(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記機能性樹脂を内包する多層構造を有する容器が外側容器であり、前記フランジ部を有する容器が内側容器であり、前記外側容器の先端が前記フランジ部下面に接合する請求項4記載の複合容器。
底部、胴部及びフランジ部を有する容器の底部及び胴部の内面又は外面上に、機能性樹脂層を合成樹脂中に内包する多層構造を有する容器を圧縮成形又は射出成形によりオーバーモールドする複合容器の製造方法であって、前記機能性樹脂層の先端が合成樹脂中で折り返された多層構造を有する容器を成形すると共に、該容器の先端が前記フランジ部の下面に接合するようにオーバーモールドすることを特徴とする複合容器の製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
機能性樹脂と基材樹脂との多層構造を有するフランジ付容器を圧縮成形で成形する場合、コア層が機能性樹脂から成り、シェル層が基材樹脂から成る溶融樹脂塊を圧縮することによって成形されるが、圧縮によるコア層を構成する機能性樹脂の伸展にばらつきがあることから、容器の高さ方向に機能性樹脂から成る層の延びが不十分な場合があり、このような場合には、機能性樹脂が有する機能を充分に発揮することができない。その一方、機能性樹脂が過度に延びて、カップ型容器のフランジ部で機能性樹脂から成る層が折り返されてしまうと、ヒートシール面の近傍に機能性樹脂が存在し、ヒートシール性が損なわれるという問題を生じる。
また射出成形により多層構造を有するフランジ付容器を成形する場合も、機能性樹脂が有する機能を充分に発揮すると共に、ヒートシール性を損なうことがない位置に、中間層の機能性樹脂を均一に形成することは困難である。
更に上記オーバーモールドによる場合も、中間層を他の樹脂で完全に内包し、機能性樹脂の機能を確保しつつ、フランジ部を単層化してヒートシール性を確保することは困難である。
【0006】
従って本発明の目的は、機能性樹脂からなる中間層が所望の位置にのみ存在する多層構造を有する容器及びかかる容器をオーバーモールドにより製造する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、少なくとも2つの合成樹脂部材から構成される複合容器であって、前記合成樹脂部材
の一方が、底部及び胴部において機能性樹脂層を合成樹脂中に内包する多層構造を有する容器であり、
前記合成樹脂部材の他方が、ヒートシール性を有するフランジ部を少なくとも有する単層構造の部材であり、前記胴部の少なくとも先端が他方の合成樹脂部材
のフランジ部の下面に接合されており、該接合面近傍に位置する胴部先端に前記機能性樹脂層が存在すると共に、前記機能性樹脂層の先端が折り返されて
いることを特徴とする複合容器が提供される。
【0008】
本発明の複合容器においては。
1
.前記機能性樹脂を内包する多層構造を有する合成樹脂部材と他方の合成樹脂部材が、一方が内側容器であり、他方が該内側容器の外側に位置する外側容器であること、
2.前記2つの合成樹脂部材が、前記接合面に連なる他の面でも接合されていること、
3.前記他方の合成樹脂部材が、底部、胴部及びフランジ部を有する容器であること、
4.前記機能性樹脂を内包する多層構造を有する容器が外側容器であり、前記フランジ部を有する容器が内側容器であり、前記外側容器の先端が前記フランジ部下面に接合すること、
5.前記他方の合成樹脂部材が、リング状フランジ部であること、
が好適である。
【0009】
本発明によればまた、底部、胴部及びフランジ部を有する容器の底部及び胴部の内面又は外面上に、機能性樹脂層を合成樹脂中に内包する多層構造を有する容器を圧縮成形又は射出成形によりオーバーモールドする複合容器の製造方法であって、
前記機能性樹脂層の先端が合成樹脂中で折り返された多層構造を有する容器を成形すると共に、該容器の先端が前記フランジ部
の下面に接合
