(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
圧縮機、凝縮器、膨張機構および蒸発器を環状に接続し、前記蒸発器で外部熱源から熱を回収し前記凝縮器で被加熱媒体を加熱するヒートポンプ部と、前記ヒートポンプ部の運転を制御する制御部と、前記制御部を構成する電装部品を収納した電装ボックスと、前記ヒートポンプ部および前記電装ボックスを内部に収容する筐体と、を備えたヒートポンプ装置であって、
前記電装ボックス内の温度を測定する電装ボックス温度測定手段を備え、
前記制御部は、通常運転モード時に前記電装ボックス内の温度が第1設定温度以上の場合、前記圧縮機を低出力運転モードで制御することを備え、
前記筐体内の温度を測定する筐体温度測定手段をさらに備え、
前記制御部は、前記低出力運転モード時に前記筐体内の温度が第2設定温度未満の場合、前記圧縮機を通常運転モードで制御することを特徴とするヒートポンプ装置。
前記制御部は、前記筐体内の温度が前記第2設定温度よりも高い筐体側停止温度以上の場合、前記圧縮機を停止させることを特徴とする請求項1または2に記載のヒートポンプ装置。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明に係るヒートポンプ装置について好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係るヒートポンプ装置12の外観構造を示す斜視図であり、
図1(A)は、正面側から見た図であり、
図1(B)は、背面側から見た図である。ヒートポンプ装置12は、工場排水等の温水から回収した排熱を利用して水蒸気を生成するシステムであり、生成した水蒸気は乾燥装置や殺菌装置等の外部の蒸気利用設備に送られる。
【0009】
まず、ヒートポンプ装置12の回路構造の構成例について説明する。
図2に示すように、ヒートポンプ装置12は、温水供給部16によって供給される温水(熱源温水)から熱を回収するヒートポンプサイクル18と、ヒートポンプサイクル18で回収した熱で水を蒸発させて水蒸気を生成し、外部へと送り出す蒸気生成部20とからなるヒートポンプ部22と、システムの制御を行う制御部30とを備える。
ヒートポンプ部サイクル18は、冷媒を圧縮する圧縮機31と、圧縮機31で圧縮された冷媒を凝縮させる凝縮器32と、凝縮器32を出た冷媒を減圧する膨張機構34と、温水から熱を回収して冷媒を蒸発させる蒸発器36とを冷媒配管37を用いて環状に接続し、冷媒を循環させる。本実施形態では、凝縮器32の出口側と膨張機構34の入口側との間に給水を予備加熱する加熱器38を接続している。膨張機構34は、例えば電子膨張弁であり、制御部30の制御下に開度を調整可能である。
圧縮機31で圧縮されて高温高圧となった冷媒は、凝縮器32で蒸気生成部20を循環する水と熱交換して冷却され凝縮する。凝縮器32を出た冷媒は、加熱器38で給水管(給水経路)40aを流れる水を予熱してさらに冷却された後、膨張機構34で断熱膨張され、蒸発器36で温水供給部16を流れる温水から吸熱して蒸発して圧縮機32に戻る。
圧縮機31は、制御部30の制御下に、その吸入側や吐出側の冷媒の圧力及び温度に基づきインバータを介してその運転回転数が制御される。
【0010】
蒸気生成部20は、ヒートポンプサイクル18を循環する冷媒を熱源として水を蒸発させて蒸気を生成する凝縮器32と、凝縮器32で生成される水蒸気と水を含む気液二相流を蒸気と水とに分離する水蒸気分離器41と、水蒸気分離器41で分離された水を給水管40aから供給される被加熱水と合流させて凝縮器32に導入する循環管40bと、凝縮器32からの気液二相流を水蒸気分離器41へと導く蒸気管40cと、水蒸気分離器41で分離された蒸気を外部の蒸気利用設備へと送り出す送出管40dとを有する。
水蒸気分離器41は、鉛直方向に沿った円筒状容器で構成され、下端壁に接続された循環管40bに接続された給水管40aから水が給水補給されることで容器内部に水を貯留する。給水管40aは、図示しない水道管や水タンクからの水(被加熱水)を給水ポンプ47によって循環管40bまで導入する。給水ポンプ47は制御部30によって運転制御される。循環管40bは、水蒸気分離器41の下端壁から凝縮器32までを連通する経路である。蒸気管40cは、凝縮器32から水蒸気分離器41の上部側壁までを連通し、気液二相流が流通する経路である。
【0011】
