(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6880655
(24)【登録日】2021年5月10日
(45)【発行日】2021年6月2日
(54)【発明の名称】タイヤの加硫システムおよび加硫方法
(51)【国際特許分類】
B29C 33/04 20060101AFI20210524BHJP
B29C 35/04 20060101ALI20210524BHJP
B29L 30/00 20060101ALN20210524BHJP
【FI】
B29C33/04
B29C35/04
B29L30:00
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-213227(P2016-213227)
(22)【出願日】2016年10月31日
(65)【公開番号】特開2018-69609(P2018-69609A)
(43)【公開日】2018年5月10日
【審査請求日】2019年10月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【弁理士】
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【弁理士】
【氏名又は名称】境澤 正夫
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 陽介
【審査官】
▲高▼村 憲司
(56)【参考文献】
【文献】
特開平07−195370(JP,A)
【文献】
国際公開第2015/068531(WO,A1)
【文献】
特開昭62−103110(JP,A)
【文献】
特開昭62−211109(JP,A)
【文献】
特開平02−223409(JP,A)
【文献】
特開2003−053740(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 33/04
B29C 35/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下の熱板とこの上下の熱板の間に配置された状態になる側面部とを有して、モールドが内部に設置される加硫用コンテナと、前記上下の熱板に接続されている熱板用供給ラインと、前記側面部に接続されている側面部用供給ラインと、前記熱板用供給ラインに設置されている熱板用調整弁と、前記側面部用供給ラインに設置されている側面部用調整弁とを有するタイヤの加硫システムにおいて、
前記熱板用調整弁と前記側面部用調整弁とが互いに独立した個別の調整弁であり、前記熱板用供給ラインと前記側面部用供給ラインとが互いに独立した個別の供給ラインであり、それぞれの前記供給ラインが接続されている同じ1系統の熱源ラインと、前記熱板用供給ラインと前記側面部用供給ラインの少なくとも一方に設置されている開閉弁とを有し、前記開閉弁が設置されている前記供給ラインが、前記開閉弁により全開または全閉の状態になっていて、前記開閉弁の作動により即座にその供給ラインだけに対して全開と全閉の切換えが行われる構成にして、前記開閉弁の作動と、前記熱板調整弁および前記側面部用調整弁による熱媒体の流量調整とにより、前記熱源ラインから供給された熱媒体が、前記熱板供給ラインを通じて前記上下の熱板に流通され、かつ、前記側面部用供給ラインを通じて前記側面部に流通されて、前記上下の熱板と前記側面部とが互いに独立に温度コントロールされる構成にしたことを特徴とするタイヤの加硫システム。
【請求項2】
前記調整弁が前記熱板用供給ラインと前記側面部用供給ラインとのそれぞれに設置されている請求項1に記載のタイヤの加硫システム。
【請求項3】
前記上下の熱板を流通した直後の前記熱媒体の温度を検知する熱板用温度センサと、前記側面部を流通した直後の前記熱媒体の温度を検知する側面部用温度センサと、前記熱板用温度センサおよび前記側面部用温度センサにより検知温度が入力される制御部とを有し、熱板用温度センサによる検知温度と予め設定されている熱板目標温度との比較に基づいて、前記制御部により前記熱板用供給ラインを流通する前記熱媒体の流量が制御され、前記側面部用温度センサによる検知温度と予め設定されている側面部目標温度との比較に基づいて、前記制御部により前記側面部用供給ラインを流通する前記熱媒体の流量が制御される構成にした請求項1または2に記載のタイヤの加硫システム。
【請求項4】
前記熱板目標温度と前記側面部目標温度との差が15℃以上に設定されている請求項3に記載のタイヤの加硫システム。
【請求項5】
