特許第6880536号(P6880536)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6880536
(24)【登録日】2021年5月10日
(45)【発行日】2021年6月2日
(54)【発明の名称】電力ケーブルの端末構造
(51)【国際特許分類】
   H02G 15/064 20060101AFI20210524BHJP
【FI】
   H02G15/064
【請求項の数】2
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-246921(P2017-246921)
(22)【出願日】2017年12月22日
(65)【公開番号】特開2019-115168(P2019-115168A)
(43)【公開日】2019年7月11日
【審査請求日】2020年6月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100147
【弁理士】
【氏名又は名称】山野 宏
(72)【発明者】
【氏名】永倉 到
(72)【発明者】
【氏名】苗崎 雄裕
【審査官】 木村 励
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−29497(JP,A)
【文献】 特開2008−220124(JP,A)
【文献】 特開2010−193572(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 15/064
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーブル導体、前記ケーブル導体の外周に形成されたケーブル絶縁層、及び前記ケーブル絶縁層の外周に形成されたケーブル外部半導電層を有する電力ケーブルの端末構造であって、
前記ケーブル導体、前記ケーブル絶縁層、及び前記ケーブル外部半導電層の各々が露出されたケーブル端部と、
前記ケーブル端部の外周に装着され、前記ケーブル絶縁層に密着する絶縁部と、前記ケーブル外部半導電層に密着する半導電部とを有するストレスコーンと、
前記ケーブル端部及び前記ストレスコーンを収容し、前記ケーブル導体の先端部に接続される内部電極と、前記ケーブル端部を挿入する挿入開口部とが設けられたブッシングと、を備え、
前記ブッシングは、前記挿入開口部側に位置する円筒状の第1領域と、前記第1領域から前記内部電極側に向かって先細りする円錐台筒状の第2領域とを有し、
前記ストレスコーンは、前記ブッシングの前記第1領域と前記第2領域とに跨るように収容され、前記第1領域の内周面に沿った円筒外周面と前記第2領域の内周面に沿った円錐台外周面とを有し、
前記絶縁部と前記半導電部とは、前記ストレスコーンの軸方向に連続して一体に設けられ、前記絶縁部が前記第2領域側に配置されると共に前記半導電部が前記第1領域側に配置されており、
前記半導電部における最も前記内部電極側に配置される先端部が前記第1領域と前記第2領域との境界よりも前記内部電極側に位置する電力ケーブルの端末構造。
【請求項2】
前記ストレスコーンの軸方向に沿った断面において、
前記半導電部は、その先端部が曲面部を有すると共に、前記ストレスコーンの内周面上における前記半導電部と前記絶縁部との境界点から前記先端部に向かって傾斜して前記曲面部の一端につながる傾斜面部を有し、
前記ストレスコーンの外周面上における前記半導電部と前記絶縁部との境界点が前記円錐台外周面上に位置して、前記円錐台外周面の一部が前記半導電部の外周面で形成されている請求項1に記載の電力ケーブルの端末構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力ケーブルの端末構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電力ケーブルとして、ケーブル導体の外周にケーブル絶縁層を有する電力ケーブル(例、CVケーブル)が利用されている。通常、電力ケーブルを用いて電力ケーブル線路を構築する場合、電力ケーブルの端末において架空送電線や他の電力機器(例えば、開閉装置(遮断器)や変圧器など)に接続するための端末構造(終端接続部)が設けられる(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
