特許第6880503号(P6880503)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6880503防曇剤組成物、防曇塗膜を有する防曇性物品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6880503
(24)【登録日】2021年5月10日
(45)【発行日】2021年6月2日
(54)【発明の名称】防曇剤組成物、防曇塗膜を有する防曇性物品
(51)【国際特許分類】
   C09K 3/00 20060101AFI20210524BHJP
   C09D 133/04 20060101ALI20210524BHJP
   C09D 133/26 20060101ALI20210524BHJP
   C09D 5/00 20060101ALI20210524BHJP
   C09D 7/40 20180101ALI20210524BHJP
   C08F 220/12 20060101ALI20210524BHJP
【FI】
   C09K3/00 R
   C09D133/04
   C09D133/26
   C09D5/00 Z
   C09D7/40
   C08F220/12
【請求項の数】6
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2017-122504(P2017-122504)
(22)【出願日】2017年6月22日
(65)【公開番号】特開2019-6881(P2019-6881A)
(43)【公開日】2019年1月17日
【審査請求日】2020年4月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004341
【氏名又は名称】日油株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鶴岡 大
(72)【発明者】
【氏名】加藤 真紀
【審査官】 柴田 啓二
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−105255(JP,A)
【文献】 特開平06−212146(JP,A)
【文献】 韓国公開特許第10−2008−0044140(KR,A)
【文献】 特開2009−013329(JP,A)
【文献】 国際公開第2016/047430(WO,A1)
【文献】 特表2009−509809(JP,A)
【文献】 特開2012−007033(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 3/00
C08J 7/00
B05D 5/00
C09D 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
共重合体(A)と酸触媒(B)と界面活性剤(C)を含む防曇剤組成物であって、
前記共重合体(A)は、単量体混合物から得られるランダム共重合体の(メタ)アクリレート共重合体であり、
前記単量体混合物は、一般式(1):
【化1】
(一般式(1)中、Rは、水素原子、またはメチル基であり、Rは、炭素数1〜4の直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基、−C(CHCHCOCH、−CN(CH、またはCN(CHであり、Rは、水素原子、または炭素数1〜4の直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基である。)で表される単量体、
一般式(2):
【化2】
(一般式(2)中、Rは、水素原子、またはメチル基、Aは−COC−、または−CC(=O)−である。)で表される単量体、および
一般式(3):CH=CR−COO−(AO)−R・・・(3)
(一般式(3)中、Rは、水素原子、またはメチル基、AOは炭素数2〜3のアルキレンオキシ基、Rは、炭素数1〜3の直鎖または分岐鎖のアルキル基、nはアルキレンオキシ基の平均付加モル数を示す1〜10である。)で表される単量体からなる群より選ばれる1種以上の単量体(A−1)と、
一般式(4):
【化3】
(一般式(4)中、Rは、水素原子、またはメチル基であり、Rは、炭素数1〜16の直鎖、分岐鎖、もしくは環状のアルキル基、またはベンジル基である。)で表される単量体(A−2)と、
一般式(5):
【化4】
(一般式(5)中、Rは、水素原子、またはメチル基であり、R10は、炭素数2〜4の直鎖もしくは分岐鎖のアルキレン基、またはC(OCO(C−であり、nは1〜4である。)で表される単量体、および
一般式(6):
【化5】
(一般式(6)中、R11は、水素原子、またはメチル基であり、R12は、炭素数2〜4の直鎖または分岐鎖のアルキレン基である。)で表される単量体からなる群より選ばれる1種以上の単量体(A−3)と、
一般式(7):
【化6】
(一般式(7)中、R13は、水素原子、またはメチル基であり、R14は、水素原子、または炭素数1〜4の直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基である。)で表される単量体(A−4)を含み、
前記酸触媒(B)は、硫酸および/またはスルホン酸系化合物を含み、
前記界面活性剤(C)は、アニオン系界面活性剤(C−1)とカチオン系界面活性剤(C−2)を含み、
前記単量体混合物中、前記単量体(A−1)の割合が10〜60重量%、前記単量体(A−2)の割合が20〜80重量%、前記単量体(A−3)が2〜20重量%、および前記単量体(A−4)が0.5〜15重量%であることを特徴とする防曇剤組成物。
【請求項2】
前記共重合体(A)100重量部に対して、前記アニオン系界面活性剤(C−1)が0.5〜15重量部、前記カチオン系界面活性剤(C−2)が0.05〜3重量部であることを特徴とする請求項1記載の防曇剤組成物。
【請求項3】
前記共重合体(A)100重量部に対して、前記酸触媒(B)が0.1〜5重量部であることを特徴とする請求項1または2記載の防曇剤組成物。
【請求項4】
前記酸触媒(B)が、硫酸、アリールスルホン酸系化合物、およびアルキルスルホン酸系化合物よりなる群から選ばれる1種以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の防曇剤組成物。
【請求項5】
前記界面活性剤(C)が、ノニオン系界面活性剤(C−3)を含み、
前記共重合体(A)100重量部に対して、前記ノニオン系界面活性剤(C−3)が0.5〜15重量部であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の防曇剤組成物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の防曇剤組成物から形成される防曇塗膜を有する防曇性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防曇剤組成物、防曇塗膜を有する防曇性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車のヘッドランプなどの車両灯具において、灯室内に高湿度の空気が入り込み、外気や降雨などによってレンズが冷やされ、内面に水分が結露することによって曇りが生じることがある。その結果、車両灯の輝度が低下し、またレンズ面の美観が損なわれることにより、ユーザーの不快感を引き起こす場合がある。このようなレンズの曇りを防ぐために、曇りが発生する部位(レンズ内側)に防曇剤を塗布して、防曇塗膜(乾燥塗膜、あるいは硬化塗膜)を形成する方法が知られている(特許文献1〜3)。
【0003】
特許文献1では、N−メチロール基またはN−アルコキシメチロール基を有するビニル系単量体、スルホン酸基を有するビニル系単量体、およびアルキル(メタ)アクリレート系単量体を含む単量体混合物から形成される共重合体と、スルホン酸基を有する塩基性化合物と、界面活性剤を含有する防曇剤組成物が開示されている。
