特許第6880561号(P6880561)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6880561
(24)【登録日】2021年5月10日
(45)【発行日】2021年6月2日
(54)【発明の名称】燃焼装置及びガスタービン
(51)【国際特許分類】
   F23R 3/30 20060101AFI20210524BHJP
【FI】
   F23R3/30
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-68957(P2016-68957)
(22)【出願日】2016年3月30日
(65)【公開番号】特開2017-180303(P2017-180303A)
(43)【公開日】2017年10月5日
【審査請求日】2019年1月25日
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成27年度、国立研究開発法人科学技術振興機構、SIP(戦略的イノベーション創造プログラム)、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100175802
【弁理士】
【氏名又は名称】寺本 光生
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100167553
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 久典
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 慎太朗
(72)【発明者】
【氏名】加藤 壮一郎
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 司
(72)【発明者】
【氏名】藤森 俊郎
【審査官】 高吉 統久
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−190466(JP,A)
【文献】 特開平10−160361(JP,A)
【文献】 特開2010−019195(JP,A)
【文献】 特開2015−094496(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/082359(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0133400(US,A1)
【文献】 特開昭53−053036(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02C 3/22
F02C 3/24
F02C 7/224
F23R 3/10
F23R 3/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンモニアを燃焼室内で燃焼させる燃焼装置であって、
燃焼器ライナの外周に螺旋状に形成されると共に液体状態の前記アンモニアを加熱する加熱空間を形成し、当該加熱空間において液体状態の前記アンモニアを燃焼熱で加熱して前記燃焼室に燃料として供給し、
前記加熱空間において液体状態の前記アンモニアの加熱、液体状態の前記アンモニアの気化、あるいは液体状態の前記アンモニアの気化及び気体状態の前記アンモニアの過熱を行い、
前記燃焼器ライナに前記アンモニアの一部が前記燃焼室に向けて通過する開口を複数形成することを特徴とする燃焼装置。
【請求項2】
前記アンモニアを前記燃焼熱で加熱することにより気化させ、気体状態の前記アンモニアとして前記燃焼室に供給することを特徴とする請求項1記載の燃焼装置。
【請求項3】
前記開口では、前記アンモニアに加え燃焼用空気を一緒に通過させることを特徴とする請求項1または2記載の燃焼装置。
【請求項4】
前記開口から前記燃焼室に供給された前記アンモニアによって前記燃焼器ライナを冷却することを特徴とする請求項1または2記載の燃焼装置。
【請求項5】
前記アンモニアを燃焼用空気と予混合して前記燃焼室に供給することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の燃焼装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の燃焼装置を備えることを特徴とするガスタービン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃焼装置及びガスタービンに関する。
【背景技術】
【0002】
アンモニアは、水素に比べて輸送、貯留コストが安く、燃焼させた際に二酸化炭素が発生しないという点において、ガスタービンの燃料として注目されている。一方、アンモニアは難燃性である為、燃焼効率が低く、また、アンモニアを燃焼させた場合に有害なNOxが発生することが知られている。
