(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0025】
<<本発明の実施形態に係る車両用発光部品の構成>>
以下、本発明の一実施形態(以下、本実施形態)について図面を参照しながら説明する。なお、以下の説明において、車両の前後方向とは、通常走行時の前後方向を意味し、また、車両の内側(以下、単に内側ともいう)とは、車室側(車両の室内側)のことを意味し、車両の外側(以下、単に外側ともいう)とは、車外側のことを意味している。さらに、以下の説明において、上側(下側)とは、車両本体に組み付けられた状態での上側(下側)を意味する。
【0026】
以下では、本実施形態に係る車両用発光部品の一例として、
図1に示すように、車両用ドアライニングRの内装部品であり、車両用発光部品として機能する発光オーナメント1について説明する。
【0027】
発光オーナメント1は、夜間等、車室が暗くなった際に点灯し、また、ドアが開いている際には、後方の車両や人間に対して車両がドア開放状態にあることを報知するように点灯して、車両用ドアライニングRにおいて照明装置として機能するものである。
本実施形態に係る発光オーナメント1は、
図2に示すように、照射体としての光源ユニット20と透過体としてのオーナメント10とを組み合わせて構成されるモジュールであり、ドアライニング本体2に設けられた収容ケース3に取り付けられている。オーナメント10、並びに光源ユニット20を構成するホルダ23及び導光体22のそれぞれは、車両の前後方向に沿って長尺で、長尺方向の一方に向かって先細りに形成された略板状の外形形状を有する。
【0028】
光源ユニット20は、光源としての後述するランプ21と、ランプ21からの光を出射する出射面22aを備えた導光体22とを有し、ランプ21及び導光体22とが後述のホルダ23に保持されていることで、ユニット化している。光源ユニット20は、ドアライニング本体2と後述するオーナメント10との間に挟まれる位置に配置されている。
【0029】
より具体的に説明すると、光源ユニット20は、後述するオーナメント10のうち、発光領域10aの裏面(外側の面であり、ドアライニング本体2との対向面)に組み付けられている。なお、本実施形態において、発光領域10aへの光源ユニット20の組み付けには、スナップフィットによる固定方法を用いている。
【0030】
本実施形態に係るランプ21は、例えばLEDランプ等、車両用照明の光源として好適なものである。ランプ21は、後述する導光体22の長手方向の一端部(前端部)に対向するように、ホルダ23における導光体22の長手方向の一端部にあるランプ保持部25に取り付けられている。このように、ランプ21が導光体22の長手方向の端部と隣り合う位置に取り付けられていれば、光の進行方向と導光体22による導光方向とが一致するので、良好な導光効果を得ることが出来る。
【0031】
ホルダ23は、開口を有する箱型の枠体であり、ユニット化されたランプ21及び導光体22、すなわち光源ユニット20を内部に保持するものである。ホルダ23は、
図2に図示する枠壁24aと、底壁24eとを有する。枠壁24aは、導光体22である導光板の外形形状に沿うよう底壁24eの表面(車両の室内側を向く面)に立設されている。なお、ホルダ23は、その背面に設けられた爪部を収容ケース3の底壁に設けられた嵌合穴に嵌合させることでドアライニング本体2に取り付けられる。
【0032】
導光体22は、ポリカーボネート等の合成樹脂から成り、
図2及び
図5(a)に示すように、長尺状の導光板である。導光体22は、
図3Aに示すように、その裏面がホルダ23の底壁24eに形成された当接リブ24iに当接した状態で、ホルダ23に保持されている。発光オーナメント1が車室側に設置された状態で、導光体22の長手方向は、車両の前後方向に沿っている。また、導光体22の長手方向一端部は、車両の前後方向においてより前側に位置する方の端部(前端部)であり、導光体22の長手方向他端部は、より後側に位置する方の端部(後端部)である。
【0033】
また、導光体22である長尺状の導光板は、その外形形状にフィットするように成形された枠体であるホルダ23に嵌められて保持される。導光体22のホルダ23側の面には、
図3Aに図示する断面V字状の切込み(以下、プリズム部22dと記載)が多数、本実施形態において92本形成されている。ここで、切込みの深さは、プリズム部22dの高さdに相当するものである。このプリズム部22dは、詳細については後述するが、反射部として機能するものである。プリズム部22dは、
図2及び
図5(a)に示すように、導光体22の厚さ方向に切り込まれて幅方向に沿って延在して形成されており、導光体22の長手方向に沿って並べて複数設けられている。これにより、導光体22の長手方向一端から長手方向他端に向かって進行する光が中途位置で適宜反射し、導光体22の出射面22a各部から出射される光の強度を均一化することが可能になる。
【0034】
オーナメント10は、車室側に露出し凹凸を有するプレート状の部材であり、光源ユニット20が内側に固定された状態で、ビス止めによる固定方法及びスナップフィットによる固定方法の双方を用いて、ドアライニング本体2に固定されている。オーナメント10は、透光性の材質から構成される領域である発光領域10aと、非透光性の材質から構成される領域である非発光領域10bとを有する。すなわち、オーナメント10は、発光オーナメント1の外形形状を規定し、車室側に位置して発光オーナメント1の加飾性を発現するものである。なお、発光領域10aにあるオーナメント10を透過体とも称する。
【0035】
ここで、本実施形態に係るオーナメント10の発光領域10aは、散光材料を含有しているため、オーナメント10を通過する光が拡散されるようになる。よって、オーナメント10に入射する光は、発光領域10aを拡散しながら透過するため、発光領域10a全体を発光させることとなる。また、散光材料によって、合成樹脂から構成されるオーナメント10の物性が変化することにより透過率が変化することがある。このため、散光材料の代わりに、オーナメント10における導光体22に対向する側の面にシボ加工を施すようにすると、物性が変化しないため好適である。
上記のように構成された発光オーナメント1おいては、ランプ21が点灯すると、ランプ21から入射する光が、導光体22のプリズム部22dによって反射されて導光体22から面状に出射する。オーナメント10にある発光領域10aが、導光体22から出射する光を透過しつつ拡散させることで、面状に所定の輝度にて発光することとなる。
【0036】
次に、ホルダ23に対する導光体22の組み付け状態について説明する。導光体22は、ホルダ23の内部空間のうち、開口が位置する側に配置されるように組み付けられる。なお、導光体22は、スナップフィットにてホルダ23に組み付けられており、具体的には、ホルダ23に形成された係合爪部24dが導光体22に係合するようになっている。また、ランプ21と導光体22とは、ホルダ23内において互いに隣り合っている。
【0037】
さらに、
図3Bに示すように、導光体22のうち、ランプ21と隣り合う長手方向一端部には、ランプ21に向かって突出した突出部22bが形成されている。この突出部22bが設けられていることで、導光体22は、ランプ21と対向する側でランプ21により近付き、これによりランプ21からの入射光を効率よく導光体22へ導くことが可能となる。この結果、ランプ21の使用個数が1個であっても導光体22の出射面22aから適切に光を出射させることが可能となる。
【0038】
なお、ランプ21からの光を効率よく導光体22に入射させるうえで、上記の突出部22bとランプ21との間のクリアランスを安定的に保持する必要がある。このため、ホルダ23の枠壁24aのうち、ランプ21に近い側の端部には導光体22の位置決め穴24cが形成されている。一方、導光体22のうち、ランプ21と隣り合う長手方向一端部の下端には、
図3Bに示すように位置決め穴24cに嵌合する凸部22cが形成されている。この凸部22cは、上記の突出部22bが突出する方向と直交する方向、具体的には導光体22の下端から下向きに突出している。そして、位置決め穴24cと凸部22cとの係合によって導光体22がホルダ23に対して位置決めされると、導光体22とランプ21との間のクリアランスが安定的に保持されることになる。
【0039】
ちなみに、ランプ21からの光は、
図3Bに示すように放射状に広がる一方で、同図に示すように凸部22cに届くことがない。すなわち、導光体22のうち、ランプ21と隣り合う側の端部に位置決め用の凸部22cが設けられているものの、光の出射に影響を及ぼさずに導光体22の位置決めを行うことが可能となる。
【0040】
また、ホルダ23に組み付けらえた導光体22のガタツキを抑える目的から、
図3Aに示すように、導光体22の背面(裏面)とホルダ23の底壁24eとの間に当接リブ24iが設けられている。この当接リブ24iが導光体22の背面に当接することで導光体22のガタツキが抑制される。なお、
図3Aに示すように、導光体22の背面のうち、当接リブ24iが当接する領域は、導光体22の裏側に形成されたプリズム部22dを避けた領域となっている。これは、切欠きからなるプリズム部22d内に当接リブ24iが入り込んでしまうと、プリズム部22dでの光の反射が適切になされなくなり、プリズム部22dを設けた効果が発揮され難くなるためである。また、当接リブ24iの突出量については、過度に大きくなるとホルダ23の底壁24eにヒケを生じてしまうため、当該24eの厚みの1/3以下、望ましくは、1/10以下に設定されているのが望ましい。また、当接リブ24iの個数及びリブ間ピッチについては、導光体22からの光の出射に悪影響を及ぼさない範囲を光学シミュレーションにより特定し、当該範囲内で最適な値に設定することが望ましい。
【0041】
<<本発明の実施形態に係る車両用発光部品の特徴>>
本実施形態に係る発光オーナメント1中、オーナメント10は、曲板状の部材からなり、側方視で略弓形に屈曲している。このため、発光オーナメント1が車両に取り付けられた状態(すなわち、利用状態)では、オーナメント10の裏面と導光体22の出射面22aとの間隔が位置に応じて相違する。すなわち、利用状態にある発光オーナメント1では、オーナメント10が、導光体22との間隔が異なる部位を有することになる。
【0042】
一方、本実施形態に係る発光オーナメント1には、オーナメント10と導光体22との間隔の大きさに応じてオーナメント10の発光領域10aの外表面の輝度を調整する表面輝度調整部が備えられている。この表面輝度調整部が備えられていることで、オーナメント10を透過する光量を上記の間隔に応じて変わり、当該間隔の相違に起因して生じる発光領域10aでの発光ムラを抑えることが可能となる。つまり、本実施形態では、平板状の導光体22との間隔が一定でない曲板状のオーナメント10を備える構成において、発光領域10aの外表面各部での輝度を均一にすることが可能である。
【0043】
ここで、発光領域10aの外表面における輝度を調整する方法としては、下記の4ケースが挙げられる。
(1)ランプ21からの入射光のうち、導光体22のプリズム部22dにて反射する反射光の光量を調整するケース
(2)オーナメント10において拡散する光の光量を調整するケース
(3)光源ユニット20からの光のうち、吸収される分の光量を調整するケース
(4)光源ユニット20からの光のうち、遮光される分の光量を調整するケース
以下、各ケースについて説明する。
【0044】
(1)反射光の光量を調整するケース
本ケースは、表面輝度調整部の一つとして反射光調整部が導光体22に設けられているケースである。反射光調整部としては、導光体22の裏面に形成された切込み部からなる複数のプリズム部22dが挙げられる。以下、反射光調整部としてプリズム部22dを利用する場合を例に挙げて説明する。
【0045】
先ず、
図4に示す、プリズム部22dの角度a、高さd及びピッチpについて説明する。複数のプリズム部22dの断面V字の頂角の角度aは、90度以上、120度以下に形成されている。このような角度aでプリズム部22dを形成する理由としては、角度aが狭角過ぎる場合、プリズム部22dの断面V字の溝が金型に食いつき、離型性が低下するためである。一方、角度aが広角過ぎる場合、プリズム部22dで全反射した光が導光体22の出射面22aにおける臨界角に対し広角となるため導光体22から出射する量が少なくなるためである。
