(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本件を実施するための形態を述べる。下記の実施形態はあくまでも例示に過ぎず、この実施形態で明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。本実施形態の各構成は、それらの趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができ、また、必要に応じて取捨選択することができ、あるいは適宜組み合わせることができる。
【0012】
下記の実施形態では、包装箱に加えて、包装箱に組み立てられるシート材(ブランクシート)を説明する。
これらの説明では、包装箱およびシート材が水平面に載置されたものとする。
ここでは、直方体の表面に沿って壁部が設けられた包装箱を説明する。具体的には、上下の開口がフラップで閉鎖される包装箱(いわゆる「A式箱」)を例に挙げる。
【0013】
さらに、包装箱については、水平方向を前後方向(図中には前方を「F」で示すとともに後方を「B」で示す)および左右方向(図中には左方を「L」で示すとともに右方を「R」で示す)に細別して説明する。左右方向は、後方から前方を向いたときの左側を左方とするとともに右側を右方とする。これらの左方および右方を区別しないときには側方と呼ぶ。また、鉛直方向のうち、重力の作用方向を下方(図中には「D」で示す)とし、下方の反対方向を上方(図中には「U」で示す)とする。
【0014】
シート材については、水平方向において互いに直交するX方向およびY方向を用いて説明する。これらのX方向およびY方向のそれぞれは、互いに反対向きの二方向に延びる。そこで、各方向について、一方を下付きの添え字で「1」を付して示し、他方を下付きの添え字で「2」を付して示す。たとえば、X方向では、一方がX
1方向であり、他方がX
2方向である。
【0015】
また、シート材の各シート片(各部位)については、対応する包装箱の壁部と同様の符号を付して説明する。また、シート片の各構造については、対応する包装箱の壁部の各構造と同様の符号を付すとともに同様の名称で説明する。
なお、シート材には、段ボールシートのほか、厚紙やプラスチックシートといった種々の材料(包装資材)を用いることができる。
【0016】
[I.一実施形態]
[1.構成]
本件の包装箱には、第一面部を第二面部に対して引きちぎるための破断部が設けられている。以下、包装箱およびシート材について、破断部が設けられる前提の基本的な構成を述べてから、破断部に関する詳細な構成を述べる。
【0017】
[1−1.基本構成]
まず、
図1および
図2を参照して、包装箱1およびシート材1Sの基本的な構成を説明する。
〈包装箱〉
図1に示すように、包装箱1には、前側の前壁部10F,後側の後壁部10B,左側の左壁部20L,右側の右壁部20R,上側の上壁部30および下側の下壁部40が設けられている。ここでは、前壁部10F,後壁部10B,左壁部20L,右壁部20Rが連なって設けられる。
【0018】
なお、包装箱1は、前後対称であって左右対称に形成されている。そこで、前壁部10Fと後壁部10Bとを区別しないときには「端壁部10」と呼び、左壁部20Lと右壁部20Rとを区別しないときには「側壁部20」と呼ぶ。
上壁部30は、二種のフラップ31,32から構成されている。これらのフラップ31,32のうち、一方は他方の内側に配置される内フラップ31であり、他方は一方の外側に配置される外フラップ32である。
【0019】
内フラップ31は、上壁部30と端壁部10との境界をなす前後の各端縁13(上壁部30の前後端縁,端壁部10の上端縁)から突出して設けられる。具体的には、前側の内フラップ31(以下「前フラップ31F」という)と後側の内フラップ31(以下「後フラップ31B」という)とが前後に並んで設けられる。これら一対の内フラップ31は、端壁部10に対して折り曲げられており、先端縁310どうしが離隔して配置される。
【0020】
外フラップ32は、上壁部30と側壁部20との境界をなす左右の各端縁23(上壁部30の左右端縁,側壁部20の上端縁)から突出して設けられる。具体的には、左側の外フラップ32(以下「左フラップ32L」という)と右側の外フラップ32(以下「右フラップ32R」という)とが左右に並んで設けられる。これら一対の外フラップ32は、側壁部20に対して折り曲げられており、先端縁320どうしが突き合わせられて配置される。