送出管40dは、水蒸気分離器41の上端壁に接続され、蒸気管40cから当該水蒸気分離器41内に供給され、ここで水が分離された後の蒸気を外部に送り出す経路である。送出管40dには、制御部30の制御下にその開度が適宜調整されることにより、当該ヒートポンプ装置12から外部に送り出される蒸気の流量や圧力を制御する蒸気調整弁48が設けられている。
【0012】
蒸気生成部20では、水蒸気分離器41の水面と凝縮器32の水面との高低差により、水蒸気分離器41から凝縮器32へと循環管40bを介して水が供給されると共に、凝縮器32で生成された水蒸気が蒸気管40cから水蒸気分離器41を介して送出管40dへと送り出されるサーモサイフォン回路が形成される。その結果、循環管40b、蒸気管40c及び水蒸気分離器41で形成される水循環系統内に循環ポンプ等の動力源を設けることなく、水を循環させることができる。以下では、水が液相から気相に相変化しつつ流通する給水管40a、循環管40b、蒸気管40c及び送出管40dについて、まとめて水配管40と呼ぶこともある。
【0013】
温水供給部16は、蒸発器36に温水を供給する温水供給経路16aと、蒸発器36から温水を排出する温水排出経路16bとを有する。温水供給経路16aには、外部の温水タンク等の温水供給源から供給される温水を所定の流量で送水する図示しない温水ポンプが設けられる。
【0014】
本実施形態に係るヒートポンプ装置12では、このような蒸気生成部20、温水供給部16及びヒートポンプサイクル18を構成する各要素を筐体14の内部に収容している(
図1参照)。
【0015】
そこで、次に、筐体14の内部構造について
図3を用いて説明する。
図3は、
図1に示す筐体14の内部構造を模式的に示す側面断面図である。
図1(A)、
図1(B)、
図3に示すように、筐体14は、脚部49を介して地面や床面上に設置される箱状構造であり、正面に設けられた開口を扉50によって開閉可能である一方、正面以外の5面(上面、底面、背面、左右側面)がパネル52によって閉塞されている。筐体14の内部には、温水供給部16とヒートポンプ部22を構成する各機器や配管等が収容されている。
【0016】
図3に示すように、ヒートポンプ部22では、圧縮機31およびその駆動用のモータ31mが筐体14の底面上で正面側(扉50側)に沿って左右に並んで配置され、凝縮器32が筐体14の底面上で圧縮機31の背面側に配置されている。一方、蒸発器36および加熱器38は筐体14の天面と床面との間となる高さ位置に梁材等を用いて並んで配設されている。さらに、このように配置されたヒートポンプ部22の各機器を接続する冷媒配管37(図示省略)は、その大部分が筐体14内で天面と床面との間となる高さ位置に配設されている。本実施形態では、別体のモータ31mからの動力がベルトを介して伝達される開放型構造の圧縮機31を用いているが、モータ31mを一体に組み込んだ密閉型構造の圧縮機を用いてもよい。
【0017】
また、蒸気生成部20では、給水ポンプ47が筐体14の底面上でモータ31mの背面側に配置されている。一方、水蒸気分離器41は筐体14の天面と床面との間となる高さ位置に梁材等を用いて配設され、凝縮器32の上方に位置している。また、このように配置された蒸気生成部20の各機器を接続する水配管40(40a〜40d、40bおよび40cは図示省略)は、その大部分が筐体14内で天面と床面との間となる高さ位置に配設されている。
【0018】
図示はしていないが、温水供給部16の温水供給経路16aおよび温水排出経路16bも筐体14外から筐体14内へと配設され、筐体14内の高位置に設置された蒸発器36に接続されている。なお、本実施形態では、水蒸気分離器41、蒸発器36、凝縮器32、水配管40および冷媒配管37を適宜断熱材で覆っており、温水供給経路16aおよび温水排出経路16bについても同様に断熱材で覆っている。
図1および
図3に示すように、このような筐体14の正面壁となる扉50には、操作者が当該ヒートポンプ装置12の制御部30に対する各種設定や運転指令等を行う際に操作する操作盤54が設けられている。また、扉50の内面には、制御部30を構成する電装部品55を収納した電装ボックス56が取り付けられている。すなわち、電装ボックス56は筐体14の内部に設置されているが、電装部品55は電装ボックス56の壁面によってヒートポンプ部22を構成する機器と隔てられている。
【0019】
図1および