【0046】
プリズム部22dの高さdは、高くするほど光の反射量は大きくなり、高さdを低くするほど光の反射量は小さくなる。本実施形態に係るプリズム部22dの高さdは、0.075mm以上、0.3mm以下の範囲となるように設定されている。高さdがこのような範囲となるように設定されている理由としては、高さdが0.3mmを超えると、成形時に、プリズム部22dと金型との接触量が大きくなることによって離型性が低下し、プリズム部22dの成形時にヒケが生じる場合に、高さdが0.075mm未満であると、所望の高さdに形成することが困難となり成形転写性が低下するためである。
【0047】
特に、プリズム部22dの高さdは、
図5に示すように、ランプ21からの距離に応じた光の減衰を考慮して、ランプ21から離れる程基本的に高くなるように形成されている。具体的には、本実施形態におけるプリズム部22dは、導光体22におけるランプ21から近い側の領域Aにあるプリズム部22dの高さdaが、0.075mm、導光体22の中央の領域Bにあるプリズム部22dの高さdbが、0.15mm、導光体22におけるランプ21から遠い側の領域Cにあるプリズム部22dの高さdcが、0.27mmとなるように形成されている。
【0048】
<ランプ21からの距離とプリズム部22dの高さdとの関係について>
このように、ランプ21からの距離に応じてプリズム部22dの高さdが設定されている理由を次に述べる。例えば、領域A、領域B及び領域Cにあるプリズム部22dの高さdが同じである場合、入射光が、領域Aのプリズム部22dによってオーナメント10側に反射することで、領域Bのプリズム部22dに到達する光量は少なくなる。さらには、領域Cのプリズム部22dに到達する光量は、領域A及び領域Bよりもランプ21から離間しているため少なくなる。これにより、プリズム部22dによって反射して導光体22から出射される光が均一性を有しないものとなるため、ランプ21から離れた領域におけるプリズム部22dの高さを高くする必要がある。
【0049】
具体的には、領域Bにあるプリズム部22dの高さdbは、領域Aにあるプリズム部22dの高さdaよりも高く形成されている。このようにプリズム部22dが形成されていることで、その高さdaと高さdbの差の分、領域Bにあるプリズム部22dにおけるランプ21からの入射光に接触する面積が、領域Aにあるプリズム部22dにおけるその面積よりも増える。このようにして領域Aと領域Bとから反射する光量を略同じにすることができる。
同様に、領域Cにあるプリズム部22dの高さdcは、領域Bにあるプリズム部22dの高さdbよりも高く形成されている。このようにプリズム部22dが形成されていることで、その高さdbと高さdcの差の分、領域Cにあるプリズム部22dにおけるランプ21からの入射光に接触する面積が領域Bにあるプリズム部22dにおけるその面積よりも増える。このようにして、導光体22の領域A、領域B及び領域Cからから出射する光量を略均一にすることができる。
【0050】
プリズム部22dによって反射する光量を略均一にするため、上記のように、ランプ21からの距離に応じてプリズム部22dの高さdを調整するようにして、プリズム部22dによって反射する光量を略均一にすることの他に、プリズム部22dのピッチpを変えることによって、反射する光量を略均一にすることもできる。
【0051】
プリズム部22dのピッチpは、小さい場合には、単位面積当たりの本数(個数)が多くなり、大きい場合には、単位面積当たりの本数(個数)が少なくなる関係にある。ピッチpは、1.68mm以上、13.21mm以下の範囲で設定されており、
図5に示すように、ランプ21から離れる程基本的に小さくなるように設定されている。具体的には、本実施形態におけるプリズム部22dは、領域Aにある隣接するプリズム部22dのピッチpaが、13.2mm、領域Bにある隣接するプリズム部22dのピッチpbが、4.2mm、領域Cにある隣接するプリズム部22dのピッチpcが、1.7mmとなるように形成されている。
【0052】
<ランプ21からの距離とプリズム部22dのピッチpとの関係について>
このように、ランプ21からの距離に応じてプリズム部22dのピッチpが設定されている理由を次に述べる。上記のように、領域A、領域B及び領域Cにあるプリズム部22dの高さd及び隣接するプリズム部22dのピッチpが同じである場合、プリズム部22dによって反射して導光体22から出射される光は、均一性を有しないものとなる。
【0053】
導光体22からの光の出射が略均一となるように、領域Bにある隣接するプリズム部22dのピッチpbを領域Aにある隣接するプリズム部22dのピッチpaよりも小さくし、領域Aよりも領域Bの単位面積当たりのプリズム部22dの数を増やすようにする。このようにすることで、領域Aと領域Bとにおける反射する光量を略同じにすることができる。
【0054】
同様に、領域Cにある隣接するプリズム部22dのピッチpcを領域Bにある隣接するプリズム部22dのピッチpbよりも小さくし、領域Bよりも領域Cの単位面積当たりのプリズム部22dの数を増やすようにする。このようにすることで、領域Aと領域Bとにおける反射する光量を略同じにすることができる。このようにして、導光体22の領域A、領域B及び領域Cから出射する光量を略均一にすることができる。
【0055】
上記のように、プリズム部22dの高さdと隣接するプリズム部22dのピッチpとから構成される光の反射量に係るパラメータは、導光体22の長さや厚みに応じて、いずれか一方のパラメータを調整するようにしてもよいし、双方のパラメータを調整するようにしてもよい。
【0056】
また、領域Aと領域Bと領域Cとに区分けして、領域ごとに各パラメータを調整したが、区分けする領域をより細分化したり、また、各領域に区分けせずに漸次にパラメータを調整するようにしてもよい。
【0057】
上記には、プリズム部22dの高さd、及び隣接するプリズム部22dのピッチpをランプ21からの距離に応じて変えることで、導光体22を均一に発光させることについて説明した。
オーナメント10の発光領域10aと導光体22の出射面22aとが平行に設けられている場合には、導光体22から光が均一に出射することによって、発光領域10aから光が均一に出射することとなる。
しかし、
図6(a)のVIB−VIB断面図である
図6(b)に示すように、オーナメント10が内反りしており、オーナメント10の発光領域10aと導光体22とが平行に配置されていない場合には、発光領域10aから出射する光量の均一性が保てない。
そこで、次に、オーナメント10と導光体22との距離を考慮してオーナメント10を均一に発光させることについて説明する。
【0058】
本実施形態において、オーナメント10及び光源ユニットから構成される発光オーナメント1をドアライニング本体2に取り付けた状態で、導光体22におけるランプ21の近傍の領域A及び遠方の領域Cは、
図6(b)に示すように、中央の領域Bに比べてオーナメント10と離れている。換言すると、導光体22の領域Bは、領域A及び領域Cよりもオーナメント10と近接している。
【0059】
このため、導光体22の領域A,Cに対向するオーナメント10の部位から出射する光量は、導光体22からの間隔が大きい分光が減衰することで、小さくなる。当然、導光体22の領域Bに対向するオーナメント10の部位から出射する光量は、導光体22からの間隔が小さいために大きくなる。このことを考慮して、各領域A、領域B及び領域Cにおけるプリズム部22dの高さd及びピッチpを調整する。
【0060】
<オーナメント10と導光体22との間隔と、プリズム部22dの高さdとの関係について>
図7は、ランプ21からの距離とプリズム部22dの高さdの対応を示す図である。なお、
図7に示された仮想線dxは、プリズム部22dとオーナメント10との間隔を考慮せずにランプ21からの距離のみに応じてプリズム部22dの高さdを線形的に変化させた線であり、本実施形態に係るプリズム部22dの高さdと対比するための線である。また、
図8は、ランプ21からの距離と隣接するプリズム部22dのピッチpの対応を示す図である。
【0061】
図7に示すように、オーナメント10との間隔が小さい領域Bにあるプリズム部22dの高さdbは、仮想線dxで示されるプリズム部22dの高さよりも低い。領域Bにあるプリズム部22dがこのように形成されていることで、領域Bにおけるプリズム部22dによって反射して導光体22から出射する光量が抑制される。このように、領域Bにおいて導光体22から出射する光量は抑制されるが、オーナメント10が他の領域A及び領域Cと比較して導光体22に近接して設けられているため、オーナメント10から出射する光量は均一となる。
【0062】
なお、領域Aにおけるプリズム部22dの高さdaは、領域Bとの境界におけるプリズム部22dの高さdbと等しい高さである約0.075mmで、均一に形成されている。このように、領域Aにおけるプリズム部22dの高さdaが均一に形成されているため、ランプ21の近傍側ではプリズム部22dへの光の到達量が大きくなり、領域Bの境界側では、プリズム部22dへの光の到達量が小さくなる。よって、領域A内におけるプリズム部22dによって反射して出射する光量の均一性が保てなくなる。そこで、次に説明する領域Aにおける隣接するプリズム部22dのピッチpを調整することによって、出射する光量の均一性を保つようにする。
【0063】
<オーナメント10と導光体22との間隔に応じて形成されているプリズム部22dの高さdaに応じたプリズム部22dのピッチの調整について>
図8に示すように、領域Aにおける隣接するプリズム部22d間のピッチpaは、ランプ21の近傍側で大きく、領域Bの境界側では小さく設定されている。領域Aにあるプリズム部22dがこのように形成されていることで、プリズム部22dに到達する光に対して反射する光量がランプ21の近傍側において小さくなり、領域Bの境界側では大きくなる。これによって、プリズム部22dから出射する光量を略均一にでき、導光体22を介してオーナメント10から出射する光量(面輝度)を均一にすることができる。
【0064】
なお、オーナメント10と導光体22が近接する領域である領域Bにおいては、プリズム部22dの高さdbを仮想線dxによるプリズム部22dの高さよりも低くすることによって、反射する光量を抑えて、オーナメント10から出射する光量を領域A〜Cに亘って均一にするようにしたがこれに限られない。
【0065】
例えば、オーナメント10と導光体22が近接している領域である領域Bにおいては、隣接するプリズム部22d間のピッチpの調整を基準として、具体的には、領域Bにおいてピッチpbを大きくすることで、反射する光量を抑えるようにしてもよい。逆に、オーナメント10と導光体22が離間している領域である領域A,Cにおいては、ピッチpa,pcを小さくすることで、反射する光量を増加させるようにしてもよい。さらには、プリズム部22dの高さd及び隣接するプリズム部22dのピッチpの双方を調整することによって、オーナメント10と導光体22との間隔の違いによって生じる光量の増減を調整して、オーナメント10から均一に光を出射させるようにしてもよい。
【0066】
また、上記実施形態においては、1個の導光体22に対して、導光体22の一端部に対向するように1個のランプ21が配設されているものとして説明したが、例えば導光体22の両端部に対向するように2個、又はそれ以上のランプ21を設けるようにしてもよく、その数を限定するものではない。このような場合であっても、複数のランプ21から出射する光が合成されることによって算出される導光体22の各位置における光量と、導光体22とオーナメント10との間隔とを考慮して、プリズム部22dの高さd及びピッチpを設定するようにすればよい。
【0067】
<変形例1>
上記実施形態に係るオーナメント10は、ランプ21からの光の指向方向に沿って端部側の領域A,Cが導光体22から離間して形成され、中央の領域Bが導光体22に近接して形成されているものとして説明したが、このような形状に限定されない。
例えば、
図9に示すような、ランプ21からの光の指向方向に沿って導光体22における端部側の領域D,Fから近接して形成され、中央の領域Eが導光体22に離間して形成されているオーナメント110であってもよい。このようなオーナメント110であっても、領域Eにおいて、導光体22とオーナメント110とが近接する間隔で配置された場合におけるプリズム部22dの密度及び高さと比較して、高い密度及び高い高さの少なくとも一方に適合するようにプリズム部22dが形成されていればよい。
