特許第6880476号(P6880476)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ いすゞ自動車株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6880476-車両のヒンジ構造 図000002
  • 特許6880476-車両のヒンジ構造 図000003
  • 特許6880476-車両のヒンジ構造 図000004
  • 特許6880476-車両のヒンジ構造 図000005
  • 特許6880476-車両のヒンジ構造 図000006
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6880476
(24)【登録日】2021年5月10日
(45)【発行日】2021年6月2日
(54)【発明の名称】車両のヒンジ構造
(51)【国際特許分類】
   B62D 25/12 20060101AFI20210524BHJP
【FI】
   B62D25/12 A
【請求項の数】2
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-196468(P2016-196468)
(22)【出願日】2016年10月4日
(65)【公開番号】特開2018-58451(P2018-58451A)
(43)【公開日】2018年4月12日
【審査請求日】2019年9月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107238
【弁理士】
【氏名又は名称】米山 尚志
(72)【発明者】
【氏名】神谷 浩一
(72)【発明者】
【氏名】山本 歩
【審査官】 結城 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−86638(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第2857266(EP,A1)
【文献】 欧州特許出願公開第2380787(EP,A1)
【文献】 実開昭61−83765(JP,U)
【文献】 特開2015−83420(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 25/10−25/13
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の前部のエンジンルームをボンネットが開閉するように前記ボンネットを車体に対して回転可能に支持する車両のヒンジ構造であって、
アーム支持部を有し、前記エンジンルームの後部で前記車体側に固定されるヒンジベースと、
車幅方向に延びる回転軸を中心として前記アーム支持部に対して回転自在に支持され、前記アーム支持部の車幅方向外側のベース外面の車幅方向外側に配置される軸支持部と、前記軸支持部よりも車幅方向内側に配置されて前記ボンネットに対して固定されるボンネット支持部と、前記軸支持部と前記ボンネット支持部との間で前記軸支持部から前記ボンネット支持部まで延びるアーム中間部とを有し、前記ボンネットが前記エンジンルームを閉止した閉止状態で前記ボンネット支持部が前記軸支持部よりも前方に配置されるヒンジアームと、を備え、
前記ヒンジアームの前記アーム中間部は、前記ベース外面よりも車幅方向外側で前記軸支持部から連続して前記ボンネット支持部側へ向かって延びる外側アーム部を有し、
前記ヒンジアームの前記外側アーム部は、前記閉止状態で前記アーム支持部の前記ベース外面と車幅方向に重なる領域を前記軸支持部よりも前方に有する
ことを特徴とする車両のヒンジ構造。
【請求項2】
請求項1に記載のヒンジ構造であって、
前記ヒンジベースの前記アーム支持部の前縁部は、車幅方向から視て前記回転軸よりも前方で前記ヒンジアームと交叉し、
前記ヒンジベースは、前記アーム支持部の前記前縁部よりも後方に配置されるストッパ部を有し、
前記ヒンジアームは、前記閉止状態で前記ヒンジベースの前記ストッパ部に対応する位置に配置される係合部を有し、
