特許第6880401号(P6880401)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6880401
(24)【登録日】2021年5月10日
(45)【発行日】2021年6月2日
(54)【発明の名称】金型装置及び成形方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 51/30 20060101AFI20210524BHJP
   B29C 51/32 20060101ALI20210524BHJP
   B29C 51/02 20060101ALI20210524BHJP
【FI】
   B29C51/30
   B29C51/32
   B29C51/02
【請求項の数】8
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2017-90037(P2017-90037)
(22)【出願日】2017年4月28日
(65)【公開番号】特開2018-187798(P2018-187798A)
(43)【公開日】2018年11月29日
【審査請求日】2020年1月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000104674
【氏名又は名称】キョーラク株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 優
【審査官】 浅野 昭
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−189412(JP,A)
【文献】 特開2009−119782(JP,A)
【文献】 特開2005−238790(JP,A)
【文献】 特開平10−015950(JP,A)
【文献】 特開2008−246700(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/073323(WO,A1)
【文献】 特開平07−124985(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 33/00−33/76
B29C 51/00−51/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金型と駒を備える金型装置であって、
前記金型と前記駒の相対移動に伴って、前記金型と前記駒の隙間が変化するように構成され
前記隙間は、前記金型と前記駒の互いに対向する対向面の間に形成され、
前記対向面はそれぞれ、前記相対移動の方向と非平行な面であり、
前記相対移動により、前記駒を前進させた前進状態と前記駒を後退させた後退状態に移行可能に構成され、
前記金型に設けられた前記対向面の最上点を含む面が、前記前進状態と前記後退状態と両方において、前記駒と非接触である、金型装置。
【請求項2】
前記対向面は、前記金型及び前記駒にそれぞれ形成された傾斜面を含み
前記前進状態において、前記傾斜面と前記傾斜面が当接し、前記相対移動と非平行な方向への前記駒の位置ずれをガイドするように構成される、請求項に記載の金型装置。
【請求項3】
前記対向面は、前記金型及び前記駒にそれぞれ形成された直立面を含み
前記前進状態において、前記直立面が当接することで前記金型と前記駒がシールされ、前記金型と前記駒により密閉空間が形成されるように構成される、請求項又は請求項に記載の金型装置。
【請求項4】
前記駒の下側の側面が前記金型に形成された前記対向面の最上点より低い箇所に設けられる、請求項〜請求項の何れか1つに記載の金型装置。
【請求項5】
前記金型はピンチオフ部を備え、
前記金型に形成された対向面は、前記ピンチオフ部に設けられる、請求項〜請求項の何れか1つに記載の金型装置。
【請求項6】
前記駒の下側の側面が前記ピンチオフ部の上面より低い箇所に設けられる、請求項に記載の金型装置。
【請求項7】
前記金型に形成された前記対向面の最上点を含む面と、前記駒の側面のうち、前記最上点を含む面と対向する部分が非接触となるように構成される、請求項〜請求項の何れか1つに記載の金型装置。
【請求項8】