【0068】
<変形例2>
上記実施形態に係るプリズム部22dは、
図3A、
図4及び
図10(a)に示すように、断面V字形の溝状で形成されているものであれば、オーナメント10に向かって反射する光量が大きくなるため好ましいが、これに限定されない。例えば、反射部として機能するものとして、
図10(b)に示すように、断面U字形の溝状に形成されたプリズム部22e、底が短辺となる断面台形の溝状に形成されたプリズム部22fを用いるようにしてもよい。このように形成されたプリズム部22e及びプリズム部22fは、これらを形成するための型の隅の角度が鈍角となるため、プリズム部22e及びプリズム部22fを構成する溝が型に食いつくのを防ぎ、プリズム部22dと比べて離型性が良好である。
【0069】
<変形例3>
また、反射部を構成するものとして、溝状に形成されたプリズム部22d,22e,22fを例に挙げたが、これに限られず、
図11に示すドット状に形成されて点在する凹部22gであってもよい。
【0070】
凹部22gは、プリズム部22d,22e,22fと同様に、導光体22の外面、換言すると、オーナメント10側に対して逆側の面に形成されている。凹部22gは、プリズム部22d,22e,22fと同様に、高い高さ、又は高い密度(単位面積当たりの個数)であれば反射する光量が大きくなる。このため、凹部22gは、プリズム部22d,22e,22fと同様に、基本的に、ランプ21から離れた位置に形成されているもの程、換言すると、領域Aよりも領域B、領域Bよりも領域Cにある凹部22g程、高い密度及び高い高さの少なくとも一方に適合するように形成されている。
【0071】
さらに、凹部22gは、導光体22とオーナメント10との間隔が大きければ、高い密度及び高い高さの少なくとも一方に適合するように形成され、導光体22とオーナメント10との間隔が小さければ、低い密度及び低い高さのいずれか一方に適合するように形成されている。このようにして、導光体22から出射する光量を調整することにより、オーナメント10から均一な光を出射することができる。
【0072】
(2)拡散光の光量を調整するケース
本ケースは、表面輝度調整部の一つとしての拡散光調整部が設けられているケースである。拡散光調整部としては、例えば、オーナメント10の裏面(発光領域10aの外表面とは反対側に位置する面)に形成された凹部又は凸部、具体的にはシボ加工によって形成される拡散シボが有効である。そして、導光体22とオーナメント10との間隔の大きさに応じて拡散シボの大きさや単位面積当たりの個数を変えることにより、オーナメント10において拡散する光量が調整され、オーナメント10の発光領域10aを均一に発光させることが可能となる。
【0073】
その他、公知の光拡散シートを拡散光調整部としてオーナメント10の裏面に貼り付けることとしてもよい。かかる構成では、導光体22とオーナメント10との間隔の大きさに応じて拡散率が変わるように上記の光拡散シートを構成すれば、発光領域10aを均一に発光させることが可能となる。
【0074】
さらにまた、オーナメント10内に散光材料が含有されている構成であれば、当該散光材料を拡散光調整部として利用することが可能である。すなわち、導光体22とオーナメント10との間隔の大きさに応じて散光材料の含有率が変化する構成であれば、発光領域10aを均一に発光させることが可能となる。
【0075】
(3)吸収光の光量を調整するケース
本ケースは、表面輝度調整部の一つとしての吸収光調整部が設けられているケースである。吸収光調整部としては、例えば、オーナメント10内に含有されている黒色顔料が利用可能である。すなわち、導光体22とオーナメント10との間隔の大きさに応じてオーナメント10中の黒色顔料の含有率が変化する構成であれば、オーナメント10各部で光吸収量が調整される結果、発光領域10aを均一に発光させることが可能となる。
【0076】
同様に、光源ユニット20を保持するホルダ23は、吸収光調整部として機能する。具体的に説明すると、ホルダ23中、導光体22を囲んでいる枠壁24a及び底壁24eの少なくとも一方の着色の明暗度合いに応じて、導光体22から出射された光の吸収量が変化する。この事を利用し、導光体22とオーナメント10との間隔の大きさに応じて枠壁24a及び底壁24eの少なくとも一方の着色の明暗度合いを変えれば、光吸収量が調整される結果、発光領域10aを均一に発光させることが可能となる。
【0077】
その他、公知の光拡散シートを拡散光調整部としてオーナメント10の裏面に貼り付けることとしてもよい。かかる構成では、導光体22とオーナメント10との間隔に応じて拡散率が変わるように上記の光拡散シートを構成すれば、発光領域10aを均一に発光させることが可能となる。
【0078】
さらにまた、オーナメント10内に散光材料が含有されている構成であれば、当該散光材料を拡散光調整部として利用することが可能である。すなわち、導光体22とオーナメント10との間隔に応じて散光材料の含有率が変化する構成であれば、発光領域10aを均一に発光させることが可能となる。
【0079】
(4)遮光される分の光量を調整するケース
本ケースは、表面輝度調整部の一つとして遮光調整部が設けられているケースである。遮光調整部とは、光源ユニット20からの光のうち、遮光される分の光量を調整するものである。遮光調整部についてより詳しく説明するため、以下、車両用発光部品の第二実施形態を説明する。
【0080】
第二実施形に係る車両用発光部品は、車両用ドアライニングR用の発光オーナメント41である。なお、車両用ドアライニングRを構成する部品としては、
図12に示すように、発光オーナメント41の他、ポケットトリムやドアアームレスト等があり、これらはドアベースの内側に取り付けられる。ドアベースは、アッパーベースとロアベースとが上下方向に組み合わさることによって構成されており、ロアベースの内側面に発光オーナメント41が取り付けられている。
【0081】
なお、車両用ドアライニングRにおいて、ドアインナパネルとロアベースとの間には、収納空間が形成され、かかる収納空間には、不図示の側面衝突時に衝撃を吸収する側突パットやスピーカ等が収められている。ここで、側突パットは、
図12中、記号M1が付された範囲に配置されており、スピーカは、
図12中、記号M2が付された範囲に配置されている。また、ドアアームレストの端部の上面(
図12中、記号M3が付された範囲)には、ウィンドウの開閉を調整するために操作されるスイッチパネルが設けられている。さらに、ロアベースとドアアームレストの前端部との間(
図12中、記号M4が付された範囲)には、乗員がドアを開閉するために手を入れる空洞(プルポケット)が形成されている。
【0082】
第二実施形態に係る発光オーナメント41も、
図13に示すように、車両用ドアの照明装置として機能し、
図14に図示したように、ドアライニング本体42に設けられた収容ケース43に取り付けられる。収容ケース43は、発光オーナメント41の外形形状に沿って形成された枠体であり、
図15に示すように、車室側が開口しており、開口の反対側に底壁43aを有する。そして、発光オーナメント41は、上記の開口から収容ケース43内部に嵌め込まれることによりドアライニング本体42に取り付けられる。なお、発光オーナメント41を収容ケース43内に嵌め込んだ状態で固定しておくために、
図15に示すように、収容ケース43の底壁43aには複数の穴が形成されている。そして、
図16に示すように、上記の穴にビス44を挿入したり、発光オーナメント41(厳密には、ホルダ63)の裏面から突出形成された突出爪45を上記穴に嵌合させたりする等して、発光オーナメント41が収容ケース43に対して固定される。
【0083】
第二実施形態に係る発光オーナメント41の構成について詳しく説明すると、発光オーナメント41は、ドアライニング本体42に取り付けられる。具体的に説明すると、
図17に示すように、オーナメントユニット50の外縁部がドアライニング本体42、より詳しくは、収容ケース43に形成された開口の淵部に接合するようになる。
【0084】
発光オーナメント41は、
図14に示すように、オーナメントユニット50と照射体としての光源ユニット60とを組み合わせて構成されるモジュールである。オーナメントユニット50は、樹脂基材であるオーナメント基材150と、オーナメント基材150の表面(一面)に覆設された加飾フィルム151からなり、
図13に示すように発光する発光領域50aと、発光しない非発光領域50bとを有する。発光領域50a及び非発光領域50bは、いずれも、オーナメント基材150とオーナメント基材150に配設された加飾フィルム151とからなる。すなわち、発光領域50a及び非発光領域50bの双方は、層構造となっており、オーナメント基材150の表面に加飾フィルム151が貼付された構造となっている。
【0085】
より詳しく説明すると、第二実施形態に係るオーナメント基材150は、弓形に屈曲し、その表面には曲面部を備えており、当該曲面部に追従するように加飾フィルム151が貼り付けられている。なお、第二実施形態ではインモールド成形により加飾フィルム151をオーナメント基材150に貼り付けることとしたが、それ以外の方法としては、フィルムインサート成形、真空圧空成形あるいは水転写等の方法も利用可能である。
【0086】
また、オーナメントユニット50は、光源ユニット60の前方に配置される。より具体的に説明すると、オーナメントユニット50は、後述するホルダ63の前方からホルダ63に近付けて組み付けられる。なお、オーナメントユニット50をホルダ63に組み付ける方法としては、スナップフィット方式や凹凸嵌合方式等が好適である。
【0087】
光源ユニット60は、
図18に示すように、光源であるランプ61と、出射面62aを備えた導光体62と、ランプ61及び導光体62を保持するホルダ63とを有する。導光体62は、所定方向に長い導光板により構成されている。また、光源ユニット60において、ランプ61と導光体62とは、互いに隣り合う位置に配置されている。より具体的に説明すると、ホルダ63には、
図19に図示した長尺ケース状の導光体保持部64が形成されており、さらに、導光体保持部64の長手方向一端部には
図20に図示したランプ保持部65が形成されている。導光体保持部64には導光体62が組み付けられ、ランプ保持部65にはランプ61が組み付けられる。この結果、導光体62の長手方向一端部と隣り合う位置にランプ61が配置されるようになる。
【0088】
そして、ランプ61が点灯すると、当該ランプ61からの光は、導光体62の長手方向一端に入射され、導光体62内を拡散しながら導光体62の長手方向他端に向かって進行する。これにより、導光体62の出射面62aから光が出射面62aの前方に向かって出射されるようになる。
【0089】
次に、加飾フィルム151について説明する。加飾フィルム151は、オーナメント基材150に対してインモールド成形され、その柄や質感が熱転写されるものである。概念的には、
図21に示すように、少なくとも、遮光層151b、金属蒸着層151d、ヘアライン柄層151f/チント着色層151e、トップコート層151gが、アンカー層を各々適宜挟持して積層された状態でオーナメント基材150に転写されている。
【0090】
ここで、
図22を参照しながら、インモールド加工前の加飾フィルム151の詳細な構成について説明する。加飾フィルム151は、
図22に示すように、大きくは転写層151Aと剥離層151Bとで構成されている。転写層151Aは、オーナメント基材150に近い側から、接着層151a、遮光層151b、金属蒸着層151d、柄・着色層151c、トップコート層151gが積層されて構成されている。なお、本実施形態においては、柄・着色層151cは、チント着色層151e、ヘアライン柄層151fが積層された2層構成である。ただし、この柄・着色層151cは、必ずしも必要な構成ではなく、省略することもできる。また、剥離層151Bは、離型フィルムで構成されており、転写層151A転写後に剥離されるものである。ちなみに、遮光層151bは、透過光調整層に相当し、金属蒸着層151dや柄・着色層151c(具体的にはチント着色層151e、ヘアライン柄層151f)は、装飾層に相当する。