前記閉止状態の前記ヒンジアームの前記ボンネット支持部に車幅方向内側への荷重が作用して、前記アーム支持部の前記前縁部を支点として前記ヒンジアームの前記軸支持部側に車幅方向外側への力が作用すると、前記ヒンジアームの前記係合部と前記ヒンジベースの前記ストッパ部とが係合し、前記ヒンジベースの前記ストッパ部が、前記アーム支持部の前記前縁部よりも後方の前記ヒンジアームの車幅方向外側への移動を規制する
ことを特徴とする車両のヒンジ構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体とボンネットとを回転可能に連結する車両のヒンジ構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、エンジンルーム並びにフードの車両幅方向の両側に左右一対で配設される車両用フードヒンジ構造が記載されている。車両用フードヒンジ構造のフードヒンジは、ヒンジベースと、ヒンジアームとを備えている。ヒンジベースは、カウルトップサイドに取付られる取付部と、取付部の車両幅方向の内側の端部から車両上方側へ屈曲された支持部とを備え、車両正面視で略L字状に形成されている。ヒンジアームは、ヒンジベースから車両前方側に向かって順次配列された第1フランジ部、第2フランジ部、第3フランジ及び第4フランジ部を有しており、これらの部位は一体に形成されている。ヒンジアームの第1フランジ部は、ヒンジベースの支持部に対して車両幅方向の内側に平行に配置される側壁部を有しており、側壁部の車両上方側には回動軸孔が配設されている。回動軸孔には回動軸が挿入されており、この回動軸を回動中心としてヒンジアームが回動自在にされている。第4フランジ部は、第1フランジ部の側壁部から、第2フランジ部の側壁部、及び第3フランジ部の側壁部を介して車両前方側に向かって延設された側壁部を有し、側壁部の車両上方側の端部には、該端部を車両幅方向の内側に屈曲させた頂壁部が形成されている。ヒンジアームの第4フランジ部の頂壁部には、フードが固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013−169899号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載の車両用フードヒンジ構造では、ヒンジアームの第4フランジ部の側壁部の車両上方側の端部を車両幅方向の内側に屈曲させた頂壁部にフード(ボンネット)が固定される。このように、側壁部よりも車幅方向内側の頂壁部にボンネットが固定されるので、車両の前部が衝突物と衝突して、ボンネットを介してヒンジアームの第4フランジ部に後方への荷重が入力すると、ヒンジアームには、車幅方向内側へ向かう力が作用する。車両の衝突時等にヒンジアームに対して車幅方向内側への大きな力が作用すると、ヒンジアームの前端側が車幅方向内側へ移動して、ヒンジアームとヒンジベースとの連結部分である回動軸が破断してしまうおそれがある。
【0005】
そこで、本発明は、ボンネットに対して車両前方から荷重が入力した際に、ヒンジアームとヒンジベースとの連結部分の破断を防止することが可能な車両のヒンジ構造の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本開示は、車両の前部のエンジンルームをボンネットが開閉するようにボンネットを車体に対して回転可能に支持する車両のヒンジ構造であって、ヒンジベースとヒンジアームとを備える。ヒンジベースは、アーム支持部を有し、エンジンルームの後部で車体側に固定される。ヒンジアームは、車幅方向に延びる回転軸を中心としてアーム支持部に対して回転自在に支持され、アーム支持部の車幅方向外側のベース外面の車幅方向外側に配置される軸支持部と、軸支持部よりも車幅方向内側に配置されてボンネットに対して固定されるボンネット支持部とを有し、ボンネットがエンジンルームを閉止した閉止状態でボンネット支持部が軸支持部よりも前方に配置される。ヒンジアームは、ベース外面よりも車幅方向外側で軸支持部から連続してボンネット支持部側へ向かって延びる外側アーム部を有する。ヒンジアームの外側アーム部は、閉止状態でアーム支持部のベース外面と車幅方向に重なる領域を回転軸よりも前方に有する。
本発明の第1の態様は、上記開示に係る車両のヒンジ構造であって、ヒンジアームは、軸支持部とボンネット支持部との間で軸支持部からボンネット支持部まで延びるアーム中間部を有する。ヒンジアームのアーム中間部は、ベース外面よりも車幅方向外側で軸支持部から連続してボンネット支持部側へ向かって延びる外側アーム部を有する。ヒンジアームの外側アーム部は、閉止状態でアーム支持部のベース外面と車幅方向に重なる領域を軸支持部よりも前方に有する。