請求項1〜請求項の何れか1つに記載の金型装置を用いた樹脂成形体の成形方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金型装置及び成形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、成形型のコア部を移動してブロー成形体内に注入された発泡性樹脂の発泡を促進させる樹脂成形品の成形において、コア部の移動に対してブロー成形体の追従性が低下することを抑制することができる樹脂成形品の成形方法及び成形装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−246700号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、コア部(駒)の移動させる場合、コア部と金型の摺動面積が大きいことに加え、コア部の自重によりコア部が位置ずれを起こし、コア部と金型の干渉が生じる。この結果、コア部の移動が妨げられ、コア部又は金型が損傷する恐れがあった。
【0005】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、簡易な構成で駒と金型の干渉を低減することが可能な金型装置及びそれを用いた樹脂成形体の成形方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、金型と駒を備える金型装置であって、前記金型と前記駒の相対移動に伴って、前記金型と前記駒の隙間が変化するように構成される、金型装置が提供される。
【0007】
本発明の金型装置は、金型と前記駒の相対移動に伴って、金型と駒の隙間が変化するように構成される。これにより、駒と金型の干渉を低減することが可能になる。
【0008】
以下、本発明の種々の実施形態を例示する。以下に示す実施形態は互いに組み合わせ可能である。
好ましくは、前記隙間は、前記金型と前記駒の互いに対向する対向面の間に形成され、前記対向面はそれぞれ、前記相対移動の方向と非平行な面である。
好ましくは、前記相対移動により、前記駒を前進させた前進状態と前記駒を後退させた後退状態に移行可能に構成され、前記対向面は、前記金型及び前記駒にそれぞれ形成された傾斜面により構成され、前記前進状態において、前記傾斜面と前記傾斜面が当接し、前記相対移動と非平行な方向への前記駒の位置ずれをガイドするように構成される。
好ましくは、前記相対移動により、前記駒を前進させた前進状態と前記駒を後退させた後退状態に移行可能に構成され、前記対向面は、前記金型及び前記駒にそれぞれ形成された直立面により構成され、前記前進状態において、前記直立面が当接することで前記金型と前記駒がシールされ、前記金型と前記駒により密閉空間が形成されるように構成される。
好ましくは、前記駒の下側の側面が前記金型に形成された前記対向面の最上点より低い箇所に設けられる。
好ましくは、前記金型はピンチオフ部を備え、前記金型に形成された対向面は、前記ピンチオフ部に設けられる。
好ましくは、前記駒の下側の側面が前記ピンチオフ部の上面より低い箇所に設けられる。
好ましくは、前記金型に形成された前記対向面の最上点を含む面と、前記駒の側面のうち、前記最上点を含む面と対向する部分が非接触となるように構成される。
好ましくは、上記いずれかの金型装置に記載の金型装置を用いた樹脂成形体の成形方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の第1実施形態の金型装置1の前面斜視図である。
図2】金型装置1の背面斜視図である。
図3】金型1aに駒2を取付けた状態の前面斜視図である。
図4】金型1aに駒2を取付けた状態の背面斜視図である。
図5】金型1a,1b及び発泡樹脂シートFRSの近傍の拡大端面図である。
図6図5の状態から金型1a,1bを互いに近接させた状態を示す図である。
図7図6の状態から駒を後退させた状態を表す図である。
図8】金型1a及び駒2の正面図、A−A端面図及びB−B端面図を合わせた図である。
図9図8中の領域Xの部分拡大図であり、駒2が前進状態のときの様子を表す図である。
図10図8中の領域Xの部分拡大図であり、駒2が後退状態のときの様子を表す図である。
図11図8中の領域Yの部分拡大図であり、駒2が前進状態のときの様子を表す図である。
図12図8中の領域Yの部分拡大図であり、駒2が後退状態のときの様子を表す図である。
図13】本発明の第2実施形態の金型装置1の部分拡大図であり、図9に対応する図である。
図14】本発明の第2実施形態の金型装置1の部分拡大図であり、図10に対応する図である。
図15】本発明の第3実施形態の金型装置1の部分拡大図であり、図9に対応する図である。