特許文献1には、このようなアンモニアを燃料として使用した場合において、燃焼器内を領域分割することにより、燃焼器から排出される燃焼排ガス中の窒素酸化物(NOx)の量を従来よりも低減させる燃焼装置及びガスタービンが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015−94496号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に開示されている燃焼装置及びガスタービンは、難燃性のアンモニアを燃焼させることが出来るものの、燃焼性のさらなる向上を図る必要がある。
【0005】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、アンモニアの燃焼性を従来よりも向上させることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明では、燃焼装置に係る第1の解決手段として、アンモニアを燃焼室内で燃焼させる燃焼装置であって、液体状態の前記アンモニアを燃焼熱で加熱して前記燃焼室に燃料として供給する、という手段を採用する。
【0007】
本発明では、燃焼装置に係る第2の解決手段として、上記第1の解決手段において、前記アンモニアを前記燃焼熱で加熱することにより気化させ、気体状態の前記アンモニアとして前記燃焼室に供給する、という手段を採用する。
【0008】
本発明では、燃焼装置に係る第3の解決手段として、上記第1または第2の解決手段において、燃焼器ライナの外側に液体状態の前記アンモニアを加熱する加熱空間を形成し、当該加熱空間において液体状態の前記アンモニアの加熱、液体状態の前記アンモニアの気化、あるいは液体状態の前記アンモニアの気化及び気体状態の前記アンモニアの過熱を行う、という手段を採用する。
【0009】
本発明では、燃焼装置に係る第4の解決手段として、上記第3の解決手段において、前記燃焼器ライナに前記アンモニアの一部が燃焼室に向けて通過する開口を複数形成する、という手段を採用する。
【0010】
本発明では、燃焼装置に係る第5の解決手段として、上記第4の解決手段において、前記開口では、前記アンモニアに加え燃焼用空気を一緒に通過させる、という手段を採用する。
【0011】
本発明では、燃焼装置に係る第6の解決手段として、上記第4の解決手段において、前記開口から前記燃焼室に供給された前記アンモニアによって前記燃焼器ライナを冷却する、という手段を採用する。
【0012】
本発明では、燃焼装置に係る第7の解決手段として、上記第1〜第6のいずれかの解決手段において、前記アンモニアを燃焼用空気と予混合して前記燃焼室に供給する、という手段を採用する。
【0013】
本発明では、ガスタービンに係る解決手段として、第1〜第7のいずれかの解決手段に係る燃焼装置を備える、という手段を採用する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、アンモニアを燃焼熱で加熱して燃焼室に供給するので、液体状態のアンモニアをそのまま燃焼させる従来技術よりもアンモニアの燃焼性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態に係るガスタービンの全体構成を示す模式図である。
図2】本発明の一実施形態の第1変形例に係る側面供給部11の横断面図である。
図3】本発明の一実施形態の第2変形例に係る側面供給部11の縦断面図である。
図4】本発明の一実施形態の第3変形例に係る側面供給部11の横断面図(a)及び縦断面図(b)である。
図5】本発明の一実施形態の第4変形例の第1例に係る側面供給部11の横断面図(a)及び縦断面図(b)である。
図6】本発明の一実施形態の第4変形例の第2例に係る側面供給部11の横断面図(a)及び縦断面図(b)である。
図7】本発明の一実施形態の第5変形例の第1例に係る側面供給部11の横断面図(a)及び縦断面図である。
図8】本発明の一実施形態の第5変形例の第2例に係る側面供給部11の横断面図(a)及び縦断面図(b)である。
図9】本発明の一実施形態の第6変形例に係る側面供給部11の縦断面図(a)、燃料開口及び空気開口の横断面図(b)〜(d)である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態について説明する。本実施形態に係るガスタービンAは、アンモニアを燃料として燃焼させて発生させた燃焼ガスCGを用いて回転動力を発生する内燃機関(原動機)であり、図1に示すように、圧縮機(コンプレッサー)1、アンモニア供給部2、燃焼器3及びタービン4を備える。なお、図示しないが、このガスタービンAは、専用の制御装置(エンジン制御装置)によって動作が制御される。
