(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項4に記載の回転装置において、前記規制突起部は、前記係合凹部の前記第1傾斜部のスライドに応じて押し下げられるスライド部と、前記係合凹部の前記第2傾斜部に対して接離可能に当接する当接部と、を備えていることを特徴とする回転装置。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、
図1〜
図6を参照して、この発明を腕時計に適用した一実施形態について説明する。
この腕時計は、
図1に示すように、装置本体である金属製の腕時計ケース1を備えている。この腕時計ケース1の12時側と6時側との各側部には、バンド取付部2がそれぞれ設けられている。また、この腕時計ケース1の2時側、4時側、8時側、および10時側には、それぞれ押釦スイッチ3が設けられている。
【0012】
この腕時計ケース1の上部開口部には、
図1および
図2に示すように、時計ガラス4がガラスパッキン4aを介して設けられている。また、この腕時計ケース1の下部には、裏蓋5が防水リング5aを介して取り付けられている。さらに、この腕時計ケース1の内部には、時計モジュール6が中枠7を介して設けられている。
【0013】
この場合、時計モジュール6の上部には、文字板(図示せず)が設けられており、この文字板上の外周には、
図2に示すように、見切り部材8が配置されている。時計モジュール6は、図示しないが、指針を文字板の上方で運針させる時計ムーブメント、時刻などの情報を電気光学的に表示する表示パネル、これらを電気的に駆動する回路部などの時計機能に必要な各種の部品を備えている。
【0014】
ところで、装置本体である腕時計ケース1の上部における外周には、
図1および
図2に示すように、回転装置10が設けられている。この場合、腕時計ケース1の上部における外周には、切欠き部9が全周に亘って設けられている。回転装置10は、腕時計ケース1の切欠き部9に配置される回転体である回転ベゼル11と、この回転ベゼル11の回転位置を規制する回転規制部材12と、この回転規制部材12を回転ベゼル11に向けて弾力的に押し付ける付勢部材であるコイルばね13と、を備えている。
【0015】
回転ベゼル11は、
図2および
図3に示すように、金属によってリング状に形成され、腕時計ケース1の上部に位置する外周の切欠き部9内にリング状のパッキン14を介して回転自在に取り付けられている。この場合、回転ベゼル11の内周面には、パッキン14が装着する装着凹部11aが設けられている。この装着凹部11aの下部に位置する回転ベゼル11の内周面には、腕時計ケース1の切欠き部9の外周面に設けられた係止突起9aに係合する係合部11bが設けられている。
【0016】
これにより、回転ベゼル11は、
図2に示すように、装着凹部11aにパッキン14を装着させた状態で、腕時計ケース1の上部に位置する外周の切欠き部9にその上方から嵌め込まれて、係合部11bを腕時計ケース1の切欠き部9の係止突起9aに係合させることにより、腕時計ケース1の上方に抜け出すことなく、腕時計ケース1の切欠き部9に回転可能に取り付けられるように構成されている。
【0017】
また、この回転ベゼル11の下面には、
図2〜
図4に示すように、係合凹部15が円周に沿って等間隔で設けられている。これら係合凹部15それぞれは、断面がほぼ台形状に形成されている。この係合凹部15は、回転ベゼル11の一方向(矢印X方向)への回転方向と反対側に位置する内面に第1傾斜部15aが設けられ、回転体ベゼル11の一方向への回転方向に位置する内面に第2傾斜部15bが設けられ、これら第1傾斜部15aと第2傾斜部16bとの間に底部15cが設けられた構成になっている。
【0018】
この場合、第1傾斜部15aは、
図3(a)および
図3(b)に示すように、回転ベゼル11の下面からその一方向(矢印X方向)への回転方向に向けて約40°の角度で傾斜して設けられている。これにより、第1傾斜部15aは、回転体ベゼル11が一方向に回転する際に、回転規制部材12に接触してスライドすることにより、回転規制部材12を押し下げるように構成されている。
【0019】
また、第2傾斜部15bは、
図3(a)および
