(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
互いに異なる前記部分形成工程によって形成された、互いに隣り合う前記第2導電層の部分の縁同士が重なり合う、請求項1または2に記載のキャパシタ構造の作製方法。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[本願発明の実施形態の説明]
最初に本発明の実施形態の内容を列記して説明する。本発明の一形態に係るキャパシタ構造の作製方法は、キャパシタの誘電体を構成する層間絶縁膜を第1導電層上に形成する工程と、真空蒸着法により層間絶縁膜上に第2導電層を形成する工程と、第2導電層の表面に接する第3導電層を形成する工程と、第3導電層上に保護絶縁膜を形成する工程と、保護絶縁膜の一部を除去することによって保護絶縁膜に第3導電層が露出する開口を形成する工程と、保護絶縁膜の開口を介して第3導電層と電気的に接続される金属膜を形成する工程と、を含む。第2導電層を形成する工程では、複数の開口部を有するマスクを形成して真空蒸着法により第2導電層の部分を形成したのちマスクを除去する部分形成工程を、複数の開口部の位置を移動させながら少なくとも2回繰り返すことによって全ての第2導電層を形成する。
【0010】
この作製方法では、第2導電層(上部電極層)を真空蒸着法により形成する際に、複数の開口部を有するマスクを用いて第2導電層を部分的に形成する工程を繰り返す。この場合、第2導電層全体に相当する一つの開口部を有するマスクを用いる場合と比較して、マスクの開口部の幅が小さくなる。故に、飛散した蒸着用材料の塊(スプラッシュ)は、マスクの開口部を通過しにくくなり、層間絶縁膜上に到達し難くなる。そして、マスクの開口部上に留まった蒸着用材料の塊は、マスクを除去する際にマスクとともに取り除かれる。従って、上記作製方法によれば、第2導電層に形成されるピンホールを低減し、第2導電層と第1導電層(下部電極層)との短絡を低減できる。更に、この作製方法では、第2導電層を形成したのちに、第2導電層の表面に接する第3導電層を形成する。これにより、蒸着用材料の塊に起因して形成されたピンホールを第3導電層によって埋めることができ、第2導電層と第1導電層との短絡を更に低減できる。
【0011】
上記の作製方法において、各開口部の最小幅は1μm以上3μm以下であってもよい。本発明者の知見によれば、直径が1μmよりも小さい蒸着用材料の塊はマスクを除去する際に取り除かれず、第2導電層に残存する傾向がある。従って、直径が1μmよりも小さい蒸着用材料の塊は各開口部を通過しても短絡を生じさせる虞は少ない。そして、各開口部の最小幅を1μm以上とすることにより、部分形成工程の回数が過度に増加することを抑制し、キャパシタ構造の作製に要する時間の増加を抑えることができる。また、本発明者が蒸着用材料の塊の直径を実測したところ、直径1μm以上の塊の直径分布は、3μm以上が約70%、4μm以上が約50%であった。従って、各開口部の最小幅が3μm以下であることにより、約70%の蒸着用材料の塊が開口部を通過することを防ぎ、ピンホールの形成をより効果的に低減できる。
【0012】
上記の作製方法において、互いに異なる部分形成工程によって形成された、互いに隣り合う第2導電層の部分の縁同士が重なり合ってもよい。これにより、各部分形成工程によって形成された第2導電層の部分間の隙間を低減し、該隙間に起因する第2導電層と第1導電層との短絡を抑制することができる。
【0013】
上記の作製方法において、マスクの複数の開口部は、第1方向に沿って各々延びるとともに第1方向と交差する第2方向に並んで形成され、複数の開口部の位置を第2方向に移動させながら部分形成工程を繰り返してもよい。或いは、上記の作製方法において、マスクの複数の開口部は、第1方向及び第1方向と交差する第2方向に沿って格子状に並んで形成され、複数の開口部の位置を第1方向及び第2方向のうち少なくとも一方向に移動させながら部分形成工程を繰り返してもよい。例えばこれらのうち何れかの方法により、上述した効果を好適に得ることができる。