【0021】
たとえば、包装箱1が封緘されるときには、左右の外フラップ32L,32Rを跨いでテープ90が貼り付けられる。このとき、一方の端壁部10(たとえば前壁部10F)から他方の端壁部10(たとえば後壁部10B)までテープ90が貼り付けられることで、包装箱1が確実に封緘される。詳細に言えば、テープ90のうち前後の端部90aは、端壁部10のうち所定の領域(以下「テープ貼付領域」という)Tに貼り付けられる。このテープ貼付領域Tは、テープ90の端部90aが貼り付けられることの想定される範囲として、端壁部10のうち上部に設定される。
そのほか、前後の内フラップ31F,31Bには、作業者の手を掛けるための手掛穴39が穿設されている。
【0022】
下壁部40は、上壁部30における各フラップ31F,31B,32L,32Rと同様に、内フラップ41としての前フラップ41Fおよび後フラップ41Bと、外フラップ42としての左フラップ42Lおよび右フラップ42Rとから構成されている。
【0023】
〈シート材〉
つぎに、
図2を参照して、包装箱1に組み立てられるシート材1Sを説明する。
シート材1Sは、所定の形状に切り取られた一枚の包装資材である。
このシート材1Sには、上述した各壁部10,20,30,40に対応する各シート片10,20,30,40が設けられている。
【0024】
シート材1SのY方向中央領域には、端壁部10および側壁部20に対応する端壁シート片10および側壁シート片20がX方向に並んで設けられている。
具体的には、X
1方向側からX
2方向側に向けて、右壁部20Rに対応する右壁シート片20R,前壁部10Fに対応する前壁シート片10F,左壁部20Lに対応する左壁シート片20L,後壁部10Bに対応する後壁シート片10Bがこの順に並設される。さらに、後壁シート片10BのX
2方向側には、右壁シート片20Rと後壁シート片10Bとを糊付けやステープル留めで結合するための結合シート片9が設けられている。
【0025】
これらのシート片20R,10F,20L,10B,9は、Y方向(たとえばシート材1Sが段ボールシートからなる場合に段〈フルート〉の延在方向に沿う方向)に延びる罫線(以下「クリーズ」という)CでX方向に区画されている。このクリーズCとして、第一クリーズC
1,第二クリーズC
2,第三クリーズC
3,第四クリーズC
4の四本がX
1方向側からX
2方向側に向けてこの順に並んで設けられている。
【0026】
第一クリーズC
1は、右壁シート片20Rと前壁シート片10Fとの境界に設けられ、第二クリーズC
2は、前壁シート片10Fと左壁シート片20Lとの境界に設けられている。また、第三クリーズC
3は、左壁シート片20Lと後壁シート片10Bとの境界に設けられ、第四クリーズC
4は、後壁シート片10Bと結合シート片9との境界に設けられている。
【0027】
シート材1SのY
1方向側領域には、下壁部40に対応する下壁シート片40が設けられている。
具体的には、内外のフラップ41,42に対応するフラップシート片41,42がX方向に並んで設けられる。詳細には、X
1方向側からX
2方向側に向けて、右フラップ42Rに対応する右フラップシート片42R,前フラップ41Fに対応する前フラップシート片41F,左フラップ42Lに対応する左フラップシート片42L,後フラップ41Bに対応する後フラップシート片41Bがこの順に並設される。
【0028】
これらのフラップシート片41,42は、端壁シート片10および側壁シート片20からY
1方向に突出して設けられる。また、フラップシート片41,42と端壁シート片10および側壁シート片20とは、X方向(たとえばシート材1Sが段ボールシートからなる場合に段の延在方向に直交する方向)に延びる罫線(以下「スコア」という)SでY方向に区画されている。このスコアSとして、第一スコアS
1,第二スコアS
2,第三スコアS
3,第四スコアS
4,第五スコアS
5の五本がX
1方向側からX
2方向側に向けてこの順に並んで設けられている。
【0029】
第一スコアS
1は、右フラップシート片42Rと右壁シート片20Rとの境界に設けられ、第二スコアS
2は、前フラップシート片41Fと前壁シート片10Fとの境界に設けられる。また、第三スコアS
3は、左フラップシート片42Lと左壁シート片20Lとの境界に設けられ、第四スコアS
