(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6880460
(24)【登録日】2021年5月10日
(45)【発行日】2021年6月2日
(54)【発明の名称】画像処理装置
(51)【国際特許分類】
G06T 7/60 20170101AFI20210524BHJP
G06T 5/30 20060101ALI20210524BHJP
G06K 9/00 20060101ALI20210524BHJP
【FI】
G06T7/60 200K
G06T5/30
G06K9/00 P
【請求項の数】5
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2018-59185(P2018-59185)
(22)【出願日】2018年3月27日
(65)【公開番号】特開2019-174887(P2019-174887A)
(43)【公開日】2019年10月10日
【審査請求日】2020年2月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006150
【氏名又は名称】京セラドキュメントソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114971
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 修
(72)【発明者】
【氏名】津田 嶺雪
【審査官】
武田 広太郎
(56)【参考文献】
【文献】
特開平08−202819(JP,A)
【文献】
特開2000−076370(JP,A)
【文献】
特開2002−310937(JP,A)
【文献】
特開2013−061839(JP,A)
【文献】
中国特許出願公開第106156761(CN,A)
【文献】
T. Kasar et al,Learning to Detect Tables in Scanned Document Images Using Line Information,2013 12th International Conference on Document Analysis and Recognition,米国,IEEE,2013年 8月28日,1185-1189,URL,https://ieeexplore.ieee.org/document/6628801
【文献】
田中 宏 他,二値化閾値の補正と罫線形状判定による罫線抽出の高精度化,電子情報通信学会技術研究報告,日本,社団法人電子情報通信学会,2008年 2月14日,Vol.107 No.491,13〜18
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06T 7/60
G06K 9/00
G06T 5/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原画像内のエッジを検出しエッジ画像を生成するエッジ画像生成部と、
前記エッジ画像に対して膨張処理を実行し前記膨張処理後の前記エッジ画像に対して収縮処理を実行して、クロージング画像を生成する膨張収縮処理部と、
前記クロージング画像に基づいて罫線を特定し、前記クロージング画像と前記エッジ画像との差分画像に基づいて前記罫線の種別を特定する罫線特定部と、
を備えることを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記罫線特定部は、特定した前記罫線の位置に、前記差分画像において連続的な直線状の線分が現れている場合には、特定した前記罫線の種別を二重線罫線と判定することを特徴とする請求項1記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記罫線特定部は、特定した前記罫線の位置に、前記差分画像において間欠的に複数の線分が直線状に位置している場合には、特定した前記罫線の種別を破線罫線または鎖線罫線と判定することを特徴とする請求項2記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記罫線特定部は、特定した前記罫線のうち、前記罫線の種別が破線罫線、鎖線罫線および二重線罫線のいずれかであると判定された罫線以外の罫線の前記罫線の種別を実線罫線と判定することを特徴とする請求項3記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記罫線特定部は、前記クロージング画像に対して収縮処理を実行し、前記収縮処理後の前記クロージング画像に残っている線分のうち、前記罫線の種別が二重線罫線であると判定された罫線に対応する線分以外の線分に対応する前記罫線の種別を太線罫線と判定することを特徴とする請求項2記載の画像処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ある画像処理装置では、表領域画像の縦方向または横方向の投影分布に基づいて罫線を検出し、検出した罫線に対して膨張収縮処理を実行して、その罫線を実線にしている(例えば特許文献1参照)。つまり、表領域画像内の罫線が破線などであっても、その罫線は実線に変換される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−182052号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述の画像処理装置は、破線などを実線に変換しているが、検出された罫線の種別を特定することは困難である。
【0005】
本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、比較的簡単な処理で罫線の種別を特定する画像処理装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る画像処理装置は、原画像内のエッジを検出しエッジ画像を生成するエッジ画像生成部と、前記エッジ画像に対して膨張処理を実行し前記膨張処理後の前記エッジ画像に対して収縮処理を実行して、クロージング画像を生成する膨張収縮処理部と、前記クロージング画像に基づいて罫線を特定し、前記クロージング画像と前記エッジ画像との差分画像に基づいて前記罫線の種別を特定する罫線特定部とを備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、比較的簡単な処理で罫線の種別を特定する画像処理装置が得られる。