【0014】
[本願発明の実施形態の詳細]
本発明の実施形態に係るキャパシタ構造の作製方法の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。以下の説明では、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0015】
図1は、本実施形態に係るキャパシタ構造10を示す断面図である。
図1に示されるように、キャパシタ構造10は、基板2上の絶縁膜3の表面上に設けられている。キャパシタ構造10は、絶縁膜3上に設けられる下部電極層4と、下部電極層4上に設けられる層間絶縁膜5と、層間絶縁膜5上に設けられる上部電極層6と、層間絶縁膜5及び上部電極層6上に設けられる保護絶縁膜7と、保護絶縁膜7の開口部7a上に設けられ上部電極層6と電気的に接続される金属配線8とを備えている。なお、後述するように、本実施形態では下部電極層4及び上部電極層6は金属を含む導電層であることから、キャパシタ構造10はMIMキャパシタである。
【0016】
基板2は、例えば結晶成長用の半導体基板であり、平面視にて例えば円形状又は矩形状を有する。基板2として、例えばGaN基板、GaAs基板、又はSi基板等が挙げられる。基板2上には、キャパシタ構造10に加えて、トランジスタ等の半導体素子が形成されてもよい。なお、本実施形態における「平面視」とは、キャパシタ構造10を構成する下部電極層4、層間絶縁膜5、及び上部電極層6の積層方向から見ることである。
【0017】
絶縁膜3は、基板2とキャパシタ構造10との接触を防ぐ膜であって、基板2とキャパシタ構造10との間に介在している。絶縁膜3は、例えば酸化ケイ素(SiOx)、又は窒化ケイ素(SiN)によって構成される。下部電極層4の酸化を防止する観点から、絶縁膜3は窒化ケイ素膜であってもよい。絶縁膜3の厚さは、例えば50nm〜400nmの範囲内である。
【0018】
下部電極層4は、キャパシタ構造10の一方の電極であり、一又は複数の金属を含む導電層(第1導電層)である。下部電極層4は、例えばTi/Au/Tiの積層構造を有する。一例では、第1層のTi膜の厚さは0nm〜10nmの範囲内であり、第2層のTi膜の厚さは0nm〜50nmの範囲内であり、Au膜の厚さは100nm〜400nmの範囲内である。
【0019】
層間絶縁膜5は、キャパシタ構造10の誘電体を構成する膜であり、下部電極層4を覆っている。層間絶縁膜5は、下部電極層4の基板2とは反対側の表面と接している。層間絶縁膜5は、例えば窒化ケイ素によって構成される。層間絶縁膜5の厚さは、例えば250nm程度である。下部電極層4は、層間絶縁膜5に形成された図示しない開口を介して、金属配線8とは別の金属配線と電気的に接続されている。層間絶縁膜5の厚さは、例えば50nm〜400nmの範囲内である。
【0020】
上部電極層6は、一又は複数の金属を含む導電層である。上部電極層6は、層間絶縁膜5の下部電極層4とは反対側の表面に接しており、層間絶縁膜5を介して下部電極層4と重なっている。上部電極層6は、基板2側から金属層21と金属層22とが順に積層された積層構造を有する。金属層21は本実施形態における第2導電層であり、金属層22は本実施形態における第3導電層である。金属層21は、例えばTi/Auの積層構造を有する。一例では、金属層21のTi膜の厚さは3nm〜10nmの範囲内であり、Au膜の厚さは20nm〜100nmの範囲内である。同様に、金属層22は、例えばTi/Auの積層構造を有する。一例では、金属層22のTi膜の厚さは3nm〜10nmの範囲内であり、Au膜の厚さは50nm〜200nmの範囲内である。
【0021】
ここで、
図2は、金属層21の平面図である。
図2に示されるように、本実施形態の金属層21は、第1方向A1及び第1方向A1と交差する第2方向A2に沿って二次元状に並ぶ複数の単位領域Dを含んでいる。各単位領域Dでは、N個(Nは2以上の整数、本実施形態ではN=4)の部分金属膜21a〜21dが設けられている。なお、