するようにオーバーモールドすることを特徴とする複合容器の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明の複合容器によれば、機能性樹脂による機能を必要とする部位と、かかる機能性樹脂が不要或いは存在することにより却って他の機能が損なわれてしまう部位を、それぞれ別部材で構成することにより、それぞれの機能を充分に発揮することが可能になると共に、機能性樹脂から成る層の厳密な位置制御が不要になり、生産性も向上される。
すなわち、機能性樹脂から成る中間層を有する部材においては、ガスバリア性樹脂等の機能性樹脂層が容器の底部から胴部の上端近傍まで全体にわたって均一に形成することが可能になり、ガスバリア性等の機能を有効に発揮できる。その一方、フランジ部を有する部材は、機能性樹脂が含有されない、ヒートシール性に優れた合成樹脂の単層構造であるため、優れたヒートシール性が得られる。
また本発明の複合容器においては、同様の層構成を有する多層容器を通常の射出成形や圧縮成形に成形した場合に比して、優れた機械的強度を有している。
【0011】
更に本発明の複合容器においては、機能性樹脂を内包する合成樹脂部材の胴部の少なくとも先端が他方の合成樹脂部材に接合されている、接合面が一つの面だけでなく、隣接する他の面でも接合されていることにより、これら2つの合成樹脂部材の容易な分離が防止されており、特に後述する容器とフランジ部のみを構成するリング状部材とから成る複合容器において、複合部材が分離することが防止される。
更にまた、本発明の複合容器のオーバーモールドによる方法では、上述した効果を有する複合容器を連続して成形することが可能であり、生産性にも優れている。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の複合容器は、少なくとも2つの合成樹脂部材から構成される複合容器であって、合成樹脂部材の少なくとも一方が、底部及び胴部において機能性樹脂層を合成樹脂中に内包する多層構造を有する容器であり、前記胴部の少なくとも先端が他方の合成樹脂部材に接合されており、該接合面近傍に位置する胴部先端に前記機能性樹脂層が存在することが重要な特徴である。
本発明の複合容器を構成する合成樹脂部材としては、これに限定されないが、以下に示す例を挙げることができ、この態様に基づいて本発明を説明する。
【0014】
図1は、熱可塑性樹脂から成る内外層及び機能性樹脂層から成る中間層を有する多層構造の外側容器1と、フランジ部を有する熱可塑性樹脂の単層構造の内側容器10との組み合わせから成る態様を示すものである。外側容器1は、底部2及び胴部3から成り、底部2及び胴部3の全体にわたって中間層4が形成されている。一方、内側容器10は、底部11、胴部12及びフランジ部13から成っており、外側容器1の底部2及び胴部3の内面は、内側容器10の底部11及び胴部12と密着し、外側容器1の胴部先端2aが内側容器10のフランジ部13の下面13aに当接し、外側容器1は、外側容器の胴部先端2aから胴部内面及び底部内面において、内側容器10と密着接合されている。
本発明においては、ガスバリア性等の機能性樹脂が有する機能を充分に発揮するために、胴部の先端付近まで機能性樹脂が伸展していることが望ましいことから、胴部先端2aと内側容器の接合面(
図1に示す態様においてはフランジ下面13a)から機能性樹脂の先端4aまでの距離Lは、0より大きく10mm以下、好ましくは0より大きく5mm以下、より好ましくは0.1〜3mm、更に好ましくは0.1〜2mm、最も好適には0.1〜1mmの範囲にあることが望ましい。
尚、
図1(B)に示すように、多層容器は胴部先端まで多層構造が確実に形成されており、胴部先端部分に機能性樹脂から成る層の折り返し部が形成されている。
【0015】
図2は、
図1の態様におけるX部分の他の態様を示す図であり、内側容器10のフランジ部13下面には、外側容器1の胴部先端2aが嵌合するような環状凹部14が形成され、外側容器1と内側容器10の接合がより強固になっている。