図16】本発明の第3実施形態の金型装置1の部分拡大図であり、図10に対応する図である。
図17】本発明の第4実施形態の金型装置1の部分拡大図であり、図9に対応する図である。
図18】本発明の第4実施形態の金型装置1の部分拡大図であり、図10に対応する図である。
図19】本発明の第5実施形態の金型装置1の部分拡大図であり、図8に対応する図である。
図20図19中の領域Xの部分拡大図である。
図21図19中の領域Yの部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について説明する。以下に示す実施形態中で示した各種特徴事項は、互いに組み合わせ可能である。また、各特徴事項について独立して発明が成立する。
【0011】
<第1実施形態>
金型装置1
図1及び図2に示すように、本発明の第1実施形態に係る金型装置1は、金型1a及び駒2を備える。本実施形態では、金型装置1はさらに金型1bを備える。金型装置1は、樹脂(シート、パリソン等の発泡樹脂FRが好ましい)を成形するためのものである。以下、本実施形態では、金型装置1が発泡樹脂FRを成形するものとして説明する。
【0012】
1−1.金型1a
金型1aは、略直方体状であり、前面11afと、背面11abと、これらの間の面である側面11asを備える。前面11afは、金型1bに対向する面であり、背面11abは、前面11afの反対側の面である。また、金型1aは、キャビティ12aを有し、キャビティ12aを取り囲むようにピンチオフ部13aが設けられている。本実施形態では、金型1a,1bにはそれぞれ前後方向に微小な減圧吸引孔が複数形成され、金型1a,1bの背面11ab,11bb側に装着された不図示の減圧吸引装置により、発泡樹脂FR(図9及び図10参照)を駒2の前面21f及び金型1bの内面に沿った形状に賦形することが可能になっている。
【0013】
また、金型1aの背面11abには金型用シリンダ15が設けられ、金型用シリンダ15により金型1aが移動可能に構成される。ここで、本実施形態では、金型用シリンダ15は金型1aの背面11abの4隅に設けられる。さらに、金型1aの背面11abの略中央に、後述の駒2を移動させるための駒用シリンダ14が設けられる。そして、図8のA−A端面図に示すように、金型1aの背面の中央には駒用シリンダ14を挿通するための挿通孔14hが設けられる。
【0014】
1−2.金型1b
また、金型1bは、金型1aと同様に略直方体状であり、前面11bfと、背面11bbと、これらの間の面である側面11bsを備える。前面11bfは、金型1aに対向する面であり、背面11bbは、前面11bfの反対側の面である。また、金型1bは、キャビティ12bを有し、キャビティ12bを取り囲むようにピンチオフ部13bが設けられている。
【0015】
1−3.駒2
駒2は、金型1a,1bと同様に略直方体状であり、前面2fと、背面2bと、これらの間の面である側面2sを備える。前面2fは、金型1bに対向する面であり、背面2bは、金型1aに対向する面である。ここで、図4及び図5に示すように、駒2は、金型1aの内面に金型用シリンダ15によって取付け且つ移動されるものである。さらに、駒2の前後方向に微小な減圧吸引孔が複数形成され、不図示の減圧吸引装置により、金型1aとの間の空間SP(図5図7参照)及びピンチオフ部13a,13bに囲まれた空間を減圧状態にすることができるように構成される。
【0016】
2.樹脂成形体の成形
次に、図5図7を用いて、金型装置1を用いて樹脂成形体を成形する方法について説明する。図5に示すように、溶融状態の発泡樹脂FRをTダイのスリット(不図示)から押し出して垂下させて形成した1枚の発泡樹脂シートFRSを金型1a,1bの間に配置する。このとき、金型1bのキャビティ12b内であって、金型1bの内面側にカーペット等の不織布を配置してもよい。この場合、後述の減圧吸引により駒2の減圧吸引孔に詰まった発泡樹脂FRを、不織布により覆い隠すことができる。
【0017】
次に、図6に示すように、金型1a,1bを近づけた状態で金型1a,1bの両方によって発泡樹脂シートFRSを減圧吸引することによって、空間SP及びピンチオフ部13a,13bに囲まれた空間を減圧状態とする。これにより、発泡樹脂シートFRSに図中の矢印の向きに力が加わり、発泡樹脂シートFRSを金型1bと駒2の間に充填されるまで膨張させる。このように、金型1a,1bの両方によって発泡樹脂シートFRSを減圧吸引すると、発泡樹脂シートFRSの発泡が促進されて発泡樹脂シートFRSが膨張する。