電力ケーブルの端末構造は、電力ケーブルの端部を収容するブッシングと、ケーブル端部とブッシングとの間の電気的ストレスを緩和するストレスコーン(プレモールド絶縁体)とを備える。電力ケーブルの端末構造としては、電力ケーブルの端部を段剥ぎしてケーブル導体及びケーブル絶縁層を露出させ、露出させたケーブル絶縁層の外周にストレスコーンを装着し、ケーブル端部及びストレスコーンをブッシングに収容した構成が挙げられる。特許文献1には、エポキシ套管の下端部(ケーブル挿入端側)に下部電極が埋設されたケーブル終端部が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−170640号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ブッシングは、ケーブル端部を挿入する側(挿入開口部側)の径が大きく、その途中から先端側に向かって先細りするように形成されており、挿入開口部側に位置する円筒状の第1領域と、第1領域から先細りする円錐台筒状の第2領域とを有する。ストレスコーンとしては、ケーブル絶縁層に密着する絶縁部と、その軸方向に連続して一体に設けられ、ケーブル外部半導電層に密着する半導電部とを有するものが知られている。半導電部は、電気力線の集中を抑えて等電位線を滑らかにし、ケーブル外部半導電層の周囲における電界を緩和することにより、ケーブル端部とブッシングとの間の耐電圧特性を高める。ストレスコーンは、ブッシングの内周面に対応した形状に形成されており、第1領域の内周面に沿った円筒外周面と第2領域の内周面に沿った円錐台外周面とを有する。
【0006】
電力ケーブルの端末構造では、ストレスコーンがブッシングの第1領域と第2領域とに跨るように収容され、絶縁部が第2領域側に配置されると共に半導電部が第1領域側に配置される。そして、ストレスコーンの円錐台外周面がブッシングにおける第2領域の内周面に面接触して密着するように、ストレスコーンが挿入開口部側から押圧されている。従来の端末構造では、ストレスコーンにおける半導電部の先端部が第1領域と第2領域との境界よりも挿入開口部側に位置する。
【0007】
電力ケーブルの端末構造において、ストレスコーンの円筒外周面とブッシングにおける第1領域の内周面とが十分に密着しない場合があり、円筒外周面と第1領域の内周面との間に隙間(空気層)が形成されることがある。この場合、電力ケーブルに電圧が印加されたとき、ケーブル端部の周囲に発生した電界によって空気層で部分放電が起こり、絶縁破壊するおそれがある。これは、絶縁破壊強さが低い空気層に半導電部の先端部から等電位線が回り込むことによるものと考えられる。
【0008】
そこで、従来の端末構造では、下部電極が埋設されたブッシングが用いられている。一般に、下部電極は、その先端部がブッシングの第2領域側に突出するように形成されている。これにより、半導電部の先端部から下部電極の先端部に沿って等電位線が形成されることになるため、半導電部の先端部から上記空気層に等電位線が回り込むことを抑制でき、耐電圧特性を確保している。しかしながら、下部電極が埋設されたブッシングは、構成が複雑で製造コストがかかるという問題がある。
【0009】
したがって、下部電極をなくしてブッシングの構成を簡素化しても、ストレスコーンによってケーブル端部とブッシングとの間の耐電圧特性を確保できることが望まれる。
【0010】
本開示は、構成を簡素化できながら、ケーブル端部とブッシングとの間の耐電圧特性を確保できる電力ケーブルの端末構造を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本開示の電力ケーブルの端末構造は、
ケーブル導体、前記ケーブル導体の外周に形成されたケーブル絶縁層、及び前記ケーブル絶縁層の外周に形成されたケーブル外部半導電層を有する電力ケーブルの端末構造であって、