【0007】
上記構成では、ヒンジアームのボンネット支持部が、軸支持部よりも車幅方向内側に配置されるので、車両の衝突時等に閉止状態のヒンジアームのボンネット支持部に前方からの力が入力すると、ヒンジアームのボンネット支持部に車幅方向内側への力が作用する。ヒンジアームは、ベース外面よりも車幅方向外側で軸支持部から連続してボンネット支持部側へ向かって延びる外側アーム部を有し、また、外側アーム部は、閉止状態でアーム支持部のベース外面と車幅方向に重なる領域を回転軸よりも前方に有する。このため、ヒンジアームのボンネット支持部に車幅方向内側への力が作用した際に、外側アーム部の上記領域がアーム支持部のベース外面に当接し、この当接によってヒンジアームのボンネット支持部の車幅方向内側への移動を規制することができるので、ヒンジアームとヒンジベースとの連結部分の破断を防止することができる。
【0008】
本発明の第2の態様は、上記第1の態様のヒンジ構造であって、ヒンジベースのアーム支持部の前縁部は、車幅方向から視て回転軸よりも前方でヒンジアームと交叉する。ヒンジベースは、アーム支持部の前縁部よりも後方に配置されるストッパ部を有する。ヒンジアームは、閉止状態でヒンジベースのストッパ部に対応する位置に配置される係合部を有する。閉止状態のヒンジアームのボンネット支持部に車幅方向内側への荷重が作用して、アーム支持部の前縁部を支点としてヒンジアームの軸支持部側に車幅方向外側への力が作用すると、ヒンジアームの係合部とヒンジベースのストッパ部とが係合し、ヒンジベースのストッパ部が、アーム支持部の前縁部よりも後方のヒンジアームの車幅方向外側への移動を規制する。
【0009】
上記構成では、ヒンジベースのアーム支持部の前縁部は、車幅方向から視て回転軸よりも前方でヒンジアームと交叉するので、ヒンジアームのボンネット支持部に車幅方向内側への荷重が作用すると、アーム支持部の前縁部を支点としてヒンジアームの軸支持部側に車幅方向外側への力が作用する。ヒンジアームの軸支持部側に車幅方向外側への力が作用すると、ヒンジアームの係合部とヒンジベースのストッパ部とが係合し、ヒンジベースのストッパ部が、アーム支持部の前縁部よりも後方のヒンジアームの車幅方向外側への移動を規制する。このため、閉止状態のボンネットに対して車両前方から荷重が入力した際に、ヒンジアームとヒンジベースとの連結部分の負担を低減することができ、ヒンジアームとヒンジベースとの連結部分の破断を防止することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ボンネットに対して車両前方から荷重が入力した際に、ヒンジアームとヒンジベースとの連結部分の破断を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態に係るヒンジを備えた車両の前部の斜視図である。
図2図1の車両のヒンジの拡大図である。
図3図1のヒンジの上面図である。
図4図1のヒンジの車幅方向外側からの側面図である。
図5図1のヒンジの車幅方向外側の後方からの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。なお、各図において、FRは車両の前方を、UPは上方を、INは車幅方向内側をそれぞれ示し、一点鎖線CLはボンネットを傾動させる際の回転軸を示す。また、以下の説明において、左右方向は車両前方を向いた状態での左右方向を意味する。
【0013】
図1に示すように、本実施形態に係る車両のヒンジ構造は、車両1の前部のエンジンルーム2をボンネット3が開閉するようにボンネット3を車体4に対して回転可能に支持するヒンジ10に適用される。
【0014】
エンジンルーム2は、車両1の車室5よりも前方に配置され、エンジンルーム2内にはエンジン(図示省略)が搭載される。ボンネット3は、複数の部材(アウタパネルやインナパネル等)を組み合わせることによって略板状に形成された構造体であって、エンジンルーム2の上方に配置され、ボンネット3の後端部3aが、エンジンルーム2の後方の車体4側に対し、左右1対のヒンジ10によって回転自在に連結される。なお、左右のヒンジ10は、車両1の左右に対称的に設けられ、ほぼ同様の構成を有するため、以下では、左側のヒンジ10について説明し、右側の説明を省略する。また、以下の説明において、ヒンジ10についての各方向は、特に説明のない限り、ボンネット3がエンジンルーム2を上方から閉止した閉止状態における方向である。