【0004】
また、特許文献2では、特定の(メタ)アクリレート共重合体と、多官能ブロックイソシアネート化合物と、界面活性剤を含有する防曇剤組成物が開示されている。
【0005】
さらに、特許文献3では、特定のブロックまたはグラフト共重合体と、フッ素系界面活性剤と、酸性リン酸アルキルエステルを含有する防曇剤組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011−140589号公報
【特許文献2】国際公開第2016/047430号
【特許文献3】特開2004−250601号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
通常、車両灯具に使用されるレンズには、透明度が高く、耐衝撃性に優れる観点から、ヘッドランプレンズとして、ポリカーボネート(PC)樹脂、リアコンビレンズとしてポリメチルメタクリレート(PMMA)樹脂が用いられる。PC樹脂の熱変形温度は130〜140℃程度であるのに対し、PMMA樹脂の熱変形温度は、これを構成するPMMAの分子量や添加剤などの影響によって65〜90℃程度となるため、PMMA樹脂に用いられる防曇剤組成物は、例えば、60℃程度以下の温度で硬化(低温硬化)できるものが求められている。また、生産効率を高める観点から、できるだけ短い時間、例えば、40分以下で硬化できる防曇剤組成物が求められている。
【0008】
また、特許文献1あるいは特許文献2で開示されているように、車両灯具用の防曇剤組成物には、良好な、防曇持続性、耐湿試験後の防曇性、耐熱試験後の防曇性を有し、かつ水垂れ跡が発生し難く、密着性および耐水性を有する防曇塗膜を形成できるものが求められている。とくに、近年では、車両灯具の様々な使用環境下においても防曇性が発揮できるよう、より優れた防曇持続性を有するものが求められてきている。
【0009】
しかし、上記の特許文献1〜3で開示された防曇剤組成物を低温硬化して得られた防曇塗膜は、上記の車両灯具に要求される高い防曇持続性を満足することができない懸念があった。
【0010】
本発明は、上記の実情に鑑みてなされたものであり、低温かつ短時間条件下で、車両灯具に求められる性能を有する(特に、防曇持続性に優れた)防曇塗膜を形成することができる防曇剤組成物、および当該防曇塗膜を有する防曇性物品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
すなわち、本発明は、共重合体(A)と酸触媒(B)と界面活性剤(C)を含む防曇剤組成物であって、前記共重合体(A)は、単量体混合物から得られる(メタ)アクリレート共重合体であり、前記単量体混合物は、一般式(1):
【化1】
(一般式(1)中、Rは、水素原子、またはメチル基であり、Rは、炭素数1〜4の直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基、−C(CHCHCOCH、−CN(CH、またはCN(CHであり、Rは、水素原子、または炭素数1〜4の直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基である。)で表される単量体、
一般式(2):
【化2】
(一般式(2)中、Rは、水素原子、またはメチル基、Aは−COC−、または−CC(=O)−である。)で表される単量体、および
一般式(3):CH=CR−COO−(AO)−R・・・(3)
(一般式(3)中、Rは、水素原子、またはメチル基、AOは炭素数2〜3のアルキレンオキシ基、Rは、炭素数1〜3の直鎖または分岐鎖のアルキル基、nはアルキレンオキシ基の平均付加モル数を示す1〜10である。)で表される単量体からなる群より選ばれる1種以上の単量体(A−1)と、
一般式(4):
【化3】
(一般式(4)中、Rは、水素原子、またはメチル基であり、Rは、炭素数1〜16の直鎖、分岐鎖、もしくは環状のアルキル基、またはベンジル基である。)で表される単量体(A−2)と、
一般式(5):
【化4】
(一般式(5)中、Rは、水素原子、またはメチル基であり、R10は、炭素数2〜4の直鎖もしくは分岐鎖のアルキレン基、またはC(OCO(C−であり、nは1〜4である。)で表される単量体、および
一般式(6):
【化5】
(一般式(6)中、R11は、水素原子、またはメチル基であり、R12は、炭素数2〜4の直鎖または分岐鎖のアルキレン基である。)で表される単量体からなる群より選ばれる1種以上の単量体(A−3)と、
一般式(7):
【化6】
(一般式(7)中、R13は、水素原子、またはメチル基であり、R14は、水素原子、または炭素数1〜4の直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基である。)で表される単量体(A−4)を含み、
前記酸触媒(B)は、硫酸および/またはスルホン酸系化合物を含み、
前記界面活性剤(C)は、アニオン系界面活性剤(C−1)とカチオン系界面活性剤(C−2)を含み、
前記単量体混合物中、前記単量体(A−1)の割合が10〜60重量%、前記単量体(A−2)の割合が20〜80重量%、前記単量体(A−3)が2〜20重量%、および前記単量体(A−4)が0.5〜15重量%であることを特徴とする防曇剤組成物、に関する。
【0012】
また、本発明は、前記防曇剤組成物から形成される防曇塗膜を有する防曇性物品、に関する。
【発明の効果】
【0013】
本発明では、以下の作用メカニズムが推定される。
【0014】
本発明の防曇剤組成物から形成される防曇塗膜は、主に、共重合体(A)を構成する単量体(A−1)の性質に基づいて良好な防曇性が発現され、単量体(A−2)の性質に基づいて基材との良好な密着性と耐水性が発現され、単量体(A−3)および単量体(A−4)の性質に基づいて塗膜の架橋が形成される。そして、当該架橋反応は、酸触媒(B)により硬化反応が促進される。また、本発明の防曇剤組成物は、酸触媒(B)を外部添加するため、低温での硬化反応が良好であるから、低温かつ短時間で車両灯具に求められる性能を有する防曇塗膜を形成するのに有利である。
【0015】
本発明の防曇剤組成物は、界面活性剤(C)として、アニオン系界面活性剤(C−1)とカチオン系界面活性剤(C−2)を併用する。前記アニオン系界面活性剤(C−1)と前記カチオン系界面活性剤(C−2)は、塗膜中でイオンペアを形成して、塗膜から溶出し難くなることになることによって、本発明の防曇塗膜は、長期の使用にわたって防曇性能が低下しにくくなり、良好な防曇性能が持続する。
【0016】
また、本発明の防曇剤組成物は、界面活性剤(C)として、さらに、ノニオン系界面活性剤(C−3)を使用することで、防曇塗膜上に水膜を形成した後に生じる水垂れ跡を目立ちにくくすることができる。なお、水垂れ跡とは、防曇塗膜が水膜を形成した後に、塗膜表面に溶出した成分が乾燥することにより、目視で認識される跡をさす。
【0017】
よって、本発明の防曇剤組成物によれば、従来の防曇剤組成物よりも、低温かつ短時間条件下の熱硬化で、車両灯具に求められる性能を有する(特に、防曇持続性に優れた)防曇塗膜、および防曇塗膜を有する防曇性物品を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の防曇剤組成物は、共重合体(A)と酸触媒(B)と界面活性剤(C)を含む。
【0019】
<共重合体(A)>
本発明の共重合体(A)は、単量体混合物から得られる(メタ)アクリレート共重合体であり、前記単量体混合物は、少なくとも、以下の単量体(A−1)〜(A−4)を含む。
【0020】
<単量体(A−1)>
本発明の単量体(A−1)は、一般式(1):
【化7】