図3(b)に示すように、回転ベゼル11の下面からその一方向(矢印X方向)への回転方向と反対方向に向けて約70°の角度で傾斜して設けられている。これにより、第2傾斜部15bは、回転規制部12が係合凹部15に挿入した際に、回転規制部材12に接離可能に当接することにより、回転体ベゼル11の一方向と反対方向への回転を規制するように構成されている。
【0020】
一方、回転規制部材12は、
図2、
図3および
図5に示すように、回転ベゼル11の下面に設けられた係合凹部15に出没可能に挿入する規制突起部16と、この規制突起部16が上面に設けられる台座部17と、この台座部17の下面に設けられてコイルばね13をガイドするガイド軸18と、を備え、これらが滑り性を有する硬質の合成樹脂によって一体に形成されている。
【0021】
この回転規制部材12は、
図1に示すように、腕時計ケース1の切欠き部9の底面における所定箇所に設けられた収納穴部20内にコイルばね13と共に配置されるように構成されている。この場合、収納穴部20は、腕時計ケース1の切欠き部9の底面において、押釦スイッチ3を避けた箇所、例えば9時側に位置する箇所に設けられている。
【0022】
すなわち、この収納穴部20は、
図2および
図3に示すように、その上下方向における上部側に位置する箇所に設けられて回転規制部材12の台座部17が上下方向に移動可能に配置される大径穴部20aと、下部側に位置する箇所に設けられて回転規制部材12のガイド軸18がコイルばね13と共に配置される小径穴部20bと、を備えている。大径穴部20aの外径は、台座部17の外径よりも少し大きく、大径穴部20aの形状は、台座部17の形状とほぼ同じである。回転規制部材12のガイド軸18を中心に回転規制部材12が収納穴部20内で回転しないように構成されている。
【0023】
この場合、コイルばね13は、
図2、
図3および
図6に示すように、その内径がガイド軸18の外径よりも少し大きく形成され、外径が台座部17の外径よりも小さく、かつ収納穴部20の小径穴部20bの内径よりも少し小さく形成されている。また、このコイルばね13は、その上端部が台座部17の下面に弾接し、下端部が小径穴部20bの底部に弾接するように構成されている。
【0024】
これにより、このコイルばね13は、
図6に示すように、台座部17を収納穴部20の上方に向けて押し出す方向に付勢するように構成されている。この場合、コイルばね13は、そのばね力によって規制突起部16を収納穴部20の上方に向けて押し出した際に、台座部17の上部側が収納穴部20の上方に突出しても、台座部17の下部側が収納穴部20の大径穴部20aに配置された状態を維持する程度のばね力に設定されている。
【0025】
ところで、回転規制部材12の規制突起部16は、
図3および
図5に示すように、回転ベゼル11の係合凹部15に出没可能に挿入する山形形状に形成されている。すなわち、この規制突起部16は、回転ベゼル11の係合凹部15における第1傾斜部15aのスライドに応じて押し下げられるスライド部16aと、係合凹部15の第2傾斜部15bに対して接離可能に当接する当接部16bと、を備えている。
【0026】
この場合、規制突起部16は、
図3および
図5に示すように、その山形形状の高さ、つまり台座部17から回転ベゼル11に向けて突出する長さが、回転ベゼル11の係合凹部15の深さとほぼ同じか、それよりも少し長く形成されている。これにより、規制突起部16は、係合凹部15に挿入された際に、山形形状の上端部16cが係合凹部15の底部15cに当接するように構成されている。
【0027】
この場合、スライド部16aは、
図3および
図5に示すように、回転ベゼル11の係合凹部15の第1傾斜部15aとほぼ平行に形成されている。また、当接部16bは、係合凹部15の第2傾斜部15bとほぼ平行に形成されている。さらに、規制突起部16の上端部16c、つまり山形形状の上端部16cは、円弧状に形成されている。
【0028】
これにより、規制突起部16は、
図3(a)に示すように、回転ベゼル11の係合凹部15に挿入されて、山形形状の上端部16cが係合凹部15の底部15cに当接した際に、スライド部16aが係合凹部15の第1傾斜部15aに隙間をもって対面し、当接部16bが係合凹部15の第2傾斜部15bに対面して当接するように構成されている。
