(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示に係る典型的な実施形態を、図面に基づいて説明する。
図1は、本実施形態の光干渉断層計1(以下、「OCT1」と称す)の概略構成を示す。本実施形態において、OCT1は、300キロヘルツ以上の周期でAスキャンを行う。
【0010】
本実施形態において、OCT1は、FD−OCT(Fourier domain OCT)であってもよい。以下では、OCT1は、FD−OCTの一種であるSS−OCT(Swept source OCT)であるものとして説明する。この場合、OCT1は、光源として、出射波長を時間的に掃引させる波長掃引光源を持ち、検出器として、点検出器を持つ。点検出器は、1つの検出器であってもよいし、複数(例えば、2つ)の検出器を用いて平衡検出を行う平衡検出器であってもよい。また、OCT1は、波長掃引光源による出射波長の変化に応じて参照光と測定光の戻り光の干渉信号をサンプリングし、サンプリングによって得られた各波長での干渉信号に基づいて被検眼のOCTデータを得る。
【0011】
<光学系>
図1の例に示すOCT1は、OCT光学系100と、固視光学系200と、を有する。固視光学系200は、被検眼に固視標を投影する。
【0012】
OCT光学系100は、主に、光源102と、光スキャナ108と、検出器120と、を有する。また、
図1に例示するように、OCT1は、光分割/結合部(スプリッタ/コンバイナ)104と、参照光学系110とを有する。なお、
図1の例において、各部を結ぶ実線131〜134は、導光用の光ファイバを示している。
【0013】
光源102として出射波長を時間的に高速で変化させる波長可変光源(波長走査型光源)が用いられる。光源102は、例えば、300キロヘルツ以上の周期で波長をスキャンする。これによって、OCT1では、Aスキャンデータ(詳細は後述する)が、300キロヘルツ以上の周期で取得可能となる。ここでいう、「300キロヘルツ以上」には、例えば、1メガヘルツ以上の周期でAスキャンが行われる場合についても含まれ得る。このような光源としては、例えば、フーリエ・ドメイン・モード同期(FDML)レーザであってもよい。FDMLレーザは、波長掃引光源の一種である。FDMLレーザは、例えば、利得媒体を含む共振器に、波長掃引フィルタと、分散特性の影響を抑制するための分散補償機構等が導入された構造であってもよい。なお、波長選択フィルタとしては、例えば、回折格子とポリゴンミラーの組み合わせ、ファブリー・ペローエタロンを用いたフィルタが挙げられる(例えば、本出願人による特開2012−222164号公報参照)。なお、光源102は、必ずしもFDMLレーザである必要はなく、FDMLレーザとは異なる原理で300キロヘルツ以上の周期で波長をスキャンする光源であってもよい。
【0014】
図1の例において、検出器120は、例えば、受光素子からなる平衡検出器が設けられてもよい。受光素子は、受光部が一つのみからなるポイントセンサであって、例えば、アバランシェ・フォト・ダイオードが用いられる。
【0015】
図1の例における光分割/結合部104は、光分割部と、光結合部とを兼用している。光分割/結合部104は、光分割部として、光源102から出射された光を、測定光(測定光)と参照光とに分割する。その結果として、測定光は、光スキャナ108を介して眼底Erに導かれ,また、参照光は、参照光学系110に導かれる(詳細は後述する)。また、光分割/結合部104は、光結合部として、眼底Erによって反射された測定光と,参照光とを合成する。詳細は後述するが、これにより、眼底Erによって反射された測定光と,参照光との合成によって取得される干渉光が、検出器(受光素子)120で受光される。なお、上記のような光分割/結合部104の一例として、
図1の例では、ファイバカップラが利用されている。
【0016】
本実施形態において、光分割/結合部104によって分割された光の一部(測定光)は、まず、光ファイバ132へ入射する。光ファイバ132に入射した測定光は、図示無きコリメータレンズによって平行ビームに変換され、光スキャナ108に入射される。
【0017】
光スキャナ108は、光源102からの測定光を、眼底Er上で走査するために利用される。光スキャナ108は、眼底Er上でXY方向(横断方向)に測定光を走査させる。本実施形態では、光スキャナ108によって、眼底上において測定光のラスタースキャンが行われる。本実施形態では、
図2に例示するようなラスタースキャンが、眼底の一定の領域(位置および面積が一定)において周期的に繰り返される。
【0018】
光スキャナ108は、瞳孔と略共役な位置に配置される。光スキャナ108は、駆動部(ドライバ)50に入力される制御信号に基づいて動作する。
【0019】
また、本実施形態の光スキャナ108には、例えば、反射ミラー(ガルバノミラー、ポリゴンミラー、レゾナントスキャナ、MEMSスキャナ)の他、光の進行(偏向)方向を変化させる音響光学素子(AOM)等が用いられてもよい。例えば、
図1に示す光スキャナ108には、主走査用の光スキャナ108aと、副走査用の光スキャナ108bと、の2つのスキャナが含まれている。2つの光スキャナ108a,108bは、互いに異なる方向に光を走査する。例えば、光スキャナ108aは、X方向へ光を走査し、光スキャナ108bは、Y方向へ光を走査してもよい。本実施形態において、主走査用の光スキャナ108aは、例えば、少なくともkHzオーダーの周期で走査可能であることが好ましい。
図1の例では、このような条件を満たす光スキャナ108aの一例として、レゾナントスキャナが用いられている。但し、レゾナントスキャナに限定されるものではなく、ポリゴンミラー,AOM等の他の光スキャナが主走査用の光スキャナ108aとして採用されてもよい。一方、副走査用のY光スキャナ108bとしては、少なくとも数十Hzオーダーの周期で走査可能であることが好ましい。