【0015】
図1及び図2に示すように、ヒンジ10は、車体4に対して固定されるヒンジベース11と、ボンネット3に対して固定されるヒンジリーフ(ヒンジアーム)12とを備える。ヒンジベース11とヒンジリーフ12とは、車幅方向に延びるヒンジピン13を介して回転自在に連結される。
【0016】
図2図5に示すように、ヒンジベース11は、金属製の板体によって構成された構造体であって、車体4(図1参照)側に固定される固定板部14と、ヒンジリーフ12を支持するリーフ支持板部(アーム支持部)15と、ヒンジリーフ12の後述する係止爪(係合部)35を係止する係止板部(ストッパ部)17と、中板部19とを一体的に有する。
【0017】
ヒンジベース11の固定板部14は、上下方向と交叉した状態で前後方向に長尺の板部であって、前端部及び後端部のそれぞれに上下方向に貫通するボルト開口18が形成される。固定板部14は、その車幅方向の内縁部14aと前後方向の後縁部14bとの間に傾斜縁部14cを有する。固定板部14の内縁部14aは、前後方向に略直線状に延び、後縁部14bは、車幅方向の略直線状に延びる。固定板部14の傾斜縁部14cは、前後方向及び車幅方向に対して傾斜し、内縁部14aの後端から車幅方向外側の後方へ向かって後縁部14bの車幅方向内端まで略直線状に延びる。固定板部14は、僅かに前下方に傾斜した状態で、前後のボルト開口18を挿通するボルト(図示省略)によって車体4側に締結固定される。
【0018】
ヒンジベース11のリーフ支持板部15は、車幅方向と交叉して固定板部14の内縁部14aに沿って起立する板部であって、車幅方向から視て(以下、側面視という)、前側が低く、後側が高い略三角形状に形成される。リーフ支持板部15の後上端部20には、車幅方向に貫通してヒンジピン13が挿通する軸挿通孔(図示省略)が形成され、後上端部20がヒンジリーフ12に対して連結されるベース側連結部として機能する。リーフ支持板部15の後縁部は、固定板部14の車幅方向内側の後端から連続して後上方へ傾斜して直線状に延びる下側の下部後縁部15aと、下部後縁部15aの上端から連続して後上方へ傾斜して直線状に延びる上側の上部後縁部15bとを有する。固定板部14に対するリーフ支持板部15の後縁部の後側の傾斜角度は、下部後縁部15aよりも上部後縁部15bの方が大きい。リーフ支持板部15の前縁部15cは、固定板部14の内縁部14aの前端側とリーフ支持板部15の後上端部20側との間で後下方へ緩やかに湾曲する略円弧状に延びている。リーフ支持板部15は、軸挿通孔と略同じ高さ位置に配置されて前縁部15cから上方へ突出する開放ストッパ21を有する。開放ストッパ21の上端部21aは、車幅方向外側へ曲折しており、後述するヒンジリーフ12の外側アーム部22と当接してヒンジリーフ12の開放方向への傾動を開放位置に規制する。
【0019】
リーフ支持板部15には、軸挿通孔の下方近傍から、固定板部14の内縁部14aのうちの後端部の近傍まで連続して延びるベース側ビード23が形成される。ベース側ビード23は、リーフ支持板部15の車幅方向内側のベース内面27(リーフ支持板部15の車幅方向内側面)側が車幅方向内側へ突出し、且つリーフ支持板部15の車幅方向外側のベース外面28(リーフ支持板部15の車幅方向外側面)側が車幅方向内側へ凹む状態で上下方向に延びて、リーフ支持板部15を補強する。
【0020】
ヒンジベース11の係止板部17は、前後方向と交叉して固定板部14の後縁部14bに沿って起立する上下方向に長尺の板部であって、前後方向に貫通する縦長の爪挿入孔24を有する。係止板部17は、側面視において固定板部14の後縁部14bから後上方へ傾斜して直線状に延びている。係止板部17の車幅方向の内縁部は、下部内縁部17aと上部内縁部17bとを有する。下部内縁部17aは、固定板部14の後縁部14bの車幅方向内端と、リーフ支持板部15の下部後縁部15aと上部後縁部15bとが交叉する角部25との間で直線状に延びる。上部内縁部17bは、下部内縁部17aの上端(角部25)からリーフ支持板部15の上部後縁部15bに沿って延びる。係止板部17の上端は、リーフ支持板部15の後上端部20の軸挿通孔よりも下方に配置される。爪挿入孔24は、下部内縁部17aの上端(角部25)よりも上方に配置される。爪挿入孔24には、後述するヒンジリーフ12の係止爪35が挿入され、爪挿入孔24よりも車幅方向外側の係止板部17がストッパ部として機能する。
