(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について説明する。本発明の実施の形態に係る目標存在尤度算出装置は、例えば艦船に搭載された、目標物までの距離および深度を推定するソーナー装置に設けられるものである。目標存在尤度算出装置は、周囲の環境状態と、ソーナー装置が搭載される自艦の状態と、目標物から受信した信号に関する情報とに基づき、自艦から海洋上または海洋中等に存在する目標物までの概略距離、および目標物の概略深度といった目標物が存在する位置の尤度を示す目標存在尤度を算出する。
【0011】
実施の形態1.
まず、本発明の実施の形態1に係る目標存在尤度算出装置ついて説明する。この目標存在尤度算出装置では、目標物から受信した信号に関する情報として、目標物から放射される信号の実測受信レベルと、目標物から得られる放射雑音等の目標情報と、目標物から放射される信号の周波数情報とを用いる。
【0012】
[目標存在尤度算出装置の構成]
図1は、本実施の形態1に係る目標存在尤度算出装置10の構成の一例を示すブロック図である。
図1に示すように、目標存在尤度算出装置10は、尤度算出部としての伝搬損失算出器11、予測受信レベル算出器12および目標存在尤度算出器13と、入力部としての入力端子1a〜1eと、出力部としての出力端子2aとを備えている。
【0013】
入力端子1aには、水深に対する水温の関係を示す特性データであるBT(BARHY−THERMOGRAPHY)プロファイル、自艦に対する目標方位の海底地形、底質、風速またはシーステート等の自艦周辺の環境状態を示す環境情報が入力される。入力端子1bには、自艦深度またはビームパターン等のセンサ諸元といった自艦の状態を示す自艦情報が入力される。入力端子1cには、目標物から得られる放射雑音等の各種情報を示す目標情報が入力される。入力端子1dには、目標物から放射される信号の実測受信レベルが入力される。入力端子1eには、目標物から放射される信号の周波数情報が入力される。なお、以下の説明では、「目標物からの放射雑音等の音源レベル」を「目標情報」と称して説明する。
【0014】
伝搬損失算出器11は、入力側に入力端子1a、1bおよび1eが接続され、出力側に予測受信レベル算出器12が接続されている。伝搬損失算出器11は、入力端子1aに入力された環境情報と、入力端子1bに入力された自艦情報と、入力端子1eに入力された目標物から放射される信号の周波数情報とに基づき、音波伝搬モデルを用いて伝搬損失の距離特性を算出する。伝搬損失算出器11は、算出した伝搬損失を予測受信レベル算出器12に対して出力する。
【0015】
予測受信レベル算出器12は、入力側に入力端子1cおよび伝搬損失算出器11が接続され、出力側に目標存在尤度算出器13が接続されている。予測受信レベル算出器12は、入力端子1cに入力された目標情報と、伝搬損失算出器11から入力された伝搬損失とに基づき、目標物から放射される信号の予測値を示す予測受信レベルを算出する。予測受信レベル算出器12は、算出した予測受信レベルを目標存在尤度算出器13に対して出力する。
【0016】
目標存在尤度算出器13には、入力側に入力端子1dおよび予測受信レベル算出器12が接続され、出力側に出力端子2aが接続されている。目標存在尤度算出器13は、入力端子1dに入力された目標物から放射される信号の実測受信レベルと、予測受信レベル算出器12から入力された予測受信レベルとに基づき、目標存在尤度の距離特性を算出する。目標存在尤度算出器13は、算出した目標存在尤度を出力端子2aから出力する。
【0017】
出力端子2aから出力された目標存在尤度は、例えば出力部の一部として設けられた図示しない表示部によって表示される。表示部は、目標存在尤度算出器13によって算出された目標存在尤度を、グラフまたはマップ等によって視覚的に表示する。なお、目標存在尤度の表示は、この例に限られず、例えば、目標存在尤度算出装置100が搭載されたソーナー装置に設けられた表示部等で行ってもよい。
【0018】
[目標存在尤度の算出方法]
次に、本実施の形態1に係る目標存在尤度算出装置10おける目標存在尤度の算出方法について説明する。目標存在尤度算出装置10に対して、環境情報、自艦情報、目標情報、および目標物からの実測受信レベルが入力されると、目標存在尤度算出装置10は、入力された情報を用いて、目標存在尤度を算出する。
【0019】
(伝搬損失の算出)
まず、目標存在尤度算出装置10は、伝搬損失算出器11により、伝搬損失の距離特性を算出する。伝搬損失算出器11は、入力端子1aに入力された環境情報と、入力端子1bに入力された自艦情報と、入力端子1eに入力された目標物からの信号の周波数情報とに基づき、音波伝搬モデルを用いて、予め設定された目標深度z
tにおける伝搬損失の距離特性(以下、「伝搬損失」と適宜称する)TL(r)を算出する。
【0020】