【0017】
このような構成要素のうち、アンモニア供給部2は、燃料タンク5、第1バルブ6、気化器7及び第2バルブ8を備えている。また、燃焼器3は、ケーシング9、ライナ10(燃焼器ライナ)、側面供給部11、副供給部12及び中央供給部13等を備えている。なお、上記アンモニア供給部2及び燃焼器3は、本発明に係る燃焼装置を構成している。
【0018】
圧縮機1は、回転軸がタービン4の出力軸と軸結合した軸流式圧縮機であり、タービン4を動力源として回転することにより大気から取り込んだ空気を所定圧まで圧縮し、当該圧縮によって得られた空気(圧縮空気)を副供給部12及び中央供給部13に供給する。すなわち、圧縮機1は、圧縮空気を燃焼用空気PAとして副供給部12及び中央供給部13に供給する。
【0019】
また、圧縮機1で生成された圧縮空気は冷却用空気CAとしても機能する。すなわち、冷却用空気CAは、ケーシング9とライナ10との間つまりライナ10の外側を通過して副供給部12及び中央供給部13に供給されるのでライナ10の外側を冷却すると共に、ライナ10に複数形成された細孔を介してライナ10の内側に流れることによりライナ10の内側を冷却する。
【0020】
アンモニア供給部2は、側面供給部11に液体状態のアンモニア(液体燃料)を供給する一方、副供給部12及び中央供給部13に気体状態のアンモニア(気体燃料)を供給する燃料供給部である。アンモニア供給部2の燃料タンク5は、加圧状態のアンモニア(液体燃料)を貯留する所定容量の燃料容器である。第1バルブ6は、燃料タンク5から供給されたアンモニア(液体燃料)の流量を調節して気化器7に供給する。気化器7は、アンモニア(液体燃料)を気化させることにより気体状態のアンモニア(気体燃料)を生成して副供給部12及び中央供給部13に供給する。第2バルブ8は、燃料タンク5から供給されたアンモニア(液体燃料)の流量を調節して側面供給部11に供給する。
【0021】
燃焼器3は、アンモニア供給部2から供給される気体状態のアンモニア(気体燃料)を圧縮機Cから供給された燃焼用空気PAを用いて燃焼させる。ケーシング9は、燃焼器3を構成するライナ10、側面供給部11、副供給部12及び中央供給部13を収容する容器である。このケーシング9は、図示しない支持構造によってライナ10、側面供給部11、副供給部12及び中央供給部13を図示する状態に支持する。
【0022】
ライナ10は、略中空円筒状の部材であり、内側が燃焼室Nを形成する。すなわち、上記アンモニア(気体燃料)は、ライナ10内の燃焼室Nにおいて燃焼用空気PAを酸化剤として燃焼し、高温高圧の燃焼ガスCGを発生させる。なお、このライナ10(燃焼器3)では、図1における左側に中央供給部13が設けられており、よって燃焼室N内における燃焼ガスCGの流れ方向は左から右であり、左側が本実施形態における上流側、右側が下流側となる。
【0023】
側面供給部11は、上記燃焼ガスCGの流れ方向においてライナ10の上流側に設けられ、当該ライナ10と区画部材11aからなる二重壁構造部である。この側面供給部11の内部空間は液体状態のアンモニアが燃焼熱によって気化すると共に予熱(過熱)される空間(気化空間K)であり、図示するように下流側に液体状態のアンモニアがアンモニア供給部2から供給され、燃焼熱によって予熱(過熱)された気体状態のアンモニア(予熱アンモニア)が上流側から副供給部12に向けて排出される。上記気化空間Kは、ライナ10の外周に形成された円環状の空間である。なお、上記気化空間Kは、本発明における加熱空間に相当する。
【0024】
また、側面供給部11におけるライナ10には、燃料開口11bがライナ10の周方向に所定間隔で複数形成されている。また、側面供給部11の区画部材11aには、上記燃料開口11bに一致する部位に空気開口11cが形成されている。
【0025】
すなわち、アンモニア供給部2から側面供給部11の下流側に供給された液体状態のアンモニアは、ライナ10内の燃焼室Nで発生する燃焼熱によって加熱されたライナ10と熱交換することによって気化して気体状態のアンモニア(気体燃料)となり、さらに当該アンモニア(気体燃料)がライナ10との熱交換によって予熱(過熱)されて副供給部12に供給される。また、側面供給部11で発生した気体状態のアンモニアの一部は、燃料開口11bを経由して燃焼室Nに供給される。さらに、この気体状態のアンモニアと一緒に燃焼用空気PAが空気開口11cを経由して燃焼室Nに供給される。
【0026】