加硫用コンテナを構成する上下の熱板に接続される熱板用供給ラインに熱板用調整弁を設けて、この熱板用調整弁を経て前記熱板用供給ラインを通じて前記上下の熱板に熱媒体を流通させて加熱し、前記加硫用コンテナを構成して前記上下の熱板の間に配置された状態になる側面部に接続される側面部用供給ラインに側面部用調整弁を設けて、この側面部用調整弁を経て前記側面部用供給ラインを通じて前記側面部に熱媒体を流通させて加熱して、前記加硫用コンテナの内部に設置されたタイヤモールドによってグリーンタイヤを加硫するタイヤの加硫方法において、
前記熱板用調整弁と前記側面部用調整弁とが互いに独立した個別の調整弁であり、互いに独立した個別の供給ラインである前記熱板用供給ラインと前記側面部用供給ラインとを同じ1系統の熱源ラインに接続し、前記熱板用供給ラインと前記側面部用供給ラインの少なくとも一方に開閉弁を設置して、前記開閉弁を設置した前記供給ラインを、前記開閉弁により全開または全閉の状態にし、前記開閉弁の作動により即座にその供給ラインだけに対して全開と全閉の切換えが行われる構成にして、前記開閉弁を作動させるとともに、前記熱板用調整弁および前記側面部用調整弁により前記熱媒体の流量を調整することにより、前記熱源ラインから供給された熱媒体を、前記熱板供給ラインを通じて前記上下の熱板に流通させ、かつ、前記側面部用供給ラインを通じて前記側面部に流通させて、前記上下の熱板と前記側面部とを互いに独立に温度コントロールすることを特徴とするタイヤの加硫方法。
【請求項6】
前記調整弁を前記熱板用供給ラインと前記側面部用供給ラインとのそれぞれに設置する請求項5に記載のタイヤの加硫方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤの加硫システムおよび加硫方法に関し、さらに詳しくは、簡素な構成でありながら、加硫用コンテナを構成する上下の熱板と側面部とに対して異なる温度コントロールを行いつつタイヤを加硫することができるタイヤの加硫システムおよび加硫方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
タイヤを製造する際には、グリーンタイヤを内部に配置したタイヤモールドを型閉めした状態にして、グリーンタイヤの内側で加硫ブラダを膨張させる。グリーンタイヤの内面は膨張した加硫ブラダにより加熱され、グリーンタイヤの外面はタイヤモールドにより加熱される。これらの加熱に要する熱は、例えば、供給ラインを通じて供給されたスチームによって付与される(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
タイヤモールドが内部に設置される加硫用コンテナは、上下の熱板と、この上下の熱板の間に配置される側面部とを有していて、それぞれにスチームを供給するラインが接続される。タイヤによっては、グリーンタイヤのトレッド部とタイヤサイド部とを異なる温度に設定して加硫する場合がある。例えば、タイヤの側面部分を相対的に高温で加熱する場合には、上下の熱板に相対的に高圧のスチームを供給するとともに、加硫用コンテナの側面部に相対的に低圧のスチームを供給する。即ち、上下の熱板に接続される供給ラインには相対的に高圧のスチームを供給する熱源ラインを接続し、側面部に接続される供給ラインには相対的に低圧のスチームを供給する熱源ラインを接続する必要がある。そのため、圧力の異なるスチームを供給する複数の別々の熱源ラインが必要になって設備が複雑化する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭62−211109号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、簡素な構成でありながら、加硫用コンテナを構成する上下の熱板と側面部とに対して異なる温度コントロールを行いつつタイヤを加硫することができるタイヤの加硫システムおよび加硫方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため本発明のタイヤの加硫システムは、上下の熱板とこの上下の熱板の間に配置された状態になる側面部とを有して、モールドが内部に設置される加硫用コンテナと、前記上下の熱板に接続されている熱板用供給ラインと、前記側面部に接続されている側面部用供給ラインと、前記熱板用供給ラインに設置されている熱板用調整弁と、前記側面部用供給ラインに設置されている側面部用調整弁とを有するタイヤの加硫システムにおいて、前記熱板用調整弁と前記側面部用調整弁とが互いに独立した個別の調整弁であり、前記熱板用供給ラインと前記側面部用供給ラインとが互いに独立した個別の供給ラインであり、それぞれの前記供給ラインが接続されている同じ1系統の熱源ラインと、前記熱板用供給ラインと前記側面部用供給ラインの少なくとも一方に設置されている開閉弁とを有し、前記開閉弁が設置されている前記供給ラインが、前記開閉弁により全開または全閉の状態になっていて、前記開閉弁の作動により即座にその供給ラインだけに対して全開と全閉の切換えが行われる構成にして、前記開閉弁の作動と、前記熱板調整弁および前記側面部用調整弁による