(一般式(1)中、Rは、水素原子、またはメチル基であり、Rは、炭素数1〜4の直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基、−C(CHCHCOCH、−CN(CH、またはCN(CHであり、Rは、水素原子、または炭素数1〜4の直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基である。)で表される単量体、一般式(2):
【化8】
(一般式(2)中、Rは、水素原子、またはメチル基、Aは−COC−、または−CC(=O)−である。)で表される単量体、および一般式(3):
CH=CR−COO−(AO)n−R・・・(3)
(一般式(3)中、Rは、水素原子、またはメチル基、AOは炭素数2〜3のアルキレンオキシ基、Rは、炭素数1〜3の直鎖または分岐鎖のアルキル基、nはアルキレンオキシ基の平均付加モル数を示す1〜10である。)で表される単量体からなる群より選ばれる1種以上の単量体である。
【0021】
前記単量体(A−1)は、主に、前記共重合体(A)に吸水性を発現させ、防曇塗膜の防曇性を高める機能を有する。
【0022】
前記単量体(A−1)としては、例えば、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−n−プロピル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド;N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミドなどのN,N−ジアルキル(メタ)アクリルアミド系単量体;N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N−(3−ジメチルアミノプロピル)(メタ)アクリルアミド、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクロイルモルホリン、N−ビニル−2−ピロリドン、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、(ここでエチレンオキサイド数は1〜10が好ましく、2〜8がより好ましい)、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート(ここでプロピレンオキサイド数は1〜10が好ましく、2〜8がより好ましい)などが挙げられる。前記単量体(A−1)は、防曇性と共に、塗膜と基材との密着性が優れるという観点から、N,N−ジアルキル(メタ)アクリルアミド系単量体が好ましく、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミドが特に好ましい。前記単量体(A−1)は、少なくとも1種を用いればよく、2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0023】
<単量体(A−2)>
本発明の単量体(A−2)は、一般式(4):
【化9】
(一般式(4)中、Rは、水素原子、またはメチル基であり、Rは、炭素数1〜16の直鎖、分岐鎖、もしくは環状のアルキル基、またはベンジル基である。)で表される単量体である。
【0024】
前記単量体(A−2)は、主に、防曇塗膜の基材への密着性を高めると共に、耐水性を高める機能を有する。
【0025】
前記単量体(A−2)としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。前記単量体(A−2)は、塗膜と基材との密着性、耐水性を高めると共に、塗膜の防曇性を高める観点から、直鎖または分岐鎖のアルキル基を有することが好ましく、また、炭素数は1から12であることが好ましく、1から8であることがより好ましい。前記単量体(A−2)は、少なくとも1種を用いればよく、2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0026】
また、前記単量体(A−2)は、防曇性と耐水性を向上させる観点から、2種以上を組み合わせて用いることが好ましく、前記一般式(4)におけるRが炭素数1〜3のアルキル基を有する単量体(A−2−1)と、Rが炭素数4〜16のアルキル基を有する単量体(A−2−2)を併用することがより好ましい。前記単量体(A−2−1)と前記単量体(A−2−2)の重量比((A−2−1)/(A−2−2))は、100/5以上であることが好ましく、100/10以上であることがより好ましく、そして、100/80以下であることが好ましく、100/70以下であることがより好ましい。
【0027】
<単量体(A−3)>
本発明の単量体(A−3)は、一般式(5):
【化10】
(一般式(5)中、Rは、水素原子、またはメチル基であり、R10は、炭素数2〜4の直鎖もしくは分岐鎖のアルキレン基、またはC(OCO(C−であり、nは1〜4である。)で表される単量体、および一般式(6):
【化11】
(一般式(6)中、R11は、水素原子、またはメチル基であり、R12は、炭素数2〜4の直鎖または分岐鎖のアルキレン基である。)で表される単量体からなる群より選ばれる1種以上の単量体である。
【0028】
前記単量体(A−3)は、主に、後述する単量体(A−4)と架橋構造を形成する機能を有する。
【0029】
前記単量体(A−3)としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、N−(2−ヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチルアクリレートのカプロラクトン付加物などが挙げられる。前記単量体(A−3)は、塗膜の耐水性に優れ、防曇持続性に優れるという観点から、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、N−(2−ヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートが好ましい。前記単量体(A−3)は、少なくとも1種を用いればよく、2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0030】
<単量体(A−4)>
本発明の単量体(A−4)は、一般式(7):
【化12】
(一般式(7)中、R13は、水素原子、またはメチル基であり、R14は、水素原子または炭素数1〜4の直鎖または分岐鎖のアルキル基である。)で表される単量体である。
【0031】
前記単量体(A−4)は、主に、N−メチロール基やN−メチロールエーテル基同士の脱水縮合反応、およびN−メチロール基やN−メチロールエーテル基と、ヒドロキシル基の脱アルコール縮合反応により分子間を架橋させて共重合体に架橋構造を形成する機能を有する。また、この縮合反応は酸触媒によって促進される。
【0032】
前記単量体(A−4)としては、例えば、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−プロポキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−イソブトキシメチル(メタ)アクリルアミドなどが挙げられる。前記単量体(A−3)は、塗膜の耐水性に優れ、低温での加熱硬化性に優れるという観点から、N−メチロール(メタ)アクリルアミドが好ましい。前記単量体(A−4)は、少なくとも1種を用いればよく、2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0033】
以下に、本発明の共重合体(A)を形成する単量体混合物中の各単量体成分の割合について説明する。
【0034】
前記単量体混合物中、前記単量体(A−1)の割合は10〜60重量%である。前記単量体(A−1)の割合は、防曇性を向上させる観点から、前記単量体混合物中、20重量%以上であることが好ましく30重量%以上であることがより好ましく、そして、耐水性を向上させる、および水垂れ跡を抑制させる観点から、50重量%以下であることが好ましく、40重量%以下であることがより好ましい。