このとき使用する音波伝搬モデルは、例えば、文献「Michael D. Collins, "A split-step Pade solution for the parabolic equation method" J. Acoust. Soc. Am. 93(4), Pt. 1, 1993.」に記載されているような波動理論を基にした音波伝搬モデルを使用してもよい。また、これに限られず、例えば、文献「Henry Weinberg and Ruth Eta Keenan, "Gaussian ray bundles for modeling high-frequency propagation loss under shallow-water conditions," J. Acoust. Soc. Am. 100(3), 1996.」に記載されているような音線理論による音波伝搬モデルを使用してもよい。さらに、例えば、球面拡散または円筒拡散を仮定した近似計算を使用してもよい。
【0021】
図2は、
図1の伝搬損失算出器11によって算出された伝搬損失の距離特性の一例を示す概略図である。
図2において、横軸は自艦から目標物までの距離rを示し、縦軸は伝搬損失TL(r)を示す。上述のようにして伝搬損失を算出することにより、
図2に示すように、自艦から目標物までの距離rに応じた伝搬損失TL(r)が算出される。
【0022】
(予測受信レベルの算出)
次に、目標存在尤度算出装置10は、予測受信レベル算出器12により、予測受信レベルを算出する。予測受信レベル算出器12は、入力端子1cに入力された目標情報SLと、伝搬損失算出器11から入力された伝搬損失TL(r)とに基づき、式(1)を用いて予測受信レベルRL
p(r)を算出する。
【0024】
図3は、
図1の予測受信レベル算出器12によって算出された予測受信レベルの一例を示す概略図である。
図3において、横軸は自艦から目標物までの距離rを示し、縦軸は予測受信レベルRL
p(r)を示す。上述のようにして予測受信レベルを算出することにより、
図3に示すように、自艦から目標物までの距離rに応じた予測受信レベルRL
p(r)が算出される。
【0025】
(目標存在尤度の算出)
次に、目標存在尤度算出装置10は、目標存在尤度算出器13により、目標存在尤度の距離特性を算出する。目標存在尤度算出器13は、入力端子1dに入力された実測受信レベルRLと、予測受信レベル算出器12から入力された予測受信レベルRL
p(r)とに基づき、式(2)を用いて目標存在尤度の距離特性(以下、「目標存在尤度」と適宜称する)p
RL(r|RL)を算出する。式(2)において、関数fは、式(3)に示すように、期待値μ、標準偏差σの正規分布の確率密度関数である。
【0028】
式(2)において、「σ
r」は、実測受信レベルRLおよび予測受信レベルRL
p(r)に依存する標準偏差である。なお、標準偏差σ
rが既知の場合には、自乗和の平方根によって算出する。一方、標準偏差σ
rが未知の場合には、経験的に取得した固定値とする。
【0029】
図4は、
図1の目標存在尤度算出器13によって算出された目標存在尤度の一例を示す概略図である。
図4において、横軸は自艦から目標物までの距離rを示し、縦軸は目標存在尤度p
RL(r|RL)を示す。上述のようにして目標存在尤度を算出することにより、
図4に示すように、自艦から目標物までの距離rに応じた目標存在尤度p
RL(r|RL)が算出される。そして、本実施の形態1では、このようにして得られた目標存在尤度p
RL(r|RL)の値が最も高い位置となる自艦からの距離の位置に、目標物が存在すると判断することができる。
【0030】
なお、目標存在尤度算出器13では、複数の目標深度z
t_n(n=1,2,・・・,n)に対して式(2)を用いた計算を実施することができる。複数の目標深度z
t_nに対応する複数の目標存在尤度を算出し、算出された複数の目標存在尤度p
RL(r|RL)をカラーマップで表示することにより、自艦から目標物までの距離方向だけでなく、目標物の深度方向の目標存在尤度p
RL(r|RL)の変化を把握することができる。
【0031】
図5は、
図1の目標存在尤度算出器13において、複数の目標深度に対して目標存在尤度を算出した場合の算出結果の一例を示す概略図である。
図5において、横軸は自艦から目標物までの距離rを示し、縦軸は目標物の深度z
tを示す。目標存在尤度p
RL(r|RL)は、カラーマップ上の色の状態によって示されている。本実施の形態1では、このようにして得られた目標存在尤度p
RL(r|RL)の値が最も高い位置となる自艦からの距離および深度の位置に、目標物が存在すると判断することができる。
【0032】
以上のように、本実施の形態1によれば、目標物から受信した信号に関する情報としての目標物から放射される信号の実測受信レベル、目標情報および当該信号の周波数情報を用いて、目標存在尤度が算出されるため、自艦から目標物までの距離を迅速に判断することができる。また、複数の目標深度における伝搬損失を算出し、算出された複数の伝搬損失に基づき目標存在尤度を算出することにより、自艦から目標物までの距離方向および深度方向を把握することができる。そのため、目標物が存在する自艦からの位置をより高精度に推定することができる。
【0033】
実施の形態2.