図3に示すように、筐体14では、その正面壁となる扉50の略中央に外部の空気を吸入するボックス吸気口58が設けられ、筐体14の背面壁となるパネル52の下部に外部の空気を吸入する筐体吸気口59が設けられ、筐体14の背面壁となるパネル52の上部に外部へと空気を排出する筐体排気口60が設けられている。なお、筐体吸気口59および筐体排気口60は筐体14の背面壁に設けられているが、側面壁のパネル52に設けてもよい。
【0020】
筐体吸気口59の近傍には、該筐体吸気口59から外気を吸入するための筐体吸気ファン62が設けられている。筐体排気口60の近傍には、該筐体排気口60から外気を排出するための筐体排気ファン63が設けられている。筐体排気ファン63は1つの筐体排気口60に対して左右一対設けられている。筐体排気口60の外面側には庇部材61が設けられており、筐体排気口60から筐体14内への雨水等の浸入を防止している。
【0021】
ボックス吸気口58は、扉50の略中央やや下寄りの位置に設けられている。ボックス吸気口58は、扉50の内面と電装ボックス56との間に形成された空隙であるダクト領域Dを介して電装ボックス56内へと外気を取り入れる吸気口である。電装ボックス56の背面上部には筐体14内に開口するボックス排気口64が設けられている。ボックス排気口64の近傍には、ボックス吸気口58からダクト領域Dおよび電装ボックス56内へと外気を吸入し、該ボックス排気口64から筐体14内へと排出するボックスファン65およびボックス吸気口58を通過する空気の温度を測定するボックス温度センサ57aが設けられている。ボックス排気口64およびボックスファン65は電装ボックス56上部で左右一対設けられており、電装ボックス56内へと外気を供給するボックス吸気口58より上部に配置されている。なお、ボックス排気口64は電装ボックス56の背面に設けられているが、側面に設けてもよい。
【0022】
このようなヒートポンプ装置12では、その運転時に筐体吸気ファン62、ボックスファン65および筐体排気ファン63が駆動される。これにより、
図3に示すように、筐体吸気ファン62によって筐体吸気口59から筐体14内に吸入された空気は、給水ポンプ47、モータ31mおよび圧縮機31の一部を冷却しつつ、電装ボックス56の背面壁56bに沿って筐体14内を上昇する。また、ボックスファン65によってボックス吸気口58から吸入される空気は、ダクト領域Dに流入する。このダクト領域Dに流入した空気はダクト領域Dを上昇しつつ、一部が電装ボックス56の正面壁56aに形成された図示しない開口部から電装ボックス56内へと流入し、電装部品55を冷却し、ボックス排気口64から筐体14内へと排出される。そして、筐体14内を上昇する空気と、電装ボックス56内を冷却した空気とは、筐体14の上部で合流し、筐体排気口60から筐体14外へと排出される。
【0023】
次に、本発明の第1の実施形態に係るヒートポンプ装置12について、
図4のフローチャートを用いて説明する。本フローチャートでは1サイクルのみを記載しているが、実際の制御上では、ヒートポンプ装置12が運転している間、このサイクルが繰り返し実行される。
【0024】
ヒートポンプ装置12の運転時、ボックス温度センサ57aで検出されたボックス温度Taがボックス側停止温度Ts1以上(S101、NO)の場合、制御部30は重故障と判断し、圧縮機31を停止させヒートポンプ装置12を停止させる(S109)。ボックス温度Taがボックス側停止温度Ts1未満(S101、YES)の場合、引き続き運転モードの判定を行う(S102)。
【0025】
ヒートポンプ装置12が通常運転モード時(S102、YES)は、引き続きボックス温度Taが第1設定温度Tc1以上であるか否かを判定する(S103)。ボックス温度Taが第1設定温度Tc1以上(S103、YES)の場合、制御部30は電装ボックス内温度上昇と判断し、圧縮機31の回転数を低下させる低出力運転モードに移行し(S107)、サイクルを終了する。ボックス温度Taが第1設定温度Tc1未満(S103、NO)の場合は、通常運転モードを維持したままサイクルを終了する。低出力運転モードでは、圧縮機の回転数はあらかじめ設定した通常運転時よりも低い固定値で運転させてもよく、ボックス温度Taに基づき、例えば温度が高くなるほど回転数を減少させるような制御としてもよい。なお、第1設定温度Tc1は、第1停止温度Ts1よりも低い値に設定される。
【0026】