【0035】
前記単量体混合物中、前記単量体(A−2)の割合は20〜80重量%である。前記単量体(A−2)の割合は、耐水性および密着性を向上させる観点から、前記単量体混合物中、30重量%以上であることが好ましく、40重量%以上であることがより好ましく、そして、防曇性を向上させる観点から、70重量%以下であることが好ましく、60重量%以下であることがより好ましい。
【0036】
前記単量体混合物中、前記単量体(A−3)の割合は2〜20重量%である。前記単量体(A−3)の割合は、耐水性を向上させる、および水垂れ跡を抑制させる観点から、前記単量体混合物中、3重量%以上であることが好ましく、5重量%以上であることがより好ましく、そして、密着性を向上させる観点から、17重量%以下であることが好ましく、15重量%以下であることがより好ましい。
【0037】
前記単量体混合物中、前記単量体(A−4)の割合は0.5〜15重量%である。前記単量体(A−4)の割合は、耐水性を向上させる、および水垂れ跡を抑制させる観点から、前記単量体混合物中、1重量%以上であることが好ましく、1.5重量%以上であることがより好ましく、そして、密着性を向上させる観点から、10重量%以下であることが好ましく、8重量%以下であることがより好ましい。
【0038】
前記単量体混合物中、前記単量体(A−1)〜(A−4)の合計の割合は、85重量%以上であることが好ましく、90重量%以上であることがより好ましく、95重量%以上であることがさら好ましく、97重量%以上であることがよりさらに好ましく、99重量%以上であることがよりさらに好ましい。
【0039】
なお、前記単量体混合物には、前記単量体(A−1)〜(A−4)以外のその他の単量体として、例えば、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレンなどの芳香族ビニル系単量体;(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロリド、(メタ)アクリロイルアミノプロピルトリメチルアンモニウムクロリドなどの4級アンモニウム塩を含むビニル系単量体;フェノキシエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレートなどの脂環アクリル系単量体;(メタ)アクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸などのカルボキシ基含有単量体、およびこれらのアンモニウム塩、有機アミン塩、アルカリ金属塩;スチレンスルホン酸、ビニルスルホン酸、メタリルスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、3−スルホプロピル(メタ)アクリレートなどのスルホン酸基含有ビニル系単量体、およびこれらのアンモニウム塩、有機アミン塩、アルカリ金属塩;2−(メタ)アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェートなどのリン酸基含有ビニル系単量体、およびこれらのアンモニウム塩、有機アミン塩、アルカリ金属塩;1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオール(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、N,N’−メチレンビス〔(メタ)アクリルアミド〕などの2官能性(メタ)アクリレート;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートなどの多官能ビニル系単量体;γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシランなどのアルコキシシリル基を有するビニル系単量体;グリシジル(メタ)アクリレート、ビニルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテルなどのエポキシ基を有するビニル系単量体などが使用できる。
【0040】
<共重合体(A)の製造方法>
本発明の共重合体(A)は、前記単量体混合物を共重合することにより得られる。共重合体の構造としては、ランダム共重合体、交互共重合体、ブロック共重合体およびグラフト共重合体のいずれの構造であってもよいが、防曇性をはじめとする防曇剤組成物の効果を向上させることができると共に、防曇剤組成物を容易に調製することができるという観点からランダム共重合体が好ましい。共重合体を得るための重合方法としては、ラジカル重合法、カチオン重合法、アニオンリビング重合法、カチオンリビング重合法などの公知の各種重合方法が採用されるが、特に工業的な生産性の容易さ、多義にわたる性能面より、ラジカル重合法が好ましい。ラジカル重合法としては、通常の塊状重合法、懸濁重合法、溶液重合法、乳化重合法などが採用されるが、重合後にそのまま防曇剤組成物として使用することができる点で溶液重合法が好ましい。
【0041】
前記溶液重合法に用いる重合溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、s−ブタノール、t−ブタノール、ジアセトンアルコールなどのアルコール系溶剤;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、3−メトキシ−1−ブタノール、3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノールなどのアルコールエーテル系溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン系溶剤;テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル系溶剤;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、酢酸t−ブチル、乳酸メチル、乳酸エチルなどのエステル系溶剤;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族系溶剤、ホルムアミド、ジメチルホルムアミドなどのアミド系溶剤;水などが使用される。前記重合溶剤は、少なくとも1種を用いればよく、2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0042】
なお、前記重合溶剤は、著しく高沸点を有する溶剤は、塗膜の乾燥、加熱硬化時において、溶剤の残留によって基材に対する塗膜の密着性を損なう場合がある観点から、1気圧下、180℃未満の沸点を有する溶剤を使用することが好ましい。
【0043】
前記ラジカル重合開始剤は、一般的に使用される有機過酸化物、アゾ化合物などを使用することができる。前記有機過酸化物としては、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ−2−ヘキサノエートレート、t−ブチルパーオキシピバレート、t−ヘキシルパーオキシピバレートなどが挙げられる。前記アゾ化合物としては、例えば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス−2−メチルブチロニトリルなどが挙げられる。前記ラジカル重合開始剤は、少なくとも1種を用いればよく、2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0044】
前記ラジカル重合開始剤の添加量は、前記単量体混合物100重量部に対して0.01〜5重量部であることが好ましい。前記ラジカル重合開始剤は、反応容器中に滴下しながら重合を行うことが重合発熱を制御しやすくなる点で好ましい。重合反応を行う温度は、使用するラジカル重合開始剤の種類によって適宜変更されるが、工業的に製造を行う上で好ましくは30〜150℃、より好ましくは40〜100℃である。
