(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6880388
(24)【登録日】2021年5月10日
(45)【発行日】2021年6月2日
(54)【発明の名称】車両用内装品、車両用内装品の製造装置及び車両用内装品の製造方法
(51)【国際特許分類】
B60N 2/90 20180101AFI20210524BHJP
B60R 7/04 20060101ALI20210524BHJP
B60N 2/58 20060101ALI20210524BHJP
B68G 7/06 20060101ALI20210524BHJP
B68G 7/05 20060101ALI20210524BHJP
A47C 31/02 20060101ALI20210524BHJP
【FI】
B60N2/90
B60R7/04 S
B60N2/58
B68G7/06 A
B68G7/05 Z
A47C31/02 Z
【請求項の数】9
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-194237(P2016-194237)
(22)【出願日】2016年9月30日
(65)【公開番号】特開2018-52452(P2018-52452A)
(43)【公開日】2018年4月5日
【審査請求日】2019年9月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000220066
【氏名又は名称】テイ・エス テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】特許業務法人 大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】池亀 栄作
(72)【発明者】
【氏名】末木 暢
【審査官】
望月 寛
(56)【参考文献】
【文献】
特開2000−238568(JP,A)
【文献】
特開平08−156023(JP,A)
【文献】
特開平08−174585(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/90
A47C 31/02
B60N 2/58
B60R 7/04
B68G 7/05
B68G 7/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外縁に板状部を含む樹脂成形品と、前記樹脂成形品を支持するフレームと、前記樹脂成形品及びフレームを含んだ発泡樹脂の成形品によるパッドと、前記パッドの表面を被覆し、前記樹脂成形品の外方から前記板状部の裏面に向けて延出する端末部を含む表皮材とを有する車両用内装品であって、
前記端末部が前記板状部の前記裏面に沿って延在して当該裏面に溶着された裏面延在部及び当該裏面延在部よりも端末縁側に延在する余剰部を含み、前記余剰部は前記板状部に非溶着であり、前記フレームは前記余剰部よりも内側に配置されている部分を含む車両用内装品。
【請求項2】
前記フレームは前記板状部の前記裏面に上下方向に重なり合って当該裏面に接する部分を含む請求項1に記載の車両用内装品。
【請求項3】
前記余剰部の端末は前記板状部の前記裏面から上下方向に離間した位置にある請求項1又は2に記載の車両用内装品。
【請求項4】
前記表皮材は前記板状部の外側に隣接する面部を含み、当該面部は前記板状部の上面に面一である請求項1〜3の何れか一項に記載の車両用内装品。
【請求項5】
外縁に板状部を含む樹脂成形品と、前記樹脂成形品を支持するフレームと、前記樹脂成形品及びフレームを含んだ発泡樹脂の成形品によるパッドと、前記パッドの表面を被覆し、前記樹脂成形品の外方から前記板状部の裏面に向けて延出する端末部を含む表皮材とを有し、前記端末部が前記板状部の前記裏面に溶着された裏面延在部及び当該裏面延在部よりも端末縁側に延在する前記板状部に非溶着の余剰部を含む車両用内装品の製造装置であって、
前記樹脂成形品の成形室を画定する成形室面を有し、当該成形室面の一部に前記裏面に対する前記表皮材の溶着のために前記表皮材を配置される表皮材配置面を含む少なくとも1対の金型を有する成形金型と、
前記表皮材を介して前記成形室の外端縁部を画定する外縁成形室面及び前記表皮材を介して前記成形金型の対応面に正対する正対面を有する外縁金型と、