図1の例では、このような条件を満たす光スキャナ108bの一例として、ガルバノミラーが用いられている。但し、ガルバノミラーに限定されるものではなく、AOM等の他の光スキャナが副走査用の光スキャナ108bとして採用されてもよい。なお、主走査と副走査とが、それぞれ別体の光スキャナで行われる必要はない。例えば、1つの光スキャナで、主走査と副走査とが行われてもよい。つまり、2軸に関して光走査を行うスキャナが、光スキャナ108に適用されてもよい。
【0020】
本実施形態では、2つのスキャナ108a,108bによって、測定光のラスタースキャンが、眼底上の領域(一定面積の領域)において周期的に行われる。光スキャナ108で偏向された測定光は、対物光学系106を経て、眼底Erに照射される。
【0021】
測定光の眼底Erからの後方散乱光(反射光)は、投光時の光路を逆に辿って、光分割/結合部104へ導かれる。そして、光分割/結合部104によって参照光と合波されて干渉する。
【0022】
参照光学系110は、眼底Erでの測定光の反射によって取得される反射光と合成される参照光を生成する。参照光学系110は、マイケルソンタイプであってもよいし、マッハツェンダタイプであっても良い。参照光学系110は、例えば、反射光学系(例えば、参照ミラー)によって形成され、光分割/結合部104からの光を反射光学系により反射することにより、光分割/結合部104を介して、検出器120へ導く。他の例としては、参照光学系110は、透過光学系(例えば、光ファイバ)によって形成され、光分割/結合部104からの光を戻さず透過させることにより検出器120へと導いてもよい。
【0023】
OCT1は、測定光と参照光との光路長差を調整するためにOCT光学系2に配置された光学部材の少なくとも一部を光軸方向に移動させる。例えば、参照光学系110は、参照光路中の光学部材(例えば、参照ミラー)を移動させることにより、測定光と参照光との光路長差を調整する構成を有する。例えば、駆動機構の駆動によって参照ミラーが光軸方向に移動される。光路長差を変更するための構成は、測定光学系20の測定光路中に配置されてもよい。測定光路中に配置された光学部材(例えば、光ファイバの端部)が光軸方向に移動される。
【0024】
測定光と参照光とが合成された干渉信号光は、光分割/結合部104、およびファイバ134を介して、検出器120へ入射する。これにより、検出器120は、干渉信号光を検出する。
【0025】
光源102により出射波長が変化されると、これに対応する干渉信号光が検出器120に受光され、結果的に、スペクトル干渉信号光として検出器120に受光される。検出器120から出力されたスペクトル干渉信号(OCT信号ともいう)は、制御部70によって取り込まれる。このスペクトル干渉信号に基づき、深さプロファイルが形成される。
【0026】
<制御系>
次に、
図1を参照して、OCT1の制御系について説明する。OCT1は、制御系として、制御部70、および、メモリ(記憶部)71を主に有する。
【0027】
制御部70は、例えば、CPU(Central Processing Unit)およびメモリ(例えば、RAMおよびROM)等で実現される。制御部70は、OCT1の各部の動作を制御する。例えば、制御部70は、眼底上で測定光のラスタースキャンが繰り返し行われるように、光スキャナ108を制御する。また、ラスタースキャンの結果として検出器120から出力される信号に基づいて、被検眼のOCTデータを取得する(詳細は後述する)。ここでいうOCTデータは、1次元OCTデータ,2次元OCTデータ,および,3次元のOCTデータのいずれであってもよい。また、
図1の例において、制御部70は、画像処理部を兼用する。例えば、制御部70には、OCTデータに関する各種処理を実行可能な画像処理用のICが含まれていてもよい。
【0028】
メモリ72は、書き換え可能な不揮発性の記憶媒体である。メモリ72としては、例えば、ハードディスク、フラッシュメモリ、外部サーバー、およびUSBメモリ等のいずれかが用いられてもよい。本実施形態において、メモリ72には、OCTデータおよびOCTデータの解析結果等が記憶される。
【0029】
また、
図1に示すように、OCT1は、操作部(入力インターフェイス)74、および、モニタ75を有していてもよい。
図1に示すように、各部は、ネットワーク(バス、LAN等)を介して接続されており、相互にデータ(例えば、画像データ)等を送受信することが可能である。
【0030】
操作部74は、検者からの操作が入力される。操作部74としては、例えば、マウス、トラックボール、タッチパネルなどのデバイスが用いられてもよい。また、このような接触式のデバイスに限定されるものではなく、例えば、モーションセンサ等の非接触で操作が入力されるデバイスが、操作部74として適用されてもよい。
【0031】
モニタ75は、OCTデータを視覚化したグラフィック(例えば、断層画像等)、層厚情報等が表示される。本実施形態において、モニタ75の表示制御は、制御部70によって行われる。つまり、本実施形態では、制御部70が、表示制御部を兼用する。モニタ75は、例えば、タッチパネルであってもよい。この場合、モニタ75が操作部74の一部として機能する。また、モニタ75は、2次元的な画面を備えたデバイスであってもよい。この場合、据え置き型、手持ち型、装着型(例えば、ヘッドマウントディスプレイ)等の何れであってもよい。また、画像をスクリーン等に投影する投影型のデバイスであってもよい。モニタ75は、3次元映像を表示する3次元ディスプレイであってもよい。一例として、投影型のデバイスの場合、3次元的な映像が空間中に投影される体積型のディスプレイであってもよい。
【0032】
<動作説明>
以上のような構成を持つ装置の動作について、以下説明する。
【0033】
<3次元OCTデータの取得動作>
例えば、制御部70は、検出器120から出力される信号に基づくAスキャンデータ(1次元OCTデータの一例)を、少なくとも300キロヘルツ以上の周期で取得する。なお、本実施形態において、1周期分のAスキャンデータは、眼底上の1点における深さ方向(光軸方向)の組織の情報である。Aスキャンデータは、検出器120から出力される信号(OCT信号)をフーリエ変換することで得られる複素OCT信号であってもよい。また、複素OCT信号が更に処理されて得られる深さプロファイルであってもよい。