図2(A)に示した例では、外側容器1の胴部先端2aは、ストレートに形成されており、胴部先端2aがそのまま凹部14に嵌合している。また
図2(B)に示した例では、環状凹部14が外側容器1の胴部2の厚みより大きく形成されており、胴部先端2aが外方に折れ曲がったように形成され、機能性樹脂から成る中間層4の先端もフランジ部内に位置していることから、ガスバリア性等の機能が確実に発揮可能になっている。
【0016】
図3は、フランジ部を有する熱可塑性樹脂の単層構造の外側容器1と、熱可塑性樹脂から成る内外層及び機能性樹脂層から成る中間層を有する多層構造の内側容器10とから成る態様を示すものである。外側容器1は、底部2、胴部3及びフランジ部5、並びにフランジ部5から開口部側に突出した環状突起6が形成されている。一方、内側容器10は、機能性樹脂から成る中間層15が形成された底部11及び胴部12から成り、内側容器の胴部12の先端12aが外側容器1の環状突起6の下面6aに当接するように形成されている。この態様においても、外側容器1と内側容器10が容易に分離しないように、接合面に連なる他の面(この態様では外側容器の胴部内面と内側容器の胴部外面)でも接合されている。
【0017】
図4は、熱可塑性樹脂から成る内外層と機能性樹脂を中間層として有する多層構造の容器と、フランジ部のみを構成する単層構造のリング状部材とから成る態様を示している。多層容器20は、機能性樹脂から成る中間層23が形成された底部21及び胴部22から成り、胴部の先端22が、フランジ部を形成するリング状部材30の内周側に接合されている。この態様においては、接合面が多層容器20の胴部先端22aとリング状部材30の下面30aのみであることから、好適には、
図5に示すように、リング状部材の多層容器20の胴部先端20aに対応する位置に環状の切欠き31を形成することが望ましい。これにより、多層容器の胴部先端20aと切り欠き部の水平面31aとが接合すると共に、この接合面につながる胴部20の外側と切り欠き部の垂直面31bとが接合され、両者の接合が確実になる。
【0018】
尚、本発明の複合容器をフランジ付カップ状容器の例で説明したが、本発明の複合容器はこれに限定されず、トレイ状容器は勿論、ボトル状容器においても同様の作用効果を得ることができる。
例えば、ボトル状容器の場合には、単層構造のボトル状容器の口部よりも下側の部分に多層構造の外側部材を設けることができ、これにより口部はヒートシール性が確保されていると共に、胴部や底部においてはガスバリア性等の機能性が有効に発揮される。
また、容器と他の部材との組み合わせとして、多層構造の容器と、スパウトのような口部であってもよい。
【0019】
(合成樹脂)
本発明の複合容器において、多層構造の内外層等を構成する基材樹脂として使用できる合成樹脂としては、射出成形或いは圧縮成形が可能な熱可塑性樹脂を使用することができる。
具体的には、ポリオレフィン樹脂、熱可塑性ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂等の各種樹脂を挙げることができ、特にポリオレフィン樹脂、熱可塑性ポリエステル樹脂を好適に使用できる。
ポリオレフィン樹脂としては、低密度ポリエチレン(LDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、線状超低密度ポリエチレン(LVLDPE)等のポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、エチレン−プロピレン共重合体、ポリブテン−1、エチレン−ブテン−1共重合体、プロピレン−ブテン−1共重合体、エチレン−プロピレン−ブテン−1共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、イオン架橋オレフィン共重合体(アイオノマー)或いはこれらのブレンド物等が挙げられる。