前記正対面が前記成形金型の前記対応面に向かう方向に前記外縁金型を付勢するばねと、
前記表皮材の前記余剰部を前記成形金型に対してクランプすべく前記成形金型に移動可能に設けられたクランプ部材とを有し、
前記クランプ部材が前記余剰部を前記成形金型に対してクランプする移動方向は前記ばねによる前記外縁金型の付勢方向と逆方向である車両用内装品の製造装置。
【請求項6】
前記成形金型に横断面形状が矩形のテーパ状のクランプ凹部が形成されており、前記クランプ部材は前記クランプ凹部に係合する横断面形状が矩形のテーパ形状である請求項5に記載の車両用内装品の製造装置。
【請求項7】
前記テーパ形状は、前記クランプ部材が前記クランプ凹部に係合する方向の移動により楔作用によって前記余剰部をクランプする形状である請求項6に記載の車両用内装品の製造装置。
【請求項8】
前記外縁金型が正対する前記成形金型の対応面と前記成形金型の前記成形室面のうち前記クランプ部材が当接する面とが面一である請求項5〜7の何れか一項に記載の車両用内装品の製造装置。
【請求項9】
外縁に板状部を含む樹脂成形品と、前記樹脂成形品を支持するフレームと、前記樹脂成形品及びフレームを含んだ発泡樹脂の成形品によるパッドと、前記パッドの表面を被覆し、前記樹脂成形品の外方から前記板状部の裏面に向けて延出する端末部を含む表皮材とを有し、前記端末部が前記板状部の前記裏面に溶着された裏面延在部及び当該裏面延在部よりも端末縁側に延在する前記板状部に非溶着の余剰部を含む車両用内装品の製造方法であって、
請求項5〜8の何れか一項に記載の製造装置を用い、
前記表皮材が前記正対面及び表皮材配置面上に載り、前記余剰部が前記クランプ部材の配置部に至るように前記表皮材を前記成形金型にセットする第1のステップと、
成形金型の型締めを行い、前記表皮材を前記外縁金型の前記正対面と前記成形金型の対応面とによって挟む第2のステップと、
前記表皮材の前記余剰部を前記クランプ部材によりクランプする第3のステップと、
前記成形室に溶融樹脂を注入し、前記樹脂成形品の成形を行うと共に前記表皮材の前記裏面延在部を前記板状部の裏面に溶着させる第4のステップとを有する車両用内装品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用内装品、車両用内装品の製造装置及び車両用内装品の製造方法に関し、更に詳細には、 互いに接続された樹脂成形品と表皮材とを有する車両用内装品、当該の車両用内装品の製造装置及び製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用内装品として、発泡材によるパッドに樹脂成形品によるカップホルダが配置され、カップホルダの配置部を除くパッド表面がファブリック等による表皮材によって被覆されたアームレストが知られている(例えば、特許文献1)。樹脂成形品と表皮材との接続は、樹脂成形品の板状の外縁と表皮材の端末との縫合によるものが一般的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013−14190号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
樹脂成形品と表皮材との接続とを、縫合に代えて、樹脂成形品の成形時に樹脂成形品を構成する樹脂に表皮材の端末を溶着することにより行うことが考えられている。
【0005】
この場合には、樹脂成形品と表皮材との縫合工程が省略されるが、樹脂成形品の成形時に成形型の型締めによって表皮材が金型間に挟まれ、表皮材が強く押圧されることにより、表皮材の表面に傷が付いたり、表皮材の質感が損ねられたりし、製品価値が低下する。特に、表皮材が起毛材やパイル織布等の場合には、型締めによる押圧によって毛やパイプが倒れ、表皮材の質感が損ねられ、製品価値が低下する。また、表皮材に弛みがあると、適切な溶着が行われない虞がある。