【0034】
本実施形態において、制御部70は、光源102における波長変化の周期と同期してAスキャンデータを取得してもよい。これにより、スキャンライン毎(走査線毎)に、複数ポイントのAスキャンデータが取得される(
図2参照)。例えば、300キロヘルツ以上の周期を持つクロック信号が、光源102と制御部70との両方に入力され、これにより、光源102における波長走査と制御部70によるAスキャンデータの取得とが同期されながら、300キロヘルツ以上の周期で実行される構成であってもよい。
【0035】
また、本実施形態では、3次元OCTデータが、複数ポイントのAスキャンデータに基づいて、制御部70によって取得される。本実施形態における3次元OCTデータは、ラスタースキャンの範囲における3次元的な組織の情報である。1単位(換言すれば、1フレーム分)の3次元OCTデータは、少なくとも1周期のラスタースキャンに基づいて得られる。例えば、1フレーム分の3次元OCTデータには、1周期のラスタースキャンで取得される複数のAスキャンデータが含まれていてもよい。本実施形態において、制御部70は、1周期のラスタースキャンが行われる都度、そのラスタースキャンに基づく3次元OCTデータを生成する。例えば、XY方向に関して2次元的に深さプロファイル(Aスキャンデータの一例)が並べられて形成されるデータが、3次元OCTデータであってもよい。このように、本実施形態では、1周期分のラスタースキャンの結果として検出器120から出力される干渉信号から、1単位(換言すれば、1フレーム分)の3次元OCTデータが形成される。
【0036】
3次元OCTデータの生成フレームレートは、適宜設定されてもよい。例えば、ラスタースキャンが8Hz程度の周期で行われることで、約8fpsのフレームレートでラスタースキャンの範囲における3次元OCTデータが生成されてもよい。この場合において、Aスキャンデータがおよそ300キロヘルツで取得されるものとすると、1フレームの3次元OCTデータは、眼底のxy方向にて200×200程度のポイントから得たAスキャンデータに基づいて構築される。また、3次元OCTデータにおける深さ方向のポイント数(つまり、1つのAスキャンデータにおけるポイント数)は、例えば、測定光のスペクトル幅等に依存する。例えば、深さ方向に関し、200ポイント程度のポイント数からなるAスキャンデータが取得されてもよい。
【0037】
<3次元OCTデータに基づく画像の表示>
制御部70は、随時生成される3次元OCTデータを視覚化したグラフィックを、モニタ75において更新しながら表示させる。本実施形態では、新たな3次元OCTデータが取得される都度、制御部70は、モニタ75に表示させるグラフィックを、その新たな3次元OCTデータを視覚化したグラフィックへと更新する。つまり、本実施形態では、モニタ75には、被検眼Eの組織(例えば、眼底の3次元組織)をリアルタイムに示す動画像が表示される。その結果として、リアルタイムな眼底における組織の動態が、動画像を介して観察可能となる。
【0038】
なお、本開示において「リアルタイム」とは、各時点での被検眼の変化が、略同時に画像および情報等に反映されること、を示すものとする。
【0039】
<3次元的な画像の表示処理>
なお、3次元OCTデータを視覚化したグラフィックは、例えば、
図3に示すような、3次元画像であってもよい。3次元画像は、例えば、各スキャンラインにおける2次元的な反射強度分布(例えば、断層画像)が副走査方向(スキャンラインと交差する方向)に関して並べられた画像であってもよい。つまり、3次元的な反射強度分布を示す画像であってもよい(便宜上、このような画像を、3次元OCT画像と称す)。また、3次元画像は、3次元モーションコントラスト画像であってもよい。なお、モーションコントラストとは、例えば、被検体(被検眼)の動き、時間的な変化などの検出情報である。例えば、フロー画像等もモーションコントラストの一種とする。なお、フロー画像は、例えば、流体等の動き等を検出し、画像化したものである。血液の動きを検出して得られた血管位置を造影した血管造影画像等は、モーションコントラストの一種と言える。3次元モーションコントラスト画像を取得する処理の具体例は、後述する。
【0040】
<任意の断面における断層画像の表示処理>
また、3次元OCTデータを視覚化したグラフィックは、断層画像であってもよい。例えば、3次元OCTデータの取得範囲における任意の断面での信号強度分布に基づく2次元的な画像が、制御部70によって断層画像として生成されてもよい。このような断層画像は、例えば、あるスキャンラインにおける断面を示すものに限られるものではない。例えば、複数のスキャンラインを斜めに横切る断面を示す画像が、断層画像として制御部70によって形成されてもよい。また、断層画像に係る断面は、平面および曲面のいずれであってもよい。なお、断層画像は、モーションコントラスト画像であってもよい。
【0041】
例えば、本実施形態では、モニタ75において任意の断面におけるリアルタイムな断層画像が表示されてもよい。断面の位置は、予め定められていてもよい。また、断面の位置は、操作部74からの信号に基づいて、3次元OCTデータの取得範囲の中から制御部70によって選択される位置であってもよい(選択処理)。操作部74からの信号は、検者の所望した断面を指定するための信号であってもよい。操作部74からの信号に基づいて断面の位置が選択された結果、選択された位置に応じた断面を示す断層画像が、制御部70によって、モニタ75に表示されるようになる。結果、所望の断面における組織の様子を、3次元OCTデータ基づいて生成されるリアルタイムな断層画像によって観察できる。
【0042】
ここで、3次元OCTデータの取得範囲の中から、断層画像として示される断面の位置が、操作部74からの信号に基づいて選択される場合における装置の動作の具体例を、図を参照して説明する。
【0043】
例えば、