【0091】
なお、本実施形態において、加飾フィルム151の肉厚は、約25〜370μmに設定され、
図22には、その具体的な例示品の実測値として、約5〜70μmの転写層151Aと約20〜300μmの剥離層151Bとを有する構成例が示されている。なお、
図22は、積層構造を説明するための構成概念図であり、本図の層厚の割合と実際の層厚値とは整合していない。
【0092】
本実施形態においては、金属蒸着層151dとしては、アルミニウム膜を使用している。また、ヘアライン柄層151fとしては、ヘアラインの細さを0.2mmに設定している。かかる値は、現在のグラビア印刷で実現可能な最小限度の値であるが、今後の技術により可能となれば、上記の値よりも細い設定としてもよい。そして、チント着色層151eは、本実施形態においては、標準的なサテンシルバー色が選択されており、これにより、金属蒸着層151dの質感をより活かすことができる。
【0093】
なお、インモールド成形後は、転写層151Aは、オーナメント基材150の表面に転写されて残り、剥離層151Bは取り除かれる。そのため、完成品においては、トップコート層151gが、最表面に配設されることとなる。
【0094】
また、遮光層151bは、2層構造となっている。これは、遮光層印刷時のピンホール不良を防止するためである。さらに、遮光層151bには切欠き部K1が形成されている。切欠き部K1は、透過部に相当し、発光させたい部分に発光させた任意の形状に形成される。一方、遮光層151bのうち、切欠き部K1以外の場所(以下、「遮光部K2」と記す)は、非透過部に相当し、光源ユニット60からの光を透過させない。したがって、切欠き部K1の部分のみが光源ユニット60からの光を透過させることになる。つまり、切欠き部K1が発光領域50aとなり、このため、車両室内からは、切欠き部K1の形状に発光した発光体を視認できることとなる。
【0095】
そして、遮光層151bは、第二実施形態において遮光調整部として機能し、光源ユニット60からの光のうち、遮光される分の光量を調整する。具体的に説明すると、本実施形態に係る遮光層151bは、導光体62とオーナメント基材150との間隔の大きさに応じて遮光度合いが変わるように構成されている。これにより、発光領域50aを均一に発光させることが可能となる。
【0096】
また、切欠き部K1と遮光部K2との境界部分に対しては、グラデーション印刷処理(グラデーション処理の一例)が施されている。つまり、
図23に示すように、第二実施形態においては、切欠き部K1と遮光部K2との境界部分(縁部分)から、5mm幅部分において、切欠き部K1に向かって徐々に黒色が薄くなるように(つまり、境界部に近接するに従い徐々に色彩濃度が薄くなるように)グラデーション印刷処理が施されている。このため、ぼんやりとしたやわらかい照明効果を演出することが可能となり、意匠性、特に発光時における意匠性が向上する。
【0097】
さらに、第二実施形態においてオーナメント基材150には黒色顔料が混練されている。これは、加飾フィルム151の薄肉化に伴う改良策である。さらにまた、製品として成形された状態の加飾フィルム151では、製品形状により生じる絞りの大小(つまり、張力の大小)に応じて、各箇所の膜厚が異なっている。つまり、曲面形状の頂点付近では、フラットに近い部分よりもフィルム張力が大きくなり、このため、曲面形状の頂点付近ではフラットに近い部分よりも膜厚が薄くなる。このような現象により、膜厚が大きい場合には、発光ムラを誘起する可能性がある。
【0098】
以上のように第二実施形態では加飾フィルム151の膜厚を小さくすることとしたが、膜厚が小さい場合には、切欠き部K1と遮光部K2との境界部分が透けて視認される可能性がある。このため、第二実施形態ではオーナメント基材150に黒色顔料を混合してオーナメント基材150と遮光層151bとの色差を近似させている。これにより、切欠き部K1と遮光部K2との境界部分が透けて視認されるのを有効に抑えることが可能となる。かかる内容については、後に詳しく説明する。
【0099】
またさらに、オーナメント基材150に混練する拡散剤の量が多いと、加飾フィルム151の密着性が低下する可能性があるため、第二実施形態では、オーナメント基材150の裏面に拡散シボが形成されている。つまり、加飾フィルム151の高い密着性を確保するために、拡散剤の混練量を減少させ、その減少分の補填として、オーナメント基材150の裏面に拡散シボを形成することとした。これにより、オーナメント基材150への加飾フィルム151の密着性が向上する。なお、拡散シボについては、どのような方法で形成されていてもよいが、例えば、金型へのエッチングや、サンドブラスト等で形成されるとよい。また、拡散剤は、公知の材料が利用可能であるが、アクリル系の拡散剤が好適である。つまり、シリコン系拡散剤でも利用可能であるが、アクリル系拡散剤は、接着性の観点でシリコン系拡散剤よりも好適な材料となる。
【0100】
次に、
図24を参照しながら、第二実施形態に係る発光オーナメント41の製造方法について模式的に説明する。発光オーナメント41を製造するにあたっては、まず、
図24の(a)に示すように加飾フィルム加熱工程を行う。この工程では、第一金型T1に配設されたクランプT2に加飾フィルム151を固定するフィルムセット工程と、ホットパックT3を使用して、この加飾フィルム151を加熱して軟化させる加熱軟化工程とが順に実行される。
【0101】
その次に、
図24の(b)に示すように真空成型工程を行う。この工程では、真空吸引を行い、型内を真空にして加飾フィルム151を、第一金型T1内壁形状に追従させる。次いで、
図24の(c)に示すように、射出成型工程を行う。この工程では、第二金型T4を第一金型T1側に移動させて型閉じし、軟化した樹脂をキャビティ内に充填した後、硬化させる。なお、本例においては、所謂ホットランナー形式を採用している。
【0102】
次に、
図24の(d)に示すように、離型剥離工程を行い、成形品を離型して、剥離層151Bを剥離する。なお、本例では、第一金型T1が固定型であり、第二金型T4が可動型である。また、本例では、紫外線照射機Uが備えられており、紫外線照射工程を行う。この工程では、転写が終わった転写層151Aの表面に紫外線が照射され、トップコート層151gが形成される。
【0103】
ちなみに、離型剥離工程では、
図25に示すような方法を使用することも可能である。
図25に示す例では、
図24の例とは異なり、固定型と可動型が反対になっている。つまり、第一金型T1が可動型であり、第二金型T4が固定型である。
【0104】
また、本例では、第一金型T1側に、加飾フィルム151の送り/巻き取り装置T5を配設している。この送り/巻き取り装置T5は、第一金型T1を上下に挟む位置に1個ずつ配設されるローラT6,T6と、検知センサT7を有して構成されている。ローラT6,T6は、加飾フィルム151の両端部の剥離層151Bを各々保持しており、加飾フィルム151は第一金型T1の開口側に渡されている。
【0105】
そして、検知センサT7で所定位置(絵柄が正しい位置に配設される位置)を検知して静止し、この状態でクランプT2により加飾フィルム151が固定される。この工程がフィルムセット工程となる。その後、熱を加えて(必ずしもホットパックT3が必要なわけではなく、加熱方法はどのような方法であってもよい)加飾フィルム151を軟化させて、真空吸引により、加飾フィルム151を、第一金型T1内壁形状に追従させる。
【0106】
その次に、第一金型T1を第二金型T4側へと移動させて型閉じし、軟化した樹脂をギャップ内に充填し、その後、充填した樹脂を硬化させる。なお、本例においては、所謂ホットランナー形式を採用している。この工程が射出成形工程である。そして、離型して送り/巻き取り装置T5と共に第一金型T1が元の位置へと復帰させられると、剥離層151Bは追随して移動するため、転写層151Aから剥離して、転写層151Aがオーナメント基材150の表面に転写されて残る。この工程が離型剥離工程である。その後には、次の成形のため、新たな加飾フィルム151がローラT6,T6間に送られることとなる。
【0107】
また、上記例と同様に、紫外線照射機Uによる紫外線照射工程が実行される。この工程では、転写が終わった転写層151Aの表面に紫外線が照射され、トップコート層151gが形成される。そして、以上までの一連の工程が終了すると、発光オーナメント41の製造が完了することになる。
【0108】
次に、加飾フィルム151の薄肉化に関する検証結果、特に、延伸張力の影響を顕著にうける金属蒸着層151dに関する検証結果について説明する。なお、以下に説明する内容は、金属蒸着層151dとしてアルミニウム膜を使用した場合の検証結果となっている。金属蒸着層151dの展開率(「引張展開率」に相当)と外観状態との対比表を表1に示す。
【0110】
表1に示すように、展開率が60%を超えると、金属蒸着層151dに亀裂が発生し、展開率が10%を超え60%までの範囲であると、亀裂まではいかないものの、クラックが発生する。また、展開率が10%を超えると、白化することも確認された。つまり、展開率が10%を超えると、マイクロクラックが発生し、外観品質上好ましくないことから、展開率を10%以下、好ましくは安全をみて6%以下に設定するのが好ましいという検証結果が得られた。
【0111】
次に、実際の発光オーナメント41をサンプルとして、加飾フィルム151の配置に関する解析結果について説明する。かかる解析は、一般的に使用される「樹脂・複合材成形解析ソフト」を用いて行われた。具体的には、金型のキャビティ面の形状と加飾フィルム151の物性とを入力し、型内で真空引きされる加飾フィルム151の様子をシミュレーションし、加飾フィルム151の厚さがどのように変化するかを数値化して確認した。さらに、上記のシミュレーションによる展開率予測結果(以下、単に「CAE結果」と記す)と実際の展開率との相関性についての検証を行った。展開率の計測については、
図26に示す通り、計算領域を6領域に分けて、各領域で展開率を測定した。一方、成形品の実測方法の具体例については、
図27に示す通りである。かかる実測方法では、1mm方眼付フィルムを使用し、成形後、延伸した方眼の面積を計測することで、成形前の状態から何%展開したかを算出した。以上の手順により得られた解析結果を表2に示す。
【0113】
表2に示すように、第二実施形態に係る発光オーナメント41においては、全て、展開率が6%以下で推移しており、この6%以下の範囲では、クラックが発し得ないことが検証できた。以上のようなシミュレーション結果をオーナメント基材150に適用し、設計に反映することが可能となる。つまり、オーナメント基材150の形状設計を行うにあたり、深い絞り形状に対しては、加飾フィルム151にクラックが入らずに転写できるかどうかを予測することができるようになる。換言すれば、本シミュレーションを行うことで展開率6%を超える箇所を洗い出し、事前に設計変更を行うことが可能となる。そして、シミュレーションの結果、クラックが発生しないことを確認した上で、実際の成形段階へと移行することが可能である。また、実際の展開率との相関性においても、絶対値に若干の差はあるものの誤差範囲であり、CAE結果と一致しており、外観品質においても問題が生じないという検証結果が得られた。
【0114】
なお、本実施形態においては、金属蒸着層151dとしてアルミニウム膜を使用したが、これに限られることはなく適宜選択が可能であり、例えばスズ(Sn)膜やインジウム(In)膜が好適に使用される。スズ膜やインジウム膜が使用される場合は、限度を超えた引張展開率においては、クラックは発生せずに亀裂が生じる。このため、金属蒸着層151dとしてスズ膜を利用する場合には引張展開率は50%以下、インジウム膜を利用する場合には引張展開率は130%以下とであると品質に影響を及ぼすことを回避することが可能となる。
【0115】
次に、
図28を参照しながら加飾フィルム151のハーフミラー効果について説明する。なお、
図28の(b)は、
図28の(a)のA−A線断面説明図である。
図28に示すように、金属蒸着層151dは、加飾フィルム151に対してハーフミラー効果を付与する。ハーフミラー効果とは、肉厚約0.01〜0.1μmの薄い金属膜により付与される効果である。ハーフミラー効果が付与されることで、車室内が明るい状況下では、周囲からの光を反射するため、金属蒸着層151dの質感(つまり、金属調の柄)が視認され、車室内が暗い状況下では、光源ユニット60からの光が透過して面発光照明として視認されることとなる。このように第二実施形態では金属蒸着層151dを採用することでハーフミラー効果を付与することができ、機能性を有するとともにより意匠性の高い発光オーナメント41を提供することが可能となる。