【0029】
この場合、台座部17は、
図3(a)に示すように、規制突起部16が回転ベゼル11の係合凹部15に挿入された際に、台座部17の上面と回転ベゼル11の下面との間に僅かな隙間をもって、回転ベゼル11の下側に配置され、かつ台座部17の上面が収納穴部20の上端部に位置する腕時計ケース1の切欠き部9の底面とほぼ同じ平面上に配置されるように構成されている。
【0030】
また、規制突起部16は、
図3(b)に示すように、回転ベゼル11の係合凹部15に挿入された状態で、回転ベゼル11を一方向(矢印X方向)に回転させた際に、係合凹部15の第1傾斜部15aがスライド部16aに接触した状態でスライドすることにより、スライド部16aがコイルばね13のばね力に抗して徐々に押し下げられるように構成されている。
【0031】
また、この規制突起部16は、
図3(b)に示すように、スライド部16aがコイルばね13のばね力に抗して徐々に押し下げられる際に、当接部16bが係合凹部15の第2傾斜部15bに沿って徐々に押し下げられることにより、山形形状の上端部16cが係合凹部15の第2傾斜部15bを乗り越えて、係合凹部15内から外部に抜け出すように構成されている。
【0032】
この場合、コイルばね13は、
図3(b)に示すように、規制突起部16の上端部16cが係合凹部15の第2傾斜部15bを乗り越える際に、台座部17によって圧縮されることにより、回転ベゼル11の回転力を重くし、規制突起部16が隣接する係合凹部15に挿入する際に、圧縮したコイルばね13が伸びて回転ベゼル11の回転力を急激に軽くすることにより、回転ベゼル11にクリック感を付与するように構成されている。
【0033】
さらに、この規制突起部16は、
図3(a)に示すように、回転ベゼル11の係合凹部15に挿入された状態で、回転ベゼル11を一方向(矢印X方向)と反対方向に回転させる際に、当接部16bが係合凹部15の第2傾斜部15bに当接した状態を維持することにより、回転ベゼル11の逆方向への回転を阻止するように構成されている。
【0034】
次に、このような腕時計の回転装置10の作用について説明する。
この回転装置10を組み立てる場合には、まず、腕時計ケース1の上部外周に位置する切欠き部9の底部における9時側に設けられた収納穴部20内に、回転規制部材12をコイルばね13と共に配置する。このときには、回転規制部材12の台座部17の下面に設けられたガイド軸18をコイルばね13に挿入させて、コイルばね13をガイド軸18の外周に配置する。
【0035】
この状態で、コイルばね13とガイド軸18とを腕時計ケース1の切欠き部9の収納穴部20内にその上方から挿入させて収納穴部20の小径穴部20b内に配置させる。この状態では、
図6に示すように、コイルばね13の下端部が収納穴部20の底部に弾接し、コイルばね13の上端部が台座部17の下面に弾接した状態で、コイルばね13が自然状態に伸びる。
【0036】
この状態では、台座部17の上部側が規制突起部16と共に収納穴部20から上方に突出し、台座部17の下部側が収納穴部20の大径穴部20a内に配置された状態になる。このため、回転規制部材12は、その規制突起部16が収納穴部20の上方に突出していても、台座部17の下部側が収納穴部20内に配置されていることにより、収納穴部20内に安定した状態で配置される。
【0037】
この状態で、腕時計ケース1の切欠き部9に回転ベゼル11を取り付ける。このときには、予め、回転ベゼル11の内周面に設けられた装着凹部11a内にパッキン14を装着させる。そして、この回転ベゼル11を腕時計ケース1の切欠き部9にその上方から嵌め込んで、回転ベゼル11の係合部11bを腕時計ケース1の切欠き部9の係止突起9aに係合させる。
【0038】
これにより、回転ベゼル11は、腕時計ケース1の上方に抜け出すことなく、腕時計ケース1の切欠き部9内に回転可能に取り付けられる。このときには、回転規制部材12の規制突起部16が回転ベゼル11の下面によって押し下げられる。このため、コイルばね13が少し圧縮されて、台座部17の上部側が収納穴部20の大径穴部20a内に押し込まれる。
【0039】