図5に示すように、制御部70は、モニタ75上に、3次元OCTデータに基づく3次元画像G1を、予め表示させてもよい。3次元画像G1は、検者が操作部74を操作する際に、断層画像として示される断面の位置を確認するために用いられる。検者は、ポインティングデバイス(操作部74の一種)等を操作して、断面の位置を3次元画像G1上で指定してもよい。例えば、
図5の例では、3次元画像G1上で移動されるカーソルC1の位置が、操作部74の操作に応じて変位される。この例では、カーソルC1の位置に応じて断層画像を取得する断面が定められる。例えば、
図5に示すカーソルC1は、断面を模しており、この断面での断層画像が、表示される。
図5の例では、操作部74の操作に応じてカーソルC1が平行移動および回転移動される。これにより、検者は所望の断面を指定できる。
【0044】
<正面画像の表示処理>
また、3次元OCTデータを視覚化したグラフィックは、例えば、3次元OCTデータに基づく正面画像であってもよい。3次元OCTデータに基づく正面画像は、例えば、3次元OCTデータの各XY位置において、深さ方向の信号強度分布をZ方向に積算することによって得られる(いわゆる積算画像)。もちろん、正面画像は、積算処理とは異なる処理によって取得されてもよい。例えば、3次元OCTデータにおける深さ方向に関する一部のデータ,に基づいて、正面画像が取得されてもよい。このような正面画像は、例えば、眼底を構成する一部の層に関する正面像であってもよいし、(例えば、
図4に示す網膜表層でもよいし、表層以外の特定の層であってもよい)、または、一定の深さでの正面像(例えば、一定の深さ位置での信号強度分布を示すCスキャン画像等)であってもよい。なお、一部の層に関する正面像が取得される場合、制御部30は、3次元OCTデータに対してセグメンテーション処理を行い、層毎の境界を特定する。そして、セグメンテーション処理で特定された境界部分の情報に基づいて、正面画像が形成される。
【0045】
なお、3次元OCTデータに基づく正面画像は、モーションコントラスト画像であってもよい。
【0046】
正面画像は、
図4に示した2次元的な表示態様(即ち、眼底上のXY方向と画面上の上下左右方向とが対応づけられた態様)に限られるものではない。例えば、層の3次元的な形状が反映された態様で正面画像は表示されてもよい。つまり、正面画像は、曲面形状にて表示されてもよい。また、この場合、正面画像は、一部の層を斜視したようなグラフィックであってもよい。
【0047】
上記のように、モニタ75においてリアルタイムな正面画像が表示される場合、その正面画像として、何れの深さにある組織の正面画像が示されてもよい。正面画像が示される箇所についての深さ方向の位置は、予め定められていてもよい。また、正面画像が示される箇所についての深さ方向の位置は、操作部74からの信号に基づいて制御部70によって選択される位置であってもよい(選択処理)。操作部74からの信号は、検者の所望した位置を指定するための信号であってもよい。操作部74からの信号に基づいて深さ方向の位置が選択された結果、選択された位置についての正面画像が、制御部70によって、モニタ75に表示されるようになる。結果、検者の所望する深さにある組織の様子を、リアルタイムな正面画像によって観察できる。
【0048】
ところで、上述したように、3次元OCTデータに基づく正面画像は、少なくとも、眼底を構成する一部の層の正面画像である場合と、一定の深さでの正面画像である場合とが考えられる。
【0049】
正面画像が一部の層についての正面画像である場合、制御部70は、より詳細には、制御部70は、眼底を構成する複数の層のうちいずれかが選択されて、正面画像として示される。より詳細には、3次元OCTデータへのセグメンテーション処理によって,眼底を構成する複数の層の境界が検出され、検出された境界からいずれかが選択されてもよい。このようにして、正面画像が示される箇所についての深さ方向の位置選択が行われてもよい。そして、制御部70は、選択された層の正面画像を形成し、モニタ75へ表示させてもよい。
【0050】
一方、3次元OCTデータに基づく正面画像が一定の深さでの正面画像である場合、制御部70は、3次元OCTデータの深さ方向に関する取得範囲内で、該深さ方向に関するいずれかの座標を選択することで、正面画像が示される箇所についての深さ方向の位置選択を行ってもよい。そして、選択された深さ方向の座標における水平面を示す正面画像を(例えば、Cスキャン画像)形成し、モニタ75へ表示させてもよい。
【0051】
ここで、3次元OCTデータに基づく正面画像が示される箇所についての深さ方向の位置が、操作部74からの信号に基づいて選択される場合における装置の動作の具体例を、
図6を参照して説明する。
【0052】
例えば、
図6に示すように、制御部70は、モニタ75上に、3次元OCTデータの深さ方向に関する取得範囲を示すグラフィックG2を、予め表示させてもよい。グラフィックG2は、検者が操作部74を操作する際に、正面画像で示されることを所望する組織の位置(深さ方向の位置)を確認するために用いられる。
図6の例において、グラフィックG2には、被検眼の3次元画像が用いられている。検者は、ポインティングデバイス(操作部74の一種)等を操作して、正面画像が示される箇所を、グラフィックG2上で指定してもよい。例えば、
図6の例では、グラフィックG2に対し、グラフィックG2における深さ方向に移動するカーソルC3の位置が、操作部74の操作に応じて変位される。この例では、カーソルC3の位置に応じて正面画像が示される箇所が定められる。より詳細には、カーソルC3の配置されている深さにおける正面画像が、制御部70によって生成され、モニタ75に表示される。
図6の例では、カーソルC3は、深さ方向に関する座標での水平面(即ち、深さ方向に直交する平面)を模しており、この水平面における正面画像が、表示される。
【0053】
なお、グラフィックG2は、3次元画像に限定されるものではなく、例えば、あるスキャンラインで得られた断層画像、ある点で取得された深さプロファイルを示すグラフ、および、インジケータ(例えば、数直線)等の他のグラフィックに置き換えられてもよい。
【0054】