副供給部12は、サブバルブ12a、予混合器12b及び整流器12cを備える。サブバルブ12aは、予混合器12bに供給する気体状態のアンモニアの流量を調節する制御弁である。予混合器12bは、アンモニア供給部2の気化器7で生成されたアンモニアと側面供給部11で生成されたアンモニアに燃焼用空気PAを混合(予混合)し、当該混合によって得られた混合ガスを整流器12cに供給する。この予混合器12bには、気体状態のアンモニアと燃焼用空気PAとの混合状態を良好なものにするため、撹拌機構(邪魔板あるいは撹拌翼等)が設けられている。整流器12cは、予混合器12bから供給された混合ガスを所望の流れ形態、例えば旋回流に整流して燃焼室Nに供給する。
【0027】
中央供給部13は、メインバルブ13a、バーナ13b及び整流器13cを備えている。メインバルブ13aは、アンモニア供給部2の気化器7からバーナ13bに供給されるアンモニア(気体燃料)の流量を調節する制御弁である。バーナ13bは、メインバルブ13aから供給されたアンモニア(気体燃料)を燃焼室N内に噴射する。整流器13cは、圧縮機1から供給された燃焼用空気PAを所望の流れ形態、例えば旋回流に整流して燃焼室Nに噴射する。
【0028】
次に、本実施形態に係るガスタービンA、特にアンモニア供給部2及び燃焼器3から構成された燃焼装置の動作について詳しく説明する。
【0029】
このガスタービンAは、アンモニア供給部2から燃焼器3に燃料を供給することにより燃焼器3内で発生させた燃焼ガスCGをタービン4に供給することによって回転動力を発生させる。また、このガスタービンAは、タービン4によって圧縮機1が回転駆動され、圧縮空気が燃焼器3に供給される。このようなガスタービンAの動作は、エンジン制御装置によって制御されている。
【0030】
ここで、エンジン制御装置は、ガスタービンAの起動時つまり燃焼室Nから気化空間Kに十分な燃焼熱が伝達されない状態では、第1バルブ6を開状態かつ第2バルブ8を閉状態とすることにより、気化器7から出力される気体状態のアンモニア(気体燃料)を燃料として燃焼器3に専ら供給させる。そして、エンジン制御装置は、燃焼室Nから気化空間Kに十分な燃焼熱が伝達される定常運転時には、第2バルブ8を閉状態から開状態にすることにより、側面供給部11から出力される気体状態のアンモニア(気体燃料)を燃料として燃焼器3に供給させる。
【0031】
すなわち、アンモニア供給部2は、ガスタービンAの起動時において、燃料タンク5から供給された加圧状態のアンモニア(液体燃料)を第1バルブ6で流量調節して気化器7に供給することにより、アンモニア(気体燃料)を副供給部12及び中央供給部13に供給する。そして、アンモニア供給部2は、ガスタービンAの定常運転時には、上記気化器7を経由したアンモニア(気体燃料)の副供給部12及び中央供給部13への供給に加えて、燃料タンク5から供給された加圧状態のアンモニア(液体燃料)を第2バルブ8で流量調節して側面供給部11に供給することにより、側面供給部11から予熱(過熱)されたアンモニア(気体燃料)を副供給部12に供給する。
【0032】
なお、定常運転時における燃料タンク5から気化器7へのアンモニア(液体燃料)の供給量と燃料タンク5から側面供給部11へのアンモニア(液体燃料)の供給量との比率は、第1バルブ6及び第2バルブ8の開口度によって適宜設定される。つまり、第1バルブ6の開口度と第2バルブ8の開口度とを調節することにより、気化器7から出力されるアンモニア(気体燃料)の流量と側面供給部11から出力されるアンモニア(気体燃料)の流量との関係を調節(可変)することが可能である。
【0033】
そして、気化器7から燃焼器3に供給されたアンモニア(気体燃料)は、主な量がメインバルブ13aを経由することにより最終的に流量調節されてバーナ13bに供給され、残りがサブバルブ12aを経由することにより最終的に流量調節されて予混合器12bに供給される。そして、主なアンモニア(気体燃料)は、バーナ13bから燃焼室N内に供給され、整流器13cを介して燃焼器内に供給された燃焼用空気PAを酸化剤として燃焼する。一方、残りのアンモニア(気体燃料)は、予混合器12bで燃焼用空気PAと混合(予混合)された上で整流器12cを介して燃焼器内に供給されて燃焼する。
【0034】
一方、側面供給部11に供給されたアンモニア(液体燃料)は、気化空間Kを下流側から上流側に流れる間に気化して気体状態のアンモニア(気体燃料)となり、予混合器12bにおいて燃焼用空気PAと混合(予混合)された上で整流器12cを介して燃焼器内に供給されて燃焼する。上記気化空間Kにおけるアンモニア(液体燃料)のアンモニア(気体燃料)への相変化は、燃焼熱によって加熱されたライナ10とアンモニア(液体燃料)との熱交換によって実現されるので、気化空間Kではアンモニア(気体燃料)の生成と同時にライナ10の冷却が行われる。
【0035】