4は、後フラップシート片41Bと後壁シート片10Bとの境界に設けられる。そのほか、第五スコアS
5は、結合シート片9をY方向に区画している。
【0030】
シート材1SのY
2方向側領域には、上壁部30に対応する上壁シート片30が設けられている。具体的には、内外のフラップ31,32に対応するフラップシート片31,32がX方向に並んで設けられる。詳細には、X
1方向側からX
2方向側に向けて、右フラップ32Rに対応する右フラップシート片32R,前フラップ31Fに対応する前フラップシート片31F,左フラップ32Lに対応する左フラップシート片32L,後フラップ31Bに対応する後フラップシート片31Bがこの順に並設される。
そのほか、前後のフラップシート片31F,31Bには、作業者の手を掛けるための手掛穴39が穿設されている。
【0031】
上記したフラップシート片31,32は、端壁シート片10および側壁シート片20からY
2方向に突出して設けられている。また、フラップシート片31,32と端壁シート片10および側壁シート片20とは、つぎに詳述する破断部50でY方向に区画されている。
【0032】
[1−2.詳細構成]
以下、
図1〜
図3を参照して、包装箱1の破断部50に関する構成の詳細を述べる。
この破断部50は、
図3に示すように、包装箱1の第一面部60を第二面部70に対して引きちぎるためのものである。
なお、第一面部60とは、引きちぎられて取り除かれる面状の部位である。この第一面部60は、所定の破断方向(白抜きの矢印で示す)に引きちぎられる方向が設定される。第二面部70とは、第一面部60に連設され、引きちぎられずに残る面状の部位である。これらの第一面部60または第二面部70は、壁部や壁シート片の何れかであってもよいし、その一部であってもよい。
【0033】
〈包装箱〉
破断部50には、所定の破断方向に沿って断続的に切り込まれた切込部51と、切込部51どうしの間で第一面部60と第二面部70とを接続する非切込部52とが設けられている。
たとえば、破断部50は、切込刃で包装資材を切り込むことによって形成することができる。この切込刃は、切込部51に対応する形状に形成され、非切込部52に対応する間隔をおいて断続的に突出して設けられたダイカッタに設けられる。
【0034】
切込部51には、第一面部60と第二面部70との境界に延びる第一切込線L
1と、第一切込線L
1に対して直角に延びる第二切込線L
2とが設けられる。この第二切込線L
2は、第一切込線L
1の破断方向上流端から第一面部60に延びている。つまり、切込部51は、第一切込線L
1と第二切込線L
2とが角部51aで直角に連設されており、鉤形(L字形)に切り込まれている。たとえば、包装箱1が段ボール箱である場合には、第二切込線L
2が段(フルート)の延在方向に沿って設けられる。
【0035】
この切込部51では、第一切込線L
1よりも第二切込線L
2のほうが短く形成されている。また、非切込部52(すなわち第一切込線L
1どうしの間)の破断方向寸法(いわゆる「アキ」)は、第一切込線L
1の破断方向寸法(いわゆる「キリバ」)よりも短く設定されている。
ただし、上記した切込部51および非切込部52の各寸法は、包装箱1の材料や厚み,包装される物品,破断部50での破断力(作業者に要求される負荷)といった種々の要因によって、さまざまな大きさに設定される。
【0036】
つぎに、
図1を参照して、包装箱1の破断部50として二つの例を説明する。
ここでは、一方の破断部50を第一破断部50Aと呼び、他方の破断部50を第二破断部50Bと呼ぶ。
第一破断部50Aは、テープ90を剥がして開封するために設けられる。この第一破断部50Aに関しては、符号「61」で第一面部(テープ貼付面部)を示し、符号「71」で第二面部を示す。
第二破断部50Bは、上壁部30を構成するフラップ31,32を取り除くために設けられる。この第二破断部50Bに関にしては、符号「62」で第一面部を示し、符号「72」で第二面部を示す。
【0037】
第一破断部50Aでは、端壁部10のうちテープ貼付領域Tの少なくとも一部を含む第一面部61が設定される。この第一面部61は、左右の外フラップ32においてテープ90で互いに貼り付けられる先端縁320の前端または後端の下方に設けられる。すなわち、上壁部30に対してタグ状の第一面部61が設けられる。
【0038】