【0116】
なお、メタリック風の色合いや光沢感を帯びさせてハーフミラー効果を得る方法としては、金属材料の蒸着以外にも考えられ、例えば、銀鏡塗装や金属フレーク入り塗料の塗装を施すことや、屈折率が異なるPETフィルムを加飾フィルム151の表側に多重積層することが挙げられる。
【0117】
次に、加飾フィルム151のうち、グラデーション印刷処理が施された部分、すなわち、グラデーション部について説明する。第二実施形態では、遮光層151b中、切欠き部K1と遮光部K2との境界部にグラデーション部が設けられている。なお、グラデーション部では、互いに色彩濃度が異なる領域が、色彩濃度が徐々に変わるように配置されている。そして、第二実施形態では、グラデーション部中、展開率がより高くなった領域は、展開率がより低くなった領域よりも幅広となっている。これにより、加飾フィルム151の装飾層における光線透過率の変化や損傷の発生をより効果的に抑制することが可能となる。
【0118】
さらに、第二実施形態では、加飾フィルム151がオーナメント基材150の曲面部に追従するように貼り付けられている。このとき、グラデーション部は、加飾フィルム151中、展開率が最大となる部分から外れた位置に設けられている。これにより、加飾フィルム151の装飾層における光線透過率の変化や損傷の発生をより一層効果的に抑制することが可能となる。
【0119】
<<加飾照明の機能性と発光領域の質感とを高めるための構成について>>
第二実施形態では、比較的膜厚の小さい加飾フィルム151を用いることとしたが、膜厚が小さい場合には、透過部(切欠き部K1)と非透過部(遮光部K2)との境界部分が透けて視認される可能性がある。このため、第二実施形態では、オーナメント基材150に黒色顔料を混合してオーナメント基材150と遮光層151bとの色差を近似させている。かかる構成について、以下、より詳しく説明する。なお、以下では、新たな実施形態(第三実施形態)を説明することとするが、第三実施形態は、車両用発光部品各部の形状等の面で上述の実施形態とは異なるものの、基本構成については上述の実施形態と同様である。このため、以下では、第三実施形態に係る車両用発光部品の構成のうち、上述した実施形態と異なる点を中心に説明することとする。
【0120】
第三実施形態に係る車両用発光部品は、上述した実施形態と同様、車両用ドアライニングR用の発光オーナメント71である。車両用ドアライニングRを構成する部品としては、
図29に示すように、発光オーナメント71の他、ポケットトリム7やドアアームレスト8等があり、これらはドアベース6の車内側に取り付けられる。また、ドアインナパネルとドアベース4との間に、収納空間が形成され、この収納空間には、側面衝突時に衝撃を吸収する不図示の側突パットやスピーカ等が収められている。ここで、側突パットは、
図29中、記号NT1が付された範囲に配置されており、スピーカは、
図29中、記号NT2が付された範囲に配置されている。また、ドアアームレスト8の後端部の上面であって、
図29中、記号NT3が付された範囲には、ウィンドウの開閉を調整するために操作されるスイッチパネルが設けられている。さらに、ドアベース6とドアアームレスト8の前端部との間であって、
図29中、記号NT4が付された範囲には、乗員がドアを開閉するために手を入れるプルポケットが形成されている。
【0121】
発光オーナメント71は、ドアベース4の車内側のうち、プルハンドル5と並ぶ部位に取り付けられており、夜間等、車室が暗くなった際に点灯する。なお、第三実施形態に係る発光オーナメント71は、
図30Aに示すように、車両の前後方向に沿って長いナイフ状の外形形状を有し、その下端部には、先端よりも幾分後側の位置から略三角形状に展開した発光領域71aが形成されている。そして、発光領域71aの車外側には光源が配置されており、この光源が点灯すると、
図30Bに示すように、発光領域71aが所定の輝度にて発光するようになる。一方、発光オーナメント1のうち、発光領域71aを除く部分には、発光しない非発光領域71bが形成されている。この非発光領域71bは、発光領域71aの上側で発光領域71aと隣り合い、発光オーナメント71の光源が点灯しても発光することがない。
【0122】
さらに、発光オーナメント71は、昼間の時間等、照明機能を要しない状況においてドアの意匠性を向上させるための加飾部品として機能する。そして、発光オーナメント71では、発光していない状態の発光領域71aが、非発光領域71bと同様の装いとなっている。すなわち、発光領域71aの車内側表面の装飾様式が、非発光領域71bの車内側表面の装飾様式と同様であり、具体的には、メタリック調に着色された表面となっている。ここで、装飾様式とは、表面の配色、模様、光沢、風合い等、表面に施された装飾処理によって現れる視覚的特性を意味する。以上のように、発光領域71aの車内側表面の装飾様式と、非発光領域71bの車内側表面の装飾様式とが同様であることにより、加飾部品としての統一感が生まれる結果、ドアの意匠性が向上することとなる。なお、本実施形態では、発光領域71a及び非発光領域71bの双方の車内側表面がメタリック調に着色されていることとしたが、例えば木目調やカーボン調になっていてもよく、それ以外にも、配色や模様が同様であることとしてもよい。
【0123】
また、発光オーナメント71は、
図32に示すように、オーナメントユニット80と、光源ユニット90とを有している。オーナメントユニット80は、車内側に露出するプレート状の部材であり、第二実施形態に係るオーナメントユニット50と同じ機能を有する。また、オーナメントユニット80のうち、発光しない部分は非発光領域71bであり、発光する部分である可発光領域80aは、発光領域71aの一部であり、発光領域71aのうち、光源ユニット90を除く部分に相当する。なお、オーナメントユニット80は、ビス止め及びスナップフィット係合により、ドアベース6の車内側表面に固定されている。
【0124】
光源ユニット90は、照射体に相当し、光源としてのランプ91と、ランプ91からの光を出射する出射面92aを備えた導光体92とを有している。そして、光源ユニット90は、ドアベース6とオーナメントユニット80との間に挟まれた位置に配置されている。具体的に説明すると、光源ユニット90は、オーナメントユニット80のうち、可発光領域80aの車外側、すなわちドアベース6との対向する面にスナップフィット係合によって組み付けられている。このように光源ユニット90が、ドアベース6とオーナメントユニット80との間に挟まれる位置に配置されているので、車両用ドアの内部のように限られた空間内において光源ユニット30をコンパクトに配置できる。
【0125】
オーナメントユニット80は、
図32及び
図33に示すように、可発光領域80aと非発光領域71bとを有する。可発光領域80a及び非発光領域71bは、いずれも、樹脂材料からなるオーナメント基材81と、オーナメント基材81の車内側表面に貼り付けられた加飾フィルム82と、からなる。可発光領域80a及び非発光領域71bの双方は、いずれも
図34に示すように積層構造となっており、オーナメント基材81の表面に加飾フィルム82を貼り付けた構造となっている。オーナメント基材81の表面には、加飾フィルム82を構成する意匠層82a及び遮光層82cを貼り付けるために塗布された接着層82fが形成されている。
【0126】
一方、
図33に示すように、オーナメントユニット80の裏面側にはボス83や係合突起84が突出形成されている。ボス83は、ドアベース6において対応する位置に形成されたボス穴6aに嵌合し更にビス止めされる。係合突起84は、ドアベース6において対応する位置に形成された嵌合穴6bに嵌合し更にドアベース6にスナップフィット結合する。なお、ボス83及び係合突起84は、オーナメントユニット80において可発光領域80aを外れた領域に設けられ、オーナメントユニット80の長手方向両端部に設けられている。このようにボス83や係合突起84が非発光領域71bに設けられていることで、可発光領域80aからの光の照射に干渉しないようにオーナメントユニット80をドアベース6に取り付けることが出来る。
【0127】
さらに、
図33に示すように、オーナメントユニット80の裏面にはリブ85が立設している。このリブ85は、オーナメントユニット80の剛性を確保するために設けられ、オーナメントユニット80の裏面を正面視したときに略台形型の輪郭をなすように無端状に形成されている。また、リブ85は、光源ユニット90がオーナメントユニット80に組み付けられた際に光源ユニット90を取り囲むようになる。これにより、車両用ドアの内部のように限られた空間内において光源ユニット90をよりコンパクトに配置することが可能となる。
【0128】
また、光源ユニット90がリブ85に取り囲まれた状態では、オーナメントユニット80のうち、光源ユニット90の前方に位置しリブ85に囲まれた部位にのみ、光源ユニット90からの光が当たるようになる。このようにリブ85は、オーナメントユニット80の剛性を確保するとともに、光源ユニット90からの光がオーナメントユニット80において光源ユニット90の前方に位置する部分以外に漏れるのを抑制している。なお、リブ85の上方部分は、オーナメントユニット80の裏面のうち、非発光領域71bに相当する部分から延出している。これにより、仮にオーナメントユニット80の裏面にリブ85を設けることでヒケが生じたとしても、当該ヒケを目立ち難くして加飾性の低下を抑制することが可能となる。
【0129】
オーナメント基材81は、透過体を構成する樹脂基材であって、透光性を有する白色系の樹脂材料に黒色顔料を添加してグレー色からなる樹脂成形品として形成されている。オーナメント基材81の樹脂材料としては、アクリロニトリルブタジエンスチレン樹脂(ABS)、ポリカーボネート樹脂(PC)、ポリメタクリル酸メチル樹脂(PMMA)などが利用可能である。オーナメント基材81の材料には、耐熱性、耐薬品性、耐衝撃性、耐燃焼性等を考慮して好適と考えられる材料を選定すれば良く、本実施形態ではPC樹脂が用いられている。オーナメント基材81を構成するPC樹脂材料の配合量を100としたとき、黒色顔料の配合割合が1以下に設定されるとよい。上記構成により、オーナメント基材81は、黒色と同系色のグレー色からなる樹脂成型品として形成され、光透過率を比較的高めに維持して可発光領域80aの所望の輝度を確保できる。
【0130】
可発光領域80aをなすオーナメント基材81は、
図32に示すように、その車外側に光源ユニット90が配置される構成となっており、光源ユニット90からの光を透過させるものである。オーナメント基材81は、散光材料を含有しており、オーナメント基材81を通過する光は、拡散されるようになる。その結果、光源ユニット90が有するランプ91が点灯すると、その光が可発光領域80aをなすオーナメント基材81中を拡散しながら透過するため、可発光領域80a全体を発光させることが可能である。散光材料としては、公知の光拡散剤が利用可能である。
【0131】
加飾フィルム82は、オーナメントユニット80に加飾性を付与するものであり、PMMA樹脂やポリエチレンテレフタラート樹脂(PET)からなる無色透明のフィルム基材に、表面処理によって順に遮光層82cと、意匠層82aとを積層形成して構成されており、透光性を有するフィルムである。すなわち、加飾フィルム82は、オーナメント基材81の車内側に露出し、オーナメント基材81を透過した光が透過可能な加飾積層体となっている。加飾フィルム82を構成する意匠層82aは、
図34及び
図35に示すように、真空蒸着処理によって形成された金属薄膜からなる金属層82bを備えている。その結果、オーナメントユニット80の車内表面側は、メタリック調の風合いを呈するように着色されている。意匠層82aを構成する金属層82bは、約10〜100nmの金属薄膜からなり、約90%程度の光反射率であって、約10%程度の光透過率を有している。その結果、昼間は、外光が意匠層82aで反射されることによって、発光オーナメント71が、意匠層82aに施された金属調のデザインで加飾されることとなる。一方、夜間では、光源ユニット90から照射された光がオーナメント基材81及び加飾フィルム82を透過して意匠層82aの金属調のデザインから透けて見える。