2次元画像に関する断面の指定方法は、必ずしも上記説明したものに限定されるものではない。例えば、モニタ75上に表示される3次元画を介して、検者が任意の曲面の通過座標をポインティングデバイス等を用いて選択することで、その曲面を断面とする2次元画像が制御部70によって表示されてもよい。
【0055】
ところで、3次元画像,および、2次元画像の例は、上記したものに限定されるものではない。例えば、3次元画像は、例えば、3次元OCTデータの取得範囲全体を視覚化したものに限定されるものではなく、3次元OCTデータの取得範囲における第1の断面と、第1の断面とは異なる第2の断面と、に挟まれる領域を選択的に視覚化したグラフィックであってもよい。ここでいう、第1の断面および第2の断面は、例えば、それぞれが2次元画像の断面を指定する場合と同様の手法で、指定可能であってもよいし、一方の断面を指定することで、他方が自動的に設定される関係でもよい。また、更に言えば、単に、リアルタイムに表示される3次元画像は、3次元OCTデータの取得範囲のうち、任意の3次元的な領域であってもよく、取得範囲全体、および、2つの断面に囲われる領域のいずれかに限定されるものではない。
【0056】
また、3次元OCTデータのうち、第1の断面とは異なる第2の断面と、に挟まれる領域に関する情報は、例えば、ある1方向(具体例としては、深さ方向)に関して平均化されることにより、第1の断面とは異なる第2の断面と、に挟まれる領域に関する2次元画像が制御部70によって形成されてもよい。
【0057】
<3次元OCTデータに対する解析処理>
本実施形態では、3次元OCTデータに対する各種処理(例えば、解析処理、および、画像処理等)についても、制御部70によって行われる。例えば、制御部70は、随時生成される各々の3次元OCTデータに対して解析処理が行われる。その結果として、制御部70は、随時生成される3次元OCTデータのリアルタイムな解析結果を出力する。ここでいう『出力』は、例えば、モニタ75への表示出力であってもよい。また、OCT1による撮影と並行して動作する眼科用手術装置(例えば、眼科用手術ロボット、眼科用レーザー手術装置、および、眼科用レーザー光凝固装置等)への出力であってもよい。制御部70から出力される解析結果が、眼科手術装置の動作を制御するための信号として利用されてもよい(詳細は後述する)。まずは、主に解析結果が、モニタ75へ表示出力される場合を説明する。
【0058】
解析処理の処理結果は、時系列の3次元OCTデータのうち、少なくとも2つの(換言すれば、少なくとも2フレーム分の)3次元OCTデータを処理することで得られるものであってもよい。ここでいう、少なくとも2つの3次元OCTデータは、互いに異なるタイミングで取得される3次元OCTデータである。
【0059】
<モーションコントラスト画像のリアルタイム表示>
この処理結果として、被検眼Eの3次元モーションコントラストデータが取得されてもよい。そして、例えば、3次元モーションコントラストデータを視覚化したグラフィックであるモーションコントラスト画像による動画像が、解析処理の処理結果としてモニタ75上に表示されてもよい。
【0060】
3次元モーションコントラストデータは、眼底のある領域に対して、異なる時間に行われる複数のラスタースキャンに基づいて取得される。より詳細には、制御部70は、検出器120から出力される信号(OCT信号)をフーリエ変換することで複素OCT信号を取得する。例えば、複素OCT信号は、ラスタースキャンが行われる度に、メモリ72に記憶される。ここでは、ラスタースキャン1周期分の複素OCT信号がメモリ72に記憶されることで、1単位(換言すれば、1フレーム分)の3次元OCTデータが得られる。そして、制御部70は、ラスタースキャンのタイミングが異なる複素OCT信号であって、同じ位置(換言すれば、同一のxy座標)についての複素OCT信号を処理することで、そのxy座標における深さ方向のプロファイルを得る。この処理が、Aスキャンデータが取得された位置毎(換言すれば、ポイント毎、xy座標毎)に行われることで、ラスタースキャンの範囲における3次元モーションコントラストデータが取得される。このように、本実施形態では、ラスタースキャンのタイミングが異なる少なくとも2つの3次元OCTデータの処理結果として、3次元モーションコントラストデータが取得される。
【0061】
なお、複素OCT信号を処理する方法としては、例えば、複素OCT信号の位相差を算出する方法、複素OCT信号のベクトル差分を算出する方法、複素OCT信号の位相差及びベクトル差分を掛け合わせる方法などが知られており、これらのうち、いずれが用いられてもよい。以下の説明では、位相差を算出する方法を例示して説明する。
【0062】
以上このようにして得られた3次元モーションコントラストデータは、例えば、血管の3次元構造を示す。制御部70は、3次元モーションコントラストデータに基づいてモーションコントラスト画像を逐次生成し、モニタ75に逐次表示させてもよい。また、制御部70によって、血管の3次元構造を示すグラフィックが、3次元OCT画像(前述したように、3次元的な反射強度分布を示す画像)に対して重畳表示されてもよい。これにより、血管の3次元構造が、リアルタイムにモニタ75に表示されてもよい。また、時系列に得られる3次元モーションコントラストデータを、過去の3次元モーションコントラストデータと比較することで、3次元OCTデータが繰り返し取得される途中で生じた出血箇所を検出可能である。検出される出血箇所は、血管の3次元構造を示すグラフィックにおいて、強調表示されてもよい。例えば、手術中であれば、出血箇所が速やかに医師等によって把握されるので、出血に対し、速やかな処置が施されやすい。
【0063】
<血流の脈動に関する解析>
また、3次元OCTデータに対する解析処理では、血流の脈動に関する解析処理が実行されてもよい。例えば、3次元モーションコントラスト画像を制御部70が更に処理することによって、血流の脈動に関する情報を、解析処理の処理結果として取得してもよい。血流の脈動に関する情報の具体例としては、例えば、血流の向き、血流の速度,血流の流量,血流による圧力,および,脈拍のうち少なくともいずれかを示す情報であってもよく、また、これらのいずれかを時系列で示す情報であってもよい。