図2において、部分金属膜21a〜21dはハッチングの種類によって識別される。部分金属膜21a〜21dは、各単位領域D内において一定の規則で並んでいる。例えば、部分金属膜21aと部分金属膜21bとは第1方向A1に沿って並び、部分金属膜21cと部分金属膜21dとは第1方向A1に沿って並んでいる。また、部分金属膜21aと部分金属膜21dとは第2方向A2に沿って並び、部分金属膜21bと部分金属膜21cとは第2方向A2に沿って並んでいる。換言すれば、金属層21は、互いに間隔をあけて格子状に配列された複数の部分金属膜21aと、互いに間隔をあけて格子状に配列された複数の部分金属膜21bと、互いに間隔をあけて格子状に配列された複数の部分金属膜21cと、互いに間隔をあけて格子状に配列された複数の部分金属膜21dとによって構成されている。そして、互いに隣接する部分金属膜21a〜21dの縁同士は重なり合っている。これにより、部分金属膜21a〜21dが金属層21の全体を隙間なく構成している。
【0022】
再び
図1を参照する。保護絶縁膜7は、大気中の水蒸気等のキャパシタ構造10への浸入を抑制する保護膜である。保護絶縁膜7には、上部電極層6に重なる開口部7aが形成されている。開口部7a上及び開口部7a内には金属配線8が設けられている。保護絶縁膜7は、例えば窒化ケイ素によって構成される。保護絶縁膜7の厚さは、例えば50nm〜400nmの範囲内である。
【0023】
金属配線8は、キャパシタ構造10の上部電極層6と電気的に接続された金属膜である。金属配線8は、保護絶縁膜7に設けられた開口部7aを介して上部電極層6の表面と接触し、電気的に接続されている。金属配線8は、例えばAuめっきによって構成される。金属配線8の厚さは、例えば0.5μm〜3μmの範囲内である。
【0024】
次に、本実施形態に係るキャパシタ構造10の作製方法を説明する。
図3は、本実施形態に係るキャパシタ構造10の作製方法を示すフローチャートである。また、
図4〜
図9は、キャパシタ構造10の作製方法における各工程を説明する図である。
【0025】
まず、
図4(a)に示されるように、絶縁膜3及び導電層31が予め積層された基板2の当該導電層31上に、パターニングされたレジストマスク32を形成する(工程S1)。例えば、フォトリソグラフィーによってレジストマスク32をパターニングする。絶縁膜3は、CVD法(化学気相成長法)等によって基板2上に予め形成された膜であり、導電層31は、真空蒸着法、スパッタリング法あるいはめっき法によって絶縁膜3上に予め形成された金属層である。レジストマスク32は、熱処理又は紫外線照射などによって硬化してもよい。次に、導電層31を選択的にエッチングし、
図4(b)に示されるように、下部電極層4を形成する(工程S2)。導電層31においてレジストマスク32に重ならない部分は、例えばドライエッチングによって除去される。その後、レジストマスク32を除去する。
【0026】
続いて、
図5(a)に示されるように、キャパシタ構造10の誘電体を構成する層間絶縁膜5を下部電極層4上に形成する(工程S3、本実施形態における第1工程)。この工程S3では、下部電極層4を埋め込むように層間絶縁膜5を形成する。層間絶縁膜5は、例えばプラズマCVD法により形成される。
【0027】
続いて、真空蒸着法により層間絶縁膜5上に金属層21を形成する(工程S4、本実施形態における第2工程)。この工程S4では、部分形成工程S40を少なくとも2回(本実施形態では4回)繰り返す。
【0028】
最初の部分形成工程S40では、
図5(b)に示されるように、複数の開口部33aを有するレジストマスク33を層間絶縁膜5上に形成する(工程S41)。
図10(a)は、レジストマスク33の平面形状を示す。