【0008】
本発明の上記又は他の目的、特徴および優位性は、添付の図面とともに以下の詳細な説明から更に明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本発明の実施の形態に係る画像処理装置の構成を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、
図1に示す画像処理装置の動作を説明するフローチャートである。
【
図3】
図3は、表組を含む原画像の一例を示す図である。
【
図4】
図4は、
図3に示す原画像に対応するエッジ画像(一部)を示す図である。
【
図5】
図5は、
図4に示すエッジ画像に対応するクロージング画像(一部)を示す図である。
【
図6】
図6は、
図4に示すエッジ画像および
図5に示すクロージング画像に対応する差分画像(一部)を示す図である。
【
図7】
図7は、
図5に示すクロージング画像に対して収縮処理を行うことで得られる画像(一部)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図に基づいて本発明の実施の形態を説明する。
【0011】
図1は、本発明の実施の形態に係る画像処理装置の構成を示すブロック図である。
図1に示す画像処理装置は、画像読取装置1、記憶装置2、通信装置3、印刷装置4、および演算処理装置5を備える。
【0012】
画像読取装置1は、原稿から原稿画像を光学的に読み取り、原稿画像の画像データ(ここでは、RGBデータ)を生成する内部装置である。
【0013】
また、記憶装置2は、各種データやプログラムを格納可能な装置である。記憶装置2としては、不揮発性メモリー、ハードディスクドライブなどの不揮発性の大容量記憶媒体が使用される。記憶装置2には、例えば原稿画像の画像データを記憶することができる。
【0014】
また、通信装置3は、外部装置との間でデータ通信を行う装置である。通信装置3としては、ネットワーク通信を行うネットワークインターフェイス、ファクシミリ通信を行うモデムなどが使用される。
【0015】
また、印刷装置4は、色変換、ハーフトーン処理などの、印刷のための画像処理を施された原稿画像の画像データに基づき原稿画像の印刷を実行する。
【0016】
また、演算処理装置5は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)などを有するコンピューターであり、ROMや記憶装置2などからRAMへプログラムをロードし、そのプログラムをCPUで実行することにより、各種処理部を実現する。この実施の形態では、演算処理装置5において、読取処理部11および表検出部12が実現される。
【0017】
読取処理部11は、画像読取装置1を制御して、原稿画像を取得し、原稿画像の画像データを記憶装置2、RAMなどに記憶する。
【0018】
表検出部12は、その画像データに基づいて原稿画像(原画像)内の罫線を検出し、検出した罫線に基づいて、原稿画像内の表組を検出する。
【0019】
表検出部12は、エッジ画像生成部21、膨張収縮処理部22、および罫線特定部23を備える。
【0020】
エッジ画像生成部21は、原画像内のエッジを検出しエッジ画像を生成する。例えば、エッジ画像生成部21は、原画像内で、主走査方向または副走査方向に沿って、濃度の立ち上がり位置から立ち下がり位置までの画素の画素値を第1値(例えば1)とし、それ以外の画素の画素値を第2値(例えば0)として、2値画像としてのエッジ画像を生成する。この立ち上がり位置および立ち下がり位置は、隣接画素同士の濃度差が所定値を超えている位置である。
【0021】
膨張収縮処理部22は、エッジ画像に対して膨張処理を実行し膨張処理後のエッジ画像に対して収縮処理(つまり、クロージング処理)を実行して、クロージング画像を生成する。
【0022】
膨張処理では、ある注目画素について、主走査方向および副走査方向において1画素の範囲に、画素値が第1値である画素があれば、注目画素の画素値が第1値とされる。
【0023】
収縮処理では、ある注目画素について、主走査方向および副走査方向において1画素の範囲に、画素値が第2値である画素があれば、注目画素の画素値が第2値とされる。
【0024】
罫線特定部23は、上述のクロージング画像に基づいて罫線を特定し、また、いわゆるブラックハット処理を実行してクロージング画像とエッジ画像との差分画像を生成し、その差分画像に基づいて罫線の種別を特定する。なお、差分画像は、各画素位置において、クロージング画像の画素値とエッジ画像の画素値との排他的論理和(あるいはその反転値)を画素値として有する2値画像である。
【0025】
例えば、罫線特定部23は、特定した罫線の位置に、差分画像において連続的な直線状の線分が現れている場合には、特定した罫線の種別を二重線罫線と判定する。
【0026】
また、罫線特定部23は、特定した罫線の位置に、差分画像において間欠的に複数の線分が直線状に位置している場合には、特定した罫線の種別を破線罫線または鎖線罫線と判定する。つまり、特定した罫線の種別は、その複数の線分の配置パターンに対応する種別(破線、一点鎖線、二点鎖線など)とされる。
【0027】
また、罫線特定部23は、特定した罫線のうち、罫線の種別が破線罫線、鎖線罫線および二重線罫線のいずれかであると判定された罫線以外の罫線の種別を実線罫線と判定する。
【0028】
具体的には、罫線特定部23は、クロージング画像に対して収縮処理を実行し、収縮処理後のクロージング画像に残っている線分のうち、罫線の種別が二重線罫線であると判定された罫線に対応する線分以外の線分に対応する罫線の種別を太線罫線(実線罫線の一種)と判定する。そして、それ以外の実線罫線の種別が細線罫線と判定される。