ヒートポンプ装置12が通常運転モードではない時(S102、NO)、引き続きヒートポンプ装置12が低出力運転モードか否かを判定する(S111)。低出力運転モードではない場合(S111、NO)、つまり起動モード時や緊急制御モードなどを実行中の場合は、現状の運転モードを維持したままサイクルを終了する。低出力運転モード時(S111、YES)は、引き続きボックス温度Taが第1設定温度Tc1以上か否かを判定する(S112)。ボックス温度Taが第1設定温度Tc1未満(S112、NO)の場合、制御部30は正常復旧と判断し、通常運転モードに移行する(S113)。ボックス温度Taが第1設定温度Tc1以上(S112、YES)の場合、低出力運転モードを維持したままサイクルを終了する。
【0027】
このような構成とすることで、電装ボックス56の温度がある程度上昇しても、低出力運転モードを実行する温度帯を設けることで、圧縮機31の運転を停止することなく、運転を継続することができる。なお、低出力運転モード時に、給水ポンプ47の回転数を減少させる、蒸気調整弁48の開度を小さくする制御を併せて行ってもよく、給水ポンプ47を停止し、蒸気調整弁48を閉制御してもよい。このように、蒸気生成を一時的に抑制または停止するアイドリング運転を行うことで、ヒートポンプサイクル18を流通する冷媒量が低下した場合でも、ヒートポンプ装置12の運転を長時間継続させることが可能となる。
【0028】
続いて、本発明の第2の実施形態に係るヒートポンプ装置12について、
図5のフローチャートを用いて説明する。本フローチャートでは1サイクルのみを記載しているが、実際の制御上ではヒートポンプ装置12が運転している間、このサイクルが繰り返し実行される。第2の実施形態では、
図3におけるボックスファン65を2台備え、通常運転モード時には1台のみが運転される。また、
図3における筐体14内の筐体排気口60近傍に、該筐体排気口60を通過する空気の温度を測定する筐体温度センサ57bがさらに設けられている。
【0029】
ヒートポンプ装置12の運転時、ボックス温度センサ57aで検出されたボックス温度Taがボックス側停止温度Ts1以上(S201、NO)、または筐体温度センサ57bで検出された筐体温度Tbが筐体側停止温度Ts2以上(S202、NO)の場合、制御部30は重故障と判断し、圧縮機31を停止させヒートポンプ装置12を停止させる(S211)。ボックス温度センサ57aで検出されたボックス温度Taがボックス側停止温度Ts1未満(S201、YES)、かつ筐体温度センサ57bで検出された筐体温度Tbが筐体側停止温度Ts2未満(S202、NO)の場合、引き続き運転モードの判定を行う(S203)。
【0030】
ヒートポンプ装置12が通常運転モード時(S203、YES)は、引き続きボックス温度Taが第1設定温度Tc1以上であるか否かを判定する(S204)。ボックス温度Taが第1設定温度Tc1以上(S204、YES)の場合、制御部30は電装ボックス内温度上昇と判断し、停止状態となっている方のボックスファン65を運転して電装ボックス56内に流通する外気量を増加させ(S205)、さらに筐体温度Tbが第2設定温度Tc2以上か否かを判定する(S206)。筐体温度Tbが第2設定温度Tc2以上の場合(S206、NO)、圧縮機31の回転数を低下させる低出力運転モードに移行し(S208)、サイクルを終了する。筐体温度Tbが第2設定温度Tc2未満(S206、YES)の場合は、ボックスファン65の運転台数が増加してからの経過時間Saがあらかじめ設定した所定時間Sc以上かどうかを判定する(S207)。ボックスファン65の運転台数が増加してからの経過時間Saがあらかじめ設定した所定時間Sc未満の場合(S207、YES)は、通常運転モードを継続したままサイクルを終了させる。また、ボックスファン65の運転台数が増加してからの経過時間Saがあらかじめ設定した所定時間Sc以上の場合(S207、No)は、低出力運転モードに移行(S209)し、サイクルを終了させる。なお、低出力運転モードから通常運転モードに復旧した際に、経過時間Saはリセットされる。
【0031】
低出力運転モードでは、圧縮機の回転数はあらかじめ設定した通常運転時よりも低い固定値で運転させてもよく、ボックス温度Taや筐体温度Tbに基づき、例えば温度が高くなるほど回転数を減少させるような制御としてもよい。なお、第1設定温度Tc1は、第1停止温度Ts1よりも低い値に、第2設定温度Tc2は、第2停止温度Ts2よりも低い値に設定される。また、ヒートポンプ部22による発熱量が大きいため、ヒートポンプ装置12の運転中は、電装ボックス56内部よりも筐体14内部の方が高温となる。このため、第2設定温度Tc2は、第1設定温度Tc1よりも高い温度に設定される。
【0032】