図10(a)に示されるように、レジストマスク33の複数の開口部33aは、第1方向A1及び第2方向A2に沿って格子状に並んで形成されている。これら複数の開口部33aは、例えばフォトリソグラフィー又は電子ビーム露光等により形成される。各開口部33aの最小幅Wは、例えば1μm以上であり、また3μm以下である。各開口部33aが正方形である場合、最小幅Wは各辺の長さに相当する。また、各開口部33aが長方形である場合、最小幅Wは短辺の長さに相当する。
【0029】
次に、
図6(a)に示されるように、レジストマスク33の複数の開口部33aを介して、真空蒸着法により複数の部分金属膜21aを形成する(工程S42)。その後、レジストマスク33を除去することにより、レジストマスク33上に堆積した不要な金属材料を除去する(工程S43)。
図11(a)は、複数の部分金属膜21aを形成した後における層間絶縁膜5上の平面図である。
【0030】
続いて、2回目の部分形成工程S40では、
図6(b)に示されるように、複数の開口部34aを有するレジストマスク34を層間絶縁膜5上に形成する(工程S44)。
図10(b)は、レジストマスク34の平面形状を示す。
図10(b)に示されるように、レジストマスク34の複数の開口部34aは、上述したレジストマスク33の複数の開口部33aと同様に、第1方向A1及び第2方向A2に沿って格子状に並んで形成されている。但し、複数の開口部34aの位置は、複数の開口部33a(
図10(b)に仮想線で示す)に対して第1方向A1に移動(シフト)している。そして、
図7(a)に示されるように、レジストマスク34の複数の開口部34aを介して、真空蒸着法により複数の部分金属膜21bを形成する(工程S45)。その後、レジストマスク34を除去することにより、レジストマスク34上に堆積した不要な金属材料を除去する(工程S46)。
図11(b)は、複数の部分金属膜21bを形成した後における層間絶縁膜5上の平面図である。
【0031】
以降、上記と同様の部分形成工程S40を繰り返すことによって、複数の部分金属膜21c及び複数の部分金属膜21dを形成する。
図12(a)は複数の部分金属膜21cを形成後の平面図であり、
図12(b)は複数の部分金属膜21dを形成後の平面図である。このとき、レジストマスクの複数の開口部の位置を、前の部分形成工程S40における複数の開口部の位置に対して第1方向A1及び第2方向A2のうち少なくとも一方向に移動(シフト)させながら、部分金属膜21c及び21dを形成するとよい。こうして、全ての金属層21が形成される。なお、各部分形成工程S40では、部分金属膜21a〜21dの縁同士が互いに重なるように、レジストマスクの複数の開口部の大きさ及びシフト量を設定するとよい。
【0032】
上記の工程S4において、金属層21を形成する際に真空蒸着法を用いる理由を説明する。
図13(a)は、比較例として、層間絶縁膜5上の全面にスパッタリング法により金属層121を形成し、その上にレジストマスク122を形成した状態を示す断面図である。
図13(b)は、レジストマスク122から露出した金属層121をエッチングにより除去した状態を示す断面図である。金属層21をスパッタリング法により形成する場合、一般的には、
図13(a)及び
図13(b)に示されたように、層間絶縁膜5上の全面に金属層を形成したのち、エッチングにより不要な部分を除去する。しかしながら、この場合、エッチングにより金属層の周囲の層間絶縁膜5(図中のB部)にダメージ(損傷や膜厚減など)が生じるおそれがある。層間絶縁膜5にダメージが生じると、キャパシタ構造の耐圧性能の低下、素子寿命の劣化などの問題が生じることとなる。なお、メッキ法を用いて金属層21を形成する場合、層間絶縁膜5上にシードメタルをスパッタリング法で形成する必要があり、層間絶縁膜5に上記と同様のダメージが生じるおそれがある。真空蒸着法によれば、層間絶縁膜5にダメージを与えることなく金属層21を形成することが可能なので、キャパシタ構造の耐圧性能の低下や素子寿命の劣化を回避することができる。
【0033】
続いて、