【0021】
ヒンジベース11の中板部19は、略三角形状の板部であって、その外縁が、固定板部14の傾斜縁部14cと、リーフ支持板部15の下部後縁部15aと、係止板部17の下部内縁部17aとに連続している。
【0022】
ヒンジリーフ12は、ヒンジベース11に対して回転自在に連結されるリーフ側連結部(軸支持部)29から、リーフ側連結部29よりも前方、且つ車幅方向内側に配置されてボンネット3(図1参照)の下面に対して固定されるボンネット側連結部(ボンネット支持部)31まで連続して延びる。リーフ側連結部29は、ヒンジベース11のリーフ支持板部15のベース外面28よりも車幅方向外側に配置され、ボンネット側連結部31は、ベース外面28よりも車幅方向内側に配置される。リーフ側連結部29とボンネット側連結部31との間の中間部32は、ベース外面28よりも車幅方向外側でリーフ側連結部29から連続してボンネット側連結部31へ向かって延びる外側アーム部22と、ベース外面28よりも車幅方向内側で外側アーム部22から連続してボンネット側連結部31まで延びる内側アーム部30とによって構成される。すなわち、ヒンジリーフ12は、基端側から先端側へ向かって、リーフ側連結部29、外側アーム部22、内側アーム部30、ボンネット側連結部31の順に延びている。上面視において、リーフ側連結部29及び外側アーム部22は、ボンネット3の外縁部よりも外側に配置され、内側アーム部30及びボンネット側連結部31は、ボンネット3の外縁部よりも内側(ボンネット3の下方)に配置される(図3参照)。なお、以下の説明において、基端側とは、リーフ側連結部29側を、先端側とは、ボンネット側連結部31側をそれぞれ意味する。
【0023】
ヒンジリーフ12のリーフ側連結部29は、車幅方向と交叉する板部であって、車幅方向に貫通してヒンジピン13が挿通する軸挿通孔(図示省略)を有し、ヒンジピン13を介してヒンジベース11のリーフ支持板部15の後上端部20に回転自在に連結される。これにより、ヒンジリーフ12は、ヒンジピン13の軸心(回転軸)CLを中心としてヒンジベース11に回転自在に支持される。
【0024】
ヒンジリーフ12の外側アーム部22は、外側アーム縦板部33と外フランジ部34と係止爪(係合部)35とを有し、ベース外面28よりも車幅方向外側でベース外面28に沿って配置される。
【0025】
外側アーム縦板部33は、ヒンジベース11のベース外面28よりも車幅方向外側、且つ係止板部17の爪挿入孔24よりも車幅方向内側で車幅方向と交叉する板部であって、リーフ側連結部29から連続して前下方へ直線状に延びてから、その下端側で湾曲して前上方へ延びるように、側面視で略L字状に形成される。外側アーム縦板部33の前側の内側アーム部30との境界部39は、側面視においてリーフ支持板部15の前縁部15cよりも僅かに前方で、リーフ支持板部15と重ならない領域に配置される。すなわち、リーフ支持板部15の前縁部15cは、側面視においてヒンジピン13の軸心CLよりも前方でヒンジリーフ12と交叉する。外側アーム縦板部33の後縁部33aは、ヒンジベース11の係止板部17から僅かに前方へ離間した位置で、係止板部17の延設方向に沿って上下方向に傾斜して直線状に延びる。外側アーム縦板部33の下縁部33bは、ヒンジベース11の固定板部14よりも上方に配置される。外側アーム縦板部33の後縁部33aと下縁部33bとの角部は、面取りされて側面視において湾曲している。外側アーム縦板部33の車幅方向内側面36は、その略全域がベース外面28に対向する。すなわち、外側アーム部22は、ベース外面28と車幅方向に重なる領域を、ヒンジピン13の軸心CLよりも前方に有する。
【0026】
