【実施例】
【0048】
次に、本発明の調光フィルムの実施例について説明する。
実施例1〜5および比較例1〜3については、調光層に隣接して配向層が形成されていないノーマルモードに対応する層構成であり、実施例6〜10および比較例4〜6につい
ては、調光層に隣接して配向層が形成されているリバースモードに対応する層構成についての実施例および比較例である。
なお、実施例1〜5および比較例1〜3についての測定結果は表1に、実施例6〜10および比較例4〜6についての測定結果は表2に、それぞれまとめて示した。
【0049】
<実施例1>
ポリカーボネートフィルム(厚さ50μm)の片面にITO(Indium Tin Oxide)薄膜(厚さ0.1μm)を形成した導電性フィルムを用意した。その導電性フィルムのITO薄膜側に、液晶と硬化性樹脂、二官能モノマー、並びにヒドロキシ基、カルボキシ基及びリン酸基からなる群から選ばれる少なくとも1種の極性基を有するモノマーを含む。液晶には、ネマチック液晶、スメクチック液晶又はコレステリック液晶を用いることができる。
【0050】
次に、同じ仕様の導電性フィルムのITO薄膜側を、上記で作製した高分子分散液晶層の上に積層し密着することにより、厚さ120μmの調光フィルムを作製した。
【0051】
ポリカーボネート樹脂(住友ダウ社製、カリバー200−13、ビスフェノールA型ポリカーボネート)を100重量部、リン系難燃剤(大八化学工業社製、PX−200)15重量部で配合してヘンシェルミキサーで均一に混合し、樹脂組成物を調整した。該樹脂組成物を、同方向二軸押出機に供給し、シリンダー温度280℃で溶融混練し、Tダイから溶融樹脂を吐出させ、ピンチロールで引き取りつつ冷却することで、リン系難燃剤を含有する厚み50μmの基材を作成した。また、調光フィルムとしての厚さは、120μmとした。
この様にして作成した調光フィルムの難燃性を、UL−94規格の難燃性の判定およびISO4589−2による酸素指数にて測定した。また、光学的な特性として印加電圧0〜100Vにおける最小ヘイズ、最大透過率を測定した。また、屈曲性については、マンドレル試験機を用いて測定した。屈曲性はフィルムをマンドレルに巻きつけ、巻きつけ後のフィルムのクラックについて評価し、クラックが発生しない場合には、その太さ(φ)での屈曲性がOKとする。本発明では、10mmφでクラックが発生しないフィルムを屈曲性OKとした。また、ヘイズおよび全光線透過率の測定は、JIS K7136に従って実施した。
【0052】
<実施例2>
ポリカーボネート樹脂(住友ダウ社製、カリバー200−13、ビスフェノールA型ポリカーボネート)を100重量部、ハロゲン系難燃剤(DIC社製、メガファックF114)0.5重量部で配合してヘンシェルミキサーで均一に混合し、樹脂組成物を調整した。該樹脂組成物を、同方向二軸押出機に供給し、シリンダー温度280℃で溶融混練し、Tダイから溶融樹脂を吐出させ、ピンチロールで引き取りつつ冷却することで、ハロゲン系難燃剤を含有する厚み100μmの基材を作成した。調光フィルムとしての厚さは、220μmとした。
【0053】
<実施例3>
実施例1と同じ層構成の調光フィルムの層構成の表裏面の最外層の基材(透明基材)の上に、それぞれ、厚さ5μmのHC(ハードコート)層を形成した。HC層を形成する塗液の組成は、下記の通りである。ただし、基材には難燃剤を含まない構成とした。調光フィルムの厚さは、130μmとした。
A材料:PETA(大阪有機社製、ビスコート#300) 100重量部
B材料:Irg.184(DKSHジャパン) 5重量部
C材料:MEK 100重量部
難燃材料(金属水酸化物):水酸化マグネシウム(堺化学社製、MGZ−3)
50重量部
この塗液をグラビア印刷にて、塗布し乾燥して表1の実施例3に示した層構成の調光フィルムを得た。なお、難燃材料は、金属水酸化物からなるものである。