図7(b)に示されるように、金属層21の表面に接する金属層22を真空蒸着法により形成する(工程S5)。この工程S5では、まず、金属層22の平面形状に応じた一つの開口部35aを有するレジストマスク35を金属層21の表面上に形成する。次に、真空蒸着法により、開口部35aを介して金属層21上に金属層22を堆積させる。その後、レジストマスク35を除去することにより、レジストマスク35上に堆積した不要な金属材料を除去する。これにより、金属層21及び22が順に積層された積層構造を有する上部電極層6が形成される。また、下部電極層4と、層間絶縁膜5と、上部電極層6とにより、基板2上にキャパシタ構造が形成される。
【0034】
続いて、
図8(a)に示されるように、金属層21上(本実施形態では金属層21上)に保護絶縁膜7を形成する(工程S6、本実施形態における第3工程)。この工程S6では、例えば金属層22を埋め込むように保護絶縁膜7を形成する。保護絶縁膜7は、例えばCVD法により形成される。
【0035】
続いて、
図8(b)に示されるように、保護絶縁膜7の一部を除去することによって保護絶縁膜7に開口部7aを形成する(工程S7、本実施形態における第4工程)。開口部7aの形成は、例えば開口部7aの形成位置に開口部を有するレジストマスクを保護絶縁膜7上に形成し、該レジストマスクの開口部を介して保護絶縁膜7をエッチングすることにより行われる。エッチングは、例えばフッ素系ガスを用いたドライエッチングである。
【0036】
続いて、
図9に示されるように、保護絶縁膜7の開口部7a上に、金属層21及び22と電気的に接続される金属配線8を形成する(工程S8、本実施形態における第5工程)。この工程では、まずTiW等のシード層を例えば真空蒸着法あるいはスパッタリング法により形成し、その上に、Au膜を例えば種々のめっき法により形成する。以上の工程を経て、本実施形態のキャパシタ構造10が作製される。
【0037】
以上に説明した本実施形態によるキャパシタ構造10の作製方法によって得られる効果について、従来の作製方法が有する課題とともに説明する。
図14(a)及び
図14(b)は、比較例に係るキャパシタ構造の作製方法の一部を説明する図である。
【0038】
図14(a)に示されるように、比較例に係るキャパシタ110は、下部電極層4、層間絶縁膜5、及び層間絶縁膜5上に設けられる上部電極106によって構成されている。上部電極106は、単一の金属層から構成されており、真空蒸着法等によって形成される。上部電極106の一部には、直径数μm程度のピンホール106aが形成されている。例えば、上部電極106を真空蒸着法等によって形成する際に上部電極106の材料の塊が層間絶縁膜5上に飛散し、且つ、当該塊が上部電極106のパターニング時等に除去されることによって、上記ピンホール106aが形成される。
【0039】
上部電極106においてピンホール106aが形成されると、上部電極106上に保護絶縁膜7を形成した後、当該ピンホール106aには保護絶縁膜7が埋め込まれる。この場合、保護絶縁膜7の一部を除去して開口部7aを形成する際に、保護絶縁膜7だけでなく、当該保護絶縁膜7の除去によって露出した層間絶縁膜5も除去される。このため、保護絶縁膜7の除去後に層間絶縁膜5に開口部5bが形成されてしまう。そして、
図14(b)に示されるように金属配線8を上部電極106上に形成すると、金属配線8は上部電極106だけでなく開口部5aを介して下部電極層4にも接触する。これにより、上部電極106と下部電極層4とが金属配線8を介して短絡し、キャパシタ110の不良の原因となってしまう。
【0040】