前記ケーブル導体、前記ケーブル絶縁層、及び前記ケーブル外部半導電層の各々が露出されたケーブル端部と、
前記ケーブル端部の外周に装着され、前記ケーブル絶縁層に密着する絶縁部と、前記ケーブル外部半導電層に密着する半導電部とを有するストレスコーンと、
前記ケーブル端部及び前記ストレスコーンを収容し、前記ケーブル導体の先端部に接続される内部電極と、前記ケーブル端部を挿入する挿入開口部とが設けられたブッシングと、を備え、
前記ブッシングは、前記挿入開口部側に位置する円筒状の第1領域と、前記第1領域から前記内部電極側に向かって先細りする円錐台筒状の第2領域とを有し、
前記ストレスコーンは、前記ブッシングの前記第1領域と前記第2領域とに跨るように収容され、前記第1領域の内周面に沿った円筒外周面と前記第2領域の内周面に沿った円錐台外周面とを有し、
前記絶縁部と前記半導電部とは、前記ストレスコーンの軸方向に連続して一体に設けられ、前記絶縁部が前記第2領域側に配置されると共に前記半導電部が前記第1領域側に配置されており、
前記半導電部における最も前記内部電極側に配置される先端部が前記第1領域と前記第2領域との境界よりも前記内部電極側に位置する。
【発明の効果】
【0012】
上記電力ケーブルの端末構造は、構成を簡素化できながら、ケーブル端部とブッシングとの間の耐電圧特性を確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施形態1に係る電力ケーブルの端末構造の概略構成を示す部分縦断面図である。
図2図1に示す電力ケーブルの端末構造におけるストレスコーンの部位を拡大して示す要部拡大縦断面図である。
図3】試験例1でのストレスコーンにおける等電位線図を示す図である。
図4】参考例1でのストレスコーンにおける等電位線図を示す図である。
図5】参考例2でのストレスコーンにおける等電位線図を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[本発明の実施形態の説明]
最初に本発明の実施態様を列記して説明する。
【0015】
(1)本発明の一態様に係る電力ケーブルの端末構造は、
ケーブル導体、前記ケーブル導体の外周に形成されたケーブル絶縁層、及び前記ケーブル絶縁層の外周に形成されたケーブル外部半導電層を有する電力ケーブルの端末構造であって、
前記ケーブル導体、前記ケーブル絶縁層、及び前記ケーブル外部半導電層の各々が露出されたケーブル端部と、
前記ケーブル端部の外周に装着され、前記ケーブル絶縁層に密着する絶縁部と、前記ケーブル外部半導電層に密着する半導電部とを有するストレスコーンと、
前記ケーブル端部及び前記ストレスコーンを収容し、前記ケーブル導体の先端部に接続される内部電極と、前記ケーブル端部を挿入する挿入開口部とが設けられたブッシングと、を備え、
前記ブッシングは、前記挿入開口部側に位置する円筒状の第1領域と、前記第1領域から前記内部電極側に向かって先細りする円錐台筒状の第2領域とを有し、
前記ストレスコーンは、前記ブッシングの前記第1領域と前記第2領域とに跨るように収容され、前記第1領域の内周面に沿った円筒外周面と前記第2領域の内周面に沿った円錐台外周面とを有し、
前記絶縁部と前記半導電部とは、前記ストレスコーンの軸方向に連続して一体に設けられ、前記絶縁部が前記第2領域側に配置されると共に前記半導電部が前記第1領域側に配置されており、
前記半導電部における最も前記内部電極側に配置される先端部が前記第1領域と前記第2領域との境界よりも前記内部電極側に位置する。
【0016】
上記電力ケーブルの端末構造では、ストレスコーンの円筒外周面とブッシングにおける第1領域の内周面との間に空気層が形成されるようなことがあっても、ストレスコーンにおける半導電部の先端部が第2領域側に突出することで、半導電部の先端部から上記空気層に等電位線が回り込むことを抑制できる。これは、半導電部の先端部に沿って等電位線が形成されるため、円筒外周面と第1領域の内周面との間に形成された空気層に電界が印加され難くなるからである。したがって、上記電力ケーブルの端末構造によれば、ブッシングが下部電極を有していなくても、半導電部の先端部から空気層に等電位線が回り込むことを抑制でき、ストレスコーン自体でケーブル端部とブッシングとの間の耐電圧特性を確保できる。よって、上記電力ケーブルの端末構造は、構成を簡素化できながら、ケーブル端部とブッシングとの間の耐電圧特性を確保できる。