また、この側面供給部11では、ライナ10に燃料開口11bが形成されているので、アンモニア(気体燃料)の一部が気化空間Kから燃焼室Nに供給され、また区画部材11aには空気開口11cが形成されているので、燃焼用空気PAが上記アンモニア(気体燃料)の一部と一緒に燃焼室Nに供給される。そして、このように燃料開口11bから燃焼室Nに供給されたアンモニア(気体燃料)は、空気開口11cから燃焼室Nに供給された燃焼用空気PAを酸化剤として燃焼する。
【0036】
さらに、側面供給部11は燃焼ガスの流れ方向においてバーナ13bよりも下流側に位置しており、バーナ13bから燃焼室N内に噴射されたアンモニア(気体燃料)が燃焼して発生した窒素酸化物に対して還元剤として作用する。すなわち、側面供給部11から燃焼室N内に噴射されたアンモニア(気体燃料)は、燃焼室N内における窒素酸化物の濃度を低減させる。
【0037】
ここで、アンモニアは、比較的液化し易い化合物であり、常温(20℃)では0.857MPa(8.46気圧)で液化するので、液体状態のアンモニア(液体燃料)として市場に流通している。一方、液体アンモニアの蒸発潜熱は、1372kJ/kgであり、一般的な燃料として知られる炭化水素よりも蒸発潜熱が大幅に高い。例えば、メタンの蒸発潜熱は510kJ/kgであり、プロパンの蒸発潜熱は426kJ/kgである。したがって、アンモニア(液体燃料)を燃焼器3で実際に燃焼させる場合、蒸発潜熱の高さが原因で十分に蒸発させることができず、燃焼性が低下する可能性がある。
【0038】
これに対して、本実施形態に係る燃焼装置及びガスタービンAでは、アンモニア(液体燃料)をアンモニア(気体燃料)に変換して燃焼器3に供給すると共に当該変換に燃焼器3の燃焼熱を一部利用するので、アンモニアの燃焼性を従来よりも向上させることができる。
【0039】
また、本実施形態に係る燃焼装置及びガスタービンAでは、アンモニア(気体燃料)が中央供給部13から燃焼用空気PAとともに燃焼室Nに供給されるだけではなく、側面供給部11及び副供給部12からも燃焼用空気PAとともに燃焼室Nに供給されるので、これによってもアンモニアの燃焼性を従来よりも向上させることができる。
【0040】
また、本実施形態に係る燃焼装置及びガスタービンAでは、気体状態のアンモニアが側面供給部11から燃焼室Nに供給される。その際に、側面供給部11で加熱された気体状態のアンモニアは体積が大きく、燃焼室Nへの噴射速度が速い為、燃焼室N内の空気開口11cよりも燃焼ガスCGの流れ方向上流側で生成された窒素酸化物との混合が促進される。従って、気体状態のアンモニアによる窒素酸化物の還元が促進され、脱硝効果が促進される。
【0041】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、例えば以下のような変形例が考えられる。
(1)上記実施形態では、側面供給部11において液体状態のアンモニア(液体燃料)を燃焼熱によって気化させることにより気体状態のアンモニア(気体燃料)とするだけではなく、アンモニア(気体燃料)を燃焼熱によって予熱(過熱)したが、本発明はこれに限定されない。側面供給部11においてアンモニア(液体燃料)を気化させることなく単に加熱(予熱)する、あるいは気化させることのみを行ってもよい。
【0042】
(2)上記実施形態では、側面供給部11内の気化空間Kをライナ10の外周に形成された単純な円環状の空間としたが、本発明はこれに限定されない。気化空間Kに代えて、例えば図2に示すようにライナ10の外周に螺旋状に形成された気化空間Kaを採用してもよい。このような気化空間Kaでは、アンモニア(液体燃料)の通過経路長が気化空間Kよりも長いので、燃焼熱によってアンモニア(液体燃料)を効率良く気化させることができる。
【0043】
(3)上記実施形態では、側面供給部11を二重壁構造としたが、本発明はこれに限定されない。例えば図3に示すようにライナ10、区画部材11a、また当該ライナ10と区画部材11aとの間に設けられると共に複数の小孔(インピンジ孔)が形成された中間板11dからなる三重壁構造としてもよい。この構成によれば、アンモニア(液体燃料)が区画部材11aと中間板11dとの間の空間から小孔(インピンジ孔)を介して中間板11dとライナ10との間の空間(気化空間Kb)に侵入して気化する。
【0044】
また、この構成によれば、気化空間Kbに侵入したアンモニア(液体燃料)がライナ10の外周面に衝突するので、ライナ10について所謂インピンジ冷却を実現することができる。したがって、この構成によれば、アンモニア(液体燃料)の気化に加えて、ライナ10の冷却を効率良く行うことができる。
【0045】