外側アーム縦板部33には、リーフ側連結部29の下方近傍から、外側アーム部22の延設方向に沿って内側アーム部30側へ連続するリーフ側ビード37が形成される。リーフ側ビード37は、外側アーム縦板部33の車幅方向内側面36側が車幅方向外側へ凹み、且つ外側アーム縦板部33の車幅方向外側面38側が車幅方向外側へ突出する状態で外側アーム部22の延設方向に沿って延びて、ヒンジリーフ12を補強する。
【0027】
外フランジ部34は、外側アーム縦板部33の後縁部33a及び下縁部33bから曲折して車幅方向外側へ突出し、外側アーム縦板部33の後縁部33aの上端から下縁部33bの前端まで連続して延びている。外フランジ部34は、閉止状態で、その前端部34aが側面視においてリーフ支持板部15の前縁部15cの一部と略同じ位置(車幅方向に重なる位置)になるように形成される。外フランジ部34のうち外側アーム縦板部33の後縁部33aに沿って直線状に延びている領域は、ヒンジベース11の係止板部17から僅かに前方に離間した位置で係止板部17と対向する。外フランジ部34は、ヒンジリーフ12を補強する。
【0028】
係止爪35は、外フランジ部34のうち外側アーム縦板部33の後縁部33aに沿って直線状に延びている領域のうち、ヒンジベース11の係止板部17の爪挿入孔24と略同じ高さ位置に設けられる。係止爪35は、外フランジ部34から車幅方向外側へ突出してから曲折して後方へ延び、係止板部17の爪挿入孔24を挿通する。すなわち、係止爪35は、閉止状態で係止板部17の爪挿入孔24に対応する位置に配置される。なお、係止爪35と係止板部17の爪挿入孔24とは、ボンネット3を閉止状態から開放状態にするためのヒンジリーフ12の傾動時に、互いに干渉しない大きさに形成され、ヒンジベース11に対するヒンジリーフ12の傾動を許容する。ボンネット3を閉止状態から開放状態にする際には、係止爪35は、前方へ移動して、係止板部17の爪挿入孔24から前側へ抜ける。
【0029】
ヒンジリーフ12の内側アーム部30は、内側アーム縦板部40と内フランジ部41とを有し、側面視において外側アーム部22の先端側から連続して前上方へ向かって延びる(図4参照)。また、内側アーム部30は、上面視において外側アーム部22の先端側から連続して車幅方向内側の前方へ向かって延び、リーフ支持板部15の前方を横断する(図3参照)。内側アーム部30の前端は、ヒンジベース11の固定板部14の前端よりも後方に配置される。内側アーム縦板部40は、車幅方向と交叉し、外側アーム縦板部33の前端から連続して車幅方向内側の前上方へ延びる。内フランジ部41は、内側アーム縦板部40の上縁部から曲折して車幅方向内側へ突出し、ヒンジリーフ12を補強する。
【0030】
内側アーム縦板部40には、外側アーム縦板部33側から連続してリーフ側ビード37が形成される。すなわち、リーフ側ビード37は、リーフ側連結部29の下方近傍から内側アーム縦板部40の前端部まで連続して延び、側面視においてリーフ支持板部15の前縁部15cと交叉する。リーフ側ビード37は、内側アーム縦板部40の車幅方向内側面側が車幅方向外側へ凹み、且つ内側アーム縦板部40の車幅方向外側面42側が車幅方向外側へ突出する状態で内側アーム部30の延設方向に沿って延びて、ヒンジリーフ12を補強する。
【0031】
ヒンジリーフ12のボンネット側連結部31は、前側アーム縦板部43と前側内フランジ部44とを有し、内側アーム部30の先端側から連続して僅かに前下方へ傾斜して延びる(図4参照)。ボンネット側連結部31の前端は、ヒンジベース11の固定板部14の前端よりも前方に配置される。前側アーム縦板部43は、車幅方向と交叉し、内側アーム縦板部40の前端から連続して僅かに前下方へ傾斜して延びる。前側内フランジ部44は、前側アーム縦板部43の上縁部から曲折して車幅方向内側へ突出し、且つ内側アーム部30の内フランジ部41の前端から連続して上下方向と交叉した状態で前方へ延びる。前側内フランジ部44には、互いに前後に離間した位置に配置されて上下方向に貫通する2つのボルト挿通孔45が形成される。ボンネット側連結部31は、2つのボルト挿通孔45を挿通するボルト(図示省略)によって、ボンネット3に対して締結固定される。
【0032】