【0132】
意匠層82aについて詳しく説明すると、
図34に示すように、オーナメント基材81側から順に金属層82bと、金属の風合いを付与するチント層と、金属ヘアラインの風合いを付与するヘアライン印刷層と、表面物性を形成するUVハードコート層又は保護フィルムと、が積層形成されて構成されている。なお、チント層は、約1〜10μm程度のシルバー色の着色層からなり、チント処理によって、すなわち染料を加えて薄い色合いを付与する処理によって形成されている。ヘアライン印刷層は、約1〜10μm程度のヘアライン柄の層からなり、ヘアライン印刷処理によって形成されている。UVハードコート層又は保護フィルムは、約3〜30μm程度の厚さからなり、加飾フィルム82の膜強度を上げて、傷又は剥離を防止する目的で形成されている。
【0133】
加飾フィルム82を構成する遮光層82cは、透過光調整層に相当し、
図34に示すように、光源ユニット90から車内側に向けて照射された光を遮光する遮光部82dと、遮光部82dと隣り合う領域に配置され、光を透過する透過部82eとを併せもつ部分である。遮光層82cは、グラビア印刷等の印刷処理によってオーナメント基材81の面側に形成されている。このとき、遮光層82cは、印刷処理によって少なくとも2層以上積層されて形成されており、ピンホールの発生を抑制している。
【0134】
遮光部82dは、非透過部に相当し、
図36に示すように遮光層82cの中で非発光領域71bをなす部分である。遮光部82dは、印刷処理によってオーナメント基材81の面側に黒色系インクがベタ塗り印刷されて形成されており、黒色又は黒色と同系色に着色されている。遮光部82dとして黒色系インクがベタ塗り印刷された部分は、透光性を有さず、オーナメント基材81を透過した光を遮断する。その結果、発光オーナメント71が発光する間、非発光領域71bについては発光しないようになる。透過部82eは、遮光層82cの中で可発光領域80aをなす部分であり、中央部が略楕円状に抜かれたように形成されている。なお、透過部82eが透明となっている構成において、透明には無色透明のほか、若干白濁した半透明のような色味が付いた半透明が含まれるものとする。
【0135】
上記構成により、遮光層82cは、黒色系インクがベタ塗りされた遮光部82dと、黒色系インクが塗られていない透明色のままの透過部82eとが混在する構成となっている。このとき、
図35及び
図36に示すように未発光時に車内側から加飾フィルム82で覆われたオーナメントユニット80を見たときに、遮光部82dと透過部82eとの境界線が隠蔽されることで、発光領域の質感が高められている。具体的に説明すると、遮光部82dは、印刷処理によって黒色又は黒色と同系色に着色され、オーナメント基材81は、白色系の樹脂材料に黒色顔料を添加してグレー色に着色されており、遮光部82dの色調と、オーナメント基材11の色調とが同系色になっている。その結果、車内側から見たときに、
図35及び
図36に示すように意匠層82aを介して遮光部82dと、透明な透過部82e越しに見えるオーナメント基材81との境界線を隠蔽することができ、発光領域の質感が高められている。
【0136】
また、透過部82eと遮光部82dとの境界線をぼかしてオーナメントユニット80から照射される光をぼんやりと見せるために、透過部82eから離れるほど印刷濃度(表面濃度)が濃くなるように遮光部82dの印刷濃度にグラデーションを設けて形成するとよい。このようにすることで、透過部82eと遮光部82dとの境界線を隠蔽して、発光オーナメント71の発光領域の質感を一層高められると共に、発光照明をぼんやりとさせることができ、意匠性が向上する。
【0137】
さらに、加飾フィルム82の遮光部82dでは、オーナメント基材81を透過した光が透過できず、透過部82eのみでオーナメント基材81を透過した光が透過する。その結果、発光オーナメント71が発光する間、加飾フィルム82において透過部82eが位置する部分のみが発光するようになる。これにより、発光領域71aのうち、所定の部分のみを発光させることが可能となり、発光オーナメント71の照明効果がもたらす装飾性が向上する。さらにまた、光源ユニット90からの光は、オーナメントユニット80に向けて照射するにあたり、散光材料が含有されたオーナメント基材81を透過する。その結果、オーナメントユニット80から照射される光の照射範囲が広がり、散光材料が含有されていない場合と比較して、発光オーナメント71を中心として広範囲を照らしつつも、その照射輝度が照射範囲で略均一となっており良好な照明効果を奏することが可能になる。
【0138】
なお、上述の第三実施形態では、オーナメント基材81の表面に加飾フィルム82を貼り付けることで、オーナメント基材81の表面に加飾層(意匠層82a)を形成することとしたが、これに限定されることなく、例えば、オーナメント基材11の樹脂表面に対して直接、蒸着処理やミラーインク塗装等を施してもよい。ただし、加飾フィルム82を貼り付けて意匠層82aを形成する方が、光の透過部82eと遮光部82dとを自在に配置できる点において好適である。
【0139】
また、加飾フィルム82の意匠層82aにおける各層(すなわち、金属層12b、チント層、ヘアライン印刷層、UVハードコート層又は保護フィルム)の配置・構成については、
図34に示す内容に限定されることなく適宜変更可能である。さら、加飾フィルム82の金属層82bについては、真空蒸着処理によって形成される構成に限定されず、印刷処理、塗装処理、メッキ処理又は転写処理等の表面処理によって形成されてもよい。
【0140】
さらにまた、加飾フィルム82の遮光層82cについては、グラビア印刷等の印刷処理によって形成される構成に限定されず、塗装処理、蒸着処理、メッキ処理又は転写処理等の表面処理によって形成されてもよい。ただし、遮光層12cをグラデーション加工で形成するときには、容易に高精細なグラデーション加工が可能な印刷処理、特にグラビア印刷処理を利用するのが好適であり、コスト削減効果も得られる。
【0141】
また、加飾フィルム82の遮光層82cについては、オーナメント基材81の表面側に形成される構成に限定されず、オーナメント基材81の裏面側に形成されてもよい。ただし、遮光層82cがオーナメント基材81の表面側に形成されると、遮光層82cと意匠層82aとが一体した加飾フィルム82をオーナメント基材81に貼り付けることができるため有利である。また、仮に遮光層82cをオーナメント基材81の裏面側に形成しようとすると、オーナメントユニット80の固定に必要なボス83やリブ85を用いたスナップフィット結合を構築し難くなる場合があり、かかる点においても有利である。
【0142】
次に、第三実施形態に係る光源ユニット90について説明する。光源ユニット90は、オーナメント基材81及び加飾フィルム82とともに発光オーナメント1の発光領域1aを構成し、オーナメントユニット80の可発光領域80aの裏側にスナップフィット形式で組み付けられる。具体的に説明すると、
図37に示すように、光源ユニット90が有するホルダ93の外縁から上方又は下方に突出形成した係合穴形成部94を備えている。係合穴形成部94は、門型の外形形状となっており、矩形状の係合穴94aを形成している。この係合穴形成部94が形成する係合穴94aは、オーナメントユニット80側に設けられた爪部86が係合可能な穴となっている。
【0143】
爪部86は、
図38に示すように、リブ85の外縁から外側に向かって張り出した部分であり、上記係合穴94aと対応した位置に設けられている。そして、爪部86が係合穴94aに係合することで、オーナメントユニット80に光源ユニット90が組み付けられる。なお、
図38に示すように、爪部86のうち、リブ85からはみ出した部分には略U字状の溝が形成されている。この溝の内側には、先端部が鉤状になった鉤状部86aが形成され、溝部の外側には鉤状部86aを包囲する包囲部86bが形成されている。そして、オーナメントユニット80に光源ユニット90を組み付ける際にオーナメントユニット80の裏面に光源ユニット90を押し当てると、上記鉤状部86aが光源ユニット90の係合穴形成部94に当接するようになる。これにより、鉤状部86aの先端が係合穴94aに導入され、その後、鉤状部86aが係合穴94aに係合するようになる。
【0144】
また、光源ユニット90がオーナメントユニット80に組み付けると、
図39に示すように、上記係合穴形成部94がリブ85に当接し、これにより、光源ユニット90がオーナメントユニット80に対して位置決めされる。ちなみに、係合穴形成部94をリブ85に当接させた際、その当接部位周りに隙間が存在するとガタツキが生じるので、ガタツキ抑制の目的で不織布等を上記の隙間を埋めることとしてもよい。
【0145】
そして、光源ユニット90が組み付けられた状態のオーナメントユニット80は、ドアベース6に固定され、オーナメントユニット80側に設けられたボス83や係合突起84がドアベース6に締結される。一方、
図33に示すように、光源ユニット90側にもドアベース6に締結されるボス95及び係合突起96が形成されている。ボス95は、ドアベース6に形成されたボス穴に嵌合してビス止め固定され、係合突起96は、ドアベース6に形成された嵌合穴に嵌合してスナップフィット結合される。このように光源ユニット90に設けられたボス95や係合突起96をドアベース6に締結することで、光源ユニット90をより堅固に固定することが可能となる。
【0146】
光源ユニット90は、
図37に示すように、ランプ91と出射面92aを備えた導光体92と有し、これらはホルダ93に保持されることでユニット化されている。導光体92は、
図37に示すように長手方向前端から後端に向かうにつれて漸次的に上下幅が広がった導光板である。また、導光体92は、その外形形状に一致するように成形された枠状のホルダ93に嵌められて保持される。ホルダ93は、導光板から出射された光を良好に反射できるように白色に着色されたものが好適であり、例えば、PC樹脂に白色顔料を投入した材料にて成形されている。特に、第三実施形態に係るホルダ93は、白色顔料の投入量を一般的な白色の樹脂成形品を製造する際の投入量の約2倍にして成形されている。
【0147】
ランプ91は、例えばLEDランプ等の光源であり、導光体92の前端部と隣り合うようにホルダ93に取り付けられている。このような位置関係により、ランプ91からの光の進行方向と導光体92による導光方向とが一致し、良好な導光効果を得ることが出来る。特に、第三実施形態では、導光体92の長手方向両端部のうち、ランプ91が取り付けられている側の前端部では、後端部に比して幅が狭くなっている。つまり、光の進行方向において下流側に向かうほど、導光板の幅が広がるので、扇状に広がるランプ91からの光をより適切に導光可能になる。なお、導光体92の長手方向の長さが比較的長くなる場合においては、導光体92の長手方向両端部の脇にランプ91をそれぞれ取り付けてもよい。
【0148】
さらに、第三実施形態では、導光体92の長手方向両端部のうち、車両の前方部により近い方の端部(前端部)と隣り合うようにランプ91が配置されている。通常の車両の場合、ランプ91の電源は、車両の前方部に搭載されているので、ランプ91と電源との間に敷設されるケーブルHの長さを短くすることが可能となり、以て発光オーナメント71の製造コストが抑えられるようになる。
【0149】
また、
図37に示すように、ケーブルHのランプ91への繋ぎ込み口(以下、ジャック)91aの開口が鉛直方向下側を向くように形成されている。これにより、雨水等が意図せずにドア内部に浸入した場合に、ジャック91aとケーブルHとの接続箇所が濡れてしまうのを抑制することが可能となる。
【0150】
<第三実施形態に係るオーナメントユニットの変形例>
次に、第三実施形態に係るオーナメントユニットの変形例について説明する。なお、以下の説明のうち、上記の実施例に係るオーナメントユニット80と重複する内容については省略することとする。
【0151】
変形例に係るオーナメントユニット120では、オーナメント基材121が、透光性を有する白色又は白色と同系色の樹脂成形品として形成されている。また、加飾フィルム122を構成する遮光層122cの遮光部122dが、