このような課題に対し、本実施形態に係るキャパシタ構造10の作製方法では、金属層21(上部電極層6)を真空蒸着法により形成する際に、複数の開口部33a,34aを有するレジストマスク33,34を用いて金属層21を部分的に形成する部分形成工程S40を繰り返す。この場合、金属層21全体に相当する一つの開口部を有するレジストマスクを用いる場合と比較して、レジストマスク33,34の開口部33a,34aの最小幅Wが小さくなる。故に、飛散した蒸着用材料の塊(スプラッシュ)は、レジストマスク33,34の開口部33a,34aを通過しにくくなり、層間絶縁膜5上に到達し難くなる。そして、レジストマスク33,34の開口部33a,34a上に留まった蒸着用材料の塊は、レジストマスク33,34を除去する際に取り除かれる。従って、本実施形態の作製方法によれば、蒸着用材料の塊に起因して金属層21に形成されるピンホールを低減し、上部電極層6と下部電極層4との短絡を低減できる。
【0041】
ここで、
図15は、本実施形態の作製方法による効果を説明するための図である。
図15に示されるように、蒸着用材料の塊Eの直径がレジストマスク33,34の開口部33a,34aよりも小さい場合、蒸着用材料の塊Eは開口部33a,34aを通って層間絶縁膜5上に達する。蒸着用材料の塊Eの直径が小さい場合、その質量が小さいため金属層21に付着したまま残存する傾向がある。これに対し、蒸着用材料の塊Eの直径が大きい場合、その質量が大きいため金属層21から除去され易い(すなわち、ピンホールを形成しやすい)傾向がある。しかしながら、蒸着用材料の塊Eの直径が大きい場合には、塊Eは開口部33a,34aを通過できずに層間絶縁膜5から離れた状態で維持される。このような塊Eは、レジストマスク33,34を除去する際に取り除かれる。
【0042】
また、本実施形態では、工程S5において、金属層21の表面に接する金属層22を形成する。これにより、蒸着用材料の塊Eに起因して形成されたピンホールを金属層22によって埋めることができ、上部電極層6と下部電極層4との短絡を更に低減できる。特に、本実施形態では、層間絶縁膜5上に到達した塊Eであっても、レジストマスク33,34の開口部33a,34a内において不安定となり、レジストマスク33,34を除去する際に脱落し易くなる。従って、金属層21の形成時に付着した塊Eが金属層22形成後に脱落して金属層21,22を貫通するピンホールを形成することを低減できる。
【0043】
また、本実施形態のように、各開口部33a,34aの最小幅は1μm以上3μm以下であってもよい。本発明者の知見によれば、蒸着用材料の塊の直径が1μmよりも小さいと、レジストマスク33,34を除去する際に取り除かれず、金属層21に残存する傾向がある。故に、直径が1μmよりも小さい蒸着用材料の塊は各開口部33a,34aを通過してもピンホールが形成される虞は少ない。従って、各開口部33a,34aの最小幅を1μm以上とすることにより、部分形成工程の回数が過度に増加することを抑制し、キャパシタ構造10の作製に要する時間の増加を抑えることができる。また、本発明者が蒸着用材料の塊の直径を実測したところ、直径1μm以上の塊の直径分布は、3μm以上が約70%、4μm以上が約50%であった。従って、各開口部33a,34aの最小幅が3μm以下であることにより、約70%の蒸着用材料の塊が開口部33a,34aを通過することを防ぎ、ピンホールの形成をより効果的に低減できる。
【0044】
また、本実施形態のように、互いに異なる部分形成工程S40によって形成された、互いに隣り合う部分金属膜21a〜21dの縁同士が重なり合ってもよい。これにより、部分金属膜21a〜21d間の隙間を低減し、該隙間に起因する上部電極層6と下部電極層4との短絡を抑制できる。
【0045】
(第1変形例)
ここで、上記実施形態の第1変形例について説明する。
図16は、本変形例に係る金属層21A(第2導電層)の平面図である。
図16に示されるように、本変形例の金属層21Aは、第2方向A2に沿って並ぶ複数の単位領域DAを含んでいる。各単位領域DAでは、N個(Nは2以上の整数、本変形例ではN=2)の部分金属膜21e,21fが設けられている。なお、