【0064】
図5に示すように、このような処理結果は、リアルタイムな3次元OCTデータを視覚化したグラフィック(
図5の例では、3次元画像、および、ある断面のモーションコントラスト画像)と共に、モニタ75へ表示されてもよい。このとき、制御部70は、モニタ75へ表示されるグラフィックと対応するリアルタイムな処理結果を逐次取得し、その処理結果をモニタ75へ表示してもよい。この場合、モニタ75には、3次元OCTデータを視覚化したグラフィックと同時に、そのグラフィックと対応する処理結果が、少なくとも表示される。処理結果の表示例としては、数値であってもよいし、数値の経時的な変化を表したグラフ(例えば、トレンドグラフ)であってもよいし、他の表示態様であってもよい。このように、本実施形態では、診断において有用な血流の情報を、ラスタースキャンが行われる広範囲から、リアルタイムに得ることができる。
【0065】
<血流の測定>
ここでは、一例として、血流の絶対速度の導出方法を示す。本実施形態においては、3次元のモーションコントラスト画像から得られる血管の3次元構造と、複数回のラスタースキャンによって得られる3次元OCTデータと、を用いて、血流の絶対速度を求める。
【0066】
例えば、3次元モーションコントラスト画像に基づく血管の3次元構造からは、各位置における血流方向と、各位置における血管の直径とが得られる。血管の血流方向は、前述のように血管の3次元構造を細線化することで求めてもよい。細線化には、例えば、モルフォロジ処理、距離変換処理、またはHilditch、Deutschなどの既存アルゴリズムを用いてもよい。
【0067】
一方、第1のラスタースキャンに基づいて得られる3次元OCTデータと、第1のラスタースキャンとは異なるタイミングで行われた第2のラスタースキャンに基づいて得られる3次元OCTデータとから、ラスタースキャンが行われた各位置におけるドップラー位相シフトを求める。ある位置での血流速度は、例えば、次のようにして求めてもよい。すなわち、ある位置でのドップラー位相シフトから、そのある位置での血流の絶対速度におけるz成分(光軸方向の成分)が算出され、そして、そのある位置での血管の血流方向と光軸方向との成す角度と、血流の絶対速度におけるz成分とから、血流の絶対速度が算出されてもよい。
【0068】
なお、3次元構造によって示される血管のうち、上記のドップラー位相シフトと、血流方向と、に基づいて血流の絶対速度が得られる箇所は、ドップラー位相シフトにおけるタイムインターバル(同じ位置でのOCT信号の取得間隔)に応じた直径を持つ箇所となる。より詳細には、あるタイムインターバルで得られた2つの3次元OCTデータからは、そのあるタイムインターバルと対応する直径を持つ箇所における血流の絶対速度が求められる。
【0069】
本実施形態において、タイムインターバルは、2回のラスタースキャンの時間間隔となるので、ラスタースキャンの周期Tの整数倍の値である。よって、例えば、連続する2回のラスタースキャンで得られた2つの3次元OCTデータからは、タイムインターバル=Tと対応する直径を持つ箇所における血流の絶対速度が得られる。また、1周期分とばした2回のラスタースキャンで得られる2つの3次元OCTデータからは、タイムインターバル=2Tと対応する直径を持つ箇所における血流の絶対速度が得られる。同様に、2周期分とばし、3周期分とばし、・・・の2回のラスタースキャンに基づく2つの3次元OCTデータに基づいて、周期Tの各整数倍のタイムインターバルと対応する直径を持つ箇所の血流の絶対速度が得られる。
【0070】
そこで、例えば、制御部70は、血管において直径の異なる複数箇所における血流の絶対速度を、リアルタイムに演算してもよい。例えば、新たなラスタースキャン(便宜上、第1のラスタースキャンとする)に基づく3次元OCTデータが得られるたびに、第1のラスタースキャンに基づく3次元OCTデータと、第1の3次元OCTデータとのタイムインターバルが第1のタイムインターバルである第2の3次元OCTデータと、第1の3次元OCTデータとのタイムインターバルが第2のタイムインターバルである第3の3次元OCTデータと(例えば、タイムインターバル=T,2T,3T・・・を含む)、から、各箇所の直径に対応する血流の絶対速度が演算されてもよい。より詳細には、第1の3次元OCTデータと第2の3次元OCTデータとの間におけるドップラー位相シフト、および、第1の3次元OCTデータと第3の3次元OCTデータとの間におけるドップラー位相シフト、に基づいて、各箇所の直径に対応する血流の絶対速度が演算されてもよい。このようにして得られた各箇所における絶対速度の分布は、例えば、カラーマップとしてモニタ75に表示されてもよい。また、正常眼における血流の絶対速度と、演算によって得られた被検眼Eにおける血流の絶対速度と、の比較が制御部70よって行われてもよい。例えば、制御部70は、両者の差分を取ることで、差分情報を、例えば、数値情報や、差分マップとして出力してもよい。なお、正常眼における血流の絶対速度は、例えば、予めメモリ72に記憶されていてもよい。
【0071】
また、血流の絶対速度が演算される血管の位置は、検者によって、画面に表示される血管の画像上(例えば、3次元モーションコントラスト画像、断層画像、および,3次元OCTデータに基づく正面画像等のいずれか)で指定されてもよい。例えば、モニタ75に表示される画像の中で血流の絶対速度が演算される箇所が、操作部74に対する検者の操作に基づいて指定されてもよい。検者は、ポインティングデバイス(操作部74の一種)等を操作して、血流の絶対速度を所望する血管を、血管の画像上で指定してもよい。例えば、