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、製品価値の低下を招くことなく適切な溶着によって樹脂成形品と表皮材とを接続することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による車両用内装品は、外縁に板状部(26)を含む樹脂成形品(12)と、前記樹脂成形品(12)の外方から前記板状部(26)の外端面(26A)を経て前記板状部(26)の裏面(26B)に沿って延出する端末部(30)を含む表皮材(16)とを有する車両用内装品(6)であって、前記端末部(30)が前記板状部(26)の前記裏面(26B)に沿って延在して当該裏面(26B)に溶着された裏面延在部(30A)及び当該裏面延在部(30A)よりも端末縁側に延在する余剰部(30B)を含む。
【0008】
この構成によれば、樹脂成形品(12)の射出成形時に余剰部(30B)を、表皮材(16)の端末部(30)を掴む掴み代として用いることができ、樹脂成形品(12)の成形時に表皮材(16)に弛みが生じることを回避することができる。余剰部(30B)は板状部(26)裏面に対して非溶着であってよい。
【0009】
本発明による車両用内装品の製造装置は、外縁に板状部(26)を含む樹脂成形品(12)と、前記樹脂成形品(12)の外方から前記板状部(26)の裏面(26B)に沿って延出する端末部(30)を含む表皮材(16)とを有し、前記端末部(30)が前記板状部(26)の前記裏面(26B)に沿って延在して当該裏面(26B)に溶着された裏面延在部(30A)及び当該裏面延在部(30A)よりも端末縁側に延在する余剰部(30B)を含む車両用内装品の製造装置であって、前記樹脂成形品(12)の成形室(56)を画定する成形室面(53、55)を有し、当該成形室面(53、55)の一部に前記裏面(26B)に対する前記表皮材(16)の溶着のために前記表皮材(16)を配置される表皮材配置面(58)を含む少なくとも1対の金型(52、54)を有する成形金型(50)と、前記板状部(26)の前記外端面(26A)に沿って延在し、前記表皮材(16)を介して前記成形室(56)の外端縁部を画定する外縁成形室面(62)及び前記表皮材(16)を介して前記成形金型(50)の対応面(52A)に正対する正対面(64)を有する外縁金型(60)と、前記正対面(64)が前記成形金型(50)の前記対応面(52A)に向かう方向に前記外縁金型(60)を付勢するばね(68)と、前記表皮材(16)の前記余剰部(30B)を前記成形金型(50)に対して選択的にクランプすべく前記成形金型(50)に移動可能に設けられたクランプ部材(76)とを有する。
【0010】
この構成によれば、表皮材(16)を外縁金型(60)の正対面(64)と成形金型(50)の対応面(52A)とによって挟むことが、ばね(68)のばね力によって行われるので、表皮材(16)に過剰な押圧力が作用することがない。これにより、表皮材(16)の表面に傷が付いたり、表皮材(16)の質感が損ねられたりすることがない。しかも、余剰部(30B)を前記クランプ部材(76)によりクランプされることにより、製造時に表皮材(16)に弛みが生じることがなく、適切な溶着が行われる。
【0011】
本発明による車両用内装品の製造装置は、好ましくは、前記成形金型(54)に横断面形状が矩形のテーパ形状のクランプ凹部(70)が形成されており、前記クランプ部材(76)は前記クランプ凹部(70)に係合する横断面形状が矩形のテーパ形状である。
【0012】
この構成によれば、楔作用によって余剰部(30B)のクランプが確実に行われる。
【0013】
本発明による車両用内装品の製造方法は、外縁に板状部(26)を含む樹脂成形品(12)と、前記樹脂成形品(12)の外方から前記板状部(26)の外端面(26A)を経て前記板状部(26)の裏面(26B)に沿って延出する端末部(30)を含む表皮材(16)とを有し、前記端末部(30)が前記板状部(26)の前記裏面(26B)に沿って延在して当該裏面(26B)に溶着された裏面延在部(30A)及び当該裏面延在部(30A)よりも端末縁側に延在する余剰部(30B)を含む車両用内装品の製造方法であって、上述の発明による製造装置を用い、前記表皮材(16)が前記正対面(64)及び表皮材配置面(58)上に載り、前記余剰部(30B)が前記クランプ部材(76)の配置部に至るように前記表皮材(16)を前記成形金型(50)にセットする第1のステップと、成形金型(50)の型締めを行い、前記表皮材(16)を前記外縁金型(60)の前記正対面(64)と前記成形金型(50)の対応面(52A)とによって挟む第2のステップと、前記表皮材(16)の前記余剰部(30B)を前記クランプ部材(76)によりクランプする第3のステップと、前記成形室(56)に溶融樹脂を注入し、前記樹脂成形品(12)の成形を行うと共に前記表皮材(16)の前記裏面延在部(30A)を前記板状部材(26)の裏面(26B)に溶着させる第4のステップとを有する。