上記した第一面部61の破断方向は、上方へ向かう方向に設定されている。
また、第一面部61以外の他部が第二面部71に設定されている。
ここでは、第一破断部50Aは、端壁部10の上端縁(端縁13)の一部がなす上底とこの上底よりも下底のほうが短い等脚台形状の脚とに対応する箇所に沿って設けられている。
【0039】
そのほか、第一破断部50Aには、第一面部61での引きちぎり作業性を向上させるために、作業者に把持される把持部(開封補助部)11が連設されている。
把持部11は、第一面部61の下方に連設され、この連設される部分を除いて周囲が切り込まれている。この把持部11は、下方に円弧が配置された半円状に形成されている。この半円の弦(直径)と上記した第一面部61を区画する台形の下底とが重複し、この重複部分において把持部11が第一面部61に連設される。なお、把持部11の周囲は、第一面部61に対する連設部分を除いて、連続的に切れ込まれていてもよいし、断続的に切れ込まれていてもよい。
【0040】
第二破断部50Bでは、上壁部30が第一面部62に設定され、端壁部10および側壁部20が第二面部72に設定されている。ここでは、上壁部30と端壁部10および側壁部20との境界をなす端縁13,23に沿って第二破断部50Bが設けられている。この第二破断部50Bを詳細に言えば、第一切込線L
1(
図3参照)が端縁13,23に沿って延設され、第二切込線L
2(
図3参照)が第一面部62に延設される。
【0041】
上記した第二破断部50Bの破断方向は、上壁部30および端壁部10の端縁13においては、左方または右方から左右方向中央に向かう方向に設定される。そのため、端縁13の左側では、第一切込線L
1に対して左方に第二切込線L
2が連設される。反対に、端縁13の右側では、第一切込線L
1に対して右方に第二切込線L
2が連設される。
【0042】
また、第二破断部50Bの破断方向は、上壁部30および側壁部20の端縁23においては、前方または後方から前後方向中央に向かう方向に設定されている。そのため、端縁23の前側では、第一切込線L
1に対して前方に第二切込線L
2が連設される。反対に、端縁23の後側では、第一切込線L
1に対して後方に第二切込線L
2が連設される。
ここでは、端縁13,23の中央に、第一切込線L
1の両端のそれぞれに第二切込線L
2が連設された切込部51を例示する。
なお、上壁部30および端壁部10の端縁13のうち左右方向中央では、第一破断部50Aと第二破断部50Bとが重複している。
【0043】
〈シート材〉
つぎに、
図2を参照して、シート材1Sにおける破断部50を説明する。
破断部50のうち第一破断部50Aは、端壁シート片10のY
2方向側に設けられる。この第一破断部50Aは、端壁シート片10のうち第一面部61を区画する台形の脚(第一面部61と他部とのX方向境界)とこの台形の上底(上壁部30と端壁部10との境界をなす端縁13の左右方向中央に対応)とに沿って設けられている。さらに、第一破断部50AのY
1方向側には把持部11が連設される。
破断部50のうち第二破断部50Bは、端壁シート片10および側壁シート片20と上壁シート片30との境界をなす端縁13,23(端壁部10および側壁部20と上壁部30との境界をなす端縁13,23に対応)に沿ってX方向に設けられる。
【0044】
[1−3.作業手順]
つづいて、上述した破断部50を用いた作業について説明する。
まず、第一破断部50Aを用いて包装箱1を開封する作業の手順Aを説明する。
手順Aの概要は、下記の手順A1〜A4に示す通りである。
手順A1:一方(ここでは前方)の把持部11を把持して第一面部61を持ち上げる
(
図4参照)
手順A2:手順A1で持ち上げた第一面部61に貼り付けたままテープ90を外フラ
ップ32から剥がす
手順A3:他方(ここでは後方)のテープ貼付領域Tからテープ90を剥がす
手順A4:上壁部30をなすフラップ31,32を外側に開く
【0045】
手順A1では、把持部11が持ち上げられて、第一破断部50Aが破断される。すなわち、前壁部10Fにおいて、第一面部61が第二面部71に対して引きちぎられる。
手順A2では、左右の外フラップ32L,32Rを跨いで貼り付けられたテープ90が剥がされ、これらの外フラップ32L,32Rが端縁23を軸に折り戻すことのできる状態となる。
【0046】