【0017】
(2)上記電力ケーブルの端末構造の一形態として、次の構成が挙げられる。
前記ストレスコーンの軸方向に沿った断面において、
前記半導電部は、その先端部が曲面部を有すると共に、前記ストレスコーンの内周面上における前記半導電部と前記絶縁部との境界点から前記先端部に向かって傾斜して前記曲面部の一端につながる傾斜面部を有し、
前記ストレスコーンの外周面上における前記半導電部と前記絶縁部との境界点が前記円錐台外周面上に位置して、前記円錐台外周面の一部が前記半導電部の外周面で形成されている。
【0018】
上記形態では、半導電部において、先端部が曲面部を有すると共に、曲面部につながるように傾斜面部を有することで、半導電部の傾斜面部及び曲面部に沿って等電位線が滑らかに形成されることになる。そのため、電気力線の集中を効果的に抑えることができ、ケーブル外部半導電層の周囲における電界を緩和する効果が高く、ケーブル端部とブッシングとの間の耐電圧特性を高めることができる。
【0019】
また、ストレスコーンの円錐台外周面の一部が半導電部の外周面で形成されていることで、半導電部の先端部側の外周面がブッシングの第2領域の内周面に面接触して密着することになる。そのため、半導電部の先端部から上記空気層に等電位線が回り込むことをより抑制でき、ケーブル端部とブッシングとの間の耐電圧特性をより高めることできる。
【0020】
[本発明の実施形態の詳細]
本発明の実施形態に係る電力ケーブルの端末構造の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。図中の同一符号は、同一名称物を示す。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0021】
[実施形態1]
図1図2を参照して、実施形態1に係る電力ケーブルの端末構造1を説明する。図1は、電力ケーブル2の中心を通り軸方向に平行な平面で切断した端末構造1の縦断面図を示している。以下の説明では、電力ケーブルの端末構造1の各要素において、電力ケーブル2の先端部、ここでは段剥ぎされて露出されたケーブル導体21の先端部に近い側(内部電極5側)を先端側、その反対側(挿入開口部40側)を後端側と呼ぶことがある。図1では、紙面上側が先端側、紙面下側が後端側である。
【0022】
(端末構造の概要)
図1に示す実施形態1の電力ケーブルの端末構造1は、代表的には、電力ケーブル2を、例えばGIS(ガスインシュレーテッドスイッチギア)などの接続対象(図示せず)と接続する箇所に設けられる。詳しくは、電力ケーブルの端末構造1は、図1に示すように、ケーブル端部20と、絶縁部32と半導電部31とを有するストレスコーン3と、ケーブル導体21の先端部に接続される内部電極5が設けられたブッシング4とを備える。ブッシング4の後端側には、ケーブル端部20を挿入する挿入開口部40が設けられている。ブッシング4は、円筒状の第1領域41と、第1領域41に連続する円錐台筒状の第2領域42とを有する。ストレスコーン3は、ブッシング4の第1領域41と第2領域42とを跨るように収容され、絶縁部32が第2領域42側に配置されると共に半導電部31が第1領域41側に配置されている。端末構造1の特徴の1つは、半導電部31における先端部311が第1領域41と第2領域42との境界Bよりも内部電極5側(先端側)に位置する点にある。以下、各要素について詳細に説明する。
【0023】
(電力ケーブル)