次に、本発明の実施の形態2について説明する。上述した実施の形態1では、目標物から受信した信号に関する情報として、目標物から放射される信号の実測受信レベルおよび目標情報を用いたが、本実施の形態2では、目標物から受信した信号に関する情報として、目標物から放射される信号の到来ふ仰角を用いる。なお、以下の説明において、実施の形態1と共通する部分については、同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0034】
[目標存在尤度算出装置の構成]
図6は、本実施の形態2に係る目標存在尤度算出装置20の構成の一例を示すブロック図である。
図6に示すように、目標存在尤度算出装置20は、尤度算出部としての音線計算器21および目標存在尤度算出器22と、入力部としての入力端子1a、1bおよび1fと、出力部としての出力端子2bを備えている。
【0035】
入力端子1aには、実施の形態1と同様に環境情報が入力される。入力端子1bには、実施の形態1と同様に自艦情報が入力される。入力端子1fには、目標物から放射される信号の到来ふ仰角が入力される。
【0036】
音線計算器21は、入力側に入力端子1a、1bおよび1cが接続され、出力側に目標存在尤度算出器22が接続されている。音線計算器21は、入力端子1aに入力された環境情報と、入力端子1bに入力された自艦情報と、入力端子1fに入力された到来ふ仰角とに基づき音線計算処理を行う。そして、音線計算器21は、音線計算処理によって得られた音線に基づき、距離に対する音線深度を算出する。音線計算器21は、算出した音線深度を目標存在尤度算出器22に対して出力する。
【0037】
目標存在尤度算出器22は、入力側に音線計算器21が接続され、出力側に出力端子2bが接続されている。目標存在尤度算出器22は、音線計算器21から入力された音線深度に基づき、目標存在尤度の距離特性を算出する。目標存在尤度算出器22は、算出した目標存在尤度を出力端子2bから出力する。
【0038】
出力端子2bから出力された目標存在尤度は、例えば出力部の一部として設けられた図示しない表示部において、グラフまたはマップ等によって視覚的に表示される。なお、目標存在尤度の表示は、この例に限られず、例えば、目標存在尤度算出装置100が搭載されたソーナー装置に設けられた表示部等で行ってもよい。
【0039】
[目標存在尤度の算出方法]
次に、本実施の形態2に係る目標存在尤度算出装置20において、目標存在尤度を算出する方法について説明する。目標存在尤度算出装置20に対して、環境情報、自艦情報、目標物からの到来ふ仰角が入力されると、目標存在尤度算出装置20は、入力された情報を用いて、目標存在尤度を算出する。
【0040】
(音線深度の算出)
まず、目標存在尤度算出装置20は、音線計算器21により、音線深度を算出する。音線計算器21は、入力端子1aに入力された環境情報と、入力端子1bに入力された自艦情報と、入力端子1fに入力された到来ふ仰角とを用いて音線計算処理を行う。そして、音線計算器21は、音線計算処理により、ふ仰角「φ−σ
Φ」、「φ」および「φ+σ
Φ」に対する3本の音線を計算する。そして、音線計算器21は、算出した3本の音線における、各距離rに対する音線深度z(φ−σ