【0045】
前記共重合体(A)の重量平均分子量(Mw)は、防曇塗膜に耐水性を付与する観点から、20,000以上が好ましく、30,000以上がより好ましい。共重合体(A)の重量平均分子量(Mw)は、防曇剤組成物の塗装性およびハンドリング性を高める観点から、120,000以下が好ましく、110,000以下がより好ましい。
【0046】
前記共重合体(A)の重量平均分子量(Mw)は、GPC法にて求めることができる。サンプルは、試料をジメチルホルムアミドに溶解して0.2重量%の溶液とし、0.45μmのメンブレンフィルターでろ過したものを用い、以下の条件にて測定することができる。
<重量平均分子量(Mw)の測定>
分析装置:HLC‐8320GPC(東ソー社製)
カラム:KD−802.5(昭和電工社製)、KD−803(昭和電工社製)、KD−80M(昭和電工社製)の直列接続
カラムサイズ:8.0×300mm
溶離液:ジメチルホルムアミド
流量:1.0ml/min
検出器:示差屈折計
カラム温度:40℃
標準試料:ポリスチレン
【0047】
また、前記共重合体(A)は、密着性を向上させる観点から、酸価が、20mgKOH/g以下であることが好ましく、15mgKOH/g以下であることがより好ましく、12mgKOH/g以下であることがさらに好ましく、9mgKOH/g以下であることがよりさらに好ましい。なお、共重合体(A)の酸価は、原料(単量体)の仕込み量に基づいて、カルボキシ基、スルホン基、リン酸基などの酸基を有する共重合体の固形分1g中に含まれる酸基を中和するのに要するKOHのmg数から算出される理論酸価をいう。
【0048】
<酸触媒(B)>
本発明の酸触媒(B)は、硫酸および/またはスルホン酸系化合物であり、前記単量体(A−3)および(A−4)にかかる縮合反応を低温で促進させるための触媒としての機能を有する。
【0049】
前記酸触媒(B)としては、例えば、硫酸;フルオロスルホン酸;メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、1−プロパンスルホン酸、などのアルキルスルホン酸系化合物;ベンゼンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、4−エチルベンゼンスルホン酸、p−クロロベンゼンスルホン酸、m−キシレン−4−スルホン酸、3−ピリジンスルホン酸、ジノニルナフタレンスルホン酸、ジノニルナフタレンジスルホン酸、1-ピレンスルホン酸などのアリールスルホン酸系化合物などが挙げられる。前記酸触媒(B)は、硬化性に優れ、水垂れ跡が目立ちにくいという観点から、炭素数が1から3までのアルキルスルホン酸系化合物や、ベンジル構造やナフタレン構造のアリールスルホン酸系化合物が好ましい。前記酸触媒(B)は、少なくとも1種を用いればよく、2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0050】
前記酸触媒(B)は、前記共重合体(A)100重量部に対して、0.1〜5重量部であることが好ましい。前記酸触媒(B)は、耐水性と防曇性能を向上させる、および水垂れ跡を抑制させる観点から、前記共重合体(A)100重量部に対して、0.2重量部以上であることが好ましく、0.3重量部以上であることがより好ましく、そして、4重量部以下であることが好ましく、3重量部以下であることがより好ましい。
【0051】
また、酸触媒(B)は、式(1):{共重合体(A)100重量部に対する酸触媒(B)の重量×1,000}/酸触媒(B)の分子量で表される値が、9以下であることが好ましく、8以下であることがより好ましく、そして、1以上であることが好ましく、2以上であることがより好ましい。例えば、共重合体(A)100重量部に対して、酸触媒(B)としてメタンスルホン酸(分子量:96.11)を0.35重量部使用した場合、前記式(1)は、{0.35×1,000}/96.11=3.6となる。
【0052】
<界面活性剤(C)>
本発明の界面活性剤(C)は、少なくとも、アニオン系界面活性剤(C−1)とカチオン系界面活性剤(C−2)を含む。
【0053】
前記アニオン系界面活性剤(C−1)としては、従来公知のものを全て使用することができるが、例えば、オレイン酸ナトリウム、オレイン酸カリウムなどの脂肪酸塩;ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウムなどの高級アルコール硫酸エステル類;ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アルキルナフタレンスルホン酸ナトリウムなどのアルキルベンゼンスルホン酸塩およびアルキルナフタレンスルホン酸塩;ナフタレンスルホン酸ジアルキルホスフェート塩、マリン縮合物、ジアルキルスルホコハク酸塩、ジアルキルホスフェート塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸ナトリウムなどのポリオキシエチレンサルフェート塩が挙げられる。また、前記アニオン系界面活性剤(C−1)としては、例えば、パーフルオロアルキルカルボン酸塩、パーフルオロアルキルスルホン酸塩、パーフルオロアルキルリン酸エステルなどのフッ素含有アニオン系界面活性剤などが挙げられる。前記アニオン系界面活性剤(C−1)は、防曇性能、防曇持続性に優れるという観点から、ジアルキルスルホコハク酸塩、ジアルキルホスフェート塩が好ましい。前記アニオン系界面活性剤(C−1)は、少なくとも1種を用いればよく、2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0054】
前記カチオン系界面活性剤(C−2)としては、従来公知のものを全て使用することができるが、例えば、エタノールアミン類、ラウリルアミンアセテート、トリエタノールアミンモノ蟻酸塩、ステアラミドエチルジエチルアミン酢酸塩などのアミン塩;ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライドなどのアルキルトリメチルアンモニウム塩;ジラウリルジメチルアンモニウムクロライド、ジステアリルジメチルアンモニウムクロライド、ラウリルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、ステアリルジメチルベンジルアンモニウムクロライドなどのジアルキルジメチルアンモニウム塩などが挙げられる。また、前記カチオン系界面活性剤(C−2)としては、例えば、パーフルオロアルキルトリメチルアンモニウム塩などのフッ素含有カチオン系界面活性剤が挙げられる。前記カチオン系界面活性剤(C−2)は、防曇持続性、水垂れ跡が目立ちにくいという観点から、アルキルトリメチルアンモニウム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩が好ましい。前記アニオン系界面活性剤(C−2)は、少なくとも1種を用いればよく、2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0055】
前記界面活性剤(C)には、防曇塗膜上に水膜を形成した後に生じる水垂れ跡を目立ちにくくすることができる観点から、さらに、ノニオン系界面活性剤(C−3)を含むことが好ましい。
【0056】