手順A3では、後壁部10Bにおいて、テープ貼付領域Tからテープ90が剥がされる。この後壁部10Bにおいては、第一破断部50Aが破断されることなく、第一面部61が第二面部71に対して連設されたままの状態とされる。
手順A4では、外フラップ32L,32Rが外側に折り戻され、内フラップ32F,32Bも外側に折り戻される。
【0047】
つぎに、第二破断部50Bを用いて包装箱1に物品を収容したまま外観可能に陳列する作業の手順Bを説明する。
手順Bの概要は、下記の手順B1およびB2に示す通りである。
手順B1:上述した手順A1〜A4
手順B2:手順A4で開かれた各フラップ31,32を端壁部10および側壁部20
に対して引きちぎる(
図5および
図6参照)
この手順B2では、内フラップ31(第一面部62)が端壁部10(第二面部72)から引きちぎられ、外フラップ32(第一面部62)が側壁部20(第二面部72)から引きちぎられる(
図5参照)。そして、フラップ31,32の全てが引きちぎられ、上壁部30(
図1参照)が取り除かれる(
図6参照)。
【0048】
[2.作用および効果]
一実施形態の包装箱1およびシート材1Sは、上述したように構成されることから、以下の作用および効果を得ることができる。
(1)包装箱1の破断部50には、第一切込線L
1の破断方向上流端から直角に延びる第二切込線L
2が切込部51に設けられることから、非切込部52における破断力が所定の破断方向に沿いやすくなり、第二面部70からの突出片の形成を抑えることができる。よって、破断性を向上させることができる。
【0049】
一方、
図7に示すように、従来の破断部50′では、端縁切込線L
1′の破断方向上流端から上流側に傾斜切込線L
2′が傾斜して延びる切込部51′が断続的に設けられる。そのため、非切込部52′において破断力が所定の破断方向(白抜きの矢印で示す)に沿いにくく、第二面部70′からの突出片が形成されやすく、破断性を確保できないおそれがある。なぜならば、端縁切込線L
1′の破断方向下流端から下流側の傾斜切込線L
2′における破断方向上流端に向けて、破断力(黒塗りの矢印で示す)が作用しうるからである。
【0050】
これに対し、本件の破断部50には、切込部51において第一切込線L
1の破断方向上流端から第二切込線L
2が直角に延びる。そのため、第一切込線L
1の破断方向下流端から下流側の第二切込線L
2における先端に向けて、破断力の一部(黒塗りの矢印で示す)が非切込部52で作用したとしても、従来の傾斜切込線L
2′における破断方向上流端よりも下流側に第二切込線L
2における先端を配置することができる。よって、非切込部52における破断力を所定の破断方向に沿わせることができる。延いては、破断部50で破断された箇所の美観を向上させることができる。
【0051】
このように、本件の破断部50は、従来の傾斜切込線L
2′よりも第二切込線L
2が下流側に配置されることから、従来の破断部50′よりも破断力が大きくなりやすい。従来の破断部50′を包装箱の端縁に設けた場合には、破断部50′で破断すべきではないにもかかわらず端縁での破断を招くおそれがある。たとえば、作業員は、フラップを千切らずに折り曲げるだけのつもりだったにもかかわらず、端縁の一部または全部を破断させてしまうおそれがある。
【0052】
これに対し、本件の破断部50は、従来の破断部50′での破断力よりも大きな破断力に設定しやすい。言い換えれば、破断部50で容易に破断しないようにするとともに、破断すべきときに破断部50で破断することができるように、破断力を調整しやすい。よって、包装箱1の予期せぬ破損の抑制と包装箱1の確実な破断とを両立することができる。このような点からも、包装箱1の破断性を向上させることができる。
【0053】
そのほか、第一切込線L
1に対応する切れ込みだけが断続的に設けられたミシン目の用いられる従来の破断部では、ミシン目を切れ込んで形成する切込刃に、ミシン目の形状に対応する直線状の刃が用いられる。これに対し、本件の切込部51を形成する切込刃には、切込部51の形状に対応する鉤形の刃を用いることができる。そのため、前者の切込刃よりも後者の切込刃のほうが折れ曲がりにくい。よって、切込部51を形成する切込刃の耐久性を確保することもできる。
【0054】
(2)第一面部61にはテープ貼付領域Tの少なくとも一部が含まれることから、第一破断部50Aを破断させ、第二面部71に対して第一面部61を引きちぎることにより、包装箱1を封緘するテープ90を容易に剥がすことができる。したがって、包装箱1の開封性を向上させることができる。