【0029】
なお、例えば、表検出部12は、特定した罫線により構成される1または連続する複数の矩形を特定し、特定した1または連続する複数の矩形についての外接矩形を特定し、その外接矩形を表領域として特定する。
【0030】
次に、上記画像処理装置の動作について説明する。
図2は、
図1に示す画像処理装置の動作を説明するフローチャートである。
【0031】
読取処理部11が原画像を取得すると(ステップS1)、エッジ画像生成部21は、原画像に対応するエッジ画像を生成する(ステップS2)。
【0032】
図3は、表組を含む原画像の一例を示す図である。
図4は、
図3に示す原画像に対応するエッジ画像(一部)を示す図である。
図3に示す原画像における表組には、太線罫線(実線罫線)、二重線罫線、破線罫線、鎖線罫線、および細線罫線(実線罫線)が含まれている。
図4では、エッジ画像の左上部分が示されており、上述の第1値の画素が白画素として表され、上述の第2値の画素が黒画素として表されている。
【0033】
次に、膨張収縮処理部22は、エッジ画像に対応するクロージング画像を生成する(ステップS3)。
図5は、
図4に示すエッジ画像に対応するクロージング画像(一部)を示す図である。
図5では、上述の第1値の画素が白画素として表され、上述の第2値の画素が黒画素として表されている。例えば
図5に示すように、クロージング画像では、太線罫線および二重線罫線に対応する位置に、太い線分が現れ、破線罫線、鎖線罫線および細線罫線に対応する位置に、細い線分が現れる。
【0034】
罫線特定部23は、既知の方法(例えばHough変換など)で、クロージング画像に基づいて罫線(つまり、罫線の位置)を特定する(ステップS4)。
【0035】
そして、罫線特定部23は、クロージング画像と元のエッジ画像との差分画像を生成し(ステップS5)、差分画像において、上述のようにして、罫線の種別のうち、二重線罫線、破線、および鎖線のいずれかを有する罫線を特定する(ステップS6)。
【0036】
図6は、
図4に示すエッジ画像および
図5に示すクロージング画像に対応する差分画像(一部)を示す図である。
図6では、上述の第1値の画素が白画素として表され、上述の第2値の画素が黒画素として表されている。例えば
図6に示すように、連続的な線分(
図6では横方向に延びる線分101)が現れている場合、その連続的な線分101の位置で特定された罫線の種別は、二重線罫線と特定される。原画像内では2本の線分(線分101の位置に含まれる2本の線分)となっている二重線罫線が、1本の二重線罫線として特定される。また、間欠的に位置している複数の線分(
図6では縦方向に並んでいる複数の線分102,103)が現れている場合、その複数の線分102,103の位置で特定された罫線の種別は、その複数の線分の配置パターンに応じて破線または鎖線と特定される。複数の線分102に対応する罫線の種別は、破線と判定され、複数の線分103に対応する罫線の種別は、鎖線(二点鎖線)と判定される。
【0037】
ここで、ステップS4において特定された罫線のうち、二重線罫線、破線、および鎖線のいずれかを有する罫線以外の罫線は実線罫線とされる。
【0038】
さらに、罫線特定部23は、クロージング画像に対して収縮処理を実行し(ステップS7)、収縮処理後のクロージング画像において残存する線分のうち、二重線罫線とされた罫線に対応する線分以外の線分に対応する罫線の種別を太線罫線と判定し(ステップS8)、太線罫線以外の実線罫線を細線罫線と判定する(ステップS9)。
【0039】
図7は、
図5に示すクロージング画像に対して収縮処理を行うことで得られる画像(一部)を示す図である。
図7では、上述の第1値の画素が白画素として表され、上述の第2値の画素が黒画素として表されている。例えば
図7に示すように、クロージング画像に対して収縮処理を行うことで、細線罫線に対応する線分はすべて消失し、太線罫線および二重線罫線に対応する線分111,112が残存する。そして、その残存する線分111,112に対応する罫線のうち、上述のように特定された二重線罫線(つまり、線分112に対応する罫線)以外の罫線(つまり、線分111に対応する罫線)の種別は太線罫線と特定される。
【0040】
以上のように、上記実施の形態によれば、エッジ画像生成部21は、原画像内のエッジを検出しエッジ画像を生成する。膨張収縮処理部22は、エッジ画像に対して膨張処理を実行し膨張処理後のエッジ画像に対して収縮処理を実行して、クロージング画像を生成する。罫線特定部23は、クロージング画像に基づいて罫線を特定し、クロージング画像とエッジ画像との差分画像に基づいて罫線の種別を特定する。
【0041】
これにより、比較的簡単な処理で罫線の種別が特定される。
【0042】
なお、上述の実施の形態に対する様々な変更および修正については、当業者には明らかである。そのような変更および修正は、その主題の趣旨および範囲から離れることなく、かつ、意図された利点を弱めることなく行われてもよい。つまり、そのような変更および修正が請求の範囲に含まれることを意図している。
【0043】
例えば、上記実施の形態において、膨張収縮処理部22は、連続して所定の複数回、膨張処理を行った後に、膨張処理と同一回数の収縮処理を実行するようにしてもよい。ただし、膨張処理の回数(および収縮処理の回数)は、所定の上限値以下に設定される。この回数は、固定値でもよいし、ユーザーにより指定される値でもよい。また、この上限値は、膨張処理によって、隣接する罫線同士が結合しない回数に設定される。
【0044】
また、上記実施の形態において、罫線特定部23は、クロージング画像に対する収縮処理を、連続して所定の複数回実行してもよい。
【0045】
また、上記実施の形態において、原画像内の罫線は、表組内の罫線でなくてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明は、例えば、複写機、複合機などの画像形成装置に適用可能である。
【符号の説明】
【0047】
21 エッジ画像生成部
22 膨張収縮処理部
23 罫線特定部