上記のように構成されたヒンジ10では、リーフ側連結部29が、ヒンジベース11のリーフ支持板部15のベース外面28よりも車幅方向外側に配置され、ボンネット側連結部31が、ベース外面28よりも車幅方向内側に配置される。すなわち、ヒンジリーフ12のボンネット側連結部31が、リーフ側連結部29よりも車幅方向内側に配置される。このため、車両1の前部が衝突物と衝突した際に、ボンネット3を介してヒンジリーフ12のボンネット側連結部31に前方からの荷重が入力すると、その荷重は、内側アーム部30が延びる方向(ボンネット側連結部31の後端から車幅方向外側の後方)と、車幅方向内側の後方とに分解されて各方向へ分力として作用する。すなわち、車両1の前部が衝突物と衝突した際には、ボンネット側連結部31に車幅方向内側への力が作用する。
【0033】
ヒンジリーフ12の外側アーム部22が、ベース外面28と車幅方向に重なる領域を、ヒンジピン13の軸心CLよりも前方に有し、ベース外面28よりも車幅方向外側でベース外面28に沿って配置される。このため、車両1の前部が衝突物と衝突して、ボンネット側連結部31に車幅方向内側への力が作用した際に、外側アーム部22の外側アーム縦板部33の車幅方向内側面36のうちベース外面28と対向する領域がリーフ支持板部15のベース外面28に面接触(当接)し、この面接触によってボンネット側連結部31の車幅方向内側への移動を規制することができる。従って、ヒンジリーフ12とヒンジベース11との連結部分(ヒンジピン13を含む)の破断を防止することができる。
【0034】
また、ヒンジベース11のリーフ支持板部15の前縁部15cは、側面視においてヒンジピン13の軸心CLよりも前方でヒンジリーフ12と交叉するので、ヒンジリーフ12のボンネット側連結部31に車幅方向内側への荷重が作用すると、ヒンジリーフ12とリーフ支持板部15の前縁部15cとが当接し、リーフ支持板部15の前縁部15cを支点としてヒンジリーフ12のリーフ側連結部29側に車幅方向外側への力が作用する。ヒンジリーフ12のリーフ側連結部29側に車幅方向外側への力が作用すると、ヒンジリーフ12の係止爪35が、ヒンジベース11の係止板部17の爪挿入孔24を挿通した状態で、車幅方向外側へ移動して爪挿入孔24よりも車幅方向外側の係止板部17に当接する。すなわち、ヒンジリーフ12の係止爪35とヒンジベース11の係止板部17とが係合し、係止板部17が、リーフ支持板部15の前縁部15cよりも後方のヒンジリーフ12(外側アーム部22やリーフ側連結部29)の車幅方向外側への移動を規制する。このため、閉止状態のボンネット3に対して車両前方から荷重が入力した際に、ヒンジリーフ12とヒンジベース11との連結部分の負担を低減することができ、ヒンジリーフ12とヒンジベース11との連結部分の破断を防止することができる。
【0035】
従って、本実施形態によれば、ボンネット3に対して車両前方から荷重が入力した際に、ヒンジリーフ12とヒンジベース11との連結部分の破断を防止することができる。
【0036】
また、ヒンジベース11のリーフ支持板部15には、リーフ支持板部15を補強するベース側ビード23が形成される。このため、閉止状態のボンネット3に対して車両前方から荷重が入力してリーフ支持板部15の前縁部15cとヒンジリーフ12とが当接し、ヒンジリーフ12からの荷重がリーフ支持板部15に入力した際に、ベース側ビード23によってリーフ支持板部15の変形を防止することができる。また、ヒンジリーフ12の外側アーム縦板部33及び内側アーム縦板部40には、側面視においてリーフ支持板部15の前縁部15cと交叉してヒンジリーフ12を補強するリーフ側ビード37が形成される。このため、このため、閉止状態のボンネット3に対して車両前方から荷重が入力してリーフ支持板部15の前縁部15cとヒンジリーフ12とが当接しても、リーフ側ビード37によってヒンジリーフ12の折れ曲がり変形を防止することができる。このように、閉止状態のボンネット3に対して車両前方から荷重が入力した際に、リーフ支持板部15及びヒンジリーフ12の変形を防止することができるので、リーフ支持板部15又はヒンジリーフ12が変形してボンネット3が後方のフロントガラス6(図1参照)側へ移動してしまうことを防止することができる。
【0037】
なお、本実施形態では、外側アーム部22と内側アーム部30との境界部39を、側面視においてリーフ支持板部15の前縁部15cよりも僅かに前方に配置し、外側アーム縦板部33の車幅方向内側面36の略全域を、ベース外面28に対向させたが、これに限定されるものではない。例えば、外側アーム部22をリーフ支持板部15の前縁部15cよりも大きく前方まで延ばしてもよい。この場合、外側アーム縦板部33の車幅方向内側面36のうち、リーフ支持板部15の前縁部15cよりも後方の領域がベース外面28と対向する。