図41に示すように、印刷処理によってオーナメント基材の面側に白色系インクがベタ塗り印刷されて形成され、白色又は白色と同系色に着色されていることに特徴を有する。また、遮光層122cは、白色系インクがベタ塗りされた遮光部122dと、白色系インクが塗られていない透明色のままの透過部122eとが混在する構成となっている。
【0152】
そして、未発光時にオーナメントユニット120を加飾フィルム122で覆われた車内側から見たときには、
図40や
図41に示すように、遮光部122dと透過部122eとの境界線が隠蔽されることで、発光領域の質感が高められている。具体的に説明すると、遮光部122dは、印刷処理によって白色系に着色され、オーナメント基材は、白色系の樹脂成形品として形成されている。すなわち、変形例においても、遮光部122dの色調とオーナメント基材の色調とが同系色になっている。この結果、オーナメントユニット120を車内側から見たときには、
図40や
図41に示すように、透明な透過部122e越しに見えるオーナメント基材と遮光部122dとの境界線を隠蔽することができる。また、白色系からなる遮光部122dにおいて光の反射率を高めることができ、発光の効率を高めることができるようになる。
【0153】
<<その他の実施形態>>
上記の実施形態では、本発明の車両用発光部品の実施例について説明した。しかし、上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることは勿論である。また、上述した各部材の材質、配置位置、形状等については、本発明の効果を奏するための例に過ぎず、本発明を限定するものではない。
【0154】
また、上記の実施形態では、光源としてのLEDランプ及び導光体からなる光源ユニットを照射体として用いることとしたが、LEDランプのみからなる点発光体を照射体として用いてもよい。また、LEDランプ及び導光体の代わりに有機ELのような面状発光体を用いる構成も考えられる。以下、
図42を参照しながら、面状発光体を用いた構成(第四実施形態)について説明する。
【0155】
第四実施形態に係る発光オーナメント581は、
図42に示すように、オーナメント基材582と、面状発光体としての有機ELパネルからなるディスプレイ590と、ディスプレイ590を保持するホルダ593と、を備えている。このような構成であれば、光源と光源からの光を広範囲に出射するための導光体とを別々に設ける必要がなく、部品点数の削減を図ることが可能となる。
【0156】
ディスプレイ590は、オーナメント基材582と対向する対向面としての発光面590aを備えており、当該発光面590aの中で点灯させる領域(以下、点灯領域)590bや発光色を自由に設定することが可能である。かかる性質を利用して、第四実施形態例では、ディスプレイ590の発光面590aのうち、オーナメント基材582の外表面中の発光領域に応じた部分のみを点灯させることとしている。換言すると、第四実施形態では、発光面590aの中で点灯している点灯領域590bの前方位置にオーナメント基材582の外表面のうちの発光領域が配置されている。一方で、点灯領域590b以外の領域、すなわち、点灯していない非点灯領域590cの前方位置に、オーナメント基材582の外表面のうちの非発光領域が配置されている。これにより、発光オーナメント581の発光時には、発光領域のみにおいて光が透過されて発光するようになる。
【0157】
また、ディスプレイ590の発光面590a中、発光領域に対応する部分を点灯領域590bとし、非発光領域に対応する部分を非点灯領域590cとする。これにより、第二実施形態や第三実施形態のように加飾フィルムの裏側に遮光部を形成することなく、発光オーナメント581の外表面の所定領域のみを発光させることが可能となる。また、上記の効果により、オーナメント基材を構成する樹脂材料についても、拡散剤を含有した材料を用いる必要がなくなる。なお、発光面590aにおいて点灯領域590b及び非点灯領域590cを自由に設定することが可能である。また、ディスプレイ590は、スナップフィット等の公知の方式にてホルダ593に組み付けられ、具体的には、
図43に示すように、ディスプレイ590の外縁から突出した凸部590dがホルダ593に形成された嵌合穴593aに係合することで組み付けられるようになっている。
【0158】
また、ホルダ593にはオーナメント基材582が組み付けられ、具体的には、オーナメント基材582の外縁からホルダ593に向かって延出した爪583がホルダ593に形成された係合突起593bに係合するようになっている。さらに、ホルダ593の長手方向両端部には、
図42に示すように舌状突起593cが設けられており、この舌状突起593cに形成された挿入穴593dにオーナメント基材582の長手方向両端部に形成されたボス584が嵌合する。そして、挿入穴593dに嵌合したボス584は、ドアライニング本体に対してビス止めされる。すなわち、第四実施形態では、発光オーナメント581をドアライニング本体に取り付ける際に、ホルダ593とこれに組み付けられたオーナメント基材582とがドアライニング本体に対して共締めされるようになっている。
【0159】
また、ホルダ593には、
図42に示すように、その裏側から係合突起593eが突出しており、この係合突起593eが、発光オーナメント581をドアライニング本体に取り付ける際にはドアライニング本体に形成された係合穴(不図示)に係合するようになっている。
【0160】
なお、
図42に図示した構成では、面状発光体として有機ELパネルからなるディスプレイ590が用いられており、当該ディスプレイ590は、若干の厚みを有し剛性が確保されたものになっている。ただし、面状発光体については上記のディスプレイ590に限定されるものではなく、
図43に示すように、可撓性を有するフレキシブル有機ELのシート(以下、シート状ディスプレイ)510からなる面状発光体であることとしてもよい。
【0161】
図43に図示のケースについて説明すると、発光オーナメント501に備えられたオーナメント基材502に深掘り加工が施されており、オーナメント基材502は、その外表面が円弧面となるように湾曲している。一方、
図43に示すように、シート状ディスプレイ510は、可撓性を有しているので、オーナメント基材502に沿って湾曲して配置させることが可能である。これにより、発光オーナメント501をより薄型化することが可能となる。なお、
図43に示すケースでは、発光オーナメント501の薄型化のために、シート状ディスプレイ510を保持するホルダ513についても、同様に円弧状に湾曲した形状に成形されている。また、ホルダ513には、シート状ディスプレイ510との対向面から突出形成されたボス513aが設けられている。かかるボス513aがシート状ディスプレイ510に形成された穴(不図示)に挿入されて溶着止めされることで、シート状ディスプレイ510がホルダ513に組み付けられるようになっている。
【0162】
また、第四実施形態では、有機ELパネルからなる面状発光体を用いることとしたが、これ以外の面状発光体、例えば、無機ELパネルからなる面状発光体、液晶パネルからなる面状発光体も利用可能である。
【0163】
また、上記の実施形態では、光源(ランプ)からの光を内部に導く導光体を用いる構成では、剛性が比較的高い導光板を利用することとした。ただし、これに限定されるものではなく、他の導光体、例えば、
図44に示すように光ファイバからなる導光体532を用いた構成であってもよい。以下、光ファイバからなる導光体532を用いた構成(第五実施形態)について
図44を参照しながら説明する。
【0164】
第五実施形態に係る発光オーナメント521では、
図44に示すように、導光体532が複数の光ファイバの束からなり、当該複数の光ファイバは、上下方向に列(以下、ファイバ列)をなすように配置されている。光ファイバについては、それ自体が可撓性を有していることに加え、ファイバ列についても自由な列形状とすることが可能となる。これにより、発光オーナメント521に備えられたオーナメント基材522が深掘り加工によってその外表面が円弧面となるように湾曲している場合には、オーナメント基材522に沿って導光体532を成すファイバ列を弓状に湾曲させて配置させることが可能となる。この結果、発光オーナメント521をより薄型化することが可能となる。なお、第五実施形態において、導光体532は、それを構成する光ファイバの各々が公知の締結方式によりホルダ533に締結されて固定されている。また、発光オーナメント521の薄型化のために、ホルダ533が、導光体532と同様に円弧状に湾曲した形状に成形されている。
【0165】
また、上記の実施形態では、車両用発光部品(具体的には発光オーナメント)をドアライニング本体の表側(車内に面する側)から取り付けるケースについて説明した。ただし、これに限定されるものではなく、ドアライニング本体の裏側(車内に面する側とは反対側)から車両用発光部品を取り付けることとしてもよい。かかる構成(第六実施形態)について、以下、
図45乃至50を参照しながら説明する。
【0166】
第六実施形態では、
図46に示すように、ドアベース604に前後方向に長い開口606が設けられている。一方、第六実施形態に係る発光オーナメント601は、ドアベース604の裏面(換言すると、外側に位置する面)側から組み付けられる。このとき、発光オーナメント601の一部が上記の開口606に嵌め込まれ、この結果、発光オーナメント601の一部が車内空間に対して露出するようになる。つまり、発光オーナメント601のうち、開口606に嵌め込まれる部分は、開口606を通じて露出する露出部601xに相当する。なお、ドアベース604は、アッパーベース604aとロアベース604bとが上下方向に組み合わさることによって構成されており、第六実施形態では、アッパーベース604a及びロアベース604bのいずれもが硬質樹脂のプレートによって構成されている。
【0167】
発光オーナメント601の露出部601xは、開口606の外縁に合わせた外形形状、詳しくは車両の前後方向に沿って長いナイフ状の外形形状をなしている。そして、露出部601x中の所定部分には発光領域601aが形成されている。
図45に図示した構成では、露出部601xの下端部においてその先端よりも幾分後側の位置から略三角形状に展開した領域(
図45においてグレー色で塗られた部分)が、発光領域601aをなし、それ以外の部分が、非発光領域601bをなす。
【0168】
さらに、第六実施形態に係る発光オーナメント601では、
図46に示すように、露出部601xの周辺に位置する部分に鍔状のフランジ部601yが備えられている。このフランジ部601yは、発光オーナメント601をドアライニング本体に固定する際にドアベース604の裏面に取り付けられる部分である。より具体的に説明すると、フランジ部601yには穴601sが互いに間隔を空けながら複数形成されている。そして、各穴601sに挿入された固定ビスBtがドアベース604の裏面の所定部位に締結されることで、発光オーナメント601がドアライニング本体に固定される。
【0169】
なお、第六実施形態では、締結具の一例として固定ビスBt、より具体的にはタッピングネジを用いることとしたが、固定ビスBt以外の締結具、例えばボルトが用いられてもよい。また、締結具は、上記の穴601sに挿入された後にフランジ部601yに溶着固定されてもよい。なお、発光オーナメント601とドアライニング本体との固定には、ビスや溶着による固定の他、樹脂製の爪状部分(不図示)を係合穴(不図示)に係合させることによる固定を含む。
【0170】
以上のように第六実施形態に係る発光オーナメント601は、ドアライニング本体、具体的にはドアベース604の裏面側から組み付けられ、フランジ部601yがドアベース604のうち、開口606を囲む淵部604cに係止された状態でビス止めされることにより固定される。なお、第六実施形態では、
図46に示すようにフランジ部601yが略楕円状の外形形状を成しており、その外縁に沿って長円状の穴601sが複数穿設されている。
【0171】
第六実施形態に係る発光オーナメント601の機器構成について説明すると、上述の実施形態と同様の機器構成になっている。具体的に説明すると、発光オーナメント601は、
図47に示すように、照射体としての光源ユニット630と、光源ユニット630を保持するホルダ633と、光源ユニット630からの光を透過するオーナメントユニット610と、を備えている。ホルダ633は、光源ユニット630の外形形状よりも幾分大きく設計されており、