熱媒体の流量調整とにより、前記熱源ラインから供給された熱媒体が、前記熱板供給ラインを通じて前記上下の熱板に流通され、かつ、前記側面部用供給ラインを通じて前記側面部に流通されて、前記上下の熱板と前記側面部とが互いに独立に温度コントロールされる構成にしたことを特徴とする。
【0007】
上記目的を達成するため本発明のタイヤの加硫方法は、加硫用コンテナを構成する上下の熱板に接続される熱板用供給ラインに熱板用調整弁を設けて、この熱板用調整弁を経て前記熱板用供給ラインを通じて前記上下の熱板に熱媒体を流通させて加熱し、前記加硫用コンテナを構成して前記上下の熱板の間に配置された状態になる側面部に接続される側面部用供給ラインに側面部用調整弁を設けて、この側面部用調整弁を経て前記側面部用供給ラインを通じて前記側面部に熱媒体を流通させて加熱して、前記加硫用コンテナの内部に設置されたタイヤモールドによってグリーンタイヤを加硫するタイヤの加硫方法において、
前記熱板用調整弁と前記側面部用調整弁とが互いに独立した個別の調整弁であり、互いに独立した個別の供給ラインである前記熱板用供給ラインと前記側面部用供給ラインとを同じ1系統の熱源ラインに接続し、前記熱板用供給ラインと前記側面部用供給ラインの少なくとも一方に開閉弁を設置して、前記開閉弁を設置した前記供給ラインを、前記開閉弁により全開または全閉の状態にし、前記開閉弁の作動により即座にその供給ライン
だけに対して全開と全閉の切換えが行われる構成にして、前記開閉弁を作動させるとともに、前記熱板用調整弁および前記側面部用調整弁により前記熱媒体の流量を調整することにより、前記熱源ラインから供給された熱媒体を、前記熱板供給ラインを通じて前記上下の熱板に流通させ、かつ、前記側面部用供給ラインを通じて前記側面部に流通させて、前記上下の熱板と前記側面部とを互いに独立に温度コントロールすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、前記熱板用供給ラインと前記側面部用供給ラインの少なくとも一方に前記開閉弁を設置することで、前記開閉弁を設置した前記供給ラインは前記開閉弁によって全開または全閉の状態になって、前記開閉弁の作動により即座にその供給ラインの全開と全閉の切換えが行える。そのため、前記開閉弁が設置された供給ラインでは、その供給ラインに設置された前記調整弁による前記熱媒体の流量調整と、前記開閉弁の作動とによって、その供給ラインを流通させる前記熱媒体の流量を精度よく調整することができ、これに伴い、前記熱媒体の温度を精度よくコントロールできる。これにより、前記熱板用供給ラインと前記側面部用供給ラインとに前記熱媒体を供給する熱源ラインが1系統だけの簡素な構成であっても、前記熱板用供給ラインを通じて前記上下の熱板に熱媒体を流通させて加熱し、前記側面部用供給ラインを通じて前記側面部に熱媒体を流通させて加熱することで、前記上下の熱板と前記側面部とに対して異なる温度コントロールを行いつつタイヤを加硫することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明のタイヤの加硫システムの概要を例示する説明図である。
【
図2】
図1の加硫用コンテナの内部を縦断面視で例示する説明図である。
【
図3】
図1のセクタ、セグメントおよびコンテナリングを平面視で例示する説明図である。
【
図4】本発明のタイヤの加硫システムの別の実施形態の概要を例示する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明のタイヤの加硫システムおよび加硫方法を図に示した実施形態に基づいて説明する。
【0011】
図1に例示する本発明のタイヤの加硫システム1は、加硫用コンテナ9と、加硫用コンテナ9に熱媒体S(S1、S2)を供給する配管類とで構成されている。加硫コンテナ9は、上下の熱板11a、11bと、上下の熱板11a、11bの上下間に配置された状態になるコンテナリング10と複数のセグメント12とを有している。コンテナリング10が加硫用コンテナ9の側面部に該当する。
【0012】
加硫システム1を構成する配管類は、1系統の熱源ライン2と熱板用供給ライン3aと側面部用供給ライン3bとを有している。熱源ライン2は熱媒体Sとして、スチーム(飽和水蒸気)等を供給源から供給する。