図16において、部分金属膜21e,21fはハッチングの種類によって識別される。部分金属膜21e,21fは、各単位領域D内において一定の規則で並んでいる。例えば、部分金属膜21e,21fが第1方向A1を長手方向として第1方向A1に沿って延びる細長形状を有しており、第2方向A2に沿って交互に並んでいる。換言すれば、金属層21Aは、互いに間隔をあけて縞状に配列された複数の部分金属膜21eと、互いに間隔をあけて縞状に配列された複数の部分金属膜21fとによって構成されている。そして、互いに隣接する部分金属膜21e,21fの縁同士は重なり合っている。これにより、部分金属膜21e,21fが金属層21Aの全体を隙間なく構成している。
【0046】
図17(a)及び
図17(b)は、本変形例の部分形成工程S40において用いられるレジストマスク36,37の平面形状をそれぞれ示す平面図である。レジストマスク36は複数の開口部36aを有し、レジストマスク37は複数の開口部37aを有する。
図17(a)及び
図17(b)に示されるように、レジストマスク36,37の開口部36a,37aは、第1方向A1を長手方向として第1方向A1に沿って延びる細長形状を有しており、その短手方向である第2方向A2に沿って並んでいる。但し、開口部37aの位置は、開口部36a(
図17(b)に仮想線で示す)に対して第2方向A2に移動(シフト)している。
図18(a)は、
図17(a)のレジストマスク36を用いた真空蒸着法により部分金属膜21eを形成した後の状態を示す平面図である。
図18(b)は、その後、
図17(b)のレジストマスク37を用いた真空蒸着法により部分金属膜21fを形成した後の状態を示す平面図である。なお、部分金属膜21e,21fの縁同士が互いに重なるように、複数の開口部36a,37aの幅および複数の開口部37aのシフト量を設定するとよい。本変形例においても、各開口部36a,37aの最小幅(短手方向の幅)Wは、例えば1μm以上であり、また3μm以下である。
【0047】
また、本変形例では部分金属膜を形成する部分形成工程S40を2回繰り返すことにより金属層21Aを形成するが、レジストマスクの複数の開口部の第2方向A2における幅をより狭くした上で、複数の開口部の位置を第2方向A2に移動させながら部分形成工程S40を3回以上繰り返すことにより金属層を形成してもよい。
【0048】
(第2変形例)
図19及び
図20は、上記実施形態の第2変形例に係る作製方法の部分工程を示す図であって、部分金属膜を形成した後における層間絶縁膜上の平面図である。上記実施形態では、4つの部分金属膜21a〜21d全てが重なる領域が金属層21内に生じるので、金属層21の厚さの均一性が低下してしまうという課題がある。そこで、本変形例では、上記実施形態の部分金属膜21a〜21dの位置を互いに隣接する単位領域D間で少しずつずらすことにより、3つ以上の部分金属膜が重なる領域を無くし、金属層21の厚さの均一性(表面平坦性)を高める。
【0049】
具体的には、まず、複数の開口部を有する第1のレジストマスクを用いて、
図19(a)に示すように、真空蒸着法により複数の部分金属膜21aを形成する。このとき、各部分金属膜21aに対して方向A1に隣接する部分金属膜21aを、各部分金属膜21aに対して方向A2に僅かにシフトさせる。また、各部分金属膜21aに対して方向A2に隣接する部分金属膜21aを、各部分金属膜21aに対して方向A1に僅かにシフトさせる。その後、第1のレジストマスクを除去する。
【0050】
次に、複数の開口部を有する第2のレジストマスクを用いて、
図19(b)に示すように、真空蒸着法により複数の部分金属膜21bを形成する。このとき、方向A2における各部分金属膜21bの位置が、方向A1において隣接する2つの部分金属膜21aの間になるように各部分金属膜21bを配置する。その後、第2のレジストマスクを除去する。
【0051】
続いて、複数の開口部を有する第3のレジストマスクを用いて、
図20(a)に示すように、真空蒸着法により複数の部分金属膜21cを形成する。このとき、方向A1における各部分金属膜21cの位置が、方向A2において隣接する2つの部分金属膜21bの間になるように、且つ、部分金属膜21aと重ならないように、各部分金属膜21cを配置する。その後、第3のレジストマスクを除去する。この時、