【0014】
この製造方法によれば、表皮材(16)を外縁金型(60)の正対面(64)と成形金型(50)の対応面(52A)とによって挟むことが、ばね(68)のばね力によって行われるので、表皮材(16)に過剰な押圧力が作用することがない。これにより、表皮材(16)の表面に傷が付いたり、表皮材(16)の質感が損ねられたりすることがない。しかも、余剰部(30B)を前記クランプ部材(76)によりクランプされることにより、製造時に表皮材(16)に弛みが生じることがなく、製造時に表皮材(16)に弛みが生じることがなく、適切な溶着が行われる。
【0015】
本発明による車両用内装品の製造方法においては、前記表皮材は、起毛材あるいはパイル織布であってもよく、毛倒れやパイル倒れが生じることかない。
【発明の効果】
【0016】
本発明による車両用内装品、車両用内装品の製造装置及び製造方法によれば、製品価値の低下を招くことなく溶着によって樹脂成形品と表皮材とを接続することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明を自動車の後部座席のアームレストに適用した一実施形態を示す斜視図
【
図3】本発明による車両用内装品の製造装置の一つの実施形態及び製造方法の第1のステップの状態を示す縦断面図
【
図4】本発明による車両用内装品の製造装置の一つの実施形態及び製造方法の第2のステップの状態を示す縦断面図
【
図5】本発明による車両用内装品の製造装置の一つの実施形態及び製造方法の第3及び第4のステップの状態を示す縦断面図
【
図6】本発明による車両用内装品の製造装置の他の実施形態を示す縦断面図
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明を自動車の後部座席のアームレストに適用した一実施形態を、図を参照して説明する。
【0019】
自動車の3人掛けの後部座席は、
図1に示されているように、左席1L及び中央席1Cを構成するシート1と、右席を構成するシート2とを左右に連続するよう有している。シート1及びシート2は、互いに独立している。
【0020】
シート1は、シートバック3と、シートクッション4と、ヘッドレスト5と、アームレスト6とを有している。シートバック3の中央席1Cを構成する部分の前部には、アームレスト6が配置される収容凹部8が後方に向けて凹むように形成されている。アームレスト6は、収容凹部8に配置され、後述するサイドフレーム20をもってシートバック3のフレーム(不図示)に左右に延びる回転軸線周りに回動可能に支持されている。アームレスト6は、シートバック3に支持された基端部に対して先端部が前方に突出した使用位置と、先端部が基端部に対して上方に位置し、収容凹部8の内側に配置された収納位置との間で回動する。以下の説明では、アームレスト6が使用位置にある状態を基準とする。
【0021】
アームレスト6は、
図2に示されているように、金属製のフレーム10と、カップホルダをなす樹脂成形品12と、フレーム10及び樹脂成形品12をインサート成形された横長矩形の横断面形状の発泡樹脂製のパッド14と、パッド14の表面を被覆する上側の表皮材16及び底側の表皮材18とを有する。
【0022】
フレーム10は、アームレスト6の前後長手方向に延在する溝形の横断面形状の左右一対のサイドフレーム20及びパンフレーム22とを有する。パンフレーム22は、水平な上主面部22A及び左右の脚片部22Bを含む台形の横断面形状の中央部22Cと、各脚片部22Bの下端から左右外方に延在して左右対応する側のサイドフレーム20に接合された左右の側片部22Dとを折曲形成されている。中央部22Cには前後方向に長い長円形の貫通孔22Eが形成されている。
【0023】
樹脂成形品12は、例えばオレフィン系エラストマーや塩化ビニル等の比較的軟らかい樹脂或いはポリプロピレン等の比較的硬い樹脂によって構成され、上方開口の有底の前後2つのカップ収容部24と、2つのカップ収容部24の上部開口縁に接続されて略水平に延在する前後方向に長い長円形のフランジ部26とを一体に有する。フランジ部26は、樹脂成形品12の外縁を形成する板状部をなすものであり、互いに平行な上面26A及び裏面(下面)26Bと、上面26A及び裏面26Bに対して直交する面をなす外端面26Cとを有する。樹脂成形品12はカップ収容部24の部分を貫通孔22Eに挿入されることにより、フランジ部26を裏面26B側からパンフレーム22によって支持される。