ポリオレフィン樹脂は、メルトフローレート(MFR)が0.1乃至30g/10分の範囲にあることが押出性の点から好ましい。
【0020】
熱可塑性ポリエステル樹脂としては、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等の熱可塑性ポリエステルや、これらのポリエステルとポリカーボネートやアリレート樹脂等のブレンド物を用いることができる。本発明においては、エステル反復単位の大部分(一般に80モル%以上、特に80モル%以上)がエチレンテレフタレート単位であり、ガラス転移点(Tg)が50乃至90℃、特に55乃至80℃であり、且つ融点(Tm)が200乃至275℃、特に220乃至270℃のポリエチレンテレフタレート(PET)系ポリエステルが好適である。
【0021】
また、PET系ポリエステルとしては、ホモポリエチレンテレフタレートが最適であるが、エチレンテレフタレート単位の含有量が上記範囲内にある共重合ポリエステルも好適に使用することができる。
かかる共重合ポリエステルにおいて、テレフタル酸以外の二塩基酸としては、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸;シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環族ジカルボン酸;コハク酸、アジピン酸、セバチン酸、ドデカンジオン酸等の脂肪族ジカルボン酸;等の1種又は2種以上の組み合わせを例示することができ、エチレングリコール以外のジオール成分としては、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ジエチレングリコール、1,6−ヘキシレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物等の1種又は2種以上が挙げられる。
基材樹脂には、酸化防止剤、熱安定剤、滑剤等の従来公知の樹脂用添加剤を公知の処方で配合することもできる。
【0022】
(機能性樹脂)
本発明に用いる機能性樹脂は、本発明の多層容器に何らかの性能を付与するために用いられる、上述した基材樹脂とは異なる樹脂を意味するものであり、具体的には、ガスバリア性樹脂、酸素吸収性樹脂、環状オレフィン系樹脂のような水蒸気バリア性に優れた樹脂、液晶ポリマーのように剛性、耐熱性等に優れた樹脂等を意味している。
【0023】
[ガスバリア性樹脂]
ガスバリア性樹脂の代表的なものとしては、エチレン−ビニルアルコール共重合体を挙げることができ、例えば、エチレン含有量が20乃至60モル%、特に25乃至50モル%のエチレン−酢酸ビニル共重合体を、ケン化度が96%以上、特に99モル%以上となるようにケン化して得られる共重合体ケン化物が好適である。このエチレン−ビニルアルコール共重合体(エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物)は、フィルムを形成し得るに足る分子量を有するべきであり、一般に、[フェノール/水]の重量比が85/15の混合溶媒中、30℃で測定して0.01dl/g以上、特に0.05dl/g以上の固有粘度を有することが望ましい。
【0024】
また、エチレン−ビニルアルコール共重合体以外のガスバリア性樹脂の例としては、例えば、ナイロン6、ナイロン6・6、ナイロン6/6・6共重合体、メタキシリレンジアジパミド(MXD6)、ナイロン6・10、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン13等のポリアミドを挙げることができる。これらのポリアミドの中でも、炭素数100個当りのアミド基の数が5乃至50個、特に6乃至20個の範囲にあるものが好適である。
【0025】
これらのポリアミドもフィルムを形成するに足る分子量を有するべきであり、例えば、濃硫酸(濃度1.0g/dl)中、30℃で測定した相対粘度が1.1以上、特に1.5以上であることが望ましい。