図20(a)に示すように、隙間が生じる。
【0052】
続いて、複数の開口部を有する第4のレジストマスクを用いて、
図20(b)に示すように、真空蒸着法により複数の部分金属膜21dを形成する。このとき、方向A2における各部分金属膜21dの位置が、方向A1において隣接する2つの部分金属膜21cの間になるように、且つ、方向A1における各部分金属膜21dの位置が、方向A2において隣接する2つの部分金属膜21aの間になるように、且つ、部分金属膜21bと重ならないように、各部分金属膜21dを配置する。その後、第4のレジストマスクを除去する。この時、
図20(b)に示すように、隙間が生じる。
【0053】
図21(a)は、部分金属膜21dを形成した後の一つの単位領域Dの拡大図である。また、
図21(b)〜
図21(f)は、それぞれ、
図21(a)に示されたXXIb−XXIb線、XXIc−XXIc線、XXId−XXId線、XXIe−XXIe線、及びXXIf−XXIf線に沿った断面図である。
図21(b)及び
図21(c)に示されるように、XXIb−XXIb線及びXXIc−XXIc線に沿った断面においては、金属層21の最も厚い部分は2つの部分金属膜21a及び21dが重なった部分である。
図21(e)に示されるように、XXIe−XXIe線に沿った断面においては、金属層21の最も厚い部分は2つの部分金属膜21a及び21bが重なった部分、並びに、2つの部分金属膜21b及び21cが重なった部分である。
図21(f)に示されるように、XXIf−XXIf線に沿った断面においては、金属層21の最も厚い部分は2つの部分金属膜21b及び21cが重なった部分である。これらのように、本変形例によれば、3つ以上の部分金属膜が重なる領域を無くし、金属層21の厚さの均一性を高めることができる。なお、
図21(d)に示されるように、XXId−XXId線に沿った断面においては、部分金属膜21aと部分金属膜21cとの間に隙間が形成される。この隙間は、レジストマスクの開口部の位置誤差を考慮して設けられたものであって、金属層22を形成する際に埋め込まれる。
【0054】
(実施例)
以下の表1は、(1)比較例として上部電極層が全面蒸着による単層膜(すなわち本実施形態の金属層22のみ)である形態、(2)比較例として上部電極層が全面蒸着による2層膜(すなわち本実施形態の金属層22を2層重ねたもの)である形態、(3)上記実施形態、及び(4)上記第1変形例、のそれぞれについて、各層の膜厚と不良率とを示す表である。表1に示されるように、形態(1)では不良率が2500ppmと悪く、形態(2)では700ppmまで改善するが、上記実施形態(3)及び上記第1変形例(4)では200ppm以下まで顕著に改善する。特に、上記実施形態(3)では100ppmまで改善しており、上記実施形態の有利な効果が示された。
【表1】
なお、この実施例では、キャパシタに10Vを印加したときの特性評価において、短絡しているキャパシタの割合を不良率とした。この評価では、最初から短絡していたものと、耐圧10V以下のものとを区別せずに不良としている。
【0055】
本発明によるキャパシタ構造の作製方法は、上述した実施形態に限られるものではなく、他に様々な変形が可能である。例えば、上記実施形態において、部分金属膜は四角形状に形成されているが、他の形状、例えば六角形状に形成されてもよい。部分金属膜を六角形状に形成する場合、部分形成工程を少なくとも3回繰り返すことにより、第2導電層を好適に形成することができる。
【0056】
また、下部電極層4は複数の金属層が積層された積層構造を有してもよい。下部電極層4は、例えばチタン層と金層との積層構造であってもよい。また、上記実施形態において、基板2上にキャパシタ構造10以外の半導体素子が設けられる場合、キャパシタ構造10は、当該半導体素子の形成前に設けられてもよいし、形成後に設けられてもよい。もしくは、キャパシタ構造10と半導体素子とを同時に形成してもよい。