【0013】
これら供給ライン3a、3bの一端部はそれぞれ、熱源ライン2に接続されている。熱板用供給ライン3aは、上下の熱板11a、11bに接続されている。側面部用供給ライン3bは、コンテナリング10に接続されている。
【0014】
熱板用供給ライン3aの中途には、熱板用弁調整部5が配置されている。熱板用弁調整部5は、熱板用開閉弁5aと熱板用調整弁5bとを有している。熱板用開閉弁5aは、熱板用供給ライン3aを全開または全閉の状態にする。熱板用開閉弁5aの作動によって、即座に、熱板用供給ライン3aの全開と全閉との切換えが行われる。熱板用開閉弁5aは、熱板用供給ライン3aを全開または全閉の状態にして、全開と全閉の切換えを即座に行える仕様であれば、特に限定されず例えばピストン弁等が採用される。
【0015】
熱板用調整弁5bは、熱板用供給ライン3aを流れる熱媒体Sの流量を調整する。熱板用調整弁5bは、熱媒体Sの流量を比較的ゆっくりと変化させる仕様になっていて、例えばバラフライ弁等が採用される。
【0016】
側面部用供給ライン3bの中途には、側面部用弁調整部6が配置されている。側面部用弁調整部6は、側面部用開閉弁6aと側面部用調整弁6bとを有している。側面部用開閉弁6aは、側面部用供給ライン3bを全開または全閉の状態にする。側面部用開閉弁6aの作動によって、即座に、側面部用供給ライン3bの全開と全閉との切換えが行われる。側面部用開閉弁6aとしては、側面部用供給ライン3bを全開または全閉の状態にして、全開と全閉の切換えを即座に行える仕様であれば、特に限定されず例えばピストン弁等が採用される。
【0017】
側面部用調整弁6bは、側面部用供給ライン3bを流れる熱媒体Sの流量を調整する。側面部用調整弁6bは、熱媒体Sの流量を比較的ゆっくりと変化させる仕様になっていて、例えばバラフライ弁等が採用される。
【0018】
この実施形態の加硫システム1は、さらに下側の熱板11bに接続された熱板用排出ライン4aと、コンテナリング10に接続された側面部用排出ライン4bと、排出ライン4a、4bそれぞれに配置される熱板用温度センサ8a、側面部用温度センサ8bと、温度センサ8a、8bそれぞれによる検知温度が入力される熱板用制御部7a、側面部用制御部7bとを有している。制御部7a、7bはそれぞれ、熱板用弁調整部5、側面部用弁調整部6を制御する。
【0019】
図2、
図3は、モールド16が閉型している状態の加硫用コンテナ9の内部を例示している。加硫用コンテナ9の内部には、モールド16と、上下に延在する中心軸13aを有する中心機構13が配置されている。モールド16は、複数のセクタ16aと、上側サイドプレート16bと、下側サイドプレート16cとで構成されている。それぞれのセクタ16aは中心機構13を中心にして円環状に配置されている。
【0020】
中心軸13aには膨張収縮する加硫ブラダ14が取り付けられている。中心機構13には加硫ブラダ14の内部に加熱加圧媒体Mを供給する供給管15aと、加熱加圧媒体Mを加硫ブラダ14の内部から排出させる排出管15bとが設けられている。
【0021】
上下移動する上側の熱板11aの下面には円環状の上側サイドプレート16bが固定されていて、この上側サイドプレート16bの外周側にコンテナリング12が配置されている。所定位置に固定されている下側の熱板11bの上面には、環状の下側サイドプレート16cが固定されている。
【0022】
複数のセグメント12は、中心機構13を中心にして円環状に配置されていて、対応するセクタ16aの外周面に取り付けられている。それぞれのセグメント12の外周面は、上方から下方に向かって外周側に傾斜する傾斜面を有している。
【0023】
加硫用コンテナ9の側面部となるコンテナリング10は、上下移動するプレートの下方に突設されている。コンテナリング10の内周側に複数のセグメント12が配置されている。コンテナリング10の内周面は、上方から下方に向かって外周側に傾斜する傾斜面を有している。コンテナリング10の傾斜面とそれぞれのセグメント12の傾斜面とが擦動する構成になっている。
【0024】
下方移動するコンテナリング10によって、それぞれのセグメント12の外周面(傾斜面)が押圧される。これにより、それぞれのセグメント12は中心機構13に向かって移動して、それぞれのセクタ16aが円環状に組み付けられる。各セグメント12の上下それぞれに、上側の熱板3a、下側の熱板3bが当接している。円環状に組み付けられたセクタ16aの上下それぞれに、上側サイドプレート16b、下側サイドプレート16cが組み付けられてモールド16が閉型している。この状態でモールド16の内部に配置されているグリーンタイヤGは加硫される。この時、グリーンタイヤGの外面はモールド16により加熱され、内面は膨張している加硫ブラダ14により加熱される。