電力ケーブル2は、図1に示すように、中心から順にケーブル導体21、ケーブル導体21の外周に形成されたケーブル絶縁層22、及びケーブル絶縁層22の外周に形成されたケーブル外部半導電層23を有し、シース(図示せず)で被覆されている。また、ここでは、図示していないが、ケーブル絶縁層22の内側にケーブル内部半導電層が形成され、ケーブル外部半導電層23の外周に遮蔽層を有している。電力ケーブル2としては、例えばCVケーブル(架橋ポリエチレン絶縁シースケーブル)などが挙げられる。この例では、送電電圧が66kVから500kVといった高圧用途のCVケーブルであり、導体サイズ(ケーブル導体21の断面積)が、例えば200mm以上3000mm以下である。電力ケーブル2の端部は段剥ぎされ、先端側から順にケーブル導体21、ケーブル絶縁層22、及びケーブル外部半導電層23の各々が露出されたケーブル端部20が形成されている。
【0024】
(ブッシング)
ブッシング4は、ケーブル端部20及びストレスコーン3を収容し、ケーブル導体21の先端部に接続される内部電極5と、ケーブル端部20を挿入する挿入開口部40とが設けられている。この例では、内部電極5がブッシング4と一体成形されている。ブッシング4は、筒状であり、挿入開口部40側(後端側)に位置する円筒状の第1領域41と、第1領域41から内部電極5側(先端側)に向かって先細りする円錐台筒状の第2領域42とを有する。ブッシング4は、エポキシ樹脂などの絶縁材料からなる。
【0025】
この例では、ブッシング4が電力機器の機器ケース100内に設置され、機器ケース100に取り付けられている。図1では、ブッシング4の外周面が凹凸のない平滑な面で形成されている場合(例えば、ガス中終端接続部を構築する場合など)を例示しているが、ブッシング4の外周面に複数の襞が形成された外被を有していてもよい。
【0026】
(内部電極)
内部電極5は、棒状であり、一端側(図示せず、図1では紙面上側)を接続対象との接続箇所とし、他端側(紙面下側)をケーブル導体21との接続箇所とする。この例では、内部電極5の他端側に、接続スリーブ51が圧縮接続されたケーブル導体21の先端部を挿入する挿入穴50が形成されており、挿入穴50の内側には接触子(図示せず)が設けられている。この挿入穴50に接続スリーブ51が嵌め込まれることで、内部電極5とケーブル導体21とが接続スリーブ51を介して電気的に接続されている。接触子の具体例としては、多点接触式のコンタクト部材が挙げられる。内部電極5及び接続スリーブ51は、例えば、銅や銅合金などの導電材料からなる。
【0027】
(ストレスコーン)
ストレスコーン3は、ケーブル端部20の外周に装着され、ケーブル絶縁層22に密着する絶縁部32と、ケーブル外部半導電層23に密着する半導電部31とを有する。ストレスコーン3は、ブッシング4の第1領域41と第2領域42とに跨るように収容され、半導電部31が第1領域41側に配置され、絶縁部32が第2領域42側に配置されている。ストレスコーン3は、ブッシング4の内周面に対応した形状に形成されており、第1領域41の内周面に沿った円筒外周面3bと第2領域42の内周面に沿った円錐台外周面3cとを有する。絶縁部32と半導電部31とは、ストレスコーン3の軸方向に連続して一体に設けられている。
【0028】
ストレスコーン3は、押し金具6によって挿入開口部40側(後端側)から軸方向に押圧され、円錐台外周面3cが第2領域42の内周面に面接触して密着している。押し金具6は、挿入開口部40側に設けられたスプリング61によって付勢され、ストレスコーン3の後端面を押圧する。
【0029】
(絶縁部)
絶縁部32は、エチレンプロピレンゴムやシリコーンゴムなどの絶縁材料からなる。絶縁部32の内周面はケーブル絶縁層22に密着しており、絶縁部32の外周面はブッシング4(第2領域42)の内周面に密着している。これにより、ケーブル端部20の絶縁性を確保している。
【0030】
(半導電部)
半導電部31は、エチレンプロピレンゴムやシリコーンゴムなどにカーボンブラックなどを配合して導電性を付与した半導電材料からなる。半導電部31は、絶縁部32よりも挿入開口部40側(後端側)に設けられており、半導電部31の内周面はケーブル外部半導電層23に密着している。半導電部31は、ケーブル外部半導電層23の周囲における電界を緩和するように構成されている。