【0038】
また、ヒンジリーフ12の形状は、上記に限定されるものではなく、ボンネット側連結部31がリーフ側連結部29よりも車幅方向内側に配置され、且つ閉止状態でボンネット側連結部31がリーフ側連結部29よりも前方に配置されるものであれば、他の形状であってよい。
【0039】
また、ヒンジベース11の形状は、上記に限定されるものではない。例えば、リーフ支持板部15は、側面視において前側が低く、後側が高い略三角形状でなくてもよく、リーフ支持板部15の前縁部15cが、側面視においてヒンジピン13の軸心CLよりも前方でヒンジリーフ12と交叉する形状であればよい。
【0040】
また、本実施形態では、ヒンジリーフ12に係止爪35を設け、ヒンジベース11の係止板部17に爪挿入孔24を設け、係止爪35と爪挿入孔24よりも車幅方向外側の係止板部17とを係合させることにより、リーフ支持板部15の前縁部15cよりも後方のヒンジリーフ12の車幅方向外側への移動を規制したが、リーフ支持板部15の前縁部15cよりも後方のヒンジリーフ12の車幅方向外側への移動を規制する方法は、これに限定されるものではない。例えば、ヒンジリーフ12の外側アーム部22の外フランジ部34に爪挿入孔を設け、閉止状態で前記爪挿入孔を後方から前方へ挿通する突出部(ストッパ部)をヒンジベース11の係止板部17の前面から前方へ突出させてもよい。この場合、閉止状態のボンネット3に対して車両前方から荷重が入力した際に、外側アーム部22の外フランジ部34のうち爪挿入孔よりも車幅方向内側の領域(係合部)がヒンジベース11の前記突出部と係合する。または、ヒンジリーフ12の外側アーム部22よりも僅かに車幅方向外側に配置されて、ヒンジベース11の係止板部17の前面から前方へ突出する突出部(ストッパ部)を設けてもよい。この場合、閉止状態のボンネット3に対して車両前方から荷重が入力した際に、ヒンジリーフ12の外側アーム部22の一部の領域(係合部)が、ヒンジベース11の前記突出部に当接することによって、リーフ支持板部15の前縁部15cよりも後方のヒンジリーフ12の車幅方向外側への移動を規制する。
【0041】
また、本実施形態では、ヒンジリーフ12のリーフ側連結部29側に車幅方向外側への力が作用した際に、ヒンジリーフ12の係止爪35が、車幅方向外側へ移動して爪挿入孔24よりも車幅方向外側の係止板部17と係合したが、これに限定されるものではなく、ヒンジリーフ12の係止爪35が、車幅方向外側へ移動する前に係止板部17と係合していてもよい。すなわち、閉止状態で、ヒンジリーフ12の係止爪35とヒンジベース11の係止板部17とが当接して係合していてもよい。
【0042】
また、本実施形態では、リーフ支持板部15の前縁部15cよりも後方のヒンジリーフ12の車幅方向外側への移動を規制するために、ヒンジリーフ12に係止爪(係合部)35を設け、ヒンジベース11の係止板部(ストッパ部)17に爪挿入孔24を設け、爪挿入孔24よりも車幅方向側の係止板部17をストッパ部として機能させたが、係合部及びストッパ部を設けなくてもよい。
【0043】
以上、本発明について、上記実施形態に基づいて説明を行ったが、本発明は上記実施形態の内容に限定されるものではなく、当然に本発明を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。すなわち、この実施形態に基づいて当業者等によりなされる他の実施形態、実施例および運用技術等は全て本発明の範疇に含まれることは勿論である。
【符号の説明】
【0044】
1:車両
2:エンジンルーム
3:ボンネット
10:ヒンジ
11:ヒンジベース
12:ヒンジリーフ(ヒンジアーム)
13:ヒンジピン
15:リーフ支持板部(アーム支持部)
15c:リーフ支持板部の前縁部(アーム支持部の前縁部)
17:係止板部(ストッパ部)
22:外側アーム部
24:爪挿入孔
28:ベース外面
29:リーフ側連結部(軸支持部)
31:ボンネット側連結部(ボンネット支持部)
35:係止爪(係合部)
図1
図2
図3
図4
図5