前記ノニオン系界面活性剤(C−3)としては、従来公知のものを全て使用することができるが、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテルなどのポリオキシエチレン高級アルコールエーテル類;ポリオキシエチレンオクチルフェノール、ポリオキシエチレンノニルフェノールなどのポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル類;ポリオキシエチレングリコールモノステアレートなどのポリオキシエチレンアシルエステル類;ポリプロピレングリコールエチレンオキサイド付加物、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレートなどのポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類;アルキルリン酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステルなどのリン酸エステル類;シュガーエステル類、セルロースエーテル類などが挙げられる。また、前記ノニオン系界面活性剤(C−3)としては、例えば、パーフルオロアルキルアミンオキサイド、パーフルオロアルキルエチレンオキシド付加物、パーフルオロアルキル基および親水性基を有するオリゴマー、パーフルオロアルキル基および親油性基を有するオリゴマー、パーフルオロアルキル基および親油性基を有するオリゴマー、パーフルオロアルキル基と親水性基および親油性基を有するオリゴマーなどのフッ素含有ノニオン系界面活性剤が挙げられる。前記ノニオン系界面活性剤(C−3)は、防曇持続性、水垂れ跡が目立ちにくいという観点から、ポリオキシエチレン高級アルコールエーテル類が好ましい。前記アニオン系界面活性剤(C−3)は、2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0057】
なお、前記界面活性剤(C)には、ベタイン系界面活性剤を含むことができる。前記ベタイン系界面活性剤としては、例えば、ジメチルアルキルラウリルベタイン、ジメチルアルキルステアリルベタインなどの脂肪酸型ベタイン系界面活性剤;ジメチルアルキルスルホベタインのようなスルホン酸型ベタイン系界面活性剤;アルキルグリシン;パーフルオロアルキルベタインなどのフッ素含有ベタイン界面活性剤などが挙げられる。
【0058】
前記アニオン系界面活性剤(C−1)は、前記共重合体(A)100重量部に対して、0.5〜15重量部であることが好ましい。前記アニオン系界面活性剤(C−1)は、防曇性を向上させる観点から、前記共重合体(A)100重量部に対して、1重量部以上であることがより好ましく、2重量部以上であることがさらに好ましく、そして、水垂れ跡を抑制させる観点から、12重量部以下であることがより好ましく、10重量部以下であることがさらに好ましい。
【0059】
前記カチオン系界面活性剤(C−2)は、前記共重合体(A)100重量部に対して、0.05〜3重量部であることが好ましい。前記カチオン系界面活性剤(C−2)は、防曇持続性および耐湿試験後の防曇性を向上させる観点から、前記共重合体(A)100重量部に対して、0.1重量部以上であることがより好ましく、0.2重量部以上であることがさらに好ましく、そして、耐水性を向上させる、および水垂れ跡を抑制させる観点から、2重量部以下であることがより好ましく、1.5重量部以下であることがさらに好ましい。
【0060】
前記アニオン系界面活性剤(C−1)と前記カチオン系界面活性剤(C−2)との重量比((C−1)/(C−2))は、100/50(=2)以上であることが好ましく、100/40(=2.5)以上であることがより好ましく、そして、100/10(=10)以下であることが好ましく、100/12(=8)以下であることがより好ましい。
【0061】
また、前記界面活性剤(C)が、さらに、ノニオン系界面活性剤(C−3)を含む場合、前記ノニオン系界面活性剤(C−3)は、前記共重合体(A)100重量部に対して、0.5〜15重量部であることが好ましい。前記ノニオン系界面活性剤(C−3)は、水垂れ跡を抑制させる観点から、前記共重合体(A)100重量部に対して、1重量部以上であることがより好ましく、2重量部以上であることがさらに好ましく、そして、12重量部以下であることがより好ましく、10重量部以下であることがさらに好ましい。
【0062】
前記界面活性剤(C)が、ノニオン系界面活性剤(C−3)を含む場合、前記アニオン系界面活性剤(C−1)と前記ノニオン系界面活性剤(C−3)との重量比((C−1)/(C−3))は、100/300(=0.3)以上であることが好ましく、100/250(=0.4)以上であることがより好ましく、そして、100/50(=2)以下であることが好ましく、100/66(=1.5)以下であることがより好ましい。
【0063】
本発明の防曇剤組成物は、さらに、希釈溶剤を含むことができる。
【0064】
前記希釈溶剤は、防曇剤組成物の塗装に適した固形分および粘度調整を目的として使用する。希釈溶剤としては、前記共重合体(A)の重合溶剤を用いることが好ましい。塗装方法により、塗装に適した固形分および粘度は異なるが、スプレーコート法の場合、前記共重合体(A)は、防曇剤組成物中、3重量%以上であることが好ましく、5重量%以上であることがさらに好ましく、30重量%以下であることが好ましく、20重量%以下であることがさらに好ましい。
【0065】
本発明の防曇剤組成物には、その他の成分として、必要に応じ、レベリング剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤などの慣用の各種添加剤を配合することができる。前記その他の成分の添加量は、それぞれの添加剤につき慣用的な添加量で配合することができるが、通常、前記共重合体(C)100重量部に対して、10重量部以下である。
【0066】
<防曇性物品>
本発明の防曇性物品は、前記防曇剤組成物を、通常の塗料において行われる塗装方法により被塗装物に塗装し、加熱硬化することによって、被塗装物表面に防曇塗膜が形成されたものである。なお、塗装直後の塗膜中に含まれる溶剤を揮発乾燥させることを目的として、加熱硬化の工程の前に乾燥工程を設けることができる。
【0067】
前記被塗装物としては、その種類は問わず、公知の樹脂基材が使用可能であるが、例えば、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリロニトリル・スチレン共重合樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、アセテート樹脂、ABS樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂などが挙げられる。
【0068】
前記被塗装物への塗装の際には、被塗装物に対する防曇剤組成物の濡れ性を高め、はじきを防止する目的で、塗装前における被塗装物表面の付着異物除去を行うことが好ましい。高圧エアやイオン化エアによる除塵、洗剤水溶液またはアルコール溶剤による超音波洗浄、アルコール溶剤などを使用したワイピング、紫外線とオゾンによる洗浄などが挙げられる。塗装方法としては、例えば、浸漬法、フローコート法、ロールコート法、バーコート法、スプレーコート法などが挙げられる。
【0069】
前記乾燥は、通常、20〜50℃の温度で0.5〜5分間の条件下で行われる。
【0070】
前記加熱は、基材が樹脂部材である場合、加熱温度を樹脂部材の熱変形温度以下に設定することが必要であるが、樹脂部材の僅かな変形を防止する観点から、樹脂部材の熱変形温度より5℃以下が好ましく、10℃以下が好ましい。例えば、樹脂部材がポリメチルメタクリレート樹脂の場合は60℃以下が好ましく、ポリカーボネート樹脂の場合は110℃以下が好ましい。加熱時間は、例えば、加熱温度が60℃の場合、10分以上が好ましく、15分以上がより好ましい。加熱時間は、例えば、加熱温度が110℃の場合、5分以上が好ましく、10分以上がより好ましい。
【0071】
防曇塗膜の膜厚は、良好な防曇性と塗膜外観を得る観点から、0.5〜10μm程度であることが好ましく、1〜5μm程度であることがより好ましい。
【0072】
前記防曇性物品は、その用途は何ら限定されるものではないが、例えば、自動車の車両灯具に用いることができる。前記車両灯具としては、例えば、前照灯、補助前照灯、車幅灯、番号灯、尾灯、駐車灯、後退灯、方向指示灯、補助方向指示灯、非常点滅表示などが挙げられる。