ヒートポンプ装置12が通常運転モードではない時(S203、No)、引き続きヒートポンプ装置12が低出力運転モードか否かを判定する(S231)。低出力運転モードではない場合(S231、No)、つまり起動モード時や緊急制御モードなどを実行中の場合は、現状の運転モードを維持したままサイクルを終了する。低出力運転モード時(S231、YES)は、引き続きボックス温度Taが第1設定温度Tc1以上か否かを判定する(S232)。ボックス温度Taが第1設定温度Tc1未満(S232、NO)の場合、制御部30は正常復旧と判断し、通常運転モードに移行する(S235)。また、ボックス温度Taが第1設定温度Tc1以上(S232、YES)の場合、筐体温度Tbが第2設定温度Tc2未満か否かを判定する(S233)。筐体温度Tbが第2設定温度Tc2未満(S233、YES)の場合は、制御部30は仮復旧と判断し、ボックスファン65の運転台数を維持したまま、通常運転モードに移行し、圧縮機31の回転数を通常制御に戻す(S234)。筐体温度Tbが第2設定温度Tc2以上(S233、NO)の場合、低出力運転モードを維持したままサイクルを終了する。
【0033】
また、通常運転モードに移行した後に、ボックス温度Taが第1設定温度Tc1未満(S204、NO)の場合、制御部30は正常復旧と判断し、ボックスファン65の運転台数を通常の台数にリセットする(S210)。この際、低出力運転モードに移行した際に運転状態となったボックスファン65の運転を継続し、他のボックスファン65を停止状態としてもよい。このような運転とすることで、複数台のボックスファン65で負荷を平準化し、メンテナンス間隔を長くすることが可能となる。
【0034】
本実施形態では、異常を判断する温度と、復旧を判断する温度をともに同じ設定値としているが、制御のチャタリングを防止するためにヒステリシスを設けてもよい。具体的には、復旧判断時に使用する温度には第1設定温度Tc1および第2設定温度Tc2を用いず、第1設定温度Tc1よりも低く設定された第3設定温度Tc3および第2設定温度Tc2よりも低く設定された第4設定温度Tc4を用いてもよい。
次に、本発明の第3の実施形態に係るヒートポンプ装置12について、
図6のフローチャートを用いて説明する。本フローチャートでは1サイクルのみを記載しているが、実際の制御上ではヒートポンプ装置12が運転している間、このサイクルが繰り返し実行される。なお、第2の実施形態と同様の制御を行う制御ステップについては、同じ符号で表し、説明を省略する。
【0035】
ボックス温度Taが第1設定温度Tc1以上(S204、YES)の場合、制御部30はボックスファン65の運転台数を増加させて電装ボックス56内に流通する外気量を増加させ(S205)、さらに筐体温度Tbからボックス温度Taを引いた温度差ΔT(ΔT=Tb−Ta)を判定する(S221)。温度差ΔTがゼロ未満、つまりボックス温度Taの方が筐体温度Tbよりも高い場合(S221、NO)、さらにボックスファン65の運転台数が増加してからの経過時間Saを判定する(S224)。ボックスファン65の運転台数が増加してからの経過時間Saがあらかじめ設定した第1所定時間Sc1以上の場合(S224、YES)、制御部30は電装ボックス56内の発熱異常もしくは吸排気異常と判断し、圧縮機31を停止させヒートポンプ装置12を停止させる(S225)。温度差ΔTがゼロ以上(S221、YES)もしくはボックスファン65の運転台数が増加してからの経過時間Saが第1所定時間Sc1未満の場合(S224、NO)、温度差ΔTがあらかじめ設定された正の値である温度差設定値Td未満かどうかを判定する(S222)。温度差ΔTがあらかじめ設定された正の値である温度差設定値Td以上の場合、(S222、NO)、圧縮機31の回転数を低下させる低出力運転モードに移行する(S223)。温度差ΔTが温度差設定値Td未満(S207、YES)の場合、ボックスファン65の運転台数が増加してからの経過時間Saを判定する(S207)。ボックスファン65の運転台数が増加してからの経過時間Saがあらかじめ設定した第2所定時間Sc2以上の場合(S207、NO)、低出力運転モードに移行する(S209)。ボックスファン65の運転台数が増加してからの経過時間Saがあらかじめ設定した第2所定時間Sc2未満の場合(S207、YES)は、通常運転モードを継続したままサイクルを終了させる。
【0036】