また、後述するように酸素吸収性樹脂組成物に、ポリアミドを使用する場合、末端アミノ基濃度が40eq/10
6g以上のポリアミド樹脂が、酸素吸収時の酸化劣化がないため望ましい。
【0026】
[酸素吸収性樹脂]
酸素吸収性樹脂としては、少なくとも酸化性有機成分及び遷移金属触媒(酸化触媒)から成る樹脂組成物を例示することができる。
酸化性有機成分及び遷移金属触媒を有する樹脂組成物は、酸化性有機成分及び遷移金属触媒のみから成るものであってもよいが、これら以外の樹脂を含むものであっても勿論よい。
酸化性有機成分及び遷移金属触媒と組み合わせで使用し得る樹脂としては、上述したオレフィン系樹脂やガスバリア性樹脂を挙げることができるが、特に、エチレンビニルアルコール共重合体やポリアミド樹脂(特に末端アミノ基濃度が40eq/10
6g以上のキシリレン基含有ポリアミド樹脂)を用いることが好適である。
【0027】
(i)酸化性有機成分
酸化性有機成分としては、エチレン系不飽和基含有重合体を挙げることができる。この重合体は、炭素−炭素二重結合を有しており、この二重結合部分や特に二重結合部に隣接したαメチレンが酸素により容易に酸化され、これにより酸素の捕捉が行われる。
このようなエチレン系不飽和基含有重合体は、例えば、ポリエンを単量体として誘導され、ポリエンの単独重合体、或いは上記ポリエンを2種以上組み合わせ若しくは他の単量体と組み合わせてのランダム共重合体、ブロック共重合体等を酸化性重合体として用いることができる。
ポリエンから誘導される重合体の中でも、ポリブタジエン(BR)、ポリイソプレン(IR)、天然ゴム、ニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、クロロプレンゴム、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)等が好適であるが、勿論、これらに限定されない。
【0028】
また、上述したエチレン系不飽和基含有重合体以外にも、それ自体酸化されやすい重合体、例えばポリプロピレン、エチレン・プロピレン共重合体、或いは末端アミノ基濃度が40eq/10
6g未満のポリメタキシリレンジアジパミド等も酸化性有機成分として使用することができる。
尚、成形性等の見地から、上述した酸化性重合体やその共重合体の40℃での粘度は1乃至200Pa・sの範囲にあることが好適である。
これらのポリエン系重合体は、カルボン酸基、カルボン酸無水物基、水酸基が導入された酸変性ポリエン重合体であることが好ましい。
これらの酸化性重合体、或いはその共重合体からなる酸化性有機成分は、酸素吸収性樹脂中で0.01乃至10重量%の割合で含有されることが好ましい。
【0029】
(ii)遷移金属系触媒
遷移金属系触媒としては、鉄、コバルト、ニッケル等の周期律表第VIII族金属が好適であるが、他に銅、銀等の第I族金属、錫、チタン、ジルコニウム等の第IV族金属、バナジウム等の第V族金属、クロム等の第VI族金属、マンガン等の第VII族金属等であってもよい。
遷移金属触媒は、一般に、上記遷移金属の低価数の無機塩、有機塩或いは錯塩の形で使用される。無機塩としては、塩化物等のハライド、硫酸塩等のイオウのオキシ塩、硝酸塩等の窒素のオキシ酸塩、リン酸塩等のリンオキシ塩、ケイ酸塩等を挙げることができる。有機塩としては、カルボン酸塩、スルホン酸塩、ホスホン酸塩等を挙げることができる。また、遷移金属の錯体としては、β−ジケトンまたはβ−ケト酸エステルとの錯体が挙げられる。
遷移金属系触媒は酸素吸収性樹脂中で、遷移金属原子の濃度(重量濃度基準)として100乃至3000ppmの範囲であることが好ましい。
【0030】
[その他の機能性樹脂]
本発明に好適に用いることができる機能性樹脂としては、上記ガスバリア性樹脂、酸素吸収性樹脂の他に、環状オレフィン系樹脂や液晶ポリマー等を挙げることができる。
環状オレフィン系樹脂は、一般に耐熱性、耐湿性、水蒸気バリア性等の諸特性が汎用熱可塑性樹脂に比して優れており、かかる環状オレフィン系樹脂を用いることにより、多層容器に優れた特性を付与することが可能となる。
