外部電極50とノズル31の間の電位差によって、等電位曲線状態が大きく歪むことがない程度において同じであることを意味する。
例えば、被塗物10とノズル31の間に印加される電圧を基準として±10%以内、より好ましくは±5%以内であり、本実施形態のように、ノズル31及び外部電極50を電圧印加手段60の第2電気配線62に繋げるようにするのが構成上もシンプルであるとともに、ほぼ同一と考えられる電圧の印加が行えるため、最も好ましいといえる。
【0081】
以上、具体的な実施形態に基づいて本発明の静電噴霧装置1について説明してきたが、本発明は、上記の具体的な実施形態に限定されるものではない。
上記実施形態のように、複数のノズル31からなるノズル群がヘッド部21(第2ヘッド部30)の中央から前方側に延在する軸線(
図7のO軸参照)上の第1中心を中心とする第1同心円状にノズル31の先端が配置されるように円環状に設けられている場合、ノズル31の先端の内側(第1中心側)には、電界集中部が現れていない。
【0082】
これは、ノズル群の内側が各ノズル31の作用によって電界集中部ができ難い状態にあるものと推察されるが、この第1同心円の直径が大きくなった場合、各ノズル31間の作用が起き難くなるため、ノズル31の先端の内側(第1中心側)でも電界集中部が起こる可能性があると考えられる。
【0083】
したがって、
図7に示すヘッド部21の変形例のように、第1同心円に先端が位置するノズル群よりも内側に設けられた内側ノズル31Cを備えるものとしてもよい。
なお、この場合、内側ノズル31Cがノズル31に不均一に影響を与えないようにするために、内側ノズル31Cは第1同心円の第1中心を通る第1同心円に垂直な第1中心軸(
図7のO軸参照)上に設けるのが好ましいと考えられる。
つまり、内側ノズル31Cはヘッド部21の中央に設けられるのが好ましい。
【0084】
このように、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形や改良を施したものも本発明の技術的範囲に含まれるものであり、そのことは、当業者にとって特許請求の範囲の記載から明らかである。