この場合、回転規制部材12の規制突起部16が回転ベゼル11の下面に設けられた係合凹部15内に挿入された際には、規制突起部16のスライド部16aが係合凹部15の第1傾斜部15aに隙間をもって平行な状態で対面し、規制突起部16の当接部16bが係合凹部15の第2傾斜部15bに当接し、規制突起部16の上端部16cが係合凹部15の底部15cに当接する。
【0040】
このときには、規制突起部16の高さ、つまり台座部17から回転ベゼル11に向けて突出する規制突起部16の長さが、回転ベゼル11の係合凹部15の深さとほぼ同じか、それよりも少し長く形成されている。このため、規制突起部16が係合凹部15に挿入されて、その上端部16cが係合凹部15の底部15cに当接した際には、台座部17が腕時計ケース1の切欠き部9の収納穴部20内に押し込まれる。
【0041】
このときには、回転規制部材12の台座部17は、その上面と回転ベゼル11の下面との間に僅かな隙間をもって回転ベゼル11の下側に配置されると共に、台座部17の上面が収納穴部20の上端部に位置する腕時計ケース1の切欠き部9の底面とほぼ同じ平面上に配置される。これにより、回転規制部材12の台座部17は、回転ベゼル11の下面に接触しない状態で配置される。
【0042】
次に、この回転装置10の動作について説明する。
回転規制部材12の規制突起部16が回転ベゼル11の下面に設けられた係合凹部15内に挿入された状態で、回転ベゼル11を一方向(矢印X方向)に回転させると、この回転ベゼル11の回転に伴って、回転ベゼル11の係合凹部15が回転方向(矢印X方向)に移動する。
【0043】
このときには、係合凹部15の第1傾斜部15aが規制突起部16のスライド部16aに接触した状態でスライドし、この第1傾斜部15aのスライドに応じてスライド部16aがコイルばね13のばね力に抗して徐々に押し下げられる。このため、規制突起部16の当接部16bが係合凹部15の第2傾斜部15bに沿って徐々に押し下げられて、規制突起部16の上端部16cが第2傾斜部15bを乗り越えて係合凹部15の外部に押し出される。このときには、コイルばね13が台座部17によって圧縮されるので、回転ベゼル11の回転力が重くなる。
【0044】
この状態で、回転ベゼル11を更に一方向(矢印X方向)に回転させると、規制突起部16の上端部16cが回転ベゼル11の下面に弾接した状態で、回転ベゼル11が回転する。この回転ベゼル11の回転に伴って、隣接する係合凹部15が規制突起部16に対応すると、規制突起部16が隣接する係合凹部15に挿入する。
【0045】
このときには、圧縮したコイルばね13のばね力によって規制突起部16の上端部16cが、係合凹部15の第1傾斜部15aに沿って徐々に押し上げられる。これにより、規制突起部16のスライド部16aが係合凹部15の第1傾斜部15aに対面し、規制突起部16の当接部16bが係合凹部15の第2傾斜部15bに当接し、規制突起部16の上端部16cが係合凹部15の底部15cに当接する。
【0046】
このように、規制突起部16が隣接する係合凹部15に挿入する際には、圧縮したコイルばね13がその弾性復帰力によって伸びるので、回転ベゼル11の回転力が急激に軽くなる。これにより、回転ベゼル11にクリック感が付与される。
【0047】
また、このように、規制突起部16が係合凹部15に挿入した状態で、回転ベゼル11を一方向(矢印X方向)と反対方向に回転させる際には、規制突起部16の当接部16bに係合凹部15の第2傾斜部15bが当接していることにより、回転ベゼル11の逆回転が阻止される。このため、この回転ベゼル11は、一方向(矢印X方向)のみに回転する。
【0048】
また、回転規制部材12は、収納穴部20内でガイド軸18を中心に回転することがないので、規制突起部16の当接部16bに係合凹部15の第2傾斜部15bが当接していることにより、回転ベゼル11の逆回転が阻止される。
【0049】
このように、この腕時計の回転装置10によれば、装置本体である腕時計ケース1の外周に回転可能に配置され、かつ下面に係合凹部15が円周に沿って等間隔で設けられた回転ベゼル11と、この回転ベゼル11の下側に位置する腕時計ケース1に配置され、回転ベゼル11の一方向(矢印X方向)への回転に応じて係合凹部15のいずれかに係脱可能に係合して回転ベゼル11の回転位置を規制する回転規制部材12と、この回転規制部材12を回転ベゼル11に向けて付勢するコイルばね13と、を備えていることにより、クリック感をもって回転ベゼル11を一方向に回転させることができ、かつ装置全体の小型化を図ることができる。