【0024】
表皮材16及18は起毛生地により構成されている。表皮材16はフランジ部26の平面形状と略同等の形状の開口17を裁断されたものであり、フランジ部26の配置部を除くパッド14の上面、左右の側面及び前面を覆う。表皮材18はパッド14の下底面を覆う。表皮材16と18とは端末部16A、18A同士を縫合Sによって接続されている。
【0025】
表皮材16は、開口17の側に、フランジ部26の外方からフランジ部26の裏面26Bに向けて延出する端末部30を有する。端末部30は、フランジ部26の裏面26Bに沿って延在して当該裏面26Bに面状に溶着された裏面延在部30A及び裏面延在部30Aよりも端末縁側、つまり開口17の側に延在する余剰部30Bを含む。余剰部30Bの先端縁は開口17を画定する周縁をなす。端末部30は、更に、裏面延在部30Aから上向きに直角に折曲して外端面26Cに沿って延在する略垂直な端面延在部30Cを含む。
【0026】
表皮材16がアームレスト6の上面をなす上面部16Bは、端面延在部30Cの上縁からフランジ部26よりも離れる側に直角に折曲してフランジ部26の上面26Aと面一に略水平に延在している。
【0027】
余剰部30Bは、フランジ部26の裏面26B側においてにパッド14内に埋設されるが、樹脂成形品12の射出成形時には、表皮材16の端末部30を掴む掴み代として用いられ、端末部30を掴んだ状態で樹脂成形品12の射出成形が行われることにより、表皮材16に弛みが生じないようにすることに有効に寄与する。
【0028】
次に、本発明による車両用内装品の製造装置及び製造方法の一つの実施形態を、
図3〜
図5を参照して説明する。
【0029】
製造装置は、樹脂成形品12を射出成形するための1対の金型部分として、上金型52と下金型54を有する成形金型50を有する。上金型52と下金型54とは、
図4に示されているように、型締めによって互いに協働して樹脂成形品12の成形室56を画定する成形室面53、55を有する。図示を省略しているが、上金型52及び下金型54の一方には、一般的な射出成形機によって溶融樹脂を成形室56に注入するためのライナ及びゲート等が形成されている。
【0030】
下金型54は、成形室面55のうち、フランジ部26の裏面26Bを成形する部分に、フランジ部26に対する端末部30の溶着のために、表皮材16の端末部30(端面延在部30C)を載置される表皮材載置面58を有する。表皮材載置面58の平面形状はフランジ部26の平面形状と同様の長円形状である。
【0031】
下金型54上には外縁金型60が上下方向に移動可能に設けられている。外縁金型60は、成形室56の外縁に沿って延在し、平面形状がフランジ部26の平面形状により大きい長円形状の環体であり、内周面が表皮材16を介して成形室56の外端縁部を画定する垂直な外縁成形室面62になっている。外縁金型60の上面は、上金型52の下面(対応面)52Aと正対し、上金型52の対応部分に、つまり上金型52の下面52Aに、表皮材16を介して当接する平らな正対面64になっている。上金型52の下面52Aは、成形室面53のうち、フランジ部26の上面26Aを成形する成形室面53Aと面一である。
【0032】
外縁金型60と下金型54との間には、外縁金型60の延在方向に離れた複数箇所の各々に圧縮コイルばね68が設けられている。各圧縮コイルばね68は、正対面64が上金型52の下面52Aに向かう方向、つまり上方に向けて外縁金型60を付勢している。なお、外縁金型60は、各圧縮コイルばね68が外縁金型60に与える付勢力の調整により、正対面64が上金型52の下面52Aと正対する水平姿勢を維持する。
【0033】
外縁金型60の外周面には凹部61が形成されている。下金型54上にはスタッドボルト65によって凹部61に係合するストッパ片63が固定されている。ストッパ片63は、
図3に示されているように、凹部61の下端に当接することにより、外縁金型60の上限位置を規定している。
【0034】
外縁金型60は、
図4及び