Φ,r)、z(φ,r)およびz(φ+σ
Φ,r)を算出する。ここで、「σ
Φ」は、ふ角の測定精度に依存する信号の到来ふ角の標準偏差である。
【0041】
(目標存在尤度の算出)
次に、目標存在尤度算出装置20は、目標存在尤度算出器22により、目標存在尤度の距離特性を算出する。音線計算器21から入力された音線深度z(φ−σ
Φ,r)、z(φ,r)およびz(φ+σ
Φ,r)に基づき、式(4)を用いて目標存在尤度の距離特性p
EL(r|φ)を算出する。式(4)において、「z
t」は目標深度である。また、関数fは、実施の形態1における式(3)に示すものと同様である。さらに、式(4)における「σ
z」は、例えば式(5)を用いて算出することができる。
【0044】
なお、標準偏差σ
zは、式(5)以外の式を用いて算出してもよい。例えば、平均が0、標準偏差σ
φで乱数ΔφをN個だけ発生させ、それぞれに対して音線深度z(φ+Δφ,r)を算出し、音線深度z(φ+Δφ,r)の標準偏差を算出してもよい。
【0045】
図7は、
図6の目標存在尤度算出器22によって算出された目標存在尤度の一例を示す概略図である。
図7において、横軸は自艦から目標物までの距離rを示し、縦軸は目標存在尤度p
EL(r|φ)を示す。上述のようにして目標存在尤度を算出することにより、
図7に示すように、自艦から目標物までの距離rに応じた目標存在尤度p
EL(r|RL)が算出される。そして、本実施の形態2では、このようにして得られた目標存在尤度p
EL(r|RL)の値が最も高い位置となる自艦からの距離の位置に、目標物が存在すると判断することができる。
【0046】
なお、目標存在尤度算出器22では、複数の目標深度z
t_n(n=1,2,・・・,n)に対して式(4)を用いた計算を実施することができる。複数の目標深度z
t_nに対応する複数の目標存在尤度を算出し、算出された複数の目標存在尤度をカラーマップで表示することにより、自艦から目標物までの距離方向だけでなく、目標物の深度方向の目標存在尤度の変化を把握することができる。
【0047】
図8は、
図6の目標存在尤度算出器22において、複数の目標深度に対して目標存在尤度を算出した場合の算出結果の一例を示す概略図である。
図8において、横軸は自艦から目標物までの距離rを示し、縦軸は目標物の深度z
tを示す。目標存在尤度p
EL(r|RL)は、カラーマップ上の色の状態によって示されている。そして、本実施の形態2では、このようにして得られた目標存在尤度p
EL(r|RL)の値が最も高い位置となる自艦からの距離および深度の位置に、目標物が存在すると判断することができる。
【0048】
以上のように、本実施の形態2によれば、目標物から受信した信号に関する情報としての目標物から放射される信号の到来ふ仰角を用いて、目標存在尤度が算出されるため、自艦から目標物までの距離を迅速に判断することができる。また、複数の目標深度における目標存在尤度を算出することにより、自艦から目標物までの距離方向および深度方向を把握することができる。そのため、目標物が存在する自艦からの位置をより正確に推定することができる。
【0049】
実施の形態3.