【0050】
すなわち、この腕時計の回転装置10では、回転ベゼル11の一方向(矢印X方向)への回転に応じて回転規制部材12を回転ベゼル11の係合凹部15に係脱可能に係合させることができるので、クリック感をもって回転ベゼル11を一方向に回転させることができると共に、装置全体が径方向に制約を受けることがないため、装置全体の外径が大きくなることがなく、装置全体の小型化を図ることができる。
【0051】
この場合、この回転装置10では、回転ベゼル11の下側に位置する腕時計ケース1の所定箇所、つまり9時側に位置する一箇所に、回転規制部材12を回転ベゼル11に向けて出没可能に配置する収納穴部20が設けられていることにより、回転規制部材12を腕時計ケース1に対して簡単にかつ容易に取り付けることができると共に、収納穴部20を複数の押釦スイッチ3などを避けて設けることができる。このため、この回転装置10では、構造が簡単で、製作が容易にできるほか、省スペース化を図ることができる。
【0052】
また、この回転装置10では、回転規制部材12が、回転ベゼル11の係合凹部15内に出没可能に挿入する規制突起部16と、この規制突起部16が設けられ、かつ外周が係合凹部15の内周よりも大きい台座部17と、を備えていることにより、台座部17が係合凹部15内に挿入することがないので、規制突起部16のみを係合凹部15内に良好に挿入させることができ、これにより台座部17が係合凹部15に引っ掛かることがなく、回転ベゼル11を円滑に回転させることができる。
【0053】
また、この回転装置10では、回転ベゼル11の係合凹部15が、回転ベゼル11の一方向(矢印X方向)への回転方向と反対側に位置し、回転規制部材12に接触した状態でスライドしながら回転規制部材12を押し下げる第1傾斜部15aと、回転ベゼル11の一方向への回転方向に位置し、回転規制部材12に対して接離可能に当接する第2傾斜部15bと、を備えていることにより、回転ベゼル11を一方向のみに良好に回転させることができると共に、回転ベゼル11の逆方向への回転を防ぐことができる。
【0054】
この場合、回転規制部材12の規制突起部16は、回転ベゼル11の係合凹部15における第1傾斜部15aのスライドに応じて押し下げられるスライド部16aと、係合凹部15の第2傾斜部15bに対して接離可能に当接する当接部16bと、を備えていることにより、回転ベゼル11を一方向(矢印X方向)に回転させた際に、係合凹部15の第1傾斜部15aによってスライド部16aが確実に押し下げられるので、回転ベゼル11を一方向に円滑に回転させることができる。
【0055】
また、この規制突起部16は、回転ベゼル11が一方向(矢印X方向)に回転して係合凹部15の第1傾斜部15aが規制突起部16のスライド部16aを押し下げると、規制突起部16の当接部16bが係合凹部15の第2傾斜部15bに沿って押し下げられて、規制突起部16の上端部16cが第2傾斜部15bを乗り越えることにより、規制突起部16が係合凹部15内から確実にかつ良好に押し出されるので、回転ベゼル11を一方向に円滑にかつ良好に回転させることができる。
【0056】
また、この規制突起部16は、回転ベゼル11を一方向(矢印X方向)と反対方向に回転させる際に、係合凹部15の第2傾斜部15bが規制突起部16の当接部16bに当接するので、回転ベゼル11が逆方向に回転するのを確実に阻止することができ、これにより回転ベゼル11の逆回転を確実に防ぐことができる。
【0057】
この場合、規制突起部16は、その高さつまり台座部17から回転ベゼル11に向けて突出する長さが、係合凹部15の深さと同じか、それよりも少し長く形成されていることにより、規制突起部16を係合凹部15内に挿入させた際に、台座部17を回転ベゼル11の下側に押し下げた状態で配置させることができ、これにより台座部17が係合凹部15に接触しないようにすることができるので、回転ベゼル11を円滑にかつ良好に回転させることができる。
【0058】