図47に示すように、光源ユニット630の構成機器であるランプや導光体632を保持する保持部633aと、保持部633aから外側に向かって張り出した張り出し部633bとを有する。張り出し部633bは、略楕円状の外形形状を有し、発光オーナメント601の外縁部、すなわちフランジ部601yを構成している。また、張り出し部633bには穴601sとしての貫通穴が形成されている。
【0172】
オーナメントユニット610は、樹脂基材としてのオーナメント基材611と、オーナメント基材611の表面に貼り付けられた加飾フィルム612と、を有している。オーナメント基材611は、その中央部が内側(車内側)に幾分隆起するように深掘り加工されている。深掘り加工されたオーナメント基材611の中央部には、ドアベース604に形成された開口606の外縁に合せて隆起した部分(以下、隆起部分611a)が形成されている。この隆起部分611aは、上下方向に対して弓状に湾曲しており、その表面には加飾フィルム612が貼り付けられている。
【0173】
そして、発光オーナメント601がドアライニング本体に固定されるとき、
図47に示すように、上記の隆起部分611aがドアベース604の開口606に嵌り込み、ドアライニングの車室側に現れるようになる。つまり、加飾フィルム612が貼り付けられた隆起部分611aは、オーナメントユニット610のうち、開口606を通じて露出する露出部分610aを構成し、発光オーナメント601がドアライニング本体に固定された状態では開口606に嵌合している。
【0174】
一方、オーナメント基材611において隆起部分611aを囲む部分には、非隆起部分611bが形成されている。この非隆起部分611bは、略楕円状の外形形状を有し、ホルダ633の張り出し部633bとともに発光オーナメント601のフランジ部601yを構成している。そして、非隆起部分11bには穴601sとしての貫通穴が形成されている。また、フランジ部601yは、ドアベース4の裏面に係止されているのでドアライニングの車室側に現れて露出することがないため、オーナメントユニット610のうち、非隆起部分611bは、非露出部分610bとなる。
【0175】
加飾フィルム612は、
図48に示すような積層構造をなし、オーナメント基材611の隆起部分611aの表面に貼り付けられて露出部分610aを構成する。ここで、加飾フィルム612の表側(車室に対して露出する側)は、
図49の(A)に示すように全体的にメタリック調に着色されている。これにより、メタリック調の風合いを呈し、かつ、ハーフミラー効果を有する絵柄層612aがオーナメントユニット610の表側の面全体に形成されている。一方、加飾フィルム612の裏側は、
図49の(B)に示すように、無色透明のままとなった領域と、黒色インクにて所定のパターンが印刷された領域とが形成されている。ここで、黒色インクにてパターンが印刷された領域は、オーナメント基材611を透過した光を遮断する遮光部612dを構成している。なお、遮光部612dを形成するための印刷処理としては、グラビア印刷、シルク印刷、タンポ印刷、オフセット印刷等が利用可能であり、これらと同様の効果を奏する他の手法、例えば、吹き付け塗装や水転写を利用することも可能である。
【0176】
これに対して、加飾フィルム612のうち、その裏側が無色透明となった領域(換言すると、遮光部612d以外の領域)は、オーナメント基材611を透過した光がそのまま通過する透光部612cを構成している。そして、オーナメントユニット610中、透光部612cが配置された部分が、発光オーナメント601の発光領域601aを構成している。つまり、透光部612cは、発光領域601aに対応しており、その形状やサイズに応じて発光領域1aの形状やサイズが決まり、加飾フィルム612における配置位置に応じて発光領域1aの位置が決まることになる。
【0177】
以上のように透光部612cと遮光部612dとを有する加飾フィルム612がオーナメント基材611の表面に貼り付けられることで、遮光部612dが位置する部分ではオーナメント基材611を透過した光が透過できない。これに対し、透光部612cが位置する部分ではオーナメント基材611を透過した光が透過することになる。なお、加飾フィルム612をオーナメント基材611の表面に貼り付けるにあたっては、
図48に示すようにオーナメント基材611の表面に接着剤からなる接着層612eが形成される。この接着層12eが形成されることにより、加飾フィルム612がオーナメント基材611の表面に貼り付け可能となる。
【0178】
次に、第六実施形態に係る発光オーナメント601を固定するためにドアライニング本体側に設けられた機構について、
図46、
図47及び
図50を参照しながら説明する。第六実施形態に係る発光オーナメント601をドアライニング本体に組み付ける際、発光オーナメント601をドアベース604の裏面に近付けて所定位置にセットした後、かかる位置に固定する。このとき、発光オーナメント601のフランジ部601yに形成された穴601sに固定ビスBtを挿入し、同ビスBtをドアベース604の裏面に締結させる。
【0179】
より具体的に説明すると、ドアベース604の裏面には固定ビスBtを締結させるための突起607が突出形成されている。この突起607は、ドアベース604とともに一体成形され、発光オーナメント601がドアライニング本体に取り付けられた状態では、発光オーナメント601のフランジ部601yに向かって突出している。なお、ドアベース604のうち、少なくとも突起607とその周辺部分が樹脂にて成形されていればよく、それ以外の部分が異なる材質(例えば、金属)によって構成されていてもよい。
【0180】
また、突起607の先端部には、
図50に示すように、固定ビスBtを嵌合させる嵌合穴607hが形成された円筒状の嵌合穴形成部607aが設けられている。そして、発光オーナメント601をドアライニング本体に組み付ける際には、発光オーナメント601のフランジ部601yに形成された穴601sと上記の嵌合穴607hとが連通するように発光オーナメント601がドアライニング本体に組み付けられ、かかる状態で上記2つの穴601s、607hに固定ビスBtが挿入されて嵌合する。なお、嵌合穴607hの当初(ドアベース604の成形時)の径は、固定ビスBtの外径よりも僅かに小さくなっている。
【0181】
ここで、発光オーナメント601のフランジ部601yでは、
図47に示すようにオーナメント基材611の非隆起部分611bとホルダ633の張り出し部633bとが重なり合っている。このため、オーナメント基材611及びホルダ633は、共通の固定ビスBtにて固定(共締め)されるようになる。これにより、オーナメント基材611及びホルダ633を個別に固定する場合に比して固定ビスBtの使用本数を削減することが可能となる。
【0182】
さらに、第六実施形態では、
図50に示すように、上述した嵌合穴形成部607aがドアベース604の裏面に直に形成されておらず、ドアベース604の裏面と隣接した中空状の台座部607bを介して設けられている。つまり、固定ビスBtを締結させるための突起607は、その基部(嵌合穴形成部607aよりもドアベース604に近い部分)に台座部607bを備えている。この台座部607bは、有底箱型の形状をなし、発光オーナメント601のフランジ部601yと対向する頂面から嵌合穴形成部607aが立設されている。すなわち、台座部607bの頂面は、嵌合穴形成部607aの底面の輪郭よりも幾分広くなっている。なお、台座部607bの頂面には、嵌合穴形成部607aの強度を確保するために略三角形状の補強リブ607rが嵌合穴形成部607a周りに複数立設されている。
【0183】
以上のように嵌合穴形成部607aがドアベース604の裏面に直に形成されず、中空状の台座部607bを介して設けられていることで、樹脂成形品であるドアベース604のうち、裏側に突起607が設けられている部分でのヒケの発生が抑えられる。つまり、嵌合穴形成部607aがドアベース604の裏面に直に形成された場合、ドアベース604において嵌合穴形成部607aが設けられた部分では肉厚がより厚くなり、その分ヒケが生じ易くなってしまう。これに対して、第六実施形態では、ドアベース604と嵌合穴形成部607aとの間に中空状の台座部607bが介在しているので、嵌合穴形成部607aの形成に伴って肉厚が局所的に厚くなるのを抑え、以て、ヒケの発生を抑制することが可能となる。なお、台座部607bの上端は、ドアベース604の樹脂成形後に不図示の金型を
図50中の矢印にて示す方向へ引き抜く結果、開口端を形成している。
【0184】
ところで、発光オーナメント601をドアライニング本体に組み付ける際には、ドアベース604に形成された開口606にオーナメントユニット610の隆起部分、すなわち、露出部分610aを嵌合させる。一方、ドアベース604のうち、開口606を囲む淵部604cは、
図47に示すように、発光オーナメント601のフランジ部601yに向かってL字状に屈曲している。そして、発光オーナメント601をドアライニング本体に組み付けると、上記淵部604cの先端(最もフランジ部601yに近い部位)がフランジ部601yに当接する。これにより、発光オーナメント601のフランジ部601yがドアベース604の淵部604cに係止され、発光オーナメント601が位置決めされるようになる。
【0185】
なお、上記の淵部604cのうち、フランジ部601yと当接する先端の面は、
図47に示すように半球面状となっている。このため、発光オーナメント601の位置決め時には、上記の淵部604cの先端がフランジ部601yと線接触するようになる。このような構成により、フランジ部601yと面接触するような構成と比較して、発光オーナメント601に及ぶ当接荷重を軽減させることが可能となる。このとき、当接荷重をより一層軽減させるために、上記の淵部604cとフランジ部601yとの間に不織布を介在させてもよい。さらに、
図47に示すように、固定ビスBt締結用の突起607は、ドアベース604の裏面において上記の淵部604cの一部分と隣り合う位置に設けられている。ここで、ドアベース604中、上記の淵部604cが位置する部分、すなわち、開口606周りの部分では剛性が比較的高くなっている。このような高剛性の部分と隣り合う位置に突起607を設けることで、突起607に固定ビスBtを締結させた状態を安定させ、以て、発光オーナメント601の組み付け剛性を向上させることが可能となる。
【0186】
また、以上までに説明してきた実施形態では、本発明の車両用発光部品を車両用ドア(具体的には、車両用ドアライニングR)の内装部品として用いるケースについて説明した。ただし、本発明の車両用発光部品は、車両用ドアライニングRのみに限定して利用されるものではなく、樹脂部品からなり加飾機能を発揮する部位に適用することも可能である。例えば、
図51に示すように、運転席のシートS1や助手席のシートS2の背面に取り付けられるシートバックボード用の内装部品として発光オーナメント101,102,103,104(
図51中、グレー色で塗られた部分が発光領域10aに相当する)を利用することが可能である。
【0187】
また、
図52に示すように、車両の左右側部に取り付けられたルーフF1やルーフF1を支持するルーフピラーFP用の内装部品として発光オーナメント201を利用したりすることも可能である。なお、
図52中、グレー色で塗られた部分が発光領域10aに相当する。さらに、
図53〜
図55に示すように、運転席の前方に位置するダッシュボードB1及びその周辺用の内装部品として発光オーナメント301,302,303を利用することも可能である。なお、
図53〜
図55中、グレー色で塗られた部分が発光領域10aに相当する。さらにまた、
図56に示すように、座席間に設けられたコンソールボックスの発光部品として発光オーナメント401を利用することも可能である。なお、
図56中、グレー色で塗られた部分が発光領域10aに相当する。
【0188】
このように、各種内装部品として、発光オーナメント101,102,103,104,201,301,302,303,401を用いることで、各内装部品が曲面状に形成されている場合であっても均一に発光させることができる。なお、
図50〜55において示した発光オーナメントの位置はあくまでも一例であり、図中のグレー色で塗られた部分に限定されるものではない。