【0031】
本実施形態では、半導電部31における最も内部電極5側(先端側)に配置される先端部311が第1領域41と第2領域42との境界Bよりも内部電極5側(先端側)に位置する。ここでいう、「第1領域41と第2領域42との境界B」は、各領域41、42の内周面が円筒面と円錐台筒面の境界になっている箇所である。図2に示すように、ケーブル端部20の軸方向において、境界Bの位置は、円錐台外周面3cと円筒外周面3bとの交点Sの位置と一致する。以下、主に図2を参照して、半導電部31の構成について詳細に説明する。なお、図2では、分かり易くするため、ストレスコーン3(絶縁部32及び半導電部31)のハッチングを省略している。
【0032】
この例では、半導電部31の先端部311が第2領域42側に向かって舌片状に突出し、先端部311の先端面が曲面状に形成されている。具体的には、ストレスコーン3の軸方向に沿った断面において、先端部311が曲面部31aを有する。ここでは、曲面部31aが、先端部311の頂点Pを挟んで、ブッシング4側に位置するブッシング側曲面部31bと、ケーブル端部20側に位置するケーブル側曲面部31cとで構成されている。また、半導電部31は、ストレスコーン3の内周面上における半導電部31と絶縁部32との境界点Qから先端部311に向かって傾斜して、曲面部31a(ケーブル側曲面部31c)の一端につながる傾斜面部31dを有する。
【0033】
一方、ストレスコーン3の外周面上における半導電部31と絶縁部32との境界点Rは円錐台外周面3c上に位置しており、円錐台外周面3cの一部が半導電部31の外周面で形成されている。つまり、この例では、円錐台外周面3cが半導電部31の外周面の一部と、絶縁部32の外周面とで構成されている。これにより、半導電部31の先端部311側の外周面がブッシング4の第2領域42の内周面に面接触して密着することになる。
【0034】
ストレスコーン3(絶縁部32及び半導電部31)は、ケーブル端部20の絶縁性を確保しつつ、ケーブル端部20の周囲の電界を緩和するように構成されている。ストレスコーン3の形状・寸法は、例えば、電力ケーブル2の導体サイズなどに応じて適宜設定することが挙げられる。
【0035】
<効果>
実施形態1の電力ケーブルの端末構造1は、次の効果を奏する。
【0036】
端末構造1において、ストレスコーン3の円筒外周面3bとブッシング4における第1領域41の内周面とが十分密着せず、円筒外周面3bと第1領域41の内周面との間に空気層が形成される場合がある。端末構造1では、ストレスコーン3における半導電部31の先端部311が第1領域41と第2領域42との境界Bよりも内部電極5側(先端側)に位置する。これにより、半導電部31の先端部311から上記空気層に等電位線が回り込むことを抑制できる。したがって、ブッシング4が下部電極を有していなくても、ストレスコーン3自体でケーブル端部20とブッシング4との間の耐電圧特性を確保できる。
【0037】
第1領域41と第2領域42との境界Bから先端部311の頂点Pまでの距離Lは、ストレスコーン3の全長L(図1参照)の5%以上であることが挙げられる。これにより、半導電部31の先端部311から上記空気層に等電位線が回り込み難くなる。距離Lの上限は、例えばストレスコーン3の全長Lの25%以下である。
【0038】
更に、半導電部31において、先端部311が曲面部31aを有すると共に、曲面部31aにつながるように傾斜面部31dを有することで、半導電部31の傾斜面部31d及び曲面部31aに沿って等電位線が滑らかに形成されることになる。そのため、ケーブル外部半導電層23の周囲における電界を緩和する効果が高い。
【0039】
また、円錐台外周面3cの一部が半導電部31の外周面で形成されていることから、半導電部31の先端部311側の外周面がブッシング4の第2領域42の内周面に面接触して密着することになる。そのため、半導電部31の先端部311から上記空気層に等電位線が回り込むことをより抑制でき、ケーブル端部20とブッシング4との間の耐電圧特性をより高めることできる。