次に、本発明の実施の形態3について説明する。本実施の形態3は、実施の形態1に係る目標存在尤度算出装置10と、実施の形態2に係る目標存在尤度算出装置20とを組み合わせたものである。なお、以下の説明において、実施の形態1および2と共通する部分については、同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0050】
[目標存在尤度算出装置の構成]
図9は、本実施の形態3に係る目標存在尤度算出装置100の構成の一例を示すブロック図である。
図9に示すように、目標存在尤度算出装置100は、実施の形態1に係る目標存在尤度算出装置10と、実施の形態2に係る目標存在尤度算出装置20と、積算器30とで構成されている。
【0051】
目標存在尤度算出装置10は、入力端子1a〜1eおよび出力端子2aを備えている。目標存在尤度算出装置10は、実施の形態1と同様に、入力端子1aに入力された環境情報と、入力端子1bに入力された自艦情報と、入力端子1cに入力された目標情報と、入力端子1dに入力された目標物からの実測受信レベルと、入力端子1eに入力された目標物からの信号の周波数情報とに基づき、第1の在尤度の距離特性を算出する。目標存在尤度算出装置10は、算出した第1の目標存在尤度を、出力端子2bを介して積算器30に出力する。
【0052】
目標存在尤度算出装置20は、入力端子1a、1bおよび1f、ならびに出力端子2bを備えている。目標存在尤度算出装置20は、実施の形態2と同様に、入力端子1aに入力された環境情報と、入力端子1bに入力された自艦情報と、入力端子1fに入力された到来ふ仰角とに基づき、第2の目標存在尤度の距離特性を算出する。目標存在尤度算出装置20は、算出した第2の目標存在尤度を、出力端子2bを介して積算器30に出力する。
【0053】
積算器30は、入力側に入力端子1gおよび1hを備え、出力側に出力端子2cを備えている。入力端子1gには、目標存在尤度算出装置10が接続され、目標存在尤度算出装置10から出力される第1の目標存在尤度が入力される。また、入力端子1hには、目標存在尤度算出装置20が接続され、目標存在尤度算出装置20から出力される第2の目標存在尤度が入力される。
【0054】
積算器30は、入力された第1の目標存在尤度および第2の目標存在尤度を積算する積算処理を行い、第3の目標存在尤度の距離特性を算出する。積算器30は、算出した第3の目標存在尤度を出力端子2cから出力する。
【0055】
[目標存在尤度の算出方法]
次に、本実施の形態3に係る目標存在尤度算出装置100おける目標存在尤度の算出方法について説明する。本実施の形態3では、目標存在尤度算出装置10において、実施の形態1で説明したようにして第1の目標存在尤度を算出する。また、目標存在尤度算出装置20において、実施の形態2で説明したようにして第2の目標存在尤度を算出する。そして、積算器30において、第1の目標存在尤度と第2の目標存在尤度とを積算する積算処理を行い、第3の目標存在尤度の距離特性を算出する。
【0056】
図10は、
図9の積算器30で行われる積算処理について説明するための概略図である。
図10に示すように、積算器30は、第1の目標存在尤度p
RL(r|RL)と第2の目標存在尤度p
EL(r|RL)とを積算し、第3の目標存在尤度の距離特性(以下、「第3の目標存在尤度」と適宜称する)p(r)を算出する。第1の目標存在尤度p
RL(r|RL)と第2の目標存在尤度p
EL(r|RL)との積算は、式(6)に基づき行われる。
【0058】
このように、第1の目標存在尤度p
RL(r|RL)と第2の目標存在尤度p
EL(r|RL)とを積算することにより、積算値である第3の目標存在尤度p(r)は、2つの目標存在尤度のうちいずれかの尤度が低い距離範囲の尤度が低減されることになる。そして、第3の目標存在尤度p(r)は、両者の尤度の高い距離範囲に絞られたものとなる。そして、本実施の形態3では、このようにして得られた目標存在尤度p(r)の値が最も高い位置となる自艦からの距離および深度の位置に、目標物が存在すると判断することができる。
【0059】
以上のように、本実施の形態3では、実施の形態1で説明したようにして算出した目標存在尤度と、実施の形態2で説明したようにして算出した目標存在尤度とを積算するため、いずれかの目標存在尤度において尤度が低い距離範囲の尤度が低減される。そのため、目標の存在範囲の曖昧さを低減させた目標存在尤度を取得することができる。
【0060】
以上、実施の形態1〜3について説明したが、本発明は、上述した実施の形態1〜3に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で様々な変形や応用が可能である。
【0061】
例えば、実施の形態3において、目標存在尤度算出装置10がI個の周波数f
1、f
2、・・・、f
Iに対応する予測受信レベルRL
1、RL
2、・・・、RL
Iに対して第1の目標存在尤度p
RL(r|RL)を取得し、目標存在尤度算出装置20がJ個の到来ふ仰角φ
1、φ
2、・・・、φ
Jに対して第2の目標存在尤度p
EL(r|RL)を取得した場合について考える。この場合には、例えば、式(7)を用いて、すべての第1の目標存在尤度p
RL(r|RL)および第2の目標存在尤度p
EL(r|RL)を積算し、最終的な目標存在尤度p(r)を算出してもよい。