図5の例では、操作部74の操作に応じて変位されるカーソルC2の位置に応じて、位置指定が行われる。この場合、例えば、制御部70は、指定された箇所の血管径(直径)に対応するタイムインターバルを求め、そのタイムインターバルに基づいて血流の絶対速度を演算してもよい。或いは、血管径が異なる各位置における血流の絶対速度をバックグラウンドで演算し、検者によって指定された箇所の演算結果を、選択的に出力(例えば、表示)するようにしてもよい。また、この場合も、前述したような、正常眼における血流の絶対速度との比較処理が行われてもよい。
【0072】
このような血流の絶対速度の演算は、新たなラスタースキャンに基づく3次元OCTデータが得られるたびに実行され、それにより、演算結果が随時更新されてもよい。但し、血流の絶対速度の演算の頻度は、3次元OCTデータを1フレーム分取得する毎に限られるものではなく、複数フレーム分取得する毎であってもよい。
【0073】
また、血流の絶対速度の演算結果は、モニタ75に表示されてもよい。演算結果は、例えば、数値およびグラフィック等の少なくともいずれかで表示されてもよい。
【0074】
なお、血流の脈動の解析するうえで、必ずしも複数フレームの3次元OCTデータは必要とされない。例えば、制御部70は、光スキャナ108を制御し、同一の横断面に関する2次元OCTデータを繰り返し取得することで、その横断面に関して、血流の脈動に関する情報を取得することができる。このときの横断面の繰り返し走査は、例えば、3次元OCTデータを取得するラスタースキャンの合間に行われてもよい。これにより、実質的に3次元OCTデータと略同時に、リアルタイムな血流の脈動に関する情報を得ることができる。また、1周期のラスタースキャンにおいて各スキャンラインが一定回数ずつ繰り返し走査されることで、同一の横断面に関し、スキャンラインの走査間隔が短い複数の2次元OCTデータが取得されてもよい。複数の2次元OCTデータを処理することで、各スキャンラインにおける血流の脈動に関する情報を制御部70は解析してもよい。
【0075】
<その他の解析処理>
以上、随時取得される3次元OCTデータに対して行われる解析処理として、少なくとも2つの(換言すれば、少なくとも2フレーム分の)3次元OCTデータを用いて処理が行われる場合の具体例を示したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、時系列の3次元OCTデータを、フレーム毎に処理するような解析処理が行われてもよい。
【0076】
<リアルタイム厚み測定>
例えば、制御部70によって、被検眼Eの組織における厚みに関する解析処理が行われてもよい。制御部70は、随時生成される3次元OCTデータに基づいて被検眼Eの組織における厚みを解析する。そして、解析結果として、厚みに関する情報を出力してもよい。組織の厚みは、例えば、眼底における層厚であってもよいし、前眼部の組織における厚みであってもよい。解析処理によって各位置における厚みが求められ、解析結果として、被検眼の組織における厚みの2次元的な分布をリアルタイムに示すマップが得られてもよい。マップは、モニタ75に表示されてもよい。リアルタイムな厚みマップは、例えば、被検眼Eに圧力を加えたり、屈折矯正手術,白内障手術等の組織の厚みに影響を及ぼす手術が行われたりする場合に、それらの作業による厚みの変化を検者がリアルタイムに観察する場合等に利用されてもよい。ここでいう手術は、眼科用レーザー手術装置を用いた手術であってもよく、この場合、OCT1は、被検眼Eに対して圧力を付与する眼圧計(例えば、トノメータ)、或いは、眼科用レーザー手術装置を備えてもよい。そして、OCT1において連続して3次元OCTデータが取得される間に、圧力付与やレーザーの照射が行われるよう、各装置が制御されてもよい。また、制御部70は、眼科用レーザー手術装置におけるレーザーの照射を制御するために、厚みに関する解析結果を眼科用レーザー手術装置に対して出力してもよい。
【0077】
<凝固斑に関する情報の抽出>
また、制御部70は、被検眼において形成された光凝固レーザーの凝固斑を、随時生成される3次元OCTデータに基づいて解析し、凝固斑のサイズ情報,および,被検眼Eにおける凝固斑の位置情報,のうち少なくともいずれかを、リアルタイムな解析結果として出力してもよい。凝固斑は、例えば、リアルタイムに取得される3次元OCTデータが視覚化されたグラフィック(3次元画像でもよいし、ある断面を示す2次元画像でもよい)において、周囲の組織に対し輝度の異なる領域として示されるので、グラフィックへの画像処理によって検出可能である。また、検出される凝固斑のサイズ情報、および、検出される凝固斑の被検眼Eにおける位置情報のうち、少なくともいずれかが、グラフィックに対する画像処理により特定できる。サイズ情報としては、凝固斑の半径,深さ方向の長さ,体積,および,容積等の少なくともいずれかに関する情報であってもよい。また、位置情報としては、被検眼Eにおける凝固斑の形成位置を特定するための情報であればよく、例えば、座標情報等の数値情報であってもよい。また、位置情報は、画像情報であってもよく、例えば、3次元OCTデータを視覚化したグラフィックであって、更に、凝固斑の形成位置が強調されたグラフィックであってもよい。これらの情報が、解析結果としてリアルタイムに出力される。
【0078】
例えば、このような解析処理が行われるOCT1では、光凝固レーザーの照射後、速やかに、その照射結果を評価するための情報が、上記の解析処理による解析結果として得られる。このため、解析結果を活用することで、光凝固レーザーの照射作業における作業性が向上するものと考えられる。
【0079】
なお、この場合、OCT1は、被検眼Eに対して光凝固レーザーを照射する光凝固レーザー装置を備えてもよい。そして、OCT1において連続して3次元OCTデータが取得される間に、レーザーの照射が行われるよう、各部が制御部70によって制御されてもよい。また、制御部70は、光凝固レーザー装置におけるレーザーの照射を制御するために、凝固斑に関する解析結果を光凝固レーザー装置に対して出力してもよい。
【0080】
<眼底の層の剥離状況に関する解析処理>