(4)上記実施形態では、燃焼熱の燃焼室Nからライナ10への伝熱により気化空間K内のアンモニア(液体燃料)の気化が行われるが、本発明はこれに限定されない。図4(a)、(b)に示すように、上記気化空間K内にライナ10と区画部材11aを結ぶように、複数の支柱(ピン)11eを所定の間隔を空けて設置しても良い。ピン11eの形状は、丸棒形状であってもよく、矩形の柱状であってもよい。このような構成によれば、燃焼熱がライナ10だけではなく複数のピン11eにも伝熱するので、アンモニア(液体燃料)を効果的に加熱することが可能であり、よってアンモニア(液体燃料)を効率良く気化させることができる。
【0046】
また、この構成によれば、アンモニア(液体燃料)が気化する際の蒸発潜熱により、ピン11eから熱が奪われるので、ライナ10の所謂ピン冷却を実現することができる。したがって、この構成によれば、アンモニア(液体燃料)の気化及びライナ10の冷却を共に効率良く行うことができる。
【0047】
(5)また、上記ピン11eの代わりに、図5(a)、(b)及び図6(a)、(b)に示すように、気化空間K内にライナ10と区画部材11aを結ぶように、複数のフィン11fを所定の間隔を空けて設置しても良い。つまり、図5(a)、(b)に示すように、アンモニアの通過方向とフィン11fの長手方向が一致するように、または図6(a)、(b)に示すように、アンモニアの通過方向とフィン11fの長手方向が交差(垂直)になるようにフィン11fを設置する。
【0048】
また、このような構成では、アンモニア(液体燃料)が気化する際の蒸発潜熱により、フィン11fから熱が奪われるので、ライナ10の所謂フィン冷却を実現することができる。したがって、このような構成によれば、アンモニア(液体燃料)の気化及びライナ10の冷却を共に効率良く行うことができる。
【0049】
(6)上記各変形例はアンモニア(液体燃料)の気化及びライナ10の冷却を効果的に実現するものであるが、ライナ10を冷却する方法としては、図7(a)、(b)に示すように、ライナ10上に複数のフィルム冷却孔11gを設け、フィルム冷却を行っても良い。このような構成では、アンモニア(気体燃料)がフィルム冷却孔11gを経由して燃焼室N内に供給され、ライナ10の表側にフィルム状のアンモニアガス層を形成する。つまり、この構成によれば、ライナ10の所謂フィルム冷却を実現することができる。
【0050】
また、図8(a)、(b)に示すように、フィルム冷却孔11hの開口部における燃焼ガスCGの流れ方向上流側に、ライナ10表側から燃焼室N内に向けて突出するL字状のガイド板11iを設けても良い。このような構成によれば、フィルム状のアンモニアガス層が形成され易くなる。なお、このようなフィルム冷却孔11g,11hによるフィルム冷却については、アンモニア(気体燃料)に代えてアンモニア(液体燃料)によって、あるいはアンモニア(気体燃料)とアンモニア(液体燃料)とによって実現してもよい。
【0051】
(7)本実施形態で述べてきた燃焼開口11b及び空気開口11cの位置関係は図9(a)に示した通りであり、上記2つの開口部の横断面図は図9(b)に示すように二重円となっているが、本発明はこれに限定されない。図9(c)に示すように、燃焼用空気PAを燃焼室Nに供給する空気開口11cの形状を星形とする空気開口11kとしても良い。この場合には、燃料開口11jから噴出されるアンモニア(気体燃料)と燃焼用空気PAとの接触面積が大きくなり、アンモニア(気体燃料)の燃焼室N内での燃焼性が向上する。
【0052】
または、図9(d)に示すように、アンモニア(気体燃料)を燃焼室Nに供給する燃料開口11mを複数の小孔としても良い。上記のように、燃料開口11mを複数の小孔とする場合は、アンモニア(気体燃料)の噴出速度を加速させることができ、アンモニア(気体燃料)が燃焼室N中に供給され易くなり、アンモニア(気体燃料)の燃焼室N内での燃焼性が向上する。
【0053】
さらに、燃料開口11mを空気開口11nの接線方向に向かって傾けて開口させることにより、アンモニア(気体燃料)に旋回流を形成させることが可能となり、アンモニア(気体燃料)は、燃焼用空気PAと混合し易くなる。また、アンモニア(気体燃料)が燃焼用空気PAと衝突する角度を傾けて燃料開口11mを設けることにより、燃焼用空気PAとアンモニア(気体燃料)がより混合し易くなる。
【符号の説明】
【0054】
A ガスタービン
1 圧縮機
2 アンモニア供給部
3 燃焼器
4 タービン
5 燃料タンク
6 第1バルブ
7 気化器
8 第2バルブ
9 ケーシング
10 ライナ(燃焼器ライナ)
11 側面供給部
11a 区画部材
11b 燃料開口
11c 空気開口
12 副供給部
12a サブバルブ
12b 予混合器
12c 整流器
13 中央供給部
13a メインバルブ
13b バーナ
13c 整流器
K 気化空間(加熱空間)
N 燃焼室
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9