【0018】
ここで、金型1a,1bによる減圧吸引は、金型1aによる減圧吸引を先に開始してもよく、金型1bによる減圧吸引を先に開始してもよく、金型1a,1bによる減圧吸引を同時に開始してもよい。また、金型1aによる減圧吸引を先に停止してもよく、金型1bによる減圧吸引を先に停止してもよく、金型1a,1bによる減圧吸引を同時に停止してもよい。金型1a,1bによる減圧吸引は、金型1a,1bを近接させる前に開始してもよく、近接させた後に開始してもよい。
【0019】
そして、図7に示すように、駒用シリンダ14により駒2を金型1aに向けて移動させることにより、発泡樹脂FRを引き寄せる。ここで、駒2の移動距離は特に限定されず、1〜20mm、好ましくは、2〜10mm、さらに好ましくは、3〜5mmとすることができる。これにより、図6の状態からさらに膨らんだ樹脂成形体を得ることができる。
【0020】
3.前進状態及び後退状態
次に、図8図12を用いて、駒2の前進状態及び後退状態について説明する。図8に示すように、挿通孔14hを介して駒用シリンダ14が前後(A−A端面図における左右方向であり、B−B端面図における上下方向である)に移動することにより、駒2と金型1aが相対移動(以下、単に相対移動という)する。
【0021】
図9図8中の領域Xの部分拡大図であり、駒2が前進状態のときの様子を表す図である。また、図10図8中の領域Xの部分拡大図であり、駒2が後退状態のときの様子を表す図である。図9及び図10に示すように、本実施形態では、金型装置1は、相対移動により、駒2を前進させた前進状態と駒2を後退させた後退状態に移行可能に構成される。
【0022】
金型装置1は、相対移動に伴って、金型1aと駒2の隙間が変化するように構成される。かかる隙間は、金型1aと駒2の互いに対向する対向面16,22の間に形成される。ここで、対向面16,22はそれぞれ、相対移動と非平行な面である。本実施形態では、対向面16は、傾斜面16g及び直立面16sを備える。また、対向面22は、傾斜面22g及び直立面22sを備える。傾斜面16g,22gは、駒2の位置ずれをガイドするものである。また、傾斜面16g,22gは、金型1aと駒2をシールする機能を備えてもよい。直立面16s,22sは、金型1aと駒2をシールするものである。かかる点については後述する。
【0023】
傾斜面16g,22gはそれぞれ面であり、互いに対向する面である。図10に示されるテーパー角θは90〜180°であり、好ましくは、100〜170°、さらに好ましくは、120〜150°、さらに好ましくは、130〜140°である。具体的には例えば、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180°であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0024】
図9に示すように、前記前進状態において、傾斜面16gと傾斜面22gが当接し、相対移動と非平行な方向への駒2の位置ずれをガイドするように構成される。また、図9の状態から駒2を後退させたときに駒2の自重により駒2が下方に移動しても、傾斜面16gが傾斜面22gをガイドすることにより、駒2の急な位置ずれを低減することができる。
【0025】
また、前進状態において、直立面16s,22sが当接することで金型1aと駒2がシールされ、金型1aと駒2により密閉空間が形成されるように構成される。これにより、発泡樹脂FRを十分に吸引することができるとともに、発泡樹脂FRが密閉空間内に侵入することを低減することができる。
【0026】
本実施形態では、対向面16は金型1aのピンチオフ部13aに設けられる。そして、ピンチオフ部13aの上面13auと立壁17tを連結するように、傾斜面16gが設けられる。また、本実施形態では、直立面16sは立壁17tの一部であり、立壁17tのうち直立面22sと当接する部分をいう。
【0027】