また、この規制突起部16は、その上端部16cが円弧状に形成されていることにより、規制突起部16が係合凹部15内から押し出される際に、円弧状の上端部16cによって第2傾斜部15bを円滑に乗り越えさせることができると共に、この円弧状の上端部16cによって回転ベゼル11の下面を円滑にスライドさせることができ、また隣接する係合凹部15に規制突起部16が挿入する際に、円弧状の上端部16cによって係合凹部15の第1傾斜部15aを円滑にスライドさせて、規制突起部16を係合凹部15に円滑に挿入させることができる。
【0059】
この場合、回転規制部材12は、滑り性を備えた硬質の合成樹脂で形成されていることにより、係合凹部15内から規制突起部16を押し出す際、また係合凹部15に規制突起部16が挿入する際に、規制突起部16に対して第1傾斜部15aを滑らかにスライドさせることができる。このため、規制突起部16にグリスなどの潤滑油を塗布しなくても、スライド部16a、当接部16b、および円弧状の上端部16cを回転ベゼル11に対して滑らかにスライドさせることができる。
【0060】
また、付勢部材であるコイルばね13は、収納穴部20内に配置された回転規制部材12を押し出す方向に付勢した際に、台座部17の上部側を収納穴部20の外部に押し出した状態で、台座部17の下部側を収納穴部20内に配置させることにより、規制突起部16が収納穴部20の上方に突出していても、台座部17の下部側を収納穴部20内に配置させることができるので、回転規制部材12を収納穴部20内に安定させた状態で配置させることができ、これにより組立作業を向上させることができる。
【0061】
なお、上述した実施形態では、付勢部材としてコイルばね13を用いた場合について述べたが、この発明はこれに限らず、例えば
図7に示す第1変形例のような板ばね25を用いても良い。すなわち、この第1変形例の板ばね25は、回転ベゼル11の円周方向に沿って上方に向けて凸となる円弧状に湾曲させた構成になっている。
【0062】
この場合、腕時計ケース1の切欠き部9に設けられる収納穴部26は、回転規制部材12の台座部17の外径とほぼ同じ内径で、台座部17の出没方向の長さをその出没長さよりも少し深く形成すれば良い。
【0063】
このような板ばね25を用いても、上述した実施形態と同様の作用効果があるほか、回転規制部材12にガイド軸18を設ける必要がないので、回転規制部材12の構造を簡素化させることができる。この場合、この第1変形例では、板ばね25を上方に向けて凸となる円弧状に湾曲させたが、下方に向けて凸となる円弧状に湾曲させても良い。
【0064】
また、上述した実施形態および第1変形例では、付勢部材としてコイルばね13また板ばね25を用いた場合について述べたが、この発明はこれらに限らず、例えば
図8に示す第2変形例のように、弾力部30を回転規制部12の台座部17に一体に形成した構成であっても良い。
【0065】
すなわち、この弾力部30は、台座部17の下面に螺旋状またはジグザグ状に形成して、回転規制部材12の軸方向に弾性変形するように形成されている。この場合、腕時計ケース1の切欠き部9に設けられる収納穴部31は、回転規制部材12の台座部17が挿入する大径穴部31aと、弾力部30が挿入して弾力部30の弾性変形をガイドする小径穴部31bと、で形成すれば良い。
【0066】
このような弾力部30を備えた構成であっても、上述した実施形態と同様の作用効果があるほか、付勢部材である弾力部30を別部品として製作する必要がないので、部品点数を削減することができると共に、組立作業の簡素化を図ることができる。
【0067】
また、上述した実施形態および第1、第2の各変形例では、腕時計ケース1の収納穴部20、26、31を9時側に位置する1箇所に設けた場合について述べたが、この発明はこれに限らず、例えば9時側と3時側との2箇所に設けても良く、またこれに限らず、押釦スイッチ3などを避けた箇所であれば、3箇所以上に設けても良い。
【0068】
さらに、上述した実施形態および第1、第2の各変形例では、回転規制部材12を腕時計ケース1の切欠き部9に設けられた収納穴部20、26、31内に配置させた際に、台座部17の上部側が収納穴部20、26、31から上側に押し出されるように構成されている場合について述べたが、この発明はこれに限らず、例えば収納穴部20、26、31の縁部にカシメ部を設けた構成でも良い。