図5に示されているように、上金型52の降下による型締めにより、外縁金型60の正対面64と上金型52の下面52Aとの間に表皮材16を挟んで、圧縮コイルばね68のばね力に抗して降下する。
【0035】
下金型54は、表皮材載置面58の内方に隣接して上向き開口のクランプ凹部70が形成されている。クランプ凹部70は、横断面形状が矩形(四角形)で、下方に向かうに従って横断面積が小さくなる有底のテーパ形状をしており、表皮材載置面58の長円形状の延在方向に離れた複数箇所の各々に形成されている。下金型54には各クランプ凹部70の底部に開口した複数の案内孔72が形成されている。各案内孔72にはステム74が上下方向に移動可能に挿入されている。各ステム74の上にはクランプ凹部70に位置するクランプ部材76が固定されている。
【0036】
各クランプ部材76は、クランプ凹部70と同様の横断面形状が矩形(四角形)で、テーパ形状(上下反転の切頭四角錐形状)をしており、下金型54に対して降下移動することにより、外面をもって表皮材16の余剰部30Bをクランプ凹部70の内周面に押圧し、余剰部30Bを下金型54にクランプ(係止)する。換言すると、各クランプ部材76の降下移動によって各クランプ部材76の外面と対応する各クランプ凹部70の内面との間に表皮材16の余剰部30Bが挟み込まれ、余剰部30Bをクランプすることが行われる。このクランプは楔作用によって確実に行われる。クランプ部材76の降下移動は表皮材16を引っ張る方向に移動であるから、クランプ部材76は降下移動によって表皮材16を引っ張りながら表皮材16をクランプする。なお、余剰部30Bは各クランプ部材76に対応すべくクランプ部材76毎の突片形状であってよい。
【0037】
各クランプ部材76は、余剰部30Bをクランプした位置において、その全体がクランプ凹部70に没入する。この没入状態では、各クランプ部材76の上面76Aは成形室面53のうち、フランジ部26の裏面26Bを成形する成形室面53Aと面一であり、成形室56の外縁成形室面の一部をなす。なお、表皮材載置面58は、成形室面53Aよりも表皮材16の厚さ分、低い位置にある。
【0038】
クランプ部材76は降下位置より下金型54に対して上昇移動することにより、余剰部30Bのクランプを解除する。クランプ部材76の上下移動は不図示のアクチュエータ等によって所定のタイミングで行われればよい。
【0039】
下金型54上にボルト78によって型締め受圧ブロック80が固定されている。型締め受圧ブロック80は、型締め完了時に、上面80Aに上金型52の下面52Aが当接することにより、上金型52を受け止める。型締め受圧ブロック80と外縁金型60との間は表皮材16の収容室82になっている。
【0040】
上述の構成による製造装置を用いた車両用内装品の製造方法は、以下に説明する第1のステップ〜第4のステップを有する。
【0041】
(第1のステップ)
図3に示されているように、表皮材16が正対面64及び表皮材載置面58上に載り、正対面64に対する載置部より所定の長さを隔てて余剰部30Bがクランプ凹部70に垂れ下がるように、表皮材16を成形金型50にセットする。
【0042】
(第2のステップ)
第1のステップの完了後に、
図4に示されているように、上金型52を降下させて成形金型50の型締めを行う。型締め過程において上金型52が降下することにより、上金型52の下面52Aが外縁金型60の正対面64上の表皮材16に接触し、これより更に上金型52が降下することにより、外縁金型60の正対面64と上金型52の下面52Aとの間に表皮材16を挟んで外縁金型60が圧縮コイルばね68のばね力に抗して押し下げられる。
【0043】
成形金型50の型締めが完了すると、表皮材16は外縁金型60の正対面64と上金型52の下面52Aとに挟まれてクランプされる。このクランプは、外縁金型60が圧縮コイルばね68のばね力に抗して押し下げられた状態で行われるので、上金型52と下金型54との作用する型締め力よりも小さい挟み力をもって行われる。
【0044】
このことにより、表皮材16が起毛生地により構成されていても、毛倒れが生じたり、折れ皺が生じたりすることがなく、表皮材16の質感が損ねられることがなく、製品価値の低下を生じない。
【0045】
(第3のステップ)
第2のステップの完了後に、