ヒートポンプ装置12が通常運転モードではない時(S203、NO)、引き続きヒートポンプ装置12が低出力運転モードか否かを判定する(S231)。低出力運転モードではない場合(S231、NO)、つまり起動モード時や緊急制御モードなどを実行中の場合は、現状の運転モードを維持したままサイクルを終了する。低出力運転モード時(S231、YES)は、温度差ΔTを判定する(S241)。温度差ΔTがゼロ未満の場合(S241、NO)、引き続きボックスファン65の運転台数が増加してからの経過時間Saを判定する(S244)。ボックスファン65の運転台数が増加してからの経過時間Saがあらかじめ設定した第3所定時間Sc3以上の場合(S224、YES)、制御部30は電装ボックス56内の発熱異常もしくは吸排気異常と判断し、圧縮機31を停止させヒートポンプ装置12を停止させる(S245)。温度差ΔTがゼロ以上(S241、YES)もしくはボックスファン65の運転台数が増加してからの経過時間Saが第3所定時間Sc3未満の場合(S244、NO)、引き続きボックス温度Taが第1設定温度Tc1以上か否かを判定する(S232)。ボックス温度Taが第1設定温度Tc1未満(S232、NO)の場合、制御部30は正常復旧と判断し、通常運転モードに移行する(S235)。ボックス温度Taが第1設定温度Tc1未満(S232、NO)の場合、低出力運転モードを維持したままサイクルを終了する。また、ボックス温度Taが第1設定温度Tc1以上(S232、YES)の場合、温度差ΔTが温度差設定値Td未満か否かを判定する(S242)。温度差ΔTが温度差設定値Td未満(S242、YES)の場合は、制御部30は仮復旧と判断し、ボックスファン65の運転台数を維持したまま、通常運転モードに移行し、圧縮機31の回転数を通常制御に戻す(S243)。また、温度差ΔTが温度差設定値Td未満(S242、NO)の場合、低出力運転モードを継続したままサイクルを終了させる。なお、通常運転モードに移行した後に、ボックス温度Taが第1設定温度Tc1未満となる(S204、NO)と、制御部30は正常復旧と判断し、ボックスファン65の運転台数を通常の台数にリセットする(S210)。
【0037】
本発明の第3の実施形態に係るヒートポンプ装置12では、ボックス温度Taが第1設定温度Tc1以上となった際に、筐体温度Tbとボックス温度Taの温度差ΔTに基づいて圧縮機31の制御を行うため、温度上昇の原因が電装ボックス56側、ヒートポンプ部22のどちらにあるのかをより適切に判断し、圧縮機31に制御を行うことが可能となる。
【0038】
なお、本発明の第2の実施形態、第3の実施形態では、制御部は圧縮機31の回転数とボックスファン65の運転台数を別々に制御しているが、低出力運転モード時にボックスファン65の運転台数を増加させるような制御としてもよい。また、ボックスファン65の制御は行わず、圧縮機31のみの制御としてもよい。
上記各実施形態では、ボックスファン65を複数台備えた上での台数制御としているが、ボックスファン65が1台であっても同様の制御が可能である。すなわち、通常運転時はボックスファン65を停止状態とし、所定の条件を満たした場合のみにボックスファン65を運転するような制御としてもよい。また、ボックスファン65を3台以上備えるような構成とし、段階的にボックスファン65の運転台数を増減するような制御としてもよい。その場合、それぞれのボックスファン65に対して個別の設定温度としてもよい。また、ボックスファン65の運転台数ではなく、ボックスファン65の回転数を増減してもよい。これらのボックスファン制御については、他の実施形態に適用して組み合わせることも可能である。
【0039】
なお、
図7に示すように、筐体排気口60を筐体14の上面に設けてもよく、風向を上向きにする整流板66aをさらに設けてもよい。
【0040】
また、
図8に示すように、ボックス排気口64を電装ボックス56の上面に設けてもよく、風向を筐体排気口60側に向ける整流板66bをさらに設けてもよい。
【0041】
ボックス温度センサ57aは、電装部品55による熱の影響を精度よく測定するために、ボックス排気口54近傍に設けることが望ましいが、ボックス排気口54から排出される空気の温度を測定可能な位置に設けられていればよい。また、筐体温度センサ57bは筐体14内の上部領域、特に筐体排気口60近傍に設けることが望ましいが、筐体排気口60から排気される空気の温度を測定可能な位置に設けられていればよい。
【0042】
なお、本発明は、上記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で自由に変更可能である。