【0054】
<実施例4>
実施例3と同じ層構成で、HC層には、リン−窒素系の難燃剤が含有されるものとした。HC層を形成する塗液の組成は、下記の通りである。調光フィルムの厚さは、130μmとした。
A材料:PETA(大阪有機社製、ビスコート#300) 100重量部
B材料:Irg.184(DKSHジャパン) 5重量部
C材料:MEK 100重量部
難燃材料(リン−窒素系):ホスファゼン化合物(大塚化学社製、SPE−100)
10重量部
【0055】
<実施例5>
実施例1と同じ層構成で、表裏面の基材には難燃剤を含まない構成とし、一方の基材の表面に厚さ20μmの粘着層を形成した。実施例1と同じリン系の難燃剤をその粘着層に含有させた。調光フィルムとしての厚さは140μmとした。
なお、粘着層への難燃剤は次の様にして作製した。
冷却管、窒素導入管、温度計および攪拌機を備えた反応容器に、n−ブチルアクリレート(東亞合成社製、BA)を95重量部、アクリル酸(AA)を5重量部、トルエンを150重量部、2、2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)を0.1重量部投入し、60℃にて8時間重合させ重合体トルエン溶液を得た。この重合体トルエン溶液の固形分100重量部に対し、イソシアネート系架橋剤(日本ポリウレタン工業製、コロネートL)を固形分で2重量部、更にリン系難燃剤ビスフェノールAビス(ADEKA社製、FP−600)を80重量部添加した。
【0056】
<実施例6>
実施例1の層構成に加えて、調光層の表裏面側の導電層との間に、配向層を挿入した構成とした(表3の層構成参照)。配向層の厚さは、0.1μmとした。配向層の厚さは薄いため、調光フィルムとしての厚さは実施例1と同じ120μmである。また、ヘイズおよび全光線透過率の測定は、JIS K7136に従って、印加電圧0〜100Vにおける最大ヘイズと最小透過率を測定した。その他は実施例1と同様である。
【0057】
<実施例7>
実施例2の層構成に加えて、調光層の表裏面側の導電層との間に、配向層を挿入した構成とした(表3の層構成参照)。また、基材に添加した難燃剤をハロゲン系とし、その添加量も変更した。調光フィルムとしての厚さは220μmとした。それ以外は、実施例6と同様とした。
【0058】
<実施例8>
実施例3の層構成に加えて、調光層の表裏面側の導電層との間に、配向層を挿入した構成とした(表2の層構成参照)。配向層の厚さは、0.1μmとした。配向層の厚さは薄いため、調光フィルムとしての厚さは実施例3と同じ130μmである。その他は実施例3と同様である。
【0059】
<実施例9>
実施例4の層構成に加えて、調光層の表裏面側の導電層との間に、配向層を挿入した構成とした(表2の層構成参照)。基材に添加した難燃剤をリン−窒素系とし、添加量を変更した以外は、実施例8と同様とした。
【0060】
<実施例10>
実施例5の層構成に加えて、調光層の表裏面側の導電層との間に、配向層を挿入した構成とした(表2の層構成参照)。配向層の厚さは、0.1μmとした。配向層の厚さは薄いため、調光フィルムとしての厚さは実施例5と同じ140μmである。その他は実施例5と同様である。
【0061】
次に、比較例について説明する。
【0062】
<比較例1>
実施例1と同じ層構成であるが、基材に難燃剤を添加しない構成とした。
【0063】
<比較例2>
基材の厚さを50μmから150μmに変更した点以外は、実施例1と同じ構成とした。
【0064】
<比較例3>
基材の厚さを50μmから150μmに変更した点以外は、比較例1と同じ構成とした。
【0065】
<比較例4>
基材に難燃剤を添加しなかった点以外は、実施例6と同じ構成とした。
【0066】
<比較例5>
基材の厚さを50μmから150μmに変更した点以外は、実施例6と同じ構成とした。