図5に示されているように、ステム74によってクランプ部材76を降下させることにより、クランプ部材76によって表皮材16の余剰部30Bを下金型54に対してクランプする。
【0046】
(第4のステップ)
第3のステップの完了後に、
図5に示されているように、成形室56に溶融樹脂の注入し、樹脂成形品12の成形を行う。成形室56に対する溶融樹脂の注入圧によって、表皮材16の裏面延在部30Aが下金型54の表皮材載置面58に押し付けられると共に端面延在部30Cが外縁金型60の外縁成形室面62に押し付けられる。
【0047】
表皮材16は、裏面延在部30Aが下金型54の表皮材載置面58に押し付けられると共に端面延在部30Cが外縁金型60の外縁成形室面62に押し付けられることに伴って、外縁金型60の正対面64と上金型52の下面52Aとに挟まれている部分において、これらに対して成形室56に向かう側に滑り変位する現象を生じ、この現象によって表皮材16の裏面延在部30Aが下金型54の表皮材載置面58の全体に弛みを生じることなくぴったり押し付けられると共に端面延在部30Cが外縁金型60の外縁成形室面62の全体に弛みを生じることなくぴったり押し付けられてよい。
【0048】
そして、溶融樹脂によって、裏面延在部30Aはフランジ部26の裏面26Bに面状に溶融接着(溶着)され、端面延在部30Cはフランジ部26の外端面26Cに面状に溶融接着(溶着)される。これらの溶着部は、
図5に符号Wによって示されている。
【0049】
これらの溶着は、表皮材16の溶着部Wの一方の側を上金型52と外縁金型60とによる挟み込みによりクランプされ、表皮材16の溶着部Wの他方の側を下金型54とクランプ部材76とによる挟み込みによりクランプされた状態で行われるので、成形室56における溶融樹脂の流動等によって裏面延在部30A及び端面延在部30Cに弛みが生ることがなく、溶着部Wによる樹脂成形品12に対する表皮材16の溶着が確実に行われる。
【0050】
次に、本発明による車両用内装品の製造装置の他の実施形態を、
図6を参照して説明する。なお、
図6において、
図5に対応する部分は、
図5に付した符号と同一の符号を付けて、その説明を省略する。
【0051】
この実施形態では、上金型52に成形室56の外端縁部を画定する壁部59が形成されている。この実施形態では、フランジ部26の外端面26Cが壁部59によって成形され、溶着部Wはフランジ部26の裏面26Bと端面延在部30Cとの接合部にのみになる。
【0052】
以上、本発明を、その好適な実施形態について説明したが、当業者であれば容易に理解できるように、本発明はこのような実施形態により限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、クランプ部材76はフランジ部26と同様に連続した環状のものであってもよい。樹脂成形品12はアームレスト6に設けられるカップホルダのためのものに限られることはなく、シートクッション4やドアトリムに設けられる収納ボックス等のための樹脂成形品であってもよい。また、樹脂成形品12は板状部のみのプレートのようなものであってもよい。表皮材16、18は、パイル織布や合成樹脂シートや皮革等であってもよい。
【0053】
製造方法において、第2のステップと第3のステップとの順次が入れ替わり、第3のステップの後に第2のステップが行われてもよい。
【0054】
また、上記実施形態に示した構成要素は必ずしも全てが必須なものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて適宜取捨選択することが可能である。
【符号の説明】
【0055】
1 :シート
6 :アームレスト(車両用内装品)
10 :フレーム
12 :樹脂成形品
14 :パッド
16 :表皮材
18 :表皮材
24 :カップ収容部
26 :フランジ部
26A :上面
26B :裏面
26C :外端面
30 :端末部
30A :裏面延在部
30B :余剰部
30C :端面延在部
50 :成形金型
52 :上金型
52A :下面
53 :成形室面
54 :下金型
55 :成形室面
56 :成形室
58 :表皮材載置面
59 :壁部
60 :外縁金型
62 :外縁成形室面
64 :正対面
68 :圧縮コイルばね
70 :クランプ凹部
76 :クランプ部材
80 :型締め受圧ブロック
W :溶着部