(3)そのうえ、第一面部61に把持部11が連設されることから、第一破断部50Aによってテープ貼付領域Tを引きちぎる際の作業性を高めることができる。
【0055】
(4)第二破断部50Bの各第一切込線L
1が包装箱1の端縁13,23に延設されることから、包装箱1の上壁部30を容易に引きちぎることができる。そのため、包装箱1に物品を収容したままで確実に視認可能な状態に陳列することができる。
また、包装箱1の端縁13,23に各第一切込線L
1が延設されることで、端縁13,23で包装箱1を折り曲げやすくすることができる。そのため、端縁13,23に罫線を設けることなく、フラップ31,32を容易に折り曲げられるようにすることができる。このように罫線を省略することで、包装箱1の製造コストを低減させることもできる。
【0056】
(5)ところで、段ボール箱に従来の破断部50′が設けられ、段ボール箱で折り曲げられる端縁に端縁切込線L
1′が設けられる場合には、傾斜切込線L
2′が段(フルート)の延在方向と交差する。これにより、傾斜切込線L
2′延いては端縁切込線L
1′が第一面部60′で盛り上がり(浮き上がり)、外観を良好に保つことができないおそれがある。
これに対し、本件の第二破断部50Bは、包装箱1が段ボール箱であって第二破断部50Bの第二切込線L
2が段の延在方向に沿って設けられる場合に、第一面部61における第二切込線L
2の盛り上がりを抑え、第一切込線L
1の盛り上がりも抑えることができる。よって、包装箱1の端縁13,23における折り跡の外観を良好に保つことができる。
【0057】
そのほか、内フラップ31F,31Bに手掛穴39が設けられることから、包装箱1の箱詰め作業性を向上させることができる。具体的には、フラップ31,32を折り曲げずに側壁部20から上方に突出させた状態で箱詰め作業するときに、作業員が手掛穴39に手を掛けて包装箱1を持ち上げたり運んだりすることができる。このとき、内フラップ31F,31Bあるいは外フラップ32L,32Rを折り曲げることがないため、端縁13,23の強度低下や破損を抑えることができる。
【0058】
あるいは、切込部51では、第一切込線L
1よりも第二切込線L
2のほうが短く形成されることから、破断方向上流側の第一切込線L
1からその破断方向下流側の第一切込線L
1へ向かう破断力を所定の破断方向へ確実に沿わせることができる。また、非切込部52の破断方向寸法が第一切込線L
1の破断方向寸法よりも短く設定されることから、非切込部52を破断させるのに必要な負荷を抑えることができる。
なお、包装箱1に組み立てられるシート材1Sによっても、上述した作用および効果を得ることができる。
【0059】
[II.その他]
最後に、本実施形態のその他の変形例について述べる。
たとえば、切込部の切れ込み形状は、鉤形に限らず、T字形であってもよい。すなわち、第一切込線の破断方向上流端から二方向に延びる第二切込線を設けてもよい。この場合には、第一切込線を挟む二つの面部に第二切込線が延設される。したがって、一方の面部を第一面部とするとともに他方の面部を第二面部とすることができ、反対に、一方の面部を第二面部とするとともに他方の面部を第一面部とすることもできる。
【0060】
また、第一切込線に対して第二切込線が連設される角度は、直角に限らず、鋭角であってもよい。この場合には、非切込部における破断力が所定の破断方向に更に沿いやすくなり、破断性を高めることができる。また、鋭角に連設された第一切込線および第二切込線を形成する切込刃の耐久性を確保することもできる。
そのほか、包装箱の前後左右にライナカットやカットテープを併設してもよい。この場合には、ライナカットなどで包装箱を上下に分離して開封する手法と、第一破断部で包装箱を破断して開封する手法との二つの手法で包装箱を開封することができる。
【0061】
なお、包装箱の載置方向は、端壁部が前後に配置される姿勢に限定されず、端壁部が左右や上下に配置されてもよい。端壁部が左右に配置される場合には、前後を左右に読み替えるとともに左右を前後または上下に読み替え、左右を上下に読み替えたときには上下を前後に読み替えればよい。端壁部が上下に配置される場合には、前後を上下に読み替えるとともに上下を前後または左右と読み替え、上下を左右と読み替えたときには左右を前後に読み替えればよい。