本実施形態では、金型1aに形成された対向面16gの最上点Pを含む面と、駒2の側面21sのうち、最上点Pを含む面と対向する部分が非接触となるように構成される。具体的には、ピンチオフ部13aの上面13auと、駒2の先端底面21t1が非接触となるように構成される。また、本実施形態では、上面13auと先端底面21t1の間の距離D1は0.1〜20mmであり、好ましくは、0.3〜10mm、さらに好ましくは、0.5〜5mmである。具体的には例えば、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20mmであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。このように、D1が十分小さいので、発泡樹脂FRが上面13auと先端底面21t1の間に詰まることを低減することができる。
【0028】
また、図10に示すように、駒2の下側の側面21sbが金型1aに形成された対向面16の最上点Pより低い箇所に設けられる。具体的には、駒2の下側の側面21sbが、ピンチオフ部13aの上面13auより低い箇所に設けられる。本実施形態では、下側の側面21sbと上面13auの間の距離D2は0.1〜20mmであり、好ましくは、0.3〜10mm、さらに好ましくは、0.5〜5mmである。具体的には例えば、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20mmであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0029】
また、金型1aの内底面11atと駒2の下側の側面21sbの間の距離D3は0.1〜20mmであり、好ましくは、0.3〜10mm、さらに好ましくは、0.5〜5mmである。具体的には例えば、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20mmであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0030】
4.相対移動に伴う隙間の変化
次に、相対移動に伴って、金型1aと駒2の隙間が変化することについて説明する。
【0031】
図9に示すように、前進状態において、金型1aの上面13auと駒2の前面21fに発泡樹脂FRが当接した状態となっている。このとき、対向面16,22が当接するすることにより金型1aと駒2が密閉されるので、効率よく発泡樹脂FRを駒2の内面に沿った形状に賦形することができる。
【0032】
そして、図9の状態から図10の状態へと駒2を後退させる。このとき、駒2の後退に伴い発泡樹脂FRが前面21fに引き寄せられる。これにより、樹脂成形体を所望の形状に成形することができる。また、図10に示すように、金型1aの直立面16sと駒2の直立面22sの隙間(距離D4)が大きくなる。また、金型1aの傾斜面16gと駒2の傾斜面22gの隙間8(距離D5)が大きくなる。換言すると、金型1aの対向面16と駒2の対向面22により形成される開口部の開口断面積が大きくなる。これは、本実施形態の金型装置1が対向面16,22を備えているからこそ生じる変化である。
【0033】
ここで、本実施形態では、ピンチオフ部13aの上面13auと駒2の先端底面21t1が非接触となっているので、これらの面同士が干渉することを低減することができる。さらに、金型1aの内底面11atと駒2の下側の側面21sbが非接触となっているので、これらの面同士が干渉することを低減することができる。すなわち、本実施形態の金型装置1では、相対移動に伴い面同士の干渉を低減することが可能であるので、金型装置1の損傷を低減する事ができる。
【0034】
一方、後退状態から前進状態へ移行するときには、上述のごとく、相対移動に伴う面同士の干渉を低減することができるとともに、対向面16,22が当接することにより、効率的に駒2を金型1aに対して位置決めすることができる。
【0035】
次に、図11及び図12は、他の方向から見た前進状態及び後退状態を表す図である。ここで、本実施形態では、図11及び図12は、図9及び図10を時計回りに90°回転させた形状と多くの面で一致し、内底面11atを内右面11arに、立壁17tを立壁17rに、先端底面21t1を先端側面21t2に置き換えた状態であるので、詳細な説明は省略する。
【0036】
また、図12中の距離D6〜距離D10が、図10中の距離D1〜D5に相当する。そして、図12に示すように、駒2の側面21sが金型1aに形成された対向面16の最上点より外側の低い箇所に設けられる。具体的には、駒2の側面21sが、ピンチオフ部13aの上面13auより低い箇所に設けられる。ここで、対向面16の最上点及び上面13auより低い箇所とは、これらより金型1bの外側の箇所を意味する。つまり、「低い」とは、単純な高さでなく、相対移動の方向からみて駒2を上側、金型1aを下側に配置した場合の「高さ」を意味する。