【0025】
上下の熱板11a、11bの内部には、熱板用供給ライン3aが延在している。そして、熱板用供給ライン3aと熱板用排出ライン4aとが連結されている。コンテナリング12の内部には、側面部用供給ライン3bが延在している。そして、側面部用供給ライン3bと側面部用排出ライン4bとが連結されている。
【0026】
熱板用供給ライン3aには、熱源ライン2から供給された熱媒体Sが、熱板用弁調整部5を経て流れ、熱板用弁調整部5を通過した熱媒体S1が上下の熱板11a、11bに流通する。この熱媒体S1が上下の熱板11a、11bの内部に流れることにより、上下の熱板11a、11bが加熱される。上側サイドプレート16b、下側サイドプレート16cはそれぞれ、主に、加熱された上下の熱板11a、11bの熱が伝わって加熱される。この上側サイドプレート16b、下側サイドプレート16cによってグリーンタイヤGの側面部分の外面が加熱される。
【0027】
側面部用供給ライン3には、熱源ライン2から供給された熱媒体Sが、側面部用弁調整部6を経て流れ、側面部用弁調整部6を通過した熱媒体S2がコンテナリング10に流通する。コンテナリング10の内部に熱媒体S2が流れることにより、コンテナリング10が加熱される。それぞれのセクタ16aは、主に、加熱されたコンテナリング10の熱がセグメント12を介して伝わって加熱される。このセクタ16aによってグリーンタイヤGのトレッド部分の外面が加熱される。
【0028】
以下、この加硫システム1を用いて、上下の熱板11a、11bとコンテナリング10とに対して異なる温度コントロールを行いつつグリーンタイヤGを加硫する本発明のタイヤの加硫方法の手順を説明する。
【0029】
例えば、グリーンタイヤGの側面部分の外面を、トレッド部分の外面よりも高温で加熱したい場合は、上下の熱板11a、11bを、コンテナリング10に比して高温に加熱することになる。この場合、熱板用弁調整部5では、熱板用開閉弁5aにより熱板用供給ライン3aを全開状態にしておき、熱板用調整弁5bの弁開度を調整しながら、熱源ライン2から供給される高圧および高温の熱媒体Sを熱板用供給ライン3aに流す。
【0030】
この熱板用弁調整部5による制御によって、熱媒体Sの圧力および温度はそれ程、低下しないため、熱板用供給ライン3aには相対的に高圧および高温に維持された熱媒体S1が流れる。熱板用開閉弁5aは、熱源ライン2から供給された熱媒体Sの圧力(温度)が過大になった場合に作動させて熱板用供給ライン3aを全閉状態にする。
【0031】
一方、側面部用弁調整部6では、側面部用開閉弁6aにより側面部用供給ライン3bの全開と全閉を適度に切換えながら、側面部用調整弁6bの弁開度を調整することで、熱源ライン2から供給される高圧および高温の熱媒体Sを側面部用供給ライン3bに流す。側面部用開閉弁6aの作動によって、側面部用供給ライン3bに供給される熱媒体Sの流量を即座にゼロにできる。
【0032】
そのため、この側面部用弁調整部6による制御によって、熱媒体Sの圧力および温度を大きく低下させることができる。これにより、側面部用供給ライン3bには相対的に低圧および低温に維持された熱媒体S2が流れる。
【0033】
このように同じ1系統の熱源ライン2により供給される高圧および高温の熱媒体Sを、相対的に高圧および高温に維持された熱媒体S1と、相対的に低圧および低温に維持された熱媒体S2とに変化させて、上下の熱板11a、11bとコンテナリング10とを互いに独立に温度コントロールする。これに伴い、上下の熱板11a、11bを、コンテナリング10に比して高温に加熱する。
【0034】
本発明によれば、熱源ライン2が1系統だけの簡素な構成であっても、上述したように上下の熱板11a、11bとコンテナリング10とに対して異なる温度コントロールを行いつつグリーンタイヤGを加硫することができる。それ故、圧力の異なるスチームを供給する複数の別々の熱源ラインを設置する必要がなく、設備が複雑化することを回避できる。
【0035】
熱板11a、11bに対する温度制御は、例えば、上下の熱板11a、11bを流通した直後の熱媒体S1の温度に基づいて行う。具体的には、この熱媒体S1の温度を熱板用温度センサ8aにより検知する。そして、検知した熱媒体S1の温度と予め設定されている熱板11a、11bに対する目標温度(熱板目標温度)との比較に基づいて、制御部7aにより熱板用開閉弁5aの作動および熱板用調整弁5bの弁開度を制御して、熱板用供給ライン3aを流通する熱媒体S1の流量を制御する。熱媒体S1の流量の増減によって熱板11a、11bに対する加熱具合を増減させる。これにより、熱媒体S1の温度を精度よくコントロールして、熱板11a、11bを目標温度(所定の温度範囲)に維持することができる。