【0040】
曲面部31aの曲率半径を小さくし過ぎると、等電位線が滑らかに形成され難くなり、曲面部31aの曲率半径を大きくし過ぎると、絶縁部32の外径を大きくする必要があり、ストレスコーン3の外径が大きくなる。したがって、ブッシング側曲面部31bの曲率半径R及びケーブル側曲面部31cの曲率半径Rをそれぞれ、例えば10mm以上30mm以下とすることが挙げられる。
【0041】
また、第1領域41と第2領域42との境界Bから外周面上の境界点Rまでの距離Lは、ストレスコーン3の全長L(図1参照)の5%以上であることが挙げられる(但し、L≦L)。これにより、円錐台外周面3cにおける半導電部31の外周面と第2領域42の内周面との接触面積を十分に確保でき、上記空気層に等電位線が回り込むことを回避し易くなる。なお、距離Lを大きくし過ぎると、円錐台外周面3cにおける絶縁部32の外周面の面積が減少して、絶縁部32の外周面と第2領域42の内周面との接触面積が減少する。距離Lの上限は、例えばストレスコーン3の全長Lの25%以下である。図2に示すように先端部311が曲面部31aを有する場合は距離Lが距離Lよりも小さくなる(L<L)。この場合、距離Lと距離Lとの差(L−L)は、例えば3mm以上、更に5mm以上とすることが挙げられる。
【0042】
[試験例1]
試験例1では、実施形態1で説明した構成の電力ケーブルの端末構造について、ストレスコーンにおける電界解析を行い、電界分布を求めた。電界解析には、公知のFEM(Finite Element Method)電界解析ソフトを用いた。
【0043】
試験例1では、電力ケーブルの導体サイズを630mmとした。また、図2に示すストレスコーンの距離L及びLについて次のように設定した。
距離L:ストレスコーン全長の13%
距離L:ストレスコーン全長の6%
【0044】
試験例1での解析結果の等電位線図を図3に示す。図3に示すように、試験例1では、等電位線が滑らかに形成されており、また、半導電部31の先端部311から円筒外周面3bと第1領域41の内周面との間に等電位線が回り込むことを回避できていることが分かる。
【0045】
[参考例]
参考例では、試験例1とは異なる構成の電力ケーブルの端末構造について、ストレスコーンにおける電界解析を行い、試験例1と同様に電界分布を求めた。参考例1では、図4に示すように、ブッシング4に下部電極45が埋設されており、ストレスコーン3における半導電部31の先端部311がブッシング4の第1領域41と第2領域42との境界に位置する点が試験例1と大きく異なる(図1図2も併せて参照)。参考例1での解析結果の等電位線図を図4に示す。
【0046】
参考例2では、ブッシング4に下部電極が埋設されていない以外は、参考例1と同じ構成の電力ケーブルの端末構造について、ストレスコーンにおける電界解析を行い、試験例1と同様に電界分布を求めた。参考例2での解析結果の等電位線図を図5に示す。
【0047】
参考例1では、図4に示すように、半導電部31の先端部311から下部電極45の先端部に沿って等電位線が形成されることにより、円筒外周面3bと第1領域41の内周面との間に等電位線が回り込むことを回避できていることが分かる。一方、下部電極がない参考例2では、図5に示すように、半導電部31の先端部311から円筒外周面3bと第1領域41の内周面との間に等電位線が回り込んでおり、その隙間に電界が印加されることが分かる。
【符号の説明】
【0048】
1 電力ケーブルの端末構造
2 電力ケーブル
20 ケーブル端部
21 ケーブル導体
22 ケーブル絶縁層
23 ケーブル外部半導電層
3 ストレスコーン
3c 円錐台外周面
3b 円筒外周面
31 半導電部
311 先端部
31a 曲面部
31b ブッシング側曲面部
31c ケーブル側曲面部
31d 傾斜面部
32 絶縁部
4 ブッシング
40 挿入開口部
41 第1領域
42 第2領域
45 下部電極
5 内部電極
50 挿入穴
51 接続スリーブ
6 押し金具
61 スプリング
100 機器ケース
図1
図2
図3
図4
図5