【実施例】
【0073】
以下に本発明を実施例などによって説明するが、本発明はこれらのみに限定されない。
【0074】
<実施例1>
<共重合体(A)の製造>
温度計、攪拌装置、窒素導入管および冷却管を備えた反応容器に、重合溶剤としてn−プロピルアルコールを213重量部仕込み、窒素ガスを吹き込みながら80℃に加熱した。次いで、単量体(A−1)として、N,N−ジメチルアクリルアミドを35重量部、単量体(A−2)としてメチルメタクリレートを30重量部とブチルアクリレートを20重量部、単量体(A−3)として2−ヒドロキシエチルアクリレートを10重量部、単量体(A−4)としてN−メチロールアクリルアミドを5重量部、n−プロピルアルコールを15重量部混合した溶液と、ラジカル重合開始剤としてt−ヘキシルペルオキシピバレート(日油株式会社製、商品名「パーヘキシルPV」(有効成分70重量%))1.0重量部相当を、n−プロピルアルコール20重量部に溶解した溶液とを2時間かけて滴下した。滴下終了後にそのまま1時間攪拌した後、冷却して共重合体(A)の溶液を製造した。ガスクロマトグラフィーにて共重合体(A)の仕込み単量体の重合転化率を測定したところ、100%であった。また、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにて共重合体(A)の重量平均分子量を測定したところ、70,000であった。この共重合体(A)の溶液の固形分は30.0重量%であった。なお、共重合体(A)の酸価(理論酸価)は、0mgKOH/gである。
【0075】
<防曇剤組成物の製造>
上記で得られた共重合体(A)100重量部(固形分30%)の溶液333重量部に、ジアセトンアルコール70重量部、n−プロピルアルコール297重量部を加えて、共重合体(A)の濃度を13.0重量%に調整した。次に、酸触媒(B)としてメタンスルホン酸を0.35重量部、アニオン系界面活性剤(C−1)としてジ(2−エチルヘキシル)スルホコハク酸ナトリウム(日油株式会社製、商品名「ラピゾールA80」(有効成分80重量%))を4.0重量部相当、カチオン系界面活性剤(C−2)としてドデシルトリメチルアンモニウムクロライド(日油株式会社製、商品名「ニッサンカチオンBB」(有効成分30重量%))を1.0重量部相当、レベリング剤としてポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン(ビックケミー・ジャパン株式会社製、商品名「BYK333」)を0.1重量部混合し、防曇剤組成物を製造した。
【0076】
<防曇性物品の作製>
25℃、30%RHの相対湿度に設定した環境下で、上記で得られた防曇剤組成物をポリメチルメタクリレート(PMMA)樹脂板に、硬化後の塗膜の膜厚が2〜3μm程度になるように、スプレー塗装法にて塗装を行い、60℃で20分間の加熱硬化を行い、防曇塗膜を有する防曇性物品(試験片)を作製した。
【0077】
上記で得られた試験片を用いて、下記の(1−1)〜(1−4)、(2)〜(4)の評価方法で得られた結果を表1に示す。
【0078】
<(1)防曇性能の評価>
<(1−1)持続性試験>
80℃に保った温水浴の水面から2cmの高さの所に、試験片を塗膜面が下になるように設置し、温水浴からのスチームを塗膜に連続で10秒間照射した後、試験片を垂直に立てた状態で室温にて1時間乾燥させた。これを30回繰り返した後、スチーム照射から10秒後の曇りの有無を目視によって次の4段階で評価した。なお、評価が△以上であれば実用上問題なく、○であれば好ましく、◎であればより好ましい。
◎:スチーム照射直後に水膜が形成され、曇らない。
○:スチーム照射直後に一瞬の曇りが認められるが、すぐに水膜が形成され曇らない。
△:スチーム照射直後に曇りが認められるが、水膜が形成され曇らない。
×:スチーム照射後にきれいな水膜が形成されない、もしくは水膜が形成されず曇りが認められる。
【0079】
<(1−2)スチーム試験>
60℃に保った温水浴の水面から2cmの高さの所に、試験片を塗膜面が下になるように設置し、温水浴からのスチームを塗膜に連続照射し、照射から10秒後の曇りの有無を目視によって次の4段階で評価した。なお、評価が△以上であれば実用上問題なく、○であれば好ましく、◎であればより好ましい。
◎:スチーム照射直後に水膜が形成され、曇らない。
○:スチーム照射直後に一瞬の曇りが認められるが、すぐに水膜が形成され曇らない。
△:スチーム照射直後に曇りが認められるが、水膜が形成され曇らない。
×:スチーム照射直後に曇りが認められ、水膜が形成されない。
【0080】
<(1−3)耐湿試験後スチーム試験>
試験片を50℃、95%RHの条件で240時間静置した後、室温にて24時間静置した。その後、60℃に保った温水浴の水面から2cmの高さの所に、試験片を塗膜面が下になるように設置し、温水浴からのスチームを塗膜に連続照射し、照射から10秒後の曇りの有無を目視によって次の4段階で評価した。なお、評価が△以上であれば実用上問題なく、○であれば好ましく、◎であればより好ましい。
◎:スチーム照射直後に水膜が形成され、曇らない。
○:スチーム照射直後に一瞬の曇りが認められるが、すぐに水膜が形成され曇らない。
△:スチーム照射直後に曇りが認められるが、水膜が形成され曇らない。
×:スチーム照射後にきれいな水膜が形成されない、もしくは水膜が形成されず曇りが認められる。
【0081】
<(1−4)耐熱試験後スチーム試験>
試験片を80℃の条件で240時間静置した後、室温にて24時間静置した。その後、60℃に保った温水浴の水面から2cmの高さの所に、試験片を塗膜面が下になるように設置し、温水浴からのスチームを塗膜に連続照射し、照射から10秒後の曇りの有無を目視によって次の4段階で評価した。なお、評価が△以上であれば実用上問題なく、○であれば好ましく、◎であればより好ましい。
◎:スチーム照射直後に水膜が形成され、曇らない。
○:スチーム照射直後に一瞬の曇りが認められるが、すぐに水膜が形成され曇らない。
△:スチーム照射直後に曇りが認められるが、水膜が形成され曇らない。
×:スチーム照射後にきれいな水膜が形成されない、もしくは水膜が形成されず曇りが認められる。
【0082】
<(2)密着性>
JIS K 5400 8.5.1に準拠して塗膜の剥離の有無を目視によって次の3段階で評価した。なお、評価が○以上であれば実用上問題なく、◎であればより好ましい。
◎:全く剥離が認められない。
○:一部に剥離が認められる。
×:全て剥離している。
【0083】
<(3)耐水性>
試験片を40℃温水に240時間静置した後、室温にて1時間静置した後の、塗膜外観を目視によって次の4段階で評価した。なお、評価が△以上であれば実用上問題なく、○であれば好ましく、◎であればより好ましい。
◎:試験前と外観に変化がない。
○:わずかに塗膜表面が荒れている。
△:塗膜表面が荒れているか、またはわずか白化やシミが認められる。
×:塗膜の一部または全部が溶解している、またははっきりと白化やシミが認められる。
【0084】
<(4)水垂れ跡>
80℃に保った温水浴の水面から2cmの高さの所に、試験片を塗膜面が下になるように設置し、温水浴からのスチームを塗膜に連続10秒間照射した後、試験片を垂直に立てた状態で室温にて1時間乾燥させた。乾燥後に水垂れ跡の有無を目視によって次の4段階で評価した。なお、評価が△以上であれば実用上問題なく、○であれば好ましく、◎であればより好ましい。
◎:水垂れ跡が目立たない。
○:水垂れ跡がほとんど目立たない。
△:水垂れ跡がやや目立つ。
×:水垂れ跡が目立つ。
【0085】
<実施例2〜27>
<共重合体(A)の製造>
実施例1の単量体を、表1〜3に記載の原料およびその割合に変更したこと以外は、実施例1と同様な操作にて、実施例2〜27の共重合体(A)の溶液を製造した。
【0086】
<防曇剤組成物の製造および防曇性物品の作製>