【0067】
<比較例6>
基材に難燃剤を添加しなかった点以外は、比較例5と同じ構成とした。
【0068】
以上、実施例1〜5、比較例1〜3で作成した調光フィルムの難燃性評価と光学特性の評価結果を表1にまとめて示した。また、実施例6〜10、比較例4〜6で作成した調光フィルムの難燃性評価と光学特性の評価結果を表2にまとめて示した。なお、表3に実施例1〜10と比較例1〜6の調光フィルムの層構成を示した。
【0069】
実施例1〜10については、難燃性をUL−94規格で評価した結果は全てVTM−0となり、高い難燃性を備えていた。またISO4589−2による酸素指数は全て27となり、高い難燃性を備えていた。これらの調光フィルムの厚さは120μm〜140μmであった。また、実施例1〜5におけるノーマルモードにおいては、最小ヘイズは10%、最大透過率は75%であった。実施例6〜10におけるリバースモードにおいては、最大ヘイズ80%、最小透過率は10%であった。また、マンドレルを用いた屈曲性は、全てφ10mmであり、良好であった。
【0070】
一方、ノーマルモードの比較例1は、調光フィルムの厚さは120μmであったが、難燃剤を添加していないため、難燃性をUL−94規格で評価した結果はVTM−2、ISO4589−2による酸素指数は22となり、良好な結果ではなかった。また、マンドレルを用いた屈曲性は、全てφ10mmであり、良好であった。
【0071】
比較例2は、難燃剤を基材に添加した構成であったため、難燃性をUL−94規格で評価した結果はVTM−0、ISO4589−2による酸素指数は27となり、良好な難燃性であった。光学的な特性は、最小ヘイズが10%、最大透過率が75%であり、良好であった。しかし調光フィルムの厚さが320μmと厚かったため、マンドレルを用いた屈
曲性は、φ20mmであり、良好ではなかった。
【0072】
比較例3は、難燃剤が添加されていないため、難燃性をUL−94規格で評価した結果はVTM−2、ISO4589−2による酸素指数は22となり、良好な結果ではなかった。また、マンドレルを用いた屈曲性は、調光フィルムの厚さが320μmと厚かったため、φ20mmとなり、良好ではなかった。
【0073】
一方、リバースモードの比較例4は、難燃剤を添加していなかったため、難燃性をUL−94規格で評価した結果はVTM−2、ISO4589−2による酸素指数は22となり、良好な結果ではなかった。屈曲性と光学的特性は良好だった。
【0074】
リバースモードの比較例5は、難燃剤を添加しているため、難燃性をUL−94規格で評価した結果はVTM−0、ISO4589−2による酸素指数は27となり、良好な難燃性であった。また、光学特性も実施例6〜10と同じく最大ヘイズが80%、最小透過率が10%と良好であった。しかしながら、調光フィルムの厚さが320μmと厚かったため、マンドレルを用いた屈曲性がφ20mmとなり、良好ではなかった。
【0075】
リバースモードの比較例6は、難燃剤が添加されていないため、難燃性をUL−94規格で評価した結果はVTM−2、ISO4589−2による酸素指数は22となり、良好な結果ではなかった。また、マンドレルを用いた屈曲性は、調光フィルムの厚さが320μmと厚かったため、φ20mmとなり、良好ではなかった。光学的な特性は、最大ヘイズが80%、最小透過率が10%と良好であった。
【0076】
【表1】
【0077】
【表2】
【0078】
【表3】
【0079】
なお、難燃剤としては、下記の様なものを使用した。
実施例1、6:リン系、大八化学工業社製、PX−200
実施例2、7:ハロゲン系、DIC社製、メガファックF114
実施例3、8:金属水酸化物、大塚化学社製、MGZ−3
実施例4、9:リン−窒素系、大塚化学社製、SPE−100
実施例5、10:リン系、ADEKA社製、FP−600