環状オレフィンとしては、従来より包装容器等に用いられていた従来公知の環状オレフィンを用いることができ、一般には、エチレン系不飽和結合とビシクロ環とを有する脂環族炭化水素化合物、いわゆるノルボルネン系モノマーを、公知の開環重合法により重合し、水素添加して得られる飽和重合体を挙げることができる。
また、環状オレフィン系樹脂としては、環状オレフィンの単独重合体の他、オレフィンと環状オレフィンとの共重合体を用いることができる。オレフィンと環状オレフィンとの非晶質乃至低結晶性共重合体(COC)が誘導されるオレフィンとしては、エチレンが好適であるが、他にプロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1ーヘキセン、1−オクテン、3ーメチル1−ペンテン、1−デセン等の炭素数3乃至20のα−オレフィンが、単独或いはエチレンとの組み合わせで使用し得る。
【0031】
液晶ポリマーは、一般に剛性、耐熱性、バリア性等の諸特性が汎用熱可塑性樹脂に比して優れており、かかる液晶ポリマーを用いることにより多層容器に優れた特性を付与することが可能となる。
液晶ポリマーとしては、従来公知のリオトロピック液晶ポリマーやサーモトロピック液晶ポリマー等の溶液或いは溶融状態で液晶性を示す高分子を用いることができる。
具体的には、(イ)芳香族ジカルボン酸と芳香族ジオールと芳香族ヒドロキシカルボン酸とを反応させて得られたもの、(ロ)異種の芳香族ヒドロキシカルボン酸同士を反応させて得られたもの、(ハ)芳香族ジカルボン酸と芳香族ジオールとを反応させて得られたもの、(ニ)ポリエチレンテレフタレート等のポリエステルに芳香族ヒドロキシカルボン酸を反応させて得られたもの、等を挙げることができるが、勿論これに限定されない。
【0032】
[接着性樹脂]
基材樹脂層と機能性樹脂層の間には必要により接着層を介在させることもできる。接着性樹脂としては、例えば酸変性ポリプロピレン、酸変性高密度ポリエチレン、酸変性低密度ポリエチレン、或いは酸変性エチレン−酢酸ビニル共重合体等の酸変性ポリオレフィンが挙げることができるが、勿論これに限定されない。
【0033】
(多層構造)
本発明の複合容器において、一方の容器の多層構造は、上述した基材樹脂を内外層とし、機能性樹脂を中間層とする2種3層の多層構造であってもよいし、機能性樹脂としてガスバリア層及び酸素吸収層の2層を含有するような3種5層の多層構造など、従来公知の層構成を採用することができる。
また単層容器を構成する熱可塑性樹脂と、多層容器の内外層を構成する熱可塑性樹脂は同種のものであることが、両者の接着性の点から望ましい。
これに限定されないが、本発明の複合容器に好適な層構成は以下の通りである。
内側単層容器:PET、外側多層容器:内層PET/中間層ガスバリア層/外層PET
内側単層容器:PET、外側多層容器:内層PET/中間層酸素吸収性ガスバリア層/外層PET
外側単層容器:PE、内側多層容器:内層PE/中間層ガスバリア層/外層PE
外側単層容器:PP、内側多層容器:内層PP/中間層ガスバリア層/外層PP
【0034】
(複合容器の製造方法)
本発明の複合容器は、前述した構成を有する限り、種々の方法で製造することができるが、予め成形した単層容器に、機能性樹脂を合成樹脂中に内包する多層構造を有する容器を圧縮成形又は射出成形によりオーバーモールドすること、或いはその逆の順序、すなわち先に多層容器を成形し、単層容器をオーバーモールドすることによって製造することが望ましい。
図6は、
図1に示した、底部、胴部及びフランジ部を有する単層容器(内側容器1)と、機能性樹脂層を合成樹脂中に内包する多層構造を有する多層容器(外側容器)の組み合わせから成る複合容器を圧縮成形により製造する方法を説明するための図である。