【0036】
コンテナリング10に対する温度制御は、例えば、コンテナリング10を流通した直後の熱媒体S2の温度に基づいて行う。具体的には、この熱媒体S2の温度を側面部用温度センサ8bにより検知する。そして、検知した熱媒体S2の温度と予め設定されているコンテナリング10に対する目標温度(側面部目標温度)との比較に基づいて、制御部7bにより側面部用開閉弁6aの作動および側面部用調整弁6bの弁開度を制御して、側面部用供給ライン3bを流通する熱媒体S2の流量を制御する。熱媒体S2の流量の増減によってコンテナリング10に対する加熱具合を増減させる。これにより、熱媒体S2の温度を精度よくコントロールして、コンテナリング10を目標温度(所定の温度範囲)に維持することができる。
【0037】
グリーンタイヤGの側面部分の外面を、トレッド部分の外面よりも低温で加熱したい場合は、上下の熱板11a、11bを、コンテナリング10に比して低温に加熱することになる。この場合は、上記説明した熱板用弁調整部5における制御と側面部用弁調整部6における制御とを互いに入れ替えて行えばよい。
【0038】
本発明では、熱板目標温度と側面部目標温度との差を、例えば15℃以上、或いは20℃以上に設定する。これにより、加熱した熱板11a、11bと加熱したコンテナリング10との温度差を15℃以上、或いは、20℃以上にすることも可能である。熱板目標温度と側面部目標温度との差の上限値は、例えば40℃程度である。
【0039】
先の実施形態では、熱板用弁調整部5および側面部用弁調整部6がそれぞれ、熱板用開閉弁5a、側面部用開閉弁5bを有していたが、開閉弁5a、5bのいずれか一方を省略することもできる。
図4に例示する実施形態では、熱板用開閉弁5aが省略されて、熱板用弁調整部5は熱板用調整弁5bだけを有している。
【0040】
上下の熱板11a、11bを目標温度に加熱するために、適切な高圧および高温の熱媒体Sが熱源ライン2に供給されている場合は、熱板用弁調整部5においては、熱媒体Sの流量(温度)を大幅に調整する必要がない。そのため、
図4に例示した製造システム1であっても、上下の熱板11a、11bとコンテナリング10とに対して異なる温度コントロールを行いつつグリーンタイヤGを加硫することができる。
【実施例】
【0041】
図4に例示した同仕様の製造システム1を用いて、同一仕様のグリーンタイヤGを加硫した。その際に、熱板用供給ライン3aを流れる熱媒体S1の流量調整と、側面部用供給ライン3bを流れる熱媒体S2の流量調整とを行って、熱板11a、11bとコンテナリング10とに対して異なる温度コントロールを実施した。
【0042】
グリーンタイヤGの加硫は、側面部用開閉弁6aを適度に作動させた場合(実施例)と、側面部用開閉弁6aを作動させずに側面部用供給ライン3bを全開状態にする位置に維持した場合(比較例)との2種類の条件下で行い、側面部用開閉弁6aの作動以外は実質的に同じ条件にした。実施例と比較例について、加硫中の熱板11a、11bとコンテナリング10の温度を測定した。
【0043】
その結果、実施例では概ね目標どおり、熱板11a、11bを相対的に高温の所定温度に維持でき、コンテナリング10を相対的に低温の所定温度に維持できた。熱板11a、11bとコンテナリング10との温度差は20℃程度であった。比較例では、熱板11a、11bを相対的に高温の所定温度に維持できたが、相対的に低温したコンテナリング10の温度が安定しなかった。そのため、熱板11a、11bとコンテナリング10との温度差は5〜25℃程度の間で大きくばらついた。
【符号の説明】
【0044】
1 加硫システム
2 熱源ライン
3a 熱板用供給ライン
3b 側面部用供給ライン
4a 熱板用排出ライン
4b 側面部用排出ライン
5 熱板用弁調整部
5a 熱板用開閉弁
5b 熱板用調整弁
6 側面部用弁調整部
6a 側面部用開閉弁
6b 側面部用調整弁
7a 熱板用制御部
7b 側面部用制御部
8a 熱板用温度センサ
8b 側面部用温度センサ
9 加硫用コンテナ
10 コンテナリング(側面部)
11a 上側の熱板
11b 下側の熱板
12 セグメント
13 中心機構
13a 中心軸
14 加硫ブラダ
15a 供給管
15b 排出管
16 モールド
16a セクタ
16b 上側サイドプレート
16c 下側サイドプレート
G グリーンタイヤ