また、例えば、制御部70によって、被検眼Eの眼底における層の剥離に関する解析処理がリアルタイムに行われてもよい。この解析処理では、データの取得範囲に眼底を含む3次元OCTデータが、解析対象としてOCT1によって取得されることを前提とする。そして、眼底を構成する層同士の剥離箇所が、随時生成される3次元OCTデータに基づいて解析され、その結果(解析結果)として、層同士の剥離箇所の有無,および,剥離箇所の位置,のうち少なくともいずれかを示す情報(剥離箇所情報という)が出力されてもよい。剥離箇所情報をリアルタイムに得ることは、例えば、硝子体手術等において有用である。なお、剥離箇所の位置を示す情報としては、xy方向,および,深さ方向,のうち一方または両方に関して剥離箇所を特定するための情報である。深さ方向に関して剥離箇所を特定するための情報としては、深さ方向における剥離箇所の位置を示す数値情報であってもよいし、互いに剥離された2つの層のうち少なくとも一方を特定する情報であてもよい。硝子体手術に適用される場合、上記の解析処理は、少なくとも内境界膜(ILM)の剥離状況を、リアルタイムな解析結果として得るものであってもよい。
【0081】
なお、剥離箇所情報の表示出力がモニタ75に対して行われてもよい。3次元OCTデータを視覚化したグラフィック(3次元画像でもよいし、ある断面を示す2次元画像でもよい)上で、少なくとも剥離箇所と対応する箇所が強調表示されてもよい。なお、各層を区別するために、剥離箇所に対する強調表示とは異なる態様で、他の層の境界についても強調表示が行われてもよい。
【0082】
仮に、層を剥離させる手術が手術ロボット等によって行われるのであれば、制御部70は、手術ロボットにおける剥離動作を制御するために、剥離箇所情報(つまり、解析結果)を手術ロボットに対して出力してもよい。
【0083】
<被検眼の組織と器具との間隔に関する解析処理>
また、例えば、制御部70は、被検眼Eの診断,治療,または,手術に用いられる器具と、被検眼Eの組織との深さ方向に関する間隔を、随時生成される前記3次元OCTデータに基づいて解析し、器具と被検眼Eの組織との間隔に関する情報を、リアルタイムな解析結果として出力してもよい。この解析処理では、データの取得範囲に被検眼Eの組織と共に,上記器具が含まれる3次元OCTデータが、解析対象としてOCT1によって取得されることを前提とする。
【0084】
上記の器具としては、プローブ、鉗子、マイクロケラトーム、IOL等のインジェクター等種々の器具が想定されうる。また、器具との間隔が解析される被検眼の組織は、例えば、操作部74を介して被検眼Eの各部から選択されてもよい。また、予め定められた組織であってもよい(例えば、角膜、および、網膜のいずれか等)。
【0085】
被検眼の組織と器具との間隔についての解析結果は、モニタ75へ表示出力されてもよい。例えば、間隔を数値として示す数値情報が表示されてもよいし、インジケーター等のグラフィックが示されてもよい。
【0086】
ところで、器具が例えば金属製である場合等に、測定光が器具の表面(光源側表面)で反射され、器具の全体的な形状については、3次元OCTデータから検出できない場合が考えられる。これに対し、例えば、器具の寸法情報(より詳細には、測定光が反射される器具の表面を基準とする寸法情報でもよい)を予め取得しておき、この寸法情報を用いて、器具と、被検眼Eの組織との間隔を解析してもよい。また、この場合、3次元OCTデータにおいて、測定光が器具で遮られることにより、組織の位置情報が得られない箇所が生じ得る。器具で遮られた組織の位置情報は、種々の方法で推定(または補完)されてもよく、そして、推定された位置情報に基づいて、被検眼の組織と器具との間隔の解析が行われてもよい。例えば、制御部70は、被検眼の組織が器具によって遮られていない状態で取得した3次元OCTデータを用いて、随時取得される3次元OCTデータにおいて、器具で遮られた組織に関するデータを補完し、組織と器具との間隔の解析を行ってもよい。
【0087】
仮に、上記器具が手術ロボット等によって動かされているのであれば、制御部70は、手術ロボットにおける器具の動きを制御するために、器具との間隔に関する解析結果を手術ロボットに対して出力してもよい。
【0088】
以上、実施形態に基づいて説明を行ったが、本開示は、上記実施形態に限定されることなく、様々な変形が可能である。
【0089】
例えば、上記に説明した各種処理の結果として、必要とされる動画像の滑らかさ、測定精度、解析精度等との関係で、フレームレート、画像の解像度(換言すれば、各方向のポイント数)、または、その両方について、上記例示した値に対して高い値が必要とされる、或いは、低い値でも満足することが想定される。このため、上記例示した値は、必要とされる測定精度、解析精度との関係で適宜変更されてもよい。例えば、一定の効果が得られる範囲で、Aスキャンデータの取得周期が,300キロヘルツ未満の装置に対し、本開示の技術は適用されてもよい。
【0090】
なお、上記実施形態では、専ら、被検眼の眼底に関する3次元OCTデータが処理される場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。本開示の技術は、被検眼の一部または全体に関する3次元OCTデータを取得する装置に対して適用さればよく、例えば、前眼部に関する3次元OCTデータを取得するOCTデバイスに対して本開示の技術は適用されてもよいし、前眼部から眼底までの各位置に関する3次元OCTデータを取得するOCTデバイスに対して本開示の技術は適用されてもよい。
【0091】
上記実施形態では、OCT1がFD−OCTの一種であるSS−OCTであるものとして説明を行った。しかし、OCT1は、他のFD−OCTに対して適用されてもよい。例えば、OCT1は、SD−OCT(Spectral domain OCT)であってもよい。OCT1がSD−OCTである場合、OCT1は、光源として、低コヒーレント長の光束を出射する光源を持ち、検出器として、参照光と被検眼からの測定光の戻り光との干渉信号を波長成分毎に検出する分光検出器を持つ。そして、分光検出器で得られた各波長での干渉信号に基づいて被検眼のOCTデータが得られる。また、本開示の技術は、FD−OCT(SS−OCT,SD−OCT等)以外のOCTデバイスに適用されてもよい。