この態様においては、押出機40から押し出されるストランド50が、基材樹脂51中に機能性樹脂52が間隔を置いて内包されたストランドであり、このストランドの基材樹脂のみから成る部分が切り落とされ、単層溶融樹脂塊53が圧縮成型機に供給されて圧縮されることにより、フランジ付単層容器(内側容器)10が形成される。次いでこの単層容器10の底部外面に、機能性樹脂52を内包する部分が切り落とされ、多層溶融樹脂塊54が供給されて、フランジ部の下面に胴部先端が位置するように圧縮されることにより、多層容器(外側容器)1が形成され、
図1に示した本発明の複合容器が完成される。
図3に示した複合容器のように、内側容器を多層構造するに場合には、外側容器を先に製造し、外側容器の底部内面に多層溶融樹脂塊を供給して、圧縮することにより、成形することができる。
本発明において、圧縮成形により多層溶融樹脂塊を圧縮する場合には、機能性樹脂層が伸展されつつある溶融樹脂の先端にまで延びることが重要であり、このように溶融樹脂の先端まで確実に機能性樹脂層が伸展された場合には、
図1及び
図2に示したように、多層容器の胴部先端に機能性樹脂層の折り返し部が形成される。
【0035】
上記例は、単層容器及び多層容器の両方を圧縮成形により成形したが、予め射出成形により成形された単層容器に、上記と同様に多層溶融樹脂塊を供給して圧縮成形することにより多層容器を成形し、本発明の複合容器を成形することもできるし、或いは射出成形により成形した単層容器を射出成形型に導入し、これに同時射出法或いは逐次射出法によって多層容器を成形することもできる。
また
図4に示したリング状部材と多層容器の組み合わせから成る複合容器の場合には、圧縮成形又は射出成形等により別途成形されたリング状部材を成形型中に設置した後、圧縮成形又は射出成形により、多層容器を成形すると同時にリング状部材を接合することが好適である。
更にボトル状容器の場合には、射出成形又は圧縮成形により、単層のプリフォームを成形し、プリフォームの口部よりも下側の部分に多層構造の被覆を圧縮成形又は射出成形により形成し、これを二軸延伸ブロー成形することによって成形することもできる。
【実施例】
【0036】
(実施例1)
実施例1では押出機で樹脂を溶融させ、単層構造溶融樹脂を金型に供給し単層構造内側カップ容器に圧縮成形したのちに、その単層構造内側カップ容器と多層構造溶融樹脂を多層構造外側カップ容器成形用の金型に供給し圧縮成形することでオーバーモールドし、多層カップ容器を成形した。
単層構造内側カップ容器は、ランダムPP(プライムポリマー製J−2021GRP)からなるが、外側容器と実験的に区別するため白色のカラーマスターバッチ住化カラー製SPPM−7A2386を3wt%ドライブレンドしたものを使用して成形した。
多層構造外側カップ容器は、ランダムPP(プライムポリマー製J−2021GRP)90wt%、接着性樹脂(三井化学製アドマーQF551)5wt%、バリア性樹脂(クラレ製エバールF104B)5wt%からなり、PP/接着性樹脂/バリア性樹脂/接着性樹脂/PPの3種5層の構成である。
成形された多層カップ容器のフランジ部の断面写真を
図7に示す。
【0037】
(実施例2)
実施例2では押出機で樹脂を溶融させ、多層構造溶融樹脂を金型に供給し多層構造内側カップ容器に圧縮成形したのちに、その多層構造内側カップ容器と単層構造溶融樹脂を単層構造外側カップ容器成形用の金型に供給し圧縮成形することでオーバーモールドし、多層カップ容器を成形した。
多層構造内側カップ容器は、ランダムPP(プライムポリマー製J−2021GRP)90wt%、接着性樹脂(三井化学製アドマーQF551)5wt%、バリア性樹脂(クラレ製エバールF104B)5wt%からなり、PP/接着性樹脂/バリア性樹脂/接着性樹脂/PPの3種5層の構成である。
単層構造外側カップ容器は、ランダムPP(プライムポリマー製J−2021GRP)からなるが、内側容器と実験的に区別するため白色のカラーマスターバッチ住化カラー製SPPM−7A2386を3wt%ドライブレンドしたものを使用した。
成形された多層カップ容器のフランジ部の断面写真を
図8に示す。