【0037】
以上説明したように、本実施形態の金型装置1は、金型1aと駒2の相対移動に伴って、金型1aと駒2の隙間が変化するように構成される。これにより、駒2と金型1aの干渉を低減することが可能になる。
【0038】
<第2実施形態>
次に、図13及び図14を用いて、第2実施形態の金型装置1について説明する。なお、第1実施形態で説明した内容についてはその説明を省略する。以下の実施形態についても同様である。
【0039】
第2実施形態の金型装置1は、金型1aの対向面16が傾斜面16gを備え、直立面16sを備えないように構成される。また、駒2の対向面22が傾斜面22gを備え、直立面22sを備えないように構成される。かかる構成では、互いに対向する傾斜面16g及び傾斜面22gにより金型1aと駒2がシールされ、且つ駒2の位置ずれがガイドされる。これにより、金型1aと駒2の相対移動に伴って、金型1aと駒2の隙間が変化し、駒2と金型1aの干渉を低減することが可能になる。
【0040】
<第3実施形態>
次に、図15及び図16を用いて、第3実施形態の金型装置1について説明する。
【0041】
第3実施形態の金型装置1は、第2実施形態と逆に、金型1aの対向面16が直立面16sを備え、傾斜面16gを備えないように構成される。また、駒2の対向面22が直立面22sを備え、傾斜面22gを備えないように構成される。かかる構成では、駒2の自重による位置ずれを第1実施形態ほどは低減できないものの、金型1aと駒2の相対移動に伴って、金型1aと駒2の隙間が変化し、駒2と金型1aの干渉を低減することが可能になる。
【0042】
<第4実施形態>
次に、図17及び図18を用いて、第5実施形態の金型装置1について説明する。第4実施形態では、金型装置1の対向面16のうち、傾斜面16gの相対移動方向と垂直な向きの高さがピンチオフ部13aの上面13auを超えるように構成される。具体的には、上面13auに斜面18が設けられ、斜面18と傾斜面16gを連結するように上面19が形成される。
【0043】
<第5実施形態>
次に、図19図21を用いて、第6実施形態の金型装置1について説明する。第5実施形態では、図19のA−A端面図中の領域Zの構成は図8中の領域Xの構成と同様である。
【0044】
一方、図20及び図21に示すように、領域X及び領域Yの構成は、従来の金型装置と同様に、金型1aの内底面11atと駒2の下側の側面21sb、金型1aの上面13auと駒2の側面21sがそれぞれ接触した構成となっている。
【0045】
かかる構成でも、金型1a及び駒2の少なくとも1辺に対向面16,22を設けない構成と比べ、金型1aと駒2の相対移動に伴って、金型1aと駒2の隙間が変化し、駒2と金型1aの干渉を低減することが可能になる。
【0046】
<その他>
本発明は、以下の態様でも実施可能である。
・金型1aと駒2の相対移動に伴って、金型1aと駒2の隙間が変化する構成を少なくとも一部に設ける。
・駒2の4つの角部の少なくとも1つに対向面22を設ける。これは、金型1aと駒2の対向する2つの面の噛み合いは、駒2の角部において最も顕著であるので、駒2の少なくとも角部と金型1aの緩衝を低減するためである。
図15及び図16に示される第3実施形態の駒2を、従来の駒2と同様に略長方体とし、駒2の前進状態において、前面21fと直立面22sを当接させる。
・金型1aと駒2のシール性を高めるため、対向面16及び対向面22の間にパッキンを挟む。
・金型装置1を用いた樹脂成形体の成形方法。
【符号の説明】
【0047】
1a:金型
11af:前面
11ab:背面
11as:側面
11at:内底面
11ar:内右面
12a:キャビティ
13a:ピンチオフ部
13au:上面
14:駒用シリンダ
14h:挿通孔
15:金型用シリンダ
16:対向面
16g:傾斜面
16s:直立面
17t:立壁
17r立壁
18:斜面
19:上面
1b:金型
11bf:前面
11bb:背面
11bs:周面
12b:キャビティ
13b:ピンチオフ部
2:駒
21f:前面
21b背面
21s:側面
21sb:下側の側面
21t1:先端底面
21t2:先端側面
22:対向面
22g:傾斜面
22s:直立面
FR:発泡樹脂
FRS:発泡樹脂シート
SP:空間
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