実施例1の原料を、表1〜3に記載の原料およびその割合に変更したこと以外は、実施例1と同様な操作にて、実施例2〜27の防曇剤組成物を製造した。さらに、実施例1と同様な操作にて、実施例2〜27の防曇塗膜を有する防曇性物品(試験片)を作製した。
【0087】
上記で得られた試験片を用いて、上記の(1−1)〜(1−4)、(2)〜(4)の評価方法で得られた結果を表1〜3に示す。
【0088】
<比較例1>
<共重合体(A)の製造>
攪拌装置、窒素導入管および冷却管を備えた反応容器に、重合溶剤としてn−プロパノール223重量部、単量体(a1)としてN,N−ジメチルアクリルアミド(DMAA)17重量部、単量体(a2)としてメチルメタクリレート(MMA)50重量部、n−ブチルアクリレート(BA)17重量部、単量体(a4)としてN−メチロールアクリルアミド(N−MAA)8重量部、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(AMPS)8重量部、および塩基性化合物としてトリエタノールアミン4.03g(前記AMPSのスルホン酸基に対して70モル%に相当する量、計算方法;{AMPS仕込み重量部}÷AMPSのモル質量×70%÷100×{トリエタノールアミンのモル質量}=8÷207.4×70÷100×149.2=4.03)を仕込み、窒素ガスを吹き込みながら65℃に加熱した。そこへ、ラジカル重合開始剤としてt−ヘキシルペルオキシピバレートの炭化水素希釈品(日油株式会社製、商品名「パーヘキシルPV」)1.0重量部をn−プロパノール20重量部に溶解させたものを3時間かけて滴下した。さらに5時間重合を行った後、80℃に昇温し、その温度で1時間重合を行って、アクリル共重合体(A)の溶液を得た。ガスクロマトグラフィーにて共重合体(A)の仕込み単量体の重合転化率を測定したところ、100%であった。また、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにて共重合体(A)の重量平均分子量を測定したところ、170,000であった。この共重合体(A)の溶液の固形分は30.0重量%であった。
【0089】
<比較例2>
<共重合体(A)の製造>
比較例1の単量体およびトリエタノールアミンを、表4に記載の原料およびその割合に変更したこと以外は、比較例1と同様な操作にて、比較例2の共重合体(A)の溶液を製造した。
【0090】
<比較例3〜11>
実施例1の単量体を、表4に記載の原料およびその割合に変更したこと以外は、実施例1と同様な操作にて、比較例3〜11の共重合体(A)の溶液を製造した。
【0091】
<防曇剤組成物の製造および防曇性物品の作製>
実施例1の原料を、表4に記載の原料およびその割合に変更したこと以外は、実施例1と同様な操作にて、比較例1〜11の防曇剤組成物を製造した。さらに、表4に記載の硬化温度および硬化時間に変更したこと以外は、実施例1と同様な操作にて、比較例1〜11の防曇塗膜を有する防曇性物品(試験片)を作製した。
【0092】
上記の比較例で得られた試験片を用いて、上記の(1−1)〜(1−4)、(2)〜(4)の評価方法で得られた結果を表4に示す。
【0093】
【表1】
【0094】
【表2】
【0095】
【表3】
【0096】
【表4】
【0097】
表1〜4中、単量体(A−1)〜(A−4)として、
DMAAは、N,N−ジメチルアクリルアミド;
DAAAは、ジアセトンアクリルアミド;
ACMOは、N−アクリロイルモルホリン;
M−20Gは、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート(エチレングリコールの平均付加モル数2、新中村化学工業株式会社製);
MMAは、メチルメタクリレート;
BAは、n−ブチルアクリレート;
EHAは、2−エチルヘキシルアクリレート;
LAは、ラウリルアクリレート;
HEAは、2−ヒドロキシエチルアクリレート;
HEMAは、2−ヒドロキシエチルメタクリレート;
HEAAは、ヒドロキシエチルアクリルアミド;
HBAは、4−ヒドロキシブチルアクリレート;
プラクセルFA2Dは、ヒドロキシエチルアクリレートのカプロラクトン2モル付加物(株式会社ダイセル社製);
N−MAAは、N−メチロールアクリルアミド;
N−BMAは、N−ブトキシメチルアクリルアミド;
N−MMMは、N−メトキシメチルメタクリルアミド;を示す。
また、その他の単量体として、
AMPSは、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸;を示す。
【0098】
表1〜4中、酸触媒(B)として、
SOは、硫酸5重量%水溶液;
MSAは、メタンスルホン酸;
PTSは、p−トルエンスルホン酸;
DBSは、ドデシルベンゼンスルホン酸;
DNNDSAは、ジノニルナフタレンジスルホン酸;を示す。
また、その他の触媒として、
NACURE4054Jは、リン酸アルキルエステル(King Industries Inc.製);を示す。
【0099】
表1〜4中、界面活性剤(C)として、
ラピゾールA80は、スルホコハク酸ジエステル塩(日油株式会社製、有効成分80重量%);
パーソフトSKは、アルキル硫酸エステルナトリウム塩(日油株式会社製、有効成分30重量%);
フタージェント100は、フッ素含有スルホン酸塩(株式会社ネオス社製、有効成分100重量%);
ニッサンカチオンBBは、モノアルキル4級アンモニウム塩(日油株式会社製、有効成分30重量%);
ニッサンカチオン2DB500Eは、ジアルキル4級アンモニウム塩(日油株式会社製、有効成分50重量%);
フタージェント300は、フッ素含有カチオン系界面活性剤(株式会社ネオス社製、有効成分100重量%)
ノニオンL−4は、ポリオキシエチレンモノラウレート(日油株式会社製、有効成分100重量%);を示す。
ノニオンEH−208は、ポリオキシエチレン−2−エチルヘキシルエーテル(日油株式会社製、有効成分100重量%);
ノニオンID−203は、ポリオキシエチレンイソデシルエーテル(日油株式会社製、有効成分100重量%);を示す。
【0100】
以下、上記の実施例および比較例の結果の主な考察を示す。
【0101】
実施例1〜5の結果から、単量体(A−1)のなかでも、密着性を向上させる観点から、DMAAが好ましいことが分かった。実施例1、6〜7の結果から、単量体(A−2)のなかでも、防曇性を向上させる観点から、炭素数が1〜8であるアルキル鎖を有するものが好ましいことが分かった。実施例1、8〜11の結果から、単量体(A−3)のなかでも、防曇性および耐水性を向上させる観点から、ヒドロキシエチルアクリレートのカプロラクトン2モル付加物よりも分子鎖が短いものが好ましいことが分かった。実施例1、12〜13の結果から、単量体(A−4)のなかでも、防曇性および耐水性を向上させる観点から、N−MAAが好ましいことが分かった。
【0102】
実施例1、14〜19の結果から、各性能をバランスよく発現するための、共重合体(A)中の単量体(A−1)〜(A−4)の好ましい割合が分かった。また、実施例1、20〜21の結果から、酸触媒(B)の好ましい配合量が分かった。さらに、実施例1、22〜27の結果から、防曇性を向上させるための、界面活性剤(C)の好ましい配合量が分かった。
【0103】
一方、比較例1〜4、7〜11は、界面活性剤(C−1)および/または(C−2)を使用していないため、実施例と比較して、防曇持続性が劣ることが分かった。
比較例4は、共重合体を構成する単量体に、酸基を有する単量体を用いており、硫酸および/またはスルホン酸系化合物の酸触媒(B)を使用していないため、実施例と比較して、防曇持続性および耐水性が劣ることが分かった。比較例5は、触媒として、リン酸系を使用したが、実施例と比較して、防曇持続性および耐水性が劣ることが分かった。比較例6は、単量体(A−3)を用いていないため、実施例と比較して、防曇持続性および耐水性が劣ることが分かった。