【0069】
この場合には、回転規制部材12を収納穴部20、26、31内に配置させて、台座部17を収納穴部20、26、31内に押し込んだ状態で、カシメ部をカシメて台座部17の上面の外周部を上側から押え付けるようにすれば良い。このようにすれば、規制突起部16が回転ベゼル11の係合凹部15に挿入しても、台座部17が収納穴部20、26、31から上側に押し出されないようにすることができるので、回転ベゼル11を円滑にかつ良好に回転させることができる。
【0070】
なおまた、上述した実施形態および第1、第2の各変形例では、腕時計に適用した場合について述べたが、この発明は必ずしも腕時計である必要はなく、例えばトラベルウオッチ、懐中時計、目覚まし時計、置き時計、掛け時計などの各種の時計に広く適用することができる。
【0071】
以上、この発明の一実施形態について説明したが、この発明は、これに限られるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲を含むものである。
以下に、本願の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
【0072】
(付記)
請求項1に記載の発明は、装置本体と、前記装置本体の外周に回転可能に配置され、かつ下面に係合凹部が円周に沿って等間隔で設けられた回転体と、前記回転体の下側に位置する前記装置本体に前記回転体に向けて出没可能で且つ回転しないように配置され、前記回転体の一方向への回転に応じて前記係合凹部のいずれかに係脱可能に係合して前記回転体の回転位置を規制する回転規制部材と、前記回転規制部材を前記回転体に向けて付勢する付勢部材と、を備えていることを特徴とする回転装置である。
【0073】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の回転装置において、前記回転体の下側に位置する前記装置本体の一箇所または複数箇所には、前記回転規制部材を前記回転体に向けて出没可能に配置する収納部が設けられていることを特徴とする回転装置である。
【0074】
請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載の回転装置において、前記回転規制部材は、前記回転体の前記係合凹部内に出没可能に挿入する規制突起部と、前記規制突起部が設けられ、かつ外周が前記係合凹部の内周よりも大きい台座部と、を備えていることを特徴とする回転装置である。
【0075】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の回転装置において、前記係合凹部は、前記回転体の前記一方向への回転方向と反対側に位置し、前記規制突起部に接触してスライドしながら前記規制突起部を押し下げる第1傾斜部と、前記回転体の前記一方向への回転方向に位置し、前記規制突起部に対して接離可能に当接する第2傾斜部と、を備えていることを特徴とする回転装置である。
【0076】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の回転装置において、前記規制突起部は、前記係合凹部の前記第1傾斜部のスライドに応じて押し下げられるスライド部と、前記係合凹部の前記第2傾斜部に対して接離可能に当接する当接部と、を備えていることを特徴とする回転装置である。
【0077】
請求項6に記載の発明は、請求項請3〜請求項5のいずれかに記載の回転装置において、前記規制突起部は、前記台座部から前記回転体に向けて突出する長さが前記係合凹部の深さと同じか、それよりも少し長く形成されていることを特徴とする回転装置である。
【0078】
請求項7に記載の発明は、請求項3〜請求項6のいずれかに記載の回転装置において、前記付勢部材は、前記収納部内に配置された前記回転規制部材を押し出す方向に付勢した際に、前記台座部の上部側を前記収納部の外部に押し出した状態で、前記台座部の下部側を前記収納部内に配置させることを特徴とする回転装置である。
【0079】
請求項8に記載の発明は、請求項1〜請求項7のいずれかに記載された回転